AGA治療薬として高い発毛効果を持つザガーロですが、服用を検討する際や継続する中で「がんのリスクがあるのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。
特に前立腺がんとの関連性についてはインターネット上で様々な情報が錯綜しており、正確な医学的情報を理解することが自身の健康を守るために重要です。
ザガーロの主成分であるデュタステリドは前立腺の組織に作用する性質上、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値に影響を与えます。
この特性を正しく理解しないまま服用を続けると、がんの発見が遅れるリスクもゼロではありません。しかし医師の管理下で適切に数値をモニタリングすれば、過度に恐れる必要はない薬でもあります。
本記事ではザガーロとがんの関連性、PSA値への影響、そして服用者が知っておくべき正しい対処法について、医学的根拠に基づき詳細に解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
ザガーロの服用と発がん性に関する医学的見解
ザガーロ(一般名:デュタステリド)を服用することで直接的に新たながんが発生するという明確な証拠は現在のところ確認されていません。
しかし、前立腺がんの発見に関わる数値への影響や過去の臨床試験で示された一部のデータから、リスクに対する議論が存在するのは事実です。
ここではザガーロとがんの関係性について、現在主流となっている医学的な評価を紐解きます。
前立腺がんリスクへの影響と臨床データ
ザガーロの有効成分であるデュタステリドは、もともと前立腺肥大症の治療薬として開発されました。そのため、前立腺に対する作用は非常に強力です。
過去に行われた大規模な臨床試験(REDUCE試験など)において、デュタステリドを服用したグループはプラセボ(偽薬)を服用したグループと比較して、全体的な前立腺がんの発症率は低下しました。
これはデュタステリドが男性ホルモンの働きを抑制し、前立腺の肥大や腫瘍の成長を抑える効果を持つためと考えられます。
一方で、同試験では「悪性度の高い(グリーソンスコアが高い)前立腺がん」の発見率がわずかに上昇したという報告もなされました。
このデータが「ザガーロは悪性のがんを増やすのではないか」という懸念の根拠となっています。
しかし、その後の詳細な解析により、この結果は薬が直接的に悪性のがんを作ったのではなく、前立腺全体が縮小したことによって元々存在していた小さながん細胞が見つけやすくなった(バイアスがかかった)可能性が高いという見解も示されています。
現在では定期的な検査を行っていれば、過度な心配は不要であると判断する専門家が多くいます。

日本国内における添付文書の記載内容
日本国内で承認されているザガーロの添付文書(薬の説明書)には重大な副作用として「肝機能障害」や「黄疸」などが記載されていますが、「発がん性」そのものが副作用として明記されているわけではありません。
ただし、前立腺がんの診断に使用されるPSA(前立腺特異抗原)の数値を低下させる作用があるため、これに関する注意喚起は非常に目立つ形で記載されています。
厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)の情報を見ても、ザガーロが直接的な発がん物質であるという認定はされていません。
薬のリスクを評価する際はインターネット上の噂レベルの情報と、公的機関が発行する正式な文書情報を区別して捉えることが大切です。
医師が処方を行う際もこれら公的なデータに基づき、患者さんの既往歴や体質を考慮して判断を下しています。
米国食品医薬品局(FDA)による注意喚起の背景
アメリカのFDA(食品医薬品局)は2011年に5α還元酵素阻害薬(デュタステリドやフィナステリドを含む)と高悪性度前立腺がんのリスクに関する安全性情報を発表しました。
この発表では、これらの薬剤が全体的な前立腺がんのリスクを低下させる一方で、高悪性度前立腺がんのリスクをわずかに増加させる可能性があることについて言及しています。
この注意喚起は危険だから使用してはいけないという意味ではなく、リスクとベネフィット(利益)を天秤にかけ、患者さんと医師が十分に話し合った上で使用を決定すべきであるという意図を含んでいます。
特にAGA治療は命に関わる疾患の治療ではないため、美容的なメリットとわずかながら存在するかもしれないリスクをどう捉えるか、個人の価値観と医学的な安全管理が重要になります。
