病気が原因の薄毛について｜症状と治療の違い

抜け毛が増えたり地肌が透けて見えたりすることは、加齢や遺伝による一般的な変化と思われがちですが、中には身体の内側で進行している病気が直接的な原因となっているケースが存在します。

単なる薄毛だと思い込んでケアを続けても改善が見られない場合、それは身体からのＳＯＳサインかもしれません。

自己判断で放置することはリスクを伴うため、髪の変化がどのような病気の兆候である可能性があるのか、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では病気が原因で起こる薄毛の特徴や、一般的なＡＧＡ（男性型脱毛症）との見分け方、そして背景にある疾患について詳しく解説し、適切な行動をとるための指針を提供します。

病気が原因の薄毛と一般的な男性型脱毛症の違い

病気に起因する脱毛は進行スピードが非常に速く、局所的あるいは全身に症状が現れる点が、時間をかけてゆっくりと進行する一般的なＡＧＡ（男性型脱毛症）とは決定的に異なります。

通常のＡＧＡは遺伝や男性ホルモンの影響を受け、数年から数十年単位で生え際や頭頂部が薄くなっていきますが、病気が関与している場合は「数週間で急激に抜けた」「髪以外の体毛も抜けた」「頭皮に湿疹や炎症を伴う」といった異変が生じます。

自分の抜け毛がどちらのタイプに当てはまるのかを冷静に観察し、違和感を覚えたら早急に医療機関を頼ることが重要です。

進行速度と抜け方のパターン比較

AGAはヘアサイクル（毛周期）における成長期が短縮することで、髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまう現象です。そのため、初期段階では髪のハリやコシがなくなり、徐々に薄くなっていくという経過をたどります。

一方で、甲状腺疾患や自己免疫疾患などの病気が原因の場合はヘアサイクルが無視され、成長途中の髪が突発的に抜け落ちたり、休止期にある髪が一気に抜けたりします。

朝起きた時の枕元の抜け毛の量が異常に多い、シャンプーのたびに排水溝が詰まるほどの量が抜けるといった現象は、通常の生え変わりとは異なる緊急性の高いサインである可能性が高いと言えます。

脱毛パターンの違いによる分類

特徴	一般的な薄毛（AGA等）	病気が疑われる薄毛
進行速度	数年かけて緩やかに進行	数週間〜数ヶ月で急激に進行
抜ける場所	生え際や頭頂部など特定部位	円形、全体、または不規則
頭皮の状態	脂っぽい、または乾燥程度	赤み、ただれ、フケ、痛み

全身症状の有無を確認する重要性

髪は「健康のバロメーター」とも呼ばれ、身体の栄養状態やホルモンバランスの影響をダイレクトに受けます。

病気が原因の場合、薄毛という症状単独で現れることは稀で、多くの場合において全身の倦怠感、体重の急激な増減、爪の変形、微熱、動悸といった別の不調を伴います。

例えば、過度なダイエットや栄養吸収障害による貧血がある場合は、立ちくらみや息切れと共に抜け毛が増加します。

薄毛の悩みだけに囚われず、最近の体調変化を総合的に見直すことが、隠れた病気の発見につながります。

ヘアサイクルの乱れ方による区別

健康な頭髪は成長期、退行期、休止期という一定のリズムを繰り返しています。AGAはこのうちの成長期が短くなることが主な要因ですが、病気による脱毛には「成長期脱毛」と「休止期脱毛」の二つの大きなタイプがあります。

抗がん剤治療などで見られる成長期脱毛は、細胞分裂が活発な毛母細胞がダメージを受け、成長している髪がそのまま抜けてしまいます。

対して、高熱や手術、急激なストレスなどが引き金となる休止期脱毛は、本来成長すべき髪が一斉に休止期へと移行し、数ヶ月後にまとまって抜け落ちます。

このように、どの段階で髪が抜けているかを知ることも、原因を特定する手がかりとなります。

甲状腺疾患や内分泌系の異常による抜け毛

甲状腺ホルモンは全身の代謝を司る重要な物質であり、この分泌量に異常が生じると髪の成長に必要なエネルギー供給が滞り、全体的な薄毛や髪質の変化を引き起こします。甲状腺の病気は特に女性に多く見られますが、男性でも発症する可能性は十分にあります。

ホルモンバランスの崩れは、単に髪が抜けるだけでなく、髪そのものが細くなったり、パサついて艶がなくなったりするなど、髪質の劣化を伴うことが多いのが特徴です。

ここでは甲状腺機能の低下および亢進が髪に与える具体的な影響について深掘りします。

甲状腺機能低下症が招く髪質の変化

甲状腺機能低下症（橋本病など）では代謝機能が著しく低下するため、毛母細胞への血流や栄養供給が不足します。その結果、髪は十分な栄養を受け取れずにパサパサと乾燥し、触るとすぐに切れてしまうほど脆くなります。

