育毛と遺伝子の関係|ハゲは遺伝する?AGAの仕組みと、「遺伝子検査」で何がわかるか

育毛と遺伝子の関係|ハゲは遺伝する?AGAの仕組みと、「遺伝子検査」で何がわかるか

「薄毛は遺伝する」という言葉を聞き、ご自身の将来を不安に思っている方も少なくないでしょう。父親や祖父の髪の状態を見て、「自分もいつか…」と考えるのは自然なことです。

しかし、育毛と遺伝子の関係は一体どうなっているのでしょうか。

この記事では、薄毛、特にAGA(男性型脱毛症)と遺伝の仕組みについて詳しく解説します。

さらに、最近注目されている「遺伝子検査」で何がわかり、それをどう育毛ケアに活かせるのか、そのメリットと限界点までを掘り下げていきます。

遺伝が全てと諦める前に、正しい知識を身につけましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

育毛と遺伝の関係性|薄毛は本当に遺伝するのか

薄毛と遺伝の関係は、多くの方が気にする点です。結論から言うと、薄毛の「なりやすさ」は遺伝的要因の影響を受けます。

しかし、遺伝が薄毛の全てを決定づけるわけではありません。

親からの遺伝は薄毛の「可能性」に影響する

親や親族に薄毛の方がいる場合、ご自身も薄毛になる「可能性」は、そうでない方と比べて高くなる傾向があります。これは、薄毛に関連する特定の遺伝子が受け継がれることがあるためです。

特にAGA(男性型脱毛症)は、遺伝的要因が大きく関わっていると考えられています。

具体的には、男性ホルモンの影響の受けやすさや、特定の酵素の活性度が遺伝によって左右されることがわかっています。この「体質」が受け継がれることで、薄毛のリスクが高まると言えます。

遺伝だけが薄毛の全ての原因ではない

遺伝的要因はあくまで「リスク」の一つであり、遺伝情報が同じ一卵性双生児であっても、生活環境や習慣の違いによって薄毛の進行度合いが異なるケースが報告されています。

これは、遺伝以外にも薄毛に影響を与える要因が多数存在することを示しています。

例えば、日々の食生活、睡眠の質、ストレスの度合い、喫煙や飲酒の習慣、頭皮のケア方法などが、髪の健康状態に大きく関わります。

遺伝的リスクが高い方でも、これらの要因を適切に管理することで、薄毛の進行を遅らせたり、予防したりする助けになる可能性があります。

母親側・父親側どちらから遺伝しやすい?

薄毛の遺伝に関しては、「母親側から遺伝しやすい」という説を耳にしたことがあるかもしれません。

これは、AGAの主要な原因遺伝子の一つである「アンドロゲン受容体」の遺伝子がX染色体上に存在するためです。

男性は母親からX染色体、父親からY染色体を受け継ぐため、アンドロゲン受容体の感受性に関しては母親側の遺伝的影響が強くなります。

一方で、もう一つの主要な遺伝的要因である「5αリダクターゼ」の活性度に関する遺伝子は常染色体上に存在し、これは両親どちらからでも遺伝する可能性があります。

遺伝経路の概要

遺伝的要因染色体上の位置主な遺伝経路
アンドロゲン受容体感受性X染色体母親側から遺伝
5αリダクターゼ活性度常染色体両親どちらからも遺伝

遺伝以外の要因も深く関わっている

前述の通り、遺伝は薄毛の要因の一つに過ぎません。髪の成長には多くの要素が複雑に絡み合っています。

遺伝的に薄毛になりやすい体質であったとしても、それが発現するかどうか、いつ頃から進行するかは、遺伝以外の要因によって大きく左右されます。

例えば、栄養バランスの取れた食事は髪の毛の材料を供給し、十分な睡眠は髪の成長を促す成長ホルモンの分泌に必要です。

逆に、過度なストレスや不規則な生活は、血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭皮環境を悪化させる可能性があります。

