シャンプーで抜け毛が手につく…これ普通?ごっそり抜ける原因と対策

シャンプーで抜け毛が手につく…これ普通?ごっそり抜ける原因と対策

シャンプーをしていると、指に髪の毛が絡みついて「こんなに抜けて大丈夫か?」と不安になることはありませんか。

特に抜け毛が手にごっそりつくと、薄毛が進行しているのではないかと心配になる男性は多いでしょう。しかし、髪の毛にはヘアサイクルがあり、シャンプー時の抜け毛がすべて異常というわけではありません。

この記事では、シャンプーで抜け毛が手につく現象が「普通」の範囲内なのか、それとも注意すべきサインなのかを詳しく解説します。

抜け毛の原因と、今日からできる正しい対策を学び、頭皮と髪の健康を守りましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

シャンプー中に抜け毛が手につくのは普通のこと?

多くの方がシャンプー中に手のひらや指に絡みつく抜け毛を見て驚きますが、これは多くの場合、生理現象の一部です。髪の毛は一定の周期で生え変わりを繰り返しており、その終わりには自然と抜け落ちます。

この仕組みを理解することが、不安を解消する第一歩です。

正常なヘアサイクルと抜け毛

髪の毛一本一本には寿命があり、「成長期」「退行期」「休止期」というサイクル(毛周期)を繰り返します。成長期は髪が太く長く成長する期間で、数年間続きます。

その後、退行期に入ると髪の成長が止まり、休止期になると髪は毛根から離れて抜け落ちる準備を始めます。そして新しい髪が生えてくると、古い髪は押し出されるように抜けていきます。

シャンプーの際に手につく抜け毛の多くは、この休止期を迎えた髪の毛なのです。

一日あたりの平均的な抜け毛の本数

健康な頭皮状態であっても、一日に抜ける髪の毛の本数は平均して50本から100本程度あると言われます。これはあくまで平均値であり、髪の総量や季節、個人の体調によっても変動します。

100本と聞くと多く感じるかもしれませんが、人間の髪の毛は約10万本あるため、全体から見ればごくわずかな割合です。

これらの抜け毛が一日の中で分散して抜けていますが、シャンプー時にまとめて洗い流されるため、目立ちやすくなります。

シャンプー時が最も抜け毛に気づきやすい理由

一日の抜け毛のうち、約半数以上がシャンプー時に抜けると言われます。

これは、シャンプーの洗浄行為やすすぎの際の水流によって、すでに抜け落ちる準備ができていた休止期の髪の毛が、頭皮から物理的に離れやすくなるためです。

また、洗髪中は手が髪や頭皮に直接触れるため、他の時間帯(例えば、寝ている間や日中の活動中)に自然と抜けた髪よりも、抜け毛を視覚的に認識しやすい状況にあります。

手につくことで「ごっそり抜けた」と感じやすいのです。

季節による抜け毛の変動

抜け毛の本数は一年中一定というわけではありません。特に「秋」は抜け毛が増えやすい季節として知られています。

これにはいくつかの説がありますが、夏の間に浴びた紫外線のダメージが頭皮に蓄積し、秋になってその影響が現れるという説や、動物の毛が生え変わる換毛期の名残であるという説などがあります。

もし秋口に一時的に抜け毛が増えたと感じても、極端な量でなければ、季節的な要因である可能性も考慮に入れると良いでしょう。

ただし、その量が翌シーズンになっても戻らない場合は注意が必要です。

「ごっそり抜ける」と感じる危険なサイン

シャンプー時の抜け毛はある程度は正常な範囲内ですが、「いつもと違う」と感じる場合は注意が必要です。

それは単なる生理現象ではなく、頭皮環境の悪化や脱毛症の初期症状を示している可能性があります。どのような状態が危険なサインなのかを知り、早期発見につなげることが重要です。

明らかに以前より量が増えた

毎日シャンプーをしていると、なんとなく「いつもの量」が感覚的にわかってくるものです。

その「いつもの量」を明らかに超え、排水溝に溜まる髪の毛の塊が大きくなったり、手につく量が二倍、三倍になったりした場合は、何らかの異常が発生しているサインかもしれません。

