髪を育てる治療とケアの両立で得られる効果

髪を育てる治療とケアの両立で得られる効果

髪の毛育てると決意したとき、多くの人が直面するのが「クリニックでの治療」と「自宅でのセルフケア」のどちらを優先すべきかという悩みです。

結論から言えば、これらを別々のものとして捉えるのではなく、車の両輪のように同時に回していくことが、太く強い髪を取り戻すための確実な道筋となります。

医学的根拠に基づいた治療で発毛のスイッチを入れつつ、日々のケアで頭皮環境という土壌を肥やす。この両立こそが、単独の方法では到達できない相乗効果を生み出します。

本記事では、治療とケアを組み合わせることで具体的にどのような変化が起きるのか、そして今日から始められる実践的な方法について、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。

あなたの髪の未来を変えるための知識を、ここで手に入れてください。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

髪の毛を育てるための基礎知識とサイクルの正常化

髪の毛を育てるためには、ヘアサイクルと呼ばれる毛の生え変わり周期を正常に戻し、成長期を長く保つことが最も重要であり、治療とケアはこのサイクルの乱れを正すために行います。

薄毛や抜け毛が気になり始める状態は、何らかの原因で髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまう「サイクルの短縮」が起きているサインです。

この短縮された期間を本来の長さに引き戻す作業こそが「髪を育てる」という行為の本質です。

まずは敵を知り己を知るように、髪が生えてから抜けるまでの流れを正しく理解し、どの段階で何が必要なのかを把握しましょう。

ヘアサイクルと成長期の重要性

私たちの頭髪は永遠に伸び続けるわけではありません。一定の期間成長した後に成長が止まり、自然に抜け落ち、また新しい髪が生えてくるというサイクルを繰り返しています。

この一連の流れにおいて最も重要なのが「成長期」です。通常、男性であれば3年から5年、女性であれば4年から6年ほど続くこの期間に毛母細胞が活発に分裂し、髪は太く長く育ちます。

しかし、AGA(男性型脱毛症)などが発症すると、この成長期が極端に短くなります。数ヶ月から1年程度で成長が止まってしまうため、髪が十分に育つ前に退行期や休止期へと移行してしまいます。

その結果、細く短い産毛のような髪ばかりが増え、全体的なボリュームが低下して地肌が透けて見えるようになります。髪の毛を育てるということは、単に新しい髪を生やすことだけではありません。

今ある髪、そしてこれから生えてくる髪の成長期を最大限に延ばし、一本一本を太く丈夫に育て上げることが求められます。

ヘアサイクルの各段階とその特徴

段階期間状態と特徴
成長期数年〜6年毛母細胞が活発に分裂し、髪が太く長く伸びる時期。全体の約85%から90%がこの状態。
退行期2週間〜3週間毛母細胞の活動が弱まり、毛根が縮小し始める時期。成長が止まる準備期間。
休止期3ヶ月〜4ヶ月活動が完全に停止し、新しい髪が生える準備をする時期。古い髪はブラッシング等で自然に抜ける。

薄毛が進行する原因と対策

薄毛が進行する主な原因は、遺伝的要素と男性ホルモンの影響が大きく関わっています。

具体的には、テストステロンという男性ホルモンが頭皮にある還元酵素と結びつき、DHT(ジヒドロテストステロン)という強力なホルモンに変化することが引き金となります。

このDHTが毛乳頭細胞にある受容体に取り込まれると髪の成長を抑制するシグナルが出され、成長期が強制的に終了させられてしまいます。これがAGAによる薄毛の正体です。

この進行を食い止めるためにはDHTの生成を抑えることや、毛根への血流を改善して栄養を届ける対策が必要です。

また、ホルモンバランス以外にも、過度なストレスや睡眠不足、栄養の偏りといった生活習慣の乱れも薄毛の進行を加速させる要因となります。

原因は一つではなく、複数が絡み合っていることが多いため、多角的な視点で対策を講じることが髪の毛を育てる近道となります。

治療とセルフケアの役割分担

髪の毛を育てる上で、医療機関での治療と自宅でのセルフケアは明確に役割が異なります。治療の役割はマイナスの状態をゼロに戻し、さらにプラスへと転じさせる強力なエンジンです。