育毛を考える上では、遺伝的リスクを認識しつつも、ご自身でコントロール可能な生活習慣などの要因にも目を向けることが重要です。

AGA(男性型脱毛症)の仕組みと遺伝的要因

AGA(男性型脱毛症)は、成人男性に見られる薄毛の最も一般的な形態であり、その発症には遺伝的要因が深く関わっています。

AGAの仕組みを理解することは、育毛と遺伝の関係を知る上で欠かせません。

AGAとは何か?基本的な知識

AGA(Androgenetic Alopecia)は、一般的に「男性型脱毛症」と呼ばれ、思春期以降に始まり、徐々に進行する脱毛症です。

主に前頭部(生え際)や頭頂部(つむじ周り)の髪の毛が細く、短くなり、最終的には抜け落ちていく特徴があります。

これは、髪の毛の成長サイクル(ヘアサイクル)が乱れ、通常数年ある「成長期」が数ヶ月から1年程度に短縮してしまうために起こります。

成長期が短くなることで、髪の毛が太く長く成長する前に「退行期」「休止期」へと移行してしまい、結果として薄毛が目立つようになります。

AGA発症に関わる2つの主要な遺伝子

AGAの発症には、主に2つの遺伝的要因が関わっていると考えられています。一つは「5αリダクターゼ」という酵素の活性度の高さ、もう一つは「アンドロゲン受容体」の感受性の高さです。

これらの遺伝的特徴は、両親または片親から受け継がれる可能性があります。ご自身の家系にAGAの方がいる場合、これらの遺伝的特徴を受け継いでいる可能性が考えられます。

5αリダクターゼの活性度と遺伝

5αリダクターゼは、男性ホルモンの一種である「テストステロン」を、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換する酵素です。DHTは、AGAの主な原因物質とされています。

この5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、特にⅡ型がAGAに強く関与していると言われています。Ⅱ型5αリダクターゼは、主に前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞に存在します。

この酵素の活性度が遺伝的に高い人は、同じテストステロン量でもDHTを多く生成しやすいため、AGAを発症しやすい傾向があります。

この活性度を決定する遺伝子は常染色体上にあるため、父方・母方どちらからでも遺伝します。

アンドロゲン受容体の感受性と遺伝

アンドロゲン受容体は、男性ホルモン(アンドロゲン)を受け取る「受け皿」のようなものです。

毛乳頭細胞に存在するこの受容体が、5αリダクターゼによって生成されたDHTと結合することで、脱毛因子(TGF-βなど)が産生され、ヘアサイクルの成長期が短縮されます。

このアンドロゲン受容体の「感受性」が遺伝的に高い人(つまり、DHTと結合しやすい人)は、DHTの量がそれほど多くなくてもAGAの症状が進行しやすいと考えられます。

この感受性を決める遺伝子はX染色体上に存在するため、主に母親側の家系から遺伝する特徴と言われています。

AGAの遺伝的要因まとめ

要因役割遺伝的特徴
5αリダクターゼ(特にⅡ型)テストステロンをDHTに変換する酵素活性度が遺伝的に高いとDHTが増加
アンドロゲン受容体DHTを受け取る受容体感受性が遺伝的に高いとDHTの影響を受けやすい

遺伝子以外でAGAや薄毛に影響を与える要因

AGAや薄毛の進行には、遺伝的要因だけでなく、日々の生活習慣や環境も大きく影響します。

遺伝的リスクがあったとしても、これらの要因を見直すことで、頭皮環境や髪の健康状態を良好に保つ手助けができます。

生活習慣の乱れ(食生活・睡眠・運動)

髪の毛も体の一部であり、健康な成長には栄養と良好な体調が必要です。食生活の偏りは、髪の毛の主成分であるタンパク質や、その合成を助けるビタミン、ミネラルなどの不足につながります。

特に亜鉛やビタミンB群は、髪の健康維持に重要な役割を果たします。また、睡眠不足は髪の成長に必要な成長ホルモンの分泌を妨げます。

成長ホルモンは、細胞の修復や新陳代謝を促すため、深い睡眠中に最も多く分泌されます。さらに、運動不足は全身の血行不良を招きやすく、頭皮への栄養供給が滞る原因にもなり得ます。

適度な運動は血流を改善し、ストレス解消にも役立ちます。

ストレスの影響

精神的なストレスは、自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こします。自律神経のうち交感神経が優位になると、血管が収縮し、頭皮の血流が悪化する可能性があります。

