女性の薄毛や抜け毛の悩みは、多くの方にとって切実な問題です。
その原因の一つとして「亜鉛不足」が挙げられることがあります。
この記事では、必須ミネラルである亜鉛が女性の髪の毛にどのような影響を与え、美しい髪を育むためにどう役立つのかを解説します。
さらに、効果的な亜鉛サプリメントの選び方や正しい使用法についても、専門的な視点から詳しくご紹介します。
亜鉛とは?髪の毛と女性の健康における役割
亜鉛は私たちの体にとって、微量ながらも非常に重要な働きを持つ必須ミネラルの一つです。
特に髪の毛の健康や女性の体調管理において、その役割は多岐にわたります。
亜鉛が不足すると体にさまざまな不調が現れる可能性があるため、日頃から意識して摂取することが大切です。
必須ミネラルとしての亜鉛
亜鉛は体内で生成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。
体内に存在する亜鉛の量は約2gとわずかですが、細胞の成長や分裂、免疫機能の維持、ホルモンの合成・分泌調整、味覚や嗅覚の維持など、生命活動に欠かせない多くの酵素反応に関与しています。
特に新しい細胞が作られる際には亜鉛が大量に消費されるため、髪の毛や皮膚のように新陳代謝が活発な組織では、その重要性が一層高まります。
髪の毛の主成分ケラチンの生成を助ける
髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。亜鉛は、このケラチンの合成をサポートする重要な役割を担っています。
食事から摂取したタンパク質をアミノ酸に分解し、それを再合成してケラチンを作り出す過程で亜鉛が補酵素として働きます。
亜鉛が不足するとケラチンの生成が滞り、髪の毛が細くなったり、成長が遅れたり、ツヤが失われたりする原因となります。
健やかな髪を育むためには、十分な亜鉛の供給が土台となるのです。
髪の成長サイクルと亜鉛
髪の毛には成長期、退行期、休止期というサイクルがあります。
亜鉛は特に成長期において、毛母細胞の分裂と増殖を促し、髪の毛が太く長く成長するのを助けます。
このサイクルが正常に機能するためにも、亜鉛は重要な栄養素です。
ホルモンバランスと亜鉛
亜鉛は女性ホルモンを含む様々なホルモンのバランスを整える働きにも関わっています。なかでも甲状腺ホルモンや成長ホルモンの働きを正常に保つために必要です。
これらのホルモンは髪の毛の成長や健康状態に密接に関連しており、バランスが崩れると薄毛や抜け毛を引き起こす場合があります。
亜鉛を適切に摂取すると、ホルモンバランスを介した髪のトラブル予防にも繋がります。
免疫機能と皮膚の健康維持
亜鉛は免疫細胞の活性化に関与し、体の防御機能を高める働きがあります。
また、皮膚のターンオーバーを正常に保ち、健康な頭皮環境を維持するためにも重要です。
頭皮は髪の毛が生える土壌であり、頭皮環境が悪化するとフケやかゆみ、炎症などが起こりやすくなり、結果として抜け毛や薄毛の原因となります。
亜鉛は頭皮の健康を守り、髪が育ちやすい環境を整える役割も果たしています。
亜鉛と関連する皮膚・頭皮の状態
状態 | 亜鉛との関連 | 髪への影響 |
---|---|---|
乾燥 | 皮膚のバリア機能低下に関与 | フケ、かゆみ、髪のパサつき |
炎症 | 免疫調整機能の低下で悪化の可能性 | 抜け毛、頭皮の赤み |
創傷治癒の遅延 | 細胞分裂や修復に必要 | 頭皮トラブルの長期化 |
女性の薄毛と亜鉛不足の関連性
女性の薄毛の原因は多岐にわたりますが、栄養不足、特に亜鉛の欠乏がその一因となるケースは少なくありません。
ここでは、亜鉛不足がどのようにして女性の薄毛につながるのか、そしてそのサインについて詳しく見ていきましょう。
亜鉛が不足するとどうなるか
体内の亜鉛が不足すると、髪の毛の成長に必要なケラチンの合成がうまくいかなくなります。これにより髪の毛が細く弱々しくなったり、成長が遅れたり、抜けやすくなったりします。
また、頭皮の新陳代謝も悪化し、フケやかゆみといった頭皮トラブルを引き起こし、健康な髪が育ちにくい環境になってしまうケースもあります。