薬の力を使ってホルモンの働きを調整したり、強制的に血流を良くして発毛を促したりすることは、セルフケアだけでは困難な領域です。

一方でセルフケアの役割は治療の効果を最大限に引き出すための土台作りであり、維持することです。

どれほど良い薬を使っても、栄養不足や睡眠不足、不潔な頭皮環境であっては、薬の効果は半減してしまいます。

毎日の食事や睡眠、シャンプーといったケアは、地味ですが髪を育てるための基礎体力をつける行為です。

治療が「攻め」であるならば、セルフケアは「守り」と「育成」です。この両方が機能して初めて、理想的な髪の成長が実現します。

医学的アプローチで髪の毛を育てる具体的な方法

医学的アプローチで髪の毛を育てるには内服薬と外用薬を適切に組み合わせ、必要に応じて専門的な施術を取り入れることが効果的です。

現代の医学では薄毛の原因となる物質の働きを阻害したり、細胞に直接働きかけて発毛を促したりする方法が確立されています。

自己判断での対策に限界を感じたとき、科学的根拠に基づいた医学の力を借りることは確実性を高めるための賢明な選択です。専門医の指導のもと、自分の症状や体質に合った方法を選択することが大切です。

内服薬による内側からの働きかけ

内服薬は体の内側から薄毛の原因にアプローチする治療の柱です。主に用いられるのは、抜け毛の進行を抑える「守り」の薬です。

これらはテストステロンを脱毛ホルモンであるDHTに変換する酵素の働きを阻害する作用を持っています。

この酵素の働きをブロックすることでヘアサイクルが短縮されるのを防ぎ、成長期を正常な長さに戻していきます。

内服薬を服用することで抜け毛の量が減少し、細くなっていた髪が太く育つ時間が確保されます。

効果が現れるまでには通常半年程度の期間が必要ですが、継続することで薄毛の進行を食い止める高い効果が期待できます。

ただし、副作用のリスクもゼロではないため、医師の診断のもとで正しく服用し、定期的に体調を確認することが重要です。

外用薬で頭皮に直接アプローチ

外用薬は頭皮に直接塗布することで発毛を促す「攻め」の薬です。代表的な成分であるミノキシジルは毛包に直接作用して細胞の増殖やタンパク質の合成を促進します。

また、血管を拡張させる作用もあり、縮小してしまった毛根へ十分な血液と栄養を送り込む手助けをします。

外用薬の利点は、気になる部分にピンポイントで使用できることです。頭頂部や生え際など、薄毛が気になる箇所に直接成分を届けることで、新しい髪の発毛を強力にサポートします。

内服薬で抜け毛を抑えつつ、外用薬で新しい髪を生やすという組み合わせは、AGA治療の王道とも言える手法です。

使用直後には一時的に抜け毛が増えることがありますが、これは新しい髪が生えてくる前兆であるため、焦らずに使用を続けることが大切です。

主な治療薬の分類と役割

分類主な作用期待できる変化
内服薬(守り)脱毛ホルモンの生成を抑制する抜け毛が減り、現状維持や進行遅延が可能になる
内服薬(攻め)血流を増やし毛母細胞を活性化する体の中から発毛力を高め、髪の密度を増やす
外用薬(攻め)頭皮から直接毛包に働きかける局所的な発毛促進と、髪を太く硬く育てる

