ふと鏡を見たとき、以前と比べて髪のハリやコシが失われた、あるいはボリュームダウンが気になる…。そんな悩みを抱える男性は少なくありません。
食生活や生活習慣が原因かもしれないとは思いつつ、忙しい毎日ですべてを完璧にこなすのは難しいものです。「髪サプリ」を検索する男性が増えている背景には、こうした切実な悩みがあります。
この記事では男性の髪質改善を目指す方々が自分に合ったサプリメントを賢く選ぶための基礎知識から、具体的な成分、選び方のポイント、そして生活習慣の重要性までを分かりやすく解説します。
栄養面からのアプローチで自信の持てる髪を目指す第一歩を踏み出しましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
なぜ男性の髪質改善にサプリメントが注目されるのか
サプリメントが注目されるのは、食生活だけでは不足しがちな髪の健康維持に必要な栄養素を手軽に補給できるためです。
忙しい現代社会において栄養バランスの取れた食事を毎日続けることは難しく、サプリメントはその不足分を補う有効な手段として認識されています。
現代男性の食生活と栄養バランスの課題
現代の男性、特に働き盛りの世代は外食やコンビニ食、加工食品に頼る機会が多くなりがちです。
こうした食生活は脂質や糖質、塩分が過剰になる一方で、ビタミンやミネラル、良質なタンパク質が不足しやすい傾向にあります。
髪の毛は「ケラチン」というタンパク質を主成分としており、その合成には亜鉛やビタミンB群といった多様な栄養素が必要です。
栄養バランスが崩れると髪の成長に必要な材料が不足し、髪が細くなったり、ハリやコシが失われたりする原因となります。
また、過度な飲酒や喫煙も特定の栄養素の吸収を妨げたり、消費を早めたりするため、髪質に悪影響を与える要因となります。
髪の健康維持に必要な基本的な栄養素
髪の健康を維持するためには特定の栄養素だけを摂取するのではなく、体全体の栄養状態を良好に保つことが重要です。
髪は体の一部であり、生命維持に直接関わる臓器への栄養供給が優先されるため、栄養が不足すると真っ先に影響が出やすい部分でもあります。
まず、主成分であるタンパク質(アミノ酸)は欠かせません。特にケラチンの構成要素となるL-システインやメチオニンは重要です。
次にタンパク質の代謝を助け、頭皮の健康を保つビタミンB群(特にビオチン、B2、B6)が必要です。さらに、ケラチンの合成をサポートし、細胞分裂を正常に保つミネラルである亜鉛も不可欠です。
これらの栄養素が一つでも欠けると、健康な髪の育成は難しくなります。
AGA(男性型脱毛症)と栄養の関係性
AGA(男性型脱毛症)は、主に遺伝的要因と男性ホルモン(DHT:ジヒドロテストステロン)の影響によって引き起こされる進行性の脱毛症です。
栄養不足がAGAの直接的な原因になるわけではありませんが、頭皮環境や髪の成長サイクルに深く関わっています。
例えば、栄養状態が悪化するとヘアサイクル(毛周期)が乱れ、成長期が短くなる可能性があります。その結果、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、薄毛が目立つようになります。
AGAの進行を抑えるには専門的な治療が必要ですが、その土台となる頭皮や髪の健康を維持するために、バランスの取れた栄養状態を保つことは非常に重要です。
サプリメントは、その土台作りをサポートする役割を担います。
サプリメントが果たす役割と限界
サプリメントは、あくまで「栄養補助食品」であり、医薬品ではありません。
その最大の役割は日常の食事だけでは十分に摂取できない栄養素を補い、髪の成長に必要な体内環境を整える「サポート」をすることです。
栄養不足が原因で起こっている髪質の低下(細毛、パサつきなど)に対しては、栄養を補うことで改善が期待できる場合があります。
しかし、サプリメントだけでAGAの進行を完全に止めたり、失われた髪を劇的に再生させたりすることはできません。AGAの根本的な対策には医療機関での診断と適切な治療が必要です。
サプリメントは治療の効果を高めるための補助的な手段、あるいは将来的な髪の健康を維持するための予防的な手段として位置づけるのが適切でしょう。
