最近、抜け毛が増えた、髪のボリュームが減ってきたと感じていませんか。薄毛の悩みは男性特有のものではなく、多くの女性にとっても深刻な問題です。
対策を調べると「育毛剤」や「ミノキシジル」という言葉を目にしますが、その違いや女性が使っても良いのか、不安に思う方もいるでしょう。
この記事では、女性の薄毛対策としてミノキシジルが使えるのか、一般的な育毛剤との違い、そして使用前に知っておきたい副作用について詳しく解説します。
ご自身の悩みに合った正しいケアを見つけるための一助となれば幸いです。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
ミノキシジルとは?女性の薄毛治療にも使われる成分
もう一つは、毛母細胞に直接働きかけ、その増殖や分化を促す作用です。
さらに、ヘアサイクル(毛周期)において、髪が成長する「成長期」を延長させ、休止期から初期成長期への移行を促す働きも指摘されています。
その結果、細く短い毛(軟毛)が、太く長い毛(硬毛)へと成長するのを助けます。
女性がミノキシジルを使用する際の注意点
女性がミノキシジルを使用する場合、いくつかの重要な注意点があります。まず、男性用の高濃度製品(例:5%)は、女性への安全性が確認されていないため、使用を避けるべきです。
国内で女性用として承認されているのは、ミノキシジル濃度が1%の製品です。
また、妊娠中、授乳中の方、妊娠している可能性がある方は使用できません。ミノキシジルの胎児や乳児への安全性は確立されていないためです。
さらに、壮年性脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症、甲状腺疾患による脱毛など)には効果が期待できません。ご自身の脱毛の原因が分からない場合は、自己判断で使用せず、医師に相談することが重要です。
使用前には必ず製品の説明書(添付文書)をよく読み、用法・用量を守って正しく使用してください。
日本で承認されている女性用ミノキシジル製品
2024年現在、日本国内のドラッグストアなどで購入できる女性用のミノキシジル配合発毛剤は、ミノキシジル濃度が1%の製品です(第1類医薬品)。
これらの製品は、女性の「壮年性脱毛症」に対する発毛・育毛効果が認められています。
壮年性脱毛症は、一般的に「FAGA(女性男性型脱毛症)」とも呼ばれ、頭頂部や分け目を中心に髪が薄くなる特徴があります。
購入時には、薬剤師からの情報提供を受けることが義務付けられています。これは、安全に使用するための確認(副作用のリスク、他の薬との併用、持病の有無など)を行うためです。
ご自身の状態に適しているか不安な場合は、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
「育毛剤」と「発毛剤(ミノキシジル配合)」の根本的な違い
「育毛剤」と「発毛剤(ミノキシジル配合)」は、どちらも薄毛対策に使われる製品ですが、その目的と法的な分類、含まれる成分が根本的に異なります。
ミノキシジル配合の製品は「発毛剤」に分類され、一般的に「育毛剤」と呼ばれるものとは区別されます。この違いを理解することが、適切な製品選びの第一歩です。
育毛剤の目的と主な成分
一般的に「育毛剤」と呼ばれる製品の多くは、法的に「医薬部外品」に分類されます。
医薬部外品の育毛剤の主な目的は、「育毛(今ある髪を健やかに育てる)」「養毛」「薄毛・抜け毛の予防」「フケ・かゆみの防止」です。
