AGA(男性型脱毛症)は、成人男性によく見られる進行性の脱毛症です。
多くの方が「年のせいかな」と見過ごしがちですが、早期に特徴的な症状を把握し、適切に対処することで、その進行を遅らせることが期待できます。
この記事では、AGAの具体的な症状や、ご自身でできるセルフチェックの方法を詳しく解説します。薄毛や抜け毛の悩みをお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
AGAの症状|正しい理解が早期発見への第一歩

AGA(男性型脱毛症)は、主に成人男性に見られる脱毛症で、その特徴的な症状を理解することが早期発見と対策への重要な鍵となります。AGAはゆっくりと進行するため、初期の小さな変化に気づきにくいことがあります。
しかし、放置すると薄毛の範囲が広がり、見た目の印象に大きな影響を与える可能性があります。
AGAの症状は、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛乳頭細胞に作用し、毛髪の成長期を短縮させることが主な原因と考えられています。
この結果、髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちたり、細く短い毛(軟毛)に置き換わったりします。正しい知識を持つことで、変化にいち早く気づき、専門のクリニックへの相談など、次の行動に移しやすくなります。
AGAの主な特徴
AGAの症状にはいくつかの共通した特徴があります。まず、特定の部位から薄毛が始まる傾向があることです。
多くの場合、生え際や頭頂部から症状が現れます。また、抜け毛の量が増えるだけでなく、髪の毛そのものの質にも変化が見られます。
以前よりも髪が細くなったり、コシがなくなったりするのもAGAのサインの一つです。これらの症状は遺伝的な要因も関与すると言われていますが、生活習慣やストレスなども影響する可能性があります。
進行性の脱毛症であるため、早期に気づき、適切な対策を講じることが、将来の髪の状態を保つ上で大切です。
進行パターンと個人差
AGAの進行パターンには個人差がありますが、一般的には前頭部の生え際が後退する「M字型」や、頭頂部が薄くなる「O字型」、あるいはこれらが混合した形など、いくつかの典型的なパターンが存在します。
進行の速さも人それぞれで、数年かけてゆっくりと進行する場合もあれば、比較的短期間で目立つようになる場合もあります。
自分の薄毛がAGAによるものなのか、またどの程度進行しているのかを客観的に把握するためには、定期的なセルフチェックや専門医による診断が役立ちます。
気づきやすい場所|AGAが始まる典型的な部位と症状
AGAの症状は、多くの場合、特定の部位から現れ始めます。これらの典型的な部位と初期症状を知っておくことで、AGAの早期発見につながります。特に注意して観察すべきは、生え際と頭頂部です。

これらの部位の変化は、AGAの可能性を示唆する重要なサインとなります。
生え際の後退(M字型脱毛)
AGAの代表的な症状の一つが、前頭部の生え際からの薄毛です。特に額の左右のそりこみ部分が後退し、正面から見たときにアルファベットの「M」のような形になることから、「M字型脱毛」とも呼ばれます。

初期には、以前よりもおでこが広くなったように感じたり、生え際の髪が細くなったりする変化が見られます。鏡で正面からだけでなく、少し上から見下ろすように確認すると、変化に気づきやすいでしょう。
このタイプの薄毛は、AGAの進行とともにM字の切れ込みが深くなっていく傾向があります。
生え際の抜け毛と髪質の変化
生え際の後退と同時に、その部分の抜け毛が増えたり、残っている髪の毛が細く弱々しくなったりするのも特徴です。洗髪時やブラッシング時に、以前よりも生え際周辺の抜け毛が目立つようになったら注意が必要です。
また、髪の毛にハリやコシがなくなり、セットがしにくくなることもあります。これらの変化は、男性ホルモンの影響で毛髪の成長サイクルが乱れている証拠かもしれません。
