頭部白癬（はくせん）性脱毛症の原因と検査方法

頭皮のかゆみやフケ、そして気になる抜け毛。それは「頭部白癬（通称：しらくも）」かもしれません。

この記事では、多くの男性が悩む頭部白癬の原因となる真菌の正体から、感染経路、さらには皮膚科で行う詳しい検査方法までを分かりやすく解説します。

白癬菌とは何か – 頭部白癬を引き起こす真菌の正体

頭部白癬、通称「しらくも」は、特定の真菌によって引き起こされる頭皮の感染症です。この真菌は一般的に白癬菌と呼ばれ、皮膚の角質層を栄養源として増殖します。

男性の薄毛や抜け毛の悩みの中には、この白癬菌が関与しているケースも少なくありません。原因を正確に知ることが、適切な対応への第一歩です。

頭部白癬の元凶 皮膚糸状菌

頭部白癬を引き起こす主な原因菌は「皮膚糸状菌（ひふしじょうきん）」という種類の真菌です。この菌はケラチンというタンパク質を好み、髪の毛や皮膚、爪などに寄生して増殖します。

しらくもは、この皮膚糸状菌が頭皮や毛髪に感染することで発症し、炎症やかゆみ、フケ、そして抜け毛といった症状を引き起こします。

代表的な皮膚糸状菌の種類

菌種名	主な特徴	感染源の傾向
トリコフィトン属	人や動物に感染しやすい	人、犬、猫など
ミクロスポルム属	主に動物から人に感染	犬、猫など
エピデルモフィトン属	人にのみ感染	人

しらくも と呼ばれる理由

頭部白癬が「しらくも」と呼ばれるのは、その特徴的な症状に由来します。

感染した部分の髪の毛が抜け落ち、頭皮に白いフケやかさぶた（鱗屑）が雲のように見えることがあるため、古くからこのように呼ばれてきました。

特に子供の頭部白癬では、この白い外観が顕著な場合があります。

真菌が頭皮に引き起こす変化

皮膚糸状菌が頭皮に感染すると、様々な変化が現れます。初期には軽いかゆみやフケ程度のこともありますが、進行すると炎症が強まり、抜け毛が目立つようになります。

これらの変化は、菌が毛穴の奥深くまで侵入し、毛髪の成長を妨げるために起こります。

頭皮の炎症と初期症状

感染初期には、頭皮に赤い斑点や小さな盛り上がりが現れ、かゆみを伴うことがあります。また、細かいフケ（鱗屑）が増えるのも特徴です。

これらの症状は、菌に対する体の防御反応としての炎症によるものです。この段階で皮膚科を受診し、原因を特定することが重要です。

放置が招く抜け毛リスク

頭部白癬による炎症が続くと、毛根がダメージを受け、髪の毛が途中で折れたり、抜け落ちたりします。特に症状が進行すると、円形または不整形の脱毛斑が生じることがあります。

この抜け毛は、原因である真菌の活動を抑える治療を行わない限り、改善が難しい場合があります。

感染経路を知る – どこから白癬菌はやってくるのか

頭部白癬の原因となる白癬菌は、私たちの身の回りの様々な場所に潜んでいます。感染経路を理解することは、予防だけでなく、感染した場合の原因究明にも役立ちます。

主な感染経路には、人や動物からの直接的な接触と、物を介した間接的な接触があります。

直接的な接触による感染

白癬菌は、感染している人や動物の皮膚や毛に触れることで、容易にうつる可能性があります。特に家庭内や集団生活の場では注意が必要です。

人から人へうつるケース

頭部白癬に感染している人の頭皮や髪の毛に直接触れることで感染します。家族間での感染、特に子供同士の遊びや、格闘技などの接触が多いスポーツを通じて感染が広がることもあります。

