ブラッシングによる抜け毛への影響と対策方法

ブラッシングによる抜け毛への影響と対策方法

毎日のブラッシングでブラシに絡みついた髪の毛を見て、不安を感じる方は少なくありません。しかし、健康な頭皮環境であっても1日に50本から100本程度の髪は自然に抜け落ちます。

重要なのは、その抜け毛がヘアサイクルによる自然なものか、それとも頭皮トラブルや間違ったケアによる異常なものかを見極めることです。

本記事では、ブラッシング時に髪が抜ける原因を深く掘り下げ、抜け毛の状態から見る危険信号、そして頭皮と髪の密度を守るための正しい道具選びと技術について詳細に解説します。

正しい知識とケアを取り入れることで、不安を解消し、健やかな髪を育む土台を作りましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

髪の毛がブラッシングで抜けるのは自然現象か異常か

ブラッシングのたびに髪が抜ける現象は、その多くがヘアサイクルに基づく生理現象であり、過度に心配する必要はありませんが、抜けた毛の状態によっては進行性の脱毛症や頭皮トラブルのサインである可能性があります。

髪には成長期、退行期、休止期という一定の周期が存在し、休止期を終えた髪は新しい髪に押し出されるようにして自然に脱落します。ブラッシングはこの自然な脱落を補助する役割も担っています。

しかし、本来抜けるべきではない成長途中の髪が抜けている場合は、何らかの異常が発生していると考え、対策を講じることが重要です。

1日あたりの平均的な抜け毛の本数と許容範囲

人間の頭髪は約10万本あり、そのうちの約0.1パーセントにあたる50本から100本程度が毎日自然に抜け落ちます。これが正常なヘアサイクルの範囲内です。

特に洗髪時やその後のドライヤー、そしてブラッシング時には、すでに抜け落ちる準備ができていた髪が物理的な刺激によってまとめて落ちるため、一時的に多く抜けたように感じることがあります。

しかし、これらがトータルで100本程度であれば、新しい髪が生えてくるサイクルが正常に機能している証拠です。

一方で、枕元に大量の毛が散らばっていたり、手櫛を通しただけでパラパラと数本以上が連続して抜けたりする場合は、1日の総数が許容範囲を超えている可能性があります。

日々の変化を冷静に観察し、急激な増加がないかを確認することが大切です。

注意すべき抜け毛の毛根の状態と形状

抜けた髪の毛根部分を観察することで、その抜け毛が自然なものか、異常なものかを判断する有力な手がかりが得られます。

自然脱毛の場合、毛根はマッチ棒のように膨らみがあり、色は白っぽく見えます。これは髪が十分に成長し、寿命を全うして抜けた証拠です。

対して異常脱毛の場合は毛根に膨らみがなく先細りしていたり、全体的に黒っぽくベタつきがあったり、あるいは白い付着物(毛根鞘)が過剰についていたりします。

これらは栄養不足や血行不良、あるいはAGA(男性型脱毛症)の影響で髪が十分に育つ前に抜けてしまった可能性を示唆します。

毛根の状態は頭皮の健康状態を映す鏡であるため、ブラシについた髪を定期的にチェックする習慣を持つことが推奨されます。

毛根の状態による危険度判定

以下の表で、毛根の形状や色から判断できる頭皮の状態と危険度を確認してください。

毛根の特徴想定される状態危険度
マッチ棒のように丸く白い正常なヘアサイクルによる自然脱毛低(問題なし)
膨らみがなく細く尖っている栄養不足やAGAによる成長不良高(要対策)
全体が黒くベトついている血行不良やストレスによる異常脱毛中~高

季節による生え変わりの変化と換毛期

人間にも動物と同じように換毛期のような時期が存在し、特に秋(9月から11月頃)には抜け毛が増える傾向にあります。

これは夏の間に浴びた紫外線のダメージが蓄積して現れることや、気温の変化に伴う自律神経の乱れ、動物としての冬支度の名残など諸説あります。

この時期には普段の倍近い、1日200本程度の髪が抜けることも珍しくありません。季節的な要因であれば一時的なものであり、冬になれば自然と落ち着くことがほとんどです。

