「抜け毛が増えた」「髪のボリュームが減ってきた」と感じ、育毛シャンプーに手を伸ばそうかと考えている女性は少なくないでしょう。
市場には多くの製品があふれ、「本当に効果があるの?」と疑問に思うのも当然です。
育毛シャンプーは、直接的に髪を生やす「発毛剤」とは異なります。その主な役割は、薄毛の原因となる頭皮環境の乱れを整え、健やかな髪が育つ土台を作ることです。
この記事では、女性の薄毛の原因を踏まえ、育毛シャンプーに期待できる本当の効果や成分、そしてご自身の悩みに合った製品の選び方を詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
そもそも育毛シャンプーとは?一般的なシャンプーとの違い
薄毛対策を考えたとき、多くの方がまず思い浮かべるのが「育毛シャンプー」ではないでしょうか。
しかし、その役割や一般的なシャンプーとの違いを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。
まずは基本となる育毛シャンプーの定義から見ていきましょう。
育毛シャンプーの定義と目的
育毛シャンプーとは、健やかな髪を育むために頭皮環境を整えることを目的としたシャンプーを指します。
多くは「医薬部外品」に分類され、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されています。
頭皮の洗浄はもちろん、フケやかゆみ、炎症などを防ぎ、髪が育ちやすい清潔で潤いのある状態に導くのが主な目的です。
髪に栄養を与えたり、直接的に発毛を促したりするものではなく、あくまで頭皮環境の改善をサポートする製品と理解しておきましょう。
この土台作りが、結果として抜け毛の予防や髪のハリ・コシの維持に繋がります。
医薬品のシャンプーとの明確な違い
育毛シャンプーとしばしば混同されるものに、医薬品のシャンプーがあります。この二つには明確な違いがあります。
育毛シャンプー(医薬部外品)が「防止・衛生」を目的とし、頭皮環境を整えることに主眼を置くのに対し、医薬品のシャンプーは「治療」を目的としています。
例えば、脂漏性皮膚炎などの特定の頭皮疾患の治療のために、医師の診断のもとで処方されるケトコナゾール配合のシャンプーなどがこれにあたります。
医薬品は治療効果が認められている反面、副作用のリスクも伴うため、専門医の指導下での使用が必要です。
シャンプーの分類と目的
分類 | 主な目的 | 特徴 |
---|---|---|
一般化粧品 | 洗浄・美髪 | 髪や頭皮を清潔にし、見た目を美しく整える。 |
医薬部外品(育毛シャンプー) | 防止・衛生 | 有効成分により、フケ・かゆみ・抜け毛を防ぎ、頭皮環境を整える。 |
医薬品 | 治療 | 特定の疾患(脂漏性皮膚炎など)の治療を目的とする。医師の処方が必要。 |
頭皮環境を整えるという役割
畑に例えるなら、頭皮は土壌で、髪は作物です。良い作物を育てるためには、まず土壌を豊かに耕す必要があります。
育毛シャンプーの役割は、まさにこの「土壌を耕す」部分にあります。
硬くなった頭皮を柔らかくし、毛穴の詰まりの原因となる余分な皮脂や汚れを適切に取り除きます。そして、必要な潤いを保ち、乾燥や炎症から頭皮を守ります。
このような健やかな頭皮環境があってこそ、髪の成長サイクルが正常に働き、強く抜けにくい髪が育つのです。
育毛シャンプーは、日々のケアでこの土台を地道に整えていくための大切なアイテムと言えます。
女性の薄毛の主な原因と育毛シャンプーの立ち位置
女性の薄毛は、男性とは異なる多様な要因が複雑に絡み合って進行します。
ホルモンバランスの変化(FAGA)
女性の薄毛で最も代表的なものが、FAGA(女性男性型脱毛症)です。これは、女性ホルモンである「エストロゲン」が減少し、男性ホルモンが相対的に優位になるために引き起こされます。
特に更年期前後に多く見られますが、ストレスや生活習慣の乱れから若い世代でも起こり得ます。
エストロゲンは髪の成長を促進し、その期間を維持する働きがあるため、このホルモンが減少すると髪の成長期が短くなり、一本一本の髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまいます。
この結果、髪が細く弱々しくなり、全体のボリュームダウンや頭頂部の地肌の透けに繋がります。
生活習慣の乱れとストレス
