男性の薄毛の症状とセルフチェックの方法

男性の薄毛の症状とセルフチェックの方法

薄毛の悩みは多くの男性にとって深刻な問題です。しかし、薄毛と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。

この記事では、代表的な15種類の男性の薄毛の症状と、ご自身でできる簡単なセルフチェック方法について詳しく解説します。ご自身の状態を把握し、適切な対応を考えるための一助となれば幸いです。

薄毛の種類

AGA(男性型脱毛症)円形脱毛症休止期脱毛症
脂漏性脱毛症抜毛症(トリコチロマニア)粃糠(ひこうせい)性脱毛症
内分泌異常に伴う脱毛症瘢痕(はんこん)性脱毛症薬剤性脱毛症
牽引性脱毛症梅毒性脱毛症頭部白癬性脱毛症(しらくも)
栄養障害に伴う脱毛症放射線治療による脱毛先天性乏毛症・縮毛症
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この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

男性の薄毛は15種類+αある

男性の薄毛は、一般的に知られるAGA(男性型脱毛症)以外にも、さまざまな種類が存在します。その数は主要なものだけでも15種類にのぼり、それぞれ症状の現れ方や進行の仕方が異なります。

これらに加えて、複数の要因が絡み合って発生するケースや、比較的稀な脱毛症も存在するため、実際には15種類以上存在します。

薄毛の症状に気づいたら、まずはどのような種類の薄毛の可能性があるのかを把握することが、適切なケアへの第一歩となります。自己判断は禁物ですが、症状の特徴を知ることで、専門医へ相談する際の助けになります。

薄毛の種類によって、推奨される対処法や治療法が大きく変わることもあります。

そのため、ご自身の薄毛がどのタイプに該当する可能性があるのか、あるいはどのタイプに近いのかを理解しておくことは非常に重要です。

この記事を通じて、それぞれの薄毛の症状の特徴や、ご自身で確認できるポイントを学び、早期発見・早期対応につなげましょう。

薄毛の多様な分類

分類の視点主な特徴代表的な薄毛の種類
原因遺伝、ホルモン、生活習慣、疾患などAGA、円形脱毛症、脂漏性脱毛症
症状の範囲局所的、広範囲、全体的円形脱毛症(局所)、AGA(広範囲の可能性)
進行度急性的、慢性的、進行性休止期脱毛症(急性)、AGA(慢性・進行性)

これらの分類は一例であり、実際には症状が重複したり、複数の要因が関与したりすることも少なくありません。

次のセクションからは、具体的な薄毛の種類とその症状、セルフチェック方法を詳しく見ていきます。

AGA(男性型脱毛症)

生え際後退と頭頂部薄毛が進む AGA の3段階図

AGA(Androgenetic Alopecia)、すなわち男性型脱毛症は、成人男性に見られる進行性の脱毛症で、薄毛の悩みを持つ方の多くがこのタイプに該当します。

遺伝的要因や男性ホルモンの影響が深く関与していると考えられています。

AGAは、他の脱毛症と異なり、特定のパターンで薄毛が進行していく特徴があります。

AGAの主な症状

AGAの症状は、多くの場合、思春期以降に徐々に現れ始めます。初期には自覚しにくいこともありますが、進行すると見た目にも明らかな変化が生じます。

生え際の後退

額の生え際が徐々に後退していくのは、AGAの典型的な症状の一つです。特に、M字型に剃り込みが深くなっていくパターンが多く見られます。

鏡で正面から見たときに、以前よりも額が広くなったと感じる場合や、左右の生え際のラインが後退してきた場合は注意が必要です。

頭頂部の薄毛

頭頂部(つむじ周辺)の髪の毛が薄くなるのも、AGAによく見られる症状です。O字型に薄毛が広がり、地肌が透けて見えるようになります。

自分では気づきにくい部位のため、合わせ鏡で確認したり、家族や理容師・美容師に指摘されて気づくこともあります。

髪質の変化

AGAが進行すると、髪の毛一本一本が細く、短く、弱々しくなる傾向があります。これは、毛髪の成長期が短縮し、十分に成長する前に抜け落ちてしまうためです。

以前と比べて髪にハリやコシがなくなった、ボリュームが出にくくなったと感じる場合は、AGAのサインかもしれません。

AGAのセルフチェックポイント

AGAの早期発見には、日頃からのセルフチェックが役立ちます。以下のポイントに注意して、ご自身の状態を確認してみましょう。

抜け毛の量と質の確認

シャンプー時やブラッシング時、枕元の抜け毛の量が増えていないか確認します。また、抜け毛の中に細くて短い毛が多く混じっている場合は、AGAの可能性があります。

健康な抜け毛は太く、毛根部分がしっかりしていますが、AGAによる抜け毛は細く、毛根も小さいことがあります。

進行パターンの確認

AGAの進行パターン主な特徴セルフチェック時の視点
M字型(額の生え際)額の両サイドから後退し、M字に見える額の生え際のラインの変化、剃り込みの深さ
O字型(頭頂部)頭頂部から円形に薄毛が広がるつむじ周りの地肌の透け具合、髪の密度の低下
U字型(混合型)生え際全体が後退し、頭頂部も薄くなる額の広がりと頭頂部の薄毛の同時進行

家族歴の確認

AGAは遺伝的要因が強いため、父方・母方の親族に薄毛の方がいる場合は、AGAを発症する可能性が高まります。家族歴はあくまで可能性の一つですが、参考情報として把握しておくと良いでしょう。

  • 父または母方の祖父が薄毛である
  • 兄弟に薄毛の人がいる

これらの項目に当てはまる場合は、AGAのリスクを考慮に入れる必要があります。

AGAは、治療薬の選定や濃度で治療方針を間違わないために遺伝子検査をやっておくことをおすすめします。

円形脱毛症

円形に抜ける脱毛斑を示した頭頂部イラスト

円形脱毛症は、頭部に円形または楕円形の脱毛斑が突然現れる疾患です。年齢や性別を問わず発症する可能性があり、一つだけできる場合もあれば、複数個所に多発することもあります

。一般的には自己免疫疾患の一つと考えられており、毛髪を産生する毛包組織が誤って攻撃されることで脱毛が起こります。

円形脱毛症の主な症状

円形脱毛症の症状は、脱毛斑の大きさや数、発生部位によって様々です。多くの場合、自覚症状はほとんどありませんが、時に軽いかゆみや違和感を伴うこともあります。

境界明瞭な脱毛斑

最も特徴的な症状は、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が突然出現することです。脱毛斑の境界ははっきりしており、周囲の正常な毛髪との区別がつきやすいです。