秋口に抜け毛が増えたからといって過剰に不安視し、ストレスを溜め込むことは逆効果になります。

季節の変化に伴う生理現象であることを理解し、いつも以上に丁寧なヘアケアを心がけることで、この時期を乗り切ることができます。

ブラッシング時に髪の毛が抜ける主な原因

ブラッシングで髪が抜ける主な原因は、摩擦や牽引などの物理的な負荷と、頭皮環境の悪化による保持力の低下の二つに大別されます。

ブラシという道具は髪を整えるために有用ですが、使い方を誤れば凶器となり、健康な髪まで引き抜いてしまうリスクをはらんでいます。

特に乾燥した髪や絡まった髪に対する強引なアプローチは、切れ毛や抜け毛を直接的に引き起こす最大の要因です。また、土台となる頭皮が弱っていれば、わずかな刺激でも髪は簡単に抜け落ちてしまいます。

原因を正しく特定し、それぞれに対処することが抜け毛予防の第一歩です。

摩擦や静電気による物理的なダメージ

乾燥した環境やプラスチック製のブラシを使用することで発生する静電気は、髪のキューティクルを傷つけ、抜け毛や切れ毛を誘発します。

静電気が発生すると髪同士が反発し合い、まとまりが悪くなるだけでなく、ブラシとの間に強い摩擦が生じます。この摩擦がキューティクルを剥がし、髪の内部のタンパク質や水分を流出させ、髪を脆くします。

脆くなった髪はわずかな引っ張りにも耐えられず、ブラッシングの動作だけで切れたり抜けたりします。

特に冬場など湿度が低い時期は静電気が発生しやすいため、事前の保湿や静電気防止加工が施されたブラシの使用など、摩擦を軽減する工夫が必要です。

髪の絡まりを無理にとかす行為

整髪料の残りや寝癖、ダメージによる毛先の絡まりを根元から一気にとかそうとして強く引っ張る行為は、健康な髪を引き抜く最も単純かつ有害な原因です。

髪は濡れている時や絡まっている時、非常にデリケートな状態にあります。ここで無理な力を加えると、毛根に直接的な負荷がかかり、成長期にある元気な髪さえも強制的に抜けてしまいます。これを牽引性脱毛症の一種と捉えることもできます。

絡まりがある場合は手櫛で大まかにほぐしてから毛先、中間、根元という順序で少しずつとかすことが、物理的な抜け毛を防ぐ鉄則です。

頭皮の乾燥や血行不良の影響

頭皮が乾燥して硬くなると毛根を支える力が弱まり、通常のブラッシングの刺激でも髪が抜けやすくなります。

健康な頭皮は水分と油分のバランスが保たれ、柔軟性がありますが、乾燥が進むと皮膚が委縮し、バリア機能が低下します。また、血行不良は髪の製造工場である毛母細胞への栄養供給を滞らせます。

栄養が不足した髪は細く弱々しく育ち、毛根の定着力も弱いため、ブラシを通すという軽微な動作でさえ耐えられなくなります。

頭皮環境の悪化は、ブラッシングによる抜け毛を増幅させる根本的な原因となるため、保湿ローションの使用やマッサージによる血行促進が求められます。

AGAやFAGAなど脱毛症の可能性

ブラッシングのたびに大量の抜け毛があり、特に細く短い毛が目立つ場合は、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)が進行している可能性を疑う必要があります。

これらの脱毛症はヘアサイクルが乱れ、成長期が極端に短くなることで、髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまう疾患です。

ブラッシングはあくまで物理的な刺激ですが、すでにAGAによって弱っている毛根にとっては、その刺激が最後の一押しとなってしまいます。

正しいケアをしていても抜け毛が減らない、あるいは生え際や頭頂部の薄毛が目立つようになった場合は、ブラッシング方法の見直しだけでなく、専門機関での診断を検討することが賢明です。