つまり、新しく髪を生やすこと(発毛)を主目的とするのではなく、現在生えている髪の毛が抜けにくくなるよう頭皮環境を整えたり、髪の成長をサポートしたりすることを目指します。
含まれる主な有効成分は、頭皮の血行を促進する成分(センブリエキス、ビタミンE誘導体など)、頭皮の炎症を抑える成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)、毛母細胞の働きを助ける成分(パントテニルエチルエーテルなど)が挙げられます。
発毛剤の目的とミノキシジルの役割
一方、「発毛剤」は「医薬品」に分類されます。医薬品は、病気の「治療」や「改善」を目的とし、有効成分の効果が厚生労働省によって認められています。
ミノキシジルを配合した発毛剤の主な目的は、その名の通り「発毛」です。
つまり、壮年性脱毛症によってヘアサイクルが乱れ、成長が止まってしまった毛穴から、新しい髪の毛を生やし、さらにそれを太く長く育てることを目指します。
この「発毛」効果が認められている市販薬の成分がミノキシジルです。育毛剤が「守り」や「育てる」ケアであるのに対し、発毛剤は「攻め」のケア(新しい髪を生やす)と位置づけられます。
期待できる効果の違い(育毛 vs 発毛)
育毛剤(医薬部外品)と発毛剤(医薬品)では、期待できる効果の範囲が異なります。
育毛剤は、頭皮環境を健やかに保ち、抜け毛を予防することで、薄毛の進行を防ぐことを目指します。
「髪にハリやコシが出てきた」「抜け毛が減った気がする」といった実感が期待されますが、毛がなかった場所に新しく生えてくる「発毛」効果は謳えません。
対してミノキシジル配合の発毛剤は、壮年性脱毛症において「発毛」および「育毛(硬毛の成長)」、さらに「脱毛の進行予防」の効果が認められています。
すでに薄毛が進行し、地肌が目立つようになってきた方が、新しい髪の毛を生やしたい場合に適しています。
育毛剤と発毛剤(ミノキシジル配合)の比較
| 項目 | 育毛剤(医薬部外品) | 発毛剤(ミノキシジル配合) |
|---|---|---|
| 分類 | 医薬部外品 | 第1類医薬品 |
| 主な目的 | 育毛、養毛、抜け毛予防、頭皮環境改善 | 発毛、育毛(硬毛の成長)、脱毛進行予防 |
| 該当する方 | 抜け毛予防、フケ・かゆみが気になる方 | 壮年性脱毛症で薄毛が進行している方 |
目的別(予防か、発毛か)の選び方
どちらの製品を選ぶべきかは、ご自身の現在の髪や頭皮の状態、そして何を一番の目的とするかによって決まります。
もし「最近抜け毛が増えてきた」「髪が細くなってきた気がする」「将来のために予防したい」という段階であれば、まずは育毛剤(医薬部外品)で頭皮環境を整えるケアから始めるのが良いでしょう。
一方で、「分け目が明らかに目立つ」「頭頂部の地肌が透けて見える」など、すでに薄毛が進行しており、新しい髪を生やしたい(発毛)と強く望む場合は、ミノキシジルを配合した発毛剤(第1類医薬品)の使用を検討する段階です。
ただし、発毛剤は医薬品であるため、副作用のリスクも伴います。次のセクションで詳しく解説する副作用についてもしっかりと理解した上で、使用を判断することが大切です。
女性がミノキシジル使用前に知るべき副作用
ミノキシジルは発毛効果が認められた医薬品成分ですが、医薬品である以上、副作用が起こる可能性もあります。
特に女性が使用する場合、そのリスクを正しく理解し、安全に使用することが重要です。使用後に体調の変化を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
主な副作用「初期脱毛」とは?