頭頂部の薄毛(O字型脱毛)
頭頂部、いわゆる「つむじ」周辺から薄毛が始まるのもAGAの典型的なパターンです。
「O字型脱毛」や「頭頂部型脱毛」と呼ばれ、自分では直接見えにくい部位であるため、家族や友人から指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。
合わせ鏡を使ったり、スマートフォンで撮影したりして、定期的に頭頂部の状態を確認することが大切です。初期には、つむじ周辺の地肌が透けて見えるようになり、徐々にその範囲が広がっていきます。
頭頂部の地肌の透け感と毛量の減少
頭頂部の薄毛は、まず髪の毛全体のボリューム感が失われ、地肌が透けて見えるようになることから始まります。特に髪が濡れているときや、強い光の下では、地肌の露出がより目立ちやすくなります。
抜け毛の増加もサインの一つですが、頭頂部の場合は髪が細くなることによる全体の密度の低下が、見た目の薄毛感に大きく影響します。この部位の薄毛も進行性であり、放置するとO字型の薄い部分が徐々に拡大していきます。
AGAの初期サインが現れやすい部位
部位 | 主な初期症状 | 確認のポイント |
---|---|---|
生え際(特に額の左右) | そりこみが深くなる、おでこが広がる、髪が細くなる | 鏡で正面・やや上から確認、以前の写真と比較 |
頭頂部(つむじ周辺) | 地肌が透けて見える、髪のボリューム低下、つむじが広がる | 合わせ鏡や写真で確認、髪が濡れた状態での確認 |
前頭部全体 | 生え際全体が後退する、髪の密度が低下する | 髪をかきあげて確認、分け目の変化 |
進行の形跡|AGAのステージ別に現れる症状変化

AGAは進行性の脱毛症であり、その進行度合いによって現れる症状も変化します。
一般的に、AGAの進行度は「ハミルトン・ノーウッド分類」という指標で評価されますが、ここではより分かりやすく、初期、中期、後期のステージに分けて症状の変化を解説します。
ご自身の状態がどの段階に近いかを把握することは、適切な対策を考える上で重要です。
初期ステージの症状
AGAの初期ステージでは、薄毛や抜け毛の変化はまだ軽微で、本人も気づかないか、気になり始めても「気のせいかもしれない」と思い過ごしやすい時期です。しかし、注意深く観察すると、いくつかのサインが見られます。
- 生え際がわずかに後退し始めた、またはそりこみ部分が少し深くなったように感じる。
- 頭頂部の髪のボリュームが以前より減った気がする、またはつむじが少し広がったように見える。
- 抜け毛の量がやや増えた、特に枕や排水溝に溜まる毛が気になる。
- 髪の毛が以前より細くなった、ハリやコシがなくなったと感じる。
この段階では、まだ他人から見て明らかに薄毛と認識されることは少ないかもしれませんが、これらの初期症状に気づいたら、早めに専門のクリニックに相談することを検討しましょう。
早期の対策が、その後の進行を緩やかにする上で効果的です。
中期ステージの症状
中期ステージに入ると、薄毛の範囲が広がり、本人だけでなく周囲の人からも薄毛が認識されやすくなります。生え際の後退や頭頂部の薄毛が明らかになり、地肌が透けて見える範囲が拡大します。
M字部分と頭頂部の進行
生え際がM字型に後退している場合、その切れ込みがさらに深くなり、前頭部中央の毛髪も薄くなり始めることがあります。頭頂部の薄毛はO字型に広がり、直径が大きくなります。
人によっては、生え際と頭頂部の薄毛が同時に進行し、やがて繋がろうとする兆候が見られることもあります。この時期になると、髪型の工夫だけでは薄毛をカバーしきれなくなり、精神的なストレスを感じる方も増えてきます。
抜け毛の量も安定して多く、髪の毛はさらに細く、弱々しくなる傾向があります。
後期ステージの症状
後期ステージでは、薄毛の範囲がさらに拡大し、前頭部から頭頂部にかけて広範囲にわたり地肌が露出します。側頭部や後頭部の毛髪は残っているものの、頭頂部にはほとんど毛髪がない状態になることもあります。
