ある日突然、鏡を見て「あれ?」と気づく円形の脱毛。それは円形脱毛症のサインかもしれません。この症状は、性別や年齢を問わず誰にでも起こりうるものです。
この記事では、円形脱毛症の典型的な初期症状から、自分でできる効果的なセルフチェックの方法、そしてどのような状態になったら医療機関を受診すべきかについて、詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
円形脱毛症の典型的な初期症状
円形脱毛症は、多くの場合、自覚症状がないまま進行します。しかし、注意深く観察すれば、初期のサインを見つけることができます。
まずは円形脱毛症の典型的な初期症状について解説します。
ある日突然、髪の毛に異変が

円形脱毛症の始まりは、多くの場合、予期せぬ形で訪れます。普段と変わらない生活を送っている中で、ふとした瞬間に髪の毛の異変に気づくことがあります。
最初のサインは抜け毛の増加
シャンプー時や朝起きた時の枕元など、普段よりも抜け毛が多いと感じたら注意が必要です。特に、短い毛や細い毛が目立つ場合は、円形脱毛症の初期症状である可能性があります。
健康な頭皮でも1日に50本から100本程度の髪の毛は自然に抜けますが、それを明らかに超える量が続く場合は、何らかの頭皮トラブルを抱えているサインかもしれません。
頭皮のかゆみや違和感
円形脱毛症の発症前に、頭皮にかゆみやピリピリとした軽い痛み、または何となく違和感を覚えることがあります。
全ての人に現れるわけではありませんが、このような自覚症状がある場合は、脱毛斑が出現する前触れの可能性があります。
かゆみが強い場合は、他の皮膚疾患との鑑別も必要になるため、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。
円形脱毛症の初期症状チェック
チェック項目 | 具体的な状態 | 考えられること |
---|---|---|
抜け毛の量 | シャンプー時、排水溝に溜まる毛が多い。枕に付着する毛が増えた。 | 毛周期の乱れ、脱毛の始まりの可能性。 |
頭皮の感覚 | 特定の部分にかゆみ、軽い痛み、または違和感がある。 | 炎症や神経系の過敏反応の可能性。 |
髪質の変化 | 一部の髪が細くなったり、切れやすくなったりしている。 | 毛母細胞の活動低下のサイン。 |
円形脱毛症とは? – 自己免疫疾患の可能性
円形脱毛症は、毛包組織に対する自己免疫反応が関与していると考えられています。つまり、免疫系が誤って自分自身の毛包を攻撃してしまうことで、毛が抜け落ちてしまうのです。

この自己免疫疾患としての側面が、円形脱毛症の理解には重要です。
子供や女性にも見られる症状
円形脱毛症は成人の男性に多いというイメージがあるかもしれませんが、実際には子供や女性にも発症します。特に学童期以降の子供に見られることもあり、学校生活や心理面に影響を与えることもあります。
女性の場合、ホルモンバランスの変化や妊娠・出産が誘因となることも指摘されていますが、明確な因果関係はまだ解明されていません。
ストレスは関係する?
