薄毛が気になりだすと、毎朝のスタイリングも憂鬱になりがちですよね。「ワックスで隠そうとすると、逆にはげが目立ってしまう…」そんな経験はありませんか?
この記事では、ワックスを使って薄毛を目立たなくさせるスタイリング術を、薄毛のタイプ別にご紹介します。
さらに、薄毛を進行させないための正しいシャンプー法や、頭皮ケアについても詳しく解説。日々のヘアセットとケアを見直すことで、自信を持って一日を過ごすためのお手伝いをします。
まずはご自身の髪と頭皮の状態を知ることから始めましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
ワックスを使った「はげ隠し」スタイリングの基本
ワックスを使えば、薄毛を完全に「隠す」ことは難しくても、スタイリング次第で目立たなく見せることは十分に可能です。
重要なのは、髪のボリューム感や毛流れをコントロールし、視線を薄毛部分からそらすことです。無理に隠そうとすると不自然になり、かえって目立ってしまうこともあります。
自然な仕上がりを目指すことが、スタイリング成功の鍵となります。
なぜワックスで薄毛が目立ってしまうのか
良かれと思って使ったワックスが、逆に薄毛を目立たせてしまうケースにはいくつかの理由があります。一つは、ワックスの重さで髪が束になり、地肌が透けて見えやすくなることです。
特にセット力の強いワックスや、油分の多いタイプをつけすぎると、髪がベタついてボリュームダウンし、薄毛部分が際立ってしまいます。
また、髪の量が少ない部分にワックスを直接つけると、その部分の髪だけが固まってしまい、周囲との差が不自然に強調されることも原因です。
薄毛カバーに適したワックスの選び方
薄毛を自然にカバーするためには、ワックス選びが非常に重要です。重さや油分が少なく、ふんわりとしたボリュームを出しやすいタイプを選びましょう。
マットな質感でツヤが出すぎないものも、地肌のテカリを目立たせないために有効です。自分の髪質や、目指すスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
ワックスの種類と特徴
ワックスには様々な種類があり、それぞれセット力や質感が異なります。薄毛カバーには、軽くてボリュームを出しやすいものが向いています。
| ワックスの種類 | 特徴 | 薄毛カバーへの適性 |
|---|---|---|
| マットタイプ | ツヤがなく、軽い仕上がり。ボリュームを出しやすい。 | ◎(自然な仕上がり) |
| ファイバータイプ | 繊維入りでセット力が高い。毛束感が出やすい。 | △(つけすぎると束になりやすい) |
| クリームタイプ | 水分が多く、伸びが良い。自然な毛流れを作れる。 | ○(軽めのものを選ぶ) |
| ジェルタイプ | 濡れたようなツヤと強いセット力。固まると重い。 | ×(地肌が目立ちやすい) |
スタイリング前の準備が重要
ワックスをつける前の準備、特に髪の乾かし方がスタイリングの仕上がりを大きく左右します。濡れた髪はボリュームが出にくく、ワックスも均一になじみません。
まずはしっかりと髪を乾かし、スタイリングの土台を作ることが大切です。
髪の乾かし方で土台を作る
シャンプー後、まずはタオルで優しく頭皮の水分を拭き取ります。ゴシゴシ擦ると頭皮や髪にダメージを与えるので注意しましょう。次にドライヤーを使います。
薄毛が気になる部分は、髪の根元を起こすように、下から風を当てるのがポイントです。例えば、頭頂部が気になるなら、周囲の髪を頭頂部に向かって乾かし、根元にボリュームを持たせます。
8割ほど乾いたら、冷風に切り替えて形をキープさせると、スタイリングがしやすくなります。
薄毛タイプ別ワックススタイリング術
薄毛の目立ち方は、M字型、O字型、U字型など、タイプによって異なります。それぞれのタイプに合わせたスタイリングを行うことで、より効果的に薄毛を目立たなくさせることができます。
ご自身のタイプを把握し、適した方法を取り入れましょう。
