ラウリル硫酸ナトリウム不使用シャンプーで女性の薄毛と向き合う方法

ラウリル硫酸ナトリウム不使用シャンプーで女性の薄毛と向き合う方法

女性の薄毛や抜け毛の原因は、生活習慣やホルモンバランスなど多岐にわたりますが、毎日使うシャンプーが頭皮環境に大きな影響を与えていることを見過ごせません。

なかでも市販のシャンプーに多く含まれる「ラウリル硫酸ナトリウム」は、その高い洗浄力から頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥や刺激の一因となる可能性があります。

この記事では、ラウリル硫酸ナトリウムが女性の頭皮や髪に与える影響を詳しく解説し、ご自身の髪と頭皮をいたわるためのシャンプー選びについて、専門的な知見からお伝えします。

目次

ラウリル硫酸ナトリウムとは?シャンプーによく使われる理由

シャンプーの成分表示で「ラウリル硫酸Na」という文字を見たことのある方も多いのではないでしょうか。

これがラウリル硫酸ナトリウムです。多くの製品に採用される背景には、洗浄剤としての優れた特性があります。

界面活性剤としての役割

ラウリル硫酸ナトリウムは、陰イオン(アニオン)界面活性剤の一種です。

水と油のように本来混じり合わないものの境界面に作用し、性質を変化させる物質を界面活性剤と呼びます。

この働きにより、頭皮の皮脂や汚れを水で洗い流せるようにします。

シャンプーにとって、汚れを落とすという基本的な機能を実現するために重要な成分です。

高い洗浄力と豊かな泡立ち

この成分の最大の特徴は、非常に高い洗浄力と、素早く豊かな泡を立てる能力にあります。

少量でもしっかりと泡立つため、洗髪時に「しっかり洗えている」という満足感を得やすいです。

また、洗い上がりがさっぱりするため、特に皮脂の多い方や整髪料を多用する方に好まれる傾向があります。

主な洗浄成分の特性比較

洗浄成分の種類特徴主な用途
高級アルコール系(ラウリル硫酸Naなど)洗浄力が非常に高い、泡立ちが良い、安価市販のシャンプー、ボディソープ
アミノ酸系洗浄力が穏やか、保湿性が高いサロン専売品、敏感肌用シャンプー
ベタイン系低刺激、ベビーシャンプーにも使用刺激を抑える補助成分として配合

なぜ多くの市販シャンプーに含まれるのか

ラウリル硫酸ナトリウムが広く普及している理由は、主に3つあります。

第一に、石油などを原料として安価に大量生産できるため、製品価格を抑えられます。

第二に、その優れた洗浄力と泡立ちが、多くの消費者にとって「良いシャンプー」の指標と認識されてきた歴史があります。

そして第三に、安定した品質を保ちやすいという製造上の利点も挙げられます。

これらの理由から多くのメーカーが採用し、ドラッグストアなどで手に入る製品の多くに含まれています。

なぜ女性の薄毛にラウリル硫酸ナトリウムが注目されるのか

男性と女性では、薄毛の悩みにつながる要因や頭皮の特性が異なります。

特に女性の場合、ラウリル硫酸ナトリウムの持つ強力な洗浄力が、デリケートな頭皮環境のバランスを崩すきっかけになるケースがあるため注意が必要です。

女性のデリケートな頭皮環境

女性の皮膚は男性に比べて一般的に薄く、外部からの刺激に敏感です。

また、周期的なホルモンバランスの変化は、皮脂の分泌量や頭皮の水分量にも影響を与えます。

このようなデリケートな状態の頭皮に対して強力な洗浄成分を毎日使用すると、必要以上の負担をかける可能性があります。

過剰な皮脂除去が招くトラブル

健康な頭皮は、皮脂が作る「皮脂膜」によって保護されています。この皮脂膜は水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激から頭皮を守るバリアの役割を担います。