正しいブラッシングがもたらす頭皮と髪へのメリット

正しいブラッシングは単に髪の絡まりを解くだけでなく、頭皮環境を改善し、健康な髪の成長を促進する多くのメリットをもたらします。

適切な刺激は頭皮の代謝を高め、自然なツヤ髪を作り出すための最も手軽で効果的なホームケアとなります。

ブラッシングを「抜け毛の原因」と捉えて恐れるのではなく、「育毛のためのケア」として正しく活用することで、将来的な薄毛予防にもつながります。

ここでは、ブラッシングが本来持っているポジティブな効果について具体的に解説します。

頭皮の血行を促進して栄養を届ける

ブラシのピン先が頭皮に適度な刺激を与えることで、マッサージ効果が生まれ、頭皮の血行が促進されます。

血液は髪の成長に必要な酸素や栄養素を運ぶ重要な役割を果たしています。血流が良くなることで、毛母細胞の働きが活性化し、太く丈夫な髪が育ちやすい土壌が整います。

ただし、強すぎる刺激は頭皮を傷つけるため、心地よいと感じる程度の強さで行うことが大切です。

毎日の習慣として適度な頭皮刺激を取り入れることで慢性的な血行不良を改善し、抜け毛に強い頭皮を作ることができます。

髪についた汚れやホコリを落とす

一日の生活の中で髪に付着したホコリ、花粉、フケ、抜け毛などの汚れを、ブラッシングによって物理的に落とすことができます。

これらを事前に落としておくことで、その後のシャンプーの泡立ちが良くなり、洗浄効果が高まります。

また、シャンプーの量を減らすことにもつながり、頭皮への化学的な負担を軽減できます。特に洗髪前のブラッシングは「予洗い」の一部として非常に重要です。

清潔な頭皮環境を保つことは、雑菌の繁殖や炎症を防ぎ、結果として抜け毛のリスクを減らすことにつながります。

皮脂を髪全体に行き渡らせてツヤを出す

根元付近にある皮脂を毛先まで行き渡らせることで髪全体に自然なツヤと潤いを与え、外部刺激から髪を守る天然の保護膜を作ります。

頭皮から分泌される皮脂は天然のコンディショナーとも呼ばれ、髪の乾燥を防ぐ重要な役割を持っています。しかし、皮脂が根元に留まったままだと、頭皮のベタつきや酸化によるニオイの原因になります。

ブラッシングによってこの皮脂を髪全体にコーティングするように広げることで、キューティクルを保護し、静電気の発生や水分の蒸発を防ぐことができます。

これは人工的なオイルでは再現できない、髪本来の美しさを引き出す効果です。

ブラッシングのメリットとデメリットの比較

ブラッシングの効果を正しく理解するために、メリットと誤った方法によるリスクを整理します。

期待できるメリット誤った方法によるリスク
頭皮の血行促進による育毛効果頭皮の損傷や炎症の発生
汚れの除去とシャンプー効果向上過度な摩擦によるキューティクルの剥離
皮脂分散による天然のツヤ出し牽引性脱毛症の誘発

抜け毛を減らすためのブラシの選び方

抜け毛を防ぐためには、自分の髪質や頭皮の状態、そして目的に合ったブラシを選ぶことが極めて重要です。合わないブラシを使い続けることは、髪に不要な摩擦を与え、頭皮を傷つける原因となります。

市場には多種多様なブラシが存在しますが、それぞれに特性があり、得意とするケアが異なります。

例えば、ボリュームを出したいのか、絡まりを取りたいのか、頭皮マッサージをしたいのかによって選ぶべきブラシは変わります。道具選びを見直すだけで、毎日の抜け毛の量は大きく変わる可能性があります。

動物毛ブラシの特徴と適した髪質

猪毛や豚毛などの天然毛を使用したブラシは、髪にツヤを与えたい人や静電気を抑えたい人に適しています。これらは人間の髪と同じタンパク質でできているため、静電気が起きにくく、適度な油分を含んでいます。

猪毛は硬めで弾力があり、髪が太い人や量が多い人でも根元までしっかりとかすことができます。一方、豚毛は柔らかくしなやかで、髪が細い人や柔らかい人、ダメージが気になる人に優しくフィットします。

天然毛のブラシを使うことでキューティクルを整えながら皮脂を毛先まで運び、まとまりのある艶やかな髪を実現できます。

プラスチックやナイロン製ブラシの用途

ナイロンやポリエチレンなどの合成樹脂で作られたブラシは水に強く、絡まりをほどく能力に優れているため、洗髪前の使用やブロー時のスタイリングに適しています。

目が粗いスケルトンブラシなどは手櫛に近い感覚でざっくりととかすことができ、髪への摩擦抵抗を減らすことができます。また、安価で手入れがしやすく、水洗いができるため衛生面でも優れています。