ミノキシジルの使用を開始して比較的早い時期(使用開始後2週間から1ヶ月程度)に、一時的に抜け毛が増える現象を「初期脱毛」と呼ぶことがあります。
これは、ミノキシジルの作用によってヘアサイクルがリセットされ、休止期にあった古い髪が抜け落ち、新しい髪が生える準備が始まるために起こると考えられています。
つまり、副作用というよりも、成分が効いている一つのサインと捉えることもできます。
多くの場合、この初期脱毛は一時的なもので、使用を継続することで(通常1〜2ヶ月程度で)抜け毛は落ち着き、その後新しい髪が生え始めます。
しかし、抜け毛が急激に増えると不安になるものです。このような現象が起こり得ることをあらかじめ知っておくことが大切です。
皮膚症状(かゆみ、かぶれ、発疹)
ミノキシジル外用薬の副作用として、最も報告が多いのが塗布した部分の皮膚症状です。
具体的には、頭皮のかゆみ、発疹・発赤、かぶれ、フケ、使用部位の熱感などが挙げられます。
これらは、ミノキシジル成分自体へのアレルギー反応(接触皮膚炎)や、製品に含まれる基剤(アルコールなど)による刺激が原因で起こることがあります。
特に敏感肌の方やアレルギー体質の方は注意が必要です。軽いかゆみ程度であれば様子を見ることもありますが、症状が強い場合や、赤みや発疹が広がる場合は使用を中止し、皮膚科医に相談してください。
その他の起こり得る副作用(頭痛、多毛症など)
皮膚症状以外にも、いくつかの副作用が報告されています。頻度は高くありませんが、注意が必要です。
頭痛、めまい、気が遠くなる感じといった精神神経系の症状や、胸の痛み、心拍が速くなるといった循環器系の症状が起こる可能性があります。
これらは、ミノキシジルの血管拡張作用による影響と考えられます。
また、女性の場合、特に注意したいのが「多毛症」です。これは、塗布した頭皮以外の場所(額、腕、足、顔のうぶ毛など)の毛が濃くなる現象です。
ミノキシジル成分が皮膚から吸収され、血流に乗って全身に微量に作用することで起こるとされています。定められた量より多く使用したり、液が垂れたりすることでリスクが高まる可能性があります。
ミノキシジル外用薬の主な副作用
| 分類 | 主な症状 | 対処の考え方 |
|---|---|---|
| 皮膚症状 | 頭皮のかゆみ、発疹、かぶれ、フケ | 症状が強い、続く場合は使用中止し医師に相談 |
| 精神神経系 | 頭痛、めまい、気が遠くなる | 症状が出たら使用中止し医師に相談 |
| 循環器系 | 胸の痛み、心拍が速くなる | 症状が出たら使用中止し医師に相談 |
| その他 | 原因不明の急激な体重増加、手足のむくみ、多毛症 | 症状が出たら使用中止し医師に相談 |
副作用が出た場合の対処法
ミノキシジルの使用中に、前述のような何らかの異常を感じた場合は、まず使用を中止することが基本です。
皮膚のかゆみや赤み程度であっても、我慢して使用を続けると症状が悪化する恐れがあります。
使用を中止しても症状が改善しない場合や、頭痛、めまい、動悸、むくみといった全身的な症状が現れた場合は、すぐに製品を持参して医師の診察を受けてください。
初期脱毛については、一時的なものである可能性が高いですが、抜け毛があまりにも長期間(例:3ヶ月以上)続く場合や、脱毛の範囲が広がる場合は、他の原因による脱毛症の可能性も考えられるため、この場合も医師に相談することが賢明です。
ミノキシジルの効果を実感できるまでの期間と使用方法
ミノキシジル配合の発毛剤は、使用してすぐに効果が現れるものではありません。発毛効果を実感するためには、一定期間、正しく使用を継続することが必要です。
ヘアサイクル(毛周期)には時間がかかるため、焦らずじっくりと取り組む心構えが大切です。
効果が出るまでの一般的な目安
発毛効果を実感できるまでの期間には個人差がありますが、国内の女性用1%ミノキシジル製品の臨床試験データなどに基づくと、一般的には「6ヶ月間」の使用が効果判定の一つの目安とされています。
早い方では3〜4ヶ月程度で抜け毛の減少やうぶ毛の発生といった変化を感じ始めることもありますが、多くの場合、目に見える効果(髪の毛の太さや本数の増加)を確認するには、少なくとも半年程度の継続使用が必要です。
もし6ヶ月間、用法・用量を守って使用しても全く改善の兆しが見られない場合は、壮年性脱毛症以外の原因が考えられるか、あるいはミノキシジルの効果が出にくい体質である可能性もあります。
その際は、使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
正しい使い方(塗布量、回数、タイミング)
ミノキシジルの効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを減らすためには、定められた用法・用量を厳守することが極めて重要です。
国内で承認されている女性用ミノキシジル製品(1%濃度)の場合、多くは「1日2回、1回1mL」を薄毛の気になる部分の頭皮に直接塗布するよう定められています。
