髪のボリュームやハリ・コシが気になり始め、「トリートメントで育毛ケアができないか?」と考えることはありませんか。
シャンプー後の習慣として使っている方も多いですが、その役割を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、トリートメントに育毛効果があるのか、育毛剤とは何が違うのかを詳しく解説します。トリートメントの本当の役割を知ることで、あなたの髪を健康に保つための正しいヘアケア方法がわかります。
結論から言うと、トリートメント自体に直接的な「育毛効果(髪を生やす効果)」はありませんが、頭皮環境や髪の状態を整え、育毛剤の働きをサポートする重要な役割を持っています。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
結論トリートメントに直接的な育毛効果は期待できない
トリートメントに、髪を新しく生やしたり、抜け毛を直接防いだりするような「育毛効果」はありません。その主な役割は、すでに生えている髪の毛をケアすることにあります。
多くの人が期待する「育毛」とは、毛根や頭皮に働きかけて発毛を促進したり、毛髪の成長サイクルを整えたりすることです。しかし、トリートメントはそこまで作用するようには設計されていません。
髪の健康維持には役立ちますが、育毛そのものを目的とする製品ではないことを理解することが大切です。
トリートメントの主な目的は「髪の補修」
トリートメントの最大の目的は、日々の生活でダメージを受けた「髪の毛の補修と保護」です。
紫外線、ドライヤーの熱、カラーリングやパーマ、ブラッシングによる摩擦など、髪は常にダメージの危険にさらされています。
トリートメントには、髪の内部に浸透して栄養分を補給したり、髪の表面をコーティングしてキューティクルを整えたりする成分が含まれています。
その結果、髪の手触りを良くし、ツヤを与え、枝毛や切れ毛を防ぐ助けとなります。あくまで「今ある髪」を美しく健康に保つためのケアアイテムです。
「育毛」と「髪の健康」は意味が違う
「育毛」と「髪の健康」は、似ているようで全く異なる概念です。「育毛」とは、頭皮環境を整えて、これから生えてくる髪を健康に育てること、または抜け毛を防ぐことを指します。
医薬部外品である「育毛剤」がこれにあたります。一方、「髪の健康」とは、主にすでに生えている髪(毛幹)の状態を指します。
ダメージがなく、水分と油分のバランスが取れ、ツヤやハリ・コシがある状態です。トリートメントは、この「髪の健康」を維持・改善するために使います。
育毛を目指す場合、頭皮(土壌)のケアと、髪(植物)のケアの両方が必要ですが、トリートメントが担当するのは後者です。
なぜ「育毛効果がある」と誤解されやすいのか
トリートメントを使うと、髪がサラサラになったり、ボリュームが出たりするため、「髪が増えた」「強くなった」と感じることがあります。これが、育毛効果があると誤解される一因です。
特に、髪にハリやコシを与えるタイプのトリートメントは、1本1本がしっかりするため、全体のボリュームアップ感を演出しやすいです。
また、頭皮環境を整える「スカルプトリートメント」も存在するため、「頭皮に使う=育毛」というイメージが結びつきやすいのかもしれません。
しかし、これらはあくまで髪の状態改善や頭皮環境の整備であり、発毛を促進する「育毛」とは区別して考える必要があります。
頭皮用トリートメントの役割
一般的なトリートメントは髪の毛専用ですが、中には「頭皮用」または「スカルプ用」と明記された製品もあります。これらのトリートメントは、髪だけでなく頭皮にも使用できます。
その主な役割は、頭皮の「保湿」と「柔軟化」です。健康な髪は健康な頭皮から育ちます。
頭皮が乾燥したり硬くなったりすると、血行不良や毛穴の詰まりを引き起こし、健康な髪の成長を妨げる可能性があります。
頭皮用トリートメントは、頭皮にうるおいを与えて柔らかく保ち、フケやかゆみを防ぐことで、育毛剤が浸透しやすい清潔で健康な頭皮環境を維持するサポートをします。
