フィナステリドの服用が精子や男性機能に与える影響は、多くの男性にとって深刻な懸念材料です。
結論から申し上げますと、精液量の減少や性欲の減退といった副作用が報告されているものの、発現頻度は極めて低く、多くの場合、服用の中止によって回復します。
しかし、これから妊活を始める方や、将来的な生殖機能への不安を抱える方にとっては、わずかなリスクであっても正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
医学的データに基づき、フィナステリドと精子・男性機能との関係について、皆様の不安を解消できるよう詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
フィナステリドが精子に与える具体的な影響とは
フィナステリドを服用すると精子にどのような変化が生じるのか、具体的なデータや医学的な見解を知ることは、治療を継続するかどうかの判断材料として非常に重要です。
多くの研究において、フィナステリドが精子の質に与える影響は限定的であるとされています。
しかし、個人の体質や健康状態によっては無視できない変化が現れる可能性があります。精液量、運動率、そして副作用の確率という観点から、医学的な見地に基づいて詳細に紐解いていきます。
精液量や精子濃度への作用
フィナステリドの内服を開始した患者の一部において、精液量の減少が報告されています。
これは、フィナステリドが作用する5αリダクターゼという酵素が、精嚢や前立腺といった生殖器官の機能維持に関与しているためです。
精液の大部分は精嚢と前立腺で作られる分泌液で構成されていますが、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成が抑制されると、これらの器官への刺激が弱まります。その結果として、分泌液の量が減少する場合があります。
精液所見における主な変化と傾向
| 評価項目 | 一般的な変化の傾向 | 回復の見込み |
|---|---|---|
| 精液量 | 軽度から中等度の減少が見られる場合がある | 服用中止後、数ヶ月で回復する傾向にある |
| 精子濃度 | 一時的に数値が低下するケースが報告されている | 休薬により改善することが多い |
| 精子総数 | 精液量の減少に伴い、総数も減少する可能性がある | 可逆的な変化であり、永続的なダメージは稀である |
また、精子濃度(精液1mlあたりに含まれる精子の数)についても、軽度の低下が見られる場合があります。
健康な成人男性であれば、この程度の低下が自然妊娠の確率に大きな影響を与えるケースは稀ですが、もともと精子濃度が基準値を下回っている場合や、境界域にある場合には注意が必要です。
精子を作る機能そのものへのダメージは可逆的であり、薬の服用を中止すると、多くの場合は元の数値に戻ると考えられています。重要なのは、自分自身のベースラインを知っておくことです。
運動率と奇形率に関するデータ
精子の「質」を決定づける重要な要素として、精子の運動率と奇形率が挙げられます。運動率は、活発に動いている精子の割合を示し、卵子まで到達して受精するために極めて重要な指標です。
フィナステリドの服用による運動率への影響については、有意な低下は見られないとする研究結果が多い一方で、一部の感受性の高い男性においては運動率の低下が認められる場合があります。
奇形率に関しては、現在のところフィナステリドが精子のDNA損傷を引き起こしたり、奇形精子の割合を大幅に増加させたりするという明確なエビデンスは確立されていません。
精子の形成過程には約74日という期間が必要です。フィナステリドがこの形成プロセスに直接的な悪影響を及ぼすリスクは低いと考えられています。
ただし、長期的な服用が精子のDNA断片化(DFI)に微細な影響を与える可能性を示唆する小規模な研究も存在します。
そのため、妊活が長期化する場合や原因不明の不妊が続く場合には、専門医と相談の上で一時的な休薬を検討するのも選択肢の一つとなります。
副作用が発現する確率と頻度
臨床試験のデータを見ると、フィナステリドによる生殖機能関連の副作用の発現率は全体として低く抑えられています。
プラセボ(偽薬)を服用したグループと比較しても、その差はわずかであり、心理的な要因(ノセボ効果)も影響している可能性があります。
具体的には、リビドー(性欲)減退、勃起機能不全、射精障害などの副作用が報告されています。これらが発現する確率は一般的に数パーセント程度です。