私たちの髪は、日々の生活習慣を映し出す鏡のようなものです。
睡眠不足や栄養バランスの偏った食事、過度なダイエットは、髪の成長に必要な栄養が頭皮まで届きにくくなる原因となります。
また、精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を招きます。
血行が悪くなると髪の毛を作り出す毛母細胞の働きが低下し、健康な髪の育成を妨げてしまいます。
薄毛に繋がりやすい生活習慣
- 睡眠不足(6時間未満)
- インスタント食品や脂っこい食事中心の食生活
- 朝食を抜くなどの欠食
- 喫煙や過度な飲酒
頭皮の血行不良と栄養不足
髪の毛は、毛根部分にある毛母細胞が、毛細血管から栄養や酸素を受け取って細胞分裂を繰り返しながら成長します。
しかし、前述のホルモンバランスの変化や生活習慣の乱れ、ストレス、あるいは肩こりや冷え性などによって頭皮の血行が悪くなると毛母細胞に十分な栄養が届かなくなります。
栄養不足に陥った毛母細胞は活発に働けず、結果として細く弱い髪しか作れなくなったり、成長途中で抜けてしまったりするのです。
頭皮マッサージが推奨されるのは、この血行を促進する目的があります。
女性の薄毛の主な原因
原因カテゴリ | 具体的な要因 | 髪への影響 |
---|---|---|
ホルモンバランス | 加齢、出産、ストレスによる女性ホルモンの減少 | 髪の成長期が短縮し、髪が細くなる(軟毛化)。 |
生活習慣 | 睡眠不足、栄養の偏り、過度なダイエット | 髪の成長に必要な栄養が不足する。 |
頭皮環境 | 血行不良、乾燥、皮脂の過剰分泌、間違ったヘアケア | 毛母細胞の働きが低下し、健やかな髪が育ちにくくなる。 |
シャンプーが直接的な発毛効果を持たない理由
ここまで見てきたように、女性の薄毛の根本原因はホルモンバランスや血行不良といった体の内側の問題が大きく関わっています。
育毛シャンプーは頭皮という体の「外側」に働きかけるものであり、ホルモンバランスを整えたり、体の内部から栄養を補給したりできません。
そのため、シャンプーだけで直接的に新しい髪を生やす「発毛」効果を期待するのは難しいのです。
育毛シャンプーの役割は、あくまでこれらの要因によって引き起こされる頭皮環境の悪化(乾燥、炎症、毛穴の詰まりなど)を改善し、これ以上薄毛が進行しにくい状態、そして今ある髪が健やかに育つための環境を整えることにあります。
育毛シャンプーに期待できる本当の効果
「発毛はしない」と聞くと、育毛シャンプーは意味がないように感じるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
育毛シャンプーには、薄毛に悩む女性の頭皮にとって非常に重要な役割があります。
頭皮の洗浄と清浄化
シャンプーの最も基本的な役割は、頭皮と髪の汚れを落とすことです。育毛シャンプーは、この洗浄機能に特に配慮して作られています。
頭皮には、汗や皮脂、古い角質、そして外部からのホコリなどが付着しています。これらが毛穴に詰まると炎症を引き起こしたり、健康な髪の成長を妨げたりする原因となります。
育毛シャンプーは頭皮に必要な潤いを奪いすぎないマイルドな洗浄成分を使用しながら、これらの汚れをしっかりと除去し、毛穴を清潔に保つ効果が期待できます。
フケやかゆみの防止
フケやかゆみは、頭皮環境が悪化しているサインです。乾燥によって角質が剥がれやすくなったり、逆に皮脂が過剰に分泌されて雑菌が繁殖したりして起こります。
このような状態が続くと無意識に頭皮を掻いてしまい、さらに頭皮を傷つけて炎症を悪化させる悪循環に陥ります。
多くの育毛シャンプーには、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症成分や、フケの原因菌の増殖を抑えるピロクトンオラミンといった有効成分が配合されており、フケやかゆみを防いで頭皮を健やかな状態に保ちます。
頭皮の保湿と柔軟性の維持
健康な髪は、潤いのある柔らかい頭皮から生まれます。頭皮が乾燥するとバリア機能が低下して外部からの刺激を受けやすくなるだけでなく、硬くなって血行も悪くなりがちです。
育毛シャンプーにはセラミドやヒアルロン酸、コラーゲンといった保湿成分が豊富に含まれているものが多くあります。
これらの成分が洗浄によって失われがちな頭皮の水分を補い、潤いを保ちます。
