ふと鏡で頭頂部を見たとき、「以前よりつむじが目立つようになった」「地肌が透けて見える」と感じて不安になっていませんか。
いわゆる「つむじはげ(O字はげ)」は、多くの場合AGA(男性型脱毛症)が原因で進行します。
この状態に対して「育毛剤」は効果があるのか、それとも「発毛剤」を選ぶべきなのか。両者の明確な違いや、つむじはげ対策で注目したい成分について詳しく解説します。
ご自身の状態を正しく理解し、適切なケアを始めるための一歩にしてください。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
つむじはげ(O字はげ)とは?その特徴と原因
つむじはげ、またはO字はげと呼ばれる状態は、頭頂部(つむじ周辺)から円形に薄毛が進行していく脱毛のパターンを指します。
自分では気づきにくい場所であるため、家族や友人からの指摘で初めて認識するケースも少なくありません。
頭頂部の薄毛「つむじはげ」の見分け方
つむじは誰にでもあるものですが、薄毛が進行しているつむじにはいくつかの特徴があります。まず、つむじ周辺の髪の毛が細く、弱々しくなっていないか確認しましょう。
髪の毛にハリやコシがなくなり、地肌が以前よりも広範囲に見えるようであれば注意が必要です。
また、つむじの渦がはっきりしなくなり、全体のボリュームが失われてきた場合も、薄毛が始まっているサインと考えられます。
スマートフォンのカメラで頭頂部を撮影し、過去の写真と比較してみるのも一つの方法です。
なぜつむじから薄くなるのか?AGA(男性型脱毛症)の影響
つむじはげの最も一般的な原因は、AGA(男性型脱毛症)です。
AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることで発生します。
このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、脱毛シグナルが発せられ、髪の毛の成長期が短縮されます。
その結果、髪の毛が太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に薄毛が目立つようになります。
特に頭頂部と前頭部(生え際)には、5αリダクターゼと男性ホルモン受容体が多く分布しているため、AGAの影響を受けやすく、つむじや生え際から薄毛が進行しやすいのです。
AGA以外の主な原因 生活習慣やストレス
AGAが主な原因である一方で、不規則な生活習慣や過度なストレスも、つむじはげを悪化させる要因となります。
例えば、偏った食生活による栄養不足は、髪の毛の成長に必要な栄養素が頭皮に届きにくくなる原因を作ります。特にタンパク質、ビタミン、ミネラル(特に亜鉛)は健康な髪の毛の育成に重要です。
また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌を妨げ、毛母細胞の修復や成長を遅らせます。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こす可能性があります。
血行が悪くなると、栄養や酸素が毛根に十分に行き渡らなくなり、抜け毛が増えることにつながります。
放置するとどうなる?O字はげの進行パターン
つむじはげ(O字はげ)は、AGAが原因である場合、進行性の特徴を持ちます。つまり、何もしないで放置すると、薄毛の範囲は徐々に広がっていきます。
O字型に広がった薄毛が、前頭部から後退してきた生え際の薄毛(M字はげ)と連結すると、側頭部と後頭部の毛髪だけが残る「U字型」の状態に至ることもあります。
薄毛の進行速度には個人差がありますが、一度短縮されたヘアサイクルを元に戻すのは容易ではありません。「まだ大丈夫」と楽観視せず、つむじの変化に気づいた時点で早めの対策を講じることが重要です。
育毛剤と発毛剤 決定的な違いとは?