「トリートメント」と「育毛剤」根本的な違いを解説
トリートメントと育毛剤は、どちらもヘアケア製品ですが、その目的、作用する場所、法的な分類において根本的な違いがあります。
トリートメントは主に「髪の毛の補修・保護」を目的とし、育毛剤は「頭皮環境を整え、育毛・発毛を促進する」ことを目的とします。
これらの違いを理解せずに自己流のケアを続けると、期待した効果が得られないばかりか、かえって頭皮トラブルを招く可能性もあります。
それぞれの特性を正しく知り、適切に使い分けることが、健康な髪への第一歩です。

目的と役割の比較
トリートメントと育毛剤は、ヘアケアにおける担当分野が異なります。トリートメントは、すでに生えている髪(毛幹)のダメージを補修し、手触りやツヤを改善することが主な役割です。
いわば、髪の「美容液」や「保護クリーム」のような存在です。一方、育毛剤は、髪を生み出す「頭皮」と「毛根」に働きかけることを目的とします。
頭皮の血行を促進したり、毛母細胞に栄養を与えたりすることで、健康な髪が育つ土壌を整え、抜け毛を防ぎます。こちらは「土壌改良剤」や「肥料」に例えられます。
トリートメントと育毛剤の主な違い
| 項目 | トリートメント | 育毛剤 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 髪のダメージ補修・保護・保湿 | 育毛促進・抜け毛予防・発毛促進 |
| 主な作用場所 | 髪の毛(毛幹) | 頭皮・毛根 |
| 主な分類 | 化粧品 | 医薬部外品(または医薬品) |
作用する場所の違い
前述の通り、トリートメントが作用するのは主に「髪の毛」です。髪の表面をコーティングしたり、内部に補修成分を浸透させたりします。
頭皮に付着すると、その油分が毛穴を詰まらせる原因になることもあるため、通常は頭皮につかないように使用します(頭皮用を除く)。対して、育毛剤は「頭皮」に直接塗布して使用します。
有効成分を毛穴から浸透させ、毛細血管や毛根(毛母細胞)に届けることで効果を発揮します。育毛剤を髪の毛にだけつけても、期待する育毛効果は得られません。
この「髪につける」か「頭皮につける」かが、両者の最もわかりやすい違いの一つです。
医薬品・医薬部外品の分類
製品の法的な分類も、両者の違いを明確に示しています。日本国内において、トリートメント(リンス、コンディショナー含む)は、基本的に「化粧品」に分類されます。
化粧品の目的は「体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つ」ことです。つまり、効果・効能が比較的緩やかなものを指します。
一方、育毛剤の多くは「医薬部外品」に分類されます。これは「防止・衛生」を目的にし、厚生労働省が許可した有効成分が一定濃度で配合されている製品です。
さらに、より積極的な発毛効果を持つ成分(ミノキシジルなど)が配合されたものは「医薬品」に分類され、医師の処方や薬剤師の説明が必要となります。
使用するタイミングと頻度
使用するタイミングも異なります。トリートメントは、主にシャンプー後の濡れた髪に使用します。
シャンプーで汚れと余分な皮脂を落とした後、髪に水分が残っている状態で塗布し、成分を浸透させてから洗い流すのが一般的です。
製品によっては洗い流さないタイプ(アウトバストリートメント)もあります。一方、育毛剤は、頭皮が清潔な状態で使用するのが最も効果的です。
そのため、シャンプー後、タオルドライで髪と頭皮の水分をしっかり拭き取ってから(またはドライヤーで乾かしてから)頭皮に塗布し、マッサージするようになじませます。
育毛剤は洗い流す必要はありません。頻度も、トリートメントは毎日または数日に1回ですが、育毛剤は効果を持続させるために毎日1回または2回の使用を推奨する製品がほとんどです。
トリートメントが髪と頭皮を健康にする仕組み
