「最近、つむじ周りの髪の毛が薄くなってきたかも…」と鏡を見て不安に感じていませんか?
自分では直接見えにくい部分だけに、家族や友人からの視線が気になったり、「もしかしてO字はげが始まっているのでは?」と心配になることもあるでしょう。
その不安感、とてもよくわかります。この記事では、なぜつむじ周りの髪が薄く見えてしまうのか、その原因を一つひとつ掘り下げていきます。
そして、それが本当にO字はげのサインなのかを見極めるためのチェック方法から、今日からでも始められる具体的な対策まで、詳しく解説します。
原因を知り、ご自身の状態に合った正しいケアを行うことが、不安を和げ、健やかな髪を育むための第一歩です。一人で悩まず、まずはご自身の状態を正確に把握することから始めてみましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
つむじ周りの薄毛「O字はげ」とは
O字はげは、主に頭頂部、つまり「つむじ」周辺から円形(O型)に髪の毛が薄くなっていく脱毛のパターンのことを指します。
多くの男性が悩むAGA(男性型脱毛症)の典型的な進行パターンの一つであり、自分では気づきにくい場所から進行するため、発見が遅れがちになる傾向があります。
O字はげの基本的な定義
O字はげは、医学的には「頭頂部型脱毛症」と呼ばれることもあります。つむじを中心に、髪の毛が細く短くなり(軟毛化)、徐々に地肌が透けて見える範囲が広がっていきます。
初期段階では単につむじが広がって見える程度かもしれませんが、進行すると頭頂部全体の髪が失われ、側頭部や後頭部の髪だけが残る状態になることもあります。
これは、頭頂部の毛包がAGAの原因となる男性ホルモンの影響を受けやすいために起こると考えられています。
つむじが薄く見えるメカニズム
つむじは、もともと毛流れの中心であり、髪が放射状に生えているため、構造的に地肌が見えやすい部分です。健康な状態であっても、髪の量や生え方によっては薄く見えることがあります。
しかし、O字はげが進行する場合、この地肌の見え方が顕著になります。AGAが発症すると、特定の男性ホルモンが毛乳頭細胞に作用し、髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を乱します。
通常数年ある髪の「成長期」が数ヶ月から1年程度に短縮され、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。
この「成長期の短縮」と「毛包のミニチュア化(小さくなること)」が、つむじ周りの髪を細く、弱々しくさせ、結果として地肌が目立つようになるのです。
O字はげと他の脱毛症(M字・U字)との違い
AGAの進行パターンには個人差があり、O字はげ以外にも代表的なパターンが存在します。最も多いのが「M字はげ」(生え際型)で、前頭部の左右の生え際が後退していくパターンです。
また、「U字はげ」は、M字はげとO字はげが同時に進行し、最終的に両者がつながってU字型に髪が残る状態を指します。
O字はげは頭頂部から、M字はげは生え際からというように、薄毛が始まる「場所」に明確な違いがあります。ただし、これらは独立して起こるだけでなく、複合的に進行することも少なくありません。
どの年代から注意が必要か
O字はげを含むAGAは、一般的に20代後半から30代にかけて発症することが多いとされていますが、早い人では10代後半や20代前半からその兆候が現れることもあります。
発症の年齢や進行速度には個人差が大きいです。遺伝的な要因や生活習慣なども影響するため、「まだ若いから大丈夫」と過信するのは早計かもしれません。
つむじ周りのボリュームダウンや、髪質の変化(細く、柔らかくなった)を感じ始めたら、年齢に関わらず注意を払い、早期のケアを検討することが大切です。
あなたのつむじは本当に薄い?セルフチェック方法
「つむじが薄いかも」と感じても、それが生まれつきの毛流れによるものなのか、あるいは薄毛が進行しているサインなのかを自分で判断するのは難しいものです。