また、新しい髪が生えてくるまでの期間が長くなり、抜けた分を補うことができずに全体のボリュームが減少していきます。さらに、髪だけでなく眉毛の外側が薄くなる（ヘルトゲ兆候）という特異な症状が現れることもあります。

慢性的な疲労感や寒がり、むくみといった症状と共に髪質の変化を感じた場合は、内分泌内科での血液検査が必要です。

甲状腺機能異常に伴う主な症状

疾患タイプ	髪・頭皮への影響	併発しやすい身体症状
機能低下症	乾燥、脆弱化、脱毛、眉毛脱毛	無気力、寒がり、体重増加
機能亢進症	全体的な薄毛、多汗による頭皮荒れ	動悸、暑がり、体重減少
共通点	白髪の増加、髪のツヤ消失	易疲労感、精神的な不安定

甲状腺機能亢進症と代謝過多の影響

逆に甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病などの機能亢進症では、新陳代謝が異常に活発になります。

一見すると髪の成長も早くなるように思えますが、実際にはヘアサイクルが早まりすぎて成長期間が極端に短くなり、十分に育つ前に抜け落ちてしまう現象が起きます。

また、全身の発汗量が増えるため、頭皮が常に湿った状態になりやすく、脂漏性皮膚炎などの二次的な頭皮トラブルを招くことも少なくありません。

食欲があるのに痩せていく、手が震えるといった症状がある場合は注意が必要です。

ホルモン補充療法による改善の可能性

甲状腺疾患による薄毛の希望となる点は、原疾患の治療を行うことで髪の状態も回復する可能性が高いということです。

不足しているホルモンを薬で補充したり、過剰なホルモンを抑制する治療を行ったりしてホルモン値が正常範囲に戻れば、ヘアサイクルも徐々に正常化します。ただし、髪が生え揃うまでには時間がかかるため、焦らずに治療を継続する姿勢が大切です。

ＡＧＡ治療薬を自己判断で使用しても、根本原因である甲状腺ホルモンの異常が解決していなければ効果は期待できないため、まずは原疾患のコントロールを優先します。

自己免疫疾患である円形脱毛症の特徴

円形脱毛症は本来は細菌やウイルスから身体を守るはずの免疫細胞が、誤って自分の毛根を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種であり、ストレスのみが原因ではなく体質的な素因が強く関係しています。

ある日突然、コインのような円形の脱毛斑ができるのが典型的な症状ですが、その現れ方は多岐にわたります。痛みや痒みを伴わないことが多いため、美容院で指摘されて初めて気づくケースも珍しくありません。

ここでは、多様な円形脱毛症のタイプと他の自己免疫疾患との関連性について解説します。

単発型と多発型の見分け方

最も一般的なのは、10円玉から500円玉ほどの大きさの脱毛斑が１か所だけできる「単発型」です。このタイプは比較的軽症であり、特別な治療をしなくても自然治癒することが多い傾向にあります。

しかし、脱毛斑が２か所以上発生する「多発型」や、それらが結合して不規則な形に広がる場合は、難治性である可能性が高まります。

脱毛斑の周囲の髪を軽く引っ張ったときに痛みもなく簡単に抜けてしまう場合は病勢が進行中であるサインであり、範囲がさらに拡大する恐れがあります。

重症化する全頭型と汎発型のリスク

円形脱毛症がさらに進行すると、頭部全体の髪が抜け落ちる「全頭型」や、眉毛、まつ毛、脇毛など全身の体毛が失われる「汎発（はんぱつ）型」へと移行することがあります。

これらは自己免疫の反応が非常に強く出ている状態で、治療も長期戦となることが一般的です。

ここまで進行すると外見上の変化による精神的なストレスも甚大となるため、皮膚科での専門的な治療（ステロイド局所注射や局所免疫療法など）に加え、ウィッグの活用などＱＯＬ（生活の質）を維持するためのケアも大切になります。

円形脱毛症の種類と特徴

• 単発型・多発型：境界がはっきりした円形の脱毛斑が一つまたは複数できる
• 蛇行型：生え際が帯状に蛇行して抜けるタイプで、治療が難しい傾向にある
• 全頭型・汎発型：頭髪全体または全身の毛が抜ける重篤な状態