専門クリニックでの施術内容

投薬治療に加えて、専門クリニックではより直接的な発毛施術を受けることができます。

例えば成長因子やビタミン、ミネラルなどを配合したカクテルを、注射や特殊な機器を使って頭皮に直接注入するメソセラピーと呼ばれる治療法があります。

これは薬の効果を補完し、発毛のスピードを加速させることを目的としています。

また、LED照射や低出力レーザーを用いた治療も行われています。特定の波長の光を頭皮に当てることで毛乳頭細胞を刺激し、エネルギー産生を高める効果があります。

これらの施術は投薬治療だけでは効果を感じにくい場合や、より短期間で結果を出したい場合に有効な選択肢となります。

医師と相談し、予算や目標に合わせて最適なプランを組み立てることが、満足のいく結果につながります。

日常生活の改善が髪の毛を育てる土台を作る

日常生活の習慣を見直し改善することは、髪の毛を育てるための強固な土台を作り上げることと同義です。私たちの体は食べたものから作られ、睡眠中に修復され、ストレスのない状態で正常に機能します。

髪も例外ではなく、生命維持に関わる臓器への栄養供給が優先されるため、不摂生な生活を続けていると真っ先に栄養が絶たれ、髪質が悪化します。

薬の効果を最大限に受け取るためにも、ライフスタイルの質を高めることは避けて通れません。

栄養バランスの取れた食事の摂取

髪の主成分はケラチンというタンパク質です。良質なタンパク質を食事から摂取することは、髪の原料を確保することになります。肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく食べることが基本です。

しかし、タンパク質だけでは髪にはなりません。摂取したタンパク質を髪に変えるためには、亜鉛やビタミン類の助けが必要です。

特に亜鉛は細胞分裂を正常に行うために重要なミネラルですが、現代人の食生活では不足しがちです。牡蠣やナッツ類、レバーなどに多く含まれています。

また、ビタミンB群やビタミンEは頭皮の代謝や血行を助けます。逆に脂っこい食事や糖質の摂りすぎは、皮脂の過剰分泌を招き頭皮環境を悪化させるため、控える意識を持つことが大切です。

無理なダイエットも栄養失調を招き、薄毛の大きな原因となります。

質の高い睡眠と成長ホルモン

「寝る子は育つ」と言われますが、髪もまた寝ている間に育ちます。

入眠後の深い眠りの間に分泌される成長ホルモンは毛母細胞の分裂を促し、日中に受けた紫外線などのダメージを修復する重要な働きを担っています。

睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌量が減り、髪の成長が滞るだけでなく、自律神経の乱れも引き起こします。

睡眠時間は単に長ければ良いというわけではなく、質の良さが重要です。

就寝前のスマートフォンの使用を控えたり、入浴で体を温めてリラックスしたりすることで副交感神経を優位にし、スムーズに入眠できる環境を整えましょう。

毎日決まった時間に起き、朝日を浴びて体内時計をリセットすることも、夜の良質な睡眠につながります。

良質な睡眠を得るための習慣

  • 就寝の90分前までに入浴を済ませて深部体温を上げておく
  • 寝る直前のアルコールやカフェイン摂取を避け、白湯などを飲む
  • 寝室の照明や温度を調整し、リラックスできる空間を作る

ストレス管理と自律神経の調整

ストレスは髪の大敵です。過度なストレスを感じると自律神経の交感神経が優位になり、血管が収縮します。その結果、末梢にある頭皮への血流が悪くなり、髪に必要な栄養素が届きにくくなります。

