毛根鞘(もうこんしょう)とは?抜け毛の根元につく白い塊の正体

毛根鞘(もうこんしょう)とは?抜け毛の根元につく白い塊の正体

抜け毛の根元に、半透明や白っぽいゼリー状の塊が付着しているのを見て、「何かの病気だろうか」「毛根が抜けてしまったのでは」と不安に感じた経験はありませんか。

その白い塊の正体は、多くの場合「毛根鞘(もうこんしょう)」と呼ばれる組織です。毛根鞘は、髪の毛が頭皮にしっかりと留まるために重要な役割を担っています。

この記事では、毛根鞘とは一体何なのか、その働きや、抜け毛に付着する理由を詳しく解説します。

また、「毛根鞘がない」抜け毛が示すサインや、健康な髪を保つための頭皮ケアについても掘り下げていきます。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

毛根鞘(もうこんしょう)とは?基本的な知識

抜け毛を観察した際、根元部分に付着している白い塊。これが「毛根鞘」である可能性が高いです。

しかし、これが一体何なのか、なぜ髪の毛にくっついてくるのか、詳しく知る人は少ないかもしれません。

まずは毛根鞘の基本的な定義と、髪の毛の中での位置づけについて理解を深めましょう。

毛根鞘の定義と役割

毛根鞘は、頭皮の内部にある「毛包(もうほう)」という髪の毛を作り出す器官の一部です。具体的には、毛根(頭皮内部にある髪の毛の部分)を鞘(さや)のように包み込んでいる組織を指します。

この組織は、髪の毛が毛穴から抜けてしまわないように、地中で根を張るように固定するアンカーのような働きを持っています。

私たちが髪の毛を引っ張っても簡単には抜けないのは、この毛根鞘が毛根をしっかりと保持しているためです。

髪の毛を物理的に支えるだけでなく、毛根を保護し、髪の毛の成長を導くガイドの役割も果たしています。

内毛根鞘と外毛根鞘

毛根鞘は、さらに「内毛根鞘(ないもうこんしょう)」と「外毛根鞘(がいもうこんしょう)」という二つの層に分かれています。内毛根鞘は、髪の毛(毛幹)に直接触れている内側の層です。

髪の毛が成長して頭皮の上に出ていくと、この内毛根鞘は角化してフケなどとともになくなります。一方、外毛根鞘は、内毛根鞘のさらに外側にあり、毛包の最も外側の壁(硝子膜)と接しています。

外毛根鞘は、毛包全体を支える土台のような存在です。抜け毛の根元に見える白い塊は、主にこの内毛根鞘の一部が付着したものです。

髪の毛の構造における毛根鞘の位置

髪の毛は、私たちが普段目にしている「毛幹(もうかん)」と、頭皮内部に隠れている「毛根(もうこん)」に大別されます。

毛根の最も先端にある膨らんだ部分が「毛球(もうきゅう)」で、ここには髪の毛の成長に重要な「毛母細胞(もうぼさいぼう)」が集まっています。

毛根鞘は、この毛球から毛幹が始まるあたりまで、毛根全体を筒状に覆っています。毛根鞘が毛根をしっかりと包み込むことで、髪の毛は毛包内で安定し、健やかに成長できます。

毛根鞘は、いわば髪の毛が育つための「鞘」であり、髪の土台を強固にする重要な組織です。

毛根周辺の主な構成要素

組織名主な役割特徴
毛球髪の毛を作り出す毛母細胞と毛乳頭が存在する、毛根の最深部
毛根鞘毛根を保護・固定する内毛根鞘と外毛根鞘の二重構造
毛乳頭毛母細胞に栄養を送る毛球の中心部にあり、毛細血管が集中する

毛根鞘の重要な働きとヘアサイクル

毛根鞘は単に毛根を包んでいるだけではありません。髪の毛が生まれ、成長し、やがて抜け落ちるまでの「ヘアサイクル(毛周期)」全体において、毛根鞘はなくてはならない重要な機能を担っています。

