鏡を見るたび、生え際が気になってしまう。もしかして、M字はげが始まっているのではないか。まだ10代なのに、と一人で悩んでいませんか。その不安は、とてもよく分かります。
しかし、10代で薄毛のサインを感じることは、決して珍しいことではありません。大切なのは、そのサインに早く気づき、正しく対処することです。
この記事では、なぜ10代でM字はげが気になるのか、その原因と、今すぐ自分で始められる具体的な対策、そして進行を遅らせるための生活習慣について、親切丁寧に解説します。
あなたの不安を少しでも和らげ、前向きな一歩を踏み出すための情報を提供します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
もしかしてM字はげ?10代でも起こるサインとセルフチェック
M字はげという言葉は知っていても、自分の状態がそれに当てはまるのか、なかなかわかりにくいものです。
特に10代では、まだ成長過程であるため、単なる生え際の形の変化なのか、それとも進行性の薄毛の始まりなのか、判断に迷うことが多いでしょう。
ここでは、M字はげの基本的な定義と、自分でできるチェック方法を紹介します。
M字はげとはどのような状態か
M字はげとは、一般的に額の生え際、特に両サイドのそりこみ部分が後退していき、正面から見たときにアルファベットの「M」のような形に見える状態を指します。
これは、男性型脱毛症(AGA)の典型的な進行パターンのひとつです。髪の毛には一本一本にヘアサイクル(毛周期)があり、成長期、退行期、休止期を繰り返しています。
しかし、何らかの原因でこのヘアサイクルが乱れ、成長期が短くなると、髪の毛が太く長く育つ前に抜け落ちてしまいます。M字部分でこの現象が顕著に起こると、生え際が後退していくのです。
10代で気になりやすい生え際の後退
10代は、第二次性徴期にあたり、体つきや声変わりなど、男性ホルモンの影響で体が大きく変化する時期です。この男性ホルモンの変動が、頭皮や髪質に影響を与えることがあります。
また、もともとの生え際の形がM字に近い人もいます。
思春期は他人の目や自分の容姿に敏感になる時期でもあるため、以前は気にしなかった生え際の形が、急に薄毛のサインではないかと不安になるケースも少なくありません。
すべてがAGAの始まりとは限りませんが、注意深く観察することは重要です。
自分でできる簡単なチェック方法
自分がM字はげかどうかを判断するのは難しいですが、いくつかの目安があります。以下の点をチェックしてみてください。
ただし、これはあくまで簡易的な目安であり、正確な診断ではありません。不安が続く場合は、専門家に相談することを推奨します。
M字はげセルフチェックリスト
| チェック項目 | 詳細 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 生え際の毛質 | M字部分の髪の毛が、他の部分(側頭部や後頭部)の髪に比べて細く、弱々しくなっていないか。 | 細く短い毛が増えている場合は注意が必要です。 |
| 抜け毛の量 | シャンプー時や朝起きた時の枕元の抜け毛が、以前より明らかに増えていないか。 | 1日100本程度は正常範囲ですが、急増したら要注意。 |
| 頭皮の色と状態 | M字部分の頭皮が赤みを帯びていたり、皮脂でベタついていたりしないか。 | 頭皮環境の悪化は薄毛につながる可能性があります。 |
気のせいや思い込みの場合もある
10代のうちは、骨格の成長とともに額の広さが変わったり、生え際の形がはっきりしてきたりすることもあります。
また、友人からの何気ない一言や、インターネット上の情報に過敏に反応し、「自分はM字はげだ」と思い込んでしまうケースもあります。
髪型によっても、そりこみが深く見えたり、薄く見えたりすることがあります。客観的に判断するため、過去の写真と現在の生え際を比較してみるのも一つの方法です。
少しでも変化を感じたら、早めに対策を考えることが大切ですが、過度に心配しすぎないことも重要です。ストレス自体が髪に悪影響を与えることもあるからです。
なぜ10代でM字はげが進行するのか 主な原因を探る
10代という若さでM字はげが進行する場合、その背景にはいくつかの原因が考えられます。薄毛は中高年の悩みと思われがちですが、実際には若い世代でも起こり得ます。
主な原因を理解することで、適切な対策の第一歩を踏み出せます。
AGA(男性型脱毛症)の可能性
10代であっても、AGA(Androgenetic Alopecia=男性型脱毛症)を発症する可能性はあります。
AGAは進行性の脱毛症で、主な原因は男性ホルモンと遺伝的要因です。
