マラセチアの菌の頭皮トラブルに効果的なケア方法

マラセチア菌頭皮シャンプー

頭皮のかゆみ、フケ、赤み、そして気になるニオイ。これらの不快な症状は、実は「マラセチア菌」という常在菌の異常繁殖が原因かもしれません。

多くの方が悩むマラセチア菌による頭皮トラブルは、適切なケアで改善を目指せます。

この記事ではマラセチア菌が引き起こす問題の根本原因からご自身でできる効果的なシャンプー選び、正しい洗髪方法、生活習慣の見直し、そして専門クリニックでの治療法まで詳しく解説します。

あなたの頭皮の悩みを解消し、健やかな頭皮環境を取り戻すための一助となれば幸いです。

目次

はじめに マラセチア菌と頭皮トラブルの基礎知識

私たちの皮膚には多くの種類の微生物が常に存在しており、これらを皮膚常在菌と呼びます。マラセチア菌もその一種で、普段は皮膚の健康維持に関わる役割を担っています。

しかし、特定の条件下で異常に増殖すると様々な頭皮トラブルを引き起こす原因となります。

まずはマラセチア菌とは何か、そしてなぜ頭皮トラブルに関与するのか、基本的な知識を深めましょう。

マラセチア菌とはどんな菌か

マラセチア菌は酵母様真菌(カビの一種)で、ヒトや動物の皮膚に常在しています。特に皮脂を栄養源とするため、皮脂腺が多く分布する頭皮、顔、胸、背中などに多く生息します。

健康な皮膚状態では他の常在菌とバランスを保ちながら存在し、問題を起こすことはほとんどありません。

しかし、皮脂の過剰分泌や免疫力の低下など何らかの要因でこのバランスが崩れるとマラセチア菌が異常に増殖し、皮膚トラブルの原因物質を産生するようになります。

頭皮の常在菌バランスの重要性

頭皮にはマラセチア菌以外にも、表皮ブドウ球菌などの善玉菌やアクネ菌などの日和見菌など多種多様な常在菌が生息し、複雑な生態系(マイクロバイオーム)を形成しています。

これらの菌が適切なバランスを保つことで頭皮は外部からの刺激や病原菌の侵入から守られ、健康な状態を維持できます。

このバランスが崩れると特定の菌が優勢になり、フケ、かゆみ、炎症などのトラブルが発生しやすくなります。

したがって頭皮ケアにおいては特定の菌を根絶するのではなく、常在菌全体のバランスを整える視点が大切です。

マラセチア菌が関与する代表的な頭皮トラブル

マラセチア菌の異常増殖が関与する代表的な頭皮トラブルには脂漏性皮膚炎やマラセチア毛包炎(でんぷう性毛包炎とも呼ばれる)があります。

脂漏性皮膚炎は頭皮のフケ、かゆみ、赤み、湿疹などを特徴とし、慢性化しやすい皮膚炎です。

マラセチア毛包炎は毛穴に一致して赤いブツブツや膿疱が生じるもので、かゆみを伴うことがあります。

これらの症状が見られる場合は自己判断せずに皮膚科専門医に相談することが重要です。

マラセチア菌関連の皮膚疾患

疾患名主な症状好発部位
脂漏性皮膚炎フケ、かゆみ、赤み、湿疹頭皮、顔(眉間、鼻の脇)、胸部、脇の下
マラセチア毛包炎毛穴に一致した赤いブツブツ、膿疱、かゆみ胸部、背中、肩、顔、首
でんぷう(癜風)淡い褐色斑や脱色素斑、軽いかゆみ体幹部(胸、背中、上腕など)

あなたの頭皮は大丈夫?マラセチア菌が増殖する主な原因

マラセチア菌は誰もが持つ常在菌ですが、なぜ特定の人で増殖し、トラブルを引き起こすのでしょうか。その背景には生活習慣や体質、外部環境など、様々な要因が複雑に関わっています。

