AGA治療を調べていると目にする「フォリックス」。特に高濃度のFR15は強い効果が期待される一方、副作用を心配する声も少なくありません。
この記事ではフォリックスシリーズの効果の根拠となる成分や、FR15をはじめとする製品で注意すべき副作用を専門家の視点で徹底解説します。
個人輸入に頼る前に正しい知識を身につけ、ご自身にとって安全で確実な薄毛治療を選択することが重要です。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
フォリックスとは?主要成分と特徴を解説
フォリックスは、Sapphire Healthcare LLC社が製造するミノキシジルを主成分とした海外製のAGA治療外用薬シリーズです。
様々な有効成分を配合した豊富なラインナップが特徴ですが、日本では医薬品として承認されておらず、入手するには個人輸入などの方法に限られます。

ミノキシジルを主成分とする外用薬
フォリックスの最も重要な成分は「ミノキシジル」です。
ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発されましたが、その過程で発毛効果が発見され、現在はAGA治療薬として世界中で広く使用されています。
頭皮に直接塗布することで毛根の血管を拡張し、血流を増加させ、毛母細胞を活性化させる働きがあります。
製品ごとに異なる有効成分
フォリックスシリーズはミノキシジルの濃度や配合されている他の有効成分によって多くの製品に分かれています。
例えば高濃度のFR15やFR16にはミノキシジルに加えてAGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)を抑制するフィナステリドや、頭皮環境を整える各種ビタミン、アデノシンなどが配合されています。
フォリックスシリーズの主な製品と特徴
製品名 | ミノキシジル濃度 | 主な追加成分 |
---|---|---|
FR07 | 7% | アデノシン、プロシアニジンB2 |
FR12 | 12% | フィナステリド、アルファトラジオール |
FR15 | 15% | フィナステリド、レチノール、各種ビタミン |
リポスフィア技術による浸透性
フォリックスは有効成分をカプセル化して皮膚の深層部まで届ける「リポスフィア技術」を採用していると謳っています。
この技術により有効成分が長時間にわたって安定的に放出され、効果の持続性と浸透性を高めることを目的としています。
しかしこれらの技術も含め、製品全体の有効性や安全性は日本の規制当局によって評価されたものではありません。
フォリックスに期待できる2大発毛効果
フォリックスの効果は主に「ミノキシジル」による発毛促進と、「フィナステリド」による抜け毛抑制という2つの異なる方向からのアプローチに基づいています。
この組み合わせにより、AGAに対して多角的な作用が期待されます。
ミノキシジルの「発毛促進」効果
ミノキシジルは、毛包に直接作用して「攻め」の役割を果たします。血管を拡張して頭皮の血流を改善し、髪の成長に必要な栄養素を毛母細胞へ届けやすくします。
また、毛母細胞そのものを活性化させ、ヘアサイクルのうち「成長期」を延長させることで、細く短い髪を太く長い健康な髪へと育てます。
ミノキシジルの主な働き
作用点 | 具体的な働き |
---|---|
血管 | 血管を拡張し、血流を増加させる |
毛母細胞 | 細胞分裂を活性化させ、髪の成長を促す |
ヘアサイクル | 成長期を延長し、休止期への移行を抑制する |

フィナステリドの「抜け毛抑制」効果
一方、フィナステリドは「守り」の役割を担います。AGAの根本原因であるDHTの生成に必要な5αリダクターゼという酵素を阻害します。
この作用によってDHTの濃度が低下してヘアサイクルの乱れが是正され、抜け毛が減少します。
ただし、フィナステリドは本来内服薬として用いられる成分であり、外用薬としての有効性や安全性についてはまだ議論の余地があります。
効果を実感するまでの期間
ミノキシジル外用薬の治療効果はヘアサイクルが正常化し、新しい髪が成長する時間が必要なため、すぐには現れません。
一般的に抜け毛の減少などの初期変化を感じるまでに約3ヶ月、明らかな発毛効果を実感するまでには少なくとも6ヶ月程度の継続使用が必要です。
焦らずに根気強く続けることが大切です。
特に注意すべきフォリックスFR15の副作用