男性ホルモンの一種であるテストステロンが、特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びつくことで、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変換されます。
このDHTが、毛髪の成長を妨げる信号を出すことで、ヘアサイクルが乱れ、髪が細く短くなり、最終的には抜け落ちてしまいます。特にM字部分や頭頂部はこのDHTの影響を受けやすいとされています。
10代での発症は「若年性脱毛症」と呼ばれることもあります。
遺伝的要因の影響
AGAの発症には、遺伝的要因が強く関わっています。具体的には、「5αリダクターゼの活性度」や「男性ホルモンレセプター(受容体)の感受性」が遺伝しやすいとされています。
簡単に言えば、「薄毛になりやすい体質」が遺伝する可能性があるということです。ご家族、特に母方の祖父や父方に薄毛の方がいる場合、自分もその体質を受け継いでいる可能性は高まります。
ただし、遺伝的要因があるからといって必ず10代で発症するわけではなく、あくまで「可能性の一つ」として捉えることが大切です。
遺伝的要因に加えて、後述する生活習慣などの環境要因が組み合わさることで、発症の時期や進行度が変わってくると考えられています。
ホルモンバランスの乱れ
10代は、性ホルモンの分泌が活発になり、ホルモンバランスが大きく変動する時期です。このホルモンバランスの乱れが、頭皮環境に影響を与えることがあります。
例えば、男性ホルモンが優位になると、皮脂の分泌が過剰になることがあります。
過剰な皮脂は、毛穴を詰まらせたり、頭皮で雑菌が繁殖する原因となったりして、炎症(脂漏性皮膚炎など)を引き起こすことがあります。
頭皮環境が悪化すると、健康な髪の毛が育ちにくくなり、抜け毛や薄毛の一因となる可能性があります。
これはAGAとは異なる原因の脱毛ですが、AGAと併発することで、M字はげの進行を早めることも考えられます。
生活習慣の乱れが頭皮環境を悪化させる
10代は、勉強、部活動、友人関係、スマートフォンの使用などで、生活リズムが乱れがちな時期でもあります。
睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、ストレスなどは、自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良を引き起こします。
髪の毛は、毛根にある毛母細胞が、血液から運ばれてくる栄養素と酸素を受け取って成長します。しかし、血行不良になると、毛母細胞まで十分な栄養が届かなくなります。
その結果、髪の毛が細くなったり、抜けやすくなったりして、M字はげが目立つようになる可能性があります。
10代で考えられる主な原因のまとめ
| 原因 | 概要 | 10代との関連 |
|---|---|---|
| AGA(男性型脱毛症) | 男性ホルモン(DHT)の影響でヘアサイクルが乱れる。 | 若年性脱毛症として10代でも発症の可能性がある。 |
| 遺伝的要因 | AGAになりやすい体質(酵素活性や受容体感受性)が遺伝する。 | 家族歴がある場合、発症リスクが高まる可能性がある。 |
| 生活習慣の乱れ | 睡眠不足、食生活の偏り、ストレスなどが頭皮環境を悪化させる。 | 多忙な生活や思春期特有のストレスが影響しやすい。 |
10代が今すぐ始めるべき頭皮ケアと対策
M字はげのサインに気づいたら、進行を食い止めるためにも、できるだけ早く頭皮ケアを見直すことが重要です。10代の肌はデリケートなため、優しく丁寧なケアを心がけましょう。
高価な製品に頼る前に、まずは基本的なヘアケアを徹底することから始めます。
正しいシャンプー方法の見直し
毎日のシャンプーは、頭皮環境を清潔に保つために非常に重要ですが、洗い方が間違っていると、かえって頭皮を傷つけたり、必要な皮脂まで奪って乾燥を招いたりすることがあります。
今夜からでも実践できる、正しいシャンプーの手順を確認しましょう。
頭皮を健やかに保つシャンプーの手順
| 手順 | ポイント | 目的 |
|---|---|---|
| 1.ブラッシング | シャンプー前に、乾いた髪を優しくブラッシングする。 | 髪の絡まりをほどき、頭皮の汚れやフケを浮かせる。 |
| 2.予洗い | シャンプー剤をつける前に、ぬるま湯(38度程度)で髪と頭皮をしっかりすすぐ。 | お湯だけで汚れの多くは落ちる。シャンプーの泡立ちを良くする。 |
| 3.泡立て | シャンプー剤を手のひらでよく泡立ててから、髪につける。 | 原液を直接頭皮につけると刺激になったり、すすぎ残しの原因になる。 |
| 4.洗う | 指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗う。爪を立てない。 | 毛穴の汚れを揉み出し、血行を促進する。髪同士をこすり合わせない。 |
| 5.すすぎ | シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぐ。特に生え際や耳の後ろ。 | すすぎ残しは、かゆみやフケ、炎症の原因になる。 |
シャンプー剤の選び方も大切です。洗浄力が強すぎるもの(高級アルコール系など)は、頭皮に必要な皮脂まで奪う可能性があります。アミノ酸系など、マイルドな洗浄力のものを選ぶとよいでしょう。
また、ワックスなど整髪料を使った日は、二度洗いが必要な場合もありますが、洗いすぎは禁物です。
頭皮マッサージは有効か
頭皮マッサージは、頭皮の血行を促進する効果が期待できます。血行が良くなれば、髪の成長に必要な栄養素が毛根に届きやすくなります。
シャンプー中や、お風呂上がりのリラックスした時間などに、指の腹で頭皮全体を優しく動かすようにマッサージしてみましょう。
ただし、爪を立てたり、強くこすりすぎたりすると、頭皮を傷つけて逆効果になるため注意が必要です。
マッサージだけでM字はげが治るわけではありませんが、健やかな頭皮環境を保つための一つの方法として取り入れるのは良いことです。
育毛剤や発毛剤の使用は慎重に
ドラッグストアなどでは多くの育毛剤や発毛剤が販売されていますが、10代での使用は慎重に判断する必要があります。
特に「発毛剤」に分類されるものの中には、ミノキシジルなど医学的に発毛効果が認められている成分が含まれるものがありますが、これらは未成年者の使用が推奨されていない場合がほとんどです。
体がまだ成長途中である10代において、これらの成分がどのような影響を及ぼすか、安全性が確立されていないためです。
もし使用を考える場合は、必ず保護者の方と相談し、医師や薬剤師などの専門家に意見を求めるようにしてください。自己判断での使用は避けるべきです。
頭皮への刺激を避ける
日常生活で、無意識に頭皮へ刺激を与えていることもあります。例えば、紫外線を長時間浴びることは、頭皮の乾燥や炎症を引き起こす原因になります。
屋外での部活動などで長時間外にいる場合は、通気性の良い帽子をかぶるなどの対策も考えましょう。
ただし、帽子を長時間かぶり続けると、蒸れて雑菌が繁殖しやすくなるため、適度に脱いで換気することも大切です。
また、整髪料が頭皮に直接つかないように注意し、その日のうちに必ず洗い流すことを徹底してください。
M字はげの進行を遅らせるための生活習慣改善
M字はげの原因がAGAであった場合、それを根本的に治すことは難しいですが、進行を遅らせるために生活習慣を見直すことは非常に重要です。
特に10代は、生活習慣の乱れが頭皮環境に直結しやすい時期です。健やかな髪を育む土台となる体づくりを意識しましょう。
栄養バランスの取れた食事
髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。特定の食品だけを食べるのではなく、バランスの取れた食事を心がけることが、健康な髪の成長につながります。
ファストフードやインスタント食品、スナック菓子などは、脂質や糖質が多く、ビタミンやミネラルが不足しがちです。
これらの食事が続くと、皮脂の過剰分泌を招いたり、血行を悪化させたりする可能性があります。
部活動や勉強で忙しくても、できるだけ3食しっかり食べ、特に髪の主成分であるタンパク質、そしてそれをサポートするビタミンやミネラルを意識して摂取することが大切です。
質の高い睡眠の確保
睡眠は、単に体を休ませるだけでなく、細胞の修復や成長ホルモンの分泌にとって非常に重要な時間です。髪の毛も、この睡眠中に成長が促されます。
特に、入眠から最初の3時間程度は「ゴールデンタイム」とも呼ばれ、成長ホルモンが多く分泌されます。10代は十分な睡眠時間(7〜8時間程度)が必要です。
しかし、夜遅くまでの勉強や、就寝前のスマートフォン操作は、睡眠の質を大きく低下させます。
スマートフォンから発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまいます。
寝る1時間前からはスマートフォンを見るのをやめ、リラックスできる環境を整えることが、質の高い睡眠につながります。
睡眠の質を高めるためのヒント
- 毎日なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。
- 寝る前のカフェイン摂取(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)を避ける。
- 寝室を暗く、静かで、快適な温度に保つ。
ストレスとの上手な付き合い方
10代は、学業、進路、友人関係、そして容姿の悩みなど、多くのストレスにさらされる時期です。ストレスを感じると、体は緊張状態になり、自律神経が乱れます。
