更年期女性の円形脱毛症。ホルモンバランスの乱れ？ストレス？考えられる原因

更年期に円形脱毛症が起こる主な原因は、女性ホルモンの減少に伴う免疫系の変動や、長年のストレス蓄積が複雑に関係していると考えられます。

円形脱毛症は、免疫システムが毛根を誤って攻撃する自己免疫疾患の一種です。

更年期は、ホルモンバランスが大きく変わるだけでなく、家庭や仕事でのストレスも重なりやすく、免疫機能が不安定になりがちです。

この記事では、更年期女性の円形脱毛症の背景にある複数の要因を丁寧に解き明かし、FAGAとの違いや不安を感じた際の対処法についても解説します。

更年期女性に円形脱毛症が起こる主な背景

更年期に円形脱毛症が起こりやすくなるのは、女性ホルモンの減少による体の変化や、長年蓄積されたストレス、免疫機能の変動などが複雑に関係していると考えられます。

特定の原因一つだけではなく、複数の要因が重なることで発症リスクが高まる時期といえます。

更年期とはどのような時期か

更年期とは、一般的に閉経を迎える前後の5年間、合計10年間ほどの期間を指します。日本人女性の平均閉経年齢は約50歳のため、多くの場合45歳から55歳頃がこの時期にあたります。

この時期は、卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモン（特にエストロゲン）の分泌が急激に減少していきます。

それにより、ほてり、のぼせ、発汗といった「ホットフラッシュ」や、気分の落ち込み、イライラ、不眠など、心身にさまざまな不調が現れやすくなります。

これを更年期症状（更年期障害）と呼びます。

円形脱毛症とは何か

円形脱毛症は、頭部や体の他の部分に、円形または楕円形の脱毛斑が突然現れる疾患です。

10円玉サイズのものから、頭部全体に広がるもの、さらには眉毛やまつ毛など全身の毛が抜けるものまで、症状の程度はさまざまです。

一般的にはかゆみや痛みを伴いません。性別や年齢に関係なく発症しますが、特にアトピー素因を持つ人や、自己免疫疾患を持つ人に多く見られる傾向があります。

更年期と円形脱毛症の関連性

更年期が直接円形脱毛症を引き起こすわけではありませんが、この時期に起こる心身の変化が、発症の「引き金」や「悪化要因」となる可能性は十分に考えられます。

女性ホルモンの急激な減少は、自律神経のバランスを乱し、免疫系にも影響を与えます。また、更年期はライフイベントが重なりやすく、ストレスが蓄積しやすい時期でもあります。

これらの要因が組み合わさることで、円形脱毛症を発症しやすくなるのではないかと推測されています。

原因1 ホルモンバランスの大きな変動

更年期の女性ホルモン（エストロゲン）の急激な減少は、円形脱毛症を含むさまざまな体調変化の一因となります。

ホルモンバランスが崩れることで、毛髪の成長サイクルや免疫系に影響が及ぶ可能性があります。

エストロゲン減少が毛髪に与える影響

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、毛髪の成長期を維持し、髪を豊かに保つ働きがあります。

更年期に入りエストロゲンが急激に減少すると、この成長期が短くなり、休止期に入る毛髪の割合が増えると考えられます。

その結果、髪全体のボリュームダウンや薄毛（FAGA）が進行しやすくなります。

円形脱毛症との直接的な因果関係は明確ではありませんが、毛髪の成長サイクルが乱れることが、毛包の健康状態に何らかの影響を与える可能性は否定できません。

更年期前後の主なホルモン変化

ホルモン	更年期前	更年期（閉経周辺期）
エストロゲン	周期的に変動（高）	急激に減少し不安定
プロゲステロン	周期的に変動（高）	減少
FSH（卵胞刺激ホルモン）	低い	上昇

他のホルモンとの関連

体内のホルモンは、互いに複雑なバランスを保ちながら機能しています。エストロゲンの減少が、他のホルモン分泌にも影響を与え、間接的に円形脱毛症に関わることがあります。

甲状腺ホルモンの影響

甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にする重要なホルモンです。

甲状腺機能低下症（橋本病）や亢進症（バセドウ病）といった甲状腺疾患は、自己免疫と深く関連しており、円形脱毛症を合併しやすいことが知られています。

更年期は甲状腺疾患が発症しやすい時期とも重なるため、注意が必要です。脱毛とともに、極端な体調不良（強い倦怠感、むくみ、動悸など）がある場合は、内分泌科での検査も視野に入れます。