円形脱毛症などがストレスと関連付けられるのも、こうした自律神経や免疫系の乱れが影響していると考えられています。

完全にストレスをなくすことは現代社会では難しいですが、自分なりの解消法を持つことは可能です。適度な運動は血行を促進するだけでなく、気分転換にもなります。

趣味の時間を持ったり、深呼吸をしてリラックスする時間を作ったりすることも有効です。

ストレスを溜め込まず、上手に発散させて自律神経のバランスを整えることは、髪の毛を育てるための見えない肥料となります。

正しい頭皮ケアで髪の毛が育ちやすい環境を整える

正しい頭皮ケアを行うことで、髪の毛がスムーズに成長できる清潔で健康的な環境を整えることができます。

頭皮は髪という作物が育つための「畑」です。畑が荒れていたり、土が固かったりしては、いくら良い種を撒いても作物は育ちません。

毎日のシャンプーやマッサージ、紫外線対策を通じて頭皮環境を正常に保つことは治療の効果を底上げし、今ある髪を守るために欠かせない日課です。

自己流の間違ったケアを見直し、頭皮をいたわるケアへと転換しましょう。

シャンプー選びと正しい洗い方

シャンプーの目的は髪の汚れを落とすこと以上に、頭皮の余分な皮脂や汚れを取り除くことにあります。

しかし、洗浄力が強すぎるシャンプーを使うと必要な皮脂まで奪ってしまい、乾燥や過剰な皮脂分泌を招くことがあります。

自分の頭皮タイプに合わせて、アミノ酸系などの洗浄力がマイルドなものを選ぶことが大切です。

また、洗い方も重要です。爪を立ててゴシゴシ洗うと頭皮を傷つけてしまいます。

予洗いを十分に行い、お湯だけで落とせる汚れを落とした後、しっかりと泡立てたシャンプーで指の腹を使って優しくマッサージするように洗います。

そして、すすぎ残しがないように時間をかけて洗い流します。シャンプー剤が頭皮に残ると炎症の原因になるため、洗う時間の倍の時間をかけてすすぐくらいの意識が必要です。

頭皮タイプ別おすすめシャンプーの特徴

頭皮タイプ特徴と悩み適したシャンプー
乾燥肌フケやかゆみが出やすく、カサカサしている保湿成分配合のアミノ酸系やベタイン系
脂性肌夕方になるとベタつき、ニオイが気になる適度な洗浄力がある高級アルコール系や石鹸系
敏感肌赤みが出やすく、刺激に弱い無添加や低刺激処方の薬用シャンプー

頭皮マッサージによる血行促進

頭皮マッサージは物理的に血流を良くする効果的な手段です。頭皮は筋肉が少なく、意識して動かさないと硬くなりがちです。頭皮が硬くなると血管が圧迫され、血流が滞ります。

入浴中や育毛剤を塗布したタイミングで、頭皮を柔らかく揉みほぐす習慣をつけましょう。

こめかみから頭頂部に向かって引き上げるようにマッサージしたり、首の後ろや耳の周りのリンパを流したりすることで、頭部全体の循環が良くなります。リラックス効果もあるため、ストレス解消にもつながります。

ただし、力を入れすぎたり、長時間やりすぎたりすると逆効果になることもあるため、気持ちいいと感じる程度の強さで毎日数分続けることが大切です。

紫外線対策と保湿の重要性

頭皮は顔の皮膚とつながっており、顔以上に紫外線を浴びやすい場所です。紫外線は頭皮の細胞にダメージを与え、光老化と呼ばれる老化現象を促進させます。

また、乾燥を引き起こし、バリア機能を低下させる原因にもなります。

外出時には帽子や日傘を使用したり、頭皮用の日焼け止めスプレーを使ったりして、紫外線を防ぐ意識を持つことが重要です。

そして、洗髪後の保湿ケアも大切です。顔に化粧水を塗るように頭皮にも専用のローションなどで潤いを与えることで、乾燥によるフケやかゆみを防ぐことができます。

特に育毛剤を使用している場合は保湿成分が含まれているものも多いため、一石二鳥の効果が期待できます。頭皮を外部刺激から守り、潤いのある状態に保つことが、健やかな髪を育てる条件です。

治療とケアを両立することで生まれる相乗効果

治療とケアを両立することで、それぞれを単独で行うよりも遥かに高い発毛効果と持続性が生まれます。

これは薬の力で「生やす力」を最大化し、生活習慣と頭皮ケアで「育つ環境」を最良の状態にするという、理にかなった戦略です。

多くの成功事例において、この両輪がうまく噛み合っていることが共通しています。なぜ両立が必要なのか、その具体的なメリットについて掘り下げていきます。

効果の実感スピードと持続性

治療薬を使えば、多くの人で発毛が見られます。しかし、頭皮環境が悪かったり栄養不足だったりすると、せっかく生えてきた髪が細く弱々しいままだったり、すぐに抜けてしまったりすることがあります。