健康な髪を維持するために、毛根鞘がどのような働きをしているのかを見ていきましょう。

髪の毛を頭皮に固定するアンカー機能

毛根鞘の最も重要な働きは、髪の毛を毛包内にしっかりと固定することです。特に内毛根鞘は、成長する髪の毛と強固に結合しています。

これにより、ブラッシングやシャンプー、あるいは外部からの軽い引っ張り程度では、髪の毛が簡単に抜けないようになっています。

もし毛根鞘が弱かったり、うまく機能しなかったりすると、髪の毛は頭皮に留まる力を失い、成長途中であっても抜けやすくなってしまいます。

健康な髪の毛は、毛根鞘によって地中に深く根を張った木のように、頭皮に支えられています。

髪の毛の成長を導くガイド役

毛根鞘は、毛球で作られたばかりの柔らかい髪の毛が、まっすぐ正常な形(断面)を保ちながら頭皮の外へ向かって成長していくための「ガイドレール」のような役割も担っています。

生まれたての髪の毛はまだ硬くありません(未角化)。この柔らかい髪の毛を内毛根鞘がしっかりと包み込み、硬い鞘として支えることで、髪は正しい形状を維持しながら上へと伸びていきます。

くせ毛なども、毛包の形状や、この毛根鞘と髪の毛の角化のバランスによって影響を受けると考えられています。

ヘアサイクルにおける毛根鞘の変化

髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクルがあります。毛根鞘の状態も、このサイクルに合わせて変化します。

  • 成長期(約2年〜6年)
  • 退行期(約2週間)
  • 休止期(約3ヶ月〜4ヶ月)

「成長期」には、髪の毛が活発に成長し、毛根鞘も毛根をしっかりと保持しています。「退行期」に入ると、毛母細胞の活動が停止し、毛球が小さく縮み始めます。このとき、毛根鞘も徐々に退化していきます。

「休止期」になると、髪の毛は完全に成長を止め、毛根は浅い位置まで押し上げられます。この段階では、毛根鞘との結合も弱まっています。

そして、新しい成長期の髪の毛が下から生えてくると、古い休止期の髪の毛は自然に押し出されて抜け落ちます。このとき、役目を終えた毛根鞘の一部が、抜け毛の根元に付着して一緒に抜けてくるのです。

ヘアサイクルの各段階と毛根鞘の状態

段階期間(目安)毛根と毛根鞘の状態
成長期2年〜6年毛根は深く、毛根鞘が強固に固定している
退行期約2週間毛球が縮小し、毛根鞘も退化し始める
休止期3ヶ月〜4ヶ月毛根は浅くなり、毛根鞘との結合が弱まる

抜け毛と毛根鞘「白い塊」の正体

抜け毛の根元に付着している「白い塊」が毛根鞘であることは分かりましたが、これが付いている抜け毛は「正常」なのでしょうか、それとも「異常」なのでしょうか。

この白い塊の有無や状態は、現在の頭皮や髪の毛の健康状態を知る上で、非常に重要な手がかりとなります。

正常な抜け毛(休止期脱毛)の特徴

ヘアサイクルが正常であれば、髪の毛は「休止期」を迎えると自然に抜け落ちます。これを「休止期脱毛(きゅうしきだつもう)」または「自然脱毛」と呼びます。

このとき抜ける髪の毛の根元には、多くの場合、白い半透明の塊、つまり毛根鞘が付着しています。これは、休止期に入って役目を終えた内毛根鞘の一部が、毛根と一緒に抜けてきたものです。

毛根部分は棍棒(こんぼう)のように丸みを帯びているのが特徴です。

したがって、抜け毛の根元に適度な大きさの白い塊が付いているのは、髪の毛が寿命を全うして正常に抜け落ちた証拠であり、心配する必要はほとんどありません。

毛根鞘と「皮脂の塊」の見分け方

注意したいのは、毛根についている白い塊が、毛根鞘ではなく「皮脂の塊(角栓様物質)」である可能性です。

頭皮の皮脂分泌が過剰だったり、シャンプーで十分に汚れを落とせていなかったりすると、毛穴に皮脂や古い角質が詰まります。

この詰まった皮脂が、抜け毛と一緒に取れることがあります。毛根鞘は半透明でやや弾力がありますが、皮脂の塊は不透明な白や黄色っぽさを帯びており、指で触るとベタついて崩れやすいのが特徴です。