また、精子の質に関する副作用については、自覚症状として現れにくいため正確な頻度を特定するのは難しいものの、不妊治療の現場においてフィナステリドが主たる原因となるケースはそれほど多くありません。
過度に不安を感じること自体がストレスとなり、精子の質や男性機能に悪影響を及ぼすときもあるため、正しい知識を持って冷静に向き合いましょう。
男性ホルモンとフィナステリドの作用機序
フィナステリドがなぜ脱毛を抑制するのか、そしてなぜそれが精子や男性機能に関係するのかを理解するためには、体内の男性ホルモンの動き、すなわち作用機序を知る必要があります。
ホルモンバランスの変化は全身に影響を及ぼす可能性があります。しかし、フィナステリドは特定の酵素のみを標的とすることで、その影響を限定的に留めるよう設計されています。
この仕組みを正しく把握すると、副作用への過度な不安を和らげられます。
テストステロンとジヒドロテストステロンの関係
男性の体内では、睾丸(精巣)でテストステロンという主要な男性ホルモンが作られています。テストステロンは筋肉や骨格の形成、性欲の維持、そして精子の形成において中心的な役割を果たします。
血液に乗って運ばれたテストステロンの一部は、毛乳頭細胞などに存在する「5αリダクターゼ」という酵素の働きによって、ジヒドロテストステロン(DHT)という、より活性の強い男性ホルモンに変換されます。
このDHTは、胎児期には男性器の形成に重要な役割を果たしますが、成人においてはAGA(男性型脱毛症)の主な原因物質として働きます。また、前立腺肥大にも関与しています。
フィナステリドを服用すると、DHTの生成が抑制される一方で、変換されなかったテストステロンの血中濃度はわずかに上昇する傾向があります。つまり、フィナステリドは「男性ホルモン全体を減らす」薬ではありません。
ホルモンへの作用と身体反応の比較
| ホルモン物質 | フィナステリド服用時の変化 | 身体への主な影響 |
|---|---|---|
| テストステロン | 軽度上昇または変化なし | 筋肉維持、性欲、精子形成機能は基本的に維持される |
| ジヒドロテストステロン (DHT) | 有意に低下する | 抜け毛の減少、前立腺体積の縮小、精液量の減少など |
| LH (黄体形成ホルモン) | 大きな変化なし | 精巣でのテストステロン分泌指令は正常に保たれる |
あくまで「特定の悪さをするホルモン(DHT)の生成を抑える」薬であると理解することが正確です。この選択的な作用により、男性としての基本的な機能への影響を最小限に抑えています。
5αリダクターゼ阻害作用の仕組み
5αリダクターゼにはI型とII型の2種類が存在します。フィナステリドは主にII型の5αリダクターゼを阻害する作用を持っています。II型は前立腺や頭頂部の毛乳頭に多く分布しています。
ここを選択的にブロックして、全身への不要な影響を抑えつつ、脱毛抑制効果を発揮します。この阻害作用により、血中のDHT濃度は大幅に低下しますが、テストステロン自体が持つ男性機能維持の役割は損なわれにくい構造になっています。
しかし、精嚢や前立腺などの生殖器系もDHTの刺激を受けて機能を維持している側面があるため、DHTの急激な低下が、一部の人において精液量の減少や違和感として現れる仕組みとなっています。
このバランスの変化に身体が慣れると、副作用が時間とともに軽減する場合もあります。
ホルモンバランスの変化が身体に及ぼす影響
ホルモンバランスが変化すると、身体はホメオスタシス(恒常性)を保とうとして調整を行います。
フィナステリド服用初期に起こりうる倦怠感や気分の変化などは、テストステロンとエストロゲン(女性ホルモン)の比率が微妙に変化することによって生じると考えられています。
乳房の圧痛(女性化乳房の兆候)なども同様のメカニズムで説明されます。精子形成に関しても、テストステロンが十分に存在していれば基本的には維持されますが、精巣内での微細なホルモン環境の変化が影響する可能性はゼロではありません。
精子の成熟過程に何らかの影響を与える可能性は完全には否定できませんが、長期的な臨床データを見る限り、健康上の深刻な問題を引き起こすようなホルモンバランスの崩壊は報告されていません。
医師の管理下で使用する限り、安全性は高い水準で確保されています。
妊活中におけるフィナステリド服用の考え方