「髪サプリ男性」が知るべき髪の悩みと原因
男性特有の髪の悩みは主に遺伝的要因やホルモンバランス、そして日々の生活習慣の乱れが複雑に絡み合って引き起こされます。自分の悩みの原因を知ることが、適切な対策の第一歩となります。
薄毛や抜け毛の主な要因
男性の薄毛や抜け毛の悩みで最も多いのがAGA(男性型脱毛症)です。
これは男性ホルモンのテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合することで髪の成長期を短縮させてしまうために起こります。
髪が太く成長する前に抜けてしまうため、徐々に薄毛が進行します。この感受性は遺伝的な要素が強いとされています。
AGA以外にもストレスによる血行不良、過度なダイエットや偏食による栄養不足、睡眠不足などもヘアサイクルを乱し、抜け毛を増やす要因となります。
髪のハリ・コシが失われる理由
髪のハリやコシは髪の内部構造、特にコルテックスと呼ばれる部分の状態に左右されます。コルテックスは髪の約85%~90%を占める主成分であり、ケラチンタンパク質が繊維状に詰まっています。
加齢に伴い、このケラチンタンパク質を生み出す毛母細胞の働きが低下すると、髪が細くなる「菲薄化(ひはくか)」が起こります。髪が細くなれば、当然ながらハリやコシは失われていきます。
また、栄養不足、特にタンパク質や亜鉛が不足すると良質なケラチンの生成が妨げられます。血行不良によって毛母細胞に十分な栄養が届かない場合も同様です。
頭皮環境の悪化が髪に与える影響
健康な髪は健康な頭皮という「土壌」から育ちます。頭皮環境が悪化すると、髪の成長に直接的な悪影響を及ぼします。
頭皮の乾燥とフケ
頭皮が乾燥するとバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になります。乾燥が進むと頭皮のターンオーバー(新陳代謝)が乱れ、未熟な角質が剥がれ落ちる「乾燥性フケ」が発生しやすくなります。
フケが毛穴に詰まると炎症の原因となり、健康な髪の育成を妨げます。洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、熱すぎるお湯での洗髪、エアコンによる空気の乾燥などが主な原因です。
頭皮の皮脂過剰とべたつき
逆に、皮脂が過剰に分泌されると頭皮がべたつき、毛穴が詰まりやすくなります。過剰な皮脂は頭皮の常在菌であるマラセチア菌の異常繁殖を招き、「脂漏性皮膚炎」を引き起こすことがあります。
これにより、かゆみや炎症、「脂性フケ」が発生し、抜け毛の原因ともなります。
脂質の多い食事、ストレス、不規則な生活、間違ったヘアケア(洗いすぎによる乾燥の反動)などが皮脂過剰を招きます。
男性の髪の悩みと主な原因
| 髪の悩み | 主な原因 | 関連する要因 |
|---|---|---|
| 薄毛・抜け毛 | AGA(男性ホルモンの影響)、遺伝 | ストレス、栄養不足、睡眠不足 |
| ハリ・コシの低下 | 加齢による菲薄化、栄養不足 | 血行不良、タンパク質不足 |
| 頭皮環境の悪化 | 乾燥、皮脂過剰、炎症 | 不適切なヘアケア、食生活の乱れ |
ストレスや生活習慣が髪質に及ぼす影響
心身のストレスは、髪の健康に多大な影響を与えます。強いストレスを感じると自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になります。これにより血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。
血流が悪くなると毛母細胞に酸素や栄養素が十分に行き渡らなくなり、髪の成長が妨げられ、髪質が低下したり、抜け毛が増えたりします。
また、睡眠不足も同様です。髪の成長に重要な「成長ホルモン」は主に深い睡眠中に分泌されます。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると成長ホルモンの分泌が減少し、髪の修復や成長が滞ってしまいます。
喫煙も血管を収縮させ、血流を悪化させる大きな要因です。
髪質改善を目指す男性が注目すべきサプリメント成分