潤いのある頭皮は柔軟性を取り戻し、血行が良い状態を維持しやすくなるため、髪への栄養供給にも良い影響を与えます。
育毛シャンプーの主な効果
期待できる効果 | 具体的な働き | 頭皮へのメリット |
---|---|---|
清浄効果 | 余分な皮脂や汚れ、古い角質を除去する。 | 毛穴の詰まりを防ぎ、炎症のリスクを低減する。 |
フケ・かゆみ防止 | 抗炎症成分や抗菌成分が頭皮のトラブルを抑える。 | 不快感をなくし、掻きむしりによるダメージを防ぐ。 |
保湿・柔軟化 | 保湿成分が頭皮の潤いを保ち、柔らかくする。 | バリア機能を高め、血行を促進しやすい状態に導く。 |
髪のハリ・コシの改善
育毛シャンプーは、頭皮だけでなく髪そのものにも良い影響を与えます。
加齢やダメージによって失われがちな髪のハリやコシをサポートする成分(加水分解ケラチンなど)や、髪の表面をコーティングして指通りを滑らかにする成分が含まれている製品もあります。
頭皮環境が整うと、根元からしっかりとした髪が育ちやすくなるのに加え、これらの補修・保護成分の働きによって髪全体のボリューム感がアップしたように感じられる効果が期待できます。
髪が扱いやすくなるため、スタイリングがしやすくなるというメリットもあります。
【成分チェック】女性向け育毛シャンプーで注目すべき有効成分
育毛シャンプーを選ぶ上で最も重要なのが、配合されている成分の確認です。
どのような成分が、どのような目的で配合されているのかを確認しておくと、ご自身の悩みに合った製品を見つけやすくなります。
頭皮の炎症を抑える成分
頭皮の赤みやかゆみ、フケといったトラブルは、軽度の炎症が原因であるケースが少なくありません。炎症が続くと頭皮環境が悪化し、抜け毛の原因にもなります。
このような炎症を穏やかに鎮めるために、抗炎症作用を持つ成分が配合されています。
代表的な成分は、甘草の根から抽出される「グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)」や、「アラントイン」などです。
肌が敏感な方や、頭皮にかゆみを感じやすい方は、これらの成分が配合されているかを確認すると良いでしょう。
代表的な抗炎症成分
成分名 | 主な由来 | 期待される作用 |
---|---|---|
グリチルリチン酸ジカリウム | 甘草(カンゾウ) | 優れた抗炎症作用で、頭皮の炎症やかゆみを抑える。 |
アラントイン | – | 抗炎症作用に加え、細胞の増殖を促進し組織の修復を助ける。 |
酢酸トコフェロール | ビタミンE誘導体 | 抗酸化作用と血行促進作用も併せ持つ。 |
血行を促進する成分
頭皮の血行は、髪の成長に欠かせない栄養を毛母細胞に届けるための重要なライフラインです。
血行不良は薄毛の大きな原因となるため、血流を促す成分は育毛シャンプーにおいて重要な役割を果たします。
植物由来の成分が多く用いられ、代表的なものに「センブリエキス」や「ニンジンエキス(オタネニンジン根エキス)」があります。
また、ビタミンE誘導体である「酢酸トコフェロール」も、末梢血管を広げて血行を促進する作用が知られています。
これらの成分は、頭皮マッサージと組み合わせるとより効果を発揮しやすくなります。
代表的な血行促進成分
成分名 | 主な由来 | 期待される作用 |
---|---|---|
センブリエキス | センブリ(植物) | 毛根の細胞分裂を活性化させ、血行を促進する。 |
ニンジンエキス | オタネニンジン(高麗人参) | サポニンを含み、血行促進や新陳代謝の活性化を助ける。 |
ナイアシンアミド | ビタミンB群の一種 | 血管を拡張し、頭皮の血流を改善する。 |
保湿・頭皮環境を整える成分
乾燥した頭皮はバリア機能が低下し、あらゆるトラブルの温床となります。適度な潤いを保つのは、健康な頭皮環境の基本です。
女性は男性に比べて皮脂の分泌量が少ない傾向にあるため、特に保湿が重要になります。
シャンプー選びでは、頭皮の水分を保持する働きのある保湿成分に注目しましょう。
注目の保湿成分
- セラミド
- ヒアルロン酸
- コラーゲン
- アミノ酸類(グリシン、セリンなど)
これらの成分は角質層の水分を繋ぎ止め、乾燥や外部刺激から頭皮を守ります。
特に乾燥肌や敏感肌の方は、これらの保湿成分が豊富に含まれたシャンプーを選ぶのがおすすめです。
皮脂の過剰分泌を抑える成分