しかし、静電気が発生しやすいという欠点があるため、静電気防止加工が施されたものを選ぶか、ヘアオイルなどを併用して摩擦をコントロールすることが大切です。

クッションブラシやパドルブラシの効果

土台部分がクッションになっているブラシや面積の広いパドルブラシは、頭皮へのあたりが非常に柔らかく、マッサージ効果を重視する人や抜け毛が気になる人に最適です。

クッションが圧力を吸収するため、強くとかしても頭皮や髪に過度な負担がかかりません。特にパドルブラシはピンの数も多く、短時間で髪全体をとかすことができるため、忙しい朝のケアにも向いています。

頭皮をポンポンと軽く叩いて刺激を与えるタッピングケアにも使用でき、血行促進とリラックス効果を同時に得ることができます。

ブラシ選びのチェック項目

購入時に確認すべきポイントを以下に整理します。

  • 毛先が丸く加工されており、頭皮を傷つけない形状か
  • クッション性があり、圧力を分散できる構造か
  • 静電気防止機能がついているか(特に樹脂製の場合)

髪の毛を守る正しいブラッシングの手順

正しいブラッシングの手順を守ることは髪への物理的なダメージを最小限に抑え、抜け毛を防ぐための最も確実な方法です。

いきなり根元からブラシを通す行為は途中の絡まりを強制的に引き締めてしまい、断毛や抜毛を引き起こします。プロの美容師も実践している手順は、髪の構造と物理的な理にかなったものです。

ここでは、髪をいたわりながら効果を最大化するための具体的な動作と手順を解説します。

毛先の絡まりを優しくほどく

ブラッシングの第一歩は、必ず毛先から始めることです。髪の毛先数センチの部分を手に取り、優しくブラシを入れて絡まりをほどきます。この時、無理に引っ張るのではなく、小刻みに動かしながらほぐすイメージで行います。

毛先は最も古くダメージが蓄積している部分であり、絡まりやすくなっています。ここを最初にクリアにすることで、その後の全体のブラッシングがスムーズになり、途中で引っかかって髪が抜けるリスクを大幅に減らすことができます。

特にロングヘアの方は、この工程を丁寧に行うことが美髪への近道です。

中間から根元へと徐々にとかす

毛先の絡まりが解消されたら、次は髪の中間部分、そして最後に根元から毛先へと、徐々にブラシを入れる位置を上げていきます。段階を踏んでとかすことで、髪にかかるテンションを分散させることができます。

根元からとかす際はブラシのピンを頭皮に優しく当て、気持ち良いと感じる程度の圧で毛先に向かって滑らせます。

このプロセスにより、頭皮の血行促進効果と根元の皮脂を毛先に運ぶ効果の両方を得ることができます。急がずゆっくりとストロークすることが、切れ毛を防ぐコツです。

オールバックにするように全体を整える

髪の流れに沿ってとかした後は生え際から頭頂部、後頭部に向かって、髪をかき上げるようにオールバックにとかすと、頭皮全体に満遍なく刺激を与えることができます。

特に側頭部や後頭部は血行が悪くなりやすい箇所であるため、意識的にブラシを通すことでリフトアップ効果やコリの解消も期待できます。

いろいろな方向からブラシを入れることで毛根が多角的に刺激され、髪の立ち上がりが良くなり、ふんわりとしたボリューム感を出すことにもつながります。

朝と夜のタイミングによる使い分け

ブラッシングは朝と夜、それぞれの目的に合わせて行うことが理想的です。

朝のブラッシングは寝癖を直し、ヘアスタイルを整えるとともに、頭皮を目覚めさせて血行を良くする目的があります。

一方、夜のブラッシング、特にシャンプー前のブラッシングは一日の汚れを浮かせ、絡まりをほどいて洗髪時の抜け毛を防ぐために行います。

夜はリラックス効果を意識してゆっくりと時間をかけて行うことで副交感神経を優位にし、質の高い睡眠への導入としても機能します。

一日のサイクルの中に正しいブラッシングを組み込むことが大切です。

抜け毛を増やしてしまうNGなブラッシング習慣

良かれと思って行っているブラッシング習慣が、実は抜け毛を増やす原因になっているケースが多々あります。髪は非常に繊細な構造をしており、特に濡れている時や汚れている時は外部からの刺激に対して脆弱です。