つむじはげ対策を考えたとき、多くの方が「育毛剤」と「発毛剤」のどちらを選ぶべきか悩むでしょう。この二つは名称が似ていますが、目的と含まれる成分、そして法的な分類が全く異なります。
この違いを理解することが、適切なケアの第一歩です。
「育毛剤」の役割 頭皮環境を整え毛髪を育てる
育毛剤の主な目的は、「今ある髪の毛を健康に育てる」こと、そして「抜け毛を予防する」ことです。
具体的には、頭皮の血行を促進したり、頭皮の炎症を抑えたり、毛母細胞に栄養を与えたりすることで、頭皮環境を健やかに保ちます。
現在生えている髪の毛が細くならないように、また、簡単に抜けてしまわないようにサポートするのが育毛剤の役割です。
薄毛がまだそれほど進行していない初期段階や、将来的な薄毛を予防したい場合に適しています。
「発毛剤」の役割 新しい毛髪を生み出す
一方、発毛剤の目的は、「新しい髪の毛を生み出す」ことです。
育毛剤が既存の髪の毛の維持・育成を主眼に置くのに対し、発毛剤は毛母細胞の働きを活性化させ、ヘアサイクルにおける成長期を延長・誘導することで、すでに毛髪が失われた毛穴から新たな毛髪が生えるのを促します。
つむじはげが進行し、地肌が明らかに目立つようになってきた状態や、明確な「発毛」効果を求める場合に選択肢となります。
医薬品と医薬部外品の違い
法的な分類も、両者を区別する重要なポイントです。発毛剤は、発毛効果が医学的に認められた有効成分(例:ミノキシジル)を配合した「医薬品」に分類されます。
医師の処方箋が必要なものと、薬局・ドラッグストアで購入できる一般用医薬品(OTC医薬品)があります。一方、育毛剤(一部の製品は「養毛剤」とも呼ばれます)は、「医薬部外品」に分類されます。
これは、病気の治療というよりも、防止・衛生を目的としたもので、人体に対する作用が比較的緩やかな成分が配合されています。
そのため、基本的には副作用のリスクが低いとされ、薬局やドラッグストア、通信販売などで広く購入可能です。
育毛剤と発毛剤の比較
| 項目 | 育毛剤 | 発毛剤 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 育毛、抜け毛予防、頭皮環境改善 | 発毛、脱毛の進行予防 |
| 分類 | 医薬部外品 | 医薬品(一般用医薬品など) |
| 期待できること | 髪のハリ・コシ改善、頭皮の健康維持 | 新しい毛髪の成長促進 |
つむじはげの状態別 どちらを選ぶべきか
どちらを選ぶべきかは、ご自身のつむじの状態によって判断します。
「最近、つむじ周りの髪が細くなってきた気がする」「抜け毛が増えた」「頭皮のフケやかゆみが気になる」といった、つむじはげの初期段階や予防を目的とする場合は、「育毛剤」から試してみるのがよいでしょう。
頭皮環境を整えることで、薄毛の進行を遅らせる効果が期待できます。すでにつむじの地肌がはっきりと見えており、「明らかに薄くなった」と感じる場合は、「発毛剤」の使用を検討する段階かもしれません。
ただし、発毛剤は医薬品であるため、使用前には医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
育毛剤はつむじはげ(O字はげ)に効果があるのか
では、すでにつむじはげ(O字はげ)が気になり始めた状態において、育毛剤はどの程度の効果を期待できるのでしょうか。
育毛剤は「髪を生やす」ものではありませんが、頭皮環境の悪化が薄毛の一因となっている場合、その効果を発揮します。
育毛剤が効果を発揮する頭皮の状態
育毛剤が特に効果的なのは、頭皮環境が乱れている状態です。例えば、皮脂の過剰分泌による毛穴の詰まり、乾燥によるフケやかゆみ、血行不良による栄養不足などが挙げられます。
これらはAGAによる薄毛をさらに加速させる要因となります。育毛剤に含まれる抗炎症成分や保湿成分、血行促進成分が頭皮の状態を正常化することで、髪の毛が育ちやすい土壌を整えます。
AGAが原因のつむじはげであっても、こうした頭皮環境の改善は、薄毛の進行を緩やかにするために重要です。まだ毛根が活動している状態であれば、育毛剤によるケアは無駄にはなりません。
抜け毛予防と毛髪のハリ・コシ改善への期待
育毛剤の継続的な使用により、まず期待できるのは「抜け毛の減少」です。頭皮環境が整い、毛根がしっかりと保持されるようになると、ヘアサイクルの途中で抜けてしまう弱い髪の毛が減っていきます。