交感神経が優位になると、血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。また、ストレスはホルモンバランスの乱れにもつながります。
M字はげを気にすること自体が、さらなるストレスになるという悪循環に陥ることもあります。ストレスをゼロにすることは難しいですが、自分なりの解消法を見つけることが重要です。
スポーツで汗を流す、趣味に没頭する、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうなど、上手に発散する方法を見つけましょう。
適度な運動のすすめ
適度な運動は、全身の血行を促進するために非常に効果的です。血行が良くなれば、頭皮にも十分な栄養と酸素が運ばれます。また、運動はストレス解消にも役立ちます。激しい運動である必要はありません。
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど、自分が楽しめる有酸素運動を日常生活に取り入れてみましょう。部活動で体を動かしている人は、それを継続することが良い頭皮環境づくりにもつながっています。
運動不足を感じている人は、まずは一駅分歩いてみる、階段を使ってみるなど、小さなことから始めてみてください。
食生活で意識したいポイント 髪の成長をサポートする栄養素
健康な髪を育てるためには、毎日の食事が非常に重要です。具体的にどのような栄養素を意識すればよいのか、そしてそれらがどのような食品に含まれているのかを知っておきましょう。
バランス良く食べることが基本ですが、特に以下の栄養素は髪の成長と深く関わっています。
タンパク質の重要性
髪の毛の約90%は、「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、タンパク質が不足すると、健康な髪の毛を作ることができません。髪が細くなったり、弱々しくなったりする原因になります。
10代は体の成長期でもあり、筋肉や骨格を作るためにも多くのタンパク質を必要とします。
毎日の食事で、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、良質なタンパク質をしっかり摂取することを心がけましょう。
亜鉛の役割
亜鉛は、ミネラルの一種であり、タンパク質がケラチンに再合成されるのを助ける重要な役割を持っています。
また、AGAの原因物質であるDHTを生成する酵素(5αリダクターゼ)の働きを抑制する可能性も指摘されています。亜鉛が不足すると、髪の成長が妨げられる可能性があります。
亜鉛は体内で作ることができず、汗などでも失われやすいため、食事から意識して摂取する必要があります。牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、アーモンドなどに多く含まれています。
ビタミンB群とビタミンE
ビタミン類も、髪の健康維持に欠かせません。特にビタミンB群(B2、B6など)は、タンパク質の代謝を助けたり、皮脂の分泌をコントロールしたりする働きがあります。
ビタミンB群が不足すると、頭皮環境が悪化しやすくなります。レバー、マグロ、カツオ、バナナ、卵などに多く含まれます。
また、ビタミンEは、血管を拡張させて血行を促進する働き(抗酸化作用)があります。頭皮の血流が良くなることで、毛根に栄養が届きやすくなります。
アーモンドなどのナッツ類、植物油、アボカドなどに多く含まれています。
髪の成長をサポートする主な栄養素と食品
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける。5αリダクターゼの抑制。 | 牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | タンパク質の代謝を助ける。皮脂分泌の調整。 | レバー、マグロ、カツオ、バナナ、卵 |
| ビタミンE | 血行を促進する(抗酸化作用)。 | ナッツ類、植物油、アボカド、うなぎ |
避けるべき食習慣
一方で、過剰に摂取すると頭皮環境を悪化させる可能性のある食習慣にも注意が必要です。
例えば、脂っこい食べ物(揚げ物、スナック菓子など)の摂りすぎは、皮脂の過剰分泌につながり、毛穴の詰まりや炎症の原因となります。
また、糖分の多いお菓子やジュース類の摂りすぎも、皮脂分泌を促すほか、体内でタンパク質と糖が結びつく「糖化」を引き起こし、頭皮の老化を進める可能性があります。
刺激物(香辛料など)の摂りすぎも、頭皮のかゆみや炎症を悪化させることがあります。
完全に断つ必要はありませんが、毎日のように大量に食べる習慣がある場合は、見直すことが重要です。何事もバランスが大切です。
間違ったヘアケアがM字はげを悪化させる?
