50代を迎え、「若い頃とは髪質が変わった」「抜け毛が急に増えた」と感じていませんか。
この年代の薄毛はAGA(男性型脱毛症)の進行に加え、加齢による身体全体の変化が複雑に影響し合うため、20代や30代の薄毛とは異なる特徴があります。
諦めてしまう方も少なくありませんが、50代からでも適切な治療を始めることで薄毛の進行を食い止め、改善を目指すことは十分に可能です。
この記事では50代の薄毛に特有の原因、治療における注意点、そして前向きに治療に取り組むためのポイントを専門医の視点から詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
50代の薄毛はAGAだけが原因ではない?加齢による変化
50代の薄毛を考える上で、AGAの進行と加齢に伴う身体の自然な変化の両方を理解することが重要です。この二つが合わさることで薄毛の悩みがより顕著になります。
AGA(男性型脱毛症)の進行
AGAは進行性の脱毛症であり、50代になると若い頃から発症していた症状が、より目に見える形で現れてきます。
男性ホルモンの影響でヘアサイクルが短縮され、髪が細く短くなる「軟毛化」が広範囲で見られるようになります。
加齢による毛周期(ヘアサイクル)の乱れ
AGAとは別に、加齢そのものによってもヘアサイクルは変化します。
髪の成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包の割合が増えるため、全体的な髪のボリュームが自然と減少していきます。これを「加齢性脱毛症」と呼びます。
AGAと加齢性脱毛症の主な違い
項目 | AGA(男性型脱毛症) | 加齢性脱毛症 |
---|---|---|
主な原因 | 男性ホルモン(DHT) | 加齢による細胞機能の低下 |
特徴 | 特定の部位から薄毛が進行 | 髪全体が均一に細く、少なくなる |

頭皮の血行不良と毛母細胞の活力低下
年齢とともに血管は硬くなり、血流が悪化する傾向があります。このことにより、髪の成長に必要な栄養や酸素が頭皮の毛母細胞に届きにくくなります。
毛母細胞自体の活力も加齢により低下するため、健康で太い髪が作られにくくなるのです。
20代・30代とは違う 50代の薄毛治療のポイント
50代の薄毛治療は、若い世代とは異なる視点が必要です。全身の健康状態を考慮し、現実的な目標を持って治療に臨むことが成功の鍵となります。
全身の健康状態への配慮
50代になると、高血圧や糖尿病といった生活習慣病など、何らかの持病を抱えている方が増えます。薄毛治療薬の中には、他の薬との飲み合わせに注意が必要なものもあります。
そのため、治療開始前には必ず医師に既往歴や服用中の薬を正確に伝えることが重要です。
治療効果の現れ方と期間
加齢により身体の代謝機能が低下しているため、若い世代に比べて治療効果が緩やかに現れる傾向があります。
すぐに結果が出なくても焦らず、最低でも6ヶ月から1年という長期的な視点で、根気強く治療を続けることが大切です。
年代別の治療における特徴
年代 | 主な特徴 | 治療のポイント |
---|---|---|
20代~30代 | AGAが主な原因。進行が早い場合も。 | 早期に進行を抑制することが中心。 |
50代以降 | AGAと加齢による変化が複合。 | 全身の健康状態を考慮した治療計画。 |

治療目標の現実的な設定
20代の頃のようなフサフサの状態に完全に戻すことを目標にするのはやめましょう。
「現状を維持する」「少しでも毛量を増やして地肌を目立たなくする」など、現実的な目標を設定することが治療を継続する上でのモチベーションにつながります。
「もう年だから」その諦めが、治療の可能性を狭めていませんか?
多くの情報サイトは50代の薄毛を身体的な変化としてのみ解説します。
私たちは、この年代の方が抱える特有の「諦め」の感情こそが、治療への大きな障壁になっていると考えています。
50代という年代が抱える心理
「この年齢で薄毛になるのは仕方がない」「今さら治療しても…」。50代は人生の節目として、様々なことを受け入れようとする時期でもあります。
しかし、その「仕方がない」という諦めが、まだ残されている髪の可能性まで手放すことにつながっていないでしょうか。
見た目の若々しさとQOL(生活の質)
人生100年時代と言われる現代において50代はまだまだ若く、活動的な年代です。髪は人の印象を大きく左右し、自信や社会的な活動への意欲にも影響を与えます。
髪の状態を少しでも改善することはご自身のQOL(生活の質)を高め、これからの人生をより豊かに、前向きに過ごすための大切な自己投資です。
諦めの心理がもたらす影響
心理状態 | 行動 | 結果 |
---|---|---|
「もう年だから」という諦め | 治療という選択肢を検討しない | AGAが進行し、改善の機会を失う |
「どうせ治らない」という思い込み | 自己判断で市販品に頼る | 効果のない対策に時間とお金を費やす |
諦める前に知ってほしい現代の薄毛治療
AGA治療はこの10年で大きく進歩しました。医学的根拠に基づいた治療法が確立され、50代、60代から治療を始めても、多くの方が進行抑制や改善効果を実感しています。
私たちはあなたの「もう年だから」という言葉の裏にある、本当は改善したいという気持ちに寄り添います。
諦めてしまう前に、一度専門家である私たちにあなたの悩みを聞かせてください。
50代から始めるAGA治療薬の効果と注意点
50代のAGA治療においても、中心となるのは内服薬と外用薬です。ただし、若い世代以上に健康状態への配慮が重要になります。
内服薬(フィナステリド・デュタステリド)の役割
AGAの進行を止めるためには、原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑える内服薬が基本となります。
これらの薬は50代から服用を始めても、抜け毛を減らしてヘアサイクルを正常化させる効果が期待できます。
外用薬(ミノキシジル)の併用効果
加齢による血行不良が懸念される50代では頭皮の血流を改善し、毛母細胞を活性化させるミノキシジル外用薬の併用が特に有効です。
内服薬で抜け毛を止め、外用薬で発毛を促すという二つのアプローチで、より高い治療効果を目指します。
主なAGA治療薬
種類 | 主な薬剤 | 期待される効果 |
---|---|---|
内服薬 | フィナステリド、デュタステリド | 抜け毛の抑制、AGAの進行停止 |
外用薬 | ミノキシジル | 血行促進、発毛促進 |
持病や服用中の薬との相互作用
高血圧の薬や血液をサラサラにする薬など日常的に服用している薬がある場合は、AGA治療薬との飲み合わせに注意が必要です。
特にミノキシジルはもともと血圧の薬として開発された経緯があるため、循環器系の持病がある方は必ず医師に申告してください。
治療効果を高める生活習慣の見直し