使用するタイミングは、例えば朝と夜など、生活リズムに合わせて決めると良いでしょう。ただし、塗布の間隔は十分に空ける(例:朝の使用から夜の使用まで8〜12時間程度)ことが推奨されます。
夜は、洗髪して頭皮を清潔にし、しっかり乾かした後に塗布するのが効果的です。
多く使えば効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクを高めるだけです。1回の使用量(1mL)と1日の使用回数(2回)は、必ず守ってください。
女性用ミノキシジル外用薬の基本的な使用法(例)
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 使用頻度 | 1日2回(例:朝・夜) | 間隔を空け、回数を守る |
| 1回の量 | 1mL | 多くても少なくてもダメ。決められた量を守る |
| 塗布方法 | 頭皮に直接塗布し、指で軽く広げる | 髪ではなく頭皮につける。マッサージは不要 |
使用を継続する重要性
ミノキシジルによる発毛治療は、効果が出始めた後も使用を継続することが前提となります。
ミノキシジルは、壮年性脱毛症の原因そのものを根本的に治す薬ではありません。
使用を中止すると、ミノキシジルの作用によって維持されていたヘアサイクルが元の状態に戻ろうとし、再び抜け毛が増え始め、数ヶ月かけて元の薄毛の状態に戻ってしまうとされています。
つまり、効果を維持するためには、使用を続ける必要があります。
発毛効果を実感できたからといって自己判断で使用を中断せず、どの程度継続すべきか、あるいは他の治療法に切り替えるかなどについては、医師や薬剤師と相談しながら決めていくことが望ましいです。
育毛剤(医薬部外品)を選ぶメリット
発毛効果が認められているミノキシジル(医薬品)に対し、育毛剤(医薬部外品)を選ぶことには異なるメリットがあります。
薄毛の進行度や体質、求める効果によって、育毛剤の方が適している場合も多くあります。医薬品に比べて作用が穏やかな分、予防や頭皮ケアとして取り入れやすいのが特徴です。
副作用のリスクが比較的低い
育毛剤(医薬部外品)は、医薬品であるミノキシジルと比較して、重篤な副作用のリスクが低いとされています。
医薬部外品は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されていますが、医薬品に比べて作用が緩和であることを前提としています。
そのため、ミノキシジルで見られるような全身的な副作用(頭痛、動悸、多毛症など)の心配はほとんどありません。
もちろん、肌に合わなければ、かゆみやかぶれといった皮膚症状(アレルギー反応)が起こる可能性はゼロではありませんが、よりマイルドな使用感を求める方や、医薬品の使用に抵抗がある方にとっては大きなメリットとなります。
頭皮環境の改善や抜け毛予防が目的
育毛剤の主な目的は、発毛ではなく「育毛」と「抜け毛予防」です。
抜け毛の原因は様々ですが、頭皮の乾燥、過剰な皮脂、血行不良、炎症なども大きく関わっています。
育毛剤には、保湿成分、抗炎症成分、血行促進成分などがバランス良く配合されている製品が多く、これらが頭皮環境を健やかに整えるのを助けます。
「薄毛が進行しているわけではないが、抜け毛が増えた」「髪のハリ・コシがなくなってきた」「フケやかゆみが気になる」といった、薄毛の初期サインや頭皮トラブルの改善を目指す場合には、育毛剤によるケアが適しています。
ミノキシジルが体質に合わなかった場合の選択肢
発毛を期待してミノキシジルの使用を試みたものの、かゆみやかぶれ、あるいは他の副作用が出てしまい、使用を断念せざるを得なかったという方もいるでしょう。
そのような場合、何もケアを諦める必要はありません。医薬品が合わなかったとしても、医薬部外品の育毛剤で頭皮環境を整え、抜け毛を予防するケアに切り替えることは有効な選択肢です。
ミノキシジルとは異なる作用機序を持つ成分(例:女性ホルモンのバランスをサポートする成分や、独自の保湿・血行促進成分)を配合した育毛剤を選ぶことで、ご自身の体質に合ったケアが見つかる可能性があります。
女性向けの多様な製品ラインナップ
女性用の育毛剤(医薬部外品)市場は非常に大きく、多様な製品が開発・販売されています。
女性のデリケートな頭皮に合わせて、アルコールフリーや無香料、無着色、パラベンフリーといった低刺激設計にこだわった製品が豊富です。
また、使用感(ベタつかない、サラッとしている)や、ボトルのデザイン(おしゃれで洗面所に置きやすい)、香り(リラックスできるアロマの香り付きなど)にも工夫が凝らされているものが多いのも特徴です。
毎日使うものだからこそ、こうした使用感や好みに合わせて選べる幅が広いことは、育毛剤(医薬部外品)の大きなメリットと言えます。
女性向け育毛剤によく見られる特徴
- 低刺激設計(アルコールフリー、無香料、無着色など)
- ベタつきの少ないテクスチャー
- 保湿成分や美容成分の配合
- 使いやすいノズル形状(スプレー、ダイレクトノズルなど)
- 女性ホルモン様成分(例:イソフラボン)の配合
ミノキシジルと育毛剤の併用は可能?