脱毛斑の表面は滑らかで、炎症やフケなどは通常見られません。

脱毛範囲の拡大と多発

脱毛斑は一つだけの場合もあれば、複数個所に同時に、あるいは次々と発生することがあります。個々の脱毛斑が拡大したり、隣り合う脱毛斑が融合して大きな不整形な脱毛斑になることもあります。

重症化すると、頭部全体の毛髪が失われる「全頭型」や、眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が失われる「汎発型」に進行することもあります。

爪の異常

円形脱毛症の患者さんの中には、爪に小さな点状のへこみや横筋、もろさなどの異常が見られることがあります。

これは、毛髪と爪が同じケラチンというタンパク質からできているため、関連性があると考えられています。

円形脱毛症のセルフチェックポイント

円形脱毛症は、多くの場合、美容院や家族からの指摘で気づくことが多いですが、以下の点に注意することで早期発見につながる可能性があります。

頭皮の確認

定期的に合わせ鏡を使ったり、家族に協力してもらったりして、頭皮全体をチェックしましょう。特に、普段見えにくい後頭部や側頭部も注意深く観察します。

急に地肌が見える部分ができていないか確認します。

脱毛斑の特徴

チェック項目円形脱毛症の可能性を示唆する所見確認方法
脱毛斑の形状円形または楕円形鏡で脱毛部分の形を確認
脱毛斑の境界比較的はっきりしている脱毛部と健常部の境目を確認
脱毛斑の表面滑らかで、フケや赤みは少ない指で触れたり、鏡で色調を確認

抜け毛の状態

脱毛斑の周辺の毛を軽く引っ張ってみて、簡単に抜けるようであれば、活動性の円形脱毛症の可能性があります。抜けた毛の毛根部が細くなっている「感嘆符毛(かんたんふもう)」が見られることもあります。

円形脱毛症は、ストレスが誘因となることもありますが、必ずしもそうとは限りません。気になる症状があれば、自己判断せずに皮膚科や専門クリニックを受診することが大切です。

休止期脱毛症

頭全体から均一に髪が抜け落ちる様子

休止期脱毛症は、毛髪の成長サイクル(毛周期)において、成長期にある毛髪が一斉に休止期に移行し、その後数ヶ月経ってから大量に抜け落ちる脱毛症です。

特定の部位だけでなく、頭部全体の髪が均等に薄くなるびまん性の脱毛が特徴です。何らかの身体的または精神的なストレスが引き金となることが多いとされています。

休止期脱毛症の主な症状

休止期脱毛症の症状は、原因となる出来事から2~3ヶ月後に現れることが一般的です。

急激な抜け毛の増加に驚くことが多いですが、毛包自体が破壊されるわけではないため、原因が取り除かれれば回復する可能性があります。

びまん性の脱毛

頭部全体で均等に髪の毛が抜け落ち、全体的にボリュームが減少します。AGAのように特定の部位が後退したり、円形脱毛症のように境界明瞭な脱毛斑ができたりするのとは異なります。

分け目が広くなった、地肌が透けて見えるようになったと感じることがあります。

急激な抜け毛の増加

シャンプー時やブラッシング時に、普段よりも明らかに多くの髪の毛が抜けるようになります。1日に抜ける毛髪の本数が200本以上になることも珍しくありません。枕に付着する抜け毛の量も増えます。

休止期脱毛症のセルフチェックポイント

休止期脱毛症を疑う場合、最近の生活習慣や健康状態を振り返ることが重要です。

抜け毛の量の確認

まず、毎日の抜け毛の量を意識的に確認します。排水溝にたまる髪の毛の量や、ブラシにつく髪の毛の量が急に増えていないかチェックしましょう。

特に、長い毛だけでなく、通常の太さの毛が多く抜けるのが特徴です。

最近の出来事の想起

考えられる誘因具体例確認ポイント
身体的ストレス高熱、外科手術、大きな怪我、過度なダイエット、出産2~3ヶ月以内に該当する出来事があったか
精神的ストレス強い精神的ショック、過労、環境の変化最近、強いストレスを感じる状況がなかったか
薬剤の影響特定の薬剤の服用開始・中止服用中の薬や最近変更した薬があるか

毛髪牽引テスト(プルテスト)

頭皮の数カ所から、それぞれ20~30本程度の毛束を軽く引っ張ってみます。このとき、6本以上の毛が簡単に抜けるようであれば、活動性の脱毛症(休止期脱毛症を含む)の可能性があります。

ただし、このテストはあくまで目安であり、正確な判断は専門医に委ねるべきです。

休止期脱毛症は、原因が特定され、それが解消されれば自然に回復することが多いですが、脱毛が長期間続く場合や、原因がはっきりしない場合は、専門医に相談することをお勧めします。

脂漏性脱毛症

過剰な皮脂で炎症が起こった毛穴断面図

脂漏性脱毛症は、頭皮の皮脂が過剰に分泌されることによって引き起こされる脱毛症です。

過剰な皮脂は毛穴を詰まらせたり、頭皮に炎症を引き起こしたりし、これが毛髪の健全な成長を妨げ、結果として抜け毛や薄毛につながります。脂漏性皮膚炎を伴うことが多いのが特徴です。

脂漏性脱毛症の主な症状

脂漏性脱毛症の症状は、頭皮のべたつきやフケ、かゆみといった皮膚症状と共に現れることが一般的です。

頭皮のべたつきとフケ

頭皮が常に脂っぽく、べたついた感じがします。フケも特徴的で、乾燥した細かいフケではなく、湿り気のある黄色っぽい大きなフケが出やすくなります。

洗髪してもすぐに頭皮が脂っぽくなる場合は注意が必要です。

頭皮の赤みとかゆみ

過剰な皮脂や、皮脂を栄養源とするマラセチア菌という常在菌の増殖により、頭皮に炎症が起こり、赤みやかゆみが生じます。

かゆみが強いために頭皮を掻きむしってしまうと、さらに炎症が悪化し、脱毛を助長することがあります。

湿疹やニキビ様のものの発生

頭皮に赤いブツブツとした湿疹や、ニキビのようなものができることがあります。これらは炎症の兆候であり、毛穴の環境を悪化させます。

抜け毛の増加と髪質の変化

頭皮環境の悪化に伴い、抜け毛が増加します。毛穴が詰まったり炎症を起こしたりすることで、髪の毛が細くなったり、成長が妨げられたりすることもあります。

脂漏性脱毛症のセルフチェックポイント

脂漏性脱毛症の疑いがある場合は、頭皮の状態を重点的にチェックします。

頭皮の状態の観察

チェック項目脂漏性脱毛症の可能性を示唆する所見確認方法
頭皮の脂っぽさ洗髪後数時間でべたつく、指で触ると脂が付く指で頭皮を触る、あぶらとり紙を当てる
フケの状態湿った黄色っぽいフケ、大きな塊のフケ肩や枕、髪の毛に付着したフケを観察
頭皮の色赤みがかっている、部分的に赤い斑点がある鏡で頭皮の色を確認、家族に見てもらう
かゆみの有無頭皮にかゆみを感じる、特に洗髪後や汗をかいた後日常的な頭皮のかゆみの程度を意識する

