AGA治療薬を調べていく中で、ミノキシジル15%という高い濃度を配合した「フォリックスFR15」に関心を持つ方は少なくありません。
「濃度が高いほど効果も強いのではないか」という期待から、一つの選択肢として考えられることでしょう。
しかし医薬品における「濃度」は、効果と副作用のバランスを考える上で非常に重要な要素です。
この記事ではミノキシジルの濃度が治療効果にどう影響するのかという基本から、フォリックスFR15の15%という濃度が持つ意味、そして高濃度製品と付き合っていく上での注意点までを、専門医の立場から詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
ミノキシジル濃度とAGA治療効果の基本関係
フォリックスFR15を理解する前に、まずはAGA治療の主成分であるミノキシジルの濃度と効果に関する基本的な関係性を知っておくことが重要です。
ミノキシジルとは?発毛を促す働き
ミノキシジルは頭皮の毛細血管を拡張させて血流を増やすことで、毛髪の成長を司る毛母細胞を活性化させる働きを持つ、医学的に認められた発毛成分です。
毛母細胞に十分な栄養と酸素を届けることで、ヘアサイクルにおける「成長期」を延長させ、髪を太く、長く育てます。
濃度が高ければ効果も高いのか?
一般的にミノキシジルの濃度が高くなるほど、発毛効果も高まる傾向があると考えられています。海外の臨床試験データでは、2%よりも5%のミノキシジルの方が発毛効果が高かったという報告があります。
このことから、濃度と効果には一定の相関関係があるとされています。しかし、それは同時に副作用のリスクも高まることを意味します。
濃度と期待される効果・リスクの関係
| ミノキシジル濃度 | 期待される発毛効果 | 副作用リスク |
|---|---|---|
| 低い | 穏やか | 比較的低い |
| 高い | より強い | 比較的高くなる |
日本国内で承認されているミノキシジル濃度
2024年現在、日本国内の薬局などで購入できる一般用医薬品(第一類医薬品)のミノキシジル外用薬の最大濃度は5%です。
これは臨床試験によって日本人における有効性と安全性が確認されている濃度です。
医療機関によっては、これ以上の濃度の外用薬を院内製剤として処方することもありますが、一般に市販はされていません。

フォリックスFR15の「ミノキシジル15%」という高濃度
フォリックスFR15の最大の特徴は、国内承認薬の3倍にあたる15%というミノキシジル濃度です。この高濃度にはどのような背景があり、どのような方に適しているのでしょうか。
15%配合の医学的背景と期待値
15%という高濃度は従来の5%濃度では十分な効果が得られなかった人々に向けて、より強力な発毛効果を期待して設定されたものと考えられます。
毛母細胞への刺激を最大化し、AGAの進行が著しい場合や毛髪の軟毛化が顕著な場合に、状況を打開する選択肢として位置づけられます。
5%製剤との効果の比較考察
ミノキシジル15%と5%の効果を直接比較した大規模で信頼性の高い臨床研究データは、現時点では限られています。
しかし、濃度依存的に効果が高まるという一般的な薬理作用の観点から、5%で頭打ちだった方が15%に切り替えることで、さらなる改善が見られる可能性は理論的に考えられます。
ただし、その効果の現れ方には大きな個人差があります。
濃度による効果の個人差
| タイプ | 5%での反応 | 15%での反応(予測) |
|---|---|---|
| Aさん | 十分な効果あり | 変更の必要性は低い |
| Bさん | 効果が不十分 | 効果が高まる可能性がある |
| Cさん | 副作用が出た | 使用は非推奨 |
高濃度が推奨されるケースとは
高濃度のミノキシジル製剤の使用を検討するのは以下のようなケースです。
重要なのは自己判断で始めるのではなく、まず医師に相談することです。
高濃度製剤の検討対象
- 国内承認の5%ミノキシジルを半年以上使用しても効果が実感できない
- AGAが広範囲に、かつ重度に進行している
- 医師の管理下で副作用のリスクを理解した上で使用できる
濃度だけじゃない – フォリックスFR15の複合成分
フォリックスFR15の価値は単にミノキシジルの濃度が高いことだけではありません。AGAに対して多角的にアプローチするための様々な補助成分が配合されています。