さらに、亜鉛不足は味覚障害や免疫力の低下、皮膚炎や貧血など、全身的な不調の原因にもなり得ます。
- 髪質の変化(細くなる、弱くなる)
- 抜け毛の増加
- 爪の異常(白い斑点、割れやすい)
- 肌荒れ、皮膚炎
- 味覚・嗅覚の低下
女性特有の亜鉛不足の原因
女性は男性に比べて亜鉛が不足しやすい傾向があります。その背景には、いくつかの女性特有の要因が考えられます。
女性における亜鉛不足を引き起こす要因
要因 | 詳細 | 髪への影響 |
---|---|---|
過度なダイエット | 食事量の制限により摂取量が減少 | 栄養不足による薄毛・抜け毛 |
月経 | 経血とともに亜鉛が失われる | 慢性的な亜鉛不足のリスク |
妊娠・授乳期 | 胎児や母乳へ亜鉛を供給するため需要増大 | 産後の抜け毛の一因 |
その他、偏った食生活やストレス、一部の薬剤の長期服用なども亜鉛の吸収を妨げたり、需要を高めたりする原因です。
特に美容や体型維持に関心が高い女性は、知らず知らずのうちに亜鉛不足に陥っている可能性があります。
亜鉛不足による脱毛のサイン
亜鉛不足が原因で起こる脱毛には、いくつかの特徴的なサインが見られます。
例えば、全体的に髪のボリュームが減る「びまん性脱毛」や、円形脱毛症のような症状が現れることも報告されています。
また、髪の毛だけでなく爪がもろくなったり、白い斑点ができたり、皮膚が乾燥しやすくなったりといった症状も、亜鉛不足のサインである可能性があります。
これらのサインに気づいたら、早めに専門医に相談すると良いです。
医療機関での亜鉛不足診断
「もしかして亜鉛不足かも?」と感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し、医師の診断を受けることが大切です。
血液検査によって血清亜鉛値を測定すると、亜鉛の欠乏状態を客観的に評価できます。
基準値は検査機関によって多少異なりますが、一般的には80μg/dL未満で亜鉛欠乏、60μg/dL未満で明らかな亜鉛欠乏と判断されるケースが多いです。
診断結果に基づき、医師が食事指導や亜鉛サプリメントの処方など、適切な対応を行います。
亜鉛サプリメントが髪に与える具体的な効果
亜鉛不足が確認された場合、食事改善とともに亜鉛サプリメントの活用が有効な手段となります。
適切に亜鉛を補給すると、髪の毛に対して具体的にどのような良い効果が期待できるのでしょうか。
毛母細胞の活性化と成長促進
亜鉛は、髪の毛を作り出す毛母細胞の分裂・増殖を活発にする働きがあります。毛母細胞が元気になると、髪の毛の成長期が維持されやすくなり、太く健康な髪が育ちやすくなります。
亜鉛サプリメントによって体内の亜鉛濃度が適切なレベルに保たれると、毛母細胞への栄養供給がスムーズになり、髪の成長サイクルが正常化する手助けとなります。
これにより、亜鉛サプリの髪の毛への効果を実感しやすくなるでしょう。
頭皮環境の改善
健康な髪は健康な頭皮から生まれます。亜鉛は皮膚のターンオーバーを正常化し、頭皮のバリア機能を高める効果があります。
これにより、乾燥や炎症、フケやかゆみといった頭皮トラブルを軽減し、髪が育ちやすい清潔で健康な頭皮環境を整えるのに役立ちます。
頭皮環境が改善されると、抜け毛の予防にも繋がります。
髪のハリ・コシ・ツヤの向上
亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成に必要です。亜鉛が十分に供給されると、質の高いケラチンが効率よく生成され、髪の内部構造がしっかりとします。
その結果、髪にハリやコシが生まれ、キューティクルも整いやすくなるため、自然なツヤも出てきます。
細く弱々しかった髪に力が戻り、スタイリングしやすい健康的な髪質へと導きます。
髪質の変化と亜鉛補給
悩み | 亜鉛補給による期待 | 補足 |
---|---|---|
髪が細い、ボリュームがない | 毛髪の太さ改善、ハリ・コシ向上 | ケラチン生成の促進 |
髪のパサつき、ツヤがない | キューティクルの状態改善 | 頭皮環境改善も寄与 |
切れ毛、枝毛が多い | 髪の強度向上 | タンパク質摂取も重要 |
抜け毛の抑制効果