ご自身の生活を見直し、マラセチア菌が増えやすい環境を作っていないか確認してみましょう。

皮脂の過剰な分泌

マラセチア菌は皮脂を主な栄養源としています。そのため、皮脂の分泌が過剰になると、菌にとって格好の繁殖環境となります。

皮脂の分泌量は、遺伝的要因、ホルモンバランス(特に男性ホルモン)、食生活、ストレス、気候(高温多湿)などによって変動します。

脂っこい食事の偏りや睡眠不足、精神的なストレスは皮脂腺の活動を活発化させるため注意が必要です。

不適切なヘアケア習慣

毎日のシャンプー方法も頭皮環境に大きく影響します。洗浄力の強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎると、かえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。

逆に洗髪が不十分で皮脂や汚れが頭皮に残っているとマラセチア菌の温床となります。

また、シャンプー後のすすぎ残しや髪を生乾きのまま放置することも菌の増殖を助長します。

マラセチア菌増殖を招くヘアケア習慣

習慣理由対策のポイント
洗浄力の強すぎるシャンプーの使用必要な皮脂まで除去し、乾燥や過剰な皮脂分泌を招くアミノ酸系などマイルドな洗浄成分を選ぶ
洗髪不足・すすぎ残し皮脂やシャンプー剤が残り、菌の栄養源となる指の腹で丁寧に洗い、時間をかけてすすぐ
髪の自然乾燥・生乾き頭皮が高温多湿になり、菌が繁殖しやすくなる洗髪後は速やかにドライヤーで根本から乾かす

生活習慣の乱れと免疫力の低下

不規則な生活、睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、過度なストレスなどは体の免疫機能を低下させます。

免疫力が低下すると皮膚のバリア機能も弱まり、マラセチア菌のような常在菌のコントロールが難しくなり、異常増殖を許してしまいます。

特にビタミンB群は皮脂のコントロールや皮膚の健康維持に重要であり、不足すると頭皮トラブルのリスクが高まります。

高温多湿な環境

マラセチア菌は高温多湿の環境を好みます。日本の梅雨時期や夏場は気温と湿度が高くなるため、菌が活発に増殖しやすい季節です。

また、帽子やヘルメットを長時間着用することで頭皮が蒸れたり、運動後にかいた汗をそのままにしたりすることも菌の増殖を促す要因となります。

通気性の良い帽子を選び、汗をかいたらこまめに拭き取るなどの工夫が大切です。

見過ごさないで!マラセチア菌が引き起こす代表的な頭皮トラブル

マラセチア菌の異常増殖は頭皮に様々な不快な症状を引き起こします。これらの症状は単に不快なだけでなく、放置すると悪化したり、他の皮膚トラブルを併発したりする可能性もあります。

代表的な症状を理解し、早期発見・早期対処につなげましょう。

フケとかゆみ

マラセチア菌が増殖する過程で、皮脂を分解して遊離脂肪酸を産生します。

この遊離脂肪酸が頭皮を刺激し、ターンオーバー(皮膚の新陳代謝)を異常に早めることで未熟な角質細胞が大量にはがれ落ち、フケとなります。

フケには乾燥したパラパラとしたものと、湿ったベタベタしたものがあり、マラセチア菌が関与する場合は後者が多い傾向があります。

また、この刺激はかゆみも引き起こし、掻きむしることでさらに頭皮環境を悪化させる悪循環に陥ることがあります。

頭皮トラブルのサイン

  • 細かい、または大きなフケが目立つ
  • 頭皮が赤みを帯びている
  • しつこいかゆみがある
  • 頭皮にニキビのようなブツブツができる
  • 頭皮が脂っぽくベタつく

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)

脂漏性皮膚炎はマラセチア菌が深く関与すると考えられている代表的な皮膚疾患です。

頭皮、顔(特にTゾーンや眉間、鼻の脇)、耳の後ろ、胸部、脇の下など、皮脂腺が多い部位に発症しやすい特徴があります。

頭皮ではフケ、かゆみに加え、赤み、湿疹、時には黄色っぽいかさぶたのようなものができることもあります。

症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、慢性化しやすい傾向があります。

マラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎は毛穴の奥にマラセチア菌が侵入し、炎症を起こす疾患です。ニキビ(尋常性ざ瘡)と似た赤いブツブツや、中に膿を持った膿疱が多数出現します。