生活習慣の振り返り

脂漏性脱毛症は、生活習慣の乱れが影響することがあります。以下の点について振り返ってみましょう。

  • 脂肪分の多い食事や甘いものの過剰摂取
  • 睡眠不足や不規則な生活
  • ストレスの蓄積
  • 不適切なヘアケア(洗浄力の強すぎるシャンプー、すすぎ残しなど)

これらの項目に心当たりがある場合は、生活習慣の見直しも考慮に入れると良いでしょう。

脂漏性脱毛症が疑われる場合は、皮膚科医に相談し、適切な治療やケアのアドバイスを受けることが大切です。

抜毛症(トリコチロマニア)

抜毛症の行動イメージ

抜毛症(トリコチロマニア)は、自分自身の毛髪を繰り返し引き抜いてしまう精神疾患の一種です。この行為は意図的なものではなく、衝動的に、あるいは無意識のうちに行われることが多いです。

毛髪を引き抜くことによって、一時的な緊張の緩和や満足感を得ることがありますが、結果として明らかな脱毛斑が生じます。

抜毛症の主な症状

抜毛症の症状は、脱毛のパターンや本人の行動に特徴が見られます。

不規則な形状の脱毛斑

脱毛斑は、円形脱毛症のように境界が明瞭な円形ではなく、不規則な形をしていることが多いです。また、脱毛斑の中には、引き抜かれずに残った短い毛や、途中で切れた毛が混在しているのが特徴です。

利き手で抜きやすい部位(前頭部、側頭部、頭頂部など)に多く見られます。

毛髪を抜く行為

本人が毛髪を抜く行為を自覚している場合もあれば、無意識に行っている場合もあります。特定の状況(テレビを見ている時、勉強中、ストレスを感じた時など)で抜きやすくなる傾向があります。

抜いた毛髪を口にしたり、食べたりする(食毛症)を伴うこともあります。

脱毛に対する本人の認識

脱毛斑があることに対して悩みや羞恥心を感じていることが多いですが、抜毛行為をやめられないという葛藤を抱えています。行為を隠そうとすることもあります。

抜毛症のセルフチェックポイント(または家族による気づき)

抜毛症は本人が行為を認めにくい場合もあるため、家族や周囲の人が気づくことも重要です。

脱毛斑の形状と毛髪の状態

チェック項目抜毛症の可能性を示唆する所見確認方法
脱毛斑の形不規則、まだら模様、幾何学的でない鏡で脱毛部分の形を観察
残存毛の状態短い毛、途中で切れた毛、太さが不均一な毛が混在脱毛斑を拡大して観察
脱毛範囲利き手で届きやすい範囲に多い脱毛部位と利き手の関係を確認

行動の観察

無意識に髪を触ったり、引っ張ったり、ねじったりする癖がないか観察します。特定の状況でこれらの行動が頻繁に見られる場合は注意が必要です。

また、枕元や机の周りなどに、抜けた毛髪が散乱していないかも確認します。

本人の心理状態

本人が脱毛について話したがらない、隠そうとする、あるいは過度に気にしている様子はないか。ストレスや不安を抱えている様子はないか。これらの心理的な側面も、抜毛症を疑う上での参考になります。

抜毛症は、単なる癖ではなく治療が必要な精神疾患です。疑わしい場合は、皮膚科医だけでなく、精神科医や心療内科医への相談も検討することが大切です。

早期の対応が、症状の改善とQOL(生活の質)の向上につながります。

粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)

粃糠性脱毛症は、頭皮に大量の乾燥したフケ(粃糠様落屑:ひこうようらくせつ)が発生し、それに伴って脱毛が生じる状態を指します。

頭皮の乾燥や炎症が主な原因となり、毛髪の正常な生育環境が損なわれることで抜け毛が増加します。脂漏性脱毛症が湿ったフケを特徴とするのに対し、粃糠性脱毛症は乾燥した細かいフケが特徴です。

粃糠性脱毛症の主な症状

粃糠性脱毛症の症状は、頭皮の乾燥とフケ、そしてそれに伴うかゆみや脱毛です。

乾燥した細かいフケ

最も顕著な症状は、頭皮全体に見られる乾燥した白い粉のようなフケです。このフケは、肩や衣服に落ちやすく、目立ちやすいのが特徴です。

頭皮が乾燥しているため、フケもパラパラとした状態になります。

頭皮のかゆみと赤み

頭皮の乾燥やフケによって、かゆみが生じることがあります。かゆみのために頭皮を掻くと、炎症が悪化し、赤みが出たり、さらにフケが増えたりする悪循環に陥ることがあります。

びまん性の脱毛

特定の部位だけでなく、頭部全体の髪が徐々に薄くなる傾向があります。フケが毛穴を塞いだり、頭皮の炎症が毛根に悪影響を与えたりすることで、毛髪の成長が妨げられ、抜け毛が増加します。

粃糠性脱毛症のセルフチェックポイント

粃糠性脱毛症が疑われる場合、頭皮の乾燥状態とフケの性質を注意深く観察することが重要です。

フケの状態と量の確認

チェック項目粃糠性脱毛症の可能性を示唆する所見確認方法
フケの性質乾燥した、細かい、白い粉状髪の毛や肩、枕などに付着したフケを観察
フケの量洗髪してもすぐにフケが出る、量が非常に多い日常的にフケの量を意識する
頭皮の乾燥感頭皮がつっぱる感じ、カサカサしている指で頭皮を触る、洗髪後の乾燥具合を確認

頭皮のかゆみと炎症の有無

頭皮にかゆみがあるか、ある場合はどの程度の強さかを確認します。鏡で頭皮の色を見て、赤みや湿疹のようなものがないかもチェックしましょう。

特に乾燥しやすい季節や、洗浄力の強いシャンプーを使用した後に症状が悪化しないか注意します。

生活習慣とヘアケアの見直し

不適切なヘアケア(過度な洗髪、熱すぎるお湯の使用、洗浄力の強すぎるシャンプー)や、空気の乾燥、不規則な生活、ストレスなども頭皮の乾燥を助長し、粃糠性脱毛症の原因となることがあります。