間違った習慣を繰り返すことはキューティクルを破壊し、頭皮環境を悪化させ、最終的には薄毛の進行を早めてしまいます。

ここでは、絶対に避けるべき危険なブラッシング習慣について警告し、その理由を明らかにします。

濡れた状態でのブラッシング

洗髪後や入浴中など髪が濡れている状態でブラシを通すことは、最も避けるべき行為の一つです。髪は濡れると水素結合が切れて膨潤し、キューティクルが開いた無防備な状態になります。

この状態でブラシによる摩擦や牽引力が加わると、キューティクルが簡単に剥がれ落ち、髪の内部組織が破壊されます。また、濡れた髪はゴムのように伸びやすく、少しの力でも断裂したり、根元から抜けたりします。

ブラッシングは必ず髪が乾いている状態で行うか、濡れている場合は目の粗いコームで優しくとかす程度に留めることが鉄則です。

濡れた髪と乾いた髪の強度の違い

水分を含んだ髪がいかにダメージを受けやすいか、その違いを理解しましょう。

状態髪の構造的特徴ブラッシングへの耐性
乾いた髪キューティクルが閉じ、水素結合が定着しているあり(摩擦に注意すれば安全)
濡れた髪キューティクルが開き、膨潤して柔らかいなし(非常に傷みやすい)

力を入れすぎる頭皮への過度な刺激

「頭皮マッサージになるから」といって、痛みを伴うほど強くブラシを押し付けたり、何度も叩きつけたりする行為は頭皮を傷つけ炎症を引き起こす原因になります。

頭皮は顔の皮膚とつながっているデリケートな組織です。過度な刺激は角質層を傷つけ、フケやかゆみ、湿疹などのトラブルを招き、結果として健康な髪が育たない環境を作ってしまいます。

また、物理的な衝撃で新生毛(生えたばかりの産毛)を引き抜いてしまうリスクもあります。ブラッシングは「痛気持ちいい」と感じる強さを上限とし、優しく扱う意識が必要です。

汚れが溜まったブラシの使用

長い間洗っていないブラシには抜けた髪の毛だけでなく、酸化した皮脂、ホコリ、整髪料のカスなどが大量に付着しており、これらは雑菌の温床となります。

汚れたブラシを使い続けることは、せっかく洗髪した清潔な頭皮に再び汚れや雑菌を擦り付けているのと同じです。これが頭皮の炎症やニオイの原因となり、抜け毛を誘発します。

ブラシについた髪は使用のたびに取り除き、定期的に中性洗剤などで水洗いをして、常に清潔な状態を保つことが頭皮の健康を守るためには不可欠です。

一日に何度も行う過剰な回数

ブラッシングには多くのメリットがありますが、やりすぎは禁物です。一日に何十回も、あるいは長時間にわたって執拗にブラッシングを繰り返すと摩擦ダメージが蓄積し、キューティクルが摩耗してしまいます。

必要な皮脂まで取り去ってしまい、頭皮が乾燥して過剰な皮脂分泌を招くという悪循環に陥ることもあります。

朝のスタイリング時、夜の入浴前、就寝前など、タイミングを決めて、1回あたり2〜3分程度で済ませるのが適切です。量より質を重視し、目的を持ったブラッシングを心がけることが大切です。

ブラッシング以外の生活習慣による抜け毛対策

ブラッシングは外側からのケアとして有効ですが、髪そのものを作るのは体の内側です。いくら丁寧なブラッシングを心がけても、栄養不足や睡眠不足、ストレス過多の状態では、抜けにくい健康な髪を育てることはできません。

髪は生命維持に関わらない組織であるため、体の栄養状態が悪化すると真っ先に切り捨てられ、抜け毛として現れます。

ここでは、ブラッシングの効果を底上げし、根本から抜け毛を減らすための生活習慣について解説します。

髪の成長を助けるタンパク質とミネラルの摂取

髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。良質なタンパク質を食事から十分に摂取することが、髪の材料を確保する基本となります。

また、摂取したタンパク質を髪に変えるためには、亜鉛などのミネラルやビタミン類の助けが必要です。特に亜鉛は現代人に不足しがちな栄養素であり、意識的に摂取する必要があります。

偏った食事や無理なダイエットは直ちに髪の痩せ細りや抜け毛につながるため、バランスの取れた食生活が髪の命綱となります。

髪の健康に必要な主要栄養素

以下の栄養素を日々の食事に取り入れることで、抜けにくい強い髪を育てましょう。

栄養素主な働き多く含む食材
タンパク質髪の毛の原料となる肉、魚、卵、大豆製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、ナッツ類
ビタミンB群頭皮の代謝と皮脂分泌を調整豚肉、レバー、緑黄色野菜

質の高い睡眠による成長ホルモンの分泌

髪の成長や頭皮の修復を促す成長ホルモンは、睡眠中に最も多く分泌されます。特に就寝直後の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に分泌が活発になるため、入眠の質を高めることが重要です。

睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が滞り、髪の成長が阻害されるだけでなく、自律神経が乱れて血行不良を引き起こします。

寝る前のスマートフォンの使用を控える、入浴で体を温めるなどしてリラックスし、十分な睡眠時間を確保することは、高価な育毛剤にも勝る抜け毛対策です。

ストレス発散による自律神経の調整

強いストレスを感じると交感神経が優位になり、血管が収縮して血流が悪くなります。これにより頭皮への栄養供給がストップし、急激な抜け毛につながることがあります。

また、ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂の過剰分泌や炎症を引き起こす要因にもなります。

適度な運動、趣味の時間、入浴など、自分なりのストレス解消法を持つことは、頭皮の健康を保つ上で非常に重要です。ストレスを溜め込まない生活は、結果として髪の寿命を延ばすことにつながります。

シャンプー選びと正しい洗髪方法

毎日使うシャンプーが頭皮に合っていない場合、乾燥や炎症を引き起こし、抜け毛の原因になります。

洗浄力が強すぎる石油系界面活性剤を使用したシャンプーは必要な皮脂まで洗い流してしまうため、アミノ酸系などの穏やかな洗浄力のものが推奨されます。

また、洗髪時に爪を立てて洗うことや、すすぎ残しがあることも頭皮トラブルの元凶です。指の腹を使って優しくマッサージするように洗い、洗う時間の倍以上の時間をかけて丁寧にすすぐことが、抜け毛を防ぐ洗髪の基本です。

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よくある質問

最後に、ブラッシングと抜け毛に関して多く寄せられる疑問について回答します。

シャンプー前のブラッシングは必要ですか?

必要です。お風呂に入る前に乾いた状態でブラッシングを行うことで、髪の絡まりをほどき、ホコリなどの汚れを浮かせることができます。

これによりシャンプー時の摩擦ダメージが減り、泡立ちも良くなるため、洗髪による抜け毛を最小限に抑える効果があります。

1日に何回くらいとかすのが良いですか?

朝のスタイリング時、夜の入浴前、就寝前の合計3回程度が目安です。回数よりも、一回一回を丁寧に行うことが大切です。

暇さえあればブラシを通すといった過剰なブラッシングは、かえってキューティクルを傷つけるため控えてください。

ブラシに大量の髪がつくのは病気ですか?

1日に50本から100本程度の抜け毛は生理現象ですが、ブラシに一度に数十本がごっそりとつく場合や、抜けた毛が細く短いものばかりである場合はAGAや円形脱毛症などの疾患の可能性があります。

不安な場合は一度抜けた毛を集めて確認し、専門クリニックへの相談を検討してください。

整髪料がついたままとかしても平気ですか?

ハードスプレーやワックスで固めた髪に無理にブラシを通すと髪が引っかかり、強い力で引き抜かれてしまうため危険です。

整髪料がついている場合は無理にとかさず、先にお湯で予洗いをして整髪料を落としてからシャンプーや指通しを行うのが安全です。

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