髪質改善のためには髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)の合成を助ける成分や、頭皮環境を整える成分、そしてAGAの原因にアプローチする成分が重要です。
これらをバランス良く摂取することが求められます。
亜鉛の役割と重要性
亜鉛は体内の様々な酵素の働きを助ける必須ミネラルです。髪にとってはタンパク質の合成、特にケラチンを生成する上で極めて重要な役割を担います。
また、細胞分裂を正常に保つ働きもあり、毛母細胞が分裂して髪が成長するサイクルをサポートします。
亜鉛が不足するとケラチンの合成がうまくいかず、髪が細くなったり、抜け毛が増えたりする可能性があります。さらに、亜鉛にはAGAの原因となる5αリダクターゼの働きを抑制する可能性も示唆されています。
汗や尿とともに排出されやすく、インスタント食品や加工食品の摂取が多いと不足しがちなため、意識的な摂取が必要です。
髪の健康維持に必要な栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 不足時の影響 |
|---|---|---|
| タンパク質(アミノ酸) | 髪の主成分(ケラチン)の材料 | 髪の菲薄化、ハリ・コシの低下 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成サポート、細胞分裂促進 | 抜け毛、髪質の低下 |
| ビタミンB群 | タンパク質の代謝、頭皮環境の維持 | フケ、かゆみ、皮脂の過剰分泌 |
ノコギリヤシ(ソーパルメット)とは
ノコギリヤシ(ソーパルメット)は、北米南東部に自生するヤシ科の植物です。その果実から抽出されるエキスは、古くから男性の健康維持、特に前立腺肥大のケアに用いられてきました。
近年、このノコギリヤシエキスがAGAの原因となる5αリダクターゼの働きを阻害する可能性が研究で示され、注目を集めています。
5αリダクターゼの働きを抑えることでDHTの生成を減少させ、ヘアサイクルの乱れを防ぎ、抜け毛や薄毛の進行を緩やかにする効果が期待されています。
多くの男性向け髪サプリに配合されているのは、この働きを期待してのことです。ただし、医薬品のような強い作用ではなく、あくまでサポート的な役割と考えるべきでしょう。
ケラチンとアミノ酸(L-リジン、L-システインなど)
髪の約90%はケラチンというタンパク質で構成されています。ケラチンは18種類のアミノ酸から成り立っており、特に重要なのが「L-システイン」です。
L-システインは、髪の強度や弾力を保つために重要な「シスチン結合(S-S結合)」を形成する含硫アミノ酸です。
食事から摂取したタンパク質が体内でアミノ酸に分解され、それが再合成されてケラチンになります。
また、「L-リジン」も必須アミノ酸の一つで、ケラチンの生成を助けたり亜鉛の吸収を高める働きもあるとされています。
サプリメントでこれらのアミノ酸やケラチンそのものを(加水分解ケラチンとして)摂取することは、髪の材料を直接的に補給することにつながります。
注目のサポート成分(ノコギリヤシなど)
| 成分名 | 期待される主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| ノコギリヤシ | 5αリダクターゼの働きをサポート | 男性特有の悩み(AGA)へのアプローチ |
| イソフラボン | 女性ホルモン様作用、5αリダクターゼ抑制補助 | 大豆などに含まれるポリフェノール |
| カプサイシン | 血行促進、IGF-1(成長因子)の産生促進 | 唐辛子などに含まれる辛味成分 |
ビタミン群(ビオチン、ビタミンB群、ビタミンE)
ビタミン類は髪の成長を陰で支える重要な役割を果たします。特にビタミンB群はエネルギー代謝やタンパク質の代謝に不可欠です。
ビタミンB2は皮脂の分泌をコントロールし、頭皮環境を整えます。ビタミンB6はタンパク質の分解・合成を助け、亜鉛の働きもサポートします。
ビオチンは皮膚や粘膜、そして髪の健康維持に深く関わり、ケラチンの生成を助ける働きがあります。