トリートメントは直接的な育毛効果こそありませんが、髪と頭皮を健康に保つ上で重要な役割を果たします。
髪がひどく損傷していると、せっかく生えてきた髪も途中で切れてしまい、結果として髪が薄くなったように見えることもあります。
また、頭皮環境が悪化すれば、健康な髪そのものが育ちにくくなります。
トリートメントは、これらの問題を「補修」と「保護」、「保湿」という側面からサポートし、育毛剤が効果を発揮しやすい状態を維持するのに役立ちます。
髪のダメージ補修機能
髪の毛は、主にタンパク質(ケラチン)でできています。髪の表面はキューティクルというウロコ状の層で覆われており、内部のタンパク質や水分が流出しないように守っています。
しかし、カラーリングやパーマ、熱などでキューティクルが剥がれたり開いたりすると、内部の成分が流出し、髪はパサつき、枝毛や切れ毛(ダメージヘア)になります。
トリートメントには、ケラチンやアミノ酸、セラミドといった髪の構成成分に近い補修成分が含まれています。
これらが髪の内部に浸透し、ダメージホールを埋めることで、髪の強度や水分保持能力を一時的に回復させます。これにより、髪が切れにくくなり、健康な状態を保ちやすくなります。

キューティクルを保護し水分を保持する
トリートメントのもう一つの重要な機能は、髪の表面をコーティングすることです。
シリコン(ジメチコンなど)や植物性オイルといったコーティング成分が、開いたキューティクルを覆い、滑らかに整えます。
この働きによって、ブラッシング時の摩擦やドライヤーの熱といった外部からの刺激を軽減し、さらなるダメージを防ぎます。
また、キューティクルが整うことで、内部の水分や補修成分が再び流出するのを防ぎます。水分が保持された髪は、しなやかでまとまりやすく、ツヤも出ます。
このコーティング機能が、髪の手触りを即座に改善する理由です。
頭皮環境を整えるタイプもある
前述の通り、一般的なトリートメントは頭皮を避けて使いますが、「スカルプトリートメント」や「頭皮用トリートメント」は別です。
これらは頭皮に直接使用することを前提に作られており、育毛を考える男性にとって重要な選択肢となります。主な目的は、シャンプーで失われがちな頭皮の油分と水分を補い、「保湿」することです。
頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、かゆみやフケの原因となります。逆に皮脂が過剰になると毛穴詰まりにつながります。
スカルプトリートメントは、頭皮の油水分のバランスを整え、清潔で柔軟な状態を保つのに役立ちます。
頭皮の保湿と柔軟化
健康な頭皮は青白く、適度なうるおいと弾力があります。しかし、加齢やストレス、洗浄力の強すぎるシャンプーなどで乾燥し、硬くなってしまうことがあります。
頭皮が硬くなると、血流が悪くなり、毛根に十分な栄養が届きにくくなる可能性があります。これは、育毛にとって非常に不利な状態です。
頭皮用トリートメントに含まれる保湿成分(ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリンなど)や抗炎症成分(グリチルリチン酸2Kなど)は、頭皮にうるおいを与え、炎症を鎮め、柔らかくほぐす効果が期待できます。
育毛剤の浸透を妨げないよう、油分が少なくさっぱりとした使用感の製品が多いのも特徴です。
育毛剤が育毛をサポートする仕組み
育毛剤は、トリートメントとは異なり、頭皮と毛根に直接作用し、健康な髪の成長をサポート(育毛)し、抜け毛を防ぐことを目的としています。
医薬部外品として、厚生労働省に認められた有効成分が配合されており、その作用は多岐にわたります。
一つの製品で複数のアプローチを組み合わせていることが多く、頭皮の血行を促進したり、炎症を抑えたり、毛根の細胞に働きかけたりすることで、総合的に頭皮環境を改善し、髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を正常に保つことを目指します。
育毛剤の「育毛」とは?