もし抜け毛の根元がベタついた大きな塊で覆われている場合は、毛根鞘ではなく皮脂詰まりの可能性が高いです。これは頭皮環境が悪化しているサインかもしれません。

毛根鞘と皮脂の塊の比較

特徴毛根鞘(正常な抜け毛)皮脂の塊(要注意)
半透明〜白っぽい白〜黄色っぽい(不透明)
形状毛根を包むゼリー状、棍棒状ベタベタした塊、いびつな形
感触やや弾力がある粘り気があり、崩れやすい

異常な抜け毛(成長期脱毛)との違い

一方、正常ではない抜け毛として「成長期脱毛(せいちょうきだつもう)」があります。

これは、まだ成長するはずだった成長期の髪の毛が、何らかのダメージや異常によって強制的に引き抜かれたり、抜け落ちたりする状態です。

例えば、髪の毛を強く引っ張って抜いた場合、毛根鞘は頭皮側(毛包)に残り、抜け毛側には付着しないか、付着してもギザギザとした組織片が見られることがあります。

また、円形脱毛症などの場合は、毛根自体が萎縮して細くなり、毛根鞘が見られない特徴的な抜け毛(先端が尖った毛など)が増えることがあります。

「毛根鞘がない」抜け毛が意味すること

検索キーワードでも上位に来る「毛根 鞘 ない」という悩み。

抜け毛の根元にあの白い塊(毛根鞘)が見当たらないと、「毛根が死んでしまったのでは?」「もう生えてこないのでは?」と、より一層強い不安を感じるかもしれません。

毛根鞘がない抜け毛には、心配しなくて良いケースと、注意が必要なケースが存在します。

毛根鞘が頭皮に残るケース(物理的な抜け毛)

毛根鞘がない抜け毛の理由としてまず考えられるのは、単純に「毛根鞘が頭皮側に残った」ケースです。これは、主に物理的な力が加わった場合に起こります。

例えば、きついブラッシング、髪の毛を強く結ぶヘアスタイル、あるいは無意識に髪を引っ張る癖(抜毛症)などです。

これらは、まだ成長期で毛根鞘と毛根が強く結合している髪の毛を、無理やり引き抜く行為にあたります。その結果、髪の毛(毛幹)だけが引きちぎられるように抜け、毛根鞘は毛包内に残存します。

この場合、抜け毛の根元は細く尖っていたり、途中で切れたような形をしていたりします。

毛根自体がダメージを受けていなければ、毛包が残っている限り、また新しい髪の毛は生えてきますが、頭皮や毛根に負担をかけ続ける行為は避けるべきです。

毛根が細く毛根鞘が付着しないケース(AGAなど)

こちらがより注意を要するケースです。毛根鞘がない、あるいは非常に小さい抜け毛が目立つ場合、それは髪の毛自体が弱っているサインかもしれません。

特に、男性型脱毛症(AGA)が進行すると、ヘアサイクルが乱れ、髪の毛が太く長く成長する「成長期」が極端に短くなります。

その結果、髪の毛は十分に成長できないまま細く短い「軟毛(なんもう)」のうちに抜け落ちてしまいます。

このように未熟な状態で抜ける髪の毛は、毛根自体が小さく、毛根鞘も未発達であるため、抜け毛に付着する白い塊もほとんど見られなくなります。

「毛根鞘がない」と感じる抜け毛の中に、細く短い毛や、コシのない毛が多い場合は、AGAやその他の脱毛症が進行している可能性を考慮する必要があります。

毛根鞘の有無だけで判断しない重要性

抜け毛に毛根鞘があるかないかは、健康状態の一つのバロメーターにはなります。しかし、それだけで「正常だ」「異常だ」と断定することはできません。大切なのは、抜け毛全体の傾向を見ることです。

  • 抜け毛の総本数は増えていないか(1日50本〜100本程度は正常範囲)
  • 細く短い毛(軟毛)の割合が増えていないか
  • 特定の場所(頭頂部や生え際)だけ抜け毛が多いのではないか