これから子供を授かりたいと考えているご夫婦にとって、夫が服用しているAGA治療薬が妊娠や胎児に悪影響を与えないかどうかは、非常にデリケートかつ重要な問題です。
インターネット上には様々な情報が溢れています。しかし、医学的なガイドラインに基づいた正しい判断が必要です。
服用を中止すべきタイミングと期間
基本的に、フィナステリドを服用したまま子作りを行っても、胎児に奇形が生じたり、妊娠率が著しく低下したりする可能性は極めて低いとされています。
しかし、念には念を入れるという観点や、心理的な安心感を優先する場合、一時的な休薬を選択することは賢明な判断と言えます。
もし休薬をするのであれば、精子が新しく作られてから射精されるまでのサイクルを考慮する必要があります。精子の形成には約74日かかり、その後、精巣上体での成熟や輸送に数週間を要します。
そのため完全に薬の影響が抜けた精子で妊活に臨むためには、子作りの予定の1ヶ月から3ヶ月前には服用を中止するのが理想的です。
ただし、服用を中止すれば再び脱毛が進行するリスクがあるため、パートナーとよく話し合い、優先順位を決めましょう。
推奨される休薬期間の目安
| 目的 | 推奨される休薬開始時期 | 備考 |
|---|---|---|
| 体内からの薬剤消失 | 性交渉の1週間前 | 成分自体は数日で体内から排出される |
| 精子形成への影響排除 | 性交渉の3ヶ月前 | 精子の生成サイクル(約74日)を考慮した期間 |
| 心理的な安心確保 | 妊活開始の1ヶ月前 | パートナーの不安を取り除くための期間設定 |
パートナーへの薬剤移行のリスク
フィナステリドは皮膚からも吸収される性質があるため、女性、特に妊娠中や妊娠の可能性がある女性が割れた錠剤や粉末に触れることは禁忌とされています。これは、フィナステリドが男児胎児の生殖器の形成を阻害する恐れがあるためです。
コーティングされた錠剤であれば、触れること自体に大きな問題はありませんが、保管場所には十分な配慮が必要です。
一方、性交渉を通じて精液に含まれる微量のフィナステリドが女性の体内に入り、胎児に影響を与えるのではないかという懸念があります。
研究によると、精液中に移行するフィナステリドの量は極めて微量であり、胎児に影響を及ぼす量には到底及ばないと報告されています。そのため医学的には服用中の性交渉でコンドームを使用する必要性は低いとされています。
しかし、心情的な不安を解消するために、妊娠期間中はコンドームを使用するか、一時的に服用を中断する方も少なくありません。精神的な平穏も妊活には重要です。
胎児への影響と催奇形性の実際
フィナステリドにおける催奇形性のリスクは、あくまで「妊娠中の女性が薬剤を体内に取り込んだ場合」に限定されます。
男性が服用した場合の精子を介した催奇形性のリスクについては、動物実験やこれまでの臨床データにおいて、有意なリスク増加は確認されていません。
世界中で何百万人もの男性がフィナステリドを服用しており、その中には服用中に子供を設けた方も多数いらっしゃいますが、フィナステリドが原因で先天異常が生じたという確定的な報告はなされていません。
過度な心配は不要ですが、妊娠というライフイベントはご夫婦にとって非常に大切な時期です。少しでも不安が残るようであれば、自己判断せずに医師に相談し、休薬や代替療法の可能性を含めて検討すると良いでしょう。
精子検査の重要性と数値の変動
自身の精子の状態を客観的に把握することは、フィナステリドの服用を検討する際、あるいは服用中に妊活を始める際に非常に有益です。
精子検査は「不妊治療クリニックに行く必要がある」「恥ずかしい」といったイメージがあるかもしれません。
しかし、最近では郵送キットやメンズヘルスクリニックでの簡易検査など、ハードルは下がってきています。数値を知ることは、将来のライフプランを守るためのリスク管理でもあります。
服用開始前に検査を受けるメリット
フィナステリドの服用を開始する前に精子検査を受けておくことには、大きなメリットがあります。それは、自分自身の「基準値」を知れる点です。
もし服用後に精子の数値が悪化したとしても、服用前のデータがあれば比較検討できます。それが薬の影響なのか、それとも加齢やストレスなど他の要因によるものなのかを判断する材料になります。
また、万が一服用前から数値が低いと判明した場合は、早期に対策を打つことが可能になります。
AGA治療と並行して生活習慣の改善に取り組んだり、泌尿器科で精索静脈瘤などの基礎疾患がないかを確認したりすると、将来の不妊リスクを未然に防ぐことにも繋がります。