また、毛根に栄養が行き渡りやすくなることで、今生えている髪の毛一本一本が太く、丈夫になる「ハリ・コシの改善」も期待できます。
髪の毛にハリとコシが戻ると、全体のボリューム感が増し、つむじ周りの地肌が目立ちにくくなるという視覚的な改善にもつながります。
発毛剤との併用は可能か
「育毛剤」と「発毛剤」の併用を考える方もいるかもしれません。しかし、自己判断での併用は推奨されません。
特に、発毛剤(医薬品)と育毛剤(医薬部外品)を同じ部位に同時に使用すると、成分同士が干渉し合ったり、頭皮への刺激が強すぎたりして、かぶれなどの頭皮トラブルを引き起こす可能性があります。
もし併用を検討する場合は、必ず医師または薬剤師に相談し、使用する製品の組み合わせや、使用する時間帯(朝は育毛剤、夜は発毛剤など)をずらすといった指導に従ってください。
効果を実感できるまでの一般的な期間
育毛剤の効果は、使用してすぐに現れるものではありません。髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪の毛が生え、成長し、やがて抜け落ちるまでには数ヶ月から数年かかります。
育毛剤は、このヘアサイクルが正常に機能するように頭皮環境を整えるものです。そのため、効果を実感するまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要と考えるのが一般的です。
短期間で「効かない」と判断して使用を中止してしまうと、せっかくのケアが実を結びません。根気よく続けることが大切です。
つむじはげ対策で注目したい育毛剤の成分
市場には多種多様な育毛剤がありますが、つむじはげ(O字はげ)対策として製品を選ぶ際には、どのような成分が配合されているかに注目することが重要です。
ご自身の頭皮の状態や悩みに合った成分を見つけましょう。
頭皮の血行を促進する成分
つむじはげ対策において、頭皮の血行促進は非常に重要です。頭皮の毛細血管は、髪の毛を育てる毛母細胞に栄養と酸素を運ぶ唯一のルートです。
血行が悪化すると、どれだけ良い栄養を摂取しても毛根まで届かず、髪の毛は痩せ細ってしまいます。血行を促進する成分は、毛細血管を拡張させたり、血流をスムーズにしたりする働きを持ちます。
主な血行促進成分の例
| 成分名 | 主な働き |
|---|---|
| センブリエキス | 毛根の血流を増加させる働きが知られています。 |
| ビタミンE誘導体 (酢酸トコフェロールなど) | 末梢血管を拡張させ、血行を良くします。 |
| ニンジンエキス (オタネニンジン根エキス) | 血行促進のほか、保湿作用も期待されます。 |
頭皮の炎症を抑える抗炎症成分
頭皮が紫外線や間違ったヘアケア、皮脂の酸化などによって炎症を起こすと、かゆみやフケが発生しやすくなります。
この炎症状態が続くと、毛根がダメージを受け、健康な髪の毛の成長が妨げられ、抜け毛の原因となります。
特に皮脂分泌が多い男性の頭皮は炎症を起こしやすいため、抗炎症成分が配合された育毛剤は有効です。
主な抗炎症成分の例
| 成分名 | 主な働き |
|---|---|
| グリチルリチン酸ジカリウム (グリチルリチン酸2K) | 甘草(カンゾウ)由来の成分。優れた抗炎症作用を持ちます。 |
| アラントイン | 抗炎症作用のほか、組織修復を助ける働きがあります。 |
| ヒノキチオール | 抗菌作用と抗炎症作用を併せ持ち、頭皮を清潔に保ちます。 |
皮脂の過剰分泌を抑える成分
頭頂部は皮脂腺が多く、皮脂が過剰に分泌されやすい部位です。過剰な皮脂は、空気中の酸素と触れて酸化すると「過酸化脂質」という刺激物質に変化し、頭皮の炎症や毛穴の詰まりを引き起こします。
また、皮脂をエサにする常在菌(マラセチア菌など)が増殖し、脂漏性皮膚炎などのトラブルにつながることもあります。皮脂のバランスを整える成分も、つむじはげ対策には有効です。
毛母細胞の働きを助ける成分
髪の毛は、毛根の奥にある毛母細胞が分裂を繰り返すことによって作られます。この毛母細胞の働きが鈍くなると、髪の毛の成長が遅くなったり、細い髪の毛しか作れなくなったりします。
育毛剤の中には、この毛母細胞に直接働きかけ、細胞の分裂を活性化させようとする成分や、エネルギー供給をサポートする成分が含まれているものがあります。
これらは、髪の毛を生み出す「工場」そのものを元気にする働きが期待されます。
発毛剤に含まれる「ミノキシジル」とは?