膠原病など他の免疫疾患との合併

円形脱毛症を発症する人は他の自己免疫疾患を併発しているリスクが一般の人よりも高いことが知られています。

例えば、全身性エリテマトーデス（SLE）などの膠原病、関節リウマチ、甲状腺疾患（橋本病など）、尋常性白斑などが挙げられます。特にSLEでは日光過敏症と共に髪が薄くなる症状が見られることがあります。

したがって、円形脱毛症と診断された場合は念のために血液検査を行い、他の隠れた免疫疾患がないかを確認することが推奨されます。身体全体の免疫バランスを整える視点を持つことが必要です。

感染症や皮膚疾患が引き起こす頭皮トラブル

頭皮に直接的な感染や炎症が起こることで、毛根がダメージを受けて脱毛を引き起こすケースも少なくありません。

これらの症状は、薄毛だけでなく、強い痒み、痛み、フケ、発疹などを伴うことが多く、不快感が強いのが特徴です。

原因となるのは真菌（カビ）や細菌、あるいはウイルスであり、適切な抗真菌薬や抗生物質を使用しなければ治癒せず、放置すると毛根が破壊されて永久的な脱毛（瘢痕性脱毛症）につながる恐れもあります。

脂漏性皮膚炎による環境悪化と脱毛

脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌と皮膚に常在するマラセチア菌という真菌の増殖が原因で起こる炎症性疾患です。頭皮が赤くなり、大きくて湿ったフケが出ることが特徴です。

炎症が続くと頭皮環境が悪化し、毛穴が詰まったり毛根が弱ったりして抜け毛が増加します。これを「脂漏性脱毛症」と呼ぶことがあります。

単にシャンプーを変えるだけでは改善せず、皮膚科で抗真菌薬の外用やビタミン剤の処方を受ける必要があります。脂っこい食事を控え、睡眠を十分にとるといった生活習慣の見直しも治療の一環となります。

梅毒などの性感染症による脱毛症状

性感染症の一つである梅毒も進行すると脱毛症状を引き起こすことが知られています。感染から数ヶ月経過した第２期梅毒の症状として現れることが多く、「梅毒性脱毛」と呼ばれます。

髪が虫食い状にまだらに抜ける（Mothe-eaten脱毛）のが特徴的で、後頭部や側頭部によく見られます。痛みや痒みを伴わないため見過ごされがちですが、身体にバラ色の発疹（バラ疹）が出ていないか確認することが大切です。

抗生物質による治療を行えば、梅毒の治癒とともに髪も元通りに生えてきます。

感染症による頭皮トラブルの比較

疾患名	主な原因	頭皮・髪の症状
脂漏性皮膚炎	真菌（マラセチア）	赤み、湿ったフケ、痒み、脱毛
頭部白癬（シラミ等）	白癬菌（水虫菌）	円形の皮剥け、断毛、黒点
梅毒性脱毛	梅毒トレポネーマ	虫食い状の脱毛、痒みなし

白癬菌（水虫）感染とケルズス禿瘡

足にできる水虫と同じ白癬菌が頭皮に感染することを「頭部白癬」と呼びます。かつては「しらくも」と呼ばれ子供に多い病気でしたが、近年は格闘技などの接触競技を通じて大人でも感染例が見られます。

感染部位の髪が根元で折れたり、円形に抜けたりします。さらに、免疫反応が強く出て激しい炎症を起こすと「ケルズス禿瘡（とくそう）」と呼ばれる状態になり、膿を持った腫瘤が形成されます。

この状態になると毛根が完全に破壊され、治癒後もその部分から髪が生えてこなくなる可能性があるため、早期の抗真菌薬の内服治療が極めて重要です。

鉄欠乏性貧血や栄養障害による髪への影響

血液は酸素や栄養を運ぶ重要な役割を担っており、その質や量が低下すると、命維持に直接関わらない「髪」への配給は真っ先にカットされてしまいます。

特に鉄欠乏性貧血は、生理のある女性に多く見られますが、偏食や胃腸障害を持つ男性にも起こり得ます。身体が飢餓状態にあると認識すると、髪を作る活動をストップさせ、休止期脱毛を引き起こすのです。

ここでは栄養不足がどのようにして薄毛を招くのか、具体的な栄養素の働きと共に解説します。

ヘモグロビン不足と酸欠による毛母細胞の不活化

髪の毛母細胞は体内で最も活発に細胞分裂を行う組織の一つであり、大量の酸素を必要とします。鉄分が不足しヘモグロビンが減少すると全身が酸欠状態になり、末端組織である頭皮まで十分な酸素が届かなくなります。