血流が悪くなると、毛根にある毛母細胞へ十分な酸素や栄養が届きにくくなり、髪の成長が妨げられることがあります。

また、過度なストレスは男性ホルモンのバランスにも影響を与え、結果としてAGAの進行を早める可能性も指摘されています。

ストレスを完全に無くすことは難しいですが、ご自身に合ったリラックス方法を見つけ、溜め込まないようにすることが大切です。

頭皮環境の問題

頭皮は髪の毛が生える土壌です。頭皮環境が悪化すると、健康な髪の毛が育ちにくくなります。

例えば、皮脂の過剰分泌やフケは、毛穴を詰まらせたり、雑菌の繁殖を招いたりして、炎症を引き起こすことがあります(脂漏性皮膚炎など)。

逆に、洗浄力の強すぎるシャンプーで皮脂を取りすぎると、頭皮が乾燥し、バリア機能が低下して外部からの刺激に弱くなることもあります。

ご自身の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったシャンプーを選び、正しく洗髪し、清潔で潤いのある頭皮環境を保つことが重要です。

その他の外的要因(喫煙・飲酒など)

喫煙は、ニコチンの作用により血管を収縮させ、全身の血流を悪化させます。当然、頭皮の毛細血管も収縮するため、毛根への栄養供給が著しく低下します。

また、タバコに含まれる多くの有害物質は、体内のビタミン(特にビタミンC)を大量に消費・破壊し、髪の成長や頭皮の健康維持を妨げます。

過度な飲酒も、アルコールの分解過程で髪の毛の原料となるアミノ酸やビタミンB群を消費してしまうため、髪の成長に悪影響を与える可能性があります。適度な飲酒にとどめることが賢明です。

生活習慣で見直したいポイント

カテゴリー見直しのポイント髪への影響
食生活バランスの良い食事(タンパク質、ビタミン、ミネラル)髪の栄養補給
睡眠質の良い睡眠を十分にとる(6〜8時間目安)成長ホルモンの分泌促進
運動適度な有酸素運動(ウォーキングなど)血行促進、ストレス解消
ストレス趣味や休息でこまめに発散自律神経・ホルモンバランスの安定
頭皮ケア正しいシャンプー、頭皮の保湿健康な頭皮環境の維持
嗜好品禁煙、節度ある飲酒血行改善、栄養消費の抑制

育毛における遺伝子検査とは?

近年、医療機関や検査キットメーカーが提供する「遺伝子検査」によって、ご自身のAGAリスクや体質を調べることが可能になりました。

遺伝情報を知ることは、今後の育毛ケアを考える上での一つの指針となります。

遺伝子検査で何がわかるのか

AGA関連の遺伝子検査で主に調べるのは、前述した「アンドロゲン受容体の感受性」と「5αリダクターゼの活性度」に関連する遺伝子の特徴です。

具体的には、アンドロゲン受容体遺伝子(AR遺伝子)のCAGリピート数(繰り返しの長さ)や、5αリダクターゼⅡ型遺伝子(SRD5A2遺伝子)の特定の変異(V89Lなど)を調べることが一般的です。

この検査によって、ご自身が遺伝的にAGAを発症しやすい体質かどうか、そのリスクの程度を推定することができます。

また、検査によっては、髪の太さや頭皮の弾力性など、他の体質に関連する遺伝子情報も併せて調べることができる場合があります。

遺伝子検査の主な種類と特徴

AGAの遺伝子検査は、主に「医療機関で受ける検査」と「市販の検査キット」の2種類に分けられます。

医療機関(主にAGA専門クリニックや皮膚科)で受ける検査は、医師の診断のもとで行われ、検査結果に基づいた専門的なアドバイスや、必要に応じた治療方針の相談が可能です。

一方、市販の検査キットは、自宅で唾液や口腔粘膜を採取して郵送するだけで、手軽に検査を受けられる点が特徴です。結果はウェブサイトや郵送で送られてきます。

どちらも調べる遺伝子項目や精度に大きな違いはない場合が多いですが、医療機関の方がより詳細な解説やフォローアップを期待できるでしょう。

検査の方法と流れ

検査方法は非常に簡単で、痛みも伴いません。医療機関、市販のキットのいずれにおいても、一般的には「唾液」または「口腔粘膜(頬の内側を綿棒などでこする)」を検体として採取します。

食事や歯磨きの直後は避け、水で口をすすいでから採取するなど、いくつかの注意事項を守る必要があります。

検体を採取したら、それを専用の容器に入れ、医療機関に提出するか、検査機関に郵送します。検査結果が出るまでの期間は、検査機関によって異なりますが、おおむね数週間程度かかるのが一般的です。