しかし、ラウリル硫酸ナトリウムのような強力な洗浄剤は、この大切な皮脂膜まで根こそぎ洗い流してしまう場合があります。

皮脂を失った頭皮はそれを補おうとしてかえって皮脂を過剰に分泌するようになり、毛穴の詰まりやべたつきの原因になるケースもあります。

頭皮の乾燥が引き起こす主なトラブル

トラブル状態考えられる原因
フケ頭皮の角質が細かく剥がれ落ちるターンオーバーの乱れ、乾燥
かゆみ外部刺激に対する知覚神経の反応バリア機能の低下、炎症
赤み毛細血管が透けて見える、または炎症物理的・化学的刺激

頭皮の乾燥とバリア機能の低下

皮脂膜を失った頭皮は水分が保持できなくなり、乾燥状態に陥ります。

乾燥した頭皮はバリア機能が著しく低下し、紫外線やアレルギー物質、雑菌などの外部刺激を直接受けやすいです。

この刺激が炎症を引き起こし、かゆみやフケ、さらには健康な髪の成長を妨げる要因となり、抜け毛や薄毛につながる負の循環を生み出します。

カラーやパーマを繰り返した髪への影響

おしゃれを楽しむためにヘアカラーやパーマを定期的に行っている女性も多いでしょう。

これらの施術を受けた髪や頭皮は、ただでさえダメージを受け、敏感になっています。

そこに強力な洗浄成分が加わると、髪の内部にあるタンパク質や脂質が流出しやすくなり、パサつきや切れ毛を助長します。

また、キューティクルを開きやすくするため、ヘアカラーの色素の流出を早める一因にもなります。

ラウリル硫酸ナトリウムが頭皮と髪に与える具体的な影響

この洗浄成分が持つ特性は、短期的には爽快感を与えるかもしれませんが、長期的には頭皮や髪にとって望ましくない影響を及ぼす可能性があります。

具体的にどのようなことが起こるのかを見ていきましょう。

頭皮の乾燥、かゆみ、フケ

前述の通り、最も代表的な影響が頭皮の乾燥です。必要な潤いまで奪われた頭皮は、角質層がめくれやすくなり、乾いたフケ(粃糠性脱毛症)の原因となります。

また、バリア機能が低下するため、少しの刺激にも過敏に反応してかゆみを感じるようになります。

かゆいからといって爪を立てて掻いてしまうと、頭皮を傷つけ、さらなる炎症や抜け毛を招く危険性があります。

ラウリル硫酸ナトリウムによる髪への影響

影響内容
タンパク質の流出髪の主成分であるケラチンタンパク質を破壊・流出させ、ハリやコシを失わせる。
キューティクルの損傷髪の表面を覆うキューティクルを剥がれやすくし、ツヤの低下や手触りの悪化を招く。
水分の蒸発髪内部の水分が蒸発しやすくなり、パサつきやごわつき、切れ毛の原因となる。