デュタステリドと前立腺がんリスクに関する比較
| 項目 | 一般的な前立腺がん | 高悪性度前立腺がん |
|---|---|---|
| 発症率への影響 | 低下する傾向がある | わずかに上昇する可能性があるとの報告あり |
| 医学的な解釈 | 前立腺の縮小効果による抑制 | 前立腺縮小により発見しやすくなった可能性 |
| 必要な対策 | 定期的なPSA検査 | PSA値の変動に注意深く対応する |
PSA値への影響と検査時の注意点
ザガーロを服用する上で最も注意しなければならないのが、血液検査におけるPSA値(前立腺特異抗原値)の変動です。
ザガーロはこの数値を人工的に下げてしまう作用があり、これを知らずに健康診断やがん検診を受けると、実際にはがんのリスクがあるにも関わらず「異常なし」と誤診されてしまう危険性があります。
正しい数値を読み解くための知識を持つことは、自分の命を守ることと同義です。
PSA値が半減する理由とその期間
PSAは前立腺から分泌されるタンパク質の一種で、通常血液中にはごく微量しか存在しません。しかし、前立腺がんや前立腺肥大症、前立腺炎などが生じると、血液中のPSA値が上昇します。
ザガーロの有効成分であるデュタステリドは前立腺の細胞に作用し、前立腺の体積を縮小させる働きがあります。この作用に伴い、血液中に漏れ出るPSAの量も減少します。
一般的にザガーロを6ヶ月以上継続して服用すると、PSA値は約50%(半分)まで低下すると言われています。
つまり、本来であれば「4.0ng/mL」という精密検査が必要な数値であっても、ザガーロを服用していると「2.0ng/mL」という正常範囲内の数値として検査結果が出てしまうのです。
この見かけ上の数値低下は薬の効果が出ている証拠でもありますが、がん検診においては大きな落とし穴となり得ます。

健康診断での申告漏れが招くリスク
会社の健康診断や自治体のがん検診でPSA検査を受ける際、問診票に服用中の薬を記載する欄があります。ここでザガーロ(またはデュタステリド)を服用していることを申告し忘れると、医師は測定された数値をそのままの状態で判断します。
その結果、本来は前立腺がんの疑いがあり精密検査へ進むべき段階であるにもかかわらず、「問題なし」として見過ごされてしまう「がんの見落とし」につながる可能性があります。
前立腺がんは早期発見であれば予後が良い(治りやすい)がんの一つですが、発見が遅れれば転移のリスクも高まります。
ザガーロ自体ががんを作るわけではありませんが、がんの発見を遅らせる要因になり得るという点においては、服用者自身が強い自覚を持つ必要があります。
医師に正しく情報を伝えるだけで、このリスクは回避できます。
正しいPSA値の読み取り方と補正方法
ザガーロ服用中の方がPSA検査を受けた場合、検査結果の数値を「2倍」にして解釈するのが基本的なルールです。例えば、検査結果が「1.5ng/mL」であった場合、実質的な値は「3.0ng/mL」と考えます。
もし検査結果が「2.5ng/mL」であれば、実質は「5.0ng/mL」となり、これは一般的に精密検査が推奨される基準値(4.0ng/mL以上)を超えていることになります。
ただし、この「2倍ルール」はあくまで目安であり、個人差があります。
服用期間や前立腺の状態によって減少率は異なる場合があるため、泌尿器科の専門医に相談する際は、いつからザガーロを服用しているかを正確に伝えることが大切です。
また、AGAクリニックでの血液検査は一般的な健康チェックのみで、PSA検査が含まれていないことも多いため、40代以降の男性は別途、泌尿器科や人間ドックで定期的にPSA検査を受けることをお勧めします。
PSA値の補正目安
| 検査結果の数値 | 補正後の実質的な目安(2倍) | 一般的な判断基準 |
|---|---|---|
| 1.0 ng/mL | 2.0 ng/mL | 正常範囲内 |
| 2.0 ng/mL | 4.0 ng/mL | 要注意・精密検査の検討ライン |
| 2.5 ng/mL | 5.0 ng/mL | 異常値(精密検査が必要) |
ザガーロが体に作用する仕組みと特徴
なぜザガーロは髪の毛を増やすだけでなく、前立腺やPSA値にまで影響を及ぼすのでしょうか。その答えはザガーロが阻害する酵素の役割と分布場所にあります。
ここではザガーロが体内でどのように働き、なぜ副作用のリスクが生じるのか、その根本的な理由について解説します。
5αリダクターゼの抑制とホルモンバランス