副腎皮質ホルモンの影響

副腎皮質ホルモン（コルチゾールなど）は、主にストレスに対応するために分泌されます。

強いストレスが長期間続くと、コルチゾールの分泌バランスが崩れ、免疫機能の低下や、他のホルモンバランスの乱れを招くことがあります。

更年期はストレスが多い時期であり、この副腎疲労が免疫系のアンバランスを引き起こし、円形脱毛症の一因となる可能性も考えられます。

ホルモン変動と免疫機能

女性ホルモン、特にエストロゲンは、免疫機能の調節にも関与しています。エストロゲンには、免疫の過剰な反応をある程度抑える働きがあるともいわれます。

そのため、エストロゲンが急激に減少する更年期は、免疫系のバランスが不安定になりやすい時期です。

この免疫系の揺らぎが、自己免疫疾患である円形脱毛症の発症や再発に関わっている可能性があります。

原因2 自己免疫疾患としての側面

円形脱毛症は、免疫システムが誤って自分自身の毛包（毛根を包む組織）を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種と考えられています。

更年期は、体の変化に伴い免疫系が不安定になりやすい時期でもあります。

免疫システムの誤作動とは

私たちの体には、外部から侵入したウイルスや細菌などを「異物」として認識し、攻撃・排除する「免疫」というシステムが備わっています。

しかし、何らかの原因でこのシステムに異常が生じると、自分自身の正常な細胞や組織を「異物」と間違えて攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。

円形脱毛症の場合、免疫細胞（主にTリンパ球）が、成長期にある毛包を攻撃対象としてしまいます。

なぜ毛包が攻撃されるのか

なぜ免疫細胞が毛包を攻撃するようになるのか、その正確な理由はまだ完全には解明されていません。

遺伝的な要因、後述するストレス、感染症、ホルモンバランスの変化などが引き金となり、毛包が持つ特定の成分に対して免疫が反応し始めると考えられています。

攻撃された毛包は炎症を起こし、毛髪の成長が停止して抜け落ちてしまいます。

ただし、毛包自体が破壊されるわけではないため、免疫の攻撃が収まれば、再び毛髪が再生する可能性が残されています。

更年期における免疫系の変化

前述の通り、更年期は女性ホルモンの減少により、免疫系のバランスが揺らぎやすい時期です。

エストロゲンの持つ免疫抑制作用が弱まることで、これまで抑えられていた自己免疫反応が表面化しやすくなる可能性があります。

また、加齢に伴う免疫機能そのものの変化（免疫老化）も、誤作動の一因となると考えられます。

自己免疫疾患と遺伝的要因

円形脱毛症の発症には、遺伝的な要因も関わっているとされます。家族（特に近親者）に円形脱毛症の人がいる場合、発症リスクがやや高くなることが報告されています。

また、円形脱毛症の人は、甲状腺疾患、尋常性白斑、関節リウマチなど、他の自己免疫疾患を合併する割合が、そうでない人に比べて高いことも知られています。

更年期にこれらの疾患が発症、あるいは悪化することもあり、相互に関連している可能性が指摘されます。

原因3 長期間にわたるストレスの蓄積

更年期に重なりやすい仕事、家庭、介護などの長期間にわたる精神的・身体的ストレスは、円形脱毛症の発症や悪化の引き金になることがあります。

ストレスが体に及ぼす影響

ストレスを感じると、体はそれに対抗するために自律神経（交感神経）を活発にし、副腎皮質からコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌します。

短期間のストレスであれば、これらは体を守るために働きます。しかし、ストレスが長期間続くと、自律神経のバランスが崩れっぱなしになり、コルチゾールの分泌も異常をきたします。

結果として、免疫機能の低下、血行不良、ホルモンバランスの乱れなどを引き起こし、円形脱毛症を含むさまざまな不調の原因となります。

更年期女性が抱えやすいストレス要因

分類	具体例
家庭環境の変化	子供の独立（空の巣症候群）、夫婦関係の変化
仕事上の責任	役職、仕事量の増加、キャリアの悩み、部下の管理
親の介護	介護による心身の疲労、将来への不安、兄弟姉妹との調整
自身の体調	更年期症状（ホットフラッシュ、不眠、気分の落ち込み）