育毛剤でのケアでは物足りない、あるいはすでにつむじはげが進行している場合、選択肢となるのが「発毛剤」です。
現在、日本国内で一般用医薬品(OTC医薬品)として市販されている発毛剤のほとんどに、「ミノキシジル」という成分が含まれています。
ミノキシジルが持つ発毛の働き
ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬(血管拡張薬)として開発された成分ですが、その副作用として「多毛」が報告されたことから、発毛剤として転用されました。
ミノキシジルには、頭皮の毛細血管を拡張させて血流を大幅に改善する作用があります。これにより、毛根に多くの栄養と酸素が供給されます。
さらに、ミノキシジルは毛母細胞に直接作用し、その活動を活性化させ、ヘアサイクルの「休止期」から「成長期」への移行を促し、さらに「成長期」自体を延長させる働きがあると考えられています。
これにより、細く短かった髪の毛が、太く長い健康な髪の毛へと成長するのを助けます。
つむじ(頭頂部)への効果に関するデータ
ミノキシジルは、特にAGA(男性型脱毛症)による頭頂部(つむじ)の薄毛や、生え際の後退に対してその効果が認められています。
日本皮膚科学会が策定する「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」においても、ミノキシジルの外用(塗り薬)は、AGA治療において推奨度A(行うよう強く勧める)と評価されています。
臨床試験のデータでは、ミノキシジルを継続して使用することにより、多くの使用者で頭頂部の毛髪数の増加や、既存毛の太さの改善が確認されています。
ただし、効果の発現には個人差があり、全ての人に同じ結果が出るわけではありません。
副作用の可能性について
ミノキシジルは医薬品であるため、副作用のリスクも存在します。最も一般的に報告される副作用は、塗布した部分の頭皮のかゆみ、発赤、かぶれ、フケなどの皮膚症状です。
これらは、ミノキシジル自体や、製剤に含まれる基剤(アルコールなど)に対する過敏反応によるものです。
また、もともと血管拡張薬であるため、ごく稀にですが、血圧の低下、めまい、動悸、頭痛、手足のむくみといった全身性の副作用が報告されることもあります。
使用中に何らかの異常を感じた場合は、直ちに使用を中止し、医師または薬剤師に相談することが必要です。
ミノキシジル外用薬の主な副作用の例
| 分類 | 主な症状 |
|---|---|
| 皮膚症状 | 塗布部位のかゆみ、発赤、かぶれ、フケ、熱感など |
| 循環器系 (稀) | 血圧低下、動悸、胸の痛み、めまいなど |
| その他 (稀) | 頭痛、手足のむくみ、体重増加など |
使用を検討すべきタイミング
ミノキシジル配合の発毛剤の使用を検討すべきタイミングは、育毛剤によるケア(抜け毛予防や頭皮環境改善)だけでは満足のいく結果が得られない場合や、つむじの薄毛が明らかに進行し、地肌の露出が目立ってきた場合です。
AGAは進行性であるため、手遅れになる前、つまり毛根がまだ活動を停止していない段階で治療を開始することが、発毛効果を得るためには重要です。
ただし、自己判断で購入する前に、まずは自身の薄毛が本当にAGAによるものなのか、またミノキシジルを使用しても問題ない健康状態なのかを、医師や薬剤師に確認することをお勧めします。
効果的な育毛剤の使い方と頭皮ケア
育毛剤や発毛剤は、ただ塗るだけではその効果を十分に発揮できません。正しい使い方と、日々の頭皮ケアを組み合わせることで、つむじはげ対策の効果を高めることができます。
育毛剤を塗布するベストなタイミング
育毛剤を塗布する最も効果的なタイミングは、洗髪後です。
シャンプーによって頭皮の汚れや余分な皮脂が洗い流され、毛穴が清潔な状態になっているため、育毛剤の成分が角質層まで浸透しやすくなります。
洗髪後は、タオルドライで髪の毛の水分をしっかり拭き取った後、ドライヤーで頭皮をある程度乾かしてから塗布しましょう。
頭皮が濡れすぎていると成分が薄まってしまい、逆に乾かしすぎると頭皮が乾燥して敏感になることがあります。「半乾き」程度の状態が理想的です。
また、毛髪の成長を促す成長ホルモンが多く分泌される夜の就寝前にケアを行うのが一般的です。
正しい塗布方法と頭皮マッサージ
育毛剤は、髪の毛ではなく「頭皮」に直接塗布することが重要です。つむじはげが気になる部分を中心に、育毛剤のノズルを頭皮に直接つけ、数カ所に分けて塗布します。