主な遺伝子検査の種類

種類実施場所特徴
医療機関での検査AGA専門クリニック、皮膚科など医師による結果説明、治療相談が可能
市販の検査キット自宅手軽に検査可能、郵送で完結

検査結果をどう活かすか

遺伝子検査の結果は、あくまで「ご自身の体質」や「将来的なリスク」を知るための参考情報です。

結果が「リスク高」と出たからといって必ずしも将来薄毛になるわけではなく、逆に「リスク低」と出ても生活習慣や他の要因で薄毛が進行することもあります。

重要なのは、結果を知った上で、ご自身の体質に合った育毛ケアや生活習慣の改善を早期から意識することです。

例えば、アンドロゲン受容体の感受性が高いとわかれば、DHTの影響を抑えるようなケアを意識したり、5αリダクターゼの活性が高いとわかれば、その働きを抑制する成分を含む育毛剤を選んだりするなど、より具体的な対策を立てるヒントになります。

遺伝子検査のメリットと限界

AGAの遺伝子検査は、ご自身の体質を知る上で有用な情報を提供してくれますが、そのメリットと同時に限界点も理解しておくことが重要です。

検査結果に一喜一憂するのではなく、正しく活用する視点を持ちましょう。

自分の体質・リスクを知るメリット

遺伝子検査を受ける最大のメリットは、「薄毛になりやすい遺伝的体質かどうか」という客観的な情報を得られることです。

これまで「なんとなく不安」だったことが、検査によって「どの程度の遺伝的リスクがあるのか」が具体的になります。

リスクが高いとわかった場合、それはショックなことかもしれませんが、見方を変えれば「早期から対策を始めるきっかけ」になります。

まだ薄毛が目立たないうちから、頭皮ケアや生活習慣の改善に意識的に取り組むことで、将来的な薄毛の進行を予防したり、遅らせたりする助けになる可能性があります。

逆にリスクが低いとわかれば、過度な不安から解消されるかもしれません。

育毛剤選びや対策方針の参考に

検査結果は、ご自身に合った育毛ケアの方法や、育毛剤選びの参考にもなります。

例えば、遺伝子検査によって5αリダクターゼの活性が高い傾向があるとわかった場合、この酵素の働きを阻害する成分(例:ノコギリヤシエキス、オウゴンエキスなど)が配合された育毛剤を選ぶ、といった判断ができます。

また、アンドロゲン受容体の感受性が高い体質だとわかれば、DHTの産生を抑えるだけでなく、頭皮環境を整えて毛髪の成長をサポートするような多角的なアプローチが重要である、と認識できます。

このように、ご自身の遺伝的特徴に合わせた、より根拠のあるケアを選択するための一助となります。

遺伝的特徴とケア方針の例

遺伝的特徴(推定)予想される傾向ケア方針の一例
5αリダクターゼ活性が高いDHTが生成されやすい酵素の働きを抑える成分を含む育毛剤を検討
アンドロゲン受容体感受性が高いDHTの影響を受けやすい頭皮環境を整え、毛髪の成長を総合的にサポート

遺伝子検査でわからないこと(限界点)

遺伝子検査は万能ではありません。まず、検査結果は「確率」や「傾向」を示すものであり、「何歳から薄毛になるか」や「最終的にどの程度進行するか」を正確に予測することはできません。

遺伝的リスクが高くても薄毛にならない人もいれば、リスクが低くても生活習慣などの影響で薄毛が進行する人もいます。

また、現在の遺伝子検査は、AGAに関連する一部の遺伝子(主にAR遺伝子とSRD5A2遺伝子)を見ているに過ぎません。

薄毛にはまだ解明されていない他の遺伝子や、遺伝以外の多くの要因が複雑に関わっています。そのため、検査結果が全てと考えるのではなく、あくまで参考情報の一つとして捉えることが大切です。

  • 将来の発症を100%予測するものではない
  • 薄毛の進行度や時期まではわからない
  • 遺伝以外の要因(生活習慣など)は反映されない

遺伝的リスクを踏まえた育毛ケアの考え方

遺伝子検査などでご自身の遺伝的リスクを知ったとしても、それは決して「諦め」を意味するものではありません。

リスクを正しく理解し、それに基づいた適切な育毛ケアを行うことが、髪の健康を維持するために重要です。

遺伝=諦めではない理由

薄毛が遺伝的要因だけで決まるのであれば、同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児は必ず同じように薄毛が進行するはずです。しかし、実際には生活環境や習慣の違いによって差が出ることが知られています。