良かれと思ってやっているヘアケアが、実は頭皮に負担をかけ、M字はげを目立たせる原因になっているかもしれません。
特に10代は皮脂分泌が活発なため、清潔にしようと洗いすぎたり、強い力でこすったりしがちです。日常のケアに潜む落とし穴を見直してみましょう。
強すぎるシャンプーや洗いすぎ
頭皮のベタつきが気になるからといって、洗浄力の非常に強いシャンプーを使ったり、1日に何度もシャンプーしたりしていませんか。
洗浄力が強すぎると、頭皮を守るために必要な皮脂まで洗い流してしまいます。皮脂が不足すると、頭皮は乾燥し、フケやかゆみの原因になります。
また、体は失われた皮脂を補おうとして、かえって皮脂の分泌を過剰にしてしまうこともあります。シャンプーは基本的には1日1回、夜に行うのが理想です。
自分の頭皮タイプに合った、マイルドな洗浄力のシャンプーを選ぶことが大切です。
頭皮タイプ別シャンプー選びの目安
| 頭皮タイプ | 特徴 | おすすめのシャンプー系統 |
|---|---|---|
| 乾燥肌 | 頭皮がカサカサし、細かいフケが出やすい。 | アミノ酸系(洗浄力がマイルドで保湿力が高い) |
| 脂性肌(オイリー肌) | 日中、頭皮や髪がベタつきやすい。 | アミノ酸系、または適度な洗浄力の石けん系 |
| 敏感肌 | シャンプーがしみたり、赤みやかゆみが出やすい。 | 低刺激性、無添加、アミノ酸系 |
髪の毛や頭皮の乾かし方
シャンプー後の乾かし方も重要です。濡れた髪はキューティクルが開いており、非常にデリケートな状態です。タオルでゴシゴシと強くこするように拭くと、摩擦で髪が傷み、切れ毛の原因になります。
また、生え際は特に乾きにくく、濡れたまま放置しがちです。濡れた状態が続くと、頭皮で雑菌が繁殖しやすくなり、かゆみやニオイ、炎症の原因となります。
タオルで優しく押さえるように水分を吸い取った後、ドライヤーを使って頭皮からしっかりと乾かしましょう。
ただし、ドライヤーの熱をM字部分など同じ箇所に当て続けると、熱によるダメージや乾燥を招きます。ドライヤーを頭から20cmほど離し、小刻みに動かしながら全体を乾かすのがコツです。
ワックスやスプレーの正しい使い方
M字はげを隠すために、ワックスやスプレーなどの整髪料を使っている人もいるかもしれません。整髪料を使うこと自体が、直接的にM字はげの原因になるわけではありません。
問題は、その使い方と落とし方です。整髪料が頭皮の毛穴に詰まると、炎症を引き起こし、頭皮環境を悪化させる可能性があります。
整髪料は、できるだけ頭皮につかないよう、髪の毛の中間から毛先につけるように意識しましょう。そして、その日の夜には必ずシャンプーで洗い流してください。
整髪料が残ったまま寝てしまうのは、頭皮にとって最も避けたい行為の一つです。
不安な時は専門家へ相談 病院受診の目安
M字はげかもしれないという不安を、10代で一人で抱え込むのは非常につらいことです。
セルフケアを続けても抜け毛が減らない、生え際の後退が明らかに進行していると感じる場合は、勇気を出して専門家に相談することを検討しましょう。
どのくらい抜けたら相談すべきか
抜け毛の量には個人差があり、1日に50本から100本程度の抜け毛は、ヘアサイクルに伴う自然な現象です。
しかし、「以前と比べて明らかに抜け毛が増えた」「枕や排水溝に溜まる毛の量が倍以上になった」と感じる場合や、「抜けた毛の多くが細く短い」という場合は、注意が必要です。
また、M字部分の頭皮が透けて見えるようになってきた、生え際のラインが明らかに変わってきたと感じる場合も、相談を考えるタイミングかもしれません。
客観的な判断が難しい場合は、定期的にスマートフォンのカメラで生え際や頭頂部の写真を撮り、変化を記録しておくのも一つの方法です。
何科を受診すればよいか
薄毛や抜け毛の悩みを相談する場合、まずは「皮膚科」を受診するのが一般的です。皮膚科では、頭皮の状態(炎症、湿疹、フケなど)を診察し、それが原因で抜け毛が起こっているのかを判断します。
脂漏性皮膚炎や円形脱毛症など、AGA以外の脱毛症の可能性も診断してもらえます。
もしAGAの可能性が高いと判断された場合、より専門的な治療を希望するのであれば、「AGA専門クリニック」という選択肢もあります。