発毛をサポートする補助成分
ミノキシジルの血管拡張作用をサポートしたり、頭皮の健康を維持したりするための成分が含まれています。
例えば、アデノシンや各種ビタミンなどが毛母細胞のエネルギー産生を助け、ミノキシジルが働きやすい環境を整えます。
抜け毛抑制にアプローチする成分
フォリックスFR15にはAGAの根本原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成に関わる5α-リダクターゼという酵素の働きを阻害する、アゼライン酸や銅ペプチドといった成分も配合されています。
これらがミノキシジルの「発毛促進」とは別の「抜け毛抑制」という側面から治療を支えます。
主な補助成分と期待される役割
| 成分名 | 期待される役割 |
|---|---|
| アデノシン | 毛乳頭細胞の活性化 |
| アゼライン酸 | 5α-リダクターゼの阻害 |
| 銅ペプチド | 抗炎症、5α-リダクターゼの阻害 |
なぜ複数の成分が必要なのか
AGAは「発毛力の低下」と「抜け毛の増加」という二つの問題が同時に進行する複雑な脱毛症です。
このためミノキシジルで発毛を促す(アクセルを踏む)と同時に、他の成分で抜け毛を抑える(ブレーキをかける)という両面からのアプローチが、より効果的な改善につながると考えられています。
「濃ければ効く」の裏側 – 濃度と副作用リスクの相関関係
「ミノキシジル濃度が高い製品を使えば、もっと髪が生えるはずだ」。その期待とは裏腹に、かゆみやフケ、動悸といった症状に悩まされ、治療を断念してしまう方がいます。
その「なぜ?」に、私たちは真摯に向き合いたいと考えています。
なぜあなたの頭皮は悲鳴を上げるのか
高濃度のミノキシジル製剤による頭皮トラブル(かゆみ、発疹、フケなど)は、単に「肌に合わなかった」という言葉で片付けられるものではありません。
濃度が高まるということは、皮膚への刺激も強くなるということです。あなたの頭皮には刺激を受け止められる許容量(キャパシティ)があります。
その許容量を超えた刺激が加わり続けることで、頭皮が「もう限界だ」と悲鳴を上げている状態、それが皮膚炎です。
頭皮の許容量と刺激のイメージ
| 状態 | 頭皮の許容量 | 薬剤の刺激 |
|---|---|---|
| 健常な状態 | 大きい | 許容範囲内 |
| 副作用発現時 | 超えている | 許容量オーバー |
「自分は大丈夫」という思い込みの危険性
「他の人は副作用が出たみたいだけど、自分はきっと大丈夫だろう」。この思い込みが、安全な治療から遠ざかる一因となります。
副作用の現れ方は、その日の体調、季節、ストレスなど様々な要因で変化します。今日まで大丈夫だったからといって、明日も大丈夫とは限りません。特に高濃度製品は、いわば”諸刃の剣”です。
その力を正しく扱うためには、常に自分の体の声に耳を傾ける謙虚さが必要です。
副作用が出た時の「治療中断」以外の選択肢
副作用が出たからといって、すぐに「AGA治療を諦める」必要はありません。それはあまりにもったいないことです。
例えば医師の管理のもとであれば、以下のような選択肢を検討できます。
副作用出現時の対応策
- 一時的に使用を休み、頭皮の炎症を抑える治療を優先する
- より刺激の少ない低濃度の製剤に変更する
- 塗布回数や量を調整し、頭皮の許容量に合わせる
- ミノキシジル外用薬ではなく、内服薬や他の治療法を検討する