以下の点を確認しましょう。

  • シャンプーの回数や種類は適切か
  • エアコンなどで空気が乾燥する環境に長時間いないか
  • 十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけているか

粃糠性脱毛症は、適切な頭皮ケアと生活習慣の改善で症状が軽減することがあります。

しかし、症状が改善しない場合や、脱毛が進行する場合は、皮膚科専門医に相談し、正確な診断と治療を受けることが大切です。

内分泌異常に伴う脱毛症

ホルモン異常が髪に影響する仕組みの概念図

内分泌異常に伴う脱毛症は、甲状腺ホルモンや性ホルモンなど、体内のホルモンバランスの乱れが原因で起こる脱毛症です。

これらのホルモンは毛髪の成長に深く関わっているため、その分泌に異常が生じると、毛周期が乱れたり、毛母細胞の働きが低下したりして脱毛を引き起こします。全身疾患の一症状として現れることもあります。

内分泌異常に伴う脱毛症の主な症状

ホルモンの種類や異常の程度によって症状は異なりますが、一般的にはびまん性の脱毛が見られることが多いです。

びまん性の脱毛

頭部全体の髪が均等に薄くなる傾向があります。特定のパターンで脱毛するAGAとは異なり、全体的にボリュームが失われたり、分け目が目立ったりします。

脱毛の進行は比較的緩やかなこともあれば、急激なこともあります。

髪質の変化

髪の毛が細くなったり、乾燥してパサついたり、ツヤが失われたりすることがあります。ホルモンバランスの乱れが毛髪の質にも影響を与えるためです。

全身症状の伴随

原因となる内分泌疾患によっては、脱毛以外にも様々な全身症状が現れることがあります。例えば、甲状腺機能低下症では、倦怠感、体重増加、皮膚の乾燥、むくみ、便秘などが見られることがあります。

甲状腺機能亢進症では、動悸、体重減少、多汗、手の震えなどが見られることがあります。

内分泌異常に伴う脱毛症のセルフチェックポイント

脱毛以外に体調の変化がある場合は、内分泌系の異常を疑う手がかりになります。

脱毛以外の体調変化の確認

関連する可能性のあるホルモン異常伴いやすい全身症状の例セルフチェック時の視点
甲状腺機能低下症異常な疲労感、寒がり、体重増加、皮膚乾燥、声のかすれ最近、これらの症状が複数当てはまらないか
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)動悸、息切れ、多汗、体重減少、手の震え、眼球突出活動的でないのに心拍数が高いなどがないか
性ホルモンの異常月経不順(女性)、性欲減退、体毛の変化などホルモンバランスに関連する変化がないか

既往歴や家族歴の確認

ご自身やご家族に甲状腺疾患などの内分泌系の病気にかかった方がいる場合は、関連性を考慮する必要があります。

急な体重変動や体質の変化

特に食事内容や運動量に大きな変化がないにもかかわらず、急激な体重増加や減少があった場合、あるいは以前と比べて明らかに疲れやすくなった、汗をかきやすくなった(またはかきにくくなった)などの体質の変化を感じる場合は、ホルモンバランスの乱れが影響している可能性があります。

内分泌異常に伴う脱毛症が疑われる場合は、まず内科や内分泌内科を受診し、原因となる疾患の診断と治療を受けることが最も重要です。

基礎疾患の治療によってホルモンバランスが整えば、脱毛症状も改善する可能性があります。

瘢痕(はんこん)性脱毛症

毛包が瘢痕組織に置き換わる断面イラスト

瘢痕性脱毛症は、毛包(毛を作り出す組織)が破壊され、瘢痕組織(はんこんそしき:傷跡のような硬い組織)に置き換わることで、永久的に毛髪が生えてこなくなる脱毛症です。

様々な原因で毛包が破壊されるため、その種類も多岐にわたります。一度瘢痕化すると毛髪の再生は困難なため、早期発見と原因の特定、進行を食い止めることが重要です。

瘢痕性脱毛症の主な症状

瘢痕性脱毛症の症状は、原因や炎症の程度によって異なりますが、脱毛斑とそれに伴う皮膚の変化が特徴です。

永久的な脱毛斑

毛包が破壊されているため、脱毛した部分の毛髪は再生しません。脱毛斑の形状や大きさは原因によって様々です。初期には小さな脱毛斑でも、進行すると拡大したり、多発したりすることがあります。

頭皮の異常

脱毛斑の皮膚は、光沢を帯びてツルツルしていたり、逆に硬く盛り上がったり、萎縮して薄くなったりすることがあります。

また、赤み、かゆみ、痛み、膿疱(膿のたまった水ぶくれ)、フケなどを伴うこともあります。これらの症状は、毛包周囲で炎症が起きているサインです。

瘢痕性脱毛症のセルフチェックポイント

瘢痕性脱毛症は早期の対応が鍵となるため、頭皮の異常に気づいたら速やかに専門医の診察を受ける必要があります。

脱毛斑の皮膚の状態観察

チェック項目瘢痕性脱毛症の可能性を示唆する所見確認方法
脱毛斑の表面光沢がある、ツルツルしている、硬い、盛り上がっている、へこんでいる鏡で脱毛部をよく観察、指で触れてみる
脱毛斑の色調赤み、白色、色素沈着、色素脱失健常な頭皮と比較して色調を確認
随伴症状かゆみ、痛み、圧痛、熱感、膿疱、フケ、ただれ脱毛部の感覚や見た目の変化を注意深く確認

脱毛の進行具合

脱毛斑が徐々に拡大しているか、新しい脱毛斑ができていないかを確認します。進行性の場合は、早期に炎症を抑える治療が必要です。

過去の頭皮の怪我や炎症

過去に頭部に火傷や外傷を負ったことがある場合、あるいは重度の皮膚炎(例えば、毛包炎や頭部白癬など)を患ったことがある場合は、それが瘢痕性脱毛症の原因となっている可能性があります。

そのような既往がある部位に脱毛が見られる場合は注意が必要です。

瘢痕性脱毛症は、原因の特定が難しく、治療も複雑な場合があります。毛包が完全に破壊される前に治療を開始することが、脱毛の拡大を防ぐために重要です。

皮膚科専門医、特に脱毛症に詳しい医師の診察を受けることを強く勧めます。

薬剤性脱毛症

薬服用後に時間差で抜け毛が増える流れ図

薬剤性脱毛症は、特定の医薬品の服用や使用が原因で起こる脱毛症です。薬の副作用として毛髪の成長サイクルが妨げられたり、毛母細胞が直接的なダメージを受けたりすることで発症します。