その後、指の腹を使って、頭皮全体に優しく揉み込むようにマッサージします。このとき、爪を立てて頭皮を傷つけないように注意しましょう。
頭皮マッサージには、育毛剤を馴染ませるだけでなく、頭皮の血行を促進し、頭皮を柔らかくする効果も期待できます。
マッサージは、強く押しすぎず、「気持ち良い」と感じる程度の圧で行うのがポイントです。
簡単な頭皮マッサージの手順
- 指の腹を使い、頭皮全体を優しく掴むように揉む。
- こめかみや耳の上から頭頂部に向かって、引き上げるようにマッサージする。
- 後頭部の生え際からつむじに向かっても同様に行う。
シャンプーの選び方と正しい洗い方
育毛剤の効果を高めるには、土台となる頭皮を清潔に保つシャンプーが重要です。
洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥やかえって皮脂の過剰分泌を招く原因になります。
つむじはげや頭皮のベタつきが気になる方は、皮脂を適度に残しつつ優しく洗い上げる「アミノ酸系」や「ベタイン系」の洗浄成分を主としたシャンプーを選ぶとよいでしょう。
洗い方も重要です。まずはお湯だけで髪と頭皮を十分に予洗いし(これだけで汚れの多くは落ちます)、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗います。
すすぎ残しは頭皮トラブルの原因になるため、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に洗い流しましょう。
シャンプーの主な洗浄成分の比較
| 洗浄成分の系統 | 特徴 | 向いている頭皮タイプ |
|---|---|---|
| 高級アルコール系 (ラウレス硫酸Naなど) | 泡立ちが良く洗浄力が強い。 | 皮脂が非常に多い方(乾燥肌・敏感肌は注意) |
| アミノ酸系 (ココイルグルタミン酸Naなど) | マイルドな洗浄力で低刺激。 | 乾燥肌、敏感肌、軽度の皮脂悩み |
| ベタイン系 (コカミドプロピルベタインなど) | ベビーシャンプーにも使われる低刺激性。 | 非常にデリケートな肌 |
育毛剤の効果を高めるための注意点
育毛剤を使用する際は、定められた用法・用量を守ることが大切です。「早く効かせたい」からといって、一度に大量に使用したり、1日に何度も塗布したりしても、効果が高まるわけではありません。
むしろ、頭皮への刺激が強すぎてトラブルの原因になる可能性があります。また、整髪料(ワックスやスプレー)を使用する場合は、育毛剤を塗布して頭皮が乾いた後に使用するようにしましょう。
順番を逆にすると、整髪料が毛穴を塞ぎ、育毛剤の浸透を妨げてしまいます。そして何より、前述の通り、最低でも3ヶ月から6ヶ月は毎日継続することが重要です。
日々の習慣としてケアを続ける根気強さが求められます。
育毛剤だけに頼らない つむじはげ対策
つむじはげ(O字はげ)の対策は、育毛剤や発毛剤といった外側からのケア(外用)だけでなく、内側からのケア、すなわち生活習慣全体の改善が伴って初めて、その効果が最大化されます。
髪の毛は、私たちの体の一部であり、健康状態を反映する鏡でもあります。
食生活の見直し 毛髪に必要な栄養素
健康な髪の毛は、日々の食事から摂取する栄養素によって作られます。特に「タンパク質」「ビタミン」「ミネラル」は髪の毛の成長に欠かせません。髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。
そのため、肉、魚、卵、大豆製品などの良質なタンパク質を十分に摂取することが基本となります。また、ビタミン群、特にビタミンB群はタンパク質の代謝を助け、頭皮の新陳代謝を促します。
ミネラルの中では、特に「亜鉛」が重要です。亜鉛はケラチンの合成をサポートする働きがあり、不足すると抜け毛が増える原因にもなります。
牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれます。バランスの取れた食事を心がけ、外食やインスタント食品に偏らないよう注意しましょう。
毛髪の健康に良いとされる主な栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の毛の主成分(ケラチン)の材料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成を助ける。 | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝、皮脂のコントロール。 | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、バナナ |