ニキビとの違いは、面皰(めんぽう:コメド、毛穴の詰まり)が見られない点や、かゆみを伴うことが多い点です。胸や背中、肩、首、顔などに好発しますが、頭皮にも生じることがあります。

高温多湿な環境やステロイド外用薬の使用、抗生物質の内服などが誘因となることがあります。

頭皮のニオイ

マラセチア菌を含む頭皮の常在菌は皮脂や汗を分解する過程で様々な代謝物を産生します。

これらの代謝物の中には特有のニオイを発するものがあり、マラセチア菌が増殖すると頭皮のニオイが強くなることがあります。

特に皮脂が酸化したニオイや菌の代謝物が混ざり合うことで不快な頭皮臭の原因となることがあります。

適切な洗髪と頭皮ケアで菌のバランスを整えることがニオイ対策にもつながります。

なぜあなたの頭皮ケアは効果が出にくいのか?よくある誤解と専門家からのアドバイス

「色々試しているのに、頭皮のフケやかゆみがなかなか治まらない…」そんな悩みを抱えていませんか?

もしかしたら良かれと思って続けているケアが、実は逆効果になっているのかもしれません。

ここではマラセチア菌による頭皮トラブルケアに関するよくある誤解を解き、専門家の視点から正しい知識と対策をお伝えします。

自己判断によるケアの限界

インターネットや口コミで情報を集め、自己判断でケア用品を選んだり、民間療法を試したりする方は少なくありません。

しかし、頭皮の症状は見た目が似ていても原因が異なる場合があり、マラセチア菌が原因だと思っていても、実際は別の皮膚疾患である可能性も否定できません。

誤ったケアは症状を悪化させたり、改善を遅らせたりするリスクがあります。専門医は症状だけでなく、頭皮の状態、生活習慣などを総合的に診察し、適切な診断と治療法を提案します。

市販品頼りのケアに潜むリスク

市販の「フケ・かゆみ用シャンプー」の中にはマラセチア菌対策を謳った製品もありますが、その効果には個人差があります。

また、洗浄力が強すぎたり、特定の成分が肌に合わなかったりすることで、かえって頭皮環境を悪化させることもあります。

特に症状が長引いている場合や炎症が強い場合は市販品だけに頼らず、一度専門医の診断を受けることが大切です。

医師は必要に応じて薬効成分の入った医薬品のシャンプーや外用薬を処方することができます。

市販シャンプー選びで見落としがちな点

見落としがちな点考えられる影響専門医からのアドバイス
「薬用」=万能という誤解症状や原因に合わない場合、効果が薄い、または悪化の可能性成分を確認し、自分の頭皮状態に合ったものを選ぶ。迷ったら相談を。
洗浄力の強さのみを重視必要な皮脂まで奪い、乾燥やバリア機能低下を招くマイルドな洗浄力で、保湿成分配合のものも検討する。
香料や添加物の影響敏感な頭皮には刺激となり、かゆみや赤みを引き起こす可能性無香料・無着色・低刺激性の製品を選ぶことを推奨。

情報過多時代の正しい知識の選び方

現代は情報が溢れており、頭皮ケアに関する様々な情報が簡単に手に入ります。しかし、中には科学的根拠の乏しい情報や、誤った情報も少なくありません。

特定の製品を過剰に宣伝する情報や、個人の体験談のみを根拠とする情報には注意が必要です。

信頼できる情報源としては皮膚科専門医や公的機関が発信する情報、学術論文などが挙げられます。情報を鵜呑みにせず、多角的に検討し、疑問点は専門家に相談する姿勢が重要です。

