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女性の薄毛と亜鉛の関係|効果的なサプリメント選びと摂取法

女性の薄毛と亜鉛の関係|効果的なサプリメント選びと摂取法

女性の薄毛の悩みは切実な悩みに発展しやすく、その原因は多岐にわたります。

その中でも、栄養素の不足、「亜鉛」の欠乏が髪の健康に深く関わっているケースがあります。

この記事では、なぜ亜鉛が女性の髪にとって重要なのか、その働きから、食事での効果的な摂り方、そして自分に合ったサプリメントの選び方までを詳しく解説します。

目次

なぜ女性の薄毛に亜鉛が注目されるのか

亜鉛は、私たちの体内でタンパク質の合成や細胞分裂など、生命維持に欠かせない多様な働きを担うミネラルです。

特に髪の健康との関わりは深く、不足すると薄毛や抜け毛の直接的な原因になる場合があります。

ここでは、亜鉛が髪に与える具体的な影響を3つの側面から見ていきましょう。

髪の主成分ケラチンの合成を助ける

髪の毛の約90%は、「ケラチン」というタンパク質で構成されています。亜鉛は食事から摂取したアミノ酸をケラチンへと再合成する際に、重要な役割を果たします。

体内の亜鉛が不足すると、この合成作業が滞り、新しく生えてくる髪が細くなったり弱くなったりする可能性があります。

丈夫で美しい髪を育む土台作りには、十分な亜鉛が必要です。

髪の健康を支える亜鉛の働き

働き髪への影響不足した場合
ケラチンの合成髪の主成分を作り出す髪が細くなる、弱くなる
細胞分裂の促進毛母細胞の活動を支える髪の成長が遅れる
抗酸化作用頭皮の老化を防ぐ頭皮環境が悪化する

ヘアサイクルを正常に保つ働き

髪には「成長期」「退行期」「休止期」という一連のヘアサイクルがあります。

健康な髪は数年間続く成長期を経て自然に抜け落ち、また新しい髪が生えてきます。

亜鉛は、毛根にある毛母細胞の分裂を活発にし、このヘアサイクルを正常に保つために重要な働きをします。

亜鉛が不足すると成長期が短くなり、髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまう「早期退行期」を招き、結果として抜け毛の増加や薄毛につながりやすいです。

ホルモンバランスへの影響

女性の薄毛の原因の一つに、ホルモンバランスの乱れが挙げられます。亜鉛は、女性ホルモンの働きをサポートする役割も担っています。

また、薄毛を引き起こす男性ホルモンの一種、ジヒドロテストステロン(DHT)を生成する酵素「5αリダクターゼ」の働きを抑制する作用も報告されています。

これにより、亜鉛はホルモンの観点からも女性の髪の健康維持に貢献していると考えられます。

亜鉛不足が引き起こす髪へのサイン

亜鉛不足は体にさまざまなサインとして現れますが、特に髪や爪、肌といった新陳代謝が活発な部分に影響が出やすい特徴があります。

ご自身の状態に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

抜け毛の増加と髪質の変化

シャンプーやブラッシングの際に、以前よりも抜け毛が増えたと感じる場合、亜鉛不足が一因かもしれません。

ヘアサイクルが乱れて休止期に入る髪の割合が増えると、抜け毛が目立つようになります。

また、ケラチンの合成がうまくいかないため髪全体のハリやコシがなくなり、細く弱々しい印象に変わる方もいます。

髪の成長が遅くなる

「美容院に行く頻度が減った」「髪がなかなか伸びない」と感じるときも注意が必要です。

これは、毛母細胞の分裂が滞り、髪が成長するスピードが低下しているサインかもしれません。

髪の成長を支える土台となる毛根の活動が、亜鉛不足によって鈍くなっている可能性があります。

頭皮環境の悪化

亜鉛には、皮膚の健康を保つ働きもあります。不足すると頭皮の乾燥やかゆみ、フケといったトラブルが起こりやすくなります。

頭皮は髪を育む土壌です。この土壌の環境が悪化すると健康な髪は育ちにくくなり、抜け毛や薄毛をさらに進行させる原因となります。

亜鉛不足が示す体のサイン

部位主なサイン詳細
抜け毛、枝毛、切れ毛髪質が弱くなり、ヘアサイクルが乱れる。
白い斑点、割れやすい爪の主成分もケラチンのため影響が出やすい。
肌荒れ、皮膚炎皮膚のターンオーバーが乱れ、治りが遅くなる。