特にその状態が一時的ではなく、数週間以上続くようであれば、ヘアサイクルが乱れている可能性が高いと考えましょう。

抜け毛の太さや状態の変化

抜け毛の「量」だけでなく「質」にも注目してください。正常なヘアサイクルを終えた抜け毛は、ある程度の太さと長さがあり、毛根部分がふっくらしていることが多いです。

しかし、手についた抜け毛が「細く短い」「毛根部分が小さい、または尖っている」場合は注意が必要です。

これは、髪の毛が十分に成長しきる前に(成長期の途中で)抜けてしまっている可能性を示唆しており、男性型脱毛症(AGA)などの兆候であることも考えられます。

抜け毛の質チェックポイント

チェック項目正常な抜け毛(目安)注意が必要な抜け毛(目安)
太さ太く、コシがある細く、弱々しい
長さある程度の長さがある短く、産毛のよう
毛根の状態マッチ棒の先端のように丸みがあるほとんどない、または細く尖っている

頭皮のかゆみや赤み、フケが伴う

抜け毛がごっそり抜ける感覚と同時に、頭皮に「かゆみ」「赤み」「痛み」または「大量のフケ(特に湿った大きなフケ)」が出る場合、頭皮環境が著しく悪化している証拠です。

これは脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎(シャンプーなどが合わない)といった頭皮トラブルが原因である可能性が高いです。

頭皮に炎症が起こると、毛根がダメージを受け、健康な髪の成長が妨げられ、結果として抜け毛が増加します。

手につくだけでなく排水溝も詰まりやすい

シャンプーのたびに排水溝の掃除が必要になるほど抜け毛が溜まる状態は、明らかに正常な範囲を超えています。

手につく量だけでなく、洗い流された結果として排水溝に集まる髪の毛の総量も客観的な指標となります。

掃除をしてもすぐに詰まる、または以前よりも明らかに掃除の頻度が上がったと感じる場合は、抜け毛の総量が危険水域に達している可能性を疑いましょう。

シャンプーで抜け毛が増える主な原因

シャンプー時に抜け毛が目立つのは、シャンプー自体が悪いのではなく、その「方法」や「製品選び」、あるいはすでに進行している「体質的な要因」が関係していることがほとんどです。

抜け毛を増やす原因となっている可能性のある項目を見ていきましょう。

間違ったシャンプーの方法

良かれと思って行っている日々の洗髪が、実は頭皮にダメージを与え、抜け毛を助長しているケースは少なくありません。特に清潔志向が強い方ほど、洗いすぎている傾向があります。

洗いすぎ・すすぎ残し

頭皮の汚れや皮脂を落とそうとするあまり、一日に何度もシャンプーをしたり、洗浄力の強いシャンプーでゴシゴシ洗いすぎたりすると、頭皮を守るために必要な皮脂まで奪ってしまいます。

頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなり、炎症やかゆみ、フケを引き起こし、抜け毛につながります。

逆に、シャンプー剤やコンディショナーのすすぎ残しは、毛穴を詰まらせ、雑菌の繁殖を招き、頭皮環境を悪化させる大きな原因となります。

爪を立てて洗う刺激

かゆみを感じる時や、スッキリしたいという思いから、爪を立てて頭皮を洗う行為は絶対にやめるべきです。頭皮は非常にデリケートであり、爪を立てることで細かい傷が多数つきます。