フォリックスFR15は、15%という非常に高濃度のミノキシジルを含んでいるため、効果への期待が高い一方で、副作用のリスクもそれに比例して高まります。
使用を検討する前に、起こりうる副作用について正しく理解しておくことが重要です。
皮膚に現れる主な副作用
最も一般的に見られる副作用は塗布した部分の皮膚トラブルです。
ミノキシジル自体や基剤として含まれるプロピレングリコールなどが原因で、かゆみ、発赤、かぶれ、フケ、乾燥などを引き起こすことがあります。
症状が軽い場合は様子を見ることもできますが、悪化する場合や我慢できない場合は直ちに使用を中止する必要があります。
FR15で起こりうる皮膚症状
症状 | 原因の可能性 | 対処法 |
---|---|---|
かゆみ・発赤 | ミノキシジル、基剤へのアレルギー反応 | 使用中止、医師への相談 |
フケ・乾燥 | アルコール成分による刺激 | 保湿、低刺激シャンプーへの変更 |
接触皮膚炎 | 成分へのアレルギー反応 | 直ちに使用を中止し受診 |
全身に及ぶ可能性のある副作用
ミノキシジルは血管を拡張する作用があるため、頭皮から吸収された成分が全身に影響を及ぼすことがあります。特に高濃度の製品ではそのリスクが高まります。
具体的には心臓への負担増による動悸や息切れ、血圧低下によるめまいや立ちくらみ、体内の水分バランスの乱れによる手足や顔のむくみなどが報告されています。
フィナステリド由来の副作用
FR15にはフィナステリドも配合されています。
フィナステリドは男性ホルモンに作用するため、ごく稀に性欲減退や勃起機能不全(ED)といった性機能に関する副作用や、肝機能障害を引き起こす可能性があります。
外用薬の場合、内服薬に比べて全身への影響は少ないと考えられていますが、リスクがゼロではないことを認識しておく必要があります。
高濃度ミノキシジルゆえのリスク
日本では一般用医薬品として市販されているミノキシジル外用薬の濃度は最大5%までです。15%という濃度は国内の安全基準を大きく上回っており、副作用の発現リスクが格段に高まります。
安易な使用は避けて専門家である医師の管理下で治療を進めることが、安全性を確保する上で極めて重要です。
『自己責任』という言葉の重み|個人輸入に潜む見えないリスク
フォリックスは国内未承認薬のため、多くの方が個人輸入代行サイトなどを利用して入手しています。
「安くて手軽」というメリットの裏には、見過ごすことのできない大きなリスクが潜んでいます。そのリスクは全て「自己責任」という言葉のもとに、あなた自身が負うことになります。
偽造薬・粗悪品のリスク
個人輸入で入手する医薬品には有効成分が全く入っていない、あるいは異なる成分が入っている偽造薬や、不衛生な環境で製造された粗悪品が紛れ込んでいる可能性があります。
見た目では本物と区別がつかず、効果がないばかりか、予期せぬ健康被害を引き起こす危険性さえあります。
個人輸入品と国内正規品の比較
項目 | 個人輸入品(フォリックスなど) | 国内承認薬 |
---|---|---|
品質保証 | 保証なし | 国の基準に基づき保証 |
有効性・安全性 | 不明 | 国によって確認済み |
副作用救済 | 対象外 | 医薬品副作用被害救済制度の対象 |
副作用発生時の対応の難しさ
もし個人輸入した薬で重篤な副作用が起きた場合どうしますか。どの成分が原因なのか、適切な治療法は何なのか、医師も判断に困ることがあります。
また、日本の「医薬品副作用被害救済制度」は国内で承認された医薬品を正しく使用した場合に適用される制度です。
個人輸入した未承認薬による健康被害はこの制度の対象外となり、治療費などはすべて自己負担になります。
本当にそれは「あなたに合った薬」か
薄毛の原因はAGAだけとは限りません。他の皮膚疾患や内科的な病気が原因である可能性もあります。
医師の診断を受けずに自己判断で薬を使い始めることは根本的な原因を見逃し、適切な治療の機会を失うことにつながります。
フォリックスがあなたの症状にとって本当に必要な薬なのか、それを判断できるのは専門家である医師だけです。
なぜクリニックでの処方が推奨されるのか
薄毛治療は専門家である医師の診断と指導のもとで行うことが、安全かつ効果的な改善への最も確実な道です。
個人輸入に頼るのではなく、クリニックを受診することには計り知れないメリットがあります。
医師による正確な診断
クリニックでは、まず問診や視診、マイクロスコープによる頭皮チェックなどを行い、あなたの薄毛が本当にAGAなのか、進行度はどのくらいなのかを正確に診断します。
この診断に基づいて、あなたの症状や体質、ライフスタイルに合った治療法を提案します。これは、自己判断では決してできないことです。
安全性が保証された国内承認薬
クリニックで処方する薬は、すべて厚生労働省によって有効性と安全性が確認された国内承認薬です。厳格な品質管理のもとで製造されており、偽造薬の心配はありません。
安心して治療に専念できる環境が、ここにはあります。
クリニックでの治療の流れ
- 無料カウンセリング予約
- 医師による診察・頭皮診断
- 治療方針の決定・説明
- 治療開始・薬の処方
- 定期的な経過観察
副作用への迅速かつ適切な対応
万が一、治療中に副作用が疑われる症状が現れた場合でも、クリニックであればすぐに対応が可能です。
医師が症状を診察し、薬の減量や変更、あるいは症状を緩和するための処置など、医学的根拠に基づいた適切な対応を取ります。この安心感は個人輸入では決して得られません。
フォリックスの正しい使い方と注意点