男性型脱毛症(AGA)の主な原因物質はジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる強力な男性ホルモンです。
このDHTは精巣で作られるテストステロンが「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」という酵素と結びつくことで生成されます。
DHTは毛乳頭細胞にある受容体と結合し、髪の成長サイクルを乱して抜け毛を促進させます。
ザガーロの役割は、この5αリダクターゼという酵素の働きを邪魔することです。酵素が働かなくなれば、テストステロンはDHTに変換されず、結果として抜け毛が減ります。
しかし、DHTは胎児期の性器形成や成人においては前立腺の機能を維持するなど、髪の毛以外にも関与しています。
そのため、DHTを強力に抑え込むことは発毛というメリットをもたらすと同時に、性機能や前立腺への影響というデメリットも引き起こす可能性があるのです。
1型と2型の違いおよびフィナステリドとの比較
5αリダクターゼには「1型」と「2型」という2つの種類が存在します。1型は全身の皮脂腺や側頭部・後頭部の毛乳頭に多く分布し、2型は前頭部・頭頂部の毛乳頭や前立腺に多く分布しています。
従来のAGA治療薬であるプロペシア(フィナステリド)は、主に2型の酵素のみを阻害します。これに対し、ザガーロ(デュタステリド)は1型と2型の両方を阻害する特徴を持っています。
ザガーロが1型と2型の両方をブロックすることで、DHTの生成抑制効果はフィナステリドよりも強力になります。
あるデータではフィナステリドが血中のDHT濃度を約70%低下させるのに対し、デュタステリドは約90%以上も低下させるとされています。
この強力な抑制力が高い発毛効果を生む源泉ですが、同時に体内のホルモン環境を大きく変化させるため、副作用の発現率や影響範囲もフィナステリドよりやや広くなる傾向があります。
半減期の長さによる持続性と注意点
薬が体内から排出されるまでの時間を表す指標に「半減期」があります。フィナステリドの半減期が数時間程度であるのに対し、ザガーロの半減期は約3週間から5週間と非常に長いのが特徴です。
これは、一度服用すると薬の成分が体内に長く留まり続けることを意味します。
半減期が長いことは飲み忘れがあっても血中濃度が急激に下がらないというメリットになりますが、副作用が出た場合に服用を中止しても、成分がすぐに体から抜けないというリスクも孕んでいます。
例えば肝機能に異常が出た場合や、妊活のために服用を中止する場合でも、完全に薬の影響がなくなるまでには数ヶ月単位の時間が必要です。
ザガーロを開始する際は、この「薬が体に長く残る」という特性を十分に理解しておく必要があります。
ザガーロとプロペシアの作用比較
| 薬剤名 | 阻害する酵素 | DHT抑制率 | 半減期 |
|---|---|---|---|
| ザガーロ(デュタステリド) | 1型および2型 | 約90%以上 | 約3〜5週間 |
| プロペシア(フィナステリド) | 主に2型 | 約70% | 約6〜8時間 |

初期脱毛の可能性
ザガーロは服用を開始してからしばらくすると、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こる場合があります。
これは副作用というよりは、ヘアサイクル(毛周期)が正常化する過程で起こる「生え変わり」の現象です。
治療を行っているのに抜け毛が増えると「このまま飲み続けたらさらに薄毛が進行してしまうのでは」と思ってしまうのも無理がありませんが、怖がって服用を止めないことが大切です。
ここで止めてしまうとヘアサイクルが改善されず、単に毛が抜けた状態で終わってしまいます。ザガーロが効いている証拠と受け止め、根気強く治療を継続しましょう。
初期脱毛について詳しく見る
ザガーロの初期脱毛はいつまで続くのか
生殖機能への副作用とリスク管理
がんのリスクと並んで多くの男性が懸念するのが、性機能に関わる副作用です。男性ホルモンの働きに介入する薬である以上、性欲や勃起機能への影響はゼロではありません。
これらの症状は命に関わるものではありませんが、QOL(生活の質)を大きく左右するため、事前に正しい頻度や対処法を知っておくことが大切です。
性欲減退・勃起不全(ED)の発現頻度
ザガーロの添付文書や臨床試験のデータによると、性機能に関する副作用の発現率は数%程度と報告されています。具体的には、性欲減退(リビドー減退)、勃起不全(ED)、射精障害などが挙げられます。