また、ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用を持ちます。頭皮の血行を促進し、毛細血管を広げて毛母細胞への栄養供給をスムーズにする働きが期待できます。
ミネラル類(鉄、セレンなど)
亜鉛以外にも髪の健康に必要なミネラルがあります。鉄は血液中のヘモグロビンの構成成分であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担います。頭皮の毛母細胞も活動するために多くの酸素を必要とします。
鉄が不足すると毛母細胞が酸欠状態となり、細胞分裂が滞り、髪の成長に影響が出ます。特に日本人男性は、食生活によっては鉄が不足しがちな場合があります。
セレンはビタミンEと同様に強い抗酸化作用を持つミネラルです。活性酸素による頭皮の老化を防ぎ、健康な頭皮環境を維持するのに役立ちます。
ただし、セレンは過剰摂取にも注意が必要なため、バランスが重要です。
自分に合った男性向け髪サプリの選び方
サプリメントを選ぶ際は自分の髪の悩みの原因を考慮し、目的に合った成分が含まれているか、そして安全に継続できるかを総合的に判断することが大切です。
市場には多くの製品があるため、賢い選択眼が求められます。
目的別サプリメントの選び方(薄毛、ハリ・コシ、頭皮環境)
まず、自分の主な悩みが何であるかを明確にします。
AGAが疑われ、抜け毛や薄毛の進行を緩やかにしたいと考えるなら、ノコギリヤシや亜鉛、イソフラボンなどが配合されたサプリメントが選択肢になります。
これらの成分はAGAの原因となる5αリダクターゼへのアプローチを目的としています。
一方で、髪のハリやコシが失われてきた、髪が細くなったと感じる場合は、髪の材料となるケラチンやアミノ酸(L-システイン、L-リジンなど)、その合成を助ける亜鉛やビタミンB群が豊富な製品が適しているでしょう。
頭皮の乾燥やフケ、かゆみが気になる場合は頭皮環境を整えるビタミンB2、B6、ビオチン、ビタミンEなどに注目します。
悩み別サプリメント選びのポイント
| 主な悩み | 注目したい成分群 | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| 抜け毛・薄毛(AGA懸念) | ノコギリヤシ、亜鉛、イソフラボン | 5αリダクターゼへのアプローチを重視 |
| ハリ・コシの低下、細毛 | ケラチン、アミノ酸、亜鉛、ビタミンB群 | 髪の材料補給と合成サポートを重視 |
| 頭皮環境(フケ・かゆみ) | ビタミンB2, B6、ビオチン、ビタミンE | 皮脂バランスと血行促進を重視 |
成分表示(含有量)のチェックポイント
サプリメントを選ぶ際、どのような成分がどれだけ含まれているかを確認することは非常に重要です。
成分名が記載されていても、含有量が微量であれば期待する効果は得られません。特に亜鉛やノコギリヤシなど、主目的とする成分の含有量は必ずチェックしましょう。
亜鉛であれば、1日の摂取目安量として10mg~15mg程度が含まれているかが一つの基準となります(耐容上限量に注意)。
ノコギリヤシエキスについては研究で用いられることが多い320mg程度を目安にすると良いでしょう。また、成分表示は含有量の多い順に記載されるのが一般的です。
複数の成分が含まれる場合、目的の成分がリストのどの位置にあるかも参考になります。
安全性と品質(GMP認定工場など)
サプリメントは毎日口にするものなので、安全性と品質の確保は絶対条件です。信頼できる製品を選ぶ基準として、「GMP(Good Manufacturing Practice)」認定工場で製造されているかどうかが挙げられます。
GMPは原材料の受け入れから製造、出荷に至るまでの全工程において製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造工程管理基準です。
この認定を受けている工場で製造された製品は品質管理が徹底されていると考えられます。
また、香料、着色料、保存料などの不要な添加物が極力使用されていない製品を選ぶことも、長期的に摂取する上で安心材料となります。
品質チェック項目