原因となる薬剤は多岐にわたり、脱毛の程度や現れ方も様々です。

薬剤性脱毛症の主な症状

薬剤性脱毛症の多くは、原因薬剤の投与開始から数週間~数ヶ月後に症状が現れます。代表的なものに「成長期脱毛」と「休止期脱毛」の2つのタイプがあります。

成長期脱毛

抗がん剤治療などで見られるタイプで、毛母細胞の分裂が活発な成長期の毛髪が急激にダメージを受け、大量に抜け落ちます。

脱毛は比較的急速に進行し、頭髪だけでなく眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜けることもあります。薬剤の投与中止後、毛髪は再生することが多いです。

休止期脱毛

より多くの薬剤で見られるタイプで、毛髪が成長期から休止期へ prematurely(早期に)移行し、その結果として薬剤投与開始から2~4ヶ月後に抜け毛が増加します。

脱毛は比較的緩やかで、びまん性(頭部全体)に起こることが多いです。原因薬剤の中止により回復が期待できます。

びまん性の脱毛

特定の部位だけでなく、頭部全体の髪が均等に薄くなることが多いです。ただし、薬剤の種類や個人の感受性によって、脱毛のパターンや程度には差が出ます。

薬剤性脱毛症のセルフチェックポイント

薬剤性脱毛症を疑う場合、現在服用または使用している薬剤と、脱毛が始まった時期との関連性を確認することが最も重要です。

薬剤の使用状況と脱毛開始時期の照合

チェック項目薬剤性脱毛症の可能性を示唆する状況確認方法
新規薬剤の開始新しい薬を服用し始めてから数週間~数ヶ月以内に脱毛が始まったお薬手帳や処方箋で薬剤名と開始時期を確認
薬剤の変更・増量既存の薬の種類や量が変わってから脱毛が始まった医師や薬剤師に確認
原因となりうる薬剤抗がん剤、免疫抑制剤、抗うつ薬、一部の降圧剤、抗凝固薬など薬剤の添付文書(副作用の項目)を確認、医師に相談

抜け毛の量と質の変化

シャンプー時や起床時の抜け毛が急に増えたかどうかを確認します。成長期脱毛の場合は、毛根部が細く尖った毛や、途中で切れた毛が多く見られることがあります。

休止期脱毛の場合は、毛根部が棍棒状の正常な休止期毛が多くなります。

他の副作用の有無

脱毛以外にも、薬剤による他の副作用(皮膚症状、消化器症状、倦怠感など)が現れていないか確認します。もし他の副作用も同時に出ている場合は、薬剤が原因である可能性が高まります。

薬剤性脱毛症が疑われる場合は、自己判断で薬剤の服用を中止したりせず、必ず処方した医師または薬剤師に相談してください。

医師は、薬剤の必要性と副作用のリスクを考慮し、薬剤の変更、減量、または休薬を検討します。多くの場合、原因薬剤を中止または変更すれば、脱毛症状は改善に向かいます。

牽引(けんいん)性脱毛症

きついポニーテールで生え際に負荷がかかる図

牽引性脱毛症は、ポニーテールや編み込み、エクステンションなど、髪を強く引っ張る髪型を長時間続けることによって、毛根に持続的な物理的負荷がかかり、毛が抜けやすくなったり、毛包がダメージを受けて薄毛になったりする状態です。

特定の部位に症状が現れやすいのが特徴です。

牽引性脱毛症の主な症状

牽引性脱毛症の症状は、髪を引っ張っている部位に沿って現れます。

特定の部位の薄毛

髪の生え際(特に額やこめかみ)、分け目など、髪が強く引っ張られる部分の毛髪が細くなったり、抜けたりして地肌が透けて見えるようになります。

毎日同じ髪型をしている場合、その髪型で最もテンションがかかる部分に症状が出やすいです。例えば、きついポニーテールを続けていると、前頭部や側頭部の生え際が後退することがあります。

切れ毛や短い毛の増加

持続的な牽引により、毛髪が途中で切れたり、十分に成長する前に抜けたりするため、患部には短い毛や細い毛が目立つようになります。

頭皮の痛みやかゆみ、赤み

髪を強く引っ張ることで、頭皮に炎症が生じ、痛み、かゆみ、赤み、毛嚢炎(毛穴の炎症)などを伴うことがあります。髪型を変えたり、髪をほどいたりした際に、これらの症状が和らぐこともあります。

牽引性脱毛症のセルフチェックポイント

普段のヘアスタイルや頭皮の状態を振り返ることで、牽引性脱毛症の可能性を判断する手がかりになります。

ヘアスタイルの確認

チェック項目牽引性脱毛症のリスクが高い習慣確認ポイント
日常的な髪型きついポニーテール、お団子、編み込み、ドレッドヘア、エクステンション長時間、毎日同じように髪を強く結んでいないか
ヘアアクセサリーの使用きついヘアゴム、ヘアピン、カチューシャの長時間使用頭皮に圧迫感や痛みを感じるアクセサリーを使っていないか
髪をほどいた時の感覚髪をほどくと頭皮が痛い、またはホッとする髪型による頭皮への負担を意識する

薄毛の部位と髪型の関連性

薄毛が気になる部位と、普段髪を強く引っ張っている部位が一致するかどうかを確認します。例えば、いつも同じ位置で分けている場合、その分け目が広がっていないか、などをチェックします。

頭皮の症状

髪の生え際や分け目など、牽引されている部分の頭皮に赤み、ブツブツ、痛み、かゆみがないかを確認します。これらの症状は、頭皮がダメージを受けているサインです。

  • 髪の生え際に短い毛や産毛のような毛が増えた
  • 特定の分け目が以前より目立つようになった
  • 髪を結ぶと頭皮が痛むことがある

牽引性脱毛症は、原因となる髪型や習慣を改めることで、多くの場合改善が期待できます。

しかし、長期間にわたり強い牽引が続くと、毛包が永久的なダメージを受け、瘢痕性脱毛症に移行して毛髪が再生しなくなる可能性もあるため、早期の対策が重要です。

症状に気づいたら、髪型を変える、髪をゆるく結ぶなどの工夫をし、改善が見られない場合は専門医に相談しましょう。

梅毒性脱毛症

虫食い状にまだらな脱毛が広がる頭頂図

梅毒性脱毛症は、性感染症の一つである梅毒の第2期症状として現れる脱毛症です。梅毒トレポネーマという細菌に感染することで発症し、治療が遅れると全身に様々な症状を引き起こします。