精子検査を受ける際に確認すべきポイント
- 精液量:1.5ml以上あるかどうかを確認します。
- 精子濃度:1mlあたり1500万匹以上の精子がいるかが目安です。
- 総精子数:1回の射精で3900万匹以上が望ましいとされています。
- 運動率:元気に動いている精子が40%以上あるかを見ます。
- 正常形態率:正常な形をした精子が4%以上あるかを確認します。
数値が悪化した場合の対策
定期的な検査や、妊活を機に行った検査で精子の数値が悪化していることが分かった場合、まずは焦らずに原因を探ることが大切です。
フィナステリドを服用している場合は、一旦服用を中止し、1ヶ月から3ヶ月後に再検査を行うのが一般的な方法です。薬の影響であれば、休薬によって数値の改善が見込めます。
もし休薬しても数値が改善しない場合は、精索静脈瘤やホルモン異常、あるいは過度のストレス、喫煙、肥満、長時間のサウナ利用など、薬以外の要因が隠れている可能性があります。
この場合は、AGA治療薬の再開を検討する前に、男性不妊を専門とする泌尿器科医の診察を受け、根本的な治療が優先されます。
泌尿器科での専門的な検査内容
一般的な精液検査では、精子の数や動きを目視や機械でカウントしますが、泌尿器科での専門的な検査ではさらに踏み込んだ解析が可能です。
例えば、精子のDNA断片化指数(DFI)検査では、精子の核にあるDNAがどの程度損傷しているかを調べられます。見かけ上の数や動きが正常でも、DNA損傷率が高いと受精率や妊娠継続率に影響するケースがあります。
また、超音波検査(エコー)を用いて精巣の大きさや血流を確認したり、血液検査でテストステロンやFSH(卵胞刺激ホルモン)などの値を測定したりします。
造精機能そのものに問題がないかを総合的に評価すると、より確実な対策が可能になります。
フィナステリドを服用しながら安心して生活を送るためにも、こうした専門的な医療機関を頼ることは非常に有効な手段です。
フィナステリドによる性欲減退と勃起機能
男性としての自信やパートナーとの関係性において、性欲や勃起機能は極めて重要な要素です。
フィナステリドの副作用として添付文書にも記載されている「性欲減退」や「勃起機能不全(ED)」について、実際にどの程度のリスクがあるのか、詳しく解説します。
もし症状が出た場合にはどう対処すればよいのか、正しい知識を持つと冷静な判断ができるようになります。
性欲減退が起こる原因と心理的要因
フィナステリド服用後に性欲が減退する原因として、DHTの減少が関与している可能性が挙げられます。
しかし、実はテストステロン値自体は保たれているため、ホルモン的な要因だけでは説明がつかないケースも多々あります。
ここで無視できないのが「ノセボ効果」と呼ばれる心理的な要因です。「この薬を飲むと性欲が落ちるかもしれない」という強い予期不安や思い込みが、実際に性的な関心の低下を招くことが研究で示唆されています。
また、薄毛に対する悩み自体がストレスとなり、自信を喪失させている状態も性欲低下の一因となり得ます。
治療を開始して髪が増えてくると、自信を取り戻して逆に性欲が回復したという報告もあり、メンタル面と性機能は密接にリンクしています。
症状を感じた際は、身体的な変化だけでなく、最近のストレス状況や心理状態も振り返ってみることが大切です。
性機能に関連する副作用の報告内容
| 症状 | 特徴と傾向 | 対処法 |
|---|---|---|
| 性欲減退 | 性的な関心や衝動が以前より弱まる感覚 | ストレス管理、運動、必要に応じて減薬を検討 |
| 勃起機能不全 (ED) | 勃起の硬さが不足する、維持できない | ED治療薬(PDE5阻害薬)の併用が可能 |
| 射精障害 | 精液量の減少や射精時の快感の低下 | 経過観察または一時的な休薬で様子を見る |
勃起機能不全(ED)との関連性
勃起は、性的刺激によって神経が興奮し、陰茎海綿体に血液が流れ込むことで起こります。
フィナステリドが血管系や神経系に直接的なダメージを与えることは考えにくいですが、アンドロゲン(男性ホルモン)の作用が一部抑制されるため影響が出る可能性はあります。
勃起をサポートするNO(一酸化窒素)合成酵素の働きに微妙な影響を与える可能性が基礎研究レベルでは議論されています。
しかし、臨床的にはフィナステリド服用中にEDを訴える患者に対し、ED治療薬を処方すると問題なく性生活を継続できるケースがほとんどです。
