【30代男性】抜け毛が止まらない…正常?異常?原因と今すぐ見直すべき生活習慣

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30代に入り、「最近シャンプー時の抜け毛が増えた」「朝、枕元の髪の毛が目立つ」「髪全体のボリュームが減った気がする」といった不安を感じていませんか。

仕事や私生活で充実期を迎える30代男性にとって、髪の変化は深刻な悩みです。1日に抜ける髪の毛には正常な範囲がありますが、明らかに量が増えたり、髪質が変化したりする場合は注意が必要です。

この記事では、30代男性の抜け毛が「正常」か「異常」かを見極めるポイント、考えられる主な原因、そして今日から始められる生活習慣の見直しについて詳しく解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

30代男性の抜け毛 正常と異常の境界線

抜け毛は誰にでも起こる自然な現象です。しかし、30代になって急に増えたと感じると、それが正常な範囲内なのか、それとも何らかの対策が必要な「異常」な状態なのか、不安になるのは当然です。

まずは、正常な抜け毛と注意すべき抜け毛の違いを理解することが大切です。

1日に抜ける髪の毛の平均本数

健康な人でも、髪の毛は毎日抜けています。これは、髪が一定の周期で生え変わっているためです。一般的に、1日に抜ける髪の毛の平均本数は50本から100本程度と言われています。

季節の変わり目、特に秋口には一時的に抜け毛が増え、150本近くなることもありますが、これは一時的な現象であれば過度に心配する必要はありません。

シャンプー時は、1日の抜け毛のうち約5割から7割が抜けると言われます。

もしシャンプー時の抜け毛が毎日50本以上続くようであれば、全体の抜け毛が100本を超えている可能性があり、注意深く観察する必要があります。

ヘアサイクル(毛周期)の仕組み

髪の毛1本1本には寿命があり、「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルを繰り返しています。これをヘアサイクル(毛周期)と呼びます。

髪の毛の約85%から90%は「成長期」にあり、この期間(男性で2年から5年程度)に太く長く成長します。その後、数週間の「退行期」に入り、毛根が縮小して成長が止まります。

最後に数ヶ月の「休止期」を迎え、毛根は活動を停止し、新しい髪の毛(次の成長期の髪)に押し出される形で自然に抜け落ちます。

正常な抜け毛は、この「休止期」を迎えた髪の毛です。しかし、何らかの原因でこのヘアサイクルが乱れ、「成長期」が短くなると、髪の毛が十分に成長する前に「退行期」「休止期」へと移行してしまいます。

危険な抜け毛のサインを見極める

抜け毛が正常の範囲を超えているかどうかは、いくつかのサインで見極めることができます。単に本数が多いだけでなく、抜けた毛の状態や頭皮の状態にも注目してください。

抜け毛の量の変化

最も分かりやすいサインは、抜け毛の「量」の急激な増加です。

「以前は気にならなかったのに、最近明らかに排水溝に溜まる毛が増えた」「枕やデスク周りに落ちる毛が目立つ」といった実感がある場合は、ヘアサイクルが乱れ始めている可能性があります。

抜けた毛髪の状態(細い、短い毛)

抜けた毛の状態も重要です。正常な抜け毛(休止期の毛)は、毛根部分が丸く膨らんでおり、ある程度の太さと長さがあります。

しかし、「細くて短い毛」や「毛根部分がなかったり、尖っていたりする毛」が目立つ場合は注意が必要です。

これらは、髪が「成長期」の途中で抜けてしまっている可能性を示しており、AGA(男性型脱毛症)などのサインであることも考えられます。

頭皮の状態(かゆみ、フケ、赤み)