この段階まで進行すると、男性ホルモンの影響を受けにくいとされる側頭部や後頭部の毛髪のみが残る、AGA特有のパターンが顕著になります。
ここまで進行すると、治療による発毛効果も限定的になる可能性があるため、AGAの症状に気づいたら、できるだけ早い段階で対策を始めることが重要です。
AGA進行度と主な症状の目安
進行ステージ | 生え際の主な状態 | 頭頂部の主な状態 |
---|---|---|
初期 | わずかな後退、そりこみがやや深くなる | つむじ周りのボリューム低下、地肌が少し透ける |
中期 | M字が明確になる、前頭部中央も薄毛傾向 | O字型の薄毛が拡大、地肌の露出が目立つ |
後期 | 前頭部から頭頂部にかけて広範囲に薄毛・脱毛 | 頭頂部の毛髪がほとんどない状態、側頭部・後頭部は残る |
見逃しがちな兆候|AGAの初期症状を知る

AGAの進行を食い止める、あるいは遅らせるためには、初期症状を見逃さないことが何よりも大切です。しかし、AGAの初期症状は非常に微妙で、日常生活の中では気づきにくいものが多いのが実情です。
「最近少し髪型が決まりにくくなった」「枕元の抜け毛が少し増えたかな」といった些細な変化が、実はAGAの始まりを示している可能性があります。
ここでは、特に見逃しやすいAGAの初期症状について詳しく解説します。
抜け毛の質の変化
AGAの初期症状として、抜け毛の量だけでなく「質」の変化にも注目する必要があります。
正常なヘアサイクルで抜け落ちる毛は、ある程度の太さと長さがありますが、AGAが進行し始めると、毛根がDHT(ジヒドロテストステロン)の影響を受けて十分に成長できず、細く短い毛や、色の薄い産毛のような毛が抜け落ちるようになります。
洗髪時やブラッシングの際に、このような弱々しい抜け毛が目立つようになったら、それはAGAの初期症状かもしれません。特に、以前は見られなかったような細い毛が混じっている場合は注意が必要です。
抜け毛の太さと長さのチェック
普段から自分の抜け毛を観察する習慣をつけましょう。特にシャンプー時の排水溝や、朝起きた時の枕元などをチェックします。太くしっかりとした毛だけでなく、細くて短い毛、弱々しい毛が増えていないかを確認します。
もし、細い毛の割合が増えているようであれば、毛髪のミニチュア化(軟毛化)が始まっている可能性があり、これはAGAの典型的な初期症状の一つです。
頭皮環境の変化
AGAの初期には、頭皮環境に変化が現れることもあります。例えば、頭皮が以前よりも脂っぽくなったり、逆に乾燥してフケが出やすくなったりすることがあります。また、頭皮にかゆみや赤みを感じるようになる人もいます。
これらの頭皮トラブルが直接AGAの原因となるわけではありませんが、AGAが進行しやすい頭皮環境のサインである可能性があります。
特に、皮脂の過剰な分泌は毛穴を詰まらせ、毛髪の健やかな成長を妨げる一因となることも考えられます。頭皮の状態を清潔に保つことは、健康な髪を育む上で基本となります。
頭皮のべたつきやかゆみ
見逃しがちな初期症状 | 具体的な変化 | 考えられること |
---|---|---|
抜け毛の質の変化 | 細く短い毛、色の薄い毛が増える | 毛髪の軟毛化、成長期の短縮 |
頭皮のべたつき | 洗髪後数時間で頭皮が脂っぽくなる | 皮脂分泌のバランス乱れ |
頭皮のかゆみ・フケ | 乾燥や炎症によるかゆみ、細かいフケ | 頭皮環境の悪化 |
髪のセットのしにくさ
以前は簡単にできていたヘアセットが、最近どうもうまくいかない、ボリュームが出にくい、といった悩みもAGAの初期症状の一つかもしれません。
これは、髪の毛一本一本が細くなったり、ハリやコシを失ったりすることで、髪全体のまとまりが悪くなるために起こります。特に、髪の分け目が広くなったように感じたり、つむじ周りがペタッとしてしまう場合は注意が必要です。
毎朝のスタイリング時に、髪質の変化を感じたら、それはAGAのサインかもしれません。