AGA治療薬とED治療薬の併用は禁忌ではなく、多くのクリニックで安全に行われています。EDの症状が現れたからといって直ちにAGA治療を諦める必要はありません。医師に相談すると解決策が見つかります。
射精障害が疑われる場合の症状
射精障害には、射精に至るまでの時間が極端に長くなる遅漏や、精液が膀胱の方へ逆流してしまう逆行性射精などがあります。フィナステリド服用者で主に見られるのは「射精感の減弱」や「精液量の減少」です。
オーガズムの強さが以前より弱まったと感じたり、射精時の精液の勢いがなくなったりする場合があります。これらは生命に関わる副作用ではありませんが、男性にとってはQOL(生活の質)に関わる重要な問題です。
症状が軽微であれば、身体が薬に慣れるのを待つのも一つの方法ですが、苦痛が大きい場合は医師に相談してください。
服用頻度を毎日から隔日に減らしたり、投与量を調整したりすると、発毛効果を維持しつつ副作用を軽減できる可能性があります。
ポストフィナステリド症候群(PFS)の理解
近年、インターネットや一部の医学論文で議論されているのが「ポストフィナステリド症候群(PFS)」という概念です。
これは、フィナステリドの服用を中止した後も、性機能障害や抑うつなどの症状が長期にわたって持続する状態を指します。
現時点では医学的に完全に解明された病態ではありませんが、リスクとして認識しておきましょう。正しい情報を知ると、冷静な判断が可能になります。
服用中止後も続く症状の定義
通常、薬の副作用は、その成分が体内から排出されれば消失します。
しかし、PFSにおいては、休薬後数ヶ月、あるいは数年にわたって性欲の低下やED、疲労感、ブレインフォグ(頭に霧がかかったような状態)などが続くと報告されています。
このメカニズムについては、エピジェネティクス(遺伝子発現の制御)の変化や、神経ステロイドの減少などが仮説として挙げられていますが、確定的な結論には至っていません。
PFSは非常に稀な現象であると考えられています。
PFSとして報告されている主な症状例
| カテゴリ | 具体的な症状 | 頻度 |
|---|---|---|
| 性機能 | 持続的なED、性欲の消失、性器の感覚鈍麻 | 極めて稀 |
| 精神神経 | 重度の抑うつ、不安、集中力の低下、不眠 | 極めて稀 |
| 身体症状 | 慢性的な疲労、筋肉の痙攣、皮膚の乾燥 | 報告例は少ない |
大多数のユーザーは服用中止後に元の状態に戻ります。
しかし、一部の感受性の高い個体において、不可逆的または長期的な変化が生じる可能性がゼロではないという点は、インフォームド・コンセント(説明と同意)の観点からも理解しておくべきです。
現在報告されている主な症例と傾向
PFSを訴える患者の傾向として、服用期間の長さや年齢に一貫したパターンは見出されていません。若年層での報告もあれば、中高年での報告もあります。
ただ、元々うつ傾向があったり、強い不安を抱えていたりする場合に、症状が顕著に出やすいという指摘もあります。世界的な皮膚科学会や泌尿器科学会においてもPFSの存在については議論が続いています。
過度に恐れる必要はないものの、心身に異変を感じた場合には速やかに服用を中止し、専門医の診察を受けることが推奨されています。早期の対応が、症状の固定化を防ぐ鍵となる可能性があります。
リスクを最小限に抑えるための服用管理
PFSを含む副作用のリスクを最小限にするためには、自己判断での個人輸入薬の使用を避け、必ず医師の処方のもとで服用することが大切です。
個人輸入の薬剤は品質が保証されていません。万が一健康被害が出た場合でも国の救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外となってしまいます。
また、定期的な通院を通じて医師とコミュニケーションを取ることが重要です。体調の変化を細かく報告すると、副作用の兆候を早期に発見できます。
「なんとなく調子が悪いけれど、髪のためだから」と我慢して服用を続けるのは避けてください。健康な身体があってこそのヘアケアです。
AGA治療と男性機能の維持を両立するために
薄毛の悩みも解決したい、でも男性としての機能も大切にしたい。この二つは決してトレードオフ(二者択一)の関係ではありません。適切な管理と生活習慣の工夫によって、両立させることは十分に可能です。
医師との連携と定期的なモニタリング
AGA治療は長期戦です。独断で薬の量を増やしたり逆に中断したりするのは、効果を損なうだけでなく、副作用のリスクを高める原因にもなります。信頼できる医師を見つけることが第一歩です。