頭皮は髪の毛が育つ土壌です。頭皮に「かゆみ」「フケ(特に脂っぽいフケ)」「赤み」「湿疹」などがある場合、頭皮環境が悪化している証拠です。

脂漏性皮膚炎や乾燥などが原因で頭皮環境が乱れると、健康な髪の育ちを妨げ、抜け毛を助長することがあります。

セルフチェック 抜け毛の状態を確認しよう

ご自身の抜け毛が危険なサインに当てはまるか、一度チェックしてみましょう。以下の項目に当てはまる数が多いほど、注意が必要です。

抜け毛・頭皮の簡易チェックリスト

チェック項目詳細
抜け毛の量が急に増えたシャンプー時や起床時に、以前と比べて明らかに量が増加した。
細く短い毛が抜ける抜けた毛の中に、太く長い毛だけでなく、産毛のような弱々しい毛が混じっている。
髪のコシがなくなり、ボリュームが減った髪全体が薄くなった、あるいは特定の場所(頭頂部や生え際)の地肌が透けて見えるようになった。
頭皮がべたつく、または乾燥している夕方になると髪がべたつく、あるいは逆にフケが目立つなど、頭皮の水分と油分のバランスが悪い。
頭皮にかゆみや赤みがある頻繁に頭皮がかゆくなったり、鏡で見ると赤みを帯びていたりする。

これらのサインに複数当てはまる場合は、単なる一時的な抜け毛ではなく、何らかの原因が潜んでいる可能性を考え、生活習慣の見直しや専門家への相談を検討しましょう。

なぜ30代で抜け毛が増えるのか 主な原因

30代は、20代の頃と比べて身体的な変化を感じやすい年代です。抜け毛の増加もその一つであり、背景にはいくつかの原因が考えられます。

主な原因を理解し、自分に当てはまるものがないか確認してみましょう。

AGA(男性型脱毛症)の影響

30代男性の抜け毛で最も多く関係しているのが「AGA(男性型脱毛症)」です。

これは、男性ホルモン(テストステロン)が特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びつき、「DHT(ジヒドロテストステロン)」という強力な男性ホルモンに変換されることで発生します。

このDHTが毛根の受容体と結合すると、髪の成長期を短縮させる信号が出されます。その結果、髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまい、細く短い毛が増え、徐々に薄毛が進行していきます。

AGAは進行性のため、放置すると症状は悪化する傾向にあります。生え際の後退や頭頂部の薄毛など、特定のパターンで進行するのが特徴です。

生活習慣の乱れと抜け毛の関係

30代は仕事での責任が重くなり、プライベートでも環境が変わりやすい時期です。忙しさから生活習慣が乱れがちになることも、抜け毛の大きな要因となります。

髪の毛は、身体の健康状態を映す鏡とも言えます。

  • 睡眠不足
  • 不規則で栄養バランスの偏った食事
  • 慢性的な運動不足
  • 過度な飲酒や喫煙

これらの不摂生が続くと、髪の成長に必要な栄養が頭皮まで届きにくくなったり、血行が悪化したり、ホルモンバランスが乱れたりして、抜け毛を引き起こします。

ストレスが頭皮に与える影響

30代の男性は、職場でのプレッシャー、昇進、転職、あるいは家庭内での役割など、多様なストレスにさらされます。過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にします。

交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮し、頭皮の血流が悪化します。

血流が悪くなると、毛根にある毛母細胞に十分な酸素や栄養が供給されなくなり、髪の成長が妨げられ、抜け毛が増える原因となります。

遺伝的要因はどの程度関係するか

抜け毛、特にAGAの発症には遺伝的な要因も関係します。

具体的には、AGAの原因となるDHTへの感受性の高さ(毛根の受容体がDHTと結びつきやすいかどうか)や、5αリダクターゼの活性度の高さが遺伝すると考えられています。

ご家族、特に母方の祖父や父方に薄毛の方がいる場合、ご自身もAGAを発症しやすい体質を受け継いでいる可能性があります。

ただし、遺伝的要因があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、あくまで「なりやすさ」の問題です。

後天的な生活習慣やストレスが引き金となって発症することも多いため、遺伝的要因が疑われる場合こそ、早期からのケアが重要です。

見直すべき食生活 髪に必要な栄養素

髪の毛は、私たちが毎日摂取する食事から作られています。特に30代は食生活が乱れやすいため、意識して髪に必要な栄養素を摂取することが、抜け毛対策の基本となります。

健やかな髪を育むために、日々の食事内容を見直してみましょう。

髪の主成分「タンパク質」の重要性

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。タンパク質が不足すると、髪が細くなったり、弱くなったりし、抜け毛や切れ毛の原因となります。