ここでは、ご自身のつむじの状態を客観的にチェックするためのいくつかの方法を紹介します。
正常なつむじと薄いつむじの見分け方
まず、正常なつむじと薄毛が疑われるつむじの違いを知ることが重要です。正常なつむじは、毛流れの中心ではありますが、周囲には太く健康な髪が密に生えており、地肌ははっきりと見えすぎません。
一方、薄毛が進行しているつむじは、地肌が見える範囲が通常よりも広く、その部分の髪の毛が細く、短く、弱々しくなっているのが特徴です。また、頭皮の色にも注目しましょう。
つむじの渦の向きと毛流れ
つむじには右巻き、左巻きといった個人差があり、中にはつむじが2つある人もいます。これらは生まれつきのものであり、渦の向きや数自体が直接薄毛の原因になるわけではありません。
ただし、つむじの形状によっては、光の当たり具合や髪のセット方法で地肌が目立ちやすく、薄く見えてしまうことがあります。
まずはご自身のつむじの「通常の状態」を把握することが、変化に気づく第一歩となります。
頭皮の色で判断する
健康な頭皮は、血行が良く、青白い色または透明感のある白色をしています。
しかし、薄毛が進行している、あるいは頭皮環境が悪化している場合、頭皮の色に変化が現れることがあります。
| 頭皮の色 | 状態 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 青白い・白色 | 健康な状態 | 血行が良好で、皮脂バランスも整っている。 |
| 赤色・ピンク色 | 炎症・トラブル | 日焼け、シャンプーの刺激、皮脂の酸化、乾燥など。 |
| 茶色・くすんだ黄色 | 血行不良・代謝低下 | ストレス、睡眠不足、喫煙、皮脂の酸化など。 |
つむじ周りの頭皮が赤みを帯びていたり、茶色くくすんでいたりする場合は、血行不良や炎症が起こっているサインかもしれません。
これらは毛髪の成長を妨げる要因となるため、注意が必要です。
鏡を使った確認のコツ
つむじは自分では直接見ることが難しいため、2枚の鏡(洗面台の鏡と手鏡など)を使って確認するのが一般的です。まず、洗面台の鏡に背を向けて立ち、手鏡を持って頭頂部を映します。
このとき、部屋の照明が明るすぎると地肌が光って見えやすくなるため、なるべく自然光に近い明るさの場所で、様々な角度からチェックするのがコツです。
正面からだけでなく、少し斜め上からなど、角度を変えて地肌の透け具合を確認しましょう。
写真撮影で変化を経過観察
セルフチェックで最も客観的で有効な方法の一つが、写真撮影です。鏡での確認は、その時々の光の加減や角度で印象が変わりやすいですが、写真であれば過去の状態と比較することが容易になります。
できれば、同じ場所、同じ照明、同じ角度で、1ヶ月ごとなど定期的に撮影することを推奨します。
スマートフォンで手軽に撮影できますが、フラッシュは焚かずに撮影する方が、地肌の反射を防ぎ、より正確な状態を記録できます。
撮影した写真を時系列で比較し、地肌の見える範囲が広がっていないか、髪の密度が低下していないかを確認しましょう。
抜け毛の本数と太さをチェック
つむじ周りの状態とあわせて、日々の抜け毛にも注目してください。健康な人でも1日に50本から100本程度の髪は自然に抜けています。
しかし、シャンプー時や朝起きた時の枕元の抜け毛が急に増えた場合は注意が必要です。また、本数だけでなく、抜け毛の「質」も重要です。
抜けた髪の毛を指でつまんでみて、細く短い毛や、毛根(毛球)が膨らんでいない、あるいは細く尖っている毛が多い場合は、ヘアサイクルが乱れ、髪が十分に成長しきれずに抜けている可能性があります。
これは、O字はげやAGAのサインであることも考えられます。
つむじ周りの髪が薄くなる主な原因
つむじ周りの薄毛が目立つようになる背景には、さまざまな原因が考えられます。
最も大きな要因としてAGA(男性型脱毛症)がありますが、それ以外にも日々の生活習慣や頭皮の状態が複雑に関係しています。
AGA(男性型脱毛症)の影響
成人男性の薄毛の多くはAGA(AndrogeneticAlopecia)が原因とされています。
これは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることから始まります。
このDHTが、頭頂部(つむじ周り)や前頭部の毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、毛母細胞の増殖を抑制し、髪の成長期を短縮させてしまいます。
結果として、髪は太く長く成長する前に抜け落ち、徐々に薄毛が進行していきます。O字はげは、このAGAの典型的な症状の一つであり、遺伝的な要因も強く関わっているとされています。
生活習慣の乱れと髪への影響
AGAとは直接関係がなくても、不規則な生活習慣は頭皮環境を悪化させ、髪の健やかな成長を妨げる要因となります。髪は、私たちが摂取した栄養素から作られ、睡眠中に成長が促されます。
そのため、生活習慣の乱れは薄毛のリスクを高めることにつながります。
睡眠不足
髪の毛の成長には「成長ホルモン」が深く関わっています。この成長ホルモンは、主に私たちが深い眠りについている間(特に就寝後数時間)に最も多く分泌されます。
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、毛母細胞の修復や分裂が十分に行われなくなります。このため、髪の成長が妨げられ、抜け毛や薄毛につながる可能性があります。
食生活
髪の毛は、そのほとんどが「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、日々の食事で良質なタンパク質を摂取することは非常に重要です。
また、タンパク質を髪の毛に合成する際には、亜鉛やビタミン類も必要となります。偏った食生活や過度なダイエットでこれらの栄養素が不足すると、健康な髪を作ることができなくなります。
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝を促し、皮脂分泌を調整 | 豚肉、レバー、マグロ、納豆 |
特に脂っこい食事やインスタント食品の摂りすぎは、皮脂の過剰な分泌を招き、頭皮環境を悪化させる原因にもなるため注意が必要です。
ストレス
精神的なストレスや身体的な疲労が蓄積すると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経のうち、交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。
頭皮の血行が悪くなると、髪の毛の成長に必要な栄養素や酸素が毛根まで十分に行き渡らなくなります。これが長期間続くと、毛母細胞の働きが低下し、抜け毛や薄毛を引き起こす一因となります。
頭皮環境の悪化(皮脂・乾燥)
健康な髪は、健康な頭皮から生えてきます。頭皮環境の悪化は、薄毛の直接的な原因となり得ます。
例えば、皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まりやすくなり、酸化した皮脂が雑菌の繁殖を招いて炎症(脂漏性皮膚炎など)を引き起こすことがあります。
逆に、頭皮が乾燥しすぎると、フケが発生しやすくなるだけでなく、外部からの刺激に弱い敏感な状態になり、かゆみや炎症を招くことがあります。
これらの頭皮トラブルは、いずれもヘアサイクルを乱し、抜け毛を増やす原因となります。
遺伝的要因はどの程度関係するか
AGAの発症には、遺伝的な要因が強く関与していることが分かっています。特に、男性ホルモンの影響の受けやすさ(DHTと結合する受容体の感受性)は、遺伝によって決まる部分が大きいです。
一般的に、母方の家系(母方の祖父や曽祖父)に薄毛の人がいる場合、その体質を受け継ぎやすいと言われることがありますが、父方からの遺伝ももちろん関係します。
ただし、遺伝的な素因があるからといって必ずしも薄毛になるわけではなく、あくまでも「なりやすさ」の問題です。
生活習慣やヘアケアなど、後天的な要因も大きく影響するため、遺伝だからと諦める必要はありません。
今すぐ始めたいO字はげへの対策
つむじ周りの薄毛が気になり始めたら、進行を食い止めるためにも、できるだけ早く対策を始めることが重要です。
AGAが原因である場合、セルフケアだけで完治させることは難しいかもしれませんが、生活習慣の見直しや適切なヘアケアは、頭皮環境を整え、薄毛の進行を遅らせる助けになります。
生活習慣の全面的な見直し
健やかな髪を育む土台は、日々の生活習慣の中にあります。食事、睡眠、運動、ストレス管理など、生活全般を見直すことが、薄毛対策の基本となります。
質の高い睡眠を確保する
前述の通り、髪の成長を促す成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されます。単に長く寝るだけでなく、「質の高い睡眠」をとることが大切です。
就寝前にスマートフォンやパソコンの画面を見るのを避け、リラックスできる環境を整えましょう。毎日決まった時間に就寝・起床するなど、規則正しい睡眠リズムを作ることも重要です。
最低でも6時間、できれば7〜8時間の睡眠時間を確保するように心がけましょう。
バランスの取れた食事
髪の材料となるタンパク質、それを助ける亜鉛、ビタミンB群などを中心に、バランスの取れた食事を心がけることが必要です。特定の食品ばかりを食べるのではなく、多様な食材から栄養を摂取しましょう。
一方で、以下のような食習慣は、皮脂の過剰分泌や血行不良を招きやすいため、控えるよう努めましょう。
| 避けたほうが良い食習慣 | 主な理由 |
|---|---|
| 高脂質・高カロリーな食事 | 皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる。 |
| 過度な飲酒・喫煙 | 血行不良を引き起こし、髪に栄養が届きにくくなる。 |
| インスタント食品・外食への偏り | 栄養バランスが偏りやすく、ビタミン・ミネラルが不足しがち。 |
適度な運動とストレス発散
日常生活でストレスを感じないようにするのは難しいですが、溜め込まないように工夫することが大切です。適度な運動は、全身の血行を促進するだけでなく、気分転換にもなり、ストレス発散に効果的です。
ウォーキングやジョギング、ストレッチなど、自分が続けやすい運動を生活に取り入れましょう。
また、趣味の時間を持つ、ゆっくり入浴するなど、自分なりのリラックス方法を見つけることも重要です。
正しいヘアケア方法の実践
毎日行うシャンプーも、やり方次第で頭皮環境を良くも悪くもします。頭皮を清潔に保ちつつ、必要な潤いを奪わない「正しいヘアケア」を実践しましょう。
シャンプーの選び方と洗い方
洗浄力の強すぎるシャンプーは、頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥やかえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
ご自身の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌、敏感肌など)に合った、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶことを推奨します。 洗い方も重要です。
まず、お湯で髪と頭皮を十分に予洗いし、汚れを浮かせます。シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。
爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つける原因になるため厳禁です。すすぎは、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて念入りに行いましょう。
頭皮マッサージのすすめ
シャンプー中や、お風呂上がりで血行が良くなっているタイミングでの頭皮マッサージは、頭皮の血流を促すのに効果的です。
指の腹を頭皮に密着させ、頭皮自体を動かすようなイメージで、つむじ周りや生え際などを優しく揉みほぐします。
ただし、強くこすりすぎたり、爪を立てたりすると逆効果になるため、力加減には注意が必要です。
育毛剤の活用
生活習慣の改善やヘアケアと並行して、育毛剤の使用を検討するのも一つの方法です。育毛剤は、頭皮環境を整え、毛髪の成長をサポートすることを目的とした医薬部外品です。
直接的な発毛効果はありませんが、抜け毛の予防や、今ある髪を健康に育てる助けとなります。
| 主な成分例 | 期待できる効果 |
|---|---|
| センブリエキス、ビタミンE誘導体 | 血行促進 |
| グリチルリチン酸ジカリウム | 抗炎症(フケ・かゆみを抑える) |
| ピロクトンオラミン | 殺菌(雑菌の繁殖を抑える) |
育毛剤には様々な種類があるため、ご自身の頭皮の状態や悩みに合った成分が配合されているものを選びましょう。
育毛剤選びで失敗しないためのポイント
育毛剤は、頭皮環境を整え、薄毛や抜け毛を予防するために有効なアイテムですが、種類が非常に多く、どれを選べば良いか迷ってしまう方も多いでしょう。
ご自身の状態に合わないものを選んでも、期待する効果は得られません。ここでは、育毛剤選びの際に押さえておきたいポイントを解説します。
自分の頭皮タイプに合わせる
育毛剤は毎日頭皮に直接塗布するものです。そのため、ご自身の頭皮タイプに合ったものを選ぶことが非常に重要です。
例えば、乾燥肌の方がアルコール(エタノール)の配合量が多いさっぱりタイプの育毛剤を使うと、乾燥がさらに進んでしまう可能性があります。
逆に、脂性肌の方が保湿力の高すぎるしっとりタイプの育毛剤を使うと、ベタつきを感じるかもしれません。
ご自身の頭皮が乾燥しがちなのか、皮脂が多いのか、あるいは敏感で刺激を感じやすいのかを把握し、それに合った処方の製品(低刺激、アルコールフリー、保湿成分配合など)を選びましょう。
配合されている有効成分に注目
育毛剤(医薬部外品)には、厚生労働省が効果・効能を認めた「有効成分」が配合されています。ご自身の悩みに合わせて、どのような有効成分が配合されているかを確認しましょう。
例えば、以下のような悩みと有効成分の組み合わせが考えられます。
- 頭皮の血行不良が気になる場合:センブリエキス、ビタミンE誘導体(酢酸トコフェロール)など
- フケやかゆみ、頭皮の炎症が気になる場合:グリチルリチン酸ジカリウム、ピロクトンオラミンなど
パッケージや公式サイトの成分表示を確認し、「血行促進」「抗炎症」「皮脂分泌の抑制」など、ご自身が期待する効果に合った成分が含まれているかチェックしましょう。
使い続けられる価格と使用感
育毛剤は、薬とは異なり、即効性を期待するものではありません。頭皮環境の改善やヘアサイクルを整えるためには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度、継続して使用することが推奨されます。
そのため、無理なく使い続けられる価格帯であることも大切な選定基準となります。
また、毎日使うものだからこそ、「使用感」も重要です。液だれしやすい、匂いがきつい、ベタつくなど、使用感が悪いと、だんだん使うのが面倒になってしまいがちです。
テクスチャ(とろみがあるか、さっぱりしているか)や香り、容器の使いやすさ(スプレータイプ、ノズルタイプなど)も考慮して、ストレスなく続けられるものを選びましょう。
発毛剤との違いを理解する
育毛剤と混同されやすいものに「発毛剤」があります。この二つは、目的も法的な分類も異なります。O字はげの対策を考える上で、この違いを正確に理解しておくことは非常に重要です。
| 項目 | 育毛剤 | 発毛剤(医療用医薬品・第1類医薬品) |
|---|---|---|
| 分類 | 医薬部外品 | 医薬品 |
| 主な目的 | 抜け毛予防、育毛(今ある髪を育てる) | 発毛(新しい髪を生やす) |
| 有効成分例 | センブリエキス、グリチルリチン酸など | ミノキシジル、フィナステリド(内服)など |
| 購入場所 | ドラッグストア、通販など | 薬剤師のいる薬局・ドラッグストア、クリニック処方 |
簡単に言えば、育毛剤は「頭皮環境を整えて、薄毛を予防する」守りのケア、発毛剤は「積極的に新しい髪を生やし、薄毛を改善する」攻めのケアと位置づけられます。
つむじ周りの薄毛が初期段階で、まずは予防や現状維持を目指したい場合は育毛剤、すでに薄毛が進行しており、明らかな改善を求める場合は発毛剤(または専門クリニックでの相談)が選択肢となります。
薄毛が気になるときのヘアスタイルと隠し方
つむじ周りの薄毛が気になり始めると、どうしても他人の視線が気になり、髪型でうまく隠したいと思うのは自然なことです。
しかし、隠し方を間違えると、かえって薄毛が目立ってしまったり、頭皮環境を悪化させたりする可能性もあります。
ここでは、薄毛をカバーしつつ、清潔感を保つためのヘアスタイルのポイントを紹介します。
薄毛を目立たせない髪型
O字はげを隠そうとして、周囲の長い髪を無理やり頭頂部に持ってこようとするのは逆効果です。風が吹いたり、動いたりしたときに不自然さが際立ち、清潔感も損なわれがちです。
薄毛を目立たせないための基本は、「トップ(頭頂部)とサイド(側頭部)の髪の長さのメリハリをつけすぎない」ことです。
サイドや襟足の髪が長いと、相対的にトップの薄さが強調されてしまいます。
おすすめは、サイドとバック(後頭部)を短く刈り上げ、トップの髪もある程度の短さを保つ「ショートヘア」や「ベリーショート」です。
全体的に短く整えることで、薄い部分と濃い部分の差が曖昧になり、自然にカモフラージュできます。また、トップの髪にパーマをかけてボリュームアップさせるのも一つの方法です。
信頼できる理容師や美容師に相談し、ご自身の髪質や頭の形に合ったスタイルを提案してもらうと良いでしょう。
スタイリング剤の選び方と注意点
スタイリング剤を使ってボリューム感を出すことも可能です。
ただし、選び方と使い方には注意が必要です。ワックスやジェルなどの油分が多いスタイリング剤を頭皮にべったりつけてしまうと、毛穴を詰まらせ、頭皮トラブルの原因となります。
O字はげのカバーには、重たいワックスよりも、マット(ツヤなし)タイプや、パウダー系のスタイリング剤、あるいはヘアスプレーなどが適しています。
スタイリング剤は毛先を中心につけ、頭皮には極力付着させないようにしましょう。そして、その日の終わりには必ずシャンプーでしっかりと洗い流すことが大切です。
スタイリング剤が頭皮に残ったままだと、雑菌の繁殖や炎症の原因となります。
やってはいけないNGヘアスタイル
薄毛を気にするあまり、以下のようなヘアスタイルをしてしまうと、かえって逆効果になることがあります。
- 周囲の長い髪を無理やり薄い部分にかぶせる(バーコードスタイル)
- サイドや襟足だけを長く伸ばし、トップの短さ・薄さを強調する
- 清潔感のない、伸びっぱなしの髪
不自然に隠そうとするよりも、短くさっぱりと整え、清潔感を保つことのほうが、周囲に与える印象はずっと良くなります。
薄毛を「隠す」ことよりも、「活かす」スタイルを見つけることを目指しましょう。
それでも改善しない場合は専門家へ相談
セルフケアで生活習慣を改善し、育毛剤を使用しても、つむじ周りの薄毛の進行が止まらない、あるいは悪化しているように感じる場合は、専門家への相談を検討するタイミングかもしれません。
特にAGAが原因である場合、セルフケアだけでの改善には限界があります。
皮膚科とAGAクリニックの違い
薄毛の相談先として、まず「皮膚科」が思い浮かぶかもしれません。
皮膚科では、頭皮の炎症やフケ、かゆみといった「頭皮トラブル」が原因の脱毛症(脂漏性皮膚炎など)については、保険診療の範囲で治療が可能です。
しかし、AGA(男性型脱毛症)の治療は、多くの場合、自由診療(保険適用外)となります。 一方、「AGAクリニック」は、その名の通りAGAの治療を専門に行うクリニックです。
AGAの進行度合いを診断し、内服薬(フィナステリド、デュタステリドなど)や外用薬(ミノキシジルなど)の処方を中心に、薄毛改善のための専門的なアプローチを行います。
どちらに行くべきか迷う場合は、まずはAGA専門のクリニックで、ご自身の薄毛の原因が何であるかを正確に診断してもらうのが良いでしょう。
専門クリニックでの主な対策法