これらの点を総合的に観察することが重要です。毛根鞘がしっかりついた太い毛が抜けていても、その本数が異常に多ければ問題です。

逆に、毛根鞘がない抜け毛が数本あっても、それが物理的な刺激によるもので、全体の毛量が維持されていれば、過度に心配する必要はないかもしれません。

毛根鞘の状態でチェックする頭皮環境

毛根鞘は、髪の毛が育つ土壌である「頭皮環境」の状態を反映する鏡のような存在でもあります。

抜け毛に付着した毛根鞘(あるいは毛根鞘と間違えやすい皮脂など)の状態を観察することで、現在のヘアケアが適切かどうか、頭皮にトラブルが起きていないかを推測できます。

毛根鞘が小さい・細い場合

抜け毛に付着する毛根鞘が、以前に比べて明らかに小さい、あるいは細い毛根にしか付着していない場合、毛根が栄養不足に陥っている可能性があります。

毛根の先端にある毛球部で、髪の毛を作る毛母細胞が活発に働くためには、毛乳頭から十分な栄養と酸素が供給される必要があります。

しかし、血行不良や栄養バランスの偏り、睡眠不足などが続くと、毛母細胞の働きが低下し、健康な髪の毛や毛根鞘が作られにくくなります。

その結果、髪の毛全体が細くなり(軟毛化)、毛根鞘も小さくなると考えられます。

毛根鞘が皮脂でベタついている場合

先述の通り、毛根鞘と皮脂の塊は別物です。

しかし、頭皮が脂性肌(オイリー肌)であったり、洗浄力の強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎて逆に過剰分泌を招いていたりすると、毛根鞘の周りに皮脂が付着し、全体的にベタついた抜け毛になることがあります。

毛根鞘そのものは正常でも、毛穴周辺が皮脂で詰まっている状態(脂漏性皮膚炎の一歩手前)を示唆しています。

毛穴詰まりは、髪の成長を妨げるだけでなく、頭皮の炎症やかゆみ、フケの原因にもなり、抜け毛を助長する悪循環に陥る可能性があります。

毛根鞘が乾燥している・見られない場合

逆に、頭皮が乾燥しすぎている場合も問題です。頭皮が乾燥すると、角質層のバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなります。また、健康な毛根鞘を維持するための潤いも不足しがちです。

抜け毛の毛根鞘が極端に乾燥していたり、カサカサしたフケのようなものが付着していたりする場合は、洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、保湿ケアの不足が考えられます。

乾燥もまた、かゆみや炎症を引き起こし、頭皮環境を悪化させます。

頭皮タイプと毛根鞘・毛根の状態(目安)

頭皮タイプ毛根・毛根鞘の状態(傾向)考えられる頭皮トラブル
正常な頭皮適度な大きさの毛根鞘が付着特になし(ヘアサイクルによる自然脱毛)
脂性(オイリー)肌皮脂が絡みつきベタベタする毛穴詰まり、脂漏性皮膚炎、かゆみ
乾燥肌毛根鞘が乾燥、細かいフケが付着バリア機能低下、炎症、かゆみ

毛根鞘を守り、健康な髪を育むヘアケア

毛根鞘は、髪の毛を頭皮に繋ぎ止める重要な組織です。この毛根鞘や、毛根鞘が育つ毛包環境を健康に保つことが、抜け毛や薄毛の予防、そして育毛の第一歩となります。

ここでは、毛根鞘に負担をかけず、健やかな頭皮環境を育むためのヘアケア方法を見直します。

正しいシャンプーの方法

毎日のシャンプーは、頭皮環境を左右する最も重要なケアです。毛根鞘や毛根を傷つけないためには、「洗いすぎ」と「洗い残し」の両方を防ぐ必要があります。

まず、シャンプー前にお湯だけで髪と頭皮を十分に予洗い(湯シャン)します。これだけで汚れの7割程度は落ちると言われています。

シャンプーは手のひらでよく泡立て、髪の毛ではなく「頭皮」を洗う意識で、指の腹を使って優しくマッサージするように洗います。

爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮や毛根鞘を傷つける原因になるため厳禁です。すすぎは、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に行います。