亜鉛不足は、ヘアサイクルの乱れや毛包の機能低下を引き起こし、抜け毛を増加させる一因となります。
亜鉛サプリメントで不足分を補うとヘアサイクルを正常化し、毛包を強化できるため抜け毛の進行を抑制する効果が期待できます。
亜鉛の髪の毛への効果として、抜け毛の減少は多くの方が期待するポイントでしょう。ただし、抜け毛の原因は亜鉛不足だけではないため、多角的な取り組みが必要です。
亜鉛サプリメント摂取時の注意点と副作用
亜鉛サプリメントは髪の健康に良い影響を与える可能性がありますが、摂取方法を誤ると逆効果になったり、副作用が現れたりする場合もあります。
安全かつ効果的に利用するために、いくつかの注意点を理解しておきましょう。
過剰摂取のリスクと症状
亜鉛は必須ミネラルですが、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼすことがあります。
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」では、成人女性の亜鉛の耐容上限量は1日35mg(18~69歳の場合)とされています。
これを超える量を長期間摂取し続けると、吐き気や嘔吐、腹痛や下痢などの消化器症状、頭痛やめまい、発熱といった急性中毒症状が現れる場合があります。
また、慢性的な過剰摂取は銅や鉄といった他の必須ミネラルの吸収を阻害し、貧血や免疫機能の低下、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の減少などを引き起こすリスクがあります。
亜鉛の過剰摂取による主な症状
症状の種類 | 具体的な症状例 |
---|---|
急性症状 | 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛 |
慢性症状 | 銅欠乏、鉄欠乏性貧血、免疫力低下 |
他の栄養素との相互作用
亜鉛は、他のミネラルや栄養素と相互に影響し合います。例えば、カルシウムや鉄、食物繊維を大量に摂取すると亜鉛の吸収率が低下することが知られています。
逆に、ビタミンCやクエン酸、動物性タンパク質は亜鉛の吸収を助ける働きがあります。
サプリメントを選ぶ際や摂取するタイミングを考える際には、これらの相互作用も考慮に入れると、より効果的な亜鉛補給が可能です。
特に、鉄剤を服用している方や、骨粗しょう症予防でカルシウムサプリメントを利用している方は、摂取タイミングをずらすなどの工夫が必要です。
摂取を控えるべきケース
特定の持病がある方や、薬を服用中の方は、亜鉛サプリメントの摂取に注意が必要です。
例えば、一部の抗生物質や利尿剤は、亜鉛の吸収に影響を与えたり、亜鉛の排泄を促進したりする場合があります。
また、腎機能が低下している方は亜鉛の排泄がうまくいかず、体内に蓄積しやすくなるため、医師との相談が必須です。
妊娠中や授乳中の方も自己判断でのサプリメント使用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してください。
副作用が出た場合の対処法
亜鉛サプリメントを摂取し始めてから、吐き気や胃の不快感などの症状が現れたときはまず摂取を中止し、様子を見てください。
症状が軽い場合は摂取量を減らしたり、食後に摂取したりすると改善するケースがあります。
しかし、症状が続くときや、強い副作用が現れたときは速やかに医師の診察を受けてください。その際には、摂取しているサプリメントの種類や量、摂取期間などを正確に伝えましょう。
髪質に合わせた亜鉛摂取のヒント
亜鉛は全ての髪質の方にとって重要な栄養素ですが、髪質や頭皮の状態によって、亜鉛摂取にプラスアルファで意識したいポイントが少し異なります。
乾燥しやすい髪質の方へ
乾燥しやすくパサつきがちな髪質の方は、亜鉛に加えて、髪の保湿に関わる栄養素も意識すると良いでしょう。
亜鉛はケラチン生成を助けますが、髪の水分保持にはセラミドやコラーゲンといった成分も関わっています。
食事では良質な脂質(オメガ3脂肪酸など)やビタミンA、ビタミンEを多く含む食品を積極的に取り入れましょう。
亜鉛サプリメントと併せて、保湿効果の高いヘアケア製品を使用するのも髪の潤いを保つうえで助けになります。
