薄毛を治す方法を徹底解説!AGAは治る?改善のためのステップ

薄毛を治す方法を徹底解説!AGAは治る?改善のためのステップ

鏡を見るたびに感じる生え際の後退や、頭頂部のボリュームダウン。薄毛の悩みは非常に深刻です。「薄毛を治す方法はないか」「どうすれば改善できるのか」と情報を探している方も多いでしょう。

この記事では、薄毛の主な原因であるAGA(男性型脱毛症)の基本的な知識から、自分でできる生活習慣やヘアケアによる改善方法、さらには専門的な治療に至るまで、薄毛を改善するための具体的な情報を徹底的に解説します。

あなたの悩みに寄り添い、前向きな一歩を踏み出すための情報を提供します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

薄毛の悩みと向き合うために

薄毛の悩みは、多くの男性が抱える問題です。しかし、その原因や進行度合いは人それぞれ異なります。大切なのは、まず自分の状態を客観的に把握し、なぜ薄毛が進行しているのかを知ることです。

不安や焦りを感じるかもしれませんが、正しい知識を持つことが改善への第一歩となります。

なぜ薄毛が進行するのか

薄毛が進行する背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。最も一般的な原因は、遺伝的要因と男性ホルモンの影響によるAGA(男性型脱毛症)です。

これは、特定の男性ホルモンが毛根に作用し、髪の成長期を短縮させることで起こります。髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまうため、徐々に薄毛が目立つようになります。

しかし、原因はそれだけではありません。日々の生活習慣も大きく影響します。

栄養バランスの偏った食事、慢性的な睡眠不足、過度なストレスは、頭皮の血行を悪化させたり、髪の成長に必要な栄養素の供給を妨げたりします。

また、間違ったヘアケアによる頭皮環境の悪化(乾燥や皮脂の過剰分泌)も、抜け毛を助長する要因となり得ます。

自分の薄毛タイプを知る重要性

「薄毛」と一口に言っても、その種類は様々です。

前述のAGAの他にも、ストレスなどが引き金となる「円形脱毛症」、皮脂の過剰分泌や常在菌が原因の「脂漏性脱毛症」、頭皮が乾燥しすぎることで起こる「粃糠(ひこう)性脱毛症」などがあります。

タイプによって原因が異なるため、当然、有効な対処法も変わってきます。自分の薄毛がどのタイプに当てはまる可能性が高いのかを理解することは、遠回りのようでも改善への近道となります。

主な薄毛のタイプと特徴

タイプ主な原因特徴
AGA(男性型脱毛症)男性ホルモン、遺伝生え際(M字)や頭頂部(O字)から進行する
円形脱毛症自己免疫疾患、ストレス円形や楕円形に突然毛が抜ける
脂漏性脱毛症皮脂の過剰分泌、マラセチア菌頭皮のベタつき、フケ(湿性)、かゆみを伴う

改善への第一歩は現状把握から

薄毛を改善したいと考えるなら、まずは自分の頭皮と髪の状態を正確に把握することが大切です。

生え際の後退はどの程度か、頭頂部の地肌の透け具合はどうか、抜け毛の量は増えていないか、髪の毛が細くなっていないか、頭皮にかゆみや赤みはないか。こうした点を日々チェックします。

鏡で確認するだけでなく、スマートフォンで定期的に写真を撮って比較するのも良い方法です。現状を客観的に知ることで、対策の効果を判断する基準にもなります。

もしAGAの疑いが強い場合や、急激な脱毛が見られる場合は、自己判断に頼らず専門のクリニックで相談することも重要です。

AGA(男性型脱毛症)とは何か

日本人男性の薄毛の悩みの多くは、AGA(男性型脱毛症)が原因であると言われています。薄毛を治す方法や改善方法を探る上で、AGAに関する正しい知識は欠かせません。

これは進行性の脱毛症であり、放置すると薄毛は徐々に進んでいきます。

AGAの基本的な知識

AGAは「Androgenetic Alopecia」の略で、思春期以降の男性に見られる進行性の脱毛症です。

主な特徴は、生え際が後退していく(M字型)パターンと、頭頂部が薄くなる(O字型)パターン、あるいはその両方が混合するパターンです。

AGAの主な原因は、遺伝的要因と男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」の影響です。

遺伝的にAGAになりやすい体質(男性ホルモン受容体の感受性が高いなど)を受け継いでいると、DHTの影響を受けやすくなります。

AGAは病気というよりは体質的な特徴に近いものですが、現在は医療機関で治療が可能な脱毛症として認識されています。

AGAが進行する仕組み

AGAによる薄毛の進行には、男性ホルモンである「テストステロン」と、それをより強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換する「5αリダクターゼ」という酵素が深く関わっています。

体内のテストステロンが5αリダクターゼと結びつくと、DHTが生成されます。このDHTが、毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、脱毛因子「TGF-β」などが生成されます。

この脱毛因子が、髪の成長期(通常2〜6年)を数ヶ月〜1年程度に短縮させてしまいます。

髪が太く長く成長する前に抜けてしまう「ミニチュア化(軟毛化)」が起こり、その結果、地肌が透けて見えるようになり、薄毛が進行します。

AGAは治るのか?改善の可能性

「AGAは治るのか?」という問いに対しては、現在の医療では「完治させる(AGAの体質自体をなくす)」ことは難しいものの、「薄毛の状態を改善し、進行を抑制する」ことは十分に可能である、というのが答えになります。

一度短縮されたヘアサイクルを正常に戻し、髪の成長を促す治療法が確立されています。重要なのは、AGAは進行性であるため、何もしなければ薄毛は進み続けるという点です。

髪の毛を作り出す毛母細胞が完全に活動を停止(線維化)してしまうと、その毛穴から再び髪を生やすのは非常に困難になります。

そのため、できるだけ早い段階で対策を始めることが、改善の可能性を高める鍵となります。

AGAセルフチェック

自分がAGAであるかどうか、気になる方も多いでしょう。以下は、AGAの可能性を判断するための一つの目安です。当てはまる項目が多いほど、AGAの可能性が考えられます。

ただし、これは簡易的なチェックであり、正確な診断は専門医が行うものです。

チェック項目

  • 家族(特に父方・母方の祖父や父)に薄毛の人がいる
  • 以前に比べて生え際が後退してきた(M字になってきた)
  • 頭頂部の地肌が透けて見えるようになってきた
  • 髪の毛全体のハリやコシがなくなり、細く柔らかくなった
  • 抜け毛のなかに、細く短い毛が増えた
  • 思春期以降に薄毛が気になり始めた

自宅で取り組む薄毛改善 生活習慣の見直し

専門的な治療と並行して、または予防的な観点から、日々の生活習慣を見直すことは薄毛改善の基本です。髪は体が作り出すものの一部であり、健康な体づくりが健康な髪を育む土台となります。

特に「食事」「睡眠」「ストレス」「運動」は重要な要素です。

栄養バランスの取れた食事

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、良質なタンパク質の摂取は非常に重要です。肉、魚、卵、大豆製品などを毎日の食事にバランス良く取り入れましょう。

しかし、タンパク質だけでは髪は作られません。タンパク質をケラチンに再合成する際には「亜鉛」が必要です。亜鉛は牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれます。

また、頭皮の血行を促進し、新陳代謝を活発にする「ビタミンB群」や「ビタミンE」も大切です。特定の食品ばかりを食べるのではなく、多様な食材からバランス良く栄養を摂ることを心がけます。

髪の成長をサポートする栄養素

栄養素主な働き含まれる食品例
タンパク質髪の主成分(ケラチン)を作る肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛ケラチンの合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類
ビタミンB群頭皮の代謝促進、皮脂分泌の調整豚肉、レバー、マグロ、カツオ、バナナ

質の高い睡眠の確保

髪の成長は、睡眠中に活発になります。特に、入眠後に訪れる深いノンレム睡眠中に「成長ホルモン」が最も多く分泌されます。成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を促し、髪の成長をサポートする働きを持ちます。

睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、髪の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

毎日6〜7時間程度のまとまった睡眠時間を確保し、就寝前はスマートフォンやPCの使用を控えてリラックスするなど、質の高い睡眠を得る工夫をしましょう。

ストレス管理の方法

過度なストレスは、薄毛改善の大敵です。ストレスを感じると自律神経が乱れ、交感神経が優位になります。これにより血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。

血流が悪くなると、髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛根まで十分に行き渡らなくなります。また、ストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こすこともあります。

日常生活でストレスをゼロにすることは難しいですが、自分なりの解消法を見つけることが大切です。

趣味の時間を持つ、ゆっくり入浴する、軽い運動をするなど、心身ともにリラックスできる時間を作りましょう。

適切な運動習慣

デスクワーク中心の生活で運動不足になると、全身の血行が悪くなりがちです。これは頭皮の血流低下にも直結します。適度な運動は、全身の血行を促進し、頭皮環境の改善にもつながります。

特に、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、血流改善やストレス解消に効果的です。激しい運動である必要はありません。

週に数回、30分程度からでも良いので、継続的に体を動かす習慣をつけることが、薄毛改善をサポートします。

頭皮環境を整えるヘアケアの方法

薄毛を改善するためには、髪が育つ土壌である「頭皮環境」を良好に保つことが不可欠です。日々のヘアケア、特にシャンプーの方法を見直すだけでも、頭皮環境は大きく変わります。

洗浄力が強すぎるシャンプーや、間違った洗い方は、頭皮を乾燥させたり、逆に皮脂の過剰分泌を招いたりする原因となります。

正しいシャンプーの選び方

シャンプーの目的は、髪の汚れよりも「頭皮の余分な皮脂や汚れ」を落とすことです。自分の頭皮タイプに合った洗浄成分のシャンプーを選ぶことが重要です。

市販のシャンプーの多くは「高級アルコール系」に分類され、洗浄力が高い反面、人によっては刺激が強く、頭皮の乾燥を招くことがあります。

頭皮の乾燥やフケが気になる方は、洗浄力がマイルドで保湿性のある「アミノ酸系」のシャンプーが適しています。

逆に、頭皮がベタつきやすい脂性肌の方は、ある程度の洗浄力があるものを選び、皮脂を適切に除去する必要があります。

頭皮タイプ別シャンプーの特徴

頭皮タイプ特徴推奨シャンプー(洗浄成分)
乾燥肌カサつき、フケ(乾性)、かゆみアミノ酸系(保湿重視、マイルド)
脂性肌ベタつき、フケ(湿性)、ニオイ高級アルコール系、石鹸系(洗浄力高め)
敏感肌赤み、ヒリヒリ感、かゆみが出やすい低刺激のアミノ酸系、ベタイン系

頭皮を傷つけない洗い方

正しいシャンプーを選んでも、洗い方が間違っていては意味がありません。以下の点を意識して、頭皮を優しく洗い上げましょう。

まず、シャンプーをつける前に、ぬるま湯(38度程度が目安)で頭皮と髪をしっかりと「予洗い」します。これだけで汚れの7割程度は落ちると言われています。

次に、シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけます。爪を立てず、指の腹を使って頭皮全体をマッサージするように優しく洗います。

ゴシゴシと強く擦ると頭皮が傷つき、炎症の原因になるため厳禁です。最後に、すすぎ残しがないよう、シャンプー剤が頭皮に残らないように時間をかけて丁寧に洗い流します。

特に生え際や耳の後ろは残りやすいので注意が必要です。

頭皮マッサージの効果

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進するのに役立ちます。シャンプー中や、育毛剤を塗布した後に行うのが効果的です。

指の腹を頭皮に密着させ、頭皮自体を動かすようなイメージで、ゆっくりと揉みほぐします。側頭部、後頭部、頭頂部と、場所を変えながら全体的に行います。

ただし、力を入れすぎたり、爪を立てたりすると逆効果になるため、心地よいと感じる強さで行うことが大切です。リラクゼーション効果もあり、ストレス緩和にもつながります。

髪と頭皮の乾燥対策

洗髪後は、髪と頭皮をしっかりと乾かすことが重要です。髪が濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすくなり、フケやかゆみ、ニオイの原因となります。

まずは吸水性の高いタオルで、髪をこすらずに優しく叩くように水分を拭き取ります(タオルドライ)。その後、ドライヤーを使って乾かします。

ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、一箇所に熱風が集中しないように小刻みに動かしながら、まず根元(頭皮)から乾かしていきます。

髪が8〜9割程度乾いたら、最後に冷風を当てるとキューティクルが引き締まり、髪のダメージを防ぐのに役立ちます。

薄毛改善のための専門的なアプローチ

生活習慣やヘアケアの見直しは薄毛改善の基本ですが、AGAのように進行性の脱毛症の場合、それだけでは進行を食い止めるのが難しいケースも多くあります。

薄毛を治す方法として、医学的根拠に基づいた専門的な治療は、非常に有効な選択肢です。現在、AGA治療は専門のクリニックで受けるのが一般的です。

AGAクリニックでの相談

薄毛の悩みを抱えたら、まずは専門のAGAクリニックで医師の診断を受けることを推奨します。多くのクリニックでは、無料のカウンセリングを実施しています。

専門医が頭皮の状態や毛髪の太さ、密度などをマイクロスコープで詳細に確認し、問診を通じて薄毛の原因がAGAであるか、またその進行度を診断します。

自己判断で育毛剤を使い続けるよりも、まず原因を特定し、自分に合った治療方針を立てることが改善への最短距離となります。

内服薬による治療

AGA治療の中心的役割を担うのが内服薬です。主に「フィナステリド」と「デュタステリド」の2種類があります。これらは、AGAの原因物質であるDHTの生成を抑える働きがあります。

具体的には、テストステロンをDHTに変換する5αリダクターゼという酵素の働きを阻害します。フィナステリドは主にII型の5αリダクターゼを、デュタステリドはI型とII型の両方を阻害します。

これにより、ヘアサイクルの乱れに歯止めをかけ、抜け毛を減らし、AGAの進行を抑制する効果が期待できます。これらは医師の処方が必要な医薬品です。

外用薬による治療

内服薬が「守り」の治療(進行抑制)であるのに対し、「攻め」の治療(発毛促進)として用いられるのが外用薬の「ミノキシジル」です。

ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発されましたが、副作用として多毛が見られたことから発毛剤として転用されました。

明確な作用は完全には解明されていませんが、頭皮の血管を拡張させて血流を改善し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促すと考えられています。

内服薬と併用することで、より高い改善効果を期待できます。

主なAGA治療薬の比較

治療薬(成分名)種類主な働き(期待できる効果)
フィナステリド内服薬5αリダクターゼ(II型)阻害(進行抑制)
デュタステリド内服薬5αリダクターゼ(I型・II型)阻害(進行抑制)
ミノキシジル外用薬血行促進、毛母細胞活性化(発毛促進)

その他の治療選択肢

内服薬や外用薬の他にも、クリニックでは様々な治療選択肢が用意されている場合があります。

例えば、頭皮に直接、髪の成長に必要な成分(ミノキシジルや成長因子など)を注入する「メソセラピー」や「注入治療」があります。

これは、薬剤の浸透率を高め、より直接的に毛根に働きかけることを目的としています。

また、薄毛がかなり進行した場合や、後頭部や側頭部の髪が残っている場合には、自らの毛髪を移植する「自毛植毛」という外科的な手術も選択肢となります。

これらは費用やダウンタイムも考慮し、医師とよく相談して決定します。

育毛剤の役割と正しい選び方

薄毛対策として最も身近な存在の一つが「育毛剤」です。

このメディアでも多くの製品を特集していますが、育毛剤がどのような役割を持ち、どのように選べば良いのかを正しく理解することが、薄毛改善のために重要です。

育毛剤と発毛剤の違い

まず明確に区別したいのが「育毛剤」と「発毛剤」の違いです。この二つは薬機法(旧薬事法)上の分類が異なり、目的も異なります。

「育毛剤」は「医薬部外品」に分類されます。主な目的は、今ある髪の毛を健康に保ち、抜け毛を予防すること、そして頭皮環境を整えて髪が育ちやすい土壌を作ることです。

すでに生えている髪のハリ・コシをアップさせる効果も期待できます。

一方、「発毛剤」は「第1類医薬品」に分類されます。これは、新しい髪を生やし、髪を成長させる「発毛」効果が認められたもので、日本ではミノキシジルを配合した製品がこれに該当します。

AGAなど、すでに薄毛が進行している状態の改善を目指すものです。

育毛剤と発毛剤の定義

分類主な目的該当区分
育毛剤抜け毛予防、頭皮環境改善、毛髪の育成医薬部外品
発毛剤新しい髪の成長促進(発毛)第1類医薬品(ミノキシジル配合)

育毛剤に期待できる効果

育毛剤は医薬品ではないため、AGAの進行を根本的に止めたり、失われた髪を劇的に再生させたりする効果はありません。

しかし、頭皮環境の悪化が薄毛の原因の一つである場合や、AGAの予防段階、あるいはAGA治療の補助としては非常に有効です。

主な効果としては、「血行促進」により毛根への栄養補給をサポートする、「抗炎症作用」で頭皮のフケやかゆみを抑える、「皮脂分泌の調整」で頭皮環境を正常化する、「保湿作用」で頭皮の乾燥を防ぐ、などが挙げられます。

これらの相乗効果によって、抜けにくい丈夫な髪を育む環境を整えます。

自分の目的に合った成分の選び方

育毛剤は製品によって配合されている有効成分が異なります。

自分の頭皮の状態や悩みに合わせて選ぶことが大切です。例えば、頭皮が硬い、血行不良が気になる方は「センブリエキス」や「ビタミンE誘導体」などの血行促進成分が配合されたものを選びます。

フケやかゆみ、赤みなど頭皮トラブルがある方は「グリチルリチン酸2K」などの抗炎症成分が有効です。

頭皮の乾燥が気になる場合は「ヒアルロン酸」や「コラーゲン」などの保湿成分が豊富なものが適しています。

また、AGAへのアプローチを少しでも考えるなら、女性ホルモン様作用や5αリダクターゼ阻害作用が期待される成分(ヒオウギエキスなど)に着目するのも一つの方法です。

育毛剤の主な有効成分

成分の種類期待できる効果代表的な成分名
血行促進毛母細胞への栄養補給を促すセンブリエキス、ニンジンエキス、ビタミンE誘導体
抗炎症頭皮の炎症やフケ、かゆみを抑えるグリチルリチン酸2K、アラントイン
保湿頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド

育毛剤の正しい使い方

どれだけ良い成分の育毛剤を選んでも、使い方が間違っていては効果を十分に発揮できません。最も重要なのは「清潔な頭皮に使用する」ことと「継続する」ことです。

育毛剤は、シャンプー後、髪をしっかり乾かして頭皮が清潔になった状態で使用するのが基本です。頭皮に直接ノズルを当て、気になる部分だけでなく頭皮全体に適量を塗布します。

その後、指の腹で優しく頭皮マッサージを行い、育毛剤を角質層まで浸透させます。

一度にたくさん使っても効果は上がらないため、製品に記載されている用法・用量を守り、毎日(朝晩2回など)継続して使用することが何よりも重要です。

効果を実感するまでには最低でも3ヶ月から6ヶ月はかかると考えましょう。

薄毛改善を諦めないための心構え

薄毛を治す方法、改善する方法を実践する上で、技術的な側面と同じくらい重要になるのが「心構え」です。薄毛改善は一朝一夕には実現しません。焦りや不安が先行すると、途中で対策を止めてしまったり、誤った情報に飛びついてしまったりする原因にもなります。

改善には時間が必要

薄毛改善に取り組む際、最も理解しておくべきことは「時間がかかる」という事実です。髪には「ヘアサイクル(毛周期)」があります。成長期、退行期、休止期というサイクルを経て、髪は生え変わります。

薄毛の状態から健康な髪が育ち、見た目に変化が現れるまでには、このサイクルが正常に戻る時間が必要です。

AGA治療薬を使い始めても、育毛剤を使い始めても、最初の数ヶ月は目に見える変化がないか、あるいは「初期脱毛」といって一時的に抜け毛が増えることさえあります。

これは、新しい髪が古い髪を押し出す正常な反応である場合が多いです。最低でも6ヶ月は続けるという長期的な視点を持つことが、改善への道を切り拓きます。

早期対策の重要性

特にAGAの場合、その進行性の性質を理解することが大切です。放置すれば、ヘアサイクルは短縮され続け、毛根の活力が失われていきます。

毛根が完全に活動を停止(線維化)してしまうと、いくら治療を行っても髪を再生させることは困難になります。

「まだ大丈夫だろう」「そのうち治るだろう」という楽観視が、取り返しのつかない状態を招く可能性もあります。

抜け毛が増えた、髪が細くなった、地肌が目立ってきた、と感じたその時が、対策を始める絶好のタイミングです。早期に対策を始めるほど、改善の余地は大きく残されています。

情報を正しく取捨選択する

薄毛の悩みは深刻であるため、世の中には「すぐに治る」「必ず生える」といった誇大な広告や、科学的根拠の乏しい情報も溢れています。

そうした情報に振り回されると、時間とお金を無駄にしてしまうだけでなく、適切な対策の開始時期を遅らせてしまうことにもなりかねません。

薄毛改善の方法を探す際は、その情報が医学的・科学的な根拠に基づいているか、発信元は信頼できるかを見極める必要があります。

専門のクリニックや公的機関が発信する情報、そしてこのメディアのように根拠に基づいた情報提供を心がけている媒体を参考にすることをおすすめします。

一人で悩まない

薄毛の悩みはデリケートであり、他人に相談しにくいと感じる方も多いでしょう。

しかし、一人で悩み続けることは大きな精神的ストレスとなり、それがさらに頭皮環境に悪影響を与えるという悪循環に陥ることもあります。

信頼できる家族や友人に打ち明けるだけでも、心は軽くなります。また、前述の通り、専門のクリニックは薄毛治療のプロフェッショナルです。医師やカウンセラーは、日々多くの患者の悩みに向き合っています。

専門家に相談することは、医学的な解決策を得るだけでなく、心理的なサポートを得るという意味でも非常に大きな価値があります。

よくある質問

薄毛改善の方法を始めたら、すぐに髪は生えてきますか?

すぐに効果を実感することは難しいです。髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」という生え変わりの周期があります。

薄毛対策を始めてから、乱れたヘアサイクルが正常化し、新しい髪が成長して目に見える形で変化を感じるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。

焦らずに根気強く継続することが最も重要です。

食事を変えるだけで薄毛は治りますか?

食事の見直しだけで薄毛が完治することは期待しにくいですが、食事は髪の健康を支える非常に重要な土台です。

髪の主成分であるタンパク質や、その合成を助ける亜鉛、頭皮環境を整えるビタミン類をバランス良く摂ることは、薄毛改善の基本です。

特にAGAの場合は、食事改善と合わせて専門的な治療などを組み合わせる必要があります。

市販の育毛剤とクリニックの薬はどちらが良いですか?

目的によって選択が異なります。市販の育毛剤(医薬部外品)は、主に頭皮環境を整え、フケやかゆみを防ぎ、今ある髪の毛を健康に育てて「抜け毛を予防する」ことが目的です。

一方、クリニックで処方されるAGA治療薬(医薬品)は、AGAの進行を抑制したり(内服薬)、発毛を促したり(外用薬)する積極的な「治療」を目的とします。

ご自身の薄毛の進行度や原因に合わせて選ぶ必要があります。

AGAは遺伝だと言われましたが、諦めるしかないのでしょうか?

遺伝がAGAの発症に影響するのは事実ですが、諦める必要は全くありません。

遺伝的要因があっても、早期から適切な治療(内服薬や外用薬など)を開始することで、薄毛の進行を大幅に遅らせたり、毛量を改善させたりすることは十分に可能です。

「遺伝だから仕方ない」と放置してしまうことが一番の問題です。まずは専門医に相談することをおすすめします。

薄毛改善の対策をやめると、また元に戻ってしまいますか?

A. 特にAGA治療の場合、治療薬(内服薬など)でAGAの進行を抑えているため、服用を中止するとDHTの生成が再び活発になり、薄毛が再度進行し始める可能性が高いです。

生活習慣の改善やヘアケアも同様で、良い状態を維持するためには継続が基本となります。

どの程度まで改善したら、どのように維持していくかについても、医師と相談しながら進めることが大切です。

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