もしフォリックスを使用する場合でも、その効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるためには正しい使い方を守ることが重要です。
一般的なミノキシジル外用薬の使用方法を参考に解説します。
1日2回、朝と夜に塗布する
ミノキシジル外用薬は1日2回、朝と夜に塗布するのが基本です。頭皮が清潔な状態で使用することが望ましいため、夜はシャンプー後、髪と頭皮をしっかり乾かしてから使用しましょう。
塗布間隔は、8時間から12時間あけるのが目安です。
用法・用量を守る
1回の使用量は製品の指示に従い、通常は1mlを超えないようにします。多く塗れば効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクを高めるだけです。
付属のスポイトやスプレーを使い、薄毛が気になる部分を中心に頭皮に直接薬液がつくように塗布します。
正しい塗布のポイント
ステップ | 内容 |
---|---|
準備 | 髪を分け、頭皮を露出させる |
塗布 | スポイトで直接頭皮に垂らし、指の腹で優しく広げる |
乾燥 | 薬液が完全に乾くまで自然乾燥させる(ドライヤーの温風は避ける) |
使用後の手洗いと保管方法
塗布後は薬液が手についたままにならないよう、石鹸でしっかりと手を洗ってください。目に薬液が入らないように注意が必要です。
また、製品は子供の手の届かない涼しい場所に保管し、品質の劣化を防ぎましょう。
効果を最大化するための併用療法と生活習慣
外用薬の効果をさらに高め、総合的に薄毛を改善するためには、他の治療法との併用や日々の生活習慣の見直しが有効です。
内服薬との併用による相乗効果
外側から発毛を促すミノキシジル外用薬と、内側から抜け毛の原因を断つフィナステリドやデュタステリドの内服薬を併用することはAGA治療の標準的な方法です。
「攻め」と「守り」を組み合わせることで単独の治療よりも高い改善効果が期待できます。
ただし、これらの併用は必ず医師の管理下で行う必要があります。
髪の成長を支える生活習慣
健康な髪は健康な体から生まれます。バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動は全身の血行を促進し、髪の成長に必要な栄養素を頭皮に届けやすくします。
治療効果を最大限に引き出す土台作りのために、生活習慣の改善にも取り組みましょう。
髪に良い生活習慣の例
項目 | 具体的な内容 |
---|---|
食事 | タンパク質、ビタミン、亜鉛を意識したバランスの良い食事 |
睡眠 | 1日6〜8時間の質の高い睡眠を確保する |
ストレス管理 | 趣味や運動でストレスをこまめに発散する |
正しい頭皮ケア
頭皮の毛穴詰まりや炎症は健康な髪の成長を妨げます。洗浄力の強すぎないアミノ酸系のシャンプーを使い、指の腹で優しくマッサージするように洗いましょう。
頭皮を常に清潔で健康な状態に保つことが外用薬の浸透を助け、治療効果を高めることにつながります。

フォリックスに関するよくある質問
最後に、フォリックスやミノキシジル外用薬に関して患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。治療に関する疑問の解消にお役立てください。
- 使用を中止するとリバウンドしますか?
-
はい、リバウンドが起こる可能性が高いです。
フォリックス(ミノキシジル)の効果は使用を継続している間に限られます。使用を中止すると再びAGAが進行し始め、数ヶ月かけて髪の状態は治療を始める前の状態に戻っていきます。
改善した状態を維持するためには継続的な治療が必要です。
- 女性もフォリックスを使用できますか?
-
いいえ、フィナステリドが配合されている製品(FR12, FR15, FR16など)は女性は絶対に使用できません。
妊娠中の女性がフィナステリドに触れると男子胎児の生殖器に異常をきたす危険性があります。
女性の薄毛には女性専用の治療法がありますので、必ず専門のクリニックにご相談ください。
- 初期脱毛は必ず起こりますか?
-
初期脱毛は治療が効いている証拠とも言える好転反応ですが、すべての人に起こるわけではありません。起こるかどうか、またその程度には個人差があります。
使用開始後1ヶ月前後で一時的に抜け毛が増えることがありますが、通常は1〜2ヶ月で治まりますので、自己判断で使用を中止しないでください。
以上
参考文献
RATTANACHITTHAWAT, Napapat, et al. Development and optimization of finasteride-loaded microemulsions for transdermal delivery. 2019. PhD Thesis. Silpakorn University.
ZHANG, Min, et al. Minoxidil cyclodextrin inclusion complex-loaded microemulsions and transfersomes for androgen alopecia treatment: a comparative study. Drug Delivery and Translational Research, 2025, 1-20.
RUNGSEEVIJITPRAPA, Wandee, et al. Optimization and transfollicular delivery of finasteride-loaded proniosomes for hair growth stimulation in C57BL/6Mlac mice. Pharmaceutics, 2021, 13.12: 2177.
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KESIKA, Periyanaina, et al. Role and mechanisms of phytochemicals in hair growth and health. Pharmaceuticals, 2023, 16.2: 206.
GENTILE, Pietro, et al. Evaluation of not-activated and activated PRP in hair loss treatment: role of growth factor and cytokine concentrations obtained by different collection systems. International journal of molecular sciences, 2017, 18.2: 408.