一般的に「ストレスで円形脱毛症になる」と言われることがありますが、ストレスはあくまで誘因の一つであり、直接的な原因ではありません。
過度な精神的ストレスや肉体的疲労が免疫系のバランスを崩し、自己免疫反応を引き起こしやすくする可能性は考えられます。
しかし、ストレスが全くない人でも発症するケースもあり、原因は複合的であると理解することが大切です。
「あれ?」と気づいたら – 円形脱毛症の早期発見ポイント
円形脱毛症は、初期の段階で気づくことができれば、早期の対応につながり、症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。ここでは、早期発見のためのポイントを解説します。
見逃しやすい初期の脱毛斑
円形脱毛症の初期に現れる脱毛斑は、コイン程度の大きさであることが多く、髪の毛に隠れて気づきにくいことがあります。特に自分では見えにくい場所にできると、発見が遅れがちです。
鏡で確認しにくい後頭部や側頭部

頭頂部や前頭部は鏡で比較的確認しやすいですが、後頭部や側頭部は自分では直接見ることが難しいため、脱毛斑ができていても気づかないことがあります。
合わせ鏡を使ったり、スマートフォンのカメラで撮影したりして、定期的に頭皮全体をチェックする習慣をつけると良いでしょう。
家族や理容師・美容師からの指摘
自分では気づかなくても、家族やパートナー、あるいは定期的に通っている理容室や美容室のスタッフから「円形に髪が薄くなっている部分がある」と指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。
信頼できる人に定期的に頭皮の状態を見てもらうのも、早期発見の一つの方法です。
早期発見のためにできること
- 定期的な頭皮のセルフチェック(合わせ鏡やスマホカメラの活用)
- 家族やパートナーに頭皮を見てもらう
- 行きつけの理容師・美容師に頭皮の状態を気にかけてもらう
- 抜け毛の量や質に変化がないか日々意識する
抜け毛の質と量の変化に注意
脱毛斑の発見だけでなく、抜け毛の状態を観察することも早期発見の手がかりになります。普段から自分の抜け毛に関心を持つことが大切です。
シャンプー時やブラッシング時の抜け毛
毎日のシャンプー時やブラッシング時に、手に絡みつく抜け毛の量が増えていないか確認しましょう。排水溝に溜まる毛の量も目安になります。急に量が増えたと感じる場合は注意が必要です。
枕元の抜け毛
朝起きたときに枕についている抜け毛の数もチェックポイントです。特に、短い毛や細い毛、毛根が付いていない毛が増えている場合は、円形脱毛症の活動性が高まっている可能性があります。
目に見える変化 – 円形脱毛症の主な症状と特徴

円形脱毛症が進行すると、よりはっきりとした症状が現れます。ここでは、円形脱毛症の主な症状とその特徴について詳しく見ていきましょう。
脱毛斑の形状と大きさ
円形脱毛症の最も代表的な症状は、円形または楕円形の脱毛斑(だつもうはん)です。この脱毛斑の状態を観察することで、ある程度の情報を得ることができます。
円形または楕円形の脱毛斑
典型的には、境界が比較的はっきりとした円形や楕円形の脱毛部分が現れます。大きさは10円玉程度のものから、頭部全体に広がるものまで様々です。
脱毛斑の表面は、多くの場合、正常な皮膚と変わらないか、わずかに赤みを帯びたり、むくんだりすることがあります。
脱毛斑の境界は比較的鮮明
他の脱毛症と比較して、円形脱毛症の脱毛斑は、脱毛している部分としていない部分の境界が比較的はっきりしているのが特徴です。
ただし、活動期には境界部分の毛が抜けやすくなっていることがあります(これを「感嘆符毛」と呼びます)。
脱毛斑の典型的な特徴
特徴 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
形状 | 円形または楕円形 | 不整形な場合もある |
境界 | 比較的鮮明 | 活動期には不明瞭になることも |
表面 | 正常皮膚に近い、時に軽度の赤みや浮腫 | かさぶたや強い炎症は稀 |
脱毛斑の数と広がり方
脱毛斑の数や広がり方によって、円形脱毛症はいくつかのタイプに分類されます。これにより、ある程度の予後を予測したり、治療方針を検討したりします。
単発型と多発型