育毛剤における「育毛」とは、主に「今ある髪を健康に育てる」ことと「抜け毛を防ぐ」ことを指します。髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクルがあります。
薄毛や抜け毛は、このヘアサイクルのうち「成長期」が短くなり、髪が太く長く成長する前に「退行期」や「休止期」に移行してしまうことで起こります。
育毛剤は、頭皮環境を整え、毛根に栄養を与えることで、この「成長期」をできるだけ長く維持し、髪がしっかりと育つようサポートする役割を持ちます。
なお、「発毛」は、毛が抜けた毛穴から新しい毛を生やすことを指し、主に「医薬品」の発毛剤が担う領域です。
頭皮の血行を促進する成分
髪の毛は、毛根にある毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで成長します。毛母細胞が活動するためには、毛細血管から送られてくる酸素と栄養素が必須です。
頭皮の血行が悪くなると、この栄養供給が滞り、毛母細胞の活動が低下して、髪が細くなったり、成長が止まってしまいます。
多くの育毛剤には、頭皮の血管を拡張させ、血流を改善するための成分が配合されています。この作用によって、毛母細胞への栄養補給をスムーズにし、活発な細胞分裂を促します。
主な血行促進成分の例
| 成分名 | 主な働き | 特徴 |
|---|---|---|
| センブリエキス | 毛細血管の拡張、血流促進 | 古くから使われる植物由来成分 |
| ビタミンE誘導体 | 末梢血管の血行促進 | 抗酸化作用も期待できる |
| ニコチン酸アミド | 血管拡張作用、代謝促進 | ビタミンB群の一種 |
頭皮の炎症を抑える成分
頭皮も皮膚の一部であり、皮脂の過剰分泌、乾燥、アレルギー、常在菌の異常繁殖などによって炎症を起こすことがあります。
頭皮に赤み、かゆみ、フケなどの炎症(脂漏性皮膚炎など)があると、それ自体が抜け毛の原因となったり、健康な髪の成長を妨げたりします。
育毛剤には、こうした頭皮の炎症を鎮め、フケやかゆみを防ぐための抗炎症成分や殺菌成分が配合されていることがよくあります。
頭皮を清潔で穏やかな状態に保つことも、育毛の重要な基盤となります。
毛母細胞の働きを助ける成分
育毛剤の中には、より直接的に毛根の細胞にアプローチする成分もあります。
例えば、毛母細胞の分裂を活性化させるとされる成分や、男性型脱毛症(AGA)の原因とされる男性ホルモンの影響をブロックするとされる成分(医薬部外品では効果は穏やか)などです。
これらの成分は、ヘアサイクルの「成長期」を維持し、髪が太く、長く成長するのを助けることを目指します。
育毛剤は、これらの多様な成分が組み合わさることで、多角的に頭皮と毛根に働きかけ、育毛をサポートします。
トリートメントと育毛剤の正しい併用方法
トリートメントと育毛剤は、それぞれ役割が異なるため、両方を正しく併用することで、より効果的なヘアケアが実現します。
トリートメントで「今ある髪」を補修・保護し、育毛剤で「これから生える髪」のための頭皮環境を整える、という二段構えです。
しかし、使い方を誤ると、互いの効果を妨げてしまう可能性があります。特に重要なのは「使用する順番」と「頭皮を清潔に保つこと」です。
それぞれの製品の特性を理解し、正しい手順でケアを行いましょう。
使用する順番が重要
トリートメントと育毛剤を併用する際、最も大切なのが順番です。基本的な流れは「シャンプー → トリートメント → (洗い流し) → タオルドライ → 育毛剤 → ドライヤー」となります。
トリートメントはシャンプーで開いたキューティクルを閉じ、髪を保護するために使います。その後、しっかりとタオルで水分を拭き取り、清潔になった頭皮に育毛剤を塗布します。
もし育毛剤を先に使ってしまうと、その後のトリートメントや洗い流しによって、せっかくの有効成分が頭皮から流れ落ちてしまいます。
必ず「育毛剤は、全ての洗い流すケアが終わった後、頭皮を乾かす前」と覚えてください。
基本的なヘアケアの順番
| ステップ | 使用アイテム | 目的・注意点 |
|---|---|---|
| 1. 洗浄 | シャンプー | 頭皮の汚れや皮脂を落とす。よく泡立て優しく洗う。 |
| 2. 補修・保護 | トリートメント | 髪のダメージを補修。頭皮を避け、髪に塗布し洗い流す。 |
| 3. 乾燥(タオル) | タオル | 頭皮と髪の水分を優しく拭き取る。ゴシゴシ擦らない。 |
| 4. 育毛ケア | 育毛剤 | 清潔な頭皮に直接塗布し、指の腹でマッサージする。 |
| 5. 乾燥(ドライヤー) | ドライヤー | 頭皮を先に乾かし、その後髪を乾かす。熱を当てすぎない。 |

育毛剤は清潔な頭皮に使う
育毛剤の有効成分を毛根にしっかり届けるためには、頭皮が清潔であることが大前提です。