感染者のフケや抜け毛にも菌が含まれているため、注意が必要です。

ペットからの感染リスクと注意点

犬や猫などのペットも白癬菌に感染することがあり、これら動物から人にうつる「動物好性菌」による頭部白癬も少なくありません。

ペットの毛が抜けたり、皮膚に異常が見られたりする場合は、動物病院で検査を受けることを勧めます。ペットと過度な接触を避け、触った後は手を洗う習慣が大切です。

間接的な接触と環境要因

白癬菌は、感染者や感染動物が使用したものや、菌が付着した環境表面からも感染する可能性があります。

主な間接的感染経路

感染媒体	具体的な例	注意点
共有物	タオル、くし、ブラシ、帽子、寝具	個人専用にする、こまめに洗濯・清掃
公共の場所	理髪店・美容院の器具、スポーツジムのマット、公衆浴場の床	衛生管理の確認、直接触れない工夫
衣類	感染者の衣類、特に頭に触れるもの	分けて洗濯、高温での乾燥

スポーツ施設や公衆浴場での注意

スポーツジムのマットやロッカー、公衆浴場の脱衣所や床なども、白癬菌が存在しやすい場所です。これらの場所を利用する際は、床に直接座らない、自分専用のタオルを使用するなどの注意が求められます。

特に頭皮に傷や湿疹があると、菌が侵入しやすくなるため、頭皮の状態にも気を配りましょう。

感染しやすい人の特徴 – リスクを高める要因とは

白癬菌は誰にでも感染する可能性がありますが、特定の条件下では感染リスクが高まります。

体の抵抗力や生活習慣、頭皮環境などが関与し、これらが複合的に作用することで、頭部白癬を発症しやすくなることがあります。

免疫力の低下と感染リスク

体の免疫力が低下していると、通常であれば抑え込めるはずの白癬菌の侵入や増殖を許してしまい、感染症を発症しやすくなります。

抵抗力が弱い子供の頭皮

子供は成人に比べて皮膚のバリア機能が未熟で、免疫力も発達途上です。そのため、皮膚糸状菌に対する抵抗力が弱く、頭部白癬に感染しやすい傾向があります。

特に保育園や幼稚園、小学校など集団生活を送る子供たちの間では、頭を寄せ合って遊ぶことなどから感染が広がりやすい環境にあります。

子供の頭皮にフケや抜け毛、かゆみが見られたら、早めに皮膚科に相談することが大切です。

全身疾患と頭部白癬

糖尿病や悪性腫瘍、HIV感染症などの全身疾患を抱えている方や、ステロイド薬や免疫抑制剤を長期間使用している方は、免疫力が低下しているため、頭部白癬を含む様々な感染症にかかりやすくなります。

基礎疾患の管理とともに、皮膚の清潔を保つことが重要です。

生活習慣と頭皮環境

日々の生活習慣や頭皮のコンディションも、頭部白癬の感染リスクに影響します。不適切なヘアケアや、菌が増殖しやすい頭皮環境は、感染の引き金となることがあります。

頭皮の不衛生と菌の増殖

頭皮の洗浄が不十分で皮脂や汗、汚れが残っていると、白癬菌にとって格好の栄養源となり、増殖しやすくなります。

逆に、洗いすぎや洗浄力の強すぎるシャンプーの使用は、頭皮のバリア機能を低下させ、かえって感染しやすい状態を招くこともあります。適切な洗髪で頭皮を清潔に保つことが大切です。

頭皮環境を悪化させる要因

• 長時間の帽子やヘルメット着用による蒸れ
• 整髪料の洗い残し
• 不規則な生活やストレスによる頭皮のターンオーバーの乱れ
• 頭皮の傷や湿疹の放置

特に、帽子やヘルメットを長時間着用する習慣がある方は、頭皮が蒸れて高温多湿の状態になりやすく、白癬菌が増殖するのに適した環境を作り出してしまいます。

こまめに帽子を脱いで通気性を良くしたり、帰宅後は速やかに洗髪したりするなどの工夫が必要です。

なぜ男性に多いのか – 性別による発症率の違い

一般的に、水虫（足白癬）は男性に多いとされますが、頭部白癬（しらくも）に関しては、子供では男女差があまり見られないものの、成人では男性にやや多いという報告もあります。