- GMP認定工場での製造か
- 不要な添加物(香料・着色料・保存料)が少ないか
- 主要成分の含有量が明記されているか
継続しやすい価格かどうか
サプリメントは医薬品とは異なり、短期間で劇的な変化をもたらすものではありません。髪の毛は1ヶ月に約1cmしか伸びません。
ヘアサイクル全体で見ると、効果を実感するまでには最低でも3ヶ月から6ヶ月、場合によってはそれ以上の継続が必要です。
そのため、いくら高価で優れた成分が含まれていても経済的に継続が難しい価格帯であれば、結局は途中でやめてしまうことになります。
1ヶ月あたりのコストを計算し、自分が無理なく続けられる価格帯の製品を選ぶことが、結果的に髪質改善への近道となります。
髪質改善サプリメントとして賢い選択をするには、成分と価格のバランスを見極めることが重要です。
サプリメント摂取時の注意点と正しい知識
サプリメントは医薬品ではなく、あくまで栄養補助食品です。その効果を正しく理解し、安全に摂取するための知識を持つことが健康的な髪質改善につながります。
誤った使い方や過度な期待は、かえって健康を害する可能性もあります。
過剰摂取のリスクと副作用の可能性
「体に良いものなら多く摂った方が効果も高まる」と考えるのは間違いです。
特に脂溶性ビタミン(A, D, E, K)やミネラル(亜鉛、鉄、セレンなど)は体内に蓄積しやすいため、過剰摂取が続くと健康被害を引き起こす可能性があります。
例えば、亜鉛の過剰摂取は銅や鉄の吸収を妨げ、貧血や免疫力の低下を招くことがあります。セレンも過剰になると脱毛や爪の変形などを引き起こすリスクがあります。
製品に記載されている1日の摂取目安量を必ず守り、複数のサプリメントを併用する場合は、成分が重複していないかを確認することが重要です。
主な成分の摂取目安と注意点
| 成分名 | 1日摂取目安(成人男性) | 過剰摂取時の注意 |
|---|---|---|
| 亜鉛 | 11mg(推奨量) | 40~45mg(耐容上限量)を超えると銅の吸収阻害など |
| ビタミンA | 850~900μgRAE(推奨量) | 2700μgRAE(耐容上限量)を超えると頭痛、吐き気など |
| セレン | 30μg(推奨量) | 450μg(耐容上限量)を超えると脱毛、爪の変形など |
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」等に基づく目安。サプリメントの表示を優先してください。
医薬品(AGA治療薬など)との併用
すでにAGAクリニックなどでフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった医薬品による治療を受けている場合、サプリメントの併用には注意が必要です。
サプリメントに含まれる成分が医薬品の効果に影響を与えたり、予期せぬ副作用を引き起こしたりする可能性もゼロではありません。
特にノコギリヤシは医薬品と同様に5αリダクターゼへのアプローチを目的とするため、作用が重複する可能性があります。
AGA治療中にサプリメントの摂取を開始したい場合は自己判断せず、必ず処方を受けている医師に相談してください。
現在服用中の薬やサプリメントを正確に伝え、併用しても問題ないかを確認することが大切です。
効果を実感するまでの期間の目安
前述の通り、サプリメントの効果はすぐには現れません。髪には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、新しい髪が生まれてから抜け落ちるまでには数年の時間がかかります。
サプリメントによって栄養状態が改善され、その栄養が新しく生えてくる髪に影響を与えるまでには時間がかかります。
一般的に、体感として何らかの変化を感じ始めるまでには最低でも3ヶ月、多くの場合6ヶ月程度の継続的な摂取が必要とされています。
すぐに効果が出ないからといって諦めず、まずは生活習慣の見直しと並行しながら、一定期間じっくりと続ける姿勢が重要です。
サプリメント摂取の心得
- 定められた摂取目安量を守る
- 短期間で効果を求めず、最低3~6ヶ月は継続する
- 医薬品との併用は医師に相談する