脱毛斑が1箇所だけに限局している場合を「単発型」、複数箇所に現れる場合を「多発型」と呼びます。
単発型は比較的治りやすい傾向がありますが、多発型は治療に時間がかかったり、再発を繰り返したりすることがあります。
特に、脱毛斑が3箇所以上ある場合や、急速に数が増える場合は注意が必要です。
脱毛斑の融合と拡大
複数の脱毛斑が隣接して発生した場合、それらが融合してより大きな不整形の脱毛斑になることがあります。また、個々の脱毛斑が徐々に拡大していくこともあります。
このような場合は、症状が進行しているサインと考えられます。
脱毛斑以外の頭皮の状態
脱毛斑そのものだけでなく、その周囲の頭皮の状態にも注意を払う必要があります。頭皮の状態が、円形脱毛症の活動性や他の皮膚疾患の合併を示唆することがあります。
頭皮の色や質感の変化
脱毛斑の皮膚は、初期にはわずかに赤みを帯びたり、少しむくんだりすることがあります。慢性期になると、皮膚がやや萎縮して光沢を帯びたり、逆に色素沈着を起こしたりすることもあります。
健康な部分の頭皮と比べて、色や質感に変化がないか確認しましょう。
かゆみや軽い痛みを伴う場合も
前述の通り、円形脱毛症では脱毛斑にかゆみや軽い痛みを伴うことがあります。
しかし、強いかゆみやフケ、湿疹などが顕著な場合は、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎など、他の皮膚疾患を合併している可能性も考えられます。
このような場合は、自己判断せずに皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。
症状の進行パターン – 円形脱毛症の経過

円形脱毛症の経過は、人によって大きく異なります。急速に進行するケースもあれば、ゆっくりと進行するケース、あるいは自然に治るケースもあります。
代表的な進行パターンを知っておくことは、今後の見通しを立てる上で役立ちます。
急速に進行するケース
一部の円形脱毛症は、非常に速いスピードで症状が進行します。このような場合は、早期の対応が特に重要になります。
数日から数週間で脱毛斑が拡大
最初に小さな脱毛斑ができてから、わずか数日~数週間で急速に脱毛範囲が広がり、脱毛斑の数が増えることがあります。
特に、頭部全体に脱毛が広がる「全頭型」や、全身の毛が抜ける「汎発型」に移行するケースでは、進行が速いことが多いです。
多発型へ移行することも
最初は単発型の脱毛斑だったものが、短期間のうちに次々と新しい脱毛斑が出現し、多発型へと移行することがあります。
このような場合、自己免疫反応が活発である可能性が考えられ、より専門的な治療が必要となることがあります。
緩やかに進行するケース
一方で、症状の進行が比較的緩やかなケースもあります。この場合でも、油断せずに経過を観察することが大切です。
数ヶ月かけてゆっくりと変化
脱毛斑の大きさや数があまり変わらないまま数ヶ月が経過したり、少しずつ拡大したり、あるいは逆に少しずつ縮小したりと、変化がゆっくりとしたペースで進むことがあります。
このタイプの円形脱毛症は、比較的予後が良い場合もありますが、長期間にわたって症状が続くこともあります。
自然に治る場合と再発を繰り返す場合
単発型で範囲が小さい場合など、特別な治療をしなくても数ヶ月から1年程度で自然に毛が生えそろい、治ることがあります。しかし、一度治っても、しばらくしてから再発するケースも少なくありません。
再発を繰り返す場合は、体質的な要因や、何らかの誘因が関わっている可能性があります。
円形脱毛症の進行パターン比較
進行パターン | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
急速進行型 | 短期間(数日~数週間)で脱毛斑が拡大・増加する。 | 早期に皮膚科を受診し、適切な治療を開始することが重要。 |
緩徐進行型 | 数ヶ月単位でゆっくりと症状が変化する。 | 自然治癒も期待できるが、長期化や再発の可能性も。定期的な観察が必要。 |
固定型 | 一定期間、脱毛斑の大きさや数に変化が見られない。 | 慢性化している可能性。根気強い治療が必要な場合がある。 |
症状が固定化するケース
ある程度の期間、脱毛斑の大きさや数にほとんど変化が見られず、症状が固定化することがあります。このような状態では、治療に対する反応も鈍くなることがあります。