「発毛効果のあるミノキシジルと、頭皮環境を整える育毛剤を一緒に使えば、より高い効果が期待できるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、医薬品と医薬部外品(または他の医薬品)を自己判断で併用することにはリスクが伴います。
併用に関する基本的な考え方
ミノキシジル配合の発毛剤の添付文書(説明書)には、通常、「他の育毛剤及び外用剤(軟膏、液剤等)の頭皮への使用は、避けてください」といった内容の記載があります。
これは、他の薬剤と併用した場合、ミノキシジルの吸収に影響が出たり、副作用のリスクが高まったりする可能性があるためです。
例えば、育毛剤に含まれる成分(アルコールや他の薬剤など)が頭皮の状態を変化させ、ミノキシジルが過剰に吸収されてしまう危険性や、逆に効果が弱まる可能性、あるいは成分同士が反応して頭皮トラブルを起こす可能性も否定できません。
したがって、原則として、ミノキシジル外用薬と他の育毛剤(医薬部外品)を同じ時期に頭皮の同じ場所へ使用することは推奨されません。
医師や薬剤師への相談の重要性
どうしても併用を検討したい特別な事情がある場合や、現在使用中のヘアケア製品(育毛剤以外も含む)がミノキシジルと併用しても問題ないか不安な場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
特に、皮膚科で薄毛治療を受けている場合は、医師が治療計画全体を管理しています。市販の製品(ミノキシジル発毛剤や育毛剤)を追加で使用したい場合は、必ず医師の許可を得てください。
ドラッグストアでミノキシジル発毛剤を購入する際も、薬剤師に現在使用中の薬や育毛剤について正確に伝えることが、安全な使用のために重要です。
併用時の確認事項
| 確認先 | 伝えるべき情報 | 確認すべき内容 |
|---|---|---|
| 医師 | 現在使用中の全ての薬・育毛剤 | ミノキシジルの使用(または併用)の可否 |
| 薬剤師 | 購入したい製品と、使用中の薬・育毛剤 | 併用のリスク、安全な使用方法 |
併用する場合の注意点
万が一、医師の指導のもとで例外的に併用が許可された場合でも、最大限の注意が必要です。
例えば、使用する時間帯を完全に分ける(朝は育毛剤、夜はミノキシジルなど)、塗布する場所を分ける、といった指示が出ることがあるかもしれません。しかし、これらも自己判断で行うべきではありません。
基本的には「併用は避ける」という原則に立ち返ることが、安全性を確保する上で最も賢明な判断です。
まずはミノキシジルならミノキシジル、育毛剤なら育毛剤と、一つの製品を定められた用法・用量で一定期間(ミノキシジルなら最低6ヶ月)継続して使用し、その効果を見極めることを優先しましょう。
ミノキシジル以外の女性の薄毛対策
女性の薄毛の原因は、壮年性脱毛症(FAGA)だけでなく、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、過度なダイエットによる栄養不足、不適切なヘアケアなど、非常に多岐にわたります。
ミノキシジルや育毛剤の使用と並行して、あるいはそれ以前に、生活習慣全体を見直すことが薄毛対策の基本であり、非常に重要です。
頭皮環境を整えるヘアケア
健やかな髪は、健やかな頭皮から育ちます。頭皮環境を悪化させるようなヘアケアは、抜け毛を助長する原因となります。
毎日のシャンプーは、頭皮の汚れや余分な皮脂を落とすために必要ですが、洗浄力が強すぎるシャンプーや、爪を立ててゴシゴシ洗う方法は、頭皮を乾燥させたり傷つけたりする原因になります。
アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選び、指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。
すすぎ残しは毛穴詰まりや炎症の原因になるため、十分すぎるくらい丁寧にすすぐことが大切です。
また、洗髪後はドライヤーでしっかりと乾かしてください。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすく、頭皮トラブルの原因となります。