乾燥髪向け栄養素と食品
栄養素 | 期待される役割 | 食品例 |
---|---|---|
オメガ3脂肪酸 | 頭皮の健康維持、抗炎症 | 青魚、亜麻仁油、えごま油 |
ビタミンA | 皮膚や粘膜の健康維持 | レバー、緑黄色野菜 |
ビタミンE | 血行促進、抗酸化 | ナッツ類、植物油 |
脂っぽい髪質の方へ
頭皮が脂っぽくなりやすい、または髪がベタつきやすい方は、亜鉛による皮脂バランスの調整効果に期待が持てます。亜鉛は皮脂腺の働きを正常化するサポートをすると言われています。
これに加えて、ビタミンB群、特にビタミンB2やB6を意識して摂取すると、脂質の代謝を助けて過剰な皮脂分泌を抑えるのに役立つ可能性があります。
糖質や脂質の多い食事を控え、バランスの取れた食生活を心がけるのも重要です。
細く柔らかい髪質の方へ
髪が細く、ボリュームが出にくい「猫っ毛」タイプの方は、髪の主成分であるタンパク質の摂取量をしっかり確保するのが基本です。
そのうえで、亜鉛がケラチンの合成を効率よくサポートすると、髪一本一本の強度を高める手助けをします。
また、鉄分も髪の成長には欠かせないため、不足しないように注意しましょう。鉄分が不足すると、髪に栄養が届きにくくなり、細毛や抜け毛の原因となる場合があります。
- 良質なタンパク質(肉、魚、大豆製品、卵)
- 鉄分(レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき)
- ビタミンC(鉄の吸収を助ける)
髪のダメージが気になる方へ
カラーリングやパーマ、紫外線などで髪がダメージを受けている方は、髪の修復力を高める栄養補給が大切です。
亜鉛は細胞分裂を促し、ダメージを受けた毛髪や頭皮の修復を助けます。
さらに、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどを一緒に摂取すると活性酸素によるダメージから髪を守り、修復をサポートする効果が期待できます。
ダメージケア用のトリートメントと併用し、内外からのケアを心がけましょう。
効果的な亜鉛サプリメントの選び方
市場には様々な種類の亜鉛サプリメントがあり、どれを選べば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
ここでは、亜鉛サプリの髪の毛への効果を期待するうえで、賢いサプリメント選びのポイントを解説します。
亜鉛の種類と吸収率
亜鉛サプリメントに使われる亜鉛の形態にはいくつか種類があり、それぞれ吸収率が異なります。
一般的に吸収率が高いとされているのは、「グルコン酸亜鉛」や「クエン酸亜鉛」、「酵母亜鉛」などです。
一方、「酸化亜鉛」や「硫酸亜鉛」は比較的安価ですが、吸収率がやや低い傾向があります。
製品の成分表示を確認し、吸収率の高い形態の亜鉛を選んだり、吸収を助ける成分が配合されているものを選ぶと良いでしょう。
主な亜鉛の種類と特徴
亜鉛の種類 | 特徴 | 吸収率の目安 |
---|---|---|
グルコン酸亜鉛 | 吸収率が比較的高い、一般的な形態 | 中~高 |
クエン酸亜鉛 | 吸収性が良いとされる有機酸亜鉛 | 中~高 |
酵母亜鉛 | 酵母に取り込ませた形態、体内利用効率が良いとされる | 高 |
酸化亜鉛 | 安価だが吸収率はやや低い | 低~中 |
含有量と推奨摂取量
サプリメントを選ぶ際には、1粒あたりに含まれる亜鉛の含有量を確認することが重要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人女性の亜鉛の推奨量は1日8mgです。
通常の食事からも亜鉛はある程度摂取できるため、サプリメントで補給する場合は食事内容を考慮し、過剰摂取にならない範囲で不足分を補える程度の含有量のものを選びましょう。
一般的には、1日あたり10mg~15mg程度の亜鉛を補給できる製品が多いようです。
添加物の少ない製品を選ぶ
サプリメントには主成分以外に賦形剤や着色料、保存料などの添加物が含まれているものがあります。