睡眠の質を高める工夫
髪の毛の成長や頭皮の修復は、私たちが眠っている間に行われます。
特に、入眠後に分泌が活発になる「成長ホルモン」は、毛母細胞の分裂を促し、日中に受けた頭皮のダメージを修復するために重要な役割を果たします。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低かったりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、髪の毛の健やかな成長が阻害されます。
毎日6〜7時間程度の睡眠時間を確保するよう努め、就寝前はスマートフォンやパソコンの画面を見るのを避け、リラックスできる環境を整えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
ストレスとの上手な付き合い方
過度なストレスは、つむじはげの大敵です。ストレスを感じると自律神経のうち交感神経が優位になり、血管が収縮します。これにより頭皮の血行が悪化し、毛根への栄養供給が滞ってしまいます。
また、ストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂の過剰分泌などを招くこともあります。現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりの解消法を見つけることが大切です。
適度な運動をする、趣味に没頭する時間を作る、湯船にゆっくり浸かるなど、心身ともにリラックスできる時間を持つように意識しましょう。
専門クリニックへの相談も選択肢に
育毛剤や発毛剤によるセルフケア、生活習慣の改善を続けても、つむじはげの進行が止まらない、あるいは不安が解消されない場合は、AGAを専門とするクリニックに相談することも一つの有効な選択肢です。
クリニックでは、医師による診察のもと、自身の薄毛の原因が本当にAGAなのか、進行度はどの程度なのかを正確に診断してもらえます。
その上で、ミノキシジルの外用薬だけでなく、必要に応じてフィナステリドやデュタステリドといったAGAの進行を内側から抑える内服薬(飲み薬)の処方など、より積極的な治療の提案を受けることが可能です。
一人で悩み続けるよりも、専門家の知見を頼ることで、解決への道筋が見えることもあります。
よくある質問
- 育毛剤の使用をやめるとどうなりますか?
-
育毛剤の使用を中止すると、育毛剤によって整えられていた頭皮環境や血行が元の状態に戻っていく可能性があります。
その結果、再び抜け毛が増えたり、髪の毛のハリやコシが失われたりすることが考えられます。育毛剤の効果は、継続して使用することで維持されるものです。
- 育毛剤と発毛剤はどちらがおすすめですか?
-
これは、ご自身の頭頂部の状態と目的によります。抜け毛の予防や、今ある髪の毛を健康に育てたい(育毛)、頭皮環境を改善したいという段階であれば「育毛剤」が適しています。
すでにつむじの地肌が目立ち、新しい髪の毛を生やしたい(発毛)という明確な目的がある場合は、「発毛剤(医薬品)」が選択肢となります。
- 効果が出ない場合、どうすればよいですか?
-
まず、使用期間が短すぎないか確認してください。育毛剤も発毛剤も、効果を実感するには最低3ヶ月から6ヶ月の継続が必要です。
十分な期間使用しても変化が見られない場合、使用している製品がご自身の頭皮の状態に合っていない可能性があります。
また、薄毛の原因がAGAであり、育毛剤(医薬部外品)の働きだけでは進行を抑えきれていないことも考えられます。
この場合は、発毛剤(医薬品)への切り替えや、専門のクリニックへの相談を検討するのがよいでしょう。
- 女性用の育毛剤を男性が使ってもよいですか?
-
男性が女性用の育毛剤(医薬部外品)を使用しても、基本的には大きな問題はありません。
ただし、女性用製品は保湿を重視し、皮脂抑制成分が控えめであるなど、男性の頭皮特性(皮脂が多いなど)に合わせて設計されていない場合があります。
また、男性のつむじはげの主な原因であるAGAに対応した成分が含まれていないこともあります。男性は、男性の薄毛の要因を考慮して開発された男性用製品を選ぶことをお勧めします。
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