精神的ストレスと身体的ストレス

ストレスには、人間関係や仕事のプレッシャーといった「精神的ストレス」と、更年期症状そのものや、過労、睡眠不足といった「身体的ストレス」があります。

更年期の女性は、これら両方のストレスに同時にさらされやすい状況にあります。

主な精神的ストレス源

40代から50代は、職場で責任ある立場を任されたり、子どもの進学や独立、親の介護問題に直面したりと、人生の大きな転機が訪れやすい時期です。

これらの環境変化は、大きな精神的負担となり得ます。また、更年期症状による気分の落ち込みやイライラが、人間関係のストレスを増幅させることもあります。

更年期特有の身体的ストレス

ホットフラッシュや動悸、めまい、不眠といった更年期症状は、それ自体が体にとって大きなストレスとなります。

特に不眠が続くと、心身の疲労が回復せず、ストレスへの抵抗力が弱まります。この身体的ストレスが、精神的な不安定さを助長するという悪循環に陥ることも少なくありません。

ストレスと免疫・ホルモンの関係

長引くストレスは、交感神経を優位にし、血管を収縮させます。このため、頭皮への血流が悪化し、毛包に十分な栄養が届きにくくなる可能性があります。

さらに重要なのは、ストレスが免疫系に直接作用し、そのバランスを崩すことです。

ストレスによって放出される物質が、免疫細胞の働きを変化させ、毛包への攻撃（自己免疫反応）の引き金となる可能性が研究で示唆されています。

また、ストレスは視床下部や下垂体に影響を与え、ホルモンバランス全体を乱す原因にもなります。

原因4 アトピー素因との関連

アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などを持つ「アトピー素因」の人は、円形脱毛症を発症しやすい傾向があることが知られています。

これは、体質的に免疫系が特定の反応を起こしやすいことと関係があると考えられます。

アトピー素因とは

アトピー素因とは、本人または家族が特定のアレルギー疾患（アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など）にかかったことがある、または、アレルギー反応に関わる抗体（IgE抗体）を作りやすい体質のことを指します。

これらの疾患は、免疫系がほこりやダニ、花粉、食物などの特定の物質（アレルゲン）に対して過敏に反応することで起こります。

アトピー素因に含まれる主な疾患

• アトピー性皮膚炎
• 気管支ぜんそく
• アレルギー性鼻炎（花粉症など）

アトピー素因と円形脱毛症の統計的関連

複数の研究報告により、円形脱毛症の患者さんには、アトピー素因を持つ人の割合が高いことがわかっています。

円形脱毛症の患者さんの約40%にアトピー素因が、約20%にアトピー性皮膚炎の合併が見られるという報告もあります。逆に、アトピー性皮膚炎の患者さんが円形脱毛症を併発するケースも多く見られます。

更年期にアトピーが悪化する人もおり、その時期に円形脱毛症を発症することもあります。

免疫反応の共通点

アトピー性疾患と円形脱毛症（自己免疫疾患）は、異なる免疫反応が関わっていますが、どちらも「免疫系のバランスの乱れ」が根底にあるという点で共通しています。

アトピー素因を持つ人は、免疫系が特定の方向に偏って反応しやすい体質であり、その体質が何らかのきっかけで、毛包に対する自己免疫反応（円形脱毛症）も引き起こしやすくするのではないか、と考えられています。

ただし、アトピー素因があれば必ず円形脱毛症になるというわけではありません。

その他の考えられる要因

ホルモンバランスの変化、自己免疫、ストレス、アトピー素因以外にも、更年期女性の円形脱毛症に関わる可能性のある要因はいくつかあります。

これらが複合的に影響しあうことも少なくありません。

栄養状態の偏り

更年期は、食欲不振や消化吸収能力の低下、あるいは反対にストレスによる過食などで、栄養バランスが偏りやすい時期でもあります。

毛髪は主にタンパク質でできており、その成長には亜鉛や鉄分、各種ビタミンが深く関わっています。

鉄分や亜鉛の不足

特に女性は月経により鉄分が不足しがちです。更年期は閉経に向かいますが、それまでの過多月経などで慢性的な鉄欠乏状態にある人も少なくありません。

鉄分は全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料であり、不足すると毛母細胞の活動が低下します。また、亜鉛はタンパク質の合成や細胞分裂に必須のミネラルであり、不足すると毛髪の成長が妨げられます。

円形脱毛症の患者さんで、血清亜鉛値が低い傾向があることも報告されています。

毛髪の健康に必要な主な栄養素

栄養素	含まれる主な食品
タンパク質	肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛	牡蠣、レバー、牛肉（赤身）、チーズ、アーモンド
鉄分	レバー、赤身肉、あさり、ほうれん草、小松菜