自分で確認|効果的なAGAセルフチェック手法

AGAの早期発見には、定期的なセルフチェックが非常に有効です。専門のクリニックで診断を受けるのが最も確実ですが、その前に自分自身でAGAの兆候を把握しておくことは、対策を始めるきっかけになります。
ここでは、自宅で簡単にできる効果的なAGAセルフチェックの手法を紹介します。これらのチェックを習慣化し、髪と頭皮の状態変化に敏感になりましょう。
鏡を使った視覚的チェック
最も基本的なセルフチェックは、鏡を使って自分の頭髪の状態を視覚的に確認することです。正面だけでなく、手鏡を使いながら頭頂部や後頭部、側頭部など、様々な角度から観察します。
特に以下のポイントに注意してチェックしましょう。
- 生え際の位置は変わっていないか(以前の写真と比較するとより分かりやすい)
- 額のそりこみ部分(M字部分)が深くなっていないか
- 頭頂部(つむじ周辺)の地肌が透けて見えないか
- 髪の分け目が以前より広がっていないか
- 髪全体のボリューム感はどうか
これらのチェックは、毎日あるいは週に一度など、定期的に行うことが大切です。明るい場所で、できれば髪が乾いているときと濡れているときの両方で確認すると、より変化に気づきやすくなります。
抜け毛の本数と質のチェック
1日に抜ける髪の毛の本数は、健康な人でも50本から100本程度と言われています。しかし、AGAが進行すると、この本数が大幅に増加することがあります。
洗髪時の排水溝、ブラッシング時のブラシ、朝起きた時の枕などに付着している抜け毛の量を意識的に確認しましょう。急に抜け毛が増えたと感じる場合は注意が必要です。
また、抜け毛の「質」も重要なチェックポイントです。太くしっかりとした毛だけでなく、細くて短い毛や、毛根部分が細くなっている毛が多くないかを確認します。
AGAでは毛髪が十分に成長する前に抜けてしまうため、このような質の悪い抜け毛が増える傾向があります。
抜け毛チェックのポイント
チェック項目 | 確認方法 | 注意すべきサイン |
---|---|---|
抜け毛の本数 | 洗髪時、起床時、ブラッシング時 | 1日に100本を超える状態が続く、急激な増加 |
抜け毛の太さ・長さ | 抜け毛を指でつまんで確認 | 細く短い毛、弱々しい毛が多い |
毛根の状態 | 抜け毛の毛根部分を観察 | 毛根が小さい、形がいびつ、皮脂が付着 |
髪の質感と頭皮の状態チェック
髪の毛全体の質感の変化もAGAのサインです。以前と比べて髪が細くなった、柔らかくなった、ハリやコシがなくなった、パサつきやすくなった、といった変化がないか触って確認しましょう。
また、頭皮の状態もチェックします。頭皮が硬くなっていないか、指で軽くマッサージするように動かしてみて確認します。健康な頭皮はある程度の弾力がありますが、血行が悪くなると硬くなることがあります。
その他、頭皮の赤み、かゆみ、フケ、過度なべたつきなども、頭皮環境が悪化しているサインであり、AGAの進行と関連している可能性があります。
髪質の変化|AGAに伴う毛髪の状態変化

AGA(男性型脱毛症)は、単に抜け毛が増えるだけでなく、残っている髪の毛の質にも大きな変化をもたらします。この髪質の変化は、AGAの進行を示す重要なサインであり、早期に気づくことが対策への第一歩となります。
AGAによって髪質がどのように変わるのかを具体的に理解し、ご自身の髪の状態と比較してみましょう。
毛髪の軟毛化(ミニチュア化)
AGAの最も特徴的な髪質の変化は、「毛髪の軟毛化(ミニチュア化)」です。これは、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛乳頭細胞に作用し、毛髪の成長期を短縮させてしまうために起こります。