サプリメントは「補助」であることを理解する
最も重要なことは、サプリメントは万能薬ではないと理解することです。髪質改善や薄毛対策の基本は、あくまでもバランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理といった日々の生活習慣です。
サプリメントは、これらの土台があって初めてその補助的な力を発揮します。
いくら高価なサプリメントを摂取しても、毎日の食事がジャンクフードばかりであったり、睡眠時間が極端に短かったりすれば期待する効果は得られにくいでしょう。
「サプリを飲んでいるから大丈夫」と安心せず、生活全体を見直すきっかけとしてサプリメントを活用することが髪質改善への最も確実な道となります。
サプリメントと併用したい生活習慣の改善
サプリメントの効果を最大限に引き出すためには日々の生活習慣を見直し、体全体を健康な状態に保つ努力が必要です。
髪は健康のバロメーターとも言われ、体の内側からのケアが何よりも重要となります。
バランスの取れた食事の重要性
サプリメントは栄養「補助」です。基本となるのは日々の食事から多様な栄養素を摂取することです。
特に髪の主成分であるタンパク質を肉、魚、卵、大豆製品などから偏りなく摂ることが大切です。
髪に良いとされる食品
タンパク質に加えて、ビタミンやミネラルも食事から積極的に摂取しましょう。ケラチンの合成を助ける亜鉛は牡蠣やレバー、赤身肉に多く含まれます。
頭皮環境を整えるビタミンB群は豚肉、レバー、マグロ、カツオ、納豆などに豊富です。
血行を促進するビタミンEはナッツ類やアボカド、植物油から摂取できます。また、抗酸化作用のある緑黄色野菜も積極的に取り入れましょう。
髪の健康をサポートする食品例
| 栄養素 | 多く含まれる食品例 | 期待される役割 |
|---|---|---|
| 良質なタンパク質 | 鶏むね肉、卵、大豆製品、青魚 | 髪の主材料(ケラチン)の供給 |
| 亜鉛 | 牡蠣、レバー、赤身肉、ナッツ類 | ケラチンの合成サポート |
| ビタミンB群 | 豚肉、レバー、うなぎ、納豆 | タンパク質代謝、頭皮環境維持 |
避けるべき食習慣
一方で、髪の健康を妨げる食習慣もあります。脂質の多い揚げ物やスナック菓子、糖質の多い甘い飲み物や菓子の過剰摂取は皮脂の分泌を過剰にし、頭皮環境を悪化させる原因となります。
また、塩分の摂りすぎは血圧を上げ、血流に影響を与える可能性があります。過度なアルコール摂取は体内でビタミンやミネラルを大量に消費してしまうため、控えるべきです。
ファストフードやインスタント食品に偏らず、バランスを意識することが重要です。
質の高い睡眠を確保する方法
髪の成長と修復を促す成長ホルモンは、入眠後の最初の深いノンレム睡眠時に最も多く分泌されます。睡眠時間が不足したり、眠りが浅かったりすると、この成長ホルモンの恩恵を十分に受けられません。
質の高い睡眠を確保するためには毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きる規則正しい生活リズムを作ることが基本です。
就寝1~2時間前に入浴して体を温め、リラックスすることも有効です。また、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用はブルーライトが脳を覚醒させ、寝つきを悪くするため控えるようにしましょう。
ストレス管理とリラクゼーション
現代社会でストレスをゼロにすることは困難ですが、溜め込まない工夫は可能です。ストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行を悪化させます。自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
適度な運動は気分転換になるだけでなく、全身の血行を促進するため、頭皮環境にも良い影響を与えます。ウォーキングやジョギング、ストレッチなど、無理なく続けられるものから始めましょう。
また、趣味に没頭する時間を作ったり、ゆっくりと深呼吸をしたりするだけでも心身のリラックスにつながります。
生活習慣改善のヒント