髪のタンパク質変性とキューティクルの損傷

髪の毛の約80%はタンパク質で構成されています。ラウリル硫酸ナトリウムは、このタンパク質を変性させる(構造を変化させる)作用を持つことが知られています。

この作用により髪の内部がスカスカになり、ハリやコシが失われてしまいます。

同時に、髪の表面をうろこ状に覆っているキューティクルにもダメージを与え、滑らかさやツヤが失われる原因となります。

ヘアカラーの色落ちを早める可能性

洗浄力が強いということは、汚れだけでなく、髪内部に定着させた色素も洗い流しやすいということです。

特に、ヘアカラー後の髪はキューティクルが開きやすい状態にあるため、ラウリル硫酸ナトリウム配合のシャンプーを使うと染料の流出が促進されます。

せっかく綺麗に染めた髪色を長持ちさせたいのであれば、より洗浄力の穏やかなシャンプーを選ぶことが大切です。

ラウリル硫酸ナトリウム不使用シャンプーの選び方

では、実際にラウリル硫酸ナトリウムを含まないシャンプーは、どのように選べば良いのでしょうか。

成分表示を正しく理解し、ご自身の状態に合ったものを見つけるためのポイントを解説します。

成分表示の見方と代替成分

日本の化粧品は、配合量の多い順に成分を記載する決まりがあります。

シャンプーの場合、通常は「水」の次に洗浄成分が記載されています。ここで「ラウリル硫酸Na」や「ラウレス硫酸Na」といった表記がないかを確認します。

これらの代わりに、より穏やかな洗浄成分が使われているものを選びましょう。

  • アミノ酸系洗浄成分
  • ベタイン系洗浄成分
  • タウリン系洗浄成分

代表的なアミノ酸系洗浄成分

成分名(表示例)特徴
ココイルグルタミン酸Naしっとりとした洗い上がり。コンディショニング効果も。
ラウロイルメチルアラニンNa適度な洗浄力とさっぱり感。比較的泡立ちが良い。
ココイルメチルタウリンNaきめ細かくクリーミーな泡。指通りを良くする。

自分の髪質や頭皮の状態に合わせる

ラウリル硫酸ナトリウム不使用シャンプーと一括りにせず、その中で自分の状態に合ったものを選ぶことが重要です。

例えば、頭皮の乾燥が特に気になる方は保湿成分(グリセリン、セラミド、ヒアルロン酸など)が豊富に含まれているものを、髪のダメージが気になる方は補修成分(加水分解ケラチン、ペリセアなど)が配合されているものを選ぶと良いでしょう。

洗い上がりの好みで選ぶ(しっとりorさっぱり)

アミノ酸系シャンプーの中にも、洗い上がりの質感は様々です。

一般的に「ココイルグルタミン酸」系の成分はしっとりとまとまりやすく、「ラウロイルメチルアラニン」系の成分は比較的さっぱりとした洗い上がりになります。

成分表示や製品説明を参考に、ご自身の好みの仕上がり感を考えて選ぶのも一つの方法です。

不使用シャンプーへの切り替えで注意したいこと

これまで強力な洗浄力のシャンプーに慣れていた方が、穏やかな洗浄成分のシャンプーに切り替えると、使い始めに戸惑う場合があります。

事前に注意点を知っておくと、スムーズに移行できるでしょう。

使い始めに感じるかもしれない「きしみ」

ラウリル硫酸ナトリウム配合のシャンプーには、指通りを良くするためのシリコンなどのコーティング剤が多く含まれているものがあります。

不使用シャンプーに切り替えるとこれらのコーティング剤が洗い流され、髪本来の「素髪」の状態に戻るため、一時的にきしみやごわつきを感じる場合があります。

これは髪が傷んだのではなく、リセットされている過程と捉えましょう。

泡立ちの違いと正しい洗い方

穏やかな洗浄成分のシャンプーは、一般的に泡立ちが控えめです。泡が少ないと洗えた気がしないかもしれませんが、洗浄力と泡の量は必ずしも比例しません。

洗う前にお湯でしっかりと予洗いをして頭皮と髪の表面の汚れを落としておくと、シャンプーの泡立ちが格段に良くなります。

泡で髪をこするのではなく、指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。

シャンプー切り替え時の変化(個人差あり)

期間感じやすい変化ポイント
1日~1週間泡立ちの少なさ、きしみ、物足りなさ予洗いを丁寧に行う
1週間~1ヶ月きしみの緩和、頭皮のかゆみの軽減正しい洗い方を継続する
1ヶ月以降髪のまとまり、自然なツヤ、頭皮環境の安定髪本来の状態に近づく