髪以外にも、爪や肌に亜鉛不足のサインが出ていないかチェックしてみましょう。

あなたの食生活は大丈夫?亜鉛不足度セルフチェック

現代の食生活では、意識しないと亜鉛が不足しがちです。

特に女性は、ダイエットや偏食によって必要量を満たせていないケースが多く見られます。

食習慣からみる亜鉛不足チェック

以下の項目に当てはまるものが多いほど、亜鉛が不足している可能性があります。

  • 加工食品やインスタント食品をよく食べる
  • 極端な食事制限によるダイエットをしたことがある
  • 外食やコンビニ食が中心である
  • 肉や魚をあまり食べない菜食主義に近い
  • 日常的にお酒を飲む習慣がある

加工食品やインスタント食品が多い

加工食品の製造過程で使われるリン酸塩などの食品添加物は、亜鉛の吸収を妨げることが知られています。

手軽さから利用が増えがちなレトルト食品やインスタント麺、スナック菓子などに偏った食生活は、亜鉛不足のリスクを高めます。

極端なダイエット経験がある

食事量を極端に減らすダイエットは、カロリーだけでなく、亜鉛をはじめとするミネラルの摂取量も大幅に減少させます。

肉類を完全に避けるようなダイエットは、吸収率の高い動物性食品からの亜鉛供給が断たれるため、深刻な亜鉛不足に陥りやすいです。

菜食中心の食生活

健康志向から野菜中心の食生活を送る方もいますが、注意が必要です。

豆類や穀類などの植物性食品にも亜鉛は含まれますが、「フィチン酸」という成分が亜鉛と結合し、体内への吸収を妨げます。

そのため、動物性食品を摂る場合に比べて、より多くの量を摂取する工夫が大切になります。

食事から亜鉛を効率よく摂る方法

亜鉛不足を解消する基本は、毎日の食事の見直しです。

ここでは、亜鉛を多く含む食材や、その吸収率を高めるための食べ合わせについて見ていきましょう。

亜鉛を豊富に含む食材

亜鉛は、肉類や魚介類、種実類など幅広い食品に含まれています。なかでも牡蠣は亜鉛の含有量が突出して多いことで有名です。

日常的に取り入れやすい食品を意識して選ぶと継続しやすいです。

亜鉛を多く含む食品

食品カテゴリー代表的な食品特徴
魚介類牡蠣、うなぎ、いわし特に牡蠣は含有量が非常に多い。
肉類牛肉(特に赤身)、豚レバー動物性タンパク質と共に効率よく摂取できる。
種実類・豆類カシューナッツ、高野豆腐、納豆間食や副菜として取り入れやすい。

吸収率を高める栄養素との組み合わせ

亜鉛は、一緒に摂る栄養素によって吸収率が変わります。

効率よく体内に取り込むためには、食べ合わせを工夫しましょう。

亜鉛の吸収をサポートする栄養素

栄養素代表的な食品働き
ビタミンCレモン、ピーマン、ブロッコリー亜鉛を吸収しやすい形に変える。
クエン酸梅干し、酢、柑橘類亜鉛を包み込み、吸収を助ける(キレート作用)。
動物性タンパク質肉、魚、卵亜鉛の吸収を促進する。

例えば、牡蠣にレモンを搾って食べるのは、味の相性だけでなく、ビタミンCが亜鉛の吸収を高めるという点でも理にかなった食べ方です。

牛肉とブロッコリーを一緒に炒めるなど、日々の献立で意識してみましょう。

吸収を妨げる成分と食べ方の注意点

一方で、亜鉛の吸収を邪魔する成分もあります。

これらの成分を多く含む食品を食べる際は、少し工夫が必要です。

亜鉛の吸収を妨げる主な成分

成分多く含まれる食品対策
フィチン酸玄米、豆類、ごま水に浸す、発酵させる(納豆など)ことで働きが弱まる。
タンニンコーヒー、緑茶、紅茶食事中や食後すぐの摂取は避ける。