脱毛は、梅毒の症状が全身に広がる時期に見られる特徴的な所見の一つです。

梅毒性脱毛症の主な症状

梅毒性脱毛症は、感染から数ヶ月後(通常2~3ヶ月程度)に現れることが多いです。脱毛のパターンにはいくつかの特徴があります。

びまん性脱毛

頭部全体の髪がまだらに、虫食い状に抜けるのが特徴的です。「すだれ状脱毛」や「虫食い状脱毛」とも呼ばれ、小さな脱毛斑が多数散在し、全体的に髪の毛が薄くなったように見えます。

特に後頭部や側頭部によく見られます。

眉毛や体毛の脱毛

頭髪だけでなく、眉毛(特に外側1/3)、まつ毛、髭、腋毛、陰毛などが抜けることもあります。

他の梅毒第2期症状の伴随

脱毛と同時期に、梅毒の他の症状が現れることが一般的です。代表的なものには、以下のものがあります。

  • バラ疹(体幹や四肢に出る淡い赤色の発疹、かゆみは少ない)
  • 扁平コンジローマ(肛門周囲や陰部に見られる平らなイボ状の盛り上がり)
  • 梅毒性アンギーナ(喉の痛み、扁桃の腫れ)
  • 全身倦怠感、発熱、リンパ節の腫れ

梅毒性脱毛症のセルフチェックポイント

梅毒性脱毛症を疑う場合は、脱毛のパターンと他の全身症状、そして感染リスクのある行動の有無を総合的に考える必要があります。

脱毛のパターンの確認

チェック項目梅毒性脱毛症の可能性を示唆する所見確認方法
脱毛の形状小さな脱毛斑が多数散在(虫食い状、すだれ状)合わせ鏡で後頭部や側頭部を中心に確認
脱毛部位頭髪全体、特に後頭部・側頭部。眉毛、体毛も。頭髪以外の体毛にも変化がないか確認
脱毛の進行比較的急速にまだらな脱毛が広がる短期間での変化を意識する

他の全身症状の確認

上記に挙げたような、バラ疹、扁平コンジローマ、喉の痛み、原因不明の発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなど、脱毛以外の症状が最近現れていないか確認します。

これらの症状は梅毒感染の重要な手がかりとなります。

感染リスクのある行動の有無

梅毒は主に性的接触によって感染します。不特定多数との性的接触や、コンドームを使用しない性交渉など、感染リスクのある行動が最近あったかどうかを振り返ります。

ただし、これらの行動がなくても感染する可能性はゼロではありません。

梅毒性脱毛症が疑われる場合、または梅毒の他の症状が見られる場合は、速やかに皮膚科、泌尿器科、または性感染症内科を受診し、検査を受けることが極めて重要です。

梅毒は早期に適切な抗菌薬治療を行えば治癒する病気であり、治療によって脱毛症状も改善します。放置すると深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、自己判断せずに必ず医療機関を受診してください。

頭部白癬(はくせん)性脱毛症

白癬菌が毛根に侵入している模式図

頭部白癬(とうぶはくせん)は、白癬菌という真菌(カビの一種)が頭皮や毛髪に感染して起こる皮膚疾患で、一般的には「しらくも」とも呼ばれます。感染すると、フケ、かゆみ、脱毛などの症状が現れます。

特に小児に多く見られますが、成人でも発症することがあります。ペットから感染するケースも報告されています。

頭部白癬性脱毛症の主な症状

頭部白癬の症状は、感染した白癬菌の種類や個人の免疫状態によって様々です。

フケと落屑(らくせつ)

頭皮に乾燥したフケや、灰白色の鱗屑(りんせつ:皮膚の表面からはがれ落ちる角片)が多量に付着します。脂漏性皮膚炎のフケとは異なり、乾燥していることが多いです。

脱毛斑の形成

円形または不整形な脱毛斑ができます。脱毛斑の境界は比較的明瞭なこともあれば、不明瞭なこともあります。脱毛斑の表面はフケで覆われていたり、赤みを帯びたりすることがあります。

毛髪の変化

感染した毛髪は、光沢を失ってもろくなり、途中で折れたり、抜け落ちたりします。毛穴の中に黒い点(折れた毛髪の断端)が多数見える「ブラックドット」が特徴的な所見となることがあります。

かゆみや炎症

患部にかゆみを伴うことが多く、掻くことで二次的な細菌感染や炎症の悪化を招くことがあります。

重症化すると、ケルスス禿瘡(とくそう)と呼ばれる、膿を持った腫瘤(しゅりゅう:こぶ)を形成し、強い炎症と痛みを伴うことがあります。この場合、瘢痕化して永久脱毛に至るリスクがあります。

頭部白癬性脱毛症のセルフチェックポイント

頭部白癬が疑われる場合、頭皮と毛髪の状態を注意深く観察することが大切です。

頭皮とフケの状態

チェック項目頭部白癬の可能性を示唆する所見確認方法
フケの性状乾燥した灰白色のフケ、鱗屑が多いフケの色や質感を観察
脱毛斑の有無円形または不整形の脱毛斑、境界は様々鏡で頭皮全体を確認
脱毛斑の表面フケで覆われている、赤み、小さなブツブツ脱毛斑の見た目を詳細に観察

毛髪の状態

脱毛斑内の毛髪が途中で折れていないか、毛穴に黒い点々(ブラックドット)が見られないかを確認します。毛髪がもろく、簡単に抜けるかどうかもチェックポイントです。

接触歴の確認

家族や周囲の人(特に子供)に同様の症状がある人がいないか、また、最近ペット(特に犬や猫)と接触し、そのペットに皮膚病の兆候がなかったかを確認します。白癬菌は人から人へ、動物から人へ感染することがあります。

頭部白癬は、自然治癒することは稀であり、抗真菌薬による適切な治療が必要です。疑わしい症状が見られたら、自己判断で市販の水虫薬などを使用せず、皮膚科専門医を受診してください。

早期に正確な診断を受け、治療を開始することが、症状の悪化や他者への感染拡大を防ぐために重要です。

栄養障害に伴う脱毛症

栄養不足が髪を細く弱くするイメージ

栄養障害に伴う脱毛症は、健康な毛髪の成長に必要な栄養素が不足したり、吸収がうまくいかなかったりすることによって引き起こされる脱毛症です。

毛髪はタンパク質を主成分とし、その成長にはビタミンやミネラルなど多くの栄養素が関与しています。これらのバランスが崩れると、毛髪の質が悪化したり、抜け毛が増えたりします。

栄養障害に伴う脱毛症の主な症状

栄養障害による脱毛は、特定の部位に限局するのではなく、頭部全体の髪が薄くなるびまん性の脱毛として現れることが多いです。

びまん性の脱毛

髪全体が均等に薄くなり、ボリュームが失われます。抜け毛の量が徐々に増え、地肌が透けて見えるようになることもあります。

髪質の悪化

髪の毛が細く弱々しくなったり、乾燥してパサついたり、ツヤがなくなったり、切れやすくなったりします。新しい髪が生えてきても、十分に成長する前に抜けてしまうこともあります。

爪の異常や皮膚症状

栄養障害は毛髪だけでなく、爪や皮膚にも影響を与えることがあります。

爪がもろくなったり、割れやすくなったり、スプーン状に反り返ったり(スプーンネイル)、皮膚が乾燥したり、肌荒れを起こしやすくなったりすることがあります。

全身の不調

特定の栄養素の欠乏によっては、倦怠感、めまい、集中力の低下、免疫力の低下といった全身症状を伴うこともあります。例えば、鉄欠乏性貧血では、これらの症状と共に脱毛が見られることがあります。

栄養障害に伴う脱毛症のセルフチェックポイント

食生活や体調の変化を振り返ることが、栄養障害による脱毛症の可能性を探る手がかりになります。

食生活の振り返り

チェック項目栄養障害のリスクを高める食習慣確認ポイント
食事バランス極端な偏食、インスタント食品や外食が多いタンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取できているか
ダイエット経験過度な食事制限、特定の食品だけを食べるダイエット最近、無理なダイエットをしていないか
欠食の頻度朝食を抜くことが多い、食事回数が少ない1日に必要な栄養を十分に摂れているか

髪質と爪、皮膚の状態

以前と比べて髪の毛が細くなった、パサつく、ツヤがない、切れやすいなどの変化がないか確認します。また、爪が割れやすい、二枚爪になる、皮膚が乾燥しやすいなどの症状も併せてチェックします。

体調の変化

最近、疲れやすい、立ちくらみがする、顔色が悪い、風邪をひきやすいなどの体調不良がないか確認します。これらは栄養不足のサインである可能性があります。

栄養障害による脱毛症は、バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素を十分に摂取することで改善が期待できます。

しかし、自己判断で特定のサプリメントを過剰に摂取することは避け、脱毛が続く場合や体調不良がある場合は、医師や管理栄養士に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。

場合によっては、血液検査などで栄養状態を確認する必要もあります。

放射線治療による脱毛

放射線照射範囲と脱毛

放射線性脱毛症は、がん治療などのために頭部やその周辺に放射線照射を受けた場合に、副作用として起こる脱毛症です。放射線が毛母細胞にダメージを与えることで、毛髪の成長が停止し、脱毛が起こります。

脱毛の程度や範囲は、照射された放射線の総量、照射範囲、分割方法などによって異なります。

放射線性脱毛症の主な症状

放射線脱毛症の症状は、通常、放射線治療を開始してから2~3週間後に現れ始めます。

照射部位の脱毛

放射線が照射された範囲に限局して脱毛が起こります。頭部全体に照射された場合は頭全体の毛髪が抜けますが、一部分のみに照射された場合はその部分だけが脱毛します。

脱毛は比較的急速に進行することが多いです。

頭皮の炎症症状

脱毛と同時期かそれ以前に、照射部位の頭皮に赤み、乾燥、かゆみ、ヒリヒリ感、むくみなどの炎症症状(放射線皮膚炎)が現れることがあります。

重症化すると、水疱形成やびらん(ただれ)を生じることもあります。

毛髪の再生について

多くの場合、放射線治療が終了してから数ヶ月後(通常2~6ヶ月程度)に毛髪は再生し始めます。ただし、再生した毛髪の色や質(太さ、くせ毛など)が以前と異なることがあります。

照射された放射線の総量が多い場合や、毛包が深いダメージを受けた場合は、永久脱毛となる可能性もあります。

放射線治療による脱毛のセルフチェックポイント(主に経過観察)

放射線性脱毛症は、原因が明確(放射線治療)であるため、セルフチェックというよりは、症状の経過を注意深く観察し、適切なケアを行うことが中心となります。

脱毛の範囲と程度の記録

観察項目記録・確認のポイントケアのポイント
脱毛開始時期治療開始から何日目(何週目)で脱毛が始まったか事前に医師から説明された時期と一致するか確認
脱毛範囲放射線照射部位と一致しているか照射範囲外にも脱毛が広がっていないか注意
頭皮の状態赤み、乾燥、かゆみ、痛み、フケ、水疱の有無刺激の少ないケアを心がけ、異常時は医師に相談

頭皮ケアの状況確認

放射線治療中の頭皮は非常にデリケートになっているため、低刺激性のシャンプーを使用する、爪を立てずに優しく洗う、ドライヤーの温風を直接当てない、帽子やスカーフで紫外線や刺激から保護するなどのケアが重要です。

これらのケアが適切に行われているか確認します。

毛髪再生の兆候

治療終了後、定期的に頭皮を観察し、産毛のような細い毛が生えてきていないか確認します。再生が始まったら、その後の毛髪の成長具合も記録しておくと良いでしょう。

放射線脱毛症については、治療開始前に医師や看護師から詳しい説明があります。

脱毛の可能性や時期、ケア方法、毛髪再生の見込みなどについてよく理解し、不安な点や困ったことがあれば遠慮なく医療スタッフに相談することが大切です。

精神的なサポートや、ウィッグ(かつら)や帽子の利用に関する情報提供も受けることができます。

先天性乏毛症・縮毛症

先天性乏毛症・縮毛症

先天性乏毛症(せんてんせいぼうもうしょう)および先天性縮毛症(せんてんせいしゅくもうしょう)は、生まれつき毛髪が少ない、または異常な縮れ毛を持つ遺伝性の疾患です。

多くは出生時または乳幼児期から症状が明らかになります。単独で発症する場合と、他の先天異常(皮膚、歯、爪、汗腺などの異常)を伴う症候群の一部として現れる場合があります。

先天性乏毛症・縮毛症の主な症状

症状は疾患の種類や重症度によって大きく異なります。

先天性乏毛症

出生時から毛髪が全体的に非常に少ない、または全く生えていない状態です。生えてくる毛髪も細く、短く、色素が薄いことが多いです。頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛も薄い場合があります。