定期的に血液検査や問診を受けると、客観的なデータに基づいた治療継続が可能になります。特に妊活を控えている時期や、体調に変化があった時は、隠さずに医師に相談しましょう。
医師はあなたのライフステージに合わせた治療計画の変更(一時的な休薬や、外用薬への切り替えなど)を提案してくれます。
男性機能をサポートする生活習慣のポイント
- 適度な運動:下半身の血流を促すスクワットやウォーキングを習慣にします。
- 十分な睡眠:テストステロンは睡眠中に多く分泌されるため、質の高い睡眠が必要です。
- バランスの良い食事:亜鉛やビタミン、タンパク質を意識的に摂取します。
- 禁煙:喫煙は血管を収縮させ、EDや精子の質の低下を招く最大のリスク因子です。
- 深酒を控える:過度なアルコールはテストステロンの生成を阻害します。
生活習慣の改善による男性機能のサポート
薬の影響を心配する前に、まずは自分自身の生活習慣の見直しも大切です。実は、精子の質や勃起力は、睡眠不足、運動不足、肥満、喫煙といった生活習慣の乱れによって大きく低下します。
フィナステリドによるわずかなマイナスの影響があったとしても、生活習慣を改善するとプラスに転じさせ、総合的な男性機能を向上させることは可能です。
特に筋力トレーニングは有効です。テストステロンの分泌を促し、全身の血流を改善するため、AGA対策としても男性機能対策としても非常に効果的です。
健康的な体作りは、髪の成長に必要な栄養を頭皮に届けることにも繋がります。薬だけに頼るのではなく、身体の内側から活力を高める取り組みを取り入れましょう。
他の治療薬への変更や減薬の検討
どうしてもフィナステリドによる副作用が気になる場合や、実際に症状が出てしまった場合は、他の治療法への切り替えを検討します。
例えば、デュタステリドへの変更が挙げられますが、副作用のリスクも考慮が必要です。人によっては合う合わないがあります。
また、内服薬ではなく、ミノキシジルの外用薬を中心に据えたり、メソセラピー(注入治療)を行ったりする選択肢もあります。
フィナステリドの服用量を1mgから0.2mgに減量すると、副作用を軽減しつつ、ある程度の脱毛抑制効果を維持できる場合もあります。
医師と相談しながら、あなたにとっての「ベストバランス」を見つけ出しましょう。
よくある質問
- フィナステリドを飲むと不妊になりますか?
-
フィナステリドの服用が直接的な原因となって、永久的な不妊症になる可能性は極めて低いです。
精液量の減少や精子濃度の低下が見られる場合はありますが、多くの場合は自然妊娠が可能な範囲内、もしくは休薬によって回復する可逆的な変化です。
ただし、元々の精子数が少ない方が服用する場合、数値が不妊のリスク域まで下がる可能性も否定できないため、心配な場合は事前に精液検査を受けることをお勧めします。
- 子作りを開始するどれくらい前に薬をやめるべきですか?
-
精子が作られてから射精されるまでのサイクルは約74日です。薬の影響を完全に排除した状態で妊活に臨みたい場合は、子作りの予定の1ヶ月から3ヶ月前に服用を中止するのが理想的です。
ただし、服用を継続したままでも健康な子供を授かっている方は多数いますので、パートナーと相談の上、心理的な安心感と脱毛リスクのバランスを考慮して決定してください。
- 妻が妊娠中に夫が服用していても胎児に影響はないですか?
-
夫がフィナステリドを服用していても、精液中に移行する薬剤の成分は極微量であり、胎児の発育に影響を与えるレベルではないことが医学的に示されています。
そのため妊娠中の性交渉においても過度な心配は不要です。念のためコンドームを使用すると、より安心感を高められます。
なお、妊娠中の女性が薬剤そのものに触れることは厳禁ですので、保管管理には十分ご注意ください。
- 服用をやめれば精子の状態や性欲は元に戻りますか?
-
大半のケースにおいて、フィナステリドの服用を中止すれば、減少した精液量や低下した性欲は数週間から数ヶ月程度で元の状態に回復します。
薬の成分は数日で体内から消失しますが、身体機能の安定には時間が必要です。ホルモンバランスや精子形成機能が完全に安定するまでには少し時間がかかる場合があります。
稀に症状が長引くケースもありますが、生活習慣の改善などを併用すると回復を促すことが可能です。
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