また、鉄自体も髪の構成成分であるケラチンを合成する酵素の働きに必要なミネラルです。貯蔵鉄である「フェリチン」の値が低いと、抜け毛や薄毛のリスクが格段に上がることが研究でも示唆されています。

立ちくらみや爪の反り返り（スプーンネイル）などの症状がある場合は、鉄不足を疑うべきです。

急激なダイエットが招く休止期脱毛

短期間で体重を大幅に減らすような無理なダイエットを行うと、数ヶ月後にまとまった抜け毛が発生することがあります。これは「急性休止期脱毛」の一種です。

極端なカロリー制限やタンパク質不足により、身体が生命維持モードに切り替わり、髪の成長を一時的に停止させるために起こります。特に髪の主成分であるタンパク質（アミノ酸）と、その合成を助ける亜鉛の不足は致命的です。

このタイプの脱毛は栄養状態が改善されれば半年から１年ほどで自然に回復しますが、恒久的な薄毛にならないよう、バランスの取れた食事に戻すことが必要です。

髪の成長に必須となる主要栄養素

栄養素	髪への役割	不足時のサイン
タンパク質	髪の原料（ケラチン）となる	髪が細くなる、切れ毛
鉄・亜鉛	細胞分裂と合成を助ける	抜け毛増加、味覚障害
ビタミンB群	皮脂分泌調整、代謝促進	頭皮のベタつき、炎症

亜鉛欠乏症と味覚障害の関連

亜鉛は食事から摂取したタンパク質を髪に変える際に必須となるミネラルです。現代の食生活では加工食品の添加物が亜鉛の吸収を阻害することがあり、潜在的な亜鉛不足の人は少なくありません。

亜鉛が不足すると、新しい細胞が作られにくくなるため、抜け毛が増えるだけでなく、傷の治りが遅くなったり、味を感じにくくなったりする（味覚障害）症状が現れます。

AGAの原因物質を抑制する働きも期待されている栄養素であるため、サプリメントや牡蠣、レバーなどの食材から意識的に摂取することが髪の健康維持には大切です。

薬剤の副作用による脱毛と病気の関係

病気そのものではなく、病気を治すために服用している「薬」が原因で脱毛が起こることを「薬剤性脱毛症」と呼びます。

最も有名なのは抗がん剤ですが、実は日常的に処方される一般的な薬の中にも、副作用として脱毛を引き起こす可能性のあるものが存在します。

薬を飲み始めてから数週間から数ヶ月後に抜け毛が増えたと感じる場合、それは薬剤の影響かもしれません。ただし、自己判断での断薬は原疾患の悪化を招くため禁物であり、必ず主治医との相談が必要です。

抗がん剤による成長期脱毛の仕組み

抗がん剤は分裂が活発ながん細胞をターゲットにして攻撃する薬ですが、同時に正常な細胞の中で活発に分裂している毛母細胞も攻撃してしまいます。

これにより、成長途中の髪が根元からダメージを受け、治療開始から２〜３週間という短い期間で大量に抜け落ちます。これは「成長期脱毛」に分類されます。

眉毛やまつ毛も抜けることがありますが、治療が終了して薬剤が体から排出されれば毛母細胞は再び活動を開始し、髪は再生します。生え始めの髪質が一時的に変わる（くせ毛になる等）こともありますが、多くの場合は時間の経過と共に元に戻ります。

一般薬（ピル・抗うつ薬等）による休止期脱毛

抗がん剤以外の薬剤では、ヘアサイクルを休止期へ誘導してしまうことによる「休止期脱毛」が一般的です。使用開始から２〜４ヶ月後に薄毛に気づくことが多いです。

原因となる可能性のある薬剤は多岐にわたり、経口避妊薬（ピル）、血液をサラサラにする抗凝固薬、高血圧治療薬（β遮断薬）、抗うつ薬、痛風治療薬、脂質異常症治療薬などが挙げられます。

特にピルの中止後にホルモンバランスが変動して一時的に抜け毛が増える現象はよく見られます。薬の添付文書の副作用欄に「脱毛」の記載があるか確認してみるのも一つの方法です。

主治医との連携と薬の変更検討

薬剤性脱毛症が疑われる場合、最も確実な対策は原因薬の中止や変更ですが、病気の治療上それが難しいケースも多々あります。

命に関わる病気の治療が優先されるべきですが、脱毛が精神的に大きな負担となり、治療意欲を低下させるようであれば本末転倒です。同じ効能を持ちながら脱毛の副作用が少ない別の種類の薬が存在することもあります。