AGAクリニックでは、主に以下のような対策法(治療法)が用いられます。これらは医師の診断のもとで行われる医療行為です。
1. 内服薬治療
AGAの原因であるDHTの生成を抑制する薬(フィナステリドやデュタステリド)を内服します。この作用によって、ヘアサイクルを正常に戻し、抜け毛を減らし、髪の毛を太く育てることを目指します。
AGA治療の基本となる方法です。
2. 外用薬治療
発毛成分である「ミノキシジル」を高濃度で配合した外用薬を頭皮に塗布します。ミノキシジルには血管を拡張して頭皮の血流を改善し、毛母細胞の働きを活性化させる作用があります。
内服薬と併用されることも多いです。
3. 注入治療(メソセラピーなど)
頭皮に直接、髪の成長に必要な栄養素や成長因子などを注入する治療法です。内服薬や外用薬の効果をサポートする目的で行われることがあります。
これらの治療は自由診療となるため、費用や期間について、事前にクリニックでよく説明を受けることが大切です。
相談するタイミングの目安
「いつクリニックに相談すべきか」と悩む方も多いでしょう。AGAは進行性の脱毛症であるため、基本的には「気になった時点」が最適なタイミングと言えます。
治療の開始が早ければ早いほど、髪の毛を維持しやすく、改善の効果も実感しやすいためです。
| 項目 | セルフケアを続ける | クリニック受診を検討 |
|---|---|---|
| 抜け毛 | 季節の変わり目などで一時的に増えた | 細く短い抜け毛が明らかに増え続けている |
| 地肌の透け | 髪型や光の加減で見える程度 | セルフチェック写真で明らかに範囲が拡大 |
| セルフケア | 始めたばかり、または効果を感じている | 6ヶ月以上続けても変化がない、悪化した |
上記のようなサインが見られたら、一度専門家の診断を受けることを強く推奨します。
ご自身の薄毛の原因を特定し、適切な対策法を知ることが、不安を解消する一番の近道となります。
よくある質問
- つむじが2つあると薄毛になりやすい?
-
つむじが2つ(あるいはそれ以上)あること自体が、直接的に薄毛やO字はげの原因になるという医学的な根拠はありません。
つむじが2つあると、毛流れが複雑になり、その部分の地肌が構造的に目立ちやすいため、「薄く見える」ことはありますが、それがAGAの進行しやすさとイコールではありません。
心配しすぎる必要はありませんが、他の人と同様に、髪質の変化などには注意を払いましょう。
- 育毛剤はいつから使い始めるべき?
-
育毛剤は、薄毛の「予防」や「頭皮環境の改善」を目的としています。
そのため、薄毛がかなり進行してから使うよりも、「最近、髪にコシがなくなってきた」「抜け毛が少し気になる」といった初期のサインを感じ始めた段階で使い始めるのが効果的です。
明確な年齢制限はありませんが、頭皮の状態が気になり始めたら、早めのケアとして取り入れることを検討しましょう。
- O字はげは自力で改善できますか?
-
O字はげの原因がAGAである場合、自力(セルフケアのみ)で「完治」させるのは非常に難しいです。AGAは進行性のため、放置すると薄毛は徐々に進んでいきます。
ただし、生活習慣の改善、正しいヘアケア、育毛剤の使用といったセルフケアは、進行を「遅らせる」、あるいは「頭皮環境を健やかに保つ」上で非常に重要です。
本格的な改善を目指す場合は、これらのセルフケアと並行して、専門クリニックでの治療を検討することが現実的な選択肢となります。
- 対策を始めてからどれくらいで変化を感じられますか?
-
髪の毛にはヘアサイクル(成長期・退行期・休止期)があるため、どのような対策(生活習慣の改善、育毛剤、クリニック治療)であっても、始めてすぐに劇的な変化が現れることはありません。
一般的に、頭皮環境の改善や抜け毛の減少、髪質の変化などを実感し始めるまでには、最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要です。焦らず、根気強くケアを続けることが何よりも大切です。
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