毎日摂取するものだからこそ、できるだけ不要な添加物が少ない、シンプルな処方の製品を選ぶことをおすすめします。
成分表示をよく確認し、どのような添加物が使用されているかをチェックしましょう。アレルギー体質の方は特に注意が必要です。
信頼できるメーカーの選び方
サプリメントは品質管理が重要です。GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)認定工場で製造されているか、品質検査がしっかり行われているかなど、メーカーの信頼性を確認するのも大切です。
メーカーのウェブサイトで情報を確認したり、口コミや評判を参考にしたりするのも良いでしょう。
不明な点があれば、メーカーに直接問い合わせてみるのも一つの方法です。
亜鉛サプリメントの正しい使用法と摂取タイミング
せっかく亜鉛サプリメントを摂取するなら、その効果を最大限に引き出したいものです。正しい使用法と適切な摂取タイミングについて理解を深めましょう。
1日の適切な摂取量
前述の通り、成人女性の亜鉛の推奨量は1日8mg、耐容上限量は35mgです。
サプリメントで摂取する場合、食事からの摂取量も考慮して1日に10mg~15mg程度を目安にするのが一般的ですが、個人の状態や医師の指示によって調整が必要です。
自己判断で大量に摂取するのは避け、製品に記載されている目安量を守るか、医師や薬剤師に相談して適切な量を決めましょう。
効果を高める摂取タイミング
亜鉛の吸収は、一緒に摂取する食品や他の栄養素によって影響を受けます。
一般的に、亜鉛は空腹時よりも食後に摂取するほうが胃腸への負担が少なく、吸収も穏やかになると言われています。
また、ビタミンCやクエン酸、動物性タンパク質と一緒に摂取すると吸収率が高まるため、これらの栄養素を多く含む食事の後に摂るのがおすすめです。
逆に、コーヒーや紅茶に含まれるタンニン、穀物や豆類に多いフィチン酸、加工食品に多いリン酸塩は亜鉛の吸収を妨げる可能性があるため、これらを多く摂取した直後は避けるか、時間を空けて摂取すると良いでしょう。
亜鉛の吸収を助ける・妨げる成分
影響 | 成分例 | 多く含む食品・飲料 |
---|---|---|
吸収を助ける | ビタミンC、クエン酸、動物性タンパク質 | 果物、柑橘類、梅干し、肉、魚 |
吸収を妨げる | タンニン、フィチン酸、リン酸塩、過剰なカルシウム・鉄 | コーヒー、紅茶、緑茶、玄米、豆類、加工食品 |
継続期間の目安
亜鉛サプリメントの効果を実感するまでには個人差がありますが、一般的には数週間から数ヶ月程度の継続が必要とされています。
髪の毛の成長サイクルは約3ヶ月から数年単位であるため、すぐに劇的な変化が現れるわけではありません。
まずは1~3ヶ月程度を目安に継続し、体調や髪の状態の変化を見ながら必要に応じて医師と相談のうえ、継続期間を調整していくのが良いでしょう。
飲み合わせに注意したい食品や薬
特定の薬(一部の抗生物質、骨粗しょう症治療薬、関節リウマチ治療薬など)は、亜鉛の吸収を阻害したり、逆に亜鉛が薬の効果を弱めたりする場合があります。
また、鉄剤やカルシウム剤などのミネラルサプリメントと同時に摂取すると、互いの吸収を妨げ合う可能性があります。
常用している薬やサプリメントがある方は必ず医師や薬剤師に相談し、摂取のタイミングや可否について指示を受けてください。
亜鉛を多く含む食品と食生活での工夫
亜鉛サプリメントは有効な手段ですが、基本はバランスの取れた食事から栄養を摂取することです。
日々の食生活で亜鉛を意識的に取り入れるためのポイントを見ていきましょう。
亜鉛が豊富な食材一覧
亜鉛はさまざまな食品に含まれていますが、特に含有量が多いのは魚介類(特に牡蠣)、肉類(特に赤身肉やレバー)、種実類、穀類などです。
これらの食材をバランス良く食事に取り入れると、効率的に亜鉛を摂取できます。
亜鉛を多く含む代表的な食品(可食部100gあたり)
食品カテゴリー | 食品名 | 亜鉛含有量(目安) |
---|---|---|
魚介類 | 牡蠣(生) | 約14mg |
肉類 | 豚レバー(生) | 約6.9mg |
肉類 | 牛肉(もも、赤身、生) | 約4.5mg |