専門医に相談するメリットとタイミング

頭皮のトラブルが2週間以上続く場合、症状が強い場合、市販のケアで改善が見られない場合は皮膚科専門医への相談を強く推奨します。

専門医はマイクロスコープなどで頭皮の状態を詳細に観察し、マラセチア菌の関与の程度や他の皮膚疾患の可能性を診断します。

その上で抗真菌薬を含む外用薬や内服薬の処方、適切なスキンケア指導など個々の状態に合わせた治療計画を立てます。

早期に適切な治療を開始することで症状の悪化を防ぎ、より早く快適な頭皮状態を取り戻すことが期待できます。

マラセチア菌対策シャンプーの正しい選び方と成分の知識

マラセチア菌による頭皮トラブルのケアにおいて、毎日のシャンプー選びは非常に重要なポイントです。

「マラセチア菌頭皮シャンプー」と検索すると多くの製品が見つかりますが、どれを選べば良いか迷う方も多いでしょう。

ここでは効果的なシャンプーの選び方と、注目すべき成分について解説します。

抗真菌成分配合シャンプーの役割

マラセチア菌が異常増殖している場合、菌の活動を抑える成分が配合されたシャンプーが有効です。

代表的な抗真菌成分にはミコナゾール硝酸塩、ケトコナゾール、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオンなどがあります。

これらの成分はマラセチア菌の細胞膜に作用したり、増殖を抑制したりすることで、菌の数をコントロールし、フケやかゆみを軽減する効果が期待できます。

ただし効果の現れ方には個人差があり、肌に合わない場合もあるため、使用感や頭皮の状態を見ながら選ぶことが大切です。

主な抗真菌成分とその特徴

成分名主な作用期待される効果
ミコナゾール硝酸塩真菌の細胞膜合成を阻害マラセチア菌の増殖抑制、フケ・かゆみの改善
ケトコナゾール真菌の細胞膜エルゴステロール合成阻害強力な抗真菌作用、脂漏性皮膚炎治療薬にも使用
ピロクトンオラミン幅広い抗菌・抗真菌作用、皮脂酸化抑制フケ・かゆみの改善、頭皮臭の抑制

頭皮への優しさを考慮した洗浄成分

抗真菌成分だけでなく、シャンプーのベースとなる洗浄成分(界面活性剤)の種類も重要です。

洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮に必要な皮脂まで取り除いてしまい、乾燥やかえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。

アミノ酸系(例:ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa)やベタイン系(例:コカミドプロピルベタイン)の洗浄成分は比較的マイルドな洗浄力で、頭皮への刺激が少ないとされています。

自分の頭皮の状態に合わせて適切な洗浄力のシャンプーを選びましょう。

添加物の少ない低刺激性シャンプー

頭皮が敏感になっている場合は香料、着色料、防腐剤(パラベンなど)、アルコールといった添加物が刺激となり、症状を悪化させる可能性があります。

できるだけこれらの添加物が含まれていないか、配合量が少ない低刺激性のシャンプーを選ぶことが望ましいです。

製品の成分表示を確認し、「無香料」「無着色」「パラベンフリー」「アルコールフリー」などの表記があるものを参考にすると良いでしょう。

シャンプー選びのチェックポイント

  • 抗真菌成分は配合されているか
  • 洗浄成分はマイルドか(アミノ酸系、ベタイン系など)
  • 不要な添加物(香料、着色料、パラベン等)は少ないか
  • 保湿成分は配合されているか(セラミド、ヒアルロン酸など)
  • 自分の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌、敏感肌)に合っているか