その傷から雑菌が侵入して炎症を起こしたり、頭皮が硬くなったりすることで、健康な髪が育つ土壌が失われ、抜け毛が増加します。

洗髪は「髪」を洗うのではなく、「頭皮」を優しくマッサージする意識が重要です。

使用しているシャンプーが合っていない

毎日使うシャンプーが、ご自身の頭皮タイプや状態に合っていない場合、それが抜け毛の引き金になることがあります。

洗浄力が強すぎる

市販されているシャンプーの中には、ラウリル硫酸ナトリウムやラウレス硫酸ナトリウムといった強力な洗浄成分(高級アルコール系)を含むものがあります。

これらの成分は泡立ちが良く、皮脂を強力に落とすため、さっぱりとした洗い上がりが得られます。

しかし、皮脂が多いタイプ(脂性肌)の方以外や、乾燥しやすい方が使用すると、頭皮の乾燥を招き、バリア機能を低下させ、結果的に頭皮環境を悪化させます。

必要な潤いを残しつつ汚れを落とす、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶ視点も大切です。

成分によるアレルギーや刺激

シャンプーに含まれる特定の成分(香料、防腐剤、着色料など)に対して、アレルギー反応や刺激(接触性皮膚炎)を起こしている可能性もあります。

シャンプーを変えた途端に抜け毛が増えたり、かゆみや赤みが出たりした場合は、そのシャンプーの使用を直ちに中止し、成分表示を確認することが求められます。

特に敏感肌の方は、無添加や低刺激性をうたった製品を選ぶことを検討しましょう。

生活習慣の乱れ

髪の毛は、体内の健康状態を映し出す鏡とも言えます。不規則な生活や栄養不足は、頭皮環境や髪の成長に直接的な悪影響を及ぼします。

睡眠不足とストレス

髪の毛は、私たちが寝ている間に分泌される「成長ホルモン」によって成長が促されます。

睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられるだけでなく、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)も乱れがちになります。

また、過度な精神的ストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させます。これにより頭皮への血流が悪化し、毛根に十分な栄養が届かなくなり、抜け毛が増える原因となります。

栄養バランスの偏り

髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。日々の食事でタンパク質が不足すると、健康な髪を作ることができません。

また、タンパク質を髪の毛に変える働きを助ける「亜鉛」や、頭皮の血行を良くする「ビタミンE」、頭皮環境を整える「ビタミンB群」なども重要です。

ファストフードやインスタント食品に偏った食事、過度なダイエットは、これらの栄養素の不足を招き、髪のやせ細りや抜け毛を増加させます。

男性型脱毛症(AGA)の進行

もし、上記のような生活習慣やシャンプー方法を見直しても抜け毛が減らない、あるいは抜け毛が細く短くなっている場合、男性型脱毛症(AGA)が進行している可能性を考える必要があります。

AGAは、男性ホルモン(テストステロン)が特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びついて、より強力な男性ホルモン(DHT:ジヒドロテストステロン)に変化することが主な原因です。

このDHTが毛根の受容体と結合すると、髪の成長期が短縮され、髪が太く長くなる前に抜け落ちてしまいます。

AGAは進行性のため、シャンプーや生活習慣の改善だけでは根本的な解決が難しく、専門的な対策が必要です。

抜け毛を減らすための正しいシャンプー術

抜け毛を気にするあまり、シャンプーが怖くなる方もいますが、頭皮を不潔に保つことは逆効果です。

重要なのは、頭皮へのダメージを最小限に抑え、汚れだけを的確に落とす「正しいシャンプー術」を身につけることです。今日から実践できる方法を紹介します。

シャンプー前のブラッシングと予洗い

シャンプーを始める前に、まずは乾いた髪の状態で優しくブラッシングを行います。これにより、髪の絡まりをほどき、表面についたホコリやフケを大まかに浮かせることができます。

次に、シャンプー剤をつける前に、38度程度のぬるま湯で頭皮と髪をしっかりと「予洗い」します。

1分から2分程度、指の腹を使って頭皮をマッサージするように洗い流すだけで、汗や皮脂、ホコリなどの汚れの7割程度は落ちると言われます。

予洗いをしっかり行うことで、シャンプーの使用量を減らし、泡立ちを良くする効果もあります。

シャンプーの泡立て方と洗い方

シャンプー剤を直接頭皮につけるのは避けてください。まず手のひらに適量を取り、少量のお湯を加えながら両手でしっかりと泡立てます。

空気を含ませるように、きめ細かい泡を作るのがコツです。泡立てが不十分だと、原液が頭皮に残りやすく、すすぎ残しの原因にもなります。泡立てネットを使用するのも良い方法です。十分に泡立てたら、髪ではなく頭皮に泡を乗せ、頭全体になじませていきます。

摩擦を避ける指の腹でのマッサージ洗い

洗う際は、絶対に爪を立てず、「指の腹」を使います。頭皮を優しく掴み、もみほぐすように、あるいは頭皮を動かすようなイメージでマッサージしながら洗います。

ゴシゴシと強くこすると、頭皮が傷つくだけでなく、髪の毛同士が摩擦でダメージを受けてしまいます。特に生え際や頭頂部、後頭部などは皮脂が溜まりやすいので、丁寧に洗いましょう。

すすぎは「十分すぎる」くらいが丁度いい

正しいシャンプー術において、最も重要とも言えるのが「すすぎ」です。シャンプー剤やコンディショナーの成分が頭皮や毛穴に残ると、かゆみやフケ、炎症の原因となり、抜け毛を悪化させます。