M字型(そり込み)の場合
M字型は、いわゆる「そり込み」部分が後退していくタイプです。前髪の扱い方がポイントになります。
前髪の活かし方
前髪を無理に下ろして隠そうとすると、量が少なく見えたり、風で崩れた時にかえって目立ったりします。思い切って前髪を上げる「アップバング」スタイルがおすすめです。
前髪を立ち上げることで視線が上に行き、そり込み部分が目立ちにくくなります。また、七三分けなどで自然な毛流れを作り、片方のそり込みを隠すように流すのも一つの方法です。
サイドのボリューム調整
そり込み部分が目立つと、相対的にサイドの髪が重く見えがちです。サイドの髪はワックスで抑えるか、短めにカットしてすっきりさせましょう。
トップにボリュームを持たせ、サイドはタイトにすることで、ひし形のシルエット(トップにボリュームがあり、サイドが締まっている形)を作ると、バランスが良く見えます。
O字型(頭頂部)の場合
O字型は、頭頂部、いわゆる「つむじ」周辺から薄くなるタイプです。自分では見えにくい部分ですが、他人からは目立ちやすい場所でもあります。
トップの髪の流し方
頭頂部の薄毛を隠そうと、周囲の長い髪を無理やり持ってくるのは逆効果です。不自然な毛流れになり、少し崩れただけですぐに地肌が見えてしまいます。
基本は、つむじの自然な毛流れを活かすことです。ドライヤーで根元を立ち上げた後、少量のマットワックスを指先に取り、髪の根元付近につけてふんわりとさせます。
毛先にはワックスをつけすぎないように注意しましょう。
周囲の髪でカバーするテクニック
頭頂部周辺の、まだ髪が残っている部分をうまく活用します。前髪やサイドの髪を少し長めに残し、それらの髪をトップ(頭頂部)に向かって流すようにスタイリングします。
ワックスで毛束を散らすようにセットすると、頭頂部の地肌が透けにくくなります。
| O字型カバースタイリングのポイント | 具体的な方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| ドライヤー | 周囲の髪を頭頂部に向かって乾かす | 根元をしっかり立ち上げる |
| ワックス | マットタイプを少量、指先で根元につける | 毛先にはつけすぎない |
| スタイリング | 毛束を散らしてふんわりさせる | 一箇所に集めすぎない |
U字型(全体的)の場合
U字型は、M字型とO字型が進行し、前頭部から頭頂部にかけて広範囲で薄くなるタイプです。
全体のボリュームアップ術
全体的に髪の量が少なくなっているため、残っている髪全体を使ってボリューム感を出すことが重要です。ドライヤーで髪全体を根元から立ち上げるように乾かします。
ワックスは軽いマットタイプを選び、手のひらによく伸ばしてから、髪の内側から空気を入れるようにくしゃっと揉み込みます。
特定の場所で分けるのではなく、全体的に髪を散らすようにセットすると、地肌が目立ちにくくなります。
短髪スタイルのメリット
髪が長いと、かえって薄毛部分とのコントラストが強調されてしまいます。
U字型の場合は、サイドや襟足を短く刈り上げた「ソフトモヒカン」や「ベリーショート」など、短髪スタイルにするのが最も効果的です。
全体を短くすることで、薄い部分と濃い部分の差が曖昧になり、清潔感も出て爽やかな印象を与えます。
やってはいけないNGスタイリング
薄毛を目立たなくしようとするあまり、かえって逆効果になってしまうスタイリングがあります。これらのNG例を避け、自然な仕上がりを心がけることが大切です。
無理に隠そうと髪を伸ばす
いわゆる「バーコード」スタイルのように、サイドや後ろの髪を長く伸ばして薄毛部分にかぶせるのは、最も避けるべきスタイリングです。
風が吹いたり、汗をかいたりすると簡単に崩れ、隠していた部分が露わになってしまいます。不潔な印象も与えかねません。潔く短くする方が、よほど好印象です。
ワックスのつけすぎ
ボリュームを出そうとワックスを大量につけると、その重みで髪が寝てしまい、ボリュームダウンにつながります。また、髪が束になって地肌が透けやすくなります。