シャンプーで皮脂、汗、ホコリ、整髪料などの汚れをきちんと落とし、毛穴が詰まっていない状態にする必要があります。
汚れが残っていると、それがバリアとなってしまい、育毛剤の浸透が妨げられます。ただし、洗浄力が強すぎるシャンプーで頭皮に必要な皮脂まで奪ってしまうと、乾燥や過剰な皮脂分泌を招くため逆効果です。
自分の肌質に合った、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選び、丁寧に洗うことが重要です。
トリートメントが毛穴に詰まらないように注意
併用時に最も注意すべき点の一つが、トリートメントの「すすぎ残し」です。
特にシリコンなどのコーティング成分を含むトリートメントが頭皮に残り、毛穴を塞いでしまうと、頭皮の呼吸が妨げられたり、炎症の原因になったりします。
さらに、毛穴が塞がっていると、その上から育毛剤を塗布しても、有効成分が奥まで浸透できません。
トリートメントを使用する際は、頭皮に直接つかないよう髪の中間から毛先を中心になじませ、洗い流す際は、髪の生え際や襟足などにぬめり感がなくなるまで、しっかり(しかし優しく)すすぐことを徹底してください。
メーカー推奨の使用方法を確認する
トリートメントや育毛剤は、製品によって配合成分や推奨される使用方法が異なる場合があります。
例えば、洗い流さないトリートメント(アウトバストリートメント)の場合、育毛剤を塗布した「後」に、毛先を中心に使用するのが一般的です。
また、頭皮用トリートメントの場合は、頭皮マッサージを推奨している製品もあります。
自己流で判断せず、購入した製品のパッケージや説明書に記載されている「使用方法」「使用上の注意」を必ず読み、メーカーが推奨する手順を守ることが、安全かつ効果的にケアを行うための鍵となります。
健康な髪を育むためのトリートメント選び
トリートメントに直接の育毛効果はないものの、髪をダメージから守り、健康な状態を維持することは、育毛環境を整える上で非常に重要です。
せっかく育毛剤で頭皮ケアをしても、生えてきた髪がすぐに切れてしまっては意味がありません。
自分の髪質や現在の悩みに合ったトリートメントを選ぶことで、髪を保護し、見た目の印象も改善することができます。
成分やタイプ、頭皮への影響などを考慮して、最適な一本を見つけましょう。
自分の髪質や悩みに合わせる
トリートメントは、ターゲットとする悩みによって配合成分のバランスが異なります。
例えば、髪が乾燥してパサつく人は保湿成分(ヒアルロン酸、セラミド、グリセリンなど)が豊富なものを、髪が細くボリュームが出ない人はハリ・コシを与える成分(ケラチン、コラーゲンなど)が配合されたものを選ぶと良いでしょう。
自分の髪がどのような状態なのか(乾燥毛、ダメージ毛、軟毛、剛毛など)を把握し、パッケージに書かれた「しっとり」「さらさら」「ボリュームアップ」などの表記を参考に選ぶことが基本です。
悩みが複数ある場合は、最も改善したい点を優先しましょう。

髪の悩み別トリートメント選びの目安
| 髪の悩み | 主な原因 | 注目したい成分・タイプ |
|---|---|---|
| パサつき・乾燥 | 水分不足、キューティクルの開き | 保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸)、オイル系 |
| 枝毛・切れ毛 | ダメージによるタンパク質流出 | 補修成分(ケラチンPPT、アミノ酸) |
| ボリューム不足 | 髪が細い、ハリ・コシがない | ハリ・コシ成分(コラーゲン、加水分解シルク) |
配合されている補修成分で選ぶ
髪のダメージが深刻な場合は、どのような補修成分が含まれているかに注目します。
髪の主成分であるケラチンを補給できる「加水分解ケラチン(PPT)」や、髪の内部で水分を抱え込む「セラミド」、アミノ酸(アルギニン、グリシンなど)は、代表的な補修成分です。
また、「ヘマチン」は、カラーやパーマのアルカリを除去し、ケラチンと結合して髪を強化する効果が期待できるため、施術後のダメージケアに適しています。
これらの成分が成分表示の上位(配合量が多いことを示す)に来ているかどうかも、製品選びの参考になります。
頭皮ケアも考えるなら「スカルプ」タイプ
育毛剤との併用を前提とするならば、「スカルプトリートメント(頭皮用トリートメント)」を選ぶのは賢明な選択です。
これらの製品は、頭皮の保湿や抗炎症を目的とした成分(グリチルリチン酸2K、センブリエキスなど、育毛剤と共通する成分が少量配合されることもあります)を含みつつ、毛穴を詰まらせにくいように油分が調整されています。
頭皮をマッサージしながら使用できるものも多く、血行促進の助けにもなります。
頭皮の乾燥やフケ、かゆみが気になる人は、シャンプーだけでなくトリートメントも頭皮ケアができるタイプに切り替えることを検討してみましょう。
シリコン?ノンシリコン?