洗う時にかけた時間の2倍以上の時間をかける意識で、ぬるま湯で徹底的にすすぎましょう。

特に、耳の後ろ、生え際、首筋(襟足)は泡が残りやすい場所なので、シャワーヘッドを地肌に近づけながら、指の腹で頭皮を軽くこするようにして、ぬめり感が完全になくなるまで洗い流します。

洗髪後の乾燥と頭皮ケア

シャンプーが終わったら、まずは清潔なタオルで髪の水分を優しく吸い取ります。

この時もゴシゴシと擦るのではなく、タオルで頭皮をポンポンと押さえるように、また髪はタオルで挟み込むようにして水分を取り除きます(タオルドライ)。

その後、ドライヤーを使って頭皮から乾かしていきます。濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすく、頭皮が冷えて血行も悪くなります。

ドライヤーは頭皮から20cmほど離し、同じ場所に熱が集中しないように振りながら、全体が乾くまで(特に頭皮)しっかりと乾かします。

完全に乾いた後、必要に応じて育毛剤や頭皮用ローションで保湿ケアを行うのも良いでしょう。

正しいシャンプー手順のまとめ

手順目的重要なポイント
ブラッシング(乾髪時)ホコリ除去・絡まり解消毛先から優しくとかす
予洗い(ぬるま湯)汚れの7割を除去・泡立ち促進1〜2分かけ、頭皮をしっかり濡らす
泡立て摩擦軽減・すすぎ残し防止手のひらで空気を含ませ、きめ細かく泡立てる
洗い(指の腹)頭皮の洗浄・マッサージ爪を立てず、頭皮を動かすように優しく洗う
すすぎ洗浄成分の完全除去洗った時間の2倍以上かけ、徹底的に流す
乾燥雑菌繁殖防止・血行不良防止タオルドライ後、ドライヤーで頭皮から乾かす

自分に合うシャンプーの選び方

抜け毛対策において、毎日使用するシャンプー選びは非常に重要です。しかし、市場には多種多様な製品があり、どれを選べば良いか迷う方も多いでしょう。

大切なのは、ご自身の「頭皮タイプ」を理解し、それに合った洗浄成分や配合成分を見極めることです。

頭皮タイプ別の選び方(乾燥肌・脂性肌・敏感肌)

自分の頭皮がどのタイプかを知ることから始めましょう。

シャンプー後、数時間でベタつくなら「脂性肌」、夕方頃でもカサカサしていたり、フケが出やすかったりするなら「乾燥肌」、少しの刺激でかゆみや赤みが出やすいなら「敏感肌」の可能性があります。

頭皮タイプ別のおすすめ洗浄成分

頭皮タイプ特徴推奨される洗浄成分(例)
脂性肌皮脂分泌が多く、ベタつきやすい高級アルコール系(適度に)、石けん系
(ただし洗いすぎに注意)
乾燥肌皮脂が少なく、カサつきやすいアミノ酸系(ココイルグルタミン酸Naなど)
ベタイン系
敏感肌刺激に弱く、トラブルが起きやすいアミノ酸系(低刺激)、ベタイン系
(無香料・無着色なども考慮)

脂性肌であっても、洗浄力が強すぎるシャンプーを毎日使うと、かえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。自分の頭皮の状態を見ながら、洗浄力のバランスを考えることが大切です。

抜け毛・薄毛が気になる人向けの成分

抜け毛や薄毛が気になる場合、頭皮環境を整え、髪にハリやコシを与える成分が配合された「スカルプシャンプー」や「薬用シャンプー」を選ぶのも一つの方法です。

例えば、抗炎症作用のある「グリチルリチン酸2K」や、殺菌作用でフケ・かゆみを防ぐ「ピロクトンオラミン」などが配合されているものは、頭皮環境の改善を助けます。

ただし、シャンプーはあくまで「洗浄」と「頭皮環境の整備」が目的であり、シャンプー自体にAGAを治療するような発毛効果は期待できません。その点は誤解しないようにしましょう。