- 週末に作り置きをし、平日の栄養バランスを整える
- エレベーターでなく階段を使うなど日常で運動量を増やす
- 就寝30分前からはスマホを見ないルールを作る
適切なヘアケアと頭皮マッサージ
外側からのケアも、内側からのケア(栄養・生活習慣)を補完する上で重要です。シャンプーは1日1回、夜に行うのが基本です。洗いすぎは頭皮を乾燥させ、皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
洗浄力の強すぎないアミノ酸系シャンプーなどを選び、指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。すすぎ残しはフケやかゆみの原因になるため、十分すぎるほどしっかりと洗い流します。
洗髪後はドライヤーで髪と頭皮をしっかり乾かします。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。
また、空いた時間に行う頭皮マッサージも効果的です。指の腹で頭皮全体を動かすように揉みほぐし、血行を促進しましょう。
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髪質改善サプリに関するよくある質問
ここでは、男性向けの髪質改善サプリメントに関して多く寄せられる質問にお答えします。サプリメント選びや摂取に関する疑問を解消し、正しく活用するためにお役立てください。
- サプリメントを飲めば髪は必ず生えてきますか?
-
いいえ、サプリメントは医薬品ではないため、発毛効果を保証するものではありません。
サプリメントの役割は、あくまで髪の成長に必要な栄養素を補給し、頭皮環境や体内の栄養バランスを整えるサポートです。
栄養不足が原因の髪質の低下には改善が期待できますが、AGAなどによる薄毛をサプリメントだけで治療することは困難です。
- 効果がないと感じたらすぐにやめるべき?
-
髪の成長には時間がかかります。サプリメントの効果を判断するにはヘアサイクルを考慮し、最低でも3ヶ月から6ヶ月は継続して様子を見ることが推奨されます。
短期間で効果が感じられないからといってすぐにやめてしまうのは早計かもしれません。
ただし、6ヶ月以上続けても全く変化が感じられない場合はサプリメントが合っていない、あるいは髪の悩みの原因が他にある可能性も考えられます。
- 複数のサプリメントを併用しても大丈夫ですか?
-
併用自体が悪いわけではありませんが、注意が必要です。
最も気をつけるべきは、成分の重複による過剰摂取です。特に亜鉛やセレンなどのミネラル、ビタミンA、Eなどの脂溶性ビタミンは耐容上限量が設定されています。
複数の製品を併用する場合はそれぞれの成分表示をよく確認し、特定の成分を摂りすぎていないかを計算する必要があります。
不安な場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
- 女性用のサプリメントを男性が飲んでも良いですか?
-
基本的なビタミンやミネラル、アミノ酸などを補給する目的であれば、女性用サプリメントを男性が飲んでも大きな問題はありません。
しかし、女性用製品の中には大豆イソフラボンなど女性ホルモンのバランスを整えることを主目的とした成分が高配合されている場合があります。
男性の髪の悩み(特にAGA)とはアプローチが異なるため、男性特有の悩みに対応したノコギリヤシなどが配合された男性用サプリメントを選ぶ方が合理的でしょう。
- 副作用が心配ですが、どのようなものがありますか?
-
サプリメントは食品に分類されるため、医薬品のような重篤な副作用の心配は低いとされています。
しかし、体質に合わない場合(アレルギーなど)は胃腸の不快感、下痢、吐き気、発疹などが起こる可能性があります。
また、前述の通り、特定の成分を過剰摂取した場合は健康被害(亜鉛の過剰摂取による銅欠乏など)を引き起こすリスクがあります。
摂取目安量を守り、異常を感じたらすぐに摂取を中止し、医師に相談してください。
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