タンパク質の摂取不足

ダイエットや食の細りにより、毛髪の主成分であるタンパク質（ケラチン）の摂取が不足すると、健康な髪が作られにくくなります。

栄養不足が直接円形脱毛症を引き起こすわけではありませんが、頭皮や毛髪の健康状態が悪化することで、脱毛症の回復を妨げたり、症状を悪化させたりする一因にはなり得ます。

睡眠不足とその影響

更年期症状の一つである不眠は、体に多大な影響を及ぼします。睡眠中は、成長ホルモンが分泌され、日中に受けたダメージを修復・再生する時間です。

毛母細胞の分裂も、睡眠中に活発に行われます。睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、毛髪の健やかな成長が妨げられます。

また、睡眠不足は自律神経の乱れやストレスの増大にも直結し、免疫系のバランスを崩す要因となります。

他の疾患や使用薬剤の影響

円形脱毛症は、前述の甲状腺疾患や膠原病（関節リウマチなど）といった他の自己免疫疾患と合併することがあります。

更年期はこれらの疾患が見つかりやすい時期でもあるため、脱毛以外の体調不良にも注意を払うことが大切です。

また、まれですが、治療中の病気のために使用している薬剤（例：一部の降圧剤、インターフェロンなど）が、円形脱毛症の引き金となることも報告されています。

新しい薬を飲み始めてから脱毛が気になった場合は、主治医に相談することが重要です。

円形脱毛症と更年期障害の薄毛（FAGA）の違い

更年期に見られる円形脱毛症と、頭部全体の髪が薄くなるFAGA（女性男性型脱毛症）は、原因や症状の現れ方が異なる脱毛症です。

これらは適切に見分けることが大切です。

症状の現れ方の違い

最も大きな違いは、脱毛の仕方です。円形脱毛症は、境界がはっきりした円形または楕円形に、まとまって毛髪が抜け落ちます。地肌がはっきりと見えるようになるのが特徴です。

一方、FAGAは、特定の場所がごそっと抜けるのではなく、頭頂部や分け目を中心に、髪の毛が全体的に細く、短くなり、地肌が透けて見えるようになっていきます。

円形脱毛症の特徴的な症状

円形脱毛症は、自覚症状がないまま突然発症することが多いです。脱毛斑は1か所とは限らず、複数個できること（多発性）もあります。

時には脱毛斑が融合して大きくなったり、頭部全体の毛が抜けたり（全頭型）、眉毛やまつ毛、体毛まで抜けたり（汎発型）することもあります。進行が早いケースも見られます。

FAGA（女性男性型脱毛症）の特徴

FAGAは、主に更年期前後の女性ホルモンの減少と、相対的に男性ホルモンの影響が優位になること、そして遺伝的要因などが関係して発症すると考えられています。

進行は比較的ゆっくりで、数年かけて徐々に薄毛が目立つようになります。

抜け毛の増加よりも、「髪のハリやコシがなくなった」「1本1本が細くなった」「ボリュームが出ない」といった悩みから始まることが多いのが特徴です。

円形脱毛症とFAGAの比較

項目	円形脱毛症	FAGA（女性男性型脱毛症）
症状	円形・楕円形に突然抜ける。地肌が見える。	頭頂部や分け目が全体的に薄くなる。髪が細くなる。
主な原因（推定）	自己免疫、ストレス、アトピー素因など	ホルモンバランス（女性ホルモン減少）、遺伝など
進行	急速に進行する場合がある	ゆっくり進行する場合が多い

併発する可能性

更年期には、円形脱毛症とFAGAが同時に起こることもあり得ます。

もともとFAGAによって全体のボリュームダウンに悩んでいたところに、ストレスなどが引き金となって円形脱毛症を発症するケースなどです。

症状が複合的になると、セルフケアでの判断は難しくなります。どちらの症状なのか、あるいは両方なのかを正確に診断するためにも、専門医の診察を受けることが重要です。

対処法が異なるため、適切な診断が改善への第一歩となります。

不安を感じたらまず専門医へ相談を

円形脱毛症は見た目の変化から大きな不安を感じやすいですが、適切な対処で改善するケースも多いため、まずは皮膚科などの専門医に相談し、正確な診断を受けることが第一歩です。