通常、髪の毛は太く長く成長する「成長期」、成長が止まる「退行期」、そして抜け落ちる「休止期」というヘアサイクルを繰り返します。しかし、AGAが進行すると、この成長期が極端に短くなり、髪の毛が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまうのです。
その結果、新しく生えてくる髪の毛は細く、短く、色素も薄い、まるで産毛のような弱々しい毛(軟毛)になってしまいます。この軟毛化が進行すると、全体の毛髪密度が低下し、地肌が透けて見えるようになります。
軟毛化のサイン
変化のポイント | 具体的な状態 |
---|---|
髪の太さ | 以前より明らかに細くなった、弱々しい感じ |
髪のハリ・コシ | 髪に弾力がなくなり、ペタッとしやすい |
髪の色素 | 色が薄く、産毛のようになっている部分がある |
ハリ・コシの低下とボリュームダウン
毛髪の軟毛化に伴い、髪全体のハリやコシも失われていきます。以前はスタイリングで簡単に立ち上がっていた髪が、思うようにボリュームを出せなくなったり、分け目がペタッとして地肌が目立ちやすくなったりします。
髪に弾力がなくなるため、全体的に元気がない印象になり、薄毛感を強調してしまうこともあります。特に頭頂部や前髪など、AGAの影響を受けやすい部位でこの変化は顕著に現れます。
触ったときの感触も、以前のようなしっかりとした手応えがなくなり、柔らかく頼りない感じになるでしょう。
髪の成長速度の低下
AGAが進行すると、髪の毛の成長速度自体も遅くなることがあります。ヘアサイクルにおける成長期が短縮されるため、髪が伸びるスピードが全体的に遅く感じられるようになるのです。
美容院に行く頻度が減った、あるいは以前と同じ期間でも髪があまり伸びていないと感じる場合は、AGAによる影響の可能性があります。これは、毛母細胞の活動が低下しているサインとも考えられます。
髪の成長が遅いと感じたら、他のAGAの兆候と合わせて注意深く観察することが大切です。
写真比較によるAGA進行度の確認法

AGAの進行は緩やかであることが多く、日々の小さな変化には気づきにくいものです。そのため、客観的に進行度を把握する手段として、定期的な写真撮影と比較が非常に有効です。
写真は、ご自身の記憶よりも正確に過去の状態を記録し、わずかな変化も見逃さないための「証拠」となります。ここでは、効果的な写真比較によるAGA進行度の確認方法について解説します。
定期的な写真撮影の重要性
「最近、薄くなってきた気がする」という感覚は主観的なものであり、その日の体調や気分によっても左右されがちです。しかし、写真は客観的な記録として、AGAの進行状態を時系列で比較することを可能にします。
例えば、3ヶ月ごと、あるいは半年ごとに同じ条件で頭部の写真を撮影し続けることで、生え際の位置の変化、頭頂部の地肌の透け具合、毛量の変化などを具体的に追跡できます。
これにより、AGAがどの程度の速さで進行しているのか、あるいは対策の効果が出ているのかを判断する材料にもなります。クリニックでの相談時にも、これらの写真は医師にとって貴重な情報源となります。
撮影時のポイント
効果的な比較のためには、毎回できるだけ同じ条件で撮影することが重要です。以下の点に注意して撮影しましょう。
撮影場所と照明 | 毎回同じ場所で、同じ明るさ(自然光が望ましいが、難しければ同じ照明下)で撮影する。 |
---|---|
撮影アングル | 正面、頭頂部、左右の生え際など、気になる箇所を複数の角度から撮影する。手鏡を合わせるか、誰かに撮ってもらうと良いでしょう。 |
髪の状態 | 洗髪後、髪を乾かした自然な状態で撮影する。整髪料はつけない方が比較しやすいです |
カメラと距離 | 同じカメラ(スマートフォンのカメラで十分)を使用し、頭部からの距離もできるだけ一定に保つ。 |
比較する際の注意点
撮影した写真を比較する際には、いくつかの注意点があります。まず、短期間での比較では変化が分かりにくいことがあるため、最低でも3ヶ月以上の間隔を空けた写真同士で比較することが望ましいです。