抜け毛の悩みを「副作用だから仕方ない」と諦めず、主治医や薬剤師に率直に相談し、ＱＯＬを保ちながら治療を続ける方法を模索することが重要です。

受診すべき診療科の選び方と検査内容

「病気が原因かもしれない」と感じたとき、最初にどの病院に行けばよいのか迷う方は多いでしょう。症状に合わない診療科を受診してしまうと原因特定が遅れたり、適切な治療が受けられなかったりする可能性があります。

頭皮そのもののトラブルなのか、全身疾患の一部なのか、あるいはAGAなのかによって、向かうべき扉は異なります。ここでは、症状別の診療科の選び方と、そこで行われる検査について解説します。

皮膚科・ＡＧＡクリニック・内科の使い分け

まず、頭皮に赤み、痒み、フケ、円形脱毛斑がある場合は、迷わず「一般皮膚科」を受診してください。これらは皮膚疾患として保険診療の対象となります。

一方、頭皮には異常がなく、生え際や頭頂部がゆっくり薄くなっている場合はＡＧＡの可能性が高いため、「AGA専門クリニック」や皮膚科の自費診療部門が適しています。

そして、急激な体重変化、倦怠感、動悸など全身の不調を伴う場合は、「内科」や「内分泌内科」で甲状腺や貧血、膠原病などのスクリーニングを受けることが推奨されます。

症状別・受診科目の目安ガイド

自覚症状	推奨される診療科	主な検査・対応
円形脱毛、痒み、炎症	一般皮膚科	ダーモスコピー、顕微鏡検査
全身倦怠感、体重変化	内科・内分泌内科	血液検査（ホルモン・栄養）
徐々に進行する薄毛	AGAクリニック	頭皮画像診断、遺伝子検査

血液検査でわかる数値とその意味

内科や皮膚科で行う血液検査は、薄毛の原因を特定するための非常に有力なツールです。一般的には、甲状腺ホルモン値（TSH、FT３、FT４）を測定して甲状腺機能を評価します。

また、フェリチン（貯蔵鉄）や亜鉛、総タンパクなどの栄養状態、抗核抗体などの自己免疫疾患マーカー、梅毒などの感染症の有無も調べることができます。

AGAクリニックでも血液検査を行いますが、これらは主に投薬が可能かどうかを判断するための肝機能チェックなどが中心である場合が多いため、病気の発見を目的とするなら一般医療機関での検査が詳しく行われます。

セカンドオピニオンの活用

皮膚科で「異常なし」と言われたり、AGA治療を続けても全く効果がなかったりする場合は、診断が異なっている可能性があります。例えば、びまん性脱毛症だと思っていたら実は甲状腺機能低下症だった、というケースも存在します。

一つの診断に固執せず、治療の効果が見られない場合は別の視点を持つ医師の意見を聞く（セカンドオピニオン）ことも大切です。

自分の身体で起きていることを正しく理解し、納得して治療に取り組むことが、髪の健康を取り戻す近道となります。

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よくある質問

ストレスだけで髪が抜けることはありますか？

強い精神的ショックや慢性的なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、休止期脱毛や円形脱毛症の引き金になることがあります。

しかし、多くの場合、ストレス単独というよりは、それに伴う食欲不振や睡眠不足などの身体的要因が複合的に絡み合って脱毛を引き起こします。

原因不明の抜け毛を全てストレスのせいにする前に、他の病気が隠れていないか検査することが大切です。

病気による薄毛は治療すれば元に戻りますか？

多くのケースにおいて、原因となっている病気が治療され、身体の状態が正常に戻れば髪は再び生えてきます。甲状腺疾患や貧血、梅毒などは原疾患の治癒が髪の回復に直結します。

ただし、円形脱毛症の一部や、瘢痕（はんこん）を残すような皮膚疾患の場合は回復に時間がかかったり、完全な再生が難しかったりすることもあるため、早期発見と早期治療が重要です。

女性特有の病気で薄毛になることはありますか？

はい、あります。多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）などの婦人科系疾患はホルモンバランスを崩し、女性であっても男性ホルモンの影響を強く受けて薄毛（FAGA）のような症状が出ることがあります。

生理不順やニキビの増加、多毛化（体毛が濃くなる）などの症状を伴う場合は、婦人科での相談をお勧めします。

自分でAGAか病気かを判断する方法はありますか？

完全な自己判断は難しいですが、「抜け毛の毛根」を観察することでヒントが得られる場合があります。

AGAの抜け毛は細く短いものが多いのに対し、病気や休止期脱毛の抜け毛は太く長いまま抜けていたり、毛根部分が白く濁っていたり、あるいは萎縮して尖っていたりすることがあります。

しかし、確実な診断には医師によるダーモスコピー検査や血液検査が必要です。