この性差には、ホルモンバランスや生活習慣、頭皮ケアへの意識の違いなどが影響している可能性があります。ただし、明確な理由はまだ完全には解明されていません。

ホルモンバランスと頭皮環境

性ホルモンは皮脂の分泌量に影響を与え、頭皮環境を変化させる要因の一つです。

男性ホルモンの影響

男性ホルモン（アンドロゲン）は、皮脂腺の活動を活発にする作用があります。

皮脂は頭皮を保護する役割も持ちますが、過剰に分泌されると毛穴詰まりや、白癬菌を含む常在菌のバランスを崩す原因となることがあります。

この皮脂環境が、一部の皮膚糸状菌にとって増殖しやすい条件を提供する可能性があります。

皮脂分泌と菌の活動

男性は女性に比べて皮脂の分泌量が多い傾向にあります。過剰な皮脂は、白癬菌の栄養源となったり、頭皮を湿潤な状態に保ち、菌の定着や増殖を助長したりする可能性があります。

適切な洗髪で余分な皮脂を取り除き、頭皮を清潔に保つことが、感染予防の観点からも重要です。

男女の頭皮環境の一般的な違い

項目	男性の傾向	女性の傾向
皮脂分泌量	多い	少ない
頭皮の水分量	やや少ない	やや多い
ヘアケア製品の使用	比較的シンプル	多種多様な製品を使用

生活習慣や行動パターンの差異

日常生活における習慣や行動の違いも、感染リスクの性差に関係しているかもしれません。

スポーツや屋外活動の頻度

男性は、集団で行うスポーツや屋外での活動に参加する機会が比較的多い傾向があります。

これにより、汗をかきやすく頭皮が蒸れた状態が長く続いたり、ジムの共用設備やロッカールームなどで感染源に接触する機会が増えたりする可能性があります。

活動後は速やかにシャワーを浴び、頭皮を清潔にすることが大切です。

頭皮ケアへの意識

一般的に、女性の方がスキンケアやヘアケアに対する関心が高い傾向があり、頭皮の異常にも気づきやすいかもしれません。

男性の場合、初期のフケやかゆみといった症状を見過ごしてしまったり、自己判断で市販のフケ用シャンプーなどを使用し続け、皮膚科受診が遅れたりすることが、結果として症状を悪化させる一因となる可能性も考えられます。

病院での検査の流れ – 初診から診断確定まで

頭皮のかゆみ、フケ、抜け毛などの症状が気になり、頭部白癬（しらくも）が疑われる場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することが重要です。

皮膚科では、問診や視診に加えて、原因となる真菌を特定するための検査を行います。ここでは、初診から診断が確定するまでの一般的な流れを説明します。

皮膚科受診の第一歩

皮膚科医は、まず患者さんの話を詳しく聞き、頭皮の状態を観察することから診察を始めます。

問診で伝えるべき情報

医師は、症状がいつから始まったか、どのような症状（かゆみ、フケ、抜け毛の程度など）があるか、家族や周囲に同様の症状の人がいるか、ペットを飼っているか、最近利用した施設（プール、温泉、ジムなど）などを尋ねます。

これらの情報は、感染源の推定や診断の手がかりとなるため、できるだけ正確に伝えましょう。

問診で医師に伝えるポイント

• 症状の具体的な内容（かゆみの強さ、フケの色や量、抜け毛の範囲など）
• 症状が始まった時期ときっかけ
• これまでの治療歴（市販薬の使用など）
• 生活環境（家族構成、ペットの有無、職業、趣味など）

視診による頭皮の状態確認

医師は、頭皮全体を注意深く観察し、発赤、鱗屑（フケ）、脱毛の状態、毛髪の折れやすさ、膿疱（膿をもったブツブツ）の有無などを確認します。頭部白癬に特徴的な所見が見られるかどうかを評価します。

ダーモスコピーという拡大鏡を用いて、毛穴や毛髪の状態をより詳細に観察することもあります。

検査に向けた準備

正確な検査結果を得るためには、いくつかの注意点があります。医師の指示に従い、適切な準備をしましょう。

検査前の注意点

受診前に市販の抗真菌薬（水虫薬など）を塗布していると、検査で菌が見つかりにくくなることがあります。可能であれば、受診の数日前からは使用を中止することが望ましいです。