避けるべき可能性のある刺激成分

すべての人に当てはまるわけではありませんが、頭皮がデリケートな方や、すでに炎症を起こしている方は、特定の成分を避けた方が無難な場合があります。

例えば、強力な洗浄成分(ラウリル硫酸Naなど)、防腐剤(パラベン)、合成香料、合成着色料、エタノール(アルコール)の配合量が多いものなどです。

これらが必ずしも悪いわけではありませんが、もしシャンプーがしみる、かゆみが出るなどの違和感があれば、これらの成分が含まれていないか確認してみる価値はあります。

シャンプー以外で見直すべき抜け毛対策

シャンプーの方法や製品を見直すことは大切ですが、抜け毛の原因が頭皮の外側だけにあるとは限りません。

体の内側からのケア、すなわち生活習慣全般の改善が、健康な髪を育てる上での土台となります。シャンプーと並行して、以下の点も見直してみましょう。

バランスの取れた食生活

髪の毛は、私たちが食べたものから作られます。栄養バランスが偏れば、当然、髪の質は低下し、抜け毛も増えやすくなります。特に意識して摂取したい栄養素があります。

髪の成長に必要な栄養素

栄養素主な働き多く含まれる食品(例)
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質をケラチンに変える牡蠣、レバー、赤身肉、ナッツ類
ビタミンB群頭皮の新陳代謝を助ける豚肉、レバー、青魚、納豆、卵
ビタミンE血行を促進し、頭皮に栄養を届けるアーモンド、うなぎ、かぼちゃ

これらの栄養素だけを偏って摂るのではなく、様々な食品をバランス良く食べることが、結果として髪の健康につながります。

脂っこい食事や糖分の多い間食は皮脂の過剰分泌を招くため、控えるよう心がけましょう。

質の高い睡眠の確保

前述の通り、髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。

特に、入眠から最初の3時間(「睡眠のゴールデンタイム」とも呼ばれる)に深い眠り(ノンレム睡眠)に入ることが重要です。単に長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高める工夫が求められます。

就寝前のスマートフォン操作やカフェイン摂取、深酒は睡眠の質を低下させるため避け、リラックスできる環境を整えましょう。

ストレス管理とリフレッシュ法

現代社会においてストレスをゼロにすることは難しいですが、溜め込まない工夫は可能です。ストレスによる自律神経の乱れは、頭皮の血行不良を招き、抜け毛の大きな原因となります。

自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。

  • 適度な運動(ウォーキング、ジョギングなど)
  • 趣味に没頭する時間を作る
  • ゆっくりと入浴する

短時間でもリラックスできる時間を持つことで、心身の緊張をほぐし、血流の改善にもつながります。

禁煙と適度な飲酒

喫煙は、抜け毛対策において最も避けるべき習慣の一つです。タバコに含まれるニコチンには強力な血管収縮作用があり、頭皮の毛細血管の血流を著しく悪化させます。

これにより、毛根に栄養が届かなくなり、AGAの進行を早めるとも言われます。

また、過度な飲酒は、アルコールの分解のために体内のビタミンや亜鉛を大量に消費してしまい、髪の成長に必要な栄養素が不足する原因となります。

禁煙を心がけ、飲酒は適量(日本酒なら1合程度)に留めることが賢明です。

抜け毛が止まらない場合に相談すべき場所

セルフケアを徹底しても、シャンプーのたびに手につく抜け毛の量が減らない、むしろ増え続けていると感じる場合、一人で悩み続けるべきではありません。

特に、細く短い抜け毛が増えたり、地肌が透けて見え始めたりした場合は、専門家の診断を仰ぐタイミングです。

皮膚科での診断

まずは、お近くの皮膚科を受診することを検討しましょう。皮膚科では、抜け毛の原因がAGAなのか、あるいは脂漏性皮膚炎や円形脱毛症など、他の皮膚疾患によるものなのかを診断してもらえます。

特に頭皮にかゆみ、赤み、フケなどの炎症症状が強い場合は、皮膚科での治療が優先されます。皮膚炎が治ることで、抜け毛が改善するケースもあります。

AGA専門クリニックでのカウンセリング

抜け毛の原因が「男性型脱毛症(AGA)」である可能性が高いと考える場合、または皮膚科でAGAと診断された場合は、AGA治療を専門に行うクリニックに相談するのが最も直接的な対策となります。

AGA専門クリニックでは、現在の薄毛の進行度を詳細に診断し、内服薬(フィナステリドやデュタステリドなど)や外用薬(ミノキシジルなど)の処方、あるいはその他の治療法(注入治療など)を含めた、個々の状態に合わせた対策を提案してもらえます。

相談先の比較

相談先主な対象主な対策・治療
皮膚科頭皮の炎症、フケ、かゆみ
円形脱毛症、AGAの初期診断
炎症を抑える薬の処方
AGA治療薬の処方(一部)
AGