抗真菌薬配合シャンプーの特徴と選び方

抗真菌薬シャンプー

頭皮のフケやかゆみが気になる時、「抗真菌薬配合シャンプー」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

これは頭皮の常在菌である真菌(カビ)の一種、特にマラセチア菌の増殖が原因で起こるフケ・かゆみ・赤みなどの症状を改善するために開発されたシャンプーです。

この記事では抗真菌薬配合シャンプーがどのようなものか、どんな成分が含まれ、どのような頭皮トラブルに効果的なのか、そしてご自身に合った製品の選び方や正しい使い方、注意点について詳しく解説します。

適切なシャンプー選びで健やかな頭皮環境を目指しましょう。

目次

はじめに 抗真菌薬配合シャンプーとは

私たちの頭皮には目に見えない多くの常在菌が存在し、バランスを保ちながら生息しています。

しかし、何らかの原因で特定の真菌(カビ)が異常に増殖すると、フケ、かゆみ、炎症などの頭皮トラブルを引き起こすことがあります。

抗真菌薬配合シャンプーはこれらの真菌の増殖を抑える有効成分を含み、頭皮環境を正常化することを目的とした薬用シャンプーの一種です。

抗真菌薬シャンプーの基本的な役割

抗真菌薬シャンプーの主な役割は頭皮トラブルの原因となる真菌(主にマラセチア菌)の活動を抑制し、その数をコントロールすることです。

マラセチア菌は皮脂を栄養源として増殖し、その過程で頭皮を刺激する物質を産生します。この刺激がフケやかゆみを引き起こすため、菌の増殖を抑えることでこれらの症状の軽減を図ります。

通常のシャンプーが汚れを落とすことを主目的とするのに対し、抗真菌薬シャンプーは特定の菌に作用する薬効成分を含んでいる点が大きな違いです。

どのような頭皮トラブルに有効か

抗真菌薬シャンプーは、主にマラセチア菌が関与する頭皮トラブルに対して効果を発揮します。代表的なものには、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)や、マラセチア菌によるフケ・かゆみがあります。脂漏性皮膚炎は、頭皮にフケ、赤み、かゆみ、湿疹などが現れる慢性的な皮膚炎です。これらの症状が見られる場合、抗真菌薬シャンプーの使用が検討されます。ただし、すべてのフケやかゆみが真菌によるものではないため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが大切です。

抗真菌薬シャンプーが検討される主な症状

症状マラセチア菌との関連シャンプーへの期待
脂っぽい、または乾燥したフケが大量に出るマラセチア菌による頭皮ターンオーバーの異常菌の増殖抑制によるフケの正常化
我慢できないほどの頭皮のかゆみマラセチア菌の代謝物が頭皮を刺激菌の活動抑制によるかゆみの軽減
頭皮の赤みや炎症マラセチア菌に対する炎症反応抗炎症効果も持つ成分による症状緩和

市販品と医療用医薬品の違い

抗真菌薬配合シャンプーにはドラッグストアなどで購入できる市販品(医薬部外品やOTC医薬品)と、医師の処方が必要な医療用医薬品があります。

市販品は比較的症状が軽い方向けで、予防や初期対応に用いられます。

一方の医療用医薬品は、より高濃度の有効成分を含んでいたり、特定の疾患治療に特化していたりするため、医師の診断に基づいて使用します。

症状が強い場合や市販品で改善が見られない場合は皮膚科を受診し、適切な製品を処方してもらう必要があります。

抗真菌薬シャンプーに含まれる主な有効成分

抗真菌薬シャンプーの効果は配合されている有効成分によって左右されます。

ここでは代表的な抗真菌成分の種類と、それぞれの特徴や作用について解説します。成分名を理解することで製品選びの参考になるでしょう。

ミコナゾール硝酸塩

ミコナゾール硝酸塩はイミダゾール系抗真菌薬の一つで、幅広い真菌に対して効果を示します。

特にマラセチア菌の増殖を強力に抑制する作用があり、フケやかゆみの原因に直接アプローチします。

真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで真菌の生育を妨げます。比較的刺激が少なく、多くの市販のフケ・かゆみ用シャンプーに配合されています。

ケトコナゾール

ケトコナゾールもイミダゾール系抗真菌薬で、ミコナゾール硝酸塩と同様にマラセチア菌に対して強い抗真菌活性を持ちます。

脂漏性皮膚炎の治療薬としても用いられる成分で、医療用医薬品のシャンプーに配合されることが多いですが、一部OTC医薬品にも含まれています。

皮脂の分泌を抑える効果も報告されており、脂性肌の方の頭皮トラブルにも適しています。

代表的な抗真菌成分とその作用機序

成分名系統主な作用機序
ミコナゾール硝酸塩イミダゾール系エルゴステロール合成阻害(細胞膜形成阻害)
ケトコナゾールイミダゾール系エルゴステロール合成阻害(細胞膜形成阻害)
ピロクトンオラミンヒドロキシピリドン系ミトコンドリアの電子伝達系阻害、鉄イオンとのキレート形成

ピロクトンオラミン

ピロクトンオラミンはミコナゾールやケトコナゾールとは異なる系統の抗真菌成分です。マラセチア菌だけでなく、他の細菌に対しても抗菌作用を示すことがあります。

また、皮脂の酸化を抑える効果も期待でき、頭皮のニオイ対策にも役立つとされています。比較的マイルドな使用感の製品に配合されることが多い成分です。

その他の抗真菌成分や補助成分

上記以外にも、ジンクピリチオンや硫化セレンといった抗真菌作用を持つ成分がシャンプーに利用されることがあります。

また、抗真菌成分の効果を高めたり頭皮環境を整えたりするために、抗炎症成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)や保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸など)、清涼成分(メントールなど)が補助的に配合されている製品もあります。

これらの補助成分も使用感や頭皮の状態に合わせて選ぶ際のポイントとなります。

抗真菌薬シャンプー、効果を実感できない人が見落としがちなポイント

「抗真菌薬シャンプーを使っているのに、なかなかフケやかゆみが良くならない…」そんな経験はありませんか?期待して使い始めたものの、効果が実感できないと不安になりますよね。

もしかしたらシャンプーの選び方や使い方、あるいは頭皮ケア全体に見落としているポイントがあるのかもしれません。

ここでは専門家の視点から抗真菌薬シャンプーの効果が出にくい場合の原因と対策を深掘りします。

使用期間や頻度が適切でない

抗真菌薬シャンプーの効果はすぐに現れるわけではありません。頭皮のターンオーバーの周期も考慮すると、ある程度の期間継続して使用することが大切です。

一般的には数週間から1ヶ月程度で効果が見え始めることが多いですが、症状の程度によってはさらに時間が必要です。

また、使用頻度も重要です。最初は毎日、症状が改善してきたら週に数回など製品の説明書や医師の指示に従った頻度で使用できているか確認しましょう。

自己判断で中断したり使用量を減らしたりすると、十分な効果が得られないことがあります。

洗い方やすすぎ方が間違っている

どんなに良いシャンプーでも洗い方が間違っていては効果が半減します。抗真菌薬シャンプーの場合、有効成分を頭皮にしっかり浸透させることが重要です。

シャンプーを泡立てた後はすぐに洗い流さず、数分間(製品によって推奨時間が異なります)頭皮に泡を置く「泡パック」のような使い方が推奨される製品もあります。

また、すすぎ残しは頭皮トラブルを悪化させる原因になるため、シャンプー剤が頭皮や髪に残らないように時間をかけて丁寧にすすぐことが大切です。

特に生え際や耳の後ろはすすぎ残しやすい部分なので注意しましょう。

シャンプー効果を高めるための洗い方のコツ

ポイント具体的な行動期待される効果
予洗いぬるま湯で1~2分、頭皮と髪をしっかり濡らす汚れを浮かせ、シャンプーの泡立ちと浸透を助ける
泡立てと塗布シャンプーを手のひらで泡立て、頭皮全体に行き渡らせる有効成分を均一に届け、摩擦を軽減する
放置時間(製品による)製品推奨の時間、泡を頭皮に置く有効成分の浸透を高める
すすぎ時間をかけて丁寧に、シャンプー剤を残さないすすぎ残しによる刺激やトラブルを防ぐ

頭皮トラブルの原因が真菌ではない可能性

フケやかゆみの原因はマラセチア菌だけではありません。

乾燥、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎(シャンプーや整髪料の成分によるかぶれ)、乾癬(かんせん)など、他の皮膚疾患が原因である可能性も考えられます。

抗真菌薬シャンプーはこれらの真菌以外が原因のトラブルには効果がありません。

市販の抗真菌薬シャンプーを一定期間使用しても改善しない場合は自己判断を続けず、皮膚科専門医を受診し、正確な診断を受けることが重要です。

生活習慣や他の要因の影響

頭皮環境はシャンプーだけでなく、食生活、睡眠、ストレス、ホルモンバランスなど様々な要因の影響を受けます。

脂っこい食事や甘いものの摂りすぎ、睡眠不足、過度なストレスは皮脂の過剰分泌を招いたり、免疫力を低下させたりして、頭皮トラブルを悪化させる可能性があります。

抗真菌薬シャンプーを使用していても、これらの生活習慣が乱れていると効果が出にくいことがあります。シャンプーだけに頼るのではなく、生活習慣全体を見直すことも大切です。

失敗しない!自分に合った抗真菌薬シャンプーの選び方

数ある抗真菌薬配合シャンプーの中から自分に最適な一本を見つけるのは難しいと感じるかもしれません。

ここでは成分、頭皮タイプ、症状の程度などを考慮した失敗しないシャンプー選びのポイントを解説します。

有効成分の種類で選ぶ

前述したように、抗真菌薬シャンプーにはミコナゾール硝酸塩、ケトコナゾール、ピロクトンオラミンなどの有効成分があります。これらの成分はそれぞれ作用の仕方や強さが若干異なります。

過去に使用経験があり、効果を感じた成分があれば、それを基準に選ぶのも一つの方法です。

初めて使用する場合は比較的マイルドな作用の成分から試してみるか、薬剤師や登録販売者に相談して、自分の症状に合いそうな成分の製品を推奨してもらうと良いでしょう。

頭皮タイプ(乾燥肌・脂性肌)に合わせて選ぶ

頭皮の状態は人それぞれです。乾燥しがちなのか、それとも皮脂でベタつきやすいのか、自分の頭皮タイプを把握することが大切です。

乾燥肌の方は洗浄力がマイルドで、保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンなど)が配合されたシャンプーを選ぶと洗い上がりのつっぱり感や乾燥を防げます。

一方、脂性肌の方はある程度の洗浄力があり、さっぱりとした洗い上がりのシャンプーが適している場合があります。

ただし、洗浄力が強すぎるとかえって皮脂の過剰分泌を招くこともあるため注意が必要です。

頭皮タイプ別シャンプー選びの目安

頭皮タイプシャンプー選びのポイント注目したい補助成分
乾燥肌・敏感肌低刺激性、マイルドな洗浄力、アミノ酸系洗浄成分セラミド、ヒアルロン酸、グリチルリチン酸2K
脂性肌適度な洗浄力、さっぱりした使用感皮脂吸着成分(クレイなど)、清涼成分(メントール)
混合肌(部分的に乾燥・脂性)バランスの取れた洗浄力、保湿も考慮植物エキス、アミノ酸系洗浄成分

症状の程度と使用目的で選ぶ

フケやかゆみが軽度で予防的に使用したい場合は、市販の医薬部外品やOTC医薬品の抗真菌薬シャンプーで十分な場合があります。

しかし、症状が中程度以上で明らかな脂漏性皮膚炎の兆候がある場合は皮膚科を受診し、医師の診断のもとで医療用医薬品のシャンプーを処方してもらう方が確実です。

自己判断で市販品を使い続けて症状が悪化する前に専門医に相談する勇気も大切です。

シャンプー選びの際の確認事項

  • どの抗真菌成分が配合されているか
  • 洗浄成分は自分の頭皮に合っているか
  • 保湿成分や抗炎症成分は含まれているか
  • 無香料・無着色など低刺激性の配慮があるか
  • 使用感(泡立ち、香り、洗い上がり)はどうか(サンプルがあれば試す)

添加物や使用感もチェック

敏感肌の方や特定の成分にかぶれやすい方は香料、着色料、防腐剤(パラベンなど)、アルコールなどの添加物が少ない製品を選ぶようにしましょう。「無添加」「低刺激性」といった表示も参考になります。

また、毎日使うものなので泡立ちの良さ、香り(無香料も含む)、洗い上がりの感触など自分が心地よく使える使用感であることも継続するためには重要なポイントです。

可能であればサンプルやトライアルサイズで試してから購入すると失敗が少ないでしょう。

抗真菌薬シャンプーの効果的な使い方と注意点

せっかく選んだ抗真菌薬配合シャンプーも使い方を間違えると十分な効果が得られなかったり、かえって頭皮トラブルを招いたりすることがあります。

ここではシャンプーの効果を最大限に引き出すための正しい使い方と、使用する上での注意点を解説します。

正しい洗髪の手順

抗真菌薬シャンプーの効果を高めるには以下の手順で丁寧に洗髪することが大切です。

  1. ブラッシング:洗髪前に乾いた髪を優しくブラッシングし、ホコリや髪の絡まりを取り除きます。このひと手間でシャンプーの泡立ちが良くなります。
  2. 予洗い:38℃程度のぬるま湯で頭皮と髪を1~2分かけて十分に濡らします。予洗いで汚れの大部分を落とすことができます。
  3. 泡立て:シャンプーを適量手に取り、手のひらでよく泡立ててから髪と頭皮につけます。原液を直接頭皮につけると刺激になることがあります。
  4. 頭皮を洗う:指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。爪を立てると頭皮を傷つけるので注意しましょう。特にフケやかゆみが気になる部分は丁寧に。
  5. 放置(製品による):製品によっては泡をつけたまま数分間放置することで有効成分の浸透を高めるものがあります。説明書を確認しましょう。
  6. すすぎ:シャンプー剤が残らないように時間をかけて丁寧にすすぎます。特に生え際、耳の後ろ、首筋は念入りに。

使用頻度と使用期間の目安

抗真菌薬シャンプーの使用頻度や期間は製品や症状によって異なります。

一般的に治療初期は毎日または1日おきに使用し、症状が改善してきたら週に2~3回程度に減らしていくことが多いです。

医師や薬剤師の指示がある場合はそれに従ってください。自己判断で長期間漫然と使用し続けるのではなく定期的に頭皮の状態を確認し、必要に応じて専門医に相談することが重要です。

一般的な使用頻度の調整例

症状の段階推奨される使用頻度(目安)ポイント
治療初期(症状が強い)毎日~1日おき医師・薬剤師の指示に従う
改善期(症状が落ち着いてきた)週に2~3回通常のシャンプーと併用も可
維持期(再発予防)週に1~2回頭皮の状態を見ながら調整

使用上の注意点と副作用

抗真菌薬シャンプーは医薬品または医薬部外品ですので使用上の注意をよく守る必要があります。

まず、目に入らないように注意し、もし入った場合はすぐに大量の水で洗い流してください。

使用中や使用後に頭皮にかぶれ、赤み、かゆみ、刺激感などの異常が現れた場合はすぐに使用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

まれに接触皮膚炎やアレルギー反応を起こすことがあります。また、長期間の使用や不適切な使用は頭皮の乾燥を招いたり、耐性菌の出現リスクを高めたりする可能性も指摘されています。

他のヘアケア製品との併用

抗真菌薬シャンプーを使用している期間でもコンディショナーやトリートメントを使用することは可能です。

ただし、これらの製品が頭皮に直接つかないように髪の中間から毛先を中心に使用し、すすぎ残しがないように注意しましょう。

整髪料についても同様で、できるだけ頭皮への付着を避け、その日のうちにしっかり洗い流すことが大切です。頭皮に優しい製品を選ぶこともポイントです。

シャンプー以外の併用ケアで効果アップを目指す

抗真菌薬シャンプーは頭皮トラブル改善の有効な手段ですが、その効果をさらに高め、再発を防ぐためにはシャンプー以外のケアも重要です。

生活習慣の見直しや頭皮環境を整えるための工夫を取り入れましょう。

頭皮の保湿ケア

シャンプー後の頭皮は皮脂が洗い流されて乾燥しやすい状態になっています。

特に抗真菌薬シャンプーの中には洗浄力が比較的しっかりしているものもあるため、頭皮の乾燥を感じる場合は保湿ケアを行いましょう。

頭皮用のローションやエッセンスを使用し、うるおいを補給することでバリア機能の低下を防ぎ、外部刺激から頭皮を守ります。セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合された製品がおすすめです。

食生活の改善

頭皮の健康は体の中から作るものです。バランスの取れた食事は健やかな頭皮環境の維持に不可欠です。

皮脂の分泌をコントロールするためには脂質の多い食事や糖質の過剰摂取を控えることが大切です。

ビタミンB群(特にB2、B6)は皮脂の代謝に関与し、ビタミンCやEは抗酸化作用により頭皮の老化を防ぎます。亜鉛は皮膚の新陳代謝を助けます。

これらの栄養素を意識して摂取しましょう。

頭皮環境を整える食事のポイント

心がけたいこと具体的な食品例期待される効果
ビタミンB群を摂取するレバー、うなぎ、納豆、緑黄色野菜皮脂バランスの調整、皮膚の健康維持
抗酸化ビタミンを摂取するパプリカ、ブロッコリー、ナッツ類、果物頭皮の老化防止、血行促進
脂質の多い食事を控える揚げ物、スナック菓子、脂身の多い肉皮脂の過剰分泌抑制

質の高い睡眠とストレス管理

睡眠不足やストレスはホルモンバランスの乱れや免疫力の低下を引き起こし、頭皮環境を悪化させる大きな要因です。

質の高い睡眠を十分にとることで皮膚のターンオーバーが促進され、頭皮の修復が行われます。

また、自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身をリラックスさせる時間を作ることも重要です。適度な運動や趣味の時間を楽しむなど生活にメリハリをつけましょう。

生活用品の清潔保持

枕カバーや帽子、タオルなど頭皮に直接触れるものは常に清潔に保つことが大切です。

汗や皮脂が付着したまま放置すると、雑菌やマラセチア菌が繁殖しやすくなります。こまめに洗濯・交換し、頭皮を清潔な環境に保つよう心がけましょう。

特に夏場や汗をかきやすい時期は注意が必要です。

専門医に相談すべきケースとクリニックでのアプローチ

市販の抗真菌薬シャンプーを試しても症状が改善しない、あるいは悪化するような場合は自己判断を続けずに皮膚科専門医に相談することが重要です。

専門医は正確な診断に基づき、より効果的な治療法を提案してくれます。

市販品で改善しない場合の受診目安

以下のような場合は皮膚科の受診を検討しましょう。

  • 市販の抗真菌薬シャンプーを2週間~1ヶ月程度使用してもフケやかゆみが全く改善しない。
  • 症状が悪化している(赤みが広がる、かゆみが強くなる、ジクジクするなど)。
  • 頭皮だけでなく顔や体にも同様の症状が出ている。
  • 原因が特定できず、どのシャンプーを選べば良いか分からない。

特にAGA(男性型脱毛症)などの薄毛の悩みと併発している場合は頭皮ケアと薄毛治療の両方に詳しいクリニックへの相談がおすすめです。

皮膚科での診断と治療の流れ

皮膚科ではまず問診で症状や生活習慣、これまで使用したシャンプーなどを詳しく聞き取ります。その後、視診やダーモスコピー(拡大鏡)で頭皮の状態を詳細に観察します。

必要に応じて、真菌検査(フケなどを採取して顕微鏡で菌を確認)を行い、マラセチア菌の関与の程度や、他の皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬など)の可能性を診断します。

診断結果に基づき、より効果の高い医療用医薬品の抗真菌シャンプーや抗真菌薬の塗り薬・飲み薬、炎症を抑えるステロイド外用薬などが処方されます。

クリニックで処方される主な薬剤

薬剤の種類主な目的代表的な成分例
医療用抗真菌シャンプー強力な抗真菌作用ケトコナゾール(高濃度)など
抗真菌外用薬(ローション・クリーム)局所への直接的な抗真菌効果ニゾラール、ルリコンなど
ステロイド外用薬強い炎症やかゆみを抑えるリンデロン、アンテベートなど(強さに段階あり)

AGA治療との関連性と注意点

脂漏性皮膚炎などの頭皮トラブルはAGA(男性型脱毛症)の進行を早める可能性が指摘されています。

頭皮の炎症は毛髪の成長環境を悪化させるため、AGA治療と並行して頭皮トラブルの治療を行うことが重要です。

AGA治療薬(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなど)を使用している方は自己判断で抗真菌薬シャンプーを併用せず、必ず医師に相談してください。

当クリニックではAGA治療と頭皮の健康状態を総合的に診察し、一人ひとりに合った治療プランをご提案します。

重要:抗真菌薬シャンプーは、あくまで真菌による頭皮トラブルに対するケアです。薄毛の原因がAGAである場合、シャンプーだけで発毛効果は期待できません。

薄毛でお悩みの方は専門医による適切な診断と治療が必要です。

抗真菌薬シャンプーに関するよくある質問(Q&A)

抗真菌薬配合シャンプーについて、患者様から多く寄せられるご質問にお答えします。

抗真菌薬シャンプーは毎日使わない方が良いのですか?

製品や頭皮の状態によります。

治療初期で症状が強い場合は医師の指示で毎日使用することもありますが、一般的には症状が落ち着いてきたら使用頻度を減らし、週に数回程度の使用に移行することが多いです。

長期間の毎日の使用は頭皮の乾燥を招いたり、必要な常在菌まで減らしてしまったりする可能性も考慮し、医師や薬剤師の指示、または製品の説明書に従って適切に使用しましょう。

効果が出るまでどのくらいかかりますか?

個人差や症状の程度によりますが、一般的に数週間から1ヶ月程度の継続使用で効果を感じ始める方が多いです。

ただしこれはあくまで目安であり、すぐに効果が出なくても焦らず、まずは指示された期間や方法で使用を続けてみることが大切です。

それでも改善が見られない場合は専門医に相談してください。

抗真菌薬シャンプーで髪が傷むことはありますか?

抗真菌薬シャンプー自体が直接的に髪を傷めることは少ないですが、製品によっては洗浄力が強めであったり、髪のきしみが気になったりすることがあります。

その場合はシャンプー後に髪専用のコンディショナーやトリートメントを毛先中心に使用し、保湿を心がけると良いでしょう。

また、すすぎをしっかり行うことも髪への負担を減らすポイントです。

妊娠中や授乳中でも使用できますか?

配合されている成分や製品によって異なります。一般的に外用薬であるシャンプーは全身への影響が少ないとされていますが、妊娠中や授乳中は特に慎重な判断が必要です。

自己判断で使用せず、必ず事前にかかりつけの産婦人科医や皮膚科医に相談し、使用の可否や安全な製品について指示を受けてください。

予防的に使い続けても問題ありませんか?

症状が改善した後、再発予防のために週に1~2回程度の頻度で使用を継続することは、場合によっては有効です。

ただし、必要以上に長期間漫然と使い続けることは頭皮の常在菌バランスを崩す可能性もゼロではありません。

頭皮の状態をよく観察して特に問題がなければ通常のシャンプーに戻すか、使用頻度をさらに下げるなど専門医と相談しながら調整していくのが望ましいです。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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