これは、遺伝的要因はあくまで「薄毛になりやすい素因」であり、その発現には生活習慣、ストレス、頭皮環境といった遺伝以外の要因が大きく関わっていることを示しています。

遺伝的リスクが高い方でも、これらの遺伝以外の要因を適切に管理し、頭皮に良い環境を整えることで、薄毛の発症を遅らせたり、進行を緩やかにしたりする可能性は十分にあります。

遺伝は運命ではなく、対策を講じるための「情報」と捉えるべきです。

早い段階で気づき、行動を起こすことが、将来の髪の状態を左右する鍵となります。

早期からの頭皮ケアの重要性

遺伝的リスクの有無に関わらず、健康な髪を育むためには、その土台である頭皮環境を良好に保つことが基本です。

特に遺伝的リスクが高いと認識している場合は、薄毛の兆候を感じる前から、日々の頭皮ケアを習慣化することが推奨されます。

ご自身の頭皮の状態(乾燥、脂性など)に合ったシャンプーを選び、爪を立てずに指の腹で優しく洗い、すすぎ残しがないように注意しましょう。

洗髪後は頭皮をしっかり乾かし、雑菌の繁殖を防ぎます。また、育毛剤を使用して頭皮に潤いや栄養を与え、マッサージで血行を促進することも有効なケア方法の一つです。

これらの地道なケアの積み重ねが、頭皮環境を健やかに保ち、強い髪を育てる土壌を作ります。

生活習慣の見直しによるアプローチ

頭皮ケアと並行して、体の内側からのアプローチ、すなわち生活習慣の見直しも非常に重要です。髪の毛は、私たちが日々摂取する栄養素から作られています。

特定の食品だけを食べるのではなく、髪の主成分であるタンパク質、そしてビタミンやミネラル(特に亜鉛、鉄)などをバランス良く含む食事を心がけましょう。

また、髪の成長を促す成長ホルモンは、深い睡眠中に最も多く分泌されます。睡眠時間を確保し、就寝前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠の質を高める工夫も必要です。

さらに、適度な運動は全身の血行を改善し、頭皮への栄養供給をスムーズにします。ストレス解消にも役立つため、日常生活に取り入れることをお勧めします。

専門家への相談も選択肢に

セルフケアだけでは不安な場合や、すでに薄毛の進行を感じている場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することも大切な選択肢です。

AGA専門のクリニックや皮膚科では、医師が頭皮の状態を直接診断し、遺伝的背景や生活習慣なども考慮した上で、個々の状態に合ったアドバイスや治療法を提案してくれます。

遺伝子検査の結果を持参して相談するのも良いでしょう。専門家の視点から客観的なアドバイスを受けることで、ご自身の現在の状態と、これから取るべき対策がより明確になります。

遺伝と育毛に関する誤解と正しい知識

育毛や薄毛に関しては、科学的根拠の乏しい俗説や誤解が数多く存在します。遺伝との関係においても同様です。

ここでは、よく耳にするいくつかの説について、現在の科学的な知見に基づき解説します。

「白髪の人はハゲない」は本当か

これはよく聞かれる説ですが、医学的な根拠はありません。白髪になる仕組みと、AGA(男性型脱毛症)で薄毛になる仕組みは全く別物です。

白髪は、毛髪の色素を作る細胞(メラノサイト)の機能が低下したり、消失したりすることで起こります。

一方、AGAは、男性ホルモン(DHT)の影響でヘアサイクルが乱れ、髪の毛が細く短くなることで起こります。

したがって、白髪が多い人でもAGAを発症して薄毛になる可能性はありますし、逆に髪が黒々としていても薄毛が進行する人もいます。

両方の要因がたまたま重ならない人もいるため、このような俗説が生まれたのかもしれません。

「海藻を食べると髪が生える」の真偽

ワカメやコンブなどの海藻類が髪に良いというイメージは根強くあります。海藻類には、髪の健康維持に役立つミネラル(特にヨウ素)や食物繊維が豊富に含まれています。

ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料となり、甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にするため、間接的に髪の成長をサポートする可能性はあります。

しかし、「海藻類をたくさん食べたから髪が生える」あるいは「薄毛が治る」といった直接的な発毛効果は科学的に証明されていません。

髪の毛の主成分はタンパク質(ケラチン)であり、健康な髪を育てるには、海藻類だけでなく、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、様々な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。