ただし、ドライヤーの熱を近づけすぎると頭皮や髪のダメージになるため、適度な距離を保ちましょう。
食生活の見直しと栄養バランス
髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。過度なダイエットや偏った食事は、髪の成長に必要な栄養素の不足を招き、薄毛の直接的な原因となります。
髪の主成分である「ケラチン」はタンパク質でできています。肉、魚、卵、大豆製品などの良質なタンパク質を毎食摂ることを心がけましょう。
また、タンパク質の合成を助け、頭皮の健康を保つビタミン(特にビタミンB群、C、E)や、ミネラル(特に亜鉛、鉄)も不可欠です。
亜鉛はケラチンの合成に、鉄は酸素を運ぶヘモグロビンの材料となり、頭皮への酸素供給に重要です。
特定の食品ばかり食べるのではなく、野菜、海藻、ナッツ類なども取り入れ、バランスの良い食事を目指すことが、体内からの育毛につながります。
髪の健康に必要な主な栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝、皮脂分泌の調整 | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、納豆 |
生活習慣(睡眠、ストレス管理)の改善
不規則な生活習慣は、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭皮の血流悪化や皮脂の過剰分泌につながります。
特に重要なのが「睡眠」です。髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。
特に夜10時から深夜2時の間がゴールデンタイムと言われることがありますが、時間帯よりも「質の良い睡眠を十分にとる」ことが重要です。
毎日決まった時間に寝起きし、睡眠時間を確保するよう努めましょう。
また、過度な「ストレス」は血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させます。ストレスは万病のもとと言いますが、髪にとっても大敵です。
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりのリラックス方法(趣味の時間、適度な運動、入浴など)を見つけ、上手に発散させることが大切です。
よくある質問
- ミノキシジルをやめるとどうなりますか?
-
ミノキシジルの使用を中止すると、発毛効果も失われることになります。
ミノキシジルは壮年性脱毛症の原因自体を治すものではなく、使用している間のヘアサイクルを改善する働きを持つためです。
使用をやめると、数ヶ月かけて元の脱毛の状態に戻っていくとされています。効果を維持するためには、継続して使用する必要があります。
- 妊娠中や授乳中にミノキシジルは使えますか?
-
いいえ、妊娠中、授乳中、または妊娠している可能性のある方はミノキシジルを使用できません。
ミノキシジル成分が胎児や乳児へ移行する可能性があり、その安全性が確立されていないためです。製品の添付文書にも「使用しないこと」と明記されています。
産後の抜け毛などで悩んでいる場合も、自己判断で使用せず、まずは医師に相談してください。
- ミノキシジルはどのくらいの濃度を選べば良いですか?
-
女性の場合、国内で市販薬として承認されているのは「1%」濃度のミノキシジル製品です。
男性用には5%濃度の製品もありますが、女性が5%製品を使用した場合の有効性や安全性は国内で確認されていません。
多毛症などの副作用リスクが高まる可能性も指摘されているため、女性は必ず女性用として承認されている1%の製品を使用してください。
- 育毛剤とミノキシジル配合発毛剤はどこで購入できますか?
-
育毛剤(医薬部外品)は、ドラッグストア、薬局、バラエティショップ、オンラインストアなど、幅広く購入できます。
一方、ミノキシジルを配合した発毛剤は「第1類医薬品」に分類されるため、薬剤師がいる薬局やドラッグストアでのみ購入可能です。
購入時には薬剤師による情報提供(副作用や使用上の注意点などの確認)を受けることが法律で義務付けられています。
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