これらの症状はDHTという男性ホルモンが減少することに起因すると考えられていますが、すべての服用者に現れるわけではありません。
実際には「副作用が出るかもしれない」という心理的な不安が影響して症状を感じるノシーボ効果の側面もあると指摘されています。しかし、実際に体の変化として現れるケースも確実に存在します。
もし症状が現れた場合でも服用を継続するうちに体が慣れて症状が軽減することもありますが、生活に支障が出る場合は医師に相談し、減薬や薬の変更(フィナステリドへの切り替えなど)を検討する必要があります。
精液量の減少と妊活への影響
ザガーロの服用中、精液の量が減少したり、精液が薄くなったりすることを感じる人がいます。これもDHTの減少により、精嚢や前立腺の機能が一時的に抑制されるためと考えられます。
精子の数や運動率への影響については個人差が大きいものの、軽度の低下が見られるという報告があります。
これから子作りを計画している場合、念のために服用を一時中止することが推奨されるケースが多いです。
先述の通り、ザガーロは体内から抜けるのに時間がかかるため、妊活を開始する半年ほど前から服用を中止する計画性が必要です。
パートナーとも相談し、ライフプランに合わせて服用のタイミングを調整することが重要です。
女性化乳房などの身体的変化
稀な副作用として、男性の乳房が女性のように膨らんだり、乳頭に痛みを感じたりする「女性化乳房」が報告されています。
これはテストステロンがDHTに変換されなくなった結果、余ったテストステロンの一部がアロマターゼという酵素によって女性ホルモン(エストロゲン)に変換され、体内の女性ホルモンバランスが相対的に高まることが原因の一つとされています。
乳房の違和感やしこりに気づいた場合は、自己判断せずに速やかに医師の診察を受けてください。早期であれば服用の中止で改善することが多いですが、放置すると外科的な処置が必要になることもあります。
AGA治療は見た目の改善を目指すものですが、別の身体的変化が生じては本末転倒ですので、日頃から自分の体の変化に敏感になることが大切です。
肝機能障害のリスクと早期発見
ザガーロは飲み薬であるため、成分は肝臓で分解(代謝)されます。そのため、肝臓には少なからず負担がかかります。
特にもともと肝臓の数値が悪い方やお酒をよく飲む方は、肝機能障害のリスクに注意を払う必要があります。自覚症状が出にくい臓器だからこそ、数値による管理が必要です。
肝臓への負担と代謝の仕組み
デュタステリドは、肝臓にある「CYP3A4」という酵素によって代謝されます。
健康な肝臓であれば、この代謝プロセスは問題なく行われますが、体質的に肝臓が弱い方や肝臓に負担をかける他の薬やサプリメントを併用している場合、肝臓への負荷が許容範囲を超えてしまうことがあります。
重篤な肝機能障害は非常に稀ですが、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)などの症状が現れた場合は直ちに服用を中止し、医師の診断を受ける必要があります。
これらは肝臓が悲鳴を上げているサインであり、放置すると取り返しのつかない事態になりかねません。
定期的な血液検査の重要性
肝機能障害の厄介な点は沈黙の臓器と呼ばれるように、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。気付いた時には症状が進行していることもあります。
そのため、ザガーロを服用中はAGAクリニックや職場での健康診断を利用して、定期的に血液検査を行うことが強く推奨されます。
特にチェックすべき項目は、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値です。
服用開始前に一度検査をして自分の基準値を知っておき、服用開始から1ヶ月後、3ヶ月後、半年後といった節目で検査を行い、数値の推移を確認するのが理想的です。
数値が急激に上昇している場合は薬が体に合っていない可能性があるため、医師と相談して治療方針を見直すことになります。
服用を避けるべき人や併用禁忌
ザガーロは誰でも服用できるわけではありません。特定の条件下にある人や特定の薬を服用している人は、ザガーロを使用することで重篤なトラブルを招く恐れがあります。
自分だけでなく、周囲の人を守るためにも、禁忌事項を正しく理解しておく必要があります。
女性・小児への接触禁止の理由
ザガーロは女性や子供が服用することはもちろん、錠剤の中身に触れることさえも厳禁とされています。