髪の成長に関連する主な栄養素

栄養素主な役割多く含む食品例
タンパク質髪の毛の主成分(ケラチン)の原料肉、魚、卵、大豆製品
ビタミンB群タンパク質の代謝、頭皮の新陳代謝を助けるレバー、豚肉、マグロ、納豆
亜鉛ケラチンの合成を助ける、細胞分裂をサポート牡蠣、レバー、牛肉、アーモンド

「頭皮マッサージ」の効果と遺伝の関係

頭皮マッサージは、頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくする効果が期待できます。

また、リラクゼーション効果により、ストレス軽減にも役立つでしょう。頭皮環境を整えるという点では、育毛ケアの一環として有効な方法の一つです。

しかし、頭皮マッサージ自体がAGAの根本原因である男性ホルモンの影響(遺伝的要因)に直接作用し、薄毛の進行を止めたり、発毛させたりするわけではありません。

あくまでも「頭皮環境の改善」や「育毛のサポート」として捉えるのが適切です。遺伝的リスクの有無に関わらず、正しい方法で(爪を立てず、優しく)行うことが大切です。

育毛剤は遺伝に関わらず無意味?

「遺伝だから育毛剤を使っても無駄」と考える方もいるかもしれませんが、それは誤解です。

市販されている育毛剤の多くは、医薬部外品として「脱毛の予防、育毛、発毛促進」などの効果が認められています。

その作用は様々ですが、例えば「血行促進」「毛母細胞の活性化」「頭皮環境の改善(抗炎症、保湿)」「5αリダクターゼの働きを一部抑制」といった成分が含まれています。

これらは、遺伝的要因によって引き起こされる薄毛の進行(ヘアサイクルの乱れや頭皮環境の悪化)に対して、間接的にアプローチし、髪の成長をサポートしようとするものです。

遺伝的リスクが高い人ほど、このような日々のケアで頭皮環境を整え、髪の成長をサポートすることが重要になるとも言えます。

ご自身の頭皮の状態や目的に合った育毛剤を選ぶことが大切です。

Q&A

育毛と遺伝子、そして遺伝子検査に関して、多くの方が疑問に思う点をまとめました。

遺伝子検査はどこで受けられますか?

AGAの遺伝子検査は、主にAGA治療を専門とするクリニックや一部の皮膚科などの医療機関で受けることができます。

また、最近ではインターネットなどで市販されている遺伝子検査キットを購入し、自宅で検体(唾液や口腔粘膜)を採取して郵送する方法もあります。

医療機関では医師の診断やカウンセリングと併せて検査を受けられる利点があり、市販のキットは手軽さが利点です。

検査結果が悪かったら必ず薄毛になりますか?

いいえ、検査結果はあくまで「薄毛になりやすい遺伝的な傾向(リスク)」を示すものであり、将来必ず薄毛になることを断定するものではありません。

遺伝的リスクが高くても、生活習慣や適切なケアによって薄毛が進行しない人もいます。逆に、リスクが低いと判定されても、他の要因によって薄毛になる可能性はあります。

結果はあくまで参考情報として捉え、早期からのケアを始めるきっかけにすることが賢明です。

自分の薄毛が遺伝かどうか調べる方法はありますか?

ご自身の薄毛に遺伝的要因が関わっているかどうかを調べる最も直接的な方法が、前述の「遺伝子検査」です。

この検査によって、AGAに関連する主要な遺伝子(アンドロゲン受容体遺伝子や5αリダクターゼ遺伝子)の特徴を知り、ご自身の遺伝的リスクを推定することができます。

ただし、検査結果が全てではなく、生活習慣など他の要因も関わっていることを理解しておく必要があります。

育毛剤は遺伝的要因にも効果が期待できますか?

育毛剤の目的は、頭皮環境を整え、血行を促進し、毛根に栄養を与えることなどで、「脱毛を予防」し「育毛を促進」することです。

遺伝的要因(DHTの影響を受けやすい体質など)が背景にあっても、頭皮環境が悪化したり血流が滞ったりすれば、薄毛は進行しやすくなります。

育毛剤は、これらの環境要因を改善し、髪が育ちやすい土壌を保つ手助けをします。遺伝的要因に直接働きかけるものではなくても、育毛ケアの一環として重要な役割を期待できます。

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