ここに適切なケアが加わると、薬によって活性化された毛根に十分な栄養が届き、太くしっかりとした髪が育ちやすくなります。

結果として、鏡を見たときのボリューム感や髪のハリ・コシの変化をより早く実感できるようになります。

また、生活習慣が改善されているため、将来的に薬の量を減らしたり治療を卒業したりした後も良い状態を維持しやすくなるというメリットがあります。

短期的な発毛だけでなく、長期的な髪の健康維持を考えた場合、両立は非常に効率的です。

頭皮トラブルの予防と改善

AGA治療薬、特に外用薬を使用すると、人によっては頭皮のかゆみや炎症といった副作用が出ることがあります。乾燥した頭皮や荒れた頭皮に使用すると、そのリスクは高まります。

日頃から正しいシャンプーや保湿ケアを行い、頭皮のバリア機能を高めておくことは、こうした治療に伴うトラブルを未然に防ぐことにつながります。

健康な頭皮であれば外用薬の成分も浸透しやすくなり、薬の効果を無駄なく発揮させることができます。逆に、皮脂で毛穴が詰まっている状態では薬液が毛根まで届きにくくなります。

ケアによって頭皮をクリアな状態に保つことは治療の副作用リスクを下げつつ、効果を高めるという二重の利点をもたらします。

全身の健康状態への好影響

髪の毛を育てるための生活習慣改善は、そのまま全身の健康増進につながります。

栄養バランスの良い食事、質の高い睡眠、適度な運動、ストレス管理は生活習慣病の予防や疲労回復、免疫力の向上にも寄与します。

「髪のために」と始めた取り組みが結果として肌の調子を良くしたり、日中の集中力を高めたりと、体全体にポジティブな連鎖を引き起こします。

髪は健康のバロメーターとも言われます。髪が元気になるということは、体も元気になっている証拠です。

薄毛対策をきっかけに、より健康的で若々しい体を手に入れることができるのも、ケアを重視することの大きな副産物と言えるでしょう。

髪の毛を育てる過程で注意すべきポイント

髪の毛を育てる過程には、いくつかの落とし穴や誤解しやすいポイントが存在するため、正しい知識を持って冷静に対処する必要があります。

焦りや不安から誤った行動をとってしまうと逆効果になったり、途中で挫折してしまったりする原因となります。

特に治療を始めた初期段階や効果が停滞したと感じたときにどう振る舞うかが、最終的な成功を左右します。事前に注意点を把握し、心構えを持っておくことが大切です。

誤った自己判断とリスク

インターネット上には医学的根拠の乏しい情報や個人の体験談が溢れています。「これだけで髪が生えた」といった極端な情報を鵜呑みにし、自己流の民間療法に頼りすぎるのは危険です。

また、海外からの個人輸入で安易に治療薬を入手し服用することも、偽薬のリスクや重篤な副作用が出た際の救済制度がないため推奨されません。

自分の薄毛のタイプや進行度、体質に合っていない方法を続けても、時間とお金の無駄になるだけでなく、症状を悪化させる可能性もあります。

異常を感じたらすぐに専門医に相談する、薬の用法用量を守るなど、基本に忠実であることが最も安全で確実な道です。自己判断で薬を中断したり、勝手に量を増やしたりすることも避けましょう。