保湿成分の重要性

頭皮の乾燥はバリア機能の低下を招き、外部刺激に弱くなるだけでなくマラセチア菌の増殖を間接的に助長することもあります。

シャンプーにセラミド、ヒアルロン酸、グリセリン、植物エキスなどの保湿成分が配合されていると、洗い上がりの頭皮の乾燥を防ぎ、うるおいを保つのに役立ちます。

特に乾燥しやすい方や洗浄力の高いシャンプーを使用する場合は、保湿成分の配合もチェックすると良いでしょう。

効果を最大化する!マラセチア菌に負けないシャンプー方法と日常ケア

適切なマラセチア菌頭皮シャンプーを選んだとしても、間違った使い方をしていては効果が半減してしまいます。

シャンプーの効果を最大限に引き出し、健やかな頭皮環境を育むためには正しいシャンプー方法と日々の丁寧なケアが大切です。

ここでは具体的な手順とポイントを解説します。

正しいシャンプーの手順とポイント

毎日のシャンプーは頭皮の汚れや余分な皮脂を落とし、マラセチア菌の増殖を抑える基本のケアです。以下の手順とポイントを守り、優しく丁寧に洗い上げましょう。

正しい洗髪ステップ

ステップポイント目的
1. ブラッシング乾いた髪の状態で、毛先から優しくとかす。頭皮への刺激は避ける。髪の絡まりをほどき、ホコリや大きな汚れを浮かす。シャンプーの泡立ちを助ける。
2. 予洗い38℃程度のぬるま湯で、髪と頭皮を1~2分かけて十分に濡らす。頭皮の汚れの約7割を落とす。シャンプーの使用量を減らし、頭皮への負担を軽減。
3. シャンプーを泡立てるシャンプーを適量手に取り、手のひらで軽く泡立ててから髪につける。シャンプー剤が直接頭皮に付着するのを防ぎ、均一に洗浄成分を行き渡らせる。
4. 頭皮を洗う指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく揉み洗いする。爪を立てない。毛穴の汚れや余分な皮脂を効果的に落とす。血行促進効果も。
5. すすぎシャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぐ。特に生え際や耳の後ろ。すすぎ残しは頭皮トラブルの原因。フケやかゆみを引き起こすことがある。

シャンプー後の保湿と乾燥

シャンプー後は頭皮も乾燥しやすい状態です。必要に応じて頭皮用のローションや保湿剤を使用し、うるおいを補給しましょう。

特に乾燥が気になる方や抗真菌シャンプーを使用している場合は保湿ケアが重要です。

そして、洗髪後はできるだけ速やかにドライヤーで髪と頭皮を乾かします。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなり、マラセチア菌にとっても好都合な環境を作ってしまいます。

ドライヤーは頭皮から20cm以上離し、同じ場所に熱風が集中しないように注意しながら根本からしっかりと乾かしましょう。

頭皮マッサージのすすめ

適度な頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮の新陳代謝を活発にする効果が期待できます。行が良くなることで頭皮に栄養が行き渡りやすくなり、健康な髪の育成や頭皮環境の改善につながります。

シャンプー時やリラックスタイムなどに指の腹を使って優しく頭皮全体を揉みほぐすようにマッサージしましょう。

ただし、炎症が強い場合や痛みがある場合は無理に行わないでください。

寝具やタオルの清潔管理

枕カバーやタオルは毎日直接頭皮や髪に触れるものです。汗や皮脂、フケなどが付着しやすく、これらがマラセチア菌の栄養源となったり、雑菌の温床となったりすることがあります。

枕カバーやタオルはこまめに洗濯し、常に清潔な状態を保つことが大切です。可能であれば毎日交換するのが理想的です。

寝具を清潔に保つことは頭皮トラブルの予防だけでなく、快適な睡眠にもつながります。

シャンプーだけでは不十分?生活習慣から見直す頭皮環境改善

マラセチア菌による頭皮トラブルの改善には適切なシャンプー選びや洗髪方法が重要ですが、それだけでは十分とは言えません。

体の内側からのケア、つまり生活習慣の見直しも健やかな頭皮環境を取り戻すためには欠かせない要素です。

ここでは食事、睡眠、ストレス管理といった観点から、頭皮環境改善につながる生活習慣について解説します。

バランスの取れた食事の重要性

食べたものは私たちの体だけでなく、頭皮や髪の健康にも直接影響します。特に皮脂の分泌をコントロールし、皮膚のターンオーバーを正常に保つためにはバランスの取れた食事が大切です。

脂質の多い食事や糖質の過剰摂取は皮脂の分泌を増やし、マラセチア菌の増殖を助長する可能性があります。

一方、ビタミンB群(特にB2、B6)、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛などは皮膚の健康維持に役立つ栄養素です。これらを多く含む食品を積極的に摂取しましょう。