また、検査当日は、整髪料などの使用も控えた方が良い場合があります。詳細は医師に確認してください。

主な検査方法の選択

検査方法	主な目的	特徴
直接鏡検（顕微鏡検査）	真菌の有無を迅速に確認	結果が比較的早く出る
真菌培養検査	真菌の種類を特定	結果判明まで数週間かかる

頭部白癬の診断には、主に顕微鏡検査と真菌培養検査が行われます。どちらの検査を行うか、あるいは両方行うかは、症状や医師の判断によります。

顕微鏡検査でわかること – 白癬菌を確実に見つける方法

顕微鏡検査（直接鏡検法、KOH直接鏡検とも呼ばれます）は、頭部白癬の診断において基本的かつ重要な検査です。採取した頭皮の鱗屑や毛髪を顕微鏡で観察し、白癬菌の存在を直接確認します。

比較的短時間で結果が分かるため、迅速な診断に繋がります。

検査の手順と所要時間

顕微鏡検査は、皮膚科外来で簡単に行うことができます。

頭皮からの検体採取

医師は、症状が出ている部分の頭皮から、メスやピンセット、スライドガラスの縁などを用いて、鱗屑（フケ）や抜けやすい毛髪、折れた毛髪などを少量採取します。この際、痛みはほとんどありません。

採取した検体はスライドガラスに乗せ、水酸化カリウム（KOH）溶液を滴下します。KOH溶液は、皮膚の角質や毛髪を溶かして、真菌を観察しやすくする役割があります。

顕微鏡で見る菌の姿

KOH溶液で処理した後、スライドガラスを顕微鏡で観察します。白癬菌が存在する場合、菌糸（きんし）と呼ばれる糸状の構造や、分節胞子（ぶんせつほうし）と呼ばれる小さな粒状の構造が見えます。

経験豊富な医師であれば、これらの特徴的な形態から白癬菌の存在を判断できます。検査結果は、通常15分から30分程度で判明します。

顕微鏡検査のステップ

ステップ	内容	所要時間の目安
1. 検体採取	症状のある頭皮から鱗屑や毛髪を採取	数分
2. KOH処理	採取した検体をKOH溶液で処理	約10～20分（加温する場合あり）
3. 顕微鏡観察	顕微鏡で菌の有無を確認	数分～10分

顕微鏡検査の精度

顕微鏡検査は、頭部白癬の診断において有用な手段ですが、いくつかの限界もあります。

迅速診断のメリット

最大のメリットは、その日のうちに結果が分かり、早期に診断を確定できる点です。これにより、適切な治療を速やかに開始でき、症状の悪化や他者への感染拡大を防ぐことに繋がります。