種実類 | カシューナッツ(フライ) | 約5.4mg |
穀類 | 小麦胚芽 | 約15.9mg |
食品の亜鉛含有量は、調理法や個体差によって変動します。上記はあくまで目安です。
バランスの取れた食事の重要性
亜鉛だけでなくタンパク質やビタミン、その他のミネラルなど、髪の健康に必要な栄養素は多岐にわたります。
特定の栄養素だけを偏って摂取するのではなく、主食・主菜・副菜をそろえ、多様な食品から栄養をバランス良く摂取することが、健康な髪を育むための基本です。
特に、髪の主成分であるタンパク質が不足すると、いくら亜鉛を摂取しても効果は限定的です。肉や魚、卵や大豆製品などを毎日の食事にしっかり取り入れましょう。
亜鉛の吸収を高める栄養素
亜鉛の吸収率を高めるためには、一緒に摂取する栄養素も重要です。
ビタミンCは亜鉛の吸収を助ける代表的な栄養素で、野菜や果物に多く含まれています。また、動物性タンパク質に含まれるアミノ酸や、梅干しなどに含まれるクエン酸も亜鉛の吸収を促進します。
これらの栄養素を多く含む食品を亜鉛が豊富な食材と組み合わせて摂ると、より効率的に亜鉛を体内に取り込めます。
- ビタミンC(柑橘類、パプリカ、ブロッコリー)
- クエン酸(レモン、梅干し、酢)
- 動物性タンパク質(肉、魚、卵)
日常でできる亜鉛摂取の工夫
毎日の食事で少し工夫するだけでも、亜鉛の摂取量を増やすことができます。例えば、白米を玄米や胚芽米に変える、間食にナッツ類を取り入れる、味噌汁に海藻や豆腐を加えるなどが手軽な方法です。
また、外食が多い方は、定食スタイルのメニューを選び、肉や魚、野菜がバランス良く含まれているかを確認すると良いでしょう。
インスタント食品や加工食品はリン酸塩を多く含むものがあり、亜鉛の吸収を妨げるため、できるだけ控えるように心がけましょう。
よくある質問
さいごに、亜鉛サプリメントや髪の毛に関する疑問について、よくいただくご質問とその回答をまとめました。
- 亜鉛サプリはいつから効果を実感できますか
-
効果を実感するまでの期間には個人差が大きく、一概には言えません。体内の亜鉛レベルがどの程度不足していたか、生活習慣、髪の毛の成長サイクルなど多くの要因が影響します。
一般的には数週間から2~3ヶ月程度の継続で何らかの変化を感じ始める方がいますが、髪質の明らかな改善や抜け毛の減少を実感するには、半年以上の期間を見る必要がある場合もあります。
焦らず、じっくりと体質改善に取り組む姿勢が大切です。
- 妊娠中や授乳中に摂取しても大丈夫ですか
-
妊娠中や授乳中は、胎児や乳児の発育のために亜鉛の必要量が増加します。しかし、サプリメントによる過剰摂取は避けなければなりません。
自己判断での摂取は控え、必ずかかりつけの産婦人科医や医師に相談し、指示に従ってください。
食事からの摂取を基本とし、サプリメントが必要と判断された場合にのみ、適切な種類と量を守って使用するのが重要です。
- 他の育毛剤や治療と併用できますか
-
亜鉛サプリメントは栄養補助食品であり、医薬品である育毛剤やクリニックで行う専門的な薄毛治療と併用できる場合が多いです。
ただし、併用する際には必ず医師や薬剤師に相談してください。特に処方薬を服用中の方や、他のサプリメントを摂取している方は、成分の重複や相互作用の可能性について確認が必要です。
自己判断での併用は思わぬ影響が出るケースもあるため、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
- サプリメントを飲んでいれば食事は気にしなくても良いですか
-
サプリメントはあくまで食事で不足しがちな栄養素を補うためのものであり、健康の基本はバランスの取れた食事です。
亜鉛だけでなくタンパク質やビタミン、他のミネラルなど、髪の毛の成長や体の健康維持にはさまざまな栄養素が必要です。
そのためサプリメントに頼りすぎず、日々の食生活を見直し、改善していくことが最も重要です。
亜鉛サプリの髪の毛への効果を最大限に引き出すためにも、食生活の改善とサプリメントの適切な利用を両立させましょう。
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