初期脱毛への理解と心構え

治療を開始して2週間から1ヶ月ほど経過した頃に、一時的に抜け毛が増える現象が起こることがあります。これを「初期脱毛」と呼びます。

多くの人が「薬が合わないのではないか」「悪化したのではないか」と不安になり、治療をやめてしまう原因となります。

しかし、これは薬が効き始め、休止期にあった古い髪が新しい髪に押し出されて抜けている証拠であり、好転反応の一つです。

このメカニズムを理解していれば、初期脱毛は「新しい髪が育つ準備が始まった」というポジティブなサインとして受け取ることができます。

通常、1ヶ月から2ヶ月程度で収まりますので、ここで諦めずに治療を継続することが極めて重要です。この時期を乗り越えれば、産毛が生え始め、徐々に太い髪へと成長していく姿を確認できるはずです。

継続することの難しさと工夫

髪の毛を育てることは、短距離走ではなくマラソンです。今日薬を飲んで明日フサフサになることはありません。効果を実感するまでには最低でも半年、見た目が大きく変わるには1年程度の時間が必要です。

毎日の薬の服用やケア、生活習慣の維持は慣れるまでは面倒に感じることもあり、モチベーションの維持が課題となります。

継続するための工夫として、行動を習慣化することが有効です。「歯磨きの後に薬を飲む」「入浴中にマッサージをする」など、既存の習慣とセットにすることで無理なく続けられます。

また、毎月写真を撮って記録を残し、小さな変化を可視化することも励みになります。完璧を求めすぎず、たまに忘れても自分を責めずに淡々と続ける姿勢が成功の鍵です。

年代別に見る髪の毛を育てるアプローチの違い

髪の毛を育てるアプローチは年齢やライフステージによって重点を置くべきポイントが異なります。20代の薄毛と50代の薄毛では進行のスピードや回復力、社会的背景が違うためです。

自分の年代に合わせた適切な戦略をとることで効率的に髪を育て、将来のリスクに備えることができます。

ここでは、年代ごとの特徴と対策の方向性について解説します。

20代から始める早期対策

20代での薄毛は進行が早い傾向にあり、精神的なダメージも大きいのが特徴です。しかし、細胞の活動が活発であるため、早期に対策を始めれば回復する可能性が非常に高い年代でもあります。

「まだ若いから大丈夫」と放置せず、気になり始めたらすぐに専門機関を受診することが大切です。

この世代は社会人生活のスタートに伴うストレスや食生活の乱れ、睡眠不足などが引き金になりやすいです。

治療薬での予防的なアプローチに加え、生活リズムを整えることが重要です。将来を見据え、今のうちに正しいヘアケア習慣を身につけておくことが、30代以降の髪の豊かさを決定づけます。

30代40代の集中ケア

30代から40代はAGAの発症率が高まり、見た目の変化が顕著になる時期です。仕事での責任も増し、最も忙しい世代であるため、ケアがおろそかになりがちです。

ここでは、本格的な治療と効率的なケアの両立が求められます。ある程度進行してしまっている場合は内服薬だけでなく、外用薬や注入治療なども視野に入れた積極的な「攻め」の姿勢が必要です。

同時に代謝が落ち始める年代でもあるため、食事や運動への意識改革も不可欠です。血管年齢や内臓脂肪の状態も髪に影響してきます。

多忙な中でも自分をケアする時間を確保し、髪の曲がり角を乗り切るための集中投資を行うべき時期と言えます。

50代以降の維持と改善

50代以降になると、加齢による全体的なボリュームダウンや髪質の変化も加わります。AGAの治療だけでなく、エイジングケアの視点を持つことが大切です。

無理に20代の頃の髪量に戻そうとするのではなく、年相応の品のあるヘアスタイルを目指し、髪一本一本のハリやコシを育てることに注力しましょう。

持病がある場合、服用できる薬に制限が出ることがあるため、医師との連携がより重要になります。頭皮の乾燥も進むため、保湿ケアを重点的に行い、優しくいたわるようなケアを心がけます。

諦める必要はありませんが、現状維持や緩やかな改善を目標に長く続けられる方法を選択することが賢明です。

年代別・重点対策ポイント

年代状態の特徴優先すべき対策
20代進行が早く、環境変化の影響を受けやすい早期発見・早期治療開始と生活リズムの確立
30代・40代薄毛が目立ち始め、代謝も落ちる積極的な多角的治療と、食事・運動の改善
50代以降加齢による変化が加わる現状維持・髪質改善と、持病を考慮した安全なケア

育毛の概念に戻る

育毛ガイドTOP

紙を育てる治療に関するよくある質問

かつらや植毛と、髪を育てる治療の違いは何ですか?