頭皮ケアに役立つ栄養素と主な食品

栄養素主な働き多く含む食品例
ビタミンB2皮脂分泌の調整、皮膚・粘膜の健康維持レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品
ビタミンB6タンパク質の代謝促進、皮膚炎予防マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、さつまいも
亜鉛皮膚の新陳代謝促進、免疫機能維持牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類、卵黄

質の高い睡眠の確保

睡眠中には成長ホルモンが分泌され、皮膚の細胞分裂や修復が活発に行われます。

睡眠不足が続くと、この成長ホルモンの分泌が減少し、頭皮のターンオーバーが乱れたり、免疫力が低下したりして、頭皮トラブルが悪化しやすくなります。

毎日決まった時間に就寝・起床するなど規則正しい睡眠習慣を心がけ、質の高い睡眠を十分に確保することが重要です。

寝る前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用は避けてリラックスできる環境を整えましょう。

ストレスマネジメント

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、ホルモンバランスにも影響を与え、皮脂の過剰分泌や免疫力の低下を引き起こすことがあります。

これらはマラセチア菌の増殖しやすい環境を作り出す要因となります。

現代社会でストレスを完全になくすことは難しいですが、自分に合ったストレス解消法を見つけて上手にコントロールすることが大切です。

適度な運動、趣味の時間、リラクゼーション(瞑想、ヨガ、アロマテラピーなど)を取り入れ、心身のバランスを整えましょう。

生活習慣改善のポイント

  • 脂っこい食事や甘いものを控える
  • ビタミン・ミネラルを積極的に摂取する
  • 十分な睡眠時間を確保する(6~8時間目安)
  • 適度な運動を習慣にする
  • 自分なりのストレス解消法を見つける

適度な運動習慣

適度な運動は血行を促進し、全身の新陳代謝を高めます。頭皮への血流も改善されるため栄養が行き渡りやすくなり、老廃物の排出もスムーズになります。

また、運動はストレス解消にも効果的であり、自律神経のバランスを整えるのにも役立ちます。ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガなど自分が楽しめる運動を無理のない範囲で継続することが大切です。

ただし、運動後は汗をかいたまま放置せず、早めにシャワーを浴びて頭皮を清潔に保ちましょう。

専門医に相談するタイミングとクリニックでの治療法

セルフケアを続けてもなかなか改善しない頭皮トラブルや症状が広範囲に及ぶ場合、かゆみや炎症が強い場合は自己判断せずに皮膚科専門医に相談することが賢明です。

専門医は正確な診断に基づき、個々の状態に合わせた適切な治療法を提案してくれます。

ここではクリニックを受診する目安と主な治療法について解説します。

クリニック受診の目安

以下のような場合は、早めに皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。

  • 市販のフケ・かゆみ用シャンプーを2週間以上使用しても症状が改善しない、または悪化する場合
  • フケが大量に出る、頭皮が真っ赤に腫れている、強いかゆみで日常生活に支障が出る場合
  • 頭皮だけでなく、顔や体にも同様の症状が見られる場合
  • 原因が分からず不安な場合や、正しいケア方法を知りたい場合

特にAGA(男性型脱毛症)やその他の脱毛症と合併している可能性も考慮し、薄毛治療専門クリニックで頭皮環境全体を含めた相談をするのも一つの選択肢です。

皮膚科での診断と検査

皮膚科ではまず問診で症状の経過や生活習慣などを詳しく聞き取ります。その後、視診や触診で頭皮の状態を詳細に確認します。

必要に応じてダーモスコピー(特殊な拡大鏡)を用いた頭皮の観察や、真菌検査(フケや皮膚の一部を採取して顕微鏡でマラセチア菌の増殖を確認する検査)を行うことがあります。

これらの診察・検査結果を総合的に判断し、脂漏性皮膚炎、マラセチア毛包炎、あるいは他の皮膚疾患なのかを診断します。

主な治療法(薬物療法)