一方で、頭皮のベタつきやニオイが気になる脂性肌(オイリー肌)の方もいます。
皮脂が過剰に分泌されると毛穴が詰まりやすくなったり、脂漏性皮膚炎などの原因になったりする場合があります。
そのような方は、皮脂の分泌をコントロールする働きのある成分が有効です。
例えば、「ビタミンB6(ピリドキシンHCl)」や、大豆由来の「ダイズ種子エキス」などには、過剰な皮脂分泌を抑制する効果が期待できます。
洗浄力が強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎると、かえって皮脂の分泌を促してしまうときもあるため、適切な洗浄力と皮脂コントロール成分のバランスが大切です。
育毛シャンプーの選び方で失敗しないためのポイント
数多くの育毛シャンプーの中から、自分に合った一本を見つけるのは簡単ではありません。
価格や知名度だけで選んでしまうと、かえって頭皮トラブルを招くときもあります。
アミノ酸系など洗浄成分の種類で選ぶ
シャンプーの品質を左右するのが、主成分である洗浄成分(界面活性剤)です。洗浄力が強すぎると頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥やバリア機能の低下を招きます。
特に女性のデリケートな頭皮には、マイルドな洗浄力のアミノ酸系洗浄成分がおすすめです。
成分表示で「ココイルグルタミン酸Na」や「ラウロイルメチルアラニンNa」といった表記があれば、アミノ酸系です。
一方で、「ラウレス硫酸Na」などの高級アルコール系は洗浄力が強い分、刺激に感じる方もいるため、乾燥肌や敏感肌の方は避けたほうが無難かもしれません。
主な洗浄成分の種類と特徴
洗浄成分の種類 | 特徴 | どんな人におすすめか |
---|---|---|
アミノ酸系 | 洗浄力がマイルドで、保湿性が高い。低刺激。 | 乾燥肌、敏感肌、頭皮トラブルが気になる方。 |
ベタイン系 | ベビーシャンプーにも使われるほど刺激が低い。 | 特に肌がデリケートな方、アミノ酸系でも刺激を感じる方。 |
高級アルコール系 | 泡立ちが良く洗浄力が高い。さっぱりとした洗い上がり。 | 脂性肌で、頭皮のベタつきが非常に気になる方(注意が必要)。 |
シリコンの有無とその影響
「ノンシリコン」という言葉をよく耳にしますが、シリコン(ジメチコンなど)が必ずしも悪いわけではありません。
シリコンは髪の表面をコーティングし、キューティクルを保護して指通りを滑らかにする役割があります。これにより、洗髪時の摩擦によるダメージを軽減できます。
一方で、シリコンが毛穴に詰まるのを懸念する声もありますが、現在の化粧品技術では、すすぎで洗い流せるように設計されているため過度に心配する必要はないでしょう。
ただし、髪にハリやコシが欲しい方や、ふんわりとした軽い仕上がりを好む方は、シリコンが入っていないノンシリコンタイプの方が満足感を得やすい場合があります。
ご自身の髪質や求める仕上がりに合わせて選ぶのが良いでしょう。
自分の頭皮タイプ(乾燥肌・脂性肌)に合わせる
育毛シャンプー選びは、自分の頭皮タイプを正しく理解することから始まります。
洗髪後、数時間で頭皮がカサついたり、かゆみを感じたりする方は「乾燥肌」の可能性が高いです。
このタイプの方は洗浄力がマイルドなアミノ酸系をベースに、セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が豊富に含まれた製品を選びましょう。
逆に、夕方になると髪がベタついたり、頭皮のニオイが気になったりする方は「脂性肌」かもしれません。
この場合はさっぱりとした洗い上がりのものを選びつつも、洗浄力が強すぎないアミノ酸系やベタイン系のシャンプーで皮脂コントロール成分が配合されたものが適しています。
香りや使用感も継続の鍵
育毛ケアは、毎日コツコツと続ける努力が何よりも大切です。そのためには、シャンプーの機能性だけでなく、香りや泡立ち、洗い上がりの質感といった使用感も重要な選択基準になります。
どんなに成分が良くても、香りが苦手だったり、泡立ちが悪くて洗った気がしなかったりすると使うのが億劫になってしまいます。
リラックスできる好きな香りのものや、使っていて心地よいと感じるものを選ぶと、毎日のシャンプータイムが前向きな時間になり、結果的にケアの継続に繋がります。
効果を最大限に引き出す正しいシャンプーの方法