効果を実感するまでの期間

頭皮環境が改善され、その結果として髪の状態に変化が現れるまでには、ある程度の時間が必要です。

頭皮のターンオーバー(生まれ変わり)の周期は約28日と言われていますが、年齢や生活習慣によっても異なります。

少なくとも1ヶ月から3ヶ月は同じシャンプーを継続して使用し、頭皮と髪の変化をじっくりと観察すると良いです。

シャンプーと合わせて行いたい頭皮ケア習慣

良いシャンプーを選ぶのは、健康な頭皮環境への第一歩です。さらに、日々の少しの工夫をプラスすると、その効果を高められます。

今日から始められる簡単なケア習慣を見ていきましょう。

正しいシャンプーの手順

ただ洗うのではなく、頭皮をいたわる手順を意識することが重要です。

まず、シャンプー前にブラッシングをして髪の絡まりを解き、汚れを浮かせます。次に、38℃程度のぬるま湯で1分以上かけてしっかりと予洗いします。

シャンプーは手のひらで泡立ててから髪に乗せ、指の腹で頭皮全体を優しくマッサージするように洗います。

すすぎは、洗い残しがないように、シャワーで時間をかけて丁寧に行いましょう。

  • シャンプー前のブラッシング
  • ぬるま湯での十分な予洗い
  • 指の腹を使ったマッサージ洗い
  • 時間をかけた丁寧なすすぎ

頭皮マッサージの基本的な方法

シャンプー中や、タオルドライ後の清潔な頭皮に行うマッサージは血行を促進し、頭皮を柔らかく保つのに有効です。

硬くなった頭皮は血行不良を招き、髪に十分な栄養が届きにくくなります。

指の腹を使い、「気持ち良い」と感じる程度の力で、頭皮全体をゆっくりと動かすように揉みほぐしましょう。

簡単セルフ頭皮マッサージ

部位方法
側頭部両手の指の腹をこめかみ付近に当て、円を描くように引き上げる。
頭頂部両手で頭を包み込むようにし、頭頂部に向かって優しく圧をかける。
後頭部親指を首の付け根に固定し、他の指で後頭部全体を揉みほぐす。

髪と頭皮に良い生活習慣

健やかな髪は、体の内側からのケアも欠かせません。バランスの取れた食事や質の良い睡眠、適度な運動は全身の血行を良くし、髪の成長に必要な栄養素を頭皮に届ける土台となります。

なかでも髪の主成分であるタンパク質や、その働きを助けるビタミン、ミネラルを意識して摂取することが大切です。

髪の成長に関わる主な栄養素

栄養素役割多く含まれる食品
タンパク質髪の主成分肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を促す豚肉、うなぎ、玄米

女性の薄毛に関するよくある質問(Q&A)

さいごに、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

不使用シャンプーを使えば髪は必ず増えますか?

ラウリル硫酸ナトリウム不使用シャンプーはあくまでも頭皮環境を健やかに保ち、これ以上の抜け毛を防いだり、健康な髪が育ちやすい土台を整えたりするためのものです。

シャンプーを変えるだけで発毛を保証するものではありません。

薄毛の原因は様々であり、AGA(女性男性型脱毛症)など、医学的な治療が必要な場合もあります。

シャンプーは大切なケアの一環ですが、それだけで解決しない場合は専門医に相談しましょう。

家族(男性)と同じシャンプーを使っても良いですか?

男性と女性では皮脂の分泌量や頭皮の状態が異なるため、必ずしも同じシャンプーが合うとは限りません。

一般的に男性向けのシャンプーは、豊富な皮脂を洗い流すために洗浄力が高く、清涼感を重視した製品が多い傾向にあります。

女性のデリケートな頭皮には刺激が強すぎる場合があるため、ご自身の頭皮や髪の状態に合わせた、女性向けの製品を選ぶのがおすすめです。

食生活で気をつけることはありますか?

健やかな髪を育むためには、バランスの取れた食事が基本です。

髪の主成分である良質な「タンパク質」(肉、魚、大豆製品)、タンパク質の合成を助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー)、頭皮の血行を促進する「ビタミンE」(ナッツ類、アボカド)、新陳代謝を活発にする「ビタミンB群」(豚肉、レバー)などを意識的に摂ると良いでしょう。

過度なダイエットや偏った食事は、髪への栄養不足を招くため避けるべきです。

効果がない場合、どのタイミングでクリニックに相談すべきですか?

セルフケアを3ヶ月〜半年ほど続けても、抜け毛が減らない、薄毛が進行しているように感じる、あるいは頭皮のかゆみや赤みなどのトラブルが改善しない場合は、一度専門クリニックに相談することをおすすめします。

自己判断でケアを続けるとかえって症状が悪化する可能性もあります。専門医による的確な診断を受けると、ご自身の状態に合った正しい対処法が分かるでしょう。

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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