薬物治療の効果を最大限に引き出すためには身体の内側から健康な状態を作ることが大切です。
特に50代は生活習慣の乱れが身体に現れやすい年代です。
抗酸化作用を意識した食事
加齢とともに体内の酸化、つまり「サビ」が進みます。この酸化ストレスは髪の細胞にもダメージを与えます。
抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどを多く含む緑黄色野菜や果物、ナッツ類を積極的に食事に取り入れましょう。
無理のない運動習慣と血行促進
激しい運動は必要ありません。ウォーキングや軽いジョギングなど、楽しみながら続けられる有酸素運動を習慣にすることが全身の血行を改善し、頭皮に栄養を届ける助けとなります。
睡眠の質とホルモンバランス
年齢を重ねると眠りが浅くなりがちですが、髪の成長に欠かせない成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。
寝室の環境を整え、リラックスして眠りにつけるよう工夫し、睡眠の質を高めることが重要です。
- バランスの取れた食事
- 継続可能な運動
- 質の高い睡眠
頭皮環境を整える50代からのヘアケア

50代の頭皮は乾燥しやすく、デリケートになっています。頭皮への負担を減らし、潤いを保つヘアケアを心がけましょう。
保湿を重視したシャンプー選び
皮脂を取りすぎない、洗浄力のマイルドなアミノ酸系のシャンプーがおすすめです。
セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合されたものを選ぶと、頭皮の乾燥を防ぐことができます。
50代におすすめのシャンプータイプ
タイプ | 特徴 |
---|---|
アミノ酸系 | 洗浄力がマイルドで、頭皮の潤いを保つ |
スカルプケア | 頭皮の血行促進や保湿を目的とする |
頭皮への負担が少ない洗髪方法
熱すぎるお湯は頭皮の乾燥を招くため、38℃程度のぬるま湯で洗いましょう。
シャンプーは直接頭皮につけず、手のひらでよく泡立ててから指の腹で優しくマッサージするように洗うのがポイントです。
育毛剤の正しい選び方と役割
育毛剤を使用する場合は、血行促進成分や保湿成分が含まれた50代の頭皮環境に合ったものを選びましょう。
育毛剤はあくまで頭皮環境を整える補助的な役割であり、AGAの進行を止める効果はないことを理解した上で使用することが大切です。

50代の薄毛治療に関するよくある質問
最後に、50代の患者さんからよく寄せられる薄毛治療に関する質問にお答えします。
- 今から治療を始めても効果はありますか?
-
はい、十分に期待できます。AGA治療に「手遅れ」ということはありません。
毛根が活動している限り、治療によって髪の毛が太く成長したり、抜け毛が減ったりといった効果は、どの年代から始めても実感できる可能性があります。
大切なのは、気になった時にできるだけ早く始めることです。
- 治療の副作用は若い人より出やすいですか?
-
年齢が高いからといって、副作用のリスクが著しく高まるわけではありません。
ただし、前述の通り、持病や服用中の薬がある場合は注意が必要です。医師が健康状態をしっかりと確認した上で、安全に治療を進めますのでご安心ください。
治療開始前の確認事項
項目 申告の重要性 既往歴 高血圧、心臓病、肝臓病など 服用中の薬 薬の相互作用を確認するため アレルギー歴 薬剤に対するアレルギー反応を防ぐため - 白髪にも治療は効果がありますか?
-
AGA治療は髪の色を作るメラノサイトには直接作用しないため、白髪が黒髪に戻ることはありません。
しかし、治療によって白髪のハリやコシが改善されたり、白髪のまま太く成長したりする効果は期待できます。
- 治療期間と費用の目安はどのくらいですか?
-
治療は効果を維持するために継続することが基本となります。費用は治療内容によって異なりますが、一般的には内服薬と外用薬の組み合わせで月額15,000円~30,000円程度が目安です。
初回のカウンセリングで、あなたに合った治療計画と詳細な費用についてご説明します。
以上
参考文献
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