なぜ早期の相談が重要か

円形脱毛症は、発症初期の段階で適切な治療を開始することで、症状の拡大を防いだり、回復までの期間を早めたりできる可能性があります。

特に脱毛範囲が急速に広がっている場合や、多発している場合は、早めの対処が望まれます。

また、脱毛の症状がFAGAや他の疾患（甲状腺疾患など）によるものでないかを正確に診断してもらうことも重要です。

原因によって対処法が全く異なるため、自己判断で様子を見たり、市販の育毛剤を試したりする前に、一度専門家の意見を聞くことをお勧めします。

何科を受診すべきか

毛髪と頭皮のトラブルは、まず「皮膚科」が専門となります。

多くの皮膚科で円形脱毛症の診断と治療を行っています。特に「日本皮膚科学会認定専門医」がいる医療機関や、脱毛症の治療に力を入れているクリニックを選ぶとよいでしょう。

また、更年期症状が強く、ホルモンバランスの乱れやストレスが大きく関わっていると感じる場合は、婦人科や女性外来で相談することも選択肢の一つです。

必要に応じて、皮膚科と連携して治療を進めてくれる場合もあります。

円形脱毛症で相談できる主な診療科

診療科	主な役割
皮膚科	円形脱毛症の診断と治療の中心。
女性外来・婦人科	更年期症状全般の相談、ホルモン補充療法（HRT）の検討。
心療内科・精神科	ストレスが極度に強い場合のカウンセリングやサポート。

診断ではどのようなことを調べるのか

皮膚科では、まず視診（目で見て状態を確認）と問診（いつから、どのような症状か、既往歴、家族歴、ストレスの有無などを聞く）を行います。

ダーモスコピーという特殊な拡大鏡で脱毛部や毛髪の状態を詳しく観察することもあります。この検査によって、円形脱毛症に特徴的な所見（切れ毛、黒点、感嘆符毛など）を確認します。

他の脱毛症との鑑別や、他の疾患（甲状腺疾患、膠原病など）の合併が疑われる場合には、血液検査を行うこともあります。

医療機関で行われる主な対処法

円形脱毛症の治療法は、脱毛の範囲、進行度、年齢、基礎疾患の有無などによって異なります。

皮膚科の診療ガイドラインでは、脱毛範囲が狭い場合は、ステロイド外用薬（塗り薬）やカルプロニウム塩化物外用薬（血行促進）などが推奨されます。

範囲が広い場合や進行が早い場合は、ステロイド局所注射、局所免疫療法（かぶれさせて発毛を促す）、内服薬（ステロイドや抗アレルギー薬など）、紫外線療法などが検討されます。

どの治療法を選択するかは、医師とよく相談して決定します。

Ｑ＆Ａ

更年期女性の円形脱毛症に関して、多く寄せられる質問にお答えします。

円形脱毛症は更年期が終われば治りますか？

更年期が円形脱毛症の一因である可能性はありますが、円形脱毛症は自己免疫疾患など複数の要因が関わるため、更年期が終われば必ず治るとは限りません。

しかし、更年期症状の管理とともに、適切な治療を受けることで改善する可能性は十分にあります。

食生活の改善だけで円形脱毛症はよくなりますか？

バランスの取れた食事は、髪の健康を保つ土台として非常に重要です。特にタンパク質、亜鉛、鉄分などは大切です。

しかし、円形脱毛症は自己免疫が主な原因と考えられるため、食事だけで完治を目指すのは難しい場合が多いです。

専門的な治療と並行して食生活を見直すことが勧められます。

育毛剤は円形脱毛症にも使えますか？

市販の育毛剤の多くは、頭皮環境を整えたり、血行を促進したり、FAGA（女性男性型脱毛症）による薄毛の進行を緩やかにしたりすることを目的としています。

自己免疫が原因とされる円形脱毛症に対して、一般的な育毛剤が直接的な治療効果を持つかは、医師の判断が必要です。使用前に専門医に相談してください。

円形脱毛症は他の人にうつりますか？

円形脱毛症は、ウイルスや細菌による感染症ではありません。免疫システムの誤作動など、ご自身の体内の要因によって起こるものです。

そのため、他の人にうつることは一切ありません。

ストレスをなくせば髪は生えてきますか？

ストレスは円形脱毛症の大きな誘因の一つであり、ストレス管理は非常に重要です。

リラックスできる時間を持ったり、適度な運動をしたりすることは、症状の改善や再発防止に役立つと考えられます。

ただし、発症してしまった円形脱毛症には、ストレス対策と同時に専門的な治療も必要になることが多いです。