これは、デュタステリドが皮膚から吸収されやすい性質を持っており、妊娠中の女性が成分を吸収してしまうと、お腹の中の男の子の胎児の生殖器の発達に異常をきたす恐れがあるためです。
ザガーロのカプセルは成分が飛散しないようにコーティングされていますが、カプセルを割ったり、中身が漏れ出ているものに触れたりしてはいけません。
家庭内に女性や子供がいる場合は薬の保管場所に細心の注意を払い、絶対に手の届かない場所に保管することが求められます。
万が一触れてしまった場合は直ちに石鹸と水で洗い流し、医師に相談してください。
重度の肝機能障害がある方
前述の通り、ザガーロは肝臓で代謝される薬です。そのため、すでに重度の肝機能障害がある患者さんに対しては安全性が確立されていないため、投与禁忌(飲んではいけない)とされています。
軽度から中等度の肝機能障害がある場合でも慎重投与(注意して投与する)とされており、医師による厳密な管理が必要です。
過去に肝臓の病気をしたことがある方や健康診断で肝臓の数値を指摘されたことがある方は、必ず診察時にその旨を医師に伝えてください。自己判断で服用を開始することは大変危険です。
主な副作用一覧と発現頻度
| 副作用の種類 | 具体的な症状 | 頻度・特徴 |
|---|---|---|
| 生殖機能障害 | リビドー減退、勃起不全、射精障害 | 1%以上(比較的多い) |
| 乳房障害 | 乳房の腫れ、圧痛、女性化乳房 | 1%未満(稀に見られる) |
| 皮膚症状 | 発疹、蕁麻疹、そう痒感 | 1%未満(アレルギー反応) |
| 精神神経系 | 抑うつ気分、浮動性めまい | 頻度不明(個人差が大きい) |
| 肝機能障害 | AST・ALT・ビリルビンの上昇 | 頻度不明(定期検査が必要) |
安全に服用を続けるための具体的対策
リスクや副作用の話を聞くと怖くなるかもしれませんが、ザガーロは医師の指導のもとで正しく扱えば、薄毛治療において非常に強力な味方となります。
リスクをゼロにすることはできなくても、コントロールすることは可能です。
ここでは、長く安全に治療を続けるために患者自身ができる具体的なアクションについて解説します。
主治医との信頼関係と報告義務
AGA治療は薬をもらって終わりではなく、継続的な経過観察が重要です。体調の変化や些細な違和感があれば恥ずかしがらずに医師に相談する姿勢が必要です。
特に性機能に関する悩みは言い出しにくいものですが、専門医にとってはよくある相談の一つですので、遠慮なく伝えてください。
また、他の病院で薬を処方してもらう際や市販薬を購入する際も、お薬手帳などを提示してザガーロを服用中であることを伝える習慣をつけましょう。
飲み合わせによる予期せぬ副作用を防ぐためにも、情報共有は自分の身を守るための基本動作です。
輸血・献血の禁止期間を守る
ザガーロ服用中および服用中止後6ヶ月間は、献血を行うことができません。
これは提供した血液にデュタステリドの成分が含まれていると、その血液が妊婦や胎児に輸血された場合に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
会社の献血イベントや街頭の献血バスなどで、うっかり献血してしまわないよう注意が必要です。
社会貢献のつもりで行った行為が誰かの健康を害することにならないよう、このルールは厳格に守る必要があります。
服用を完全にやめてから半年が経過すれば、成分は体から抜けているため、献血が可能になります。

違和感を感じた際の緊急対応リスト
もし服用中に体調がおかしいと感じたら、無理に服用を続けずに一旦休止し、医療機関を受診することが鉄則です。
特に以下のような症状が現れた場合はアレルギー反応や肝機能障害の初期症状である可能性があるため、迅速な対応が必要です。
直ちに医師へ相談すべき症状
- 全身のかゆみ、皮膚の赤み、蕁麻疹(アナフィラキシーの可能性)
- 口唇、舌、喉の腫れ、息苦しさ
- 激しい倦怠感、食欲不振が続く
- 白目や皮膚が黄色くなる
- 乳房にしこりができたり、乳頭から分泌物が出る
これらの症状は稀ですが、早期に対処すれば大事に至らないことがほとんどです。「そのうち治るだろう」と放置せず、専門家の判断を仰いでください。

ザガーロの副作用とがんに関するよくある質問
最後に、ザガーロの副作用やがんのリスクに関して、患者さんから頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問点を解消し、納得した上で治療に取り組んでください。
- ザガーロを飲むと本当にがんになりやすくなるのですか?