一時期、「ノンシリコン」がブームになりましたが、シリコン(ジメチコン、シクロメチコンなど)が悪というわけではありません。
シリコンは髪をコーティングし、指通りを滑らかにし、摩擦や熱から髪を守る非常に優れた成分です。手触りの改善やツヤ出し効果は即座に実感できます。
ただし、そのコーティング力が強すぎると、髪が重くなったり、頭皮に残ると毛穴詰まりの原因になったりする可能性が指摘されます。
一方、ノンシリコンは仕上がりが軽く、ふんわりしやすいのが特徴ですが、シリコンの代わりに別のコーティング成分(オイルやポリマー)が使われていることが多く、髪のきしみが気になる場合もあります。
育毛剤の使用を考えると、頭皮に残留しにくいノンシリコン、または洗い残しのないよう細心の注意を払ってシリコン入りを使用するか、ライフスタイルや髪質に合わせて選ぶと良いでしょう。
シリコン・ノンシリコンの特徴比較
| 項目 | シリコントリートメント | ノンシリコントリートメント |
|---|---|---|
| メリット | 指通り滑らか、ツヤが出る、熱や摩擦から保護 | 仕上がりが軽い、ふんわりする、頭皮に残りづらい |
| デメリット | 頭皮に残ると毛穴詰まりの可能性、髪が重くなりやすい | 髪がきしみやすい場合がある、ダメージ保護力が弱いことも |
| おすすめの人 | 髪のダメージが強い、手触りやツヤを重視したい | 髪が細くボリュームが出にくい、頭皮環境を重視したい |
育毛を目指すならトリートメント以外の生活習慣も重要
育毛剤やトリートメントを使った外側からのケアは重要ですが、それだけで健康な髪が育つわけではありません。髪は体の一部であり、その成長は日々の生活習慣と密接に結びついています。
特に「食事」「睡眠」「ストレス管理」は、髪の土台となる体全体の健康状態を左右する三大要素です。これらの内側からのケアが整ってこそ、育毛剤などの外側からのケアが真価を発揮します。
ヘアケア製品に頼るだけでなく、自分の生活全体を見直すことが、遠回りのようで一番の近道です。
バランスの取れた食生活
髪の毛は、そのほとんどが「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)の摂取は必須です。
しかし、タンパク質だけでは髪は作られません。摂取したタンパク質を体内でケラチンに再合成する際には、「亜鉛」(牡蠣、レバー、ナッツ類)が補酵素として必要です。
また、頭皮の血行を促進し、毛母細胞に栄養を届けるためには、「ビタミンE」(アーモンド、アボカド)や「ビタミンB群」(豚肉、マグロ、玄米)が役立ちます。
特定の食品に偏るのではなく、これらの栄養素をバランス良く含む「まごわやさしい(豆・ごま・わかめ・野菜・魚・しいたけ・いも)」を意識した食事が理想です。
質の高い睡眠
髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。特に、入眠後最初の深いノンレム睡眠時(いわゆる「ゴールデンタイム」)に最も多く分泌されると言われています。
睡眠時間が不足したり、眠りが浅かったりすると、成長ホルモンの分泌が減少し、毛母細胞の分裂や修復が十分に行われません。
これが髪の成長を妨げ、抜け毛を増やす原因となります。
毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きる規則正しい生活を心がけ、寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の「質」を高める工夫が必要です。
睡眠の質を高めるヒント
- 就寝1〜2時間前に入浴し、体温を一度上げてから下げる
- 寝室の照明を暗くし、静かで快適な温度・湿度を保つ
- カフェインやアルコールの摂取は就寝の数時間前から避ける
ストレスの管理
過度な精神的ストレスは、自律神経のバランスを乱します。自律神経のうち「交感神経」が優位になると、血管が収縮し、頭皮の血流が悪化します。
血流が悪くなれば、毛根に届く栄養が減り、髪の成長にブレーキがかかります。また、ストレスはホルモンバランスの乱れにもつながり、皮脂の過剰分泌を引き起こして頭皮環境を悪化させることもあります。