成長しても毛髪の量が増えないか、わずかな増加にとどまります。

先天性縮毛症

毛髪が著しく縮れており、非常にもろく、切れやすいのが特徴です。髪がパサパサして光沢がなく、櫛通りが悪く、まとまりにくいです。特定のパターン(例えば、羊毛状毛など)を示すこともあります。

縮毛症の中には、成長とともに毛質が多少改善するケースもありますが、多くは生涯持続します。

合併症の有無

疾患によっては、歯の欠損や形成不全、爪の変形や肥厚、汗をかきにくい(無汗症・低汗症)、皮膚の乾燥や角化異常などを伴うことがあります。

これらの合併症の有無は、正確な診断と予後を考える上で重要です。

先天性乏毛症・縮毛症のセルフチェックポイント(主に保護者による気づき)

これらの疾患は出生時や乳幼児期に気づかれることが多いため、保護者による観察が重要です。

出生時からの毛髪の状態

チェック項目先天性乏毛症・縮毛症の可能性を示唆する所見確認時期・方法
毛髪の量出生時から毛髪が極端に少ない、またはほとんどない出生直後、乳児期の頭髪の密度を確認
毛髪の質毛が細い、短い、色が薄い、著しく縮れている、もろくて切れやすい乳幼児期の毛髪の見た目、手触りを確認
成長に伴う変化年齢相応に毛髪が増えない、毛質が改善しない定期的な成長記録と比較

他の身体的特徴の確認

毛髪以外の部分にも注意を払います。

  • 歯の生え方が遅い、歯の形がおかしい、歯が少ない
  • 爪が薄い、割れやすい、変形している
  • 汗をかきにくい、暑い環境で体温が上がりやすい
  • 皮膚が乾燥している、湿疹ができやすい

これらの症状が複数見られる場合は、症候群性(他の先天異常を伴うタイプ)の乏毛症・縮毛症の可能性があります。

家族歴の確認

両親や兄弟姉妹、近親者に同様の毛髪の悩みを持つ人がいるかどうかを確認します。遺伝性の疾患であるため、家族歴は重要な情報となります。

先天性乏毛症・縮毛症が疑われる場合は、小児科医や皮膚科専門医に相談することが大切です。正確な診断のためには、遺伝学的検査が必要になることもあります。

現時点では根本的な治療法は確立されていませんが、対症療法や整容的なケア(ウィッグの使用など)、遺伝カウンセリングなどが考慮されます。また、合併症がある場合は、それぞれの専門医による管理も必要です。

よくある質問

ここでは、男性の薄毛の症状やセルフチェックに関する一般的なご質問とその回答をまとめました。

薄毛のサインは自分でも気づけますか?

はい、多くの場合、ご自身で薄毛の初期サインに気づくことは可能です。日常生活の中で、以下のような変化に注意を払うことが大切です。

  • シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量が以前より増えた。
  • 枕元に落ちている抜け毛が目立つようになった。
  • 髪の毛にハリやコシがなくなり、細く弱々しくなったように感じる。
  • 髪全体のボリュームが減り、スタイリングが決まりにくくなった。
  • 額の生え際が後退してきた、または頭頂部の地肌が透けて見えるようになった。
  • 頭皮にかゆみやフケ、赤みなどの異常が続く。

これらの変化は、何らかの脱毛症が始まっている可能性を示唆しています。本記事で紹介した各脱毛症のセルフチェックポイントも参考に、ご自身の状態を客観的に把握するよう努めてください。

どのタイプの薄毛か自分で判断できますか?

本記事で解説したように、薄毛には様々な種類があり、それぞれ特徴的な症状があります。これらの情報を参考にすることで、ご自身の薄毛がどのタイプに近いか、ある程度の目安を立てることはできるかもしれません。

例えば、生え際の後退や頭頂部の薄毛が進行している場合はAGAの可能性、円形の脱毛斑が突然できた場合は円形脱毛症の可能性などが考えられます。

しかし、症状が典型的でない場合や、複数の要因が絡み合っている場合もあり、自己判断で正確なタイプを特定するのは困難です。また、似たような症状でも原因が全く異なることもあります。

誤った自己判断は、不適切なケアにつながり、症状を悪化させる可能性もあります。したがって、気になる症状がある場合は、必ず専門医の診察を受け、正確な診断を得ることが重要です。

セルフチェックで気になったらどうすればいいですか?

セルフチェックの結果、何らかの薄毛のサインに気づいたり、特定の脱毛症の可能性を感じたりした場合は、できるだけ早めに専門のクリニック(皮膚科やAGA専門クリニックなど)を受診することをお勧めします。

医師は、問診、視診、触診に加え、必要に応じてダーモスコピー検査(頭皮や毛髪を拡大して観察する検査)や血液検査などを行い、薄毛の種類や原因を特定します。

専門医への相談のメリット

項目内容期待できること
正確な診断専門的な知識と検査に基づいた診断薄毛の種類と原因の特定
適切な治療法の提案診断結果に応じた医学的根拠のある治療法の提示症状の改善、進行の抑制
早期対応症状が軽いうちからの介入治療効果の向上、重症化の予防

薄毛の悩みは一人で抱え込まず、専門家のアドバイスを求めることが解決への第一歩です。早期発見・早期対応が、より良い結果につながることが多いです。

まとめ

この記事では、男性に見られる代表的な15種類の薄毛の症状と、ご自身でできるセルフチェックの方法について解説しました。AGA(男性型脱毛症)から、円形脱毛症、脂漏性脱毛症、さらには薬剤性や栄養障害によるものまで、薄毛の原因と現れ方は実に多様です。

ご自身の髪や頭皮の状態を日頃から注意深く観察し、変化に気づくことが早期発見の鍵となります。

抜け毛の量、髪質の変化、頭皮の色や状態、特定の部位の薄毛の進行など、セルフチェックのポイントを参考に、ご自身の状態を把握してみてください。

しかし、セルフチェックはあくまで目安であり、正確な診断は専門医による診察が必要です。気になる症状があれば、自己判断せずに速やかにクリニックを受診しましょう。

薄毛の種類によって適切な対処法や治療法は異なります。専門医は、あなたの薄毛のタイプを正確に診断し、医学的根拠に基づいたアドバイスや治療を提供してくれます。

早期に適切なケアを始めることで、症状の進行を遅らせたり、改善させたりすることが期待できます。薄毛の悩みを抱えている方は、一人で悩まず、まずは専門医に相談することから始めてみてください。

続けて読んで欲しい記事

薄毛の症状について理解を深めた後は、その根本的な原因についても知ることが大切です。薄毛を引き起こす様々な原因については、こちらの記事で詳しく解説しています。

薄毛の原因と検査法

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