せっかく自分に合った育毛シャンプーを選んでも、洗い方が間違っていては効果が半減してしまいます。
頭皮への負担を最小限に抑え、有効成分をしっかりと届けるための正しいシャンプー方法をマスターしましょう。毎日の習慣を見直すだけで、頭皮環境が大きく変わります。
シャンプー前のブラッシングと予洗い
シャンプーを付ける前に、まずは乾いた髪の状態でブラッシングを行います。髪の絡まりをほどいて洗髪中の抜け毛を減らすだけでなく、頭皮の汚れやフケを浮き上がらせて落ちやすくする効果があります。
次に、38度程度のぬるま湯で、1分から2分ほどかけて髪と頭皮を十分に濡らします。
これを「予洗い」と呼びますが、実はお湯だけで髪の汚れの7割程度は落ちると言われています。予洗いをしっかり行うとシャンプーの使用量を減らせるうえ、泡立ちが格段に良くなります。
指の腹を使った優しいマッサージ洗い
シャンプーを手のひらで軽く泡立ててから、髪全体に馴染ませます。このとき、爪を立ててゴシゴシ洗うのは絶対にやめましょう。頭皮が傷つき、炎症の原因となります。
使うのは「指の腹」です。生え際から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって頭皮を優しく揉みほぐすようにマッサージしながら洗います。
特に血行が滞りやすい頭頂部や側頭部は、少し時間をかけて丁寧に行うと良いでしょう。このマッサージが、頭皮の血行促進に繋がります。
正しいシャンプーの手順
手順 | ポイント | 目的 |
---|---|---|
1. ブラッシング | 乾いた髪を毛先から優しくとかす。 | 汚れを浮かせ、髪の絡まりを防ぐ。 |
2. 予洗い | ぬるま湯で1〜2分、頭皮までしっかり濡らす。 | 汚れの大部分を落とし、泡立ちを良くする。 |
3. 洗浄 | 指の腹で頭皮をマッサージするように洗う。 | 頭皮を傷つけず、血行を促進する。 |
4. すすぎ | シャンプーの倍の時間をかけて丁寧に洗い流す。 | すすぎ残しによる頭皮トラブルを防ぐ。 |
すすぎ残しがないように丁寧に洗い流す
シャンプーの成分が頭皮に残ってしまうと、かゆみやフケ、毛穴の詰まりといったトラブルの原因になります。
すすぎは「もう十分かな」と思ってから、さらに1分ほど続けるくらいの意識が大切です。
特に、髪の生え際や耳の後ろ、襟足はすすぎ残しが多い部分なので、意識してシャワーを当てましょう。
シャワーヘッドを頭皮に近づけ、指で髪をかき分けながら、ぬめり感が完全になくなるまでしっかりと洗い流してください。
洗髪後の素早い乾燥と保湿ケア
濡れた髪はキューティクルが開いて非常にデリケートな状態です。また、濡れたままの頭皮は雑菌が繁殖しやすく、ニオイやかゆみの原因にもなります。
洗髪後は、まず吸水性の高いタオルで髪を叩くように優しく水分を拭き取ります(タオルドライ)。ゴシゴシ擦るのは厳禁です。
その後、なるべく早くドライヤーで乾かしましょう。ドライヤーは頭皮から20cmほど離し、同じ場所に熱が集中しないように動かしながら、根元から先に乾かすのがポイントです。
8割ほど乾いたら冷風に切り替えて仕上げると、キューティクルが引き締まり髪にツヤが出ます。
乾燥が気になる場合は、頭皮用の保湿ローションなどでケアを行うと、より万全です。
育毛シャンプーだけで薄毛は改善しない?限界と専門治療の必要性
育毛シャンプーでのセルフケアは、薄毛対策の基本としてとても重要です。しかし、シャンプーだけで全ての悩みが解決するわけではありません。
育毛シャンプーの限界を理解し、必要に応じて専門的な治療へと目を向ける勇気も大切です。
育毛シャンプーはあくまで「頭皮ケア」の一環
これまで繰り返し述べてきたように、育毛シャンプーの役割は「発毛」ではなく、髪が育つための「土台(頭皮環境)作り」です。
畑の土壌を整えることはできても、種を蒔いたり、発芽を直接促したりすることはできません。
軽度の抜け毛や、頭皮の乾燥・ベタつきといったトラブルの予防・改善には効果が期待できますが、すでに進行してしまった薄毛(FAGAなど)を元の状態に戻す力はありません。
育毛シャンプーは、あくまで薄毛の進行を緩やかにし、これからの髪を健やかに保つための「守りのケア」と位置づけるのが適切です。
発毛を実感したいなら医学的根拠のある治療を