かつらは人工的に見た目をカバーするもの、植毛は自分の髪を移植する外科的な処置です。

これらに対し、髪を育てる治療はご自身の眠っている発毛力を呼び覚まし、自分の髪を再び生やすことを目的としています。

自然な仕上がりや、自分の髪が育つ喜びを感じられる点が大きな違いです。進行度によっては植毛と治療を組み合わせることもあります。

治療を始めたら、一生薬を飲み続けなければなりませんか?

AGAは進行性の症状であるため、効果を維持するためには継続的な治療が必要です。完全にやめてしまうと再び薄毛が進行する可能性があります。

ただし、満足のいく状態まで髪が生え揃った後は薬の種類を変えたり量を減らしたりして、維持療法へと切り替えることが可能です。

医師と相談しながら、ライフスタイルに合わせて調整していくことができます。

市販の育毛剤とクリニックの治療薬はどう違いますか?

市販の育毛剤の多くは頭皮環境を整えたり、今ある髪を健康に保ったりする「医薬部外品」や「化粧品」に分類されるものが中心です。

一方、クリニックで処方される治療薬は、発毛効果が医学的に認められた「医薬品」です。

成分の濃度や作用機序が異なり、新たに髪を生やすという点においては、医療機関での治療薬の方が高い効果が期待できます。

女性でも男性と同じように髪を育てることはできますか?

女性の薄毛(FAGAなど)は、男性とは原因やメカニズムが異なる部分があり、使用できる薬も異なります。特に男性用の治療薬の中には、女性が触れることさえ禁忌とされているものもあります。

しかし、女性専用の治療薬やサプリメント、ホルモンバランスを整える治療法が存在します。女性特有の原因に合わせた適切なアプローチを行えば、女性もしっかりと髪を育てることが可能です。

不規則な生活のままでは、薬を飲んでも意味がないですか?

意味がないということはありませんが、効果が十分に発揮されない可能性は高いです。極端な寝不足や栄養失調の状態では、薬が持つポテンシャルを100%引き出すことはできません。

完璧な生活を目指す必要はありませんが、できる範囲で少しずつ改善していく姿勢が治療の成功率を高めます。薬は魔法ではなく、体の機能を助けるものです。

参考文献

YONEDA, Katsuaki, et al. Preventive effect of edaravone ointment on cyclophosphamide-chemotherapy induced alopecia. Supportive Care in Cancer, 2021, 29.10: 6127-6134.

HARADA, Kazutoshi, et al. Efficacy of autologous dermal sheath cup cell transplantation in male and female pattern hair loss: A Single‐Arm, Multi‐Center, phase III equivalent clinical study. The Journal of Dermatology, 2023, 50.12: 1539-1549.

OHYAMA, Manabu; MATSUDO, Kiichi; FUJITA, Toru. Management of hair loss after severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection: Insight into the pathophysiology with implication for better management. The Journal of Dermatology, 2022, 49.10: 939-947.

TSUBOI, Ryoji, et al. Autologous cell–based therapy for male and female pattern hair loss using dermal sheath cup cells: A randomized placebo-controlled double-blinded dose-finding clinical study. Journal of the American Academy of Dermatology, 2020, 83.1: 109-116.

WOLFF, Hans; FISCHER, Tobias W.; BLUME-PEYTAVI, Ulrike. The diagnosis and treatment of hair and scalp diseases. Deutsches Ärzteblatt International, 2016, 113.21: 377.

OLSEN, Elise A., et al. Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss. Journal of the American Academy of Dermatology, 2005, 52.2: 301-311.

目次