特に生え際や襟足は残りやすいので注意しましょう。

頭皮の血行促進とマッサージ

毛根にある毛母細胞は、毛細血管から運ばれる栄養によって活動しています。頭皮の血行が悪いと、毛根鞘や髪の毛を作るための栄養が届きにくくなります。

頭皮マッサージは、この血行を促進するのに有効です。シャンプー中や、育毛剤を塗布した後などに、指の腹を使って頭皮全体を動かすように優しく揉みほぐします。

側頭部、頭頂部、後頭部など、気持ち良いと感じる強さで行いましょう。ただし、強く押しすぎたり、爪を立てたりすると逆効果になるため、力加減には注意が必要です。

生活習慣の見直しと栄養バランス

健康な毛根鞘と髪の毛は、体の内側から作られます。ヘアケアというとシャンプーや育毛剤など外側からのアプローチを想像しがちですが、食生活や睡眠などの生活習慣が基盤となります。

髪の毛の主成分であるタンパク質(アミノ酸)はもちろん、その合成を助けるビタミン(特にビタミンB群)やミネラル(特に亜鉛)をバランスよく摂取することが重要です。

また、髪の毛の成長は、成長ホルモンが多く分泌される夜間の睡眠中に活発になります。質の良い睡眠を十分にとることも、健やかな毛根鞘を育むために必要です。

髪の成長に必要な主な栄養素

栄養素主な役割多く含まれる食品(例)
タンパク質髪の毛(ケラチン)の主成分肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉(赤身)
ビタミンB群頭皮の新陳代謝、血行促進豚肉、レバー、マグロ、納豆

育毛剤の活用と頭皮環境の整備

男性用育毛剤は、頭皮環境を整え、毛根に栄養を与え、血行を促進することで、毛根鞘がしっかりと機能できる土台作りをサポートします。

例えば、抗炎症成分で頭皮の荒れを防いだり、血行促進成分で毛乳頭への栄養補給を助けたり、保湿成分で乾燥を防いだりします。

自分の頭皮の状態(乾燥しているか、脂っぽいか)や、悩みの原因(血行不良か、栄養不足か)に合わせて育毛剤を選ぶことが大切です。

育毛剤を使用する際は、頭皮が清潔な状態(洗髪後など)で、用法・用量を守って正しく使用し、継続することが結果につながります。

毛根鞘と薄毛・AGA(男性型脱毛症)の関係

毛根鞘の状態、特に「毛根鞘がない」抜け毛は、AGA(男性型脱毛症)と深く関連している可能性があります。

AGAは、男性ホルモンの影響でヘアサイクルが乱れ、髪の毛が細く短くなっていく進行性の脱毛症です。AGAが毛根鞘にどのような影響を与えるのかを理解することは、早期発見と対策に繋がります。

AGAによるヘアサイクルの短縮化

AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、「5αリダクターゼ」という酵素によって、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されることです。

このDHTが、毛根にある受容体と結合すると、髪の毛の成長期を短縮させる信号が出されます。本来であれば数年間続くはずの成長期が、数ヶ月から1年程度に短縮されてしまいます。

その結果、髪の毛は太く長く成長する前に、次の退行期・休止期へと移行し、抜け落ちてしまいます。

軟毛化と毛根鞘の未発達

成長期が短縮化することで、抜け落ちる髪の毛は、いわゆる「軟毛(なんもう)」と呼ばれる、細く、短く、コシのないうぶ毛のような状態になります。

AGAが進行すると、抜け毛全体に占めるこの軟毛の割合が著しく増加します。髪の毛がこのように未熟な状態で成長を終えてしまうと、毛根自体も小さく、毛根を支える毛根鞘も十分に発達することができません。