一定期間変化が見られない
数ヶ月から数年以上、脱毛斑の状態が変わらない場合、症状が慢性化し、固定化していると考えられます。
この状態になると、毛母細胞の活動が長期間抑制されている可能性があり、発毛を促すためには根気強い治療が必要になることがあります。
皮膚科での適切な治療が重要
症状が固定化した場合でも、諦めずに皮膚科専門医に相談し、適切な治療法を検討することが大切です。
治療法には様々な選択肢があり、個々の状態に合わせた治療計画を立てることで、改善の可能性があります。
部位別の特徴 – 頭皮・眉毛・ひげに現れる症状の違い

円形脱毛症は頭皮に最も多く発症しますが、眉毛やひげなど、頭髪以外の体毛にも現れることがあります。発症する部位によって、見た目の印象や本人の悩みも異なります。
頭皮の円形脱毛症
最も一般的な円形脱毛症の発生部位です。症状の現れ方は多岐にわたります。
最も一般的な発症部位
円形脱毛症の約8割以上は頭皮に発生すると言われています。側頭部、頭頂部、後頭部など、頭皮のあらゆる場所にできる可能性があります。
脱毛斑の大きさや数は様々
前述の通り、単発型から多発型、さらには頭部全体の毛が抜ける全頭型まで、症状の範囲は様々です。脱毛斑の大きさも、コイン大のものから手のひら大以上のものまであります。
眉毛の円形脱毛症
眉毛に円形脱毛症が現れると、顔の印象が大きく変わるため、精神的な影響も大きくなりがちです。
部分的な脱毛から全眉脱毛まで
眉毛の一部だけが円形に抜け落ちる場合もあれば、眉毛全体が薄くなったり、完全に抜け落ちてしまったりすることもあります(全眉脱毛)。
片方の眉毛だけに現れることも、両方の眉毛に現れることもあります。
顔の印象に影響
眉毛は顔の印象を左右する重要なパーツであるため、眉毛の脱毛は患者さんにとって大きな精神的苦痛となることがあります。
メイクでカバーするなどの工夫も考えられますが、根本的な治療を目指すことが大切です。
ひげの円形脱毛症
男性の場合、ひげにも円形脱毛症が現れることがあります。これは「円形脱毛症(ひげ)」または「鬚髪(しゅはつ)円形脱毛症」とも呼ばれます。
あごひげや口ひげに発生
あごひげや口ひげ、頬ひげなど、ひげが生える範囲に円形または不整形の脱毛斑が現れます。頭皮の円形脱毛症と同様に、境界は比較的明瞭です。
男性特有の悩み
ひげは男性らしさの象徴の一つと捉える人もいるため、ひげの脱毛は男性にとって特有の悩みとなることがあります。整容面での影響も大きく、精神的なストレスを感じる方も少なくありません。
部位別 円形脱毛症の特徴
部位 | 主な症状 | 特記事項 |
---|---|---|
頭皮 | 円形・楕円形の脱毛斑(単発・多発)、全頭脱毛 | 最も一般的。かゆみや違和感を伴うことあり。 |
眉毛 | 部分的な脱毛、全眉脱毛 | 顔の印象に大きく影響。女性にも見られる。 |
ひげ | あごひげ、口ひげなどに円形脱毛斑 | 男性特有。整容面での悩みにつながりやすい。 |
自分でできる確認方法 – 効果的なセルフチェックの手順
円形脱毛症の早期発見のためには、定期的なセルフチェックが有効です。ここでは、自分でできる効果的な確認方法の手順を紹介します。
鏡を使った頭皮チェック
鏡を使って頭皮全体をくまなく観察することは、セルフチェックの基本です。
手鏡と合わせ鏡で頭全体を確認
正面から見える部分だけでなく、頭頂部、側頭部、後頭部など、自分では見えにくい部分も手鏡と合わせ鏡を上手に使って確認しましょう。
合わせ鏡がない場合は、スマートフォンのカメラで撮影して確認するのも良い方法です。
明るい場所でチェックする
暗い場所では小さな脱毛斑や頭皮の色の変化を見逃しやすいため、できるだけ明るい自然光の下や、明るい照明の下でチェックするようにしましょう。
髪をかき分けながら、頭皮の状態を丁寧に観察します。
指先の感覚で確かめる

視覚だけでなく、指先の感覚も使って頭皮の状態を確認します。
頭皮を優しく触れて凹凸や違和感を確認
指の腹で頭皮全体を優しく触れてみましょう。脱毛斑がある部分は、周囲の皮膚と比べてわずかに凹んでいたり、逆に少し盛り上がっていたり、質感が異なったりすることがあります。
また、特定の場所に軽い痛みや違和感がないかも確認します。