マラセチア菌が原因と診断された場合、主に抗真菌薬を用いた薬物療法が行われます。

症状の程度や範囲に応じて、外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)が処方されます。

クリニックでの主な薬物治療

薬剤の種類主な成分例期待される効果
抗真菌外用薬(ローション、クリーム、シャンプー剤)ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、ニゾラールマラセチア菌の増殖を直接抑制し、炎症を鎮める
ステロイド外用薬ヒドロコルチゾン、ベタメタゾンなど(強さに段階あり)炎症やかゆみを強力に抑える(短期的な使用が原則)
抗真菌内服薬イトラコナゾール、フルコナゾールなど症状が重度または広範囲の場合、外用薬で効果不十分な場合に使用

ステロイド外用薬は炎症を抑える効果が高いですが、長期間使用すると副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。

抗真菌薬とステロイド薬を組み合わせて治療することもあります。

生活指導とスキンケア指導

薬物療法と並行して頭皮環境を改善するための生活指導やスキンケア指導も行われます。具体的には、正しいシャンプー方法、保湿ケア、食事や睡眠などの生活習慣に関するアドバイスです。

クリニックによっては専門のカウンセラーが対応することもあります。これらの指導を守り、根気強く治療に取り組むことが再発予防にもつながります。

注意:AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)の治療とマラセチア菌による頭皮トラブルの治療はアプローチが異なる場合があります。

薄毛と頭皮の炎症の両方にお悩みの方は両方の知見を持つ専門医にご相談ください。当クリニックでは頭皮全体の健康を考慮した総合的な薄毛治療を提供しています。

マラセチア頭皮トラブルに関するよくある質問(Q&A)

マラセチア菌による頭皮トラブルに関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の疑問解消にお役立てください。

マラセチア菌は人にうつりますか?

マラセチア菌は常在菌であり、誰もが皮膚に持っている菌です。そのためマラセチア菌そのものが人から人にうつって病気を発症させるという性質のものではありません。

ただし、菌が増殖しやすい肌環境や体質が似ている家族内で、同様の症状が見られることはあります。タオルの共用を避けるなど基本的な衛生管理は心がけましょう。

抗真菌シャンプーは毎日使っても大丈夫ですか?

製品の種類や含まれる成分、個人の頭皮状態によって異なります。

一般的に治療初期は医師の指示通り毎日使用し、症状が改善してきたら使用頻度を減らしていく(例:週に2~3回)ことが多いです。

長期間毎日使用すると頭皮が乾燥したり、刺激を感じたりすることもあります。使用方法については製品の説明書をよく読むか、医師または薬剤師にご相談ください。

治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

症状の程度や範囲、治療法、個人の体質や生活習慣などによって治療期間は大きく異なります。

軽症であれば数週間程度で改善が見られることもありますが、慢性化している場合や重症の場合は、数ヶ月以上の治療が必要になることもあります。

大切なのは医師の指示に従い根気強く治療を続けることです。また、症状が改善した後も再発予防のためのケアを継続することが重要です。

食事療法だけでマラセチア菌による頭皮トラブルは治りますか?

食事療法は頭皮環境を整え、症状の改善や再発予防に役立つ重要な要素ですが、食事だけで完全に治癒することは難しい場合が多いです。

特に炎症が強い場合や症状が長引いている場合は抗真菌薬などによる適切な薬物療法が必要です。

食事療法はあくまで治療の補助的な役割と捉え、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。

AGA治療中にマラセチア菌による頭皮トラブルが起きた場合、どうすれば良いですか?

AGA治療とマラセチア菌による頭皮トラブルの治療は並行して行うことが可能です。

ただし、使用する薬剤の組み合わせや頭皮の状態によっては注意が必要な場合もあります。必ずAGA治療を受けている医師または皮膚科専門医に相談し、適切な指示を受けてください。

自己判断でAGA治療薬を中断したり、市販の頭皮ケア製品を使用したりすることは避けましょう。

当クリニックではAGA治療と頭皮トラブルの両面からアプローチし、最適な治療プランをご提案します。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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