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分なりの解消法(趣味の時間を持つ、適度な運動をする、リラックスできる時間を作るなど)を見つけ、溜め込まないように管理することが大切です。
軽いウォーキングなどの有酸素運動は、血行促進とストレス解消の両方に効果的です。
正しいシャンプー方法
毎日のシャンプーは、頭皮環境を清潔に保つ基本ですが、方法を間違えると頭皮を傷つけ、乾燥や炎症の原因となります。
育毛を考えるなら、「洗いすぎない」ことと「優しく洗う」ことが鉄則です。熱すぎるお湯は頭皮の保湿成分を奪うため、38度程度のぬるま湯を使います。
シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけ、指の腹を使ってマッサージするように優しく洗います。爪を立てるのは厳禁です。
そして、最も重要なのが「すすぎ」です。シャンプー剤や汚れが残らないよう、時間をかけて丁寧に洗い流しましょう。
正しいシャンプーの基本手順
| 手順 | ポイント | 目的 |
|---|---|---|
| 予洗い | ぬるま湯で1〜2分、頭皮と髪をしっかり濡らす | ホコリや軽い汚れの7割を落とし、泡立ちを良くする |
| シャンプー | 手のひらで泡立て、指の腹で頭皮をマッサージ洗い | 頭皮の毛穴汚れを落とす。髪は泡で包む程度で十分 |
| すすぎ | シャンプーの倍の時間をかけ、生え際や襟足まで | 洗浄成分や汚れを完全に洗い流し、頭皮トラブルを防ぐ |
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Q&A
- トリートメントは毎日使った方が良い?
-
製品によりますが、一般的なデイリーユースのトリートメント(コンディショナーやリンスに近いもの)は、シャンプーのたびに毎日使用することが推奨されます。
一方、内部補修成分が濃厚なヘアマスクや集中ケアタイプのトリートメントは、週に1〜2回の使用で十分な場合があります。
毎日使うとかえって髪が重くなったり、コストパフォーマンスが悪くなったりすることもあります。製品に記載されている推奨使用頻度を確認してください。
- 育毛剤を使っていればトリートメントは不要?
-
いいえ、役割が違うため併用をおすすめします。育毛剤は「頭皮」をケアし、これから生える髪を育むものです。
トリートメントは「すでに生えている髪」をダメージから守り、補修するものです。育毛剤で健康な髪を育てようとしても、生えている髪がダメージで切れてしまっては意味がありません。
髪のダメージが気になる方、髪を伸ばしている方は特に、トリートメントで髪の毛自体を保護するケアも行うことが重要です。
- リンスやコンディショナーとの違いは?
-
これらには厳密な定義はありませんが、一般的に以下のように区別されます。「リンス」は主に髪の表面をコーティングし、指通りを良くするものです。
「コンディショナー」も同様に表面保護が主ですが、リンスよりもうるおいを保つ機能が高いとされます。
「トリートメント」は、髪の表面保護に加え、髪の「内部」に補修成分や栄養を浸透させる機能を持つものを指すことが多いです。
つまり、補修機能の強さで「トリートメント > コンディショナー ≧ リンス」とされる傾向があります。
- トリートメントが頭皮についても大丈夫?
-
「頭皮用」「スカルプ用」と明記されている製品以外は、頭皮につけない方が賢明です。
一般的な髪用のトリートメントには、髪の手触りを良くするための油分やコーティング成分(シリコンなど)が多く含まれています。
これらが頭皮の毛穴に詰まると、かゆみ、フケ、ニキビなどの頭皮トラブルや、炎症を引き起こす可能性があります。毛穴が詰まれば、育毛剤の浸透も妨げられます。
髪の中間から毛先につけ、頭皮には極力触れないように注意しましょう。

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