偽陰性の可能性と対策

検査の精度は、検体の採取部位や量、観察者の技術によって左右されます。

菌の量が少ない場合や、不適切な部位から検体を採取した場合、実際には感染していても菌が見つからず、「陰性（菌なし）」と判定されること（偽陰性）があります。

また、受診前に抗真菌薬を使用していた場合も、菌が検出しにくくなります。

症状が典型的であるにも関わらず顕微鏡検査で菌が見つからない場合は、日を改めて再検査を行ったり、後述する真菌培養検査を併用したりすることがあります。

培養検査の重要性 – 菌の種類を特定する理由

真菌培養検査は、顕微鏡検査で白癬菌の存在が確認された場合や、顕微鏡検査では菌が見つからなかったものの頭部白癬が強く疑われる場合に行われる精密検査です。

採取した検体を特殊な培地で培養し、実際に菌を増殖させることで、菌の有無をより確実に判定し、さらに原因となっている菌の種類（菌種）まで特定することができます。

培養検査とは

培養検査は、目に見えない少量の菌でも、時間をかけて増やすことで検出を可能にする検査方法です。

菌を育てて詳しく調べる

顕微鏡検査と同様に、症状のある頭皮から鱗屑や毛髪を採取します。

この検体を、真菌が発育しやすいように栄養分などが調整された培地（サブロー寒天培地など）に植え付け、適切な温度（通常25～30℃）で数週間培養します。

もし白癬菌が存在すれば、培地上でコロニー（菌の集落）を形成して増殖します。

医師は、このコロニーの形や色、発育の速さなどを観察し、さらに顕微鏡で菌の形態を詳しく調べることで、菌種を特定します。

検査にかかる日数

白癬菌は発育が比較的遅いため、培養検査の結果が出るまでには通常2～4週間程度の時間が必要です。

この間、症状に応じて暫定的な治療を開始することもありますが、最終的な治療方針は培養結果を待って決定されることもあります。

培養検査の期間と目的

項目	内容
培養期間	通常2～4週間（菌種により異なる）
主な目的	菌の確実な検出、菌種の同定
結果判明後の対応	適切な抗真菌薬の選択、感染源の推定

菌種同定の意義

原因となっている白癬菌の種類を特定することは、治療方針の決定や感染対策において非常に重要です。

適切な抗真菌薬の選択

白癬菌の種類によって、効果のある抗真菌薬が異なる場合があります。菌種を特定することで、より効果的な内服薬や外用薬を選択し、治療効果を高めることができます。

特に、治療抵抗性の場合や再発を繰り返す場合には、菌種同定と薬剤感受性試験（どの薬が効きやすいかを調べる検査）が治療の鍵となることがあります。

感染源の推定と再発防止

特定された菌種から、感染源をある程度推定することができます。例えば、動物由来の菌（ミクロスポルム・カニスなど）が検出された場合は、ペットからの感染が疑われ、ペットの治療や環境整備も必要になります。

人から人にうつる菌（トリコフィトン・トンズランスなど）の場合は、家族内や集団生活の場での感染対策が重要となります。感染源を特定し対策を講じることは、再発防止に繋がります。

検査結果の見方 – 数値や所見が意味すること

皮膚科で行われる頭部白癬の検査結果は、医師から説明を受けますが、ご自身でも基本的な意味を理解しておくことで、病状や治療への理解が深まります。

ここでは、顕微鏡検査と培養検査の主な結果のポイントを解説します。

顕微鏡検査の結果報告

顕微鏡検査の結果は、通常「陽性（菌あり）」または「陰性（菌なし）」で報告されます。

菌要素の有無

「陽性」の場合は、顕微鏡で白癬菌の菌糸や胞子などの菌要素が確認されたことを意味し、頭部白癬であると診断されます。この場合、速やかに抗真菌薬による治療を開始します。

「陰性」の場合は、検査した検体からは菌要素が見つからなかったことを意味します。しかし、前述の通り偽陰性の可能性もあるため、症状が強く疑わしい場合は再検査や培養検査を検討します。

炎症所見の評価

顕微鏡検査では、菌要素だけでなく、炎症細胞の有無なども観察されることがあります。炎症の程度は、症状の重症度や治療方針を考える上での参考情報となります。

顕微鏡検査結果のポイント

• 陽性：菌糸や胞子を確認。頭部白癬と診断。
• 陰性：菌要素見つからず。偽陰性の可能性も考慮。

培養検査の結果報告

培養検査の結果は、より詳細な情報を提供します。

検出された菌の種類

培養検査で菌が発育した場合、その菌の種類（菌種名）が報告されます。例えば、「Trichophyton tonsurans（トリコフィトン・トンズランス）検出」や「Microsporum canis（ミクロスポルム・カニス）検出」といった形で示されます。

これにより、感染源の推定や、より適切な抗真菌薬の選択が可能になります。

培養検査結果の解釈例

検査結果	意味すること	考えられる対応
菌陽性（菌種名報告）	白癬菌感染が確定、原因菌種も判明	菌種に応じた治療、感染源対策
菌陰性	培養で菌が発育せず	他の原因を考慮、症状が続くなら再検査
雑菌発育	白癬菌以外の菌が発育	白癬菌感染は否定的、または混合感染の可能性