ただし、多くのAGAクリニックでは、10代(未成年者)の治療には保護者の同意が必要ですし、治療内容も内服薬などを使わず、生活指導や外用薬(塗り薬)などに限定されることがほとんどです。
相談先の比較
| 相談先 | 特徴 | 10代の受診 |
|---|---|---|
| 皮膚科 | 頭皮の炎症やAGA以外の脱毛症も含めて総合的に診断。保険診療が中心。 | まずは皮膚科で頭皮の状態を診てもらうのが一般的。 |
| AGA専門クリニック | AGAの診断と治療(投薬など)を専門に行う。自由診療が中心。 | 未成年者の治療には制限があり、保護者の同意が必須。 |
専門家に相談するメリット
専門家に相談する最大のメリットは、「自分のM字はげの原因が何なのか」を客観的に診断してもらえることです。
それがAGAなのか、生活習慣による一時的なものなのか、あるいは他の皮膚疾患なのかが分かれば、対処法も明確になります。
また、「まだ大丈夫」「気にしすぎ」と専門家から言われることで、不安が解消されるケースも少なくありません。
もしAGAが始まっていたとしても、10代はまだ体が成長段階にあるため、積極的な薬物治療は推奨されないことが多いです。
その場合でも、医師の指導のもとで正しい頭皮ケアや生活習慣の改善に取り組むことは、進行を遅らせるために非常に重要です。
一人で悩み続けるストレスからも解放され、前向きに対策に取り組むきっかけになります。
Q&A
ここでは、10代のM字はげに関してよく寄せられる質問にお答えします。
- M字はげは自力で治せますか?
-
原因によります。
もしM字はげの原因が、睡眠不足や栄養の偏り、ストレス、間違ったヘアケアによる一時的な頭皮環境の悪化であれば、生活習慣やヘアケアを見直すことで、頭皮環境が改善し、抜け毛が減る可能性は十分にあります。
しかし、原因がAGA(男性型脱毛症)であった場合、AGAは進行性の脱毛症であるため、自力で「治す」(元の状態に戻す)ことは非常に困難です。
ただし、生活習慣の改善や適切な頭皮ケアによって、その進行を「遅らせる」ことは期待できます。
- 育毛剤は10代から使っても大丈夫ですか?
-
「育毛剤」は、主に頭皮環境を整えて「今ある髪を健康に育てる」ことを目的とした医薬部外品です。血行促進成分や保湿成分が含まれているものが多く、これらは10代が使用しても大きな問題はないとされています。
しかし、「発毛剤」は、毛母細胞に働きかけて「新しい髪を生やす」ことを目的とした医薬品で、ミノキシジルなどの成分が含まれます。
これらの多くは、未成年者の使用が推奨されていません。育毛剤であっても、肌に合わずに炎症を起こす可能性はあります。
使用する場合は、まず保護者の方に相談し、パッチテストを行うなど慎重に始めるべきです。
- 親がはげていなければ自分もはげませんか?
-
AGA(男性型脱毛症)になりやすい体質は遺伝的要因が強いとされていますが、親や親族に薄毛の人がいないからといって、自分が絶対にAGAにならないとは言い切れません。
遺伝は複雑であり、何世代かを経て現れることもあります。また、前述の通り、M字はげの原因はAGAだけではありません。
遺伝的要因がなくても、極端な生活習慣の乱れや頭皮へのダメージが続けば、薄毛が進行する可能性は誰にでもあります。
遺伝を気にしすぎるより、まずは自分自身の頭皮環境と生活習慣に目を向けることが大切です。
- ワックスを使うとM字はげが進行しますか?
-
ワックスなどの整髪料を使うこと自体が、直接的にM字はげを進行させることはありません。問題となるのは、使い方とアフターケアです。
ワックスが頭皮の毛穴に詰まると、雑菌が繁殖しやすくなり、炎症(毛嚢炎など)を引き起こす可能性があります。頭皮環境が悪化すれば、抜け毛につながることはあります。
整髪料は頭皮になるべくつけず、髪だけにつけるように意識し、その日の夜には必ずシャンプーで丁寧に洗い流すことを徹底してください。
正しく使えば、過度に恐れる必要はありません。
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