ワックスは一度にたくさん取るのではなく、少量を指先に取り、足りなければ付け足す、という使い方を徹底しましょう。
特にマットワックスは、つけすぎると髪がギシギシになり、修正が難しくなるため注意が必要です。
一点にボリュームを集中させる
例えばO字型を隠そうと、頭頂部だけに髪を集めて盛り上げるようなスタイリングは不自然です。周囲の髪とのバランスが悪く、そこだけが不自然に浮いて見えてしまいます。
スタイリングは「隠す」のではなく「馴染ませる」意識が重要です。全体のバランスを見て、トップはふんわり、サイドは抑えめ、といったメリハリをつけることが大切です。
分け目をくっきりつける
M字型やO字型の場合、分け目をくっきりとつけてしまうと、その線が薄毛部分への「道しるべ」のようになってしまい、視線を集めてしまいます。
また、分け目の地肌が目立つ原因にもなります。
スタイリングの際は、コーム(くし)を使わず、手ぐしでざっくりと分けるか、あえて分け目を作らないスタイル(トップ全体を立ち上げるなど)にするのがおすすめです。
ワックス選びで失敗しないためのポイント
薄毛を効果的にカバースタイリングするためには、ご自身の髪質や目指すスタイルに合ったワックスを選ぶことが非常に重要です。
セット力や質感、洗い流しやすさなど、いくつかのポイントを押さえて選びましょう。
髪質(硬い・柔らかい)に合わせる
髪質によって、適したワックスは異なります。髪が柔らかく、ボリュームが出にくい「軟毛」の方は、軽くてセット力のあるマットタイプやクレイ(泥)タイプがおすすめです。
油分が多いとすぐにペタッとしてしまうため、軽い質感を重視しましょう。
逆に、髪が硬くて太い「剛毛」の方は、ある程度のセット力とまとまりやすさが必要になるため、ファイバータイプやクリームタイプも選択肢に入ります。
ただし、薄毛カバーが目的なら、やはりつけすぎには注意が必要です。
| 髪質 | 特徴 | おすすめのワックスタイプ |
|---|---|---|
| 軟毛(ねこっ毛) | 髪が細く柔らかい。ボリュームが出にくい。 | マットタイプ、クレイタイプ(軽く、セット力がある) |
| 剛毛(硬い髪) | 髪が太く硬い。まとまりにくい。 | ファイバータイプ、クリームタイプ(セット力と操作性) |
| 普通毛 | 上記の中間。 | マットタイプ、クリームタイプ(バランス型) |
セット力とキープ力をチェック
薄毛カバーのスタイリングでは、ふんわりとしたボリュームを一日中キープすることが求められます。セット力が弱すぎるとすぐに髪が寝てしまい、薄毛が目立ってしまいます。
かといって、強すぎると重さで髪が潰れたり、不自然に固まったりします。ドライな質感で適度なセット力があり、再整髪(手直し)がしやすいものが理想的です。
洗い流しやすさも考慮する
ワックスを使った日は、その日のうちにシャンプーでしっかり洗い流すことが頭皮環境にとって重要です。セット力が高いワックスや油分の多いワックスは、シャンプー1回では落ちにくいことがあります。
洗い残しは頭皮トラブルの原因となるため、できるだけお湯やシャンプーで落としやすいワックスを選ぶことも、長期的な薄毛対策の観点から大切です。
残留ワックスが頭皮に与える影響
ワックスが頭皮に残ると、毛穴を詰まらせる原因になります。毛穴が詰まると、皮脂が正常に排出されなくなり、炎症(毛嚢炎)を引き起こしたり、雑菌が繁殖しやすい環境になったりします。
これは頭皮環境の悪化につながり、健康な髪の成長を妨げる要因となり得ます。結果として、薄毛や抜け毛を助長する可能性も否定できません。
スタイリング剤に頼らない薄毛対策
ワックスによるスタイリングは、あくまで一時的に薄毛を目立たなくさせるための対症療法です。
根本的に薄毛の悩みに向き合うためには、スタイリング剤に頼るだけでなく、日々の生活習慣を見直し、頭皮環境を整えるといった根本的な対策も同時に進めることが大切です。
まずは生活習慣の見直しから