また、髪の長さやスタイリングによっても見え方が変わることがあるため、その点も考慮に入れます。写真だけでなく、撮影時の抜け毛の量や髪の質感など、気づいたことをメモとして残しておくと、より総合的に状態を把握できます。
もしAGAの進行が疑われる場合は、自己判断せずに専門のクリニックに相談し、医師の診断を受けることが大切です。写真はあくまで自己管理の一環として活用しましょう。
写真で確認すべき変化点
確認部位 | チェックポイント | 変化の例 |
---|---|---|
生え際(正面・M字部分) | 生え際ラインの位置、M字の深さ | ラインが後退、M字がより鋭角になる |
頭頂部(つむじ周辺) | 地肌の見える範囲、髪の密度 | 地肌の露出範囲が拡大、つむじが大きくなる |
髪全体のボリューム | 髪の厚み、分け目の幅 | 全体的にペタッとする、分け目が広がる |
正常な抜け毛かAGAか|見分けるためのポイント

誰でも毎日ある程度の髪の毛は自然に抜け落ちます。これを「正常な抜け毛(自然脱毛)」と呼び、ヘアサイクルの一環です。
しかし、AGA(男性型脱毛症)による抜け毛は、この正常な範囲を超えたり、質が異なったりする特徴があります。
抜け毛が増えたと感じたとき、それが心配のいらないものなのか、それともAGAのサインなのかを見分けることは、早期対策のために非常に重要です。ここでは、その見分け方のポイントを解説します。
1日の抜け毛の本数
健康な人の場合、1日に平均して50本から100本程度の髪の毛が抜けると言われています。この本数は季節や体調によっても多少変動します。例えば、秋口には一時的に抜け毛が増える傾向があるとも言われます。
しかし、AGAが進行している場合、この本数がコンスタントに100本を超え、時には200本以上になることもあります。
洗髪時や朝起きた時の枕元の抜け毛の量を注意深く観察し、明らかに以前より量が増えている、あるいはその状態が数週間以上続くようであれば、AGAの可能性を考慮する必要があります。
ただし、正確な本数を毎日数えるのは難しいため、「以前と比べて明らかに増えた」という感覚も重要な判断材料になります。
抜け毛の質(太さ、長さ、毛根)
抜け毛の「質」は、AGAを見分ける上で非常に重要なポイントです。正常なヘアサイクルを終えて自然に抜け落ちる毛は、ある程度の太さと長さを持ち、毛根部分も丸みを帯びてしっかりしていることが多いです。
一方、AGAによって抜け落ちる毛は、成長期が短縮されているため、細く短い毛や、色素の薄い産毛のような毛が多くなります。また、毛根部分が小さかったり、形がいびつだったり、皮脂が付着してべたついていることもあります。
抜け落ちた毛を数本手に取り、じっくり観察してみましょう。細く弱々しい毛の割合が多い場合は、AGAが進行しているサインかもしれません。
抜け毛の質による比較
特徴 | 正常な抜け毛 | AGAによる抜け毛の可能性 |
---|---|---|
太さ・長さ | 比較的太く、ある程度の長さがある | 細く短い、産毛のような毛が多い |
毛根の形状 | 丸みを帯び、ふくらんでいる | 小さい、いびつ、皮脂が付着している |
色 | しっかりとした黒色(または自毛の色) | 色が薄い、茶色がかっていることがある |
他の症状との組み合わせ
抜け毛の量や質だけでなく、他のAGA特有の症状と合わせて判断することも大切です。
例えば、生え際の後退(M字部分の進行)、頭頂部の薄毛(O字型の進行)、髪全体のボリュームダウン、髪のハリ・コシの低下といった症状が同時に見られる場合は、AGAの可能性がより高まります。
抜け毛の増加が一時的なものではなく、これらの症状とともに慢性的に続いている場合は、専門のクリニックで相談することを強く推奨します。
遺伝的な要因もAGAの発症に関係するため、家族に薄毛の方がいる場合も、より注意深く観察することが望ましいでしょう。
他の脱毛症との違い|AGAに特徴的な症状パターン