コーヒーや緑茶を飲む習慣がある方は、食事と時間をずらして(食後30分~1時間程度あける)飲むように心がけるだけで、亜鉛の吸収率低下を防げます。

女性のための亜鉛サプリメント選びのポイント

食事だけで十分な亜鉛を摂るのが難しいときや、すでに不足が明らかな場合は、サプリメントの活用も有効な選択肢です。

しかし、市場には多くの製品があり、どれを選べば良いか迷う方も多いでしょう。

ここでは、女性が亜鉛サプリを選ぶ際の3つのポイントを紹介します。

サプリメントの種類と特徴

亜鉛サプリメントに使われる原料にはいくつかの種類があり、それぞれ吸収率や特徴が異なります。

自分の体質や目的に合ったものを選びましょう。

主な亜鉛サプリメントの種類

種類特徴向いている方
グルコン酸亜鉛最も一般的で安価。吸収率は比較的穏やか。初めて試す方、コストを抑えたい方。
キレート亜鉛アミノ酸でコーティングされ、吸収率が高い。胃腸が弱い方、効率を重視する方。
酵母亜鉛酵母に取り込ませた自然な形で、吸収が穏やか。自然由来のものを好む方、添加物が気になる方。

含有量と吸収率で選ぶ

製品の裏面に記載されている「亜鉛含有量」を確認しましょう。日本の成人女性の亜鉛推奨摂取量は1日8mgです。

食事で不足する分を補うのが基本なので、10mg~15mg程度の含有量のものから始めるのが一般的です。

ただし、前述の通り種類によって吸収率が異なるため、単純な含有量だけで比較するのではなく、吸収率の高いキレート亜鉛などを選ぶのも一つの方法です。

添加物や品質にも目を向ける

サプリメントは毎日体に入れるものなので、品質も重要です。

錠剤を固めるための賦形剤や着色料、甘味料などが過剰に含まれていないか、成分表示を確認しましょう。

また、品質管理基準(GMP認定工場で製造されているかなど)を公開しているメーカーの製品は、信頼性が高いと言えます。

サプリだけでは不十分?亜鉛の効果を最大限に引き出す生活習慣

亜鉛サプリを飲み始めたからといって、すぐに髪の問題が解決するわけではありません。

亜鉛の効果を実感するためには、栄養素を「消費」する要因を減らし、「吸収」を高める体内環境を整える習慣が大切です。

ストレス管理が亜鉛の消費を抑える鍵

強いストレスを感じると、体はそれに対抗するために多くの亜鉛を消費します。

仕事や家庭の悩み、人間関係などで慢性的なストレスを抱えていると、せっかく食事やサプリで亜鉛を補っても髪に届く前に使い果たされてしまうのです。

自分なりのリラックス法を見つけ、意識的に心と体を休ませる時間を作ると、結果的に髪への栄養供給につながります。

睡眠の質が髪の成長を左右する

髪は、私たちが眠っている間に成長します。なかでも入眠後最初に訪れる深いノンレム睡眠中に成長ホルモンが最も多く分泌され、毛母細胞の分裂を促します。

睡眠不足や質の悪い睡眠は、この大切な成長時間を奪ってしまいます。

寝る前のスマートフォン操作を控える、寝室の環境を整えるなど、質の良い睡眠を確保する工夫は亜鉛の効果を高める上で非常に重要です。

腸内環境を整えて栄養吸収をサポートする

どんなに良い栄養素を摂っても、それを吸収する腸が健康でなければ意味がありません。

腸内環境が乱れていると、亜鉛をはじめとするミネラルの吸収率が低下します。

日頃から発酵食品や食物繊維を積極的に摂り、腸内の善玉菌を増やすように心がけましょう。

  • ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品
  • 海藻類、きのこ類、野菜などの食物繊維

見落としがちな鉄分との関係

特に女性の薄毛において、亜鉛と並んで見過ごせないのが「鉄分」の不足です。

月経がある女性は鉄分が不足しやすく、体内に貯蔵されている鉄(フェリチン)が欠乏している「隠れ貧血」の方も少なくありません。

鉄分は頭皮へ酸素を運ぶヘモグロビンの材料であり、不足すると毛根が酸欠・栄養不足状態に陥ります。