もし、「抜け毛を減らすだけでなく、新しい髪を生やしたい」「失われたボリュームを取り戻したい」と願うのであれば、医学的根拠に基づいた「攻めのケア」、すなわち専門クリニックでの治療を選択肢に入れる必要があります。
女性の薄毛治療では、主にミノキシジル外用薬やスピロノラクトン内服薬、あるいは注入治療などが用いられます。
これらは、毛母細胞に直接働きかけて発毛を促したり、薄毛の原因となるホルモンの影響を抑制したりと、科学的に効果が証明されている治療法です。
セルフケアでは届かない領域に、医学の力で働きかけられます。
育毛シャンプーとクリニック治療の比較
項目 | 育毛シャンプー(医薬部外品) | クリニックでの専門治療(医薬品など) |
---|---|---|
目的 | 頭皮環境の改善、抜け毛予防(守りのケア) | 発毛促進、薄毛の進行抑制(攻めのケア) |
アプローチ | 頭皮の洗浄、保湿、血行促進サポート | ホルモンへの作用、毛母細胞の活性化 |
効果 | フケ・かゆみの抑制、髪のハリ・コシ改善 | 医学的根拠のある発毛効果 |
クリニックでのカウンセリングの重要性
薄毛の原因は一人ひとり異なります。自己判断でケアを続けても、原因に合っていなければ十分な効果は得られません。
専門クリニックでは、医師が診察や検査を通して薄毛の根本原因を正確に診断します。その上で、あなたの生活スタイルや希望に合わせた治療計画を提案します。
一人で悩み続けるのは、精神的にも大きな負担です。専門家に相談すると現状を客観的に把握でき、今後の明確な道筋が見えてくるため、心が軽くなるはずです。
まずはカウンセリングで、ご自身の状態を知ることから始めてみましょう。
よくある質問(Q&A)
さいごに、育毛シャンプーに関して患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 育毛シャンプーはどのくらいで効果が出ますか?
-
育毛シャンプーは、頭皮環境を健やかに整えるためのものですので、薬のようにすぐに目に見える効果が現れるわけではありません。
フケやかゆみといった頭皮トラブルであれば、使用開始から数週間で改善を感じる方もいます。
しかし、抜け毛の予防や髪のハリ・コシといった効果を実感するには、髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を考慮すると、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続して使用する必要があります。
焦らず、日々のケアの一環として根気よく続けていきましょう。
- 家族(男性)と同じ育毛シャンプーを使っても良いですか?
-
男性と女性では、薄毛の原因や頭皮の特性が異なります。
男性の薄毛は皮脂の過剰分泌を伴うケースが多く、そのため男性向けの育毛シャンプーは洗浄力が高く、さっぱりとした使用感のものが主流です。
女性がこれを使用すると、必要な皮脂まで奪われ、頭皮の乾燥を招いてしまう可能性があります。
女性は皮脂量が比較的少なく乾燥しやすいため、保湿成分が豊富に配合された、よりマイルドな洗浄力の女性向け製品を選ぶのがおすすめです。
- 高価なシャンプーほど効果がありますか?
-
価格と効果は必ずしも比例しません。高価な製品には希少な成分が配合されていたり、研究開発にコストがかかっていたりする場合がありますが、最も大切なのは「自分の頭皮タイプや悩みに合っているか」です。
高価なシャンプーでも配合されている成分が自分の肌に合わなければ、効果がないばかりか、かえってトラブルを引き起こすときもあります。
価格に惑わされず、成分や洗浄剤の種類をしっかりと確認し、ご自身に合ったものを選ぶのが賢明です。
- シャンプーをやめたらまた薄毛になりますか?
-
育毛シャンプーの使用をやめると、頭皮環境は以前の状態に戻っていく可能性があります。
例えば、シャンプーによってフケやかゆみが抑えられていた場合、使用を中止すれば再発することが考えられます。
育毛シャンプーはあくまで対症療法的なケアであり、薄毛の根本原因を治すものではありません。そのため、健やかな頭皮環境を維持するためには、継続的な使用が望ましいと言えます。
もし薄毛の進行が止まらない、あるいは改善が見られない場合は、シャンプーだけに頼るのではなく、専門クリニックでの根本的な治療を検討してみると良いでしょう。
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