薄毛や抜け毛を引き起こす原因はAGA(男性型脱毛症)だけではありません。円形脱毛症や脂漏性脱毛症、牽引性脱毛症など、様々な種類の脱毛症が存在します。
それぞれ原因や症状の現れ方が異なるため、ご自身の症状がAGAによるものなのか、それとも他の脱毛症の可能性があるのかをある程度見極めることは、適切な対処法を選択する上で重要です。
ここでは、AGAに特徴的な症状パターンと、他の代表的な脱毛症との違いについて解説します。
AGAの典型的な進行パターン
AGAの最も大きな特徴は、特定のパターンで薄毛が進行することです。主に前頭部の生え際と頭頂部から薄毛が始まり、徐々に範囲が広がっていきます。 具体的には、
- 生え際のそりこみ部分が後退していく「M字型」
- 頭頂部(つむじ周辺)が円形に薄くなる「O字型」
- 前頭部から頭頂部にかけて全体的に薄くなる「U字型(V字型)」
これらのパターンが単独で、あるいは複合的に現れます。進行しても側頭部や後頭部の毛髪は比較的残ることが多いのも特徴です。
また、AGAは急激に脱毛が起こるというよりは、数年から数十年かけてゆっくりと進行するケースが一般的です。抜け毛は細く短いものが多くなり、髪全体のボリュームが徐々に失われていきます。
円形脱毛症との違い
円形脱毛症は、自己免疫疾患の一つと考えられており、突然、円形または楕円形の脱毛斑が頭部や体毛に現れるのが特徴です。脱毛斑は1箇所だけでなく、複数箇所にできることもあります。
AGAのように特定の部位からゆっくり進行するのではなく、境界がはっきりとした脱毛斑が急に現れる点が大きな違いです。脱毛斑の大きさは様々で、小さいものから頭部全体に及ぶものまであります。
かゆみや軽い痛みを感じることもありますが、無症状の場合も多いです。原因は完全には解明されていませんが、ストレスやアレルギー、遺伝的要因などが関与すると考えられています。
脂漏性脱毛症との違い
脂漏性脱毛症は、頭皮の皮脂が過剰に分泌されることで起こる「脂漏性皮膚炎」が悪化し、抜け毛が増える状態を指します。頭皮に赤みやかゆみ、べたつき、湿ったフケが多く見られるのが特徴です。
AGAのように特定のパターンで薄毛が進行するのではなく、頭部全体的にびまん性(広範囲)に脱毛が起こることが多いです。毛穴が皮脂で詰まり、炎症を起こすことで毛髪の成長が妨げられ、抜け毛につながります。
適切な頭皮ケアや皮膚科での治療により、頭皮環境が改善すれば抜け毛も減少する可能性があります。
主な脱毛症の症状比較
脱毛症の種類 | 主な脱毛パターン | その他の特徴的な症状 |
---|---|---|
AGA(男性型脱毛症) | 生え際の後退(M字)、頭頂部の薄毛(O字)など特定のパターンで進行 | 細く短い抜け毛、進行性、男性ホルモンの影響、遺伝的要因 |
円形脱毛症 | 円形・楕円形の脱毛斑が突然出現 | 境界明瞭な脱毛、自己免疫疾患の可能性、かゆみを伴うことも |
脂漏性脱毛症 | 頭部全体のびまん性脱毛が多い | 頭皮の赤み、かゆみ、べたつき、湿ったフケ、皮脂の過剰分泌 |
これらの情報はあくまで一般的な目安です。自己判断せずに、薄毛や抜け毛で悩んでいる場合は、早めに専門のクリニックを受診し、医師による正確な診断を受けることが大切です。
適切な診断に基づいて、個々の状態に合った対策や治療法を選択することが、悩みの解決への近道となります。
Q&A
ここでは、AGAの症状やセルフチェックに関してよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
AGAの症状や進行パターンについてご理解いただけたでしょうか。AGAは早期の対策が鍵となります。
ご自身の状態をより詳しく知りたい方、また具体的な原因やどのような検査が行われるのかについて関心をお持ちの方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
Reference
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