大切なのは、問題が起きた時に相談できる専門家がいることです。
自己判断で無理を続けるのではなく、一度立ち止まり、専門家と一緒に最適な道筋を探すこと。それこそが、安全かつ効果的に治療を続けるための最良の方法です。
高濃度ミノキシジル治療の効果を実感するまでの期間
高濃度製品を使ったからといって、すぐに結果が出るわけではありません。AGA治療には毛髪の生まれ変わりのサイクルを理解し、根気強く向き合う姿勢が重要です。
ヘアサイクルと治療期間の関係
髪の毛には成長期・退行期・休止期というサイクルがあります。AGAではこの成長期が短くなり、髪が十分に育つ前に抜けてしまいます。
ミノキシジル治療は、この乱れたサイクルを正常に戻すための治療です。
効果が目に見える形で現れるには休止期だった毛穴から新しい髪が生え、それが太く長く成長するまでの時間が必要になります。
初期脱毛の正しい理解
治療開始後、数週間から1ヶ月程度の時期に一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがあります。
これはミノキシジルの作用によって新しい髪が古い髪を押し出すために起こる現象で、治療が順調に進んでいる証拠とも言えます。
この状態に慌てて使用を中止しないことが大切です。通常、1〜2ヶ月程度でこの現象は治まります。
3ヶ月から6ヶ月が一つの目安
産毛のような細い毛が生えてくるのを実感するまでに、少なくとも3ヶ月。その毛が太く、しっかりとした毛に育ち、見た目の変化として認識できるようになるまでには、約6ヶ月の継続使用が一つの目安となります。
焦らず、日々のケアを続けていきましょう。

個人輸入と国内処方 – 安全な治療を選ぶために
フォリックスFR15のような海外製の高濃度ミノキシジル製品は、主に個人輸入によって入手されます。しかし、そこには国内での治療とは異なる重大な注意点が存在します。
フォリックスFR15の入手経路
フォリックスFR15は日本では医薬品として承認されていないため、国内の医療機関で広く処方されたり、薬局で販売されたりすることはありません。
そのため多くの場合、個人輸入代行業者を介して海外から取り寄せることになります。
入手経路の比較
| 区分 | 入手場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国内承認薬(〜5%) | 薬局、クリニック | 国の審査済みで安全性が高い |
| 海外未承認薬 | 個人輸入サイトなど | 品質や安全性の保証がない |
医薬品副作用被害救済制度について
国内で承認された医薬品を正しく使用したにもかかわらず、重篤な副作用が発生した場合、医療費や年金などが給付される「医薬品副作用被害救済制度」という公的な制度があります。
しかし、個人輸入した未承認薬によって起きた健康被害は、この制度の対象外となります。つまり、全ての責任を自分自身で負うことになるのです。
医師の管理下で治療を行う意義
医師の診察のもとで治療を行う最大のメリットは、安全性と的確な判断です。
あなたの健康状態やAGAの進行度を正しく評価し、最適な治療法を提案します。また、治療中に副作用が起きた場合でも迅速かつ専門的な対処が可能です。
自己判断による個人輸入は、こうした安全網なしで治療を進めることであり、私たちはそのリスクを強く懸念します。
フォリックスFR15に関するよくある質問
- 濃度が高いほど初期脱毛もひどくなりますか?
-
濃度と初期脱毛の強さに明確な相関関係があるというデータはありません。しかし濃度が高いほどヘアサイクルへの働きかけが強くなる可能性は考えられます。
初期脱毛の程度には個人差が非常に大きいですが、あまりに抜け毛が多い、あるいは長期間続く場合は他の脱毛症の可能性も考えられるため、一度医師に相談することをお勧めします。
- 15%で効果がなければ、もう諦めるしかないですか?
-
いいえ、そんなことはありません。AGA治療は外用薬だけではありません。フィナステリドやデュタステリドといった内服薬の併用、あるいは自毛植毛など、他にも様々な選択肢があります。
一つの方法で効果がなかったとしても、多角的なアプローチで改善を目指すことは可能です。
自己判断で諦めてしまう前に、ぜひ一度AGAを専門とするクリニックにご相談ください。
- 使用を中止するとどうなりますか?
-
ミノキシジルの効果は使用を継続している期間に限られます。使用を中止すると、その発毛作用は失われ、ヘアサイクルは再びAGAの影響を受けて乱れ始めます。
その結果、数ヶ月かけて治療によって生えた髪は抜け、元の状態に戻っていくと考えられます。
効果を維持するためには、継続的な治療が必要です。
- 医師に相談せずに高濃度の製品を使っても良いですか?
-
推奨しません。高濃度のミノキシジルは、それだけ副作用のリスクも高まります。特に心臓や血圧に持病のある方が医師の診察なしに使用することは、大変危険です。
また、あなたの薄毛の原因が本当にAGAなのかを診断するためにも、まずは専門医の診察を受けることが安全で効果的な治療への第一歩です。

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