健康な髪は、健康な身体と頭皮から生まれます。
日々の生活習慣が乱れていると、髪の成長に必要な栄養が不足したり、血行が悪くなったりして、薄毛が進行する可能性があります。
栄養バランスの取れた食事
髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)をしっかり摂ることが基本です。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類など)や、頭皮の血行を良くするビタミンE(アボカド、アーモンドなど)、頭皮環境を整えるビタミンB群(豚肉、マグロ、バナナなど)も意識して摂取しましょう。
偏った食事や脂っこいものの食べ過ぎは、皮脂の過剰分泌につながるため避けるべきです。
質の高い睡眠
髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。特に、入眠後すぐの深い眠り(ノンレム睡眠)の間に多く分泌されるといわれています。
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長サイクルが乱れる原因になります。
毎日6〜7時間程度の十分な睡眠時間を確保し、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
ストレス管理
過度なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させます。その結果、頭皮への血流が悪くなり、髪の成長に必要な栄養素が毛根まで届きにくくなります。
また、ストレスはホルモンバランスの乱れにもつながり、抜け毛の原因となることがあります。適度な運動、趣味の時間、リラックスできる入浴など、自分なりのストレス解消法を見つけることが重要です。
育毛剤や発毛剤の活用
セルフケアと並行して、育毛剤や発毛剤の使用を検討するのも一つの方法です。これらはドラッグストアやオンラインで購入可能ですが、それぞれ目的や成分が異なります。
育毛剤と発毛剤の違い
「育毛剤」は、今ある髪を健康に育て、抜け毛を予防することを目的としています。主に頭皮の血行促進成分や、頭皮環境を整える成分が含まれており、「医薬部外品」に分類されます。
一方、「発毛剤」は、新しい髪を生やし、髪の毛の数を増やすことを目的としています。
「ミノキシジル」などの発毛効果が認められた成分が配合されており、「第一類医薬品」に分類されます(購入には薬剤師の説明が必要です)。
ご自身の目的(予防か、発毛か)に合わせて選ぶ必要があります。
| 種類 | 分類 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 育毛剤 | 医薬部外品 | 抜け毛予防、今ある髪の育成、頭皮環境改善 |
| 発毛剤 | 第一類医薬品 | 新しい髪を生やす(発毛)、壮年性脱毛症の改善 |
薄毛を進行させないための正しいシャンプー法
ワックスを使った日のケアとしてはもちろん、日々の頭皮環境を健やかに保つためにも、正しいシャンプー法を身につけることは非常に重要です。
間違った洗い方は、頭皮を傷つけたり、必要な皮脂まで奪って乾燥を招いたりし、薄毛を進行させる可能性があります。
シャンプー選びの基本
毎日使うシャンプーは、頭皮への刺激が少ないものを選ぶことが大切です。
洗浄力が強すぎるシャンプー(高級アルコール系など)は、頭皮を守るのに必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥やフケ、かゆみの原因となることがあります。
アミノ酸系シャンプーが推奨される理由
薄毛や頭皮の乾燥が気になる方には、「アミノ酸系シャンプー」が推奨されます。アミノ酸系は、人間の皮膚や髪と同じタンパク質を構成する成分で洗浄するため、頭皮への刺激がマイルドです。
必要な潤いを残しつつ、汚れや余分な皮脂を優しく洗い流すことができます。泡立ちは控えめなものが多いですが、洗浄力が弱いわけではありません。