30代男性は、仕事の合間に手軽な食事で済ませがちですが、意識して良質なタンパク質を摂取する必要があります。

タンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などに豊富に含まれています。特に動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく摂ることが理想です。

例えば、朝食に卵や納豆、昼食に魚料理、夕食に肉料理や豆腐を取り入れるなど、毎食タンパク質を含む食品を一品加えるよう心がけましょう。

頭皮環境を整える「ビタミン類」

ビタミン類は、タンパク質が髪の毛になるのを助けたり、頭皮環境を健康に保ったりするために重要な役割を果たします。

それぞれが異なる働きを持つため、バランスよく摂取することが大切です。

髪の健康とビタミンの役割

ビタミンの種類主な働き多く含まれる食品
ビタミンB群 (B2, B6)タンパク質の代謝を助ける。皮脂の分泌を調整し、頭皮環境を整える。レバー、マグロ、カツオ、バナナ、卵、納豆
ビタミンCコラーゲンの生成を助け、頭皮の健康を保つ。抗酸化作用でストレスから守る。ピーマン、ブロッコリー、キウイ、柑橘類
ビタミンE血行を促進する(抗酸化作用)。毛母細胞への栄養補給をスムーズにする。アーモンド、うなぎ、アボカド、かぼちゃ

ミネラル(特に亜鉛)の役割

ミネラルも髪の健康維持には欠かせません。中でも「亜鉛」は、タンパク質(ケラチン)の合成をサポートする重要な栄養素です。亜鉛が不足すると、髪の成長が妨げられ、抜け毛につながることがあります。

また、亜鉛はAGAの原因となる5αリダクターゼの働きを抑制するとも言われています。

亜鉛は、牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、ナッツ類などに多く含まれます。亜鉛は体内で吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンCやクエン酸(梅干しや柑橘類)と一緒に摂ることで吸収率が高まります。

避けるべき食習慣(脂っこい食事、過度な飲酒)

健康な髪を育てるためには、必要な栄養素を摂るだけでなく、不必要なものを避けることも重要です。特に30代男性が注意したいのが、脂質の多い食事です。

揚げ物やジャンクフード、スナック菓子などを過剰に摂取すると、皮脂の分泌が過剰になり、頭皮環境が悪化しやすくなります。毛穴が詰まると、髪の成長を妨げ、炎症やかゆみの原因にもなります。

また、過度な飲酒は、アルコールの分解過程でビタミンB群や亜鉛を大量に消費してしまいます。これらは髪の成長に必要な栄養素であるため、結果として髪に栄養が回らなくなります。

適度な飲酒を心がけることが大切です。

睡眠と運動 健やかな髪を育む生活リズム

栄養バランスの取れた食事と同様に、質の良い睡眠と適度な運動も健やかな髪を育むためには欠かせません。

忙しい30代だからこそ、生活リズムの基本に立ち返り、身体の内側から抜け毛対策を行いましょう。

睡眠不足が髪に与えるダメージ

睡眠は、日中に受けた身体のダメージを修復し、細胞を再生させるための大切な時間です。睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが乱れ、頭皮の血流が悪化します。

また、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が増え、毛母細胞の働きが低下する可能性も指摘されています。

30代男性は、仕事や付き合いで帰宅が遅くなり、睡眠時間が削られがちです。しかし、髪の健康を守るためには、毎日6時間から7時間程度のまとまった睡眠時間を確保するよう努めることが重要です。

成長ホルモンと髪の成長

髪の成長を促す上で特に重要なのが「成長ホルモン」です。成長ホルモンは、毛母細胞の分裂を活性化させ、髪の毛の成長(タンパク質の合成)を促進します。

この成長ホルモンは、睡眠中に最も多く分泌され、特に「入眠後最初の深いノンレム睡眠時」に分泌のピークを迎えます。

つまり、単に長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高め、入眠直後に深く眠りにつくことが、髪の成長には非常に大切です。

就寝前のスマートフォンの操作やカフェイン摂取は、睡眠の質を低下させるため避けるべきです。

睡眠の質を高めるための工夫

項目具体的な工夫
就寝前の環境就寝1時間前からはスマートフォンやPCを避け、リラックスする時間を作る。
入浴就寝の90分前までに、ぬるめのお湯(38〜40度)にゆっくり浸かり、深部体温を一度上げる。
食事・飲酒就寝直前の食事は胃腸に負担をかけるため避ける。飲酒は眠りを浅くするため控える。
寝室の環境寝室を暗く静かに保ち、室温や湿度を快適な状態に調整する。