亜鉛と鉄分は、どちらも髪の健康に欠かせない車の両輪のような存在です。亜鉛を補っても改善が見られない場合は、鉄分不足も疑ってみる視点が大切です。

クリニックでの血液検査などで、ご自身の状態を正確に把握するのがおすすめです。

亜鉛の過剰摂取に注意!知っておきたいリスクと上限

髪に良いからといって、亜鉛を自己判断で大量に摂取するのは危険です。

過剰摂取はかえって健康を害する可能性があります。サプリメントを利用する際は、必ず適量を守りましょう。

過剰摂取による副作用

亜鉛を一度に大量に摂取すると、吐き気や嘔吐、下痢や腹痛といった消化器系の急性中毒症状を引き起こす場合があります。

また、長期的な過剰摂取は、免疫力の低下や善玉コレステロールの減少などを招く可能性も指摘されています。

年代別・性別に見る亜鉛の摂取基準(mg/日)

年代女性(推奨量)女性(耐容上限量)
18~29歳835
30~69歳835
70歳以上730

※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より

他のミネラルの吸収阻害

亜鉛を長期間にわたって過剰に摂取し続けると、体内で「銅」や「鉄」の吸収が妨げられてしまいます。

銅は骨や血管の健康維持に、鉄は貧血予防に重要なミネラルです。

これらの欠乏は、めまいや立ちくらみ、骨粗しょう症のリスクを高めるため、亜鉛とのバランスを考えましょう。

サプリメント利用時の摂取上限の目安

厚生労働省が定める成人女性の亜鉛の耐容上限量は、1日35mgです。

通常の食事でこの量を超えることはほとんどありませんが、サプリメントを利用する場合は注意が必要です。

食事から平均して約9mgの亜鉛を摂取していると考えると、サプリメントからの摂取は多くても20mg程度に留めるのが賢明です。

複数のサプリを併用している場合は、合計の含有量も確認しましょう。

よくある質問

さいごに、亜鉛の摂取に関して患者さんからよくいただく質問とその回答をまとめました。

亜鉛サプリはいつ飲むのが効果的ですか?

亜鉛は、コーヒーや紅茶に含まれるタンニン、加工食品に含まれるフィチン酸などによって吸収が妨げられやすい性質があります。

このため、食事中や食後すぐは避け、食間や就寝前に飲むのがおすすめです。

ただ、胃が弱い方は空腹時に飲むと不快感を感じる場合があるため、食後に飲むなど、ご自身の体調に合わせて調整してください。

効果はどのくらいで実感できますか?

髪の毛は1ヶ月に約1cmしか伸びないため、亜鉛の摂取による効果を実感するには、少なくとも3ヶ月から6ヶ月の継続が大切です。

ヘアサイクル全体が改善し、新しく生えてくる髪が健康になるまでには時間がかかります。

効果には個人差があるため、まずは一定期間続けてみてください。

薄毛治療薬と併用しても大丈夫ですか?

クリニックで処方するミノキシジルやスピロノラクトンといった女性の薄毛治療薬と、亜鉛サプリメントの併用は基本的に問題ありません。

むしろ、治療薬の効果をサポートする上で、亜鉛などの栄養素で体内の土台を整えることは有益だと考えます。

ただし、市販薬や他のサプリメントを服用中の場合は相互作用の可能性も考慮し、必ず事前に医師や薬剤師にご相談ください。

妊娠中や授乳中に摂取しても良いですか?

妊娠中や授乳中は、胎児や乳児の発育のために通常よりも多くの亜鉛を必要とします(付加量として+2~3mg/日)。このため、適切な量の摂取はむしろ推奨されます。

しかし、過剰摂取のリスクは通常時よりも慎重に考える必要があります。

自己判断でサプリメントを始めるのではなく、必ずかかりつけの産婦人科医や専門医に相談し、指導のもとで摂取するようにしましょう。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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