-
現在の医学的見解では、ザガーロが直接的にがんを発生させるという明確な証拠はありません。
過去の臨床試験において高悪性度の前立腺がんの発見率がわずかに高まったデータはありますが、これは前立腺が縮小することでがんが見つけやすくなった影響が大きいと考えられています。
ただし、定期的な検査を怠ると発見が遅れるリスクはあるため、健康管理は重要です。
- 健康診断でPSA値が正常なら安心しても良いですか?
-
ザガーロ服用中はPSA値が実際よりも低く出るため、検査結果の数値をそのまま鵜呑みにしてはいけません。
一般的に数値は半分程度になっているため、検査結果の数値を2倍にして判断する必要があります。
健康診断を受ける際は、必ず問診票にザガーロ(またはデュタステリド)を服用していることを記載し、医師に正しい判断を仰いでください。
- 副作用が心配で途中でやめた場合、髪はどうなりますか?
-
副作用などの理由でザガーロの服用を中止した場合、体内の薬効成分が抜けるにつれて、抑制されていたDHT(ジヒドロテストステロン)の生成が再び始まります。
その結果、数ヶ月かけて治療前の薄毛の状態に戻っていく可能性が高いです。
副作用が軽度であれば薬の量を調整したり、フィナステリドに変更したりすることで治療を継続できる場合もあるため、自己判断でやめる前に医師に相談することをお勧めします。
- 将来子供が欲しいのですが、服用を続けても大丈夫ですか?
-
ザガーロ服用中でも精子の形成は行われますが、精液量の減少や精子の質の低下が起こる可能性があります。
また、性機能への影響も考慮し、妊活を本格的に始める場合は、計画的に服用を中止することが推奨されます。
薬の成分が体から完全に抜けるまでには時間がかかるため、妊活開始の半年ほど前から服用をストップするのが一般的です。
- ザガーロとプロペシア、がんのリスクに違いはありますか?
-
どちらの薬も5αリダクターゼ阻害薬であり、PSA値を低下させる作用を持っています。
低下率はザガーロ(デュタステリド)の方がやや大きい傾向にありますが、どちらも前立腺がん検診においては申告が必要です。
発がん性に関するリスクについてはどちらも明確な危険性は証明されていませんが、ザガーロの方が作用が強力な分、前立腺への影響も大きいと捉え、より慎重なモニタリングを行うことが望ましいでしょう。
参考文献
AKAZA, Hideyuki, et al. Efficacy and safety of dutasteride on prostate cancer risk reduction in Asian men: the results from the REDUCE study. Japanese journal of clinical oncology, 2011, 41.3: 417-423.
SHIGEHARA, Kazuyoshi, et al. Effects of dutasteride on lower urinary tract symptoms and general health in men with benign prostatic hypertroplasia and hypogonadism: a prospective study. The Aging Male, 2014, 17.1: 51-56.
OWECKA, Barbara, et al. The hormonal background of hair loss in non-scarring alopecias. Biomedicines, 2024, 12.3: 513.
KINOSHITA-ISE, Misaki; FUKUYAMA, Masahiro; OHYAMA, Manabu. Recent advances in understanding of the etiopathogenesis, diagnosis, and management of hair loss diseases. Journal of Clinical Medicine, 2023, 12.9: 3259.
HIRSHBURG, Jason M., et al. Adverse effects and safety of 5-alpha reductase inhibitors (finasteride, dutasteride): a systematic review. The Journal of clinical and aesthetic dermatology, 2016, 9.7: 56.
DING, Yunbu, et al. Dutasteride for the treatment of androgenetic alopecia: an updated review. Dermatology, 2024, 240.5-6: 833-843.