脱毛部分の質感の違い
脱毛している部分の皮膚は、つるつるしていることが多いですが、時にはザラザラしたり、乾燥したりしていることもあります。健康な部分の頭皮と比べて、質感に違いがないか確かめましょう。
セルフチェックのポイント
- チェック頻度:月に1~2回程度を目安に定期的に行う。
- 観察項目:脱毛斑の有無、大きさ、形、数、頭皮の色、かゆみや痛み、抜け毛の量や質。
- 記録:変化があった場合は、日付とともにメモや写真で記録しておく。
抜け毛の観察
日々の抜け毛の状態を観察することも、重要なセルフチェックの一つです。
抜けた毛の毛根部分の状態

抜けた毛の毛根部分をよく観察してみましょう。健康な毛根は、丸みを帯びていて、しっかりとした形をしています。
一方、円形脱毛症の活動期に見られる抜け毛(感嘆符毛など)は、毛根部分が細く尖っていたり、萎縮していたりすることがあります。
短い毛や細い毛の増加
シャンプー時やブラッシング時に、普段よりも短い毛や細い毛が多く抜けるようになったら注意が必要です。
これは、新しく生えてきた毛が十分に成長する前に抜けてしまっている可能性や、毛が細くなっている(軟毛化)可能性を示唆しています。
抜け毛チェックの注意点
観察ポイント | 正常な状態(目安) | 注意すべき状態 |
---|---|---|
毛根の形状 | 丸みを帯び、しっかりしている | 細く尖っている、萎縮している、付着物がない |
毛の太さ・長さ | 太く、ある程度の長さがある | 細く短い毛が多い、切れ毛が多い |
抜け毛の本数 | 1日50~100本程度 | 明らかに普段より多い、急に増えた |
記録が大切 – 症状変化の写真撮影
円形脱毛症の症状は、時間とともに変化することがあります。その変化を客観的に把握し、医師に正確に伝えるためには、写真による記録が非常に有効です。

定期的な写真撮影のポイント
効果的な記録のためには、撮影方法に一貫性を持たせることが重要です。
同じ場所、同じ角度、同じ明るさで撮影
毎回できるだけ同じ条件で撮影することで、症状の微妙な変化も比較しやすくなります。
例えば、「洗面所の同じ照明の下で、正面、右側面、左側面、頭頂部、後頭部を撮影する」といったルールを決めると良いでしょう。
脱毛斑が特定されている場合は、その部分をアップで撮影することも忘れずに。
撮影日の記録も忘れずに
撮影した写真には、必ず撮影日を記録しておきましょう。スマートフォンのカメラで撮影すれば、自動的に日付情報が記録されるので便利です。
ファイル名に日付を入れたり、写真管理アプリで整理したりするのも良い方法です。
写真の整理と保管方法
撮影した写真は、後から見返しやすいように整理・保管しておくことが大切です。
日付ごとにフォルダ分け
パソコンやスマートフォン内に、円形脱毛症の記録専用のフォルダを作成し、さらに日付ごとのサブフォルダを作って写真を整理すると、時系列で変化を追いやすくなります。
「202X年X月X日_頭頂部」のようにファイル名を工夫するのも有効です。
クラウドストレージの活用も検討
万が一のデータ紛失に備えて、クラウドストレージサービス(Google Drive, iCloud, Dropboxなど)にバックアップを取っておくと安心です。
これにより、どのデバイスからでも写真を確認できるようになります。
医師に見せる際の注意点
記録した写真を医師に見せる際には、いくつかの点に注意すると、よりスムーズな診療につながります。
時系列で変化がわかるように提示
診察時には、最も古い写真から最新の写真へと、時系列で変化がわかるように提示しましょう。これにより、医師は症状の進行速度や治療への反応などを的確に把握できます。
気づいたことや体調変化も伝える
写真だけでは伝わらない情報、例えば「この時期は特にかゆみが強かった」「この頃から新しい薬を使い始めた」「大きなストレスを感じる出来事があった」など、気づいたことや体調の変化、生活習慣の変化なども合わせて伝えると、診断や治療方針の決定に役立ちます。
写真記録のコツ
項目 | ポイント | 理由 |
---|---|---|
撮影頻度 | 週に1回~月に1回程度 | 変化を捉えつつ、負担にならない頻度で。 |
撮影条件 | 場所、角度、明るさを統一 | 客観的な比較のため。 |