正しい髪の洗い方
ゴシゴシと力任せに洗うのは厳禁です。頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。
予洗いの重要性
シャンプーをつける前に、まずはお湯(38度程度のぬるま湯が目安)だけで髪と頭皮をしっかりと洗い流します。これを「予洗い(よあらい)」といいます。
実は、髪の汚れのほとんど(汗やホコリなど)は、この予洗いだけで落ちるといわれています。予洗いをしっかり行うことで、シャンプーの泡立ちが良くなり、少量のシャンプーで効率的に洗うことができます。
シャンプーの泡立て方と洗い方
シャンプーは原液を直接頭皮につけるのではなく、必ず手のひらで軽く泡立ててから髪につけます。泡立てが不十分だと、洗浄成分が頭皮に集中して刺激になったり、洗いムラの原因になったりします。
指の腹(指紋の部分)を使って、頭皮全体を優しくマッサージするように洗いましょう。爪を立てて洗うと頭皮が傷つき、炎症の原因になるため絶対にやめてください。
すすぎ残しを防ぐポイント
シャンプー剤やコンディショナーが頭皮に残ると、毛穴詰まりやフケ、かゆみの原因になります。洗う時間以上に、すすぎには時間をかける意識を持ちましょう。
特に、生え際(おでこやもみあげ)、耳の後ろ、襟足はすすぎ残しが多い場所なので、念入りにシャワーで洗い流してください。ぬるつきが完全になくなるまで、しっかりとすすぎます。
| 正しいシャンプーの手順 | ポイント | 目的 |
|---|---|---|
| ブラッシング | 洗う前に乾いた髪をとかす | ホコリを落とす、髪の絡まりを解く |
| 予洗い | ぬるま湯で1〜2分しっかり流す | お湯だけで汚れの7〜8割を落とす |
| 泡立て・洗い | 手のひらで泡立て、指の腹で頭皮を洗う | 頭皮への刺激を減らす、毛穴の汚れを揉み出す |
| すすぎ | シャワーで時間をかけて念入りに | 洗い残しによる頭皮トラブルを防ぐ |
髪の乾かし方
シャンプー後の濡れた髪は、キューティクルが開いて非常にデリケートな状態です。放置すると雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮環境にも良くありません。
タオルドライの注意点
まずは吸水性の高いタオルで、髪をこすらないように優しく水分を拭き取ります。タオルで髪を挟み込み、ポンポンと軽く叩くように(タッピング)して水分を吸わせます。
頭皮も同様に、タオルを押し当てるようにして水分を取りましょう。ゴシゴシと強く拭くのは、摩擦で髪や頭皮を傷めるので避けてください。
ドライヤーの正しい使い方
タオルドライである程度水分が取れたら、すぐにドライヤーで乾かします。ドライヤーは頭皮から15〜20cmほど離し、同じ場所に熱が集中しないように常に振りながら風を当てます。
まずは乾きにくい根元や後頭部から乾かし始め、全体が8割ほど乾いたら、スタイリングの時と同様に、ボリュームを出したい部分(トップなど)の根元を下から起こすように風を当てます。
最後に冷風に切り替えて髪全体を冷ますと、キューティクルが閉じて髪にツヤが出るとともに、セットした形が長持ちしやすくなります。
ワックス使用後の頭皮ケア
ワックスを使った日は、普段以上に丁寧な頭皮ケアが求められます。
スタイリング剤の成分や、スタイリングによって付着した皮脂や汚れをその日のうちにリセットし、頭皮を清潔で健やかな状態に保つことが、薄毛対策の基本です。
なぜワックスをしっかり落とす必要があるのか
ワックスには、髪型をキープするための油分や樹脂成分が含まれています。これらがシャンプーで落としきれずに頭皮や毛穴に残ってしまうと、皮脂やフケと混ざり合い、酸化してしまいます。
酸化した皮脂汚れは、毛穴を詰まらせる「角栓(かくせん)」となり、頭皮の炎症やニオイの原因になります。
さらに、毛穴の詰まりは髪の正常な成長サイクルを妨げ、抜け毛や細毛を助長する一因となり得ます。
2度洗いは必要?