運動不足が引き起こす血行不良

デスクワーク中心で運動不足になりがちな30代男性は、全身の血行が滞りやすい状態にあります。心臓から最も遠い位置にある頭皮は、血行不良の影響を受けやすい部位です。

血流が悪いと、どれだけ栄養バランスの良い食事を摂っても、その栄養が毛根まで十分に届きません。

運動不足は、ストレス発散の機会を減らすことにもつながります。溜まったストレスがさらに血管を収縮させ、血行を悪化させるという悪循環に陥りやすくなります。

抜け毛対策におすすめの運動習慣

抜け毛対策のための運動は、激しいものである必要はありません。大切なのは、全身の血流を良くし、それを継続することです。

おすすめは、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの「有酸素運動」です。週に2〜3回、1回30分程度を目安に、楽しみながら続けられる運動を取り入れましょう。

エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、日常生活の中でこまめに身体を動かすことでも、血行促進とストレス解消に役立ちます。

間違ったヘアケアが抜け毛を加速させる

良かれと思って行っている毎日のヘアケアが、実は頭皮に負担をかけ、抜け毛の原因になっているかもしれません。30代は皮脂の分泌量が変化しやすい時期でもあります。

ご自身の頭皮状態に合った、正しいヘアケア方法を身につけましょう。

シャンプーの選び方と正しい洗い方

シャンプーの最も重要な役割は、頭皮の汚れや余分な皮脂を洗い流し、清潔な環境を保つことです。洗浄力が強すぎると頭皮が乾燥し、弱すぎると皮脂が残ってしまいます。

ご自身の頭皮タイプに合わせて選ぶことが大切です。

30代男性の頭皮タイプ別シャンプー選び

頭皮タイプ特徴おすすめのシャンプー
脂性肌(オイリー)日中、頭皮や髪のべたつきが気になる。フケが湿っぽい。皮脂をしっかり洗浄できる「高級アルコール系」や「石けん系」。ただし、洗い上がりがキシキシしすぎないもの。
乾燥肌頭皮がカサカサし、粉っぽいフケが出る。かゆみを感じやすい。マイルドな洗浄力で保湿成分を含む「アミノ酸系」シャンプー。
敏感肌少しの刺激で赤みやかゆみが出やすい。低刺激性で、添加物(香料、着色料など)が少ない「アミノ酸系」や「ベタイン系」。

また、洗い方も重要です。以下の手順で、頭皮を傷つけずに汚れを落としましょう。

  • シャンプー前にぬるま湯で髪と頭皮を十分に予洗いする。
  • シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につける。
  • 指の腹を使って、頭皮を優しくマッサージするように洗う。(爪を立てない)
  • すすぎ残しがないよう、シャワーで時間をかけて(洗いの倍の時間)洗い流す。

洗いすぎによる頭皮の乾燥

べたつきが気になるからといって、1日に何度もシャンプーをしたり、洗浄力の強すぎるシャンプーでゴシゴシ洗いすぎたりするのは逆効果です。

必要な皮脂まで奪ってしまい、頭皮が乾燥します。頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなります。

また、身体が「皮脂が足りない」と判断し、かえって皮脂の分泌を過剰にしてしまうこともあります。シャンプーは原則として1日1回、夜に行うのが理想的です。

頭皮マッサージの方法と注意点

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐし、血行を促進するのに役立ちます。シャンプー中や、育毛剤を塗布した後に行うのが効果的です。

両手の指の腹を頭皮に固定し、頭皮自体を動かすイメージで、円を描くように優しく揉みほぐします。生え際から頭頂部へ、側頭部から頭頂部へと、ゆっくりと位置をずらしながら頭全体を行います。