薬剤感受性テストの結果

場合によっては、検出された菌に対してどの抗真菌薬が効果的かを調べる薬剤感受性テストが行われることがあります。

この結果は、特に治療が難航している場合や、耐性菌が疑われる場合に、治療薬を選択する上で重要な情報となります。結果は「S（感受性あり：効果あり）」「I（中間：効果が期待できる場合もある）」「R（耐性あり：効果なし）」などで示されます。

他の検査が必要な場合 – 併発症を見逃さないために

頭部白癬の診断は主に顕微鏡検査や培養検査で行いますが、症状が非典型的であったり、他の病気が疑われたりする場合には、追加の検査が必要になることがあります。

これらの検査は、正確な診断を下し、合併症や他の皮膚疾患を見逃さないために重要です。

症状が非典型的なケース

頭部白癬の症状は多様で、時には他の頭皮疾患と見分けがつきにくいことがあります。

細菌感染の併発

頭部白癬による炎症が強い場合や、頭皮を掻きむしってしまうことで、二次的に細菌感染を併発することがあります。

これを「ケルスス禿瘡（とくそう）」と呼び、頭皮が腫れあがり、膿が出たり、強い痛みを伴ったりします。この場合は、細菌培養検査を行い、原因となる細菌を特定し、抗生物質による治療も必要になります。

頭部白癬と鑑別が必要な主な頭皮疾患

疾患名	主な症状の違い
脂漏性皮膚炎	黄色っぽく湿ったフケ、赤み。抜け毛は少ないことが多い。
尋常性乾癬	銀白色の厚い鱗屑、境界明瞭な赤い発疹。頭皮以外にも症状が出やすい。
円形脱毛症	境界明瞭な円形・楕円形の脱毛斑。通常、フケやかゆみは少ない。

他の頭皮疾患との鑑別

フケやかゆみ、抜け毛といった症状は、頭部白癬だけでなく、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、円形脱毛症など、他の様々な頭皮疾患でも見られます。

これらの疾患と正確に区別するために、皮膚生検（皮膚の一部を採取して病理組織学的に調べる検査）や、アレルギー検査などが必要になることもあります。

全身状態の評価

頭部白癬が治りにくい場合や、広範囲に及ぶ場合、背景に全身的な問題が隠れている可能性も考慮します。

免疫不全が疑われる場合

稀ではありますが、重症の頭部白癬や難治性のケースでは、免疫不全状態（HIV感染症、血液疾患、免疫抑制剤の使用など）が背景にある可能性を考慮します。

必要に応じて、免疫機能に関する血液検査などを行うことがあります。

血液検査の検討

全身状態の評価や、他の疾患との鑑別のために、一般的な血液検査（白血球数、炎症反応など）や、特定の項目（血糖値、肝機能、腎機能など）を調べることがあります。

これにより、治療薬の選択や副作用のモニタリングにも役立てます。

よくある質問

頭部白癬は自然に治りますか

頭部白癬（しらくも）は、原因である白癬菌を退治しない限り、自然に治癒することは稀です。

放置すると症状が悪化し、抜け毛が進行したり、他の人に感染を広げたりする可能性があります。適切な抗真菌薬による治療が必要です。

検査は痛いですか

頭皮から鱗屑（フケ）や毛髪を採取する際、チクッとした軽い刺激を感じることはありますが、強い痛みはほとんどありません。

顕微鏡検査や培養検査自体に痛みは伴いませんので、ご安心ください。

子供のフケが気になりますが受診すべきですか

お子様のフケが多い、かゆみがある、一部の髪が抜けているなどの症状が見られる場合は、頭部白癬の可能性があります。

子供は感染しやすく、また集団生活で他の子にうつしてしまうこともあるため、早めに皮膚科を受診し、正確な診断を受けることをお勧めします。

検査結果はすぐに出ますか

顕微鏡検査（直接鏡検）の結果は、通常、受診当日に15分～30分程度で判明します。一方、真菌培養検査は、菌を育てるのに時間が必要なため、結果が出るまでに2～4週間程度かかります。

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