ワックスが落ちにくいと感じる場合、シャンプーの「2度洗い」が有効です。ただし、やみくもに2回洗うのではなく、洗い方を変えることがポイントです。
- 1回目:スタイリング剤を落とす洗い
- 2回目:頭皮を洗う洗い
1回目のシャンプーは、まずお湯で髪をよく濡らした後、少量のシャンプーを手に取り、髪全体(特にワックスがついている毛先や中間)に馴染ませ、軽く泡立ててワックスや髪の表面の汚れを浮かせます。
この段階でしっかり洗い流します。 2回目のシャンプーは、再度シャンプーを適量取り、今度はしっかり泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。
この「予洗い(1回目)」と「本洗い(2回目)」を分けることで、頭皮に負担をかけすぎず、汚れを効果的に落とすことができます。
頭皮マッサージの取り入れ方
シャンプー中や、入浴後の頭皮が温まっている時に頭皮マッサージを取り入れると、血行が促進され、毛根に栄養が届きやすくなります。
また、頭皮の緊張をほぐし、リラックス効果も期待できます。
マッサージの適切なタイミングと方法
シャンプーのついでに行う場合は、指の腹で頭皮全体を動かすように、下から上へ(襟足から頭頂部へ、こめかみから頭頂部へ)と引き上げるようにマッサージします。
時間は1〜2分程度で十分です。 お風呂上がりに行う場合は、頭皮が清潔な状態で、育毛剤などを塗布した後に行うとより効果的です。
両手の指の腹で頭全体を掴むようにし、頭皮をこするのではなく、「頭皮そのものを動かす」イメージで、ゆっくりと円を描いたり、押したり離したりを繰り返します。
| 頭皮マッサージのコツ | NGな方法 |
|---|---|
| 指の腹(指紋の部分)を使う | 爪を立てる(頭皮が傷つく) |
| 頭皮自体を動かすイメージで | 頭皮の表面を強くこする(摩擦) |
| 「痛気持ちいい」程度の圧で | 痛みを感じるほど強く押す |
Q&A
ワックスでのスタイリングや薄毛に関する、よくあるご質問にお答えします。日々のケアやスタイリングの参考にしてください。
- 毎日ワックスを使うと薄毛は進行しますか?
-
ワックス自体が直接的に薄毛を進行させる主な原因になることは考えにくいです。しかし、ワックスをつけた後にシャンプーでしっかり洗い流さず、頭皮に残留させてしまうと問題です。
ワックスの油分や汚れが毛穴に詰まり、頭皮環境が悪化すると、炎症や抜け毛の原因になる可能性があります。
使用した日は必ず正しくシャンプーし、頭皮を清潔に保つことが重要です。
- 薄毛カバーにスプレーやパウダーを併用しても良いですか?
-
はい、併用は効果的な方法の一つです。
ワックスで全体のシルエットを作った後、特に地肌が透けやすい頭頂部(O字型)や分け目などに、増毛スプレーや黒い繊維状のパウダー(増毛パウダー)を使うと、より自然にカバーできます。
ただし、これらもスタイリング剤ですので、使用後はワックス同様、シャンプーで丁寧に洗い流す必要があります。
- ワックスがうまく洗い流せません。コツはありますか?
-
ワックス、特にセット力の高いマットタイプやクレイタイプは落ちにくいことがあります。
シャンプー前に、まずはお湯で髪をしっかり濡らし、コンディショナーやトリートメントを少量、ワックスがついている部分に馴染ませる方法があります。
コンディショナーの油分がワックスの油分を浮かせ、その後のシャンプーで落ちやすくなります。
その後、一度お湯で流してから、通常通りシャンプー(必要なら2度洗い)を試してみてください。
- 美容室で薄毛が目立たないカットを相談するにはどうすれば良いですか?
-
美容師さんはヘアスタイルのプロですので、恥ずかしがらずに率直に相談するのが一番です。
「トップにボリュームが出にくい」「そり込みが気になる」など、具体的に悩んでいる箇所を伝えましょう。
その上で「薄毛が目立ちにくく、自分でもスタイリングしやすい髪型にしてほしい」とリクエストするのが良いです。
経験豊富な美容師さんなら、あなたの髪質や骨格、薄毛のタイプに合ったスタイルを提案してくれるはずです。
- スタイリングしやすい髪の長さはありますか?
-
薄毛をカバーする場合、極端に長くするよりは、短めのスタイルの方がスタイリングしやすく、清潔感も出やすいためおすすめです。
特に、サイドや襟足を短くし、トップに長さを残してボリュームを出す「ベリーショート」や「ソフトモヒカン」は、薄毛タイプ(M字、O字、U字)を問わず対応しやすい万能なスタイルです。
短くすることで、髪の重さによるボリュームダウンも防げます。
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