ただし、爪を立てたり、強くこすりすぎたりすると頭皮を傷つける原因になるため、力加減には十分注意してください。

整髪料の残留と頭皮トラブル

ワックスやジェルなどの整髪料は、30代男性のスタイリングに欠かせないアイテムですが、これらが頭皮に残ると毛穴を詰まらせ、炎症や抜け毛の原因となります。

整髪料は髪の毛だけにつけ、頭皮には極力付着させないように注意しましょう。

そして、その日のうちに必ずシャンプーで洗い流すことが重要です。特にセット力の強い整髪料を使った日は、より丁寧にシャンプーを行い、すすぎ残しがないように気をつけましょう。

育毛剤は30代から必要か

抜け毛が気になり始めると、「育毛剤」の使用を考える方も多いでしょう。まだ薄毛が進行していない30代から育毛剤を使うことは、将来の髪を守るために意味があるのでしょうか。

まずは育毛剤の役割を正しく理解しましょう。

育毛剤と発毛剤の違い

抜け毛対策の製品には、大きく分けて「育毛剤」と「発毛剤」があります。この二つは目的と成分が異なります。

育毛剤と発毛剤の主な違い

項目育毛剤(医薬部外品)発毛剤(第1類医薬品)
主な目的今ある髪の毛を健康に育てる。抜け毛を予防し、頭皮環境を整える。新しい髪の毛を生やす(発毛)。髪の毛を太く成長させる。
主な対象者抜け毛が気になり始めた人。薄毛を予防したい人。頭皮環境を改善したい人。薄毛が進行している人(特にAGA)。
代表的な成分センブリエキス、グリチルリチン酸2K(抗炎症)、ビタミンE誘導体(血行促進)など。ミノキシジルなど(国が発毛効果を認めた成分)。

育毛剤が持つ役割(頭皮環境改善、予防)

上記の通り、育毛剤の主な役割は「発毛」ではなく、「育毛(髪を育てる)」と「予防」です。

具体的には、配合されている有効成分によって、頭皮の血行を促進したり、炎症を抑えたり、毛母細胞の働きをサポートしたりします。

30代で抜け毛が気になり始めた段階は、まだ毛根が活動しているケースが多いです。

この時期に育毛剤を使用し、頭皮環境を整えることは、今ある髪を丈夫に保ち、将来の薄毛進行を遅らせるための「予防的ケア」として有効です。

30代男性の育毛剤選びのポイント

育毛剤は多くの種類が販売されていますが、30代男性が選ぶ際は、ご自身の悩みに合った成分に着目しましょう。

例えば、頭皮のべたつきやフケが気になる場合は、抗炎症成分(グリチルリチン酸2Kなど)や皮脂のバランスを整える成分が含まれたもの。

血行不良が気になる場合は、血行促進成分(センブリエキス、ビタミンE誘導体など)が配合されたものを選ぶと良いでしょう。

また、育毛剤は毎日継続して使用することが重要です。続けやすい価格帯であるか、香りやテクスチャー(べたつきなど)が自分に合っているかも、選ぶ上での大切なポイントです。

いつからケアを始めるべきか

抜け毛対策は、早ければ早いほど良いとされています。特にAGAの場合、進行性であるため、放置している間に毛根の活動が停止してしまうと、ケアの効果も出にくくなります。

30代で「抜け毛が増えた」「髪が細くなった」と感じた時点が、ケアを始める一つのタイミングです。

まずは生活習慣を見直し、並行して育毛剤による頭皮ケアを取り入れることで、現状維持、あるいは頭皮環境の改善を目指すことが現実的な対策と言えます。

抜け毛が止まらない場合の選択肢

食生活や睡眠、ヘアケアを見直し、育毛剤も使い始めた。それでも抜け毛が減らない、あるいは薄毛が進行しているように感じる場合、どのような手段を取るべきでしょうか。

セルフケアには限界があることも認識しておく必要があります。

セルフケアで改善が見られない時

生活習慣の改善や市販の育毛剤によるケアは、主に「頭皮環境の改善」と「予防」が目的です。

もし、抜け毛の主な原因がAGA(男性型脱毛症)であった場合、これらのセルフケアだけで進行を止めるのは難しいのが実情です。

AGAは、DHT(ジヒドロテストステロン)が毛根に作用することで進行します。このDHTの生成を抑制したり、毛根への作用を直接的に改善したりすることは、セルフケアの範囲を超えることが多いです。