そのため、AGAによって抜ける軟毛には、正常な休止期脱毛で見られるような、しっかりとした毛根鞘が付着していないケースが多くなります。

「毛根鞘がない」と感じる抜け毛や、あっても非常に小さい抜け毛が増えた場合は、AGAによる軟毛化が進行しているサインである可能性を疑う必要があります。

毛根鞘の有無以外のAGAのサイン

毛根鞘の有無だけでAGAを判断することはできません。以下の項目も合わせてチェックすることが重要です。

  • 生え際の後退(M字部分など)
  • 頭頂部の地肌の透け(O字部分)
  • 髪の毛全体のハリやコシの低下
  • 家族(特に父方・母方の祖父)に薄毛の人がいる

AGAは進行性のため、放置しておくと軟毛化は進み、毛包自体が小さくなって(ミニチュア化)、最終的には髪の毛が生えてこなくなる可能性もあります。

抜け毛の毛根鞘がないことに加え、上記のようなサインが複数当てはまる場合は、自己判断でケアを続けるだけでなく、一度、皮膚科やAGA専門のクリニックで相談することを推奨します。

AGAの抜け毛と正常な抜け毛の比較

項目AGAによる抜け毛(軟毛)正常な抜け毛(休止期毛)
太さ・長さ細く、短い太く、長い(元の髪の長さ)
毛根鞘付着しないか、非常に小さい半透明の白い塊が付着している
毛根の形小さく未発達、細い丸く膨らんだ棍棒状

毛根鞘(もうこんしょう)に関するよくある質問

抜け毛の根元に白い塊があると「ハゲる」サインですか?

抜け毛の根元にある白い塊が、半透明で適度な大きさの「毛根鞘」である場合、それは髪の毛がヘアサイクル(休止期)に従って自然に抜け落ちた証拠である可能性が高いです。

したがって、この白い塊があること自体が、すぐに薄毛(ハゲる)に直結するわけではありません。むしろ、正常な新陳代謝が行われているサインとも言えます。

ただし、その白い塊が毛根鞘ではなく、ベタベタした大きな「皮脂の塊」である場合は、頭皮環境が悪化しているサインかもしれません。

また、毛根鞘がしっかり付いていても、抜け毛の本数全体が異常に多い場合(1日150本以上続くなど)は注意が必要です。

「毛根鞘がない」抜け毛ばかりです。もう生えてこないのでしょうか?

毛根鞘がない抜け毛には、いくつかの理由が考えられます。

ブラッシングなどで物理的に抜けた場合、毛根鞘は頭皮側に残りますが、毛包(毛穴)が残っていれば、また新しい髪の毛が生えてきます。

一方で、注意が必要なのは、抜け毛自体が細く短く、毛根も未発達なために毛根鞘が付着していないケースです。

これはAGA(男性型脱毛症)などでヘアサイクルが乱れ、髪が十分に成長できていないサイン(軟毛化)かもしれません。

毛根鞘がないことに加え、細い抜け毛が増えたり、地肌が透けて見えたりするようであれば、早めに専門家(皮膚科など)に相談することをお勧めします。

毛根鞘と皮脂の塊は、どうすれば正確に見分けられますか?

見分けるポイントは「色」「形状」「感触」です。毛根鞘は、毛根の形に沿って付着した、半透明または白っぽいゼリー状のものです。

一方、皮脂の塊は、より不透明な白や黄色みがかった色をしており、形状もいびつで、指で触るとベタベタと脂っぽく崩れやすい特徴があります。

抜け毛の根元が明らかに脂っぽく、臭いを伴うような場合は、皮脂詰まりの可能性が高いでしょう。シャンプーの方法を見直す必要があります。

健康な毛根鞘を育てるために、一番大切なことは何ですか?

健康な毛根鞘、ひいては健康な髪の毛を育てるためには、一つのことだけではなく、総合的なケアが重要です。まず、頭皮環境を清潔で健やかに保つための「正しいシャンプー」が基本です。

洗いすぎず、洗い残さず、頭皮を優しく洗うことを心がけてください。次に、髪の毛の材料となる栄養を体内に取り入れる「バランスの取れた食事」と、髪の成長を促す「質の良い睡眠」です。

これら内側からのケアに加え、頭皮マッサージや育毛剤の使用で「血行を促進」し、毛根に栄養を届けやすくすることも有効です。

これらを継続することが、健やかな毛根鞘を育むことに繋がります。

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