撮影範囲 | 脱毛斑のアップと頭部全体 | 局所と全体の変化を把握。 |
記録内容 | 撮影日、気づいた症状、生活の変化 | 総合的な情報提供のため。 |
見逃さないで – 受診を検討すべき症状とサイン

円形脱毛症は自然に治ることもありますが、症状によっては早期に皮膚科を受診し、適切な治療を開始することが重要です。ここでは、受診を検討すべき症状やサインについて解説します。
脱毛斑が急速に拡大している場合
脱毛斑の進行が速い場合は、自己免疫反応が活発である可能性があり、放置すると広範囲に脱毛が広がる恐れがあります。
早期の皮膚科受診を推奨
最初に脱毛斑に気づいてから、数日~数週間で明らかに脱毛範囲が広がったり、新しい脱毛斑が次々と現れたりする場合は、できるだけ早く皮膚科専門医の診察を受けることを強く推奨します。
適切な治療で進行を抑える
早期に適切な治療を開始することで、脱毛の進行を抑えたり、発毛を促したりすることが期待できます。自己判断で市販の育毛剤などを使用する前に、まずは専門医の診断を仰ぎましょう。
複数の脱毛斑が出現した場合
脱毛斑が1箇所だけでなく、複数箇所に現れる多発型の場合は、単発型に比べて治りにくい傾向があります。
多発型は専門医の診断が必要
2箇所以上の脱毛斑がある場合や、脱毛斑が融合して大きくなっている場合は、より専門的な治療が必要となることがあります。
特に、脱毛範囲が頭皮全体の25%を超えるような場合は、難治性となる可能性も考慮し、専門医による継続的なフォローアップが重要です。
自己判断せずに相談を
「そのうち治るだろう」と安易に考えず、脱毛斑が複数ある場合は皮膚科を受診して、現在の状態を正確に把握し、適切なアドバイスを受けることが大切です。
かゆみや痛みが強い場合
円形脱毛症では、軽度のかゆみや違和感を伴うことがありますが、症状が強い場合は他の疾患の可能性も考慮する必要があります。
他の皮膚疾患の可能性も
強いかゆみ、痛み、フケ、湿疹、ただれなどが脱毛斑やその周囲に見られる場合は、円形脱毛症だけでなく、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、頭部白癬(水虫)などの他の皮膚疾患を合併している可能性や、あるいはそれらが主たる原因である可能性も考えられます。
専門医による正確な診断
これらの症状がある場合は、自己判断で市販薬を使用すると症状を悪化させることもあるため、必ず皮膚科専門医の診察を受け、正確な診断に基づいた治療を受けるようにしてください。
受診を検討すべきサイン
サイン | 具体的な状態 | 推奨される対応 |
---|---|---|
急速な拡大 | 数日~数週間で脱毛斑が明らかに広がる、数が増える。 | 速やかに皮膚科を受診。 |
多発・広範囲 | 脱毛斑が複数ある、融合して大きい、頭皮の広範囲に及ぶ。 | 皮膚科を受診し、専門的な診断と治療を検討。 |
強い随伴症状 | 我慢できないほどのかゆみ、痛み、著しいフケ、湿疹など。 | 他の皮膚疾患の可能性も考慮し、皮膚科を受診。 |
精神的苦痛が大きい | 脱毛による見た目の変化で、日常生活に支障が出るほどの不安や抑うつ感がある。 | 皮膚科医に相談し、必要に応じて心理的サポートも検討。 |
よくある質問
円形脱毛症に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
円形脱毛症の原因や詳しい検査方法について
この記事では、円形脱毛症の症状とセルフチェックに焦点を当てて解説しました。しかし、なぜ円形脱毛症が起こるのか、その根本的な原因や、医療機関で行われる詳しい検査方法について知りたい方もいらっしゃるでしょう。
円形脱毛症は自己免疫疾患の一つと考えられており、遺伝的要因やアトピー素因、ストレスなどが複雑に関与しているとされます。正確な診断のためには、視診やダーモスコピー検査、場合によっては血液検査や皮膚生検などが行われます。
これらの情報について、より深く理解を深めたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。ご自身の状態を正しく把握し、適切な対応をとるための一助となれば幸いです。
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