専門家(皮膚科医)への相談

抜け毛が続く場合や、生え際の後退、頭頂部の地肌の透けなど、明らかな薄毛の兆候が見られる場合は、自己判断を続けずに専門家である皮膚科医に相談することをお勧めします。

医師は、頭皮の状態(マイクロスコープでの確認など)や抜け毛の状態、生活習慣などを総合的に診断し、抜け毛の原因がAGAなのか、あるいは別の皮膚疾患(脂漏性皮膚炎や円形脱毛症など)なのかを判断します。

原因が分かれば、それに応じた適切な対策を講じることができます。

AGA治療の基本的な知識

もし診断の結果、AGA(男性型脱毛症)であった場合、医療機関では専門的な治療を受ける選択肢があります。AGA治療は近年大きく進歩しており、30代から治療を始める方も増えています。

主な治療法としては、AGAの原因であるDHTの生成を抑制する内服薬や、発毛剤(ミノキシジル)の外用薬などがあります。

これらは医師の診断のもとで処方される医薬品であり、市販の育毛剤とは異なるアプローチで薄毛の改善を目指します。

早期対策の重要性

抜け毛対策において最も重要なことは、手遅れになる前に対策を始めることです。AGAは進行性であり、毛根が活動を停止(毛穴が閉じて)しまうと、治療を行っても髪を再生させることは困難になります。

30代は、まだ毛根が生きている可能性が高い年代です。この時期に抜け毛のサインに気づき、セルフケアや専門家への相談を通じて早期に対策を始めることが、将来の髪の状態を大きく左右します。

「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにせず、不安を感じた今こそ、行動を起こすことが大切です。

【Q&A】30代男性の抜け毛に関するよくある質問

ここでは、30代男性から多く寄せられる抜け毛に関する疑問について、テキストのみでお答えします。

抜け毛は秋に増えるというのは本当ですか?

はい、本当です。秋は一年で最も抜け毛が増えやすい季節と言われています。これにはいくつかの理由が考えられます。

一つは、夏の間に浴びた紫外線のダメージが、秋になって頭皮に現れるため。

もう一つは、動物の毛が生え変わる「換毛期」の名残が人間にも残っており、気候の変化に応じて毛髪が抜けやすくなるという説です。

ただし、これは一時的な現象であり、通常は数ヶ月で元に戻ります。もし冬になっても抜け毛が減らない場合は、他の原因を疑う必要があります。

シャンプーは朝と夜、どちらが良いですか?

夜にシャンプーをすることをお勧めします。日中に頭皮に付着した汗、皮脂、ホコリ、整髪料などをその日のうちに洗い流すことが、頭皮を清潔に保つ上で重要です。

また、髪の成長を促す成長ホルモンは夜の睡眠中に分泌されます。その時間帯に頭皮が清潔である方が、髪の健やかな成長につながります。

朝シャンは、時間がないとすすぎが不十分になりがちで、頭皮トラブルの原因にもなるため注意が必要です。

帽子をかぶると抜け毛が増えますか?

「帽子をかぶること」自体が、直接的に抜け毛を増やす原因にはなりません。むしろ、夏場の紫外線や冬場の寒さ・乾燥から頭皮を守るという点ではメリットがあります。

ただし、注意点もあります。長時間帽子をかぶり続けることで頭皮が蒸れると、雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮環境が悪化する可能性があります。

また、サイズの合わないきつい帽子は、頭皮の血行を妨げることも考えられます。

帽子をかぶる際は、通気性の良いものを選び、室内では脱ぐ、汗をかいたらこまめに拭くなど、蒸れない工夫をすることが大切です。

食生活を改善すれば、すぐに抜け毛は減りますか?

残念ながら、食生活を改善してもすぐに抜け毛が減るわけではありません。髪の毛にはヘアサイクルがあり、今生えている髪の毛は数ヶ月から数年前に作られたものです。

食生活の改善によって新しく作られる髪の毛が健康になるまでには、少なくとも3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要です。

抜け毛対策は、即効性を求めるものではなく、長期的な視点で継続することが重要です。焦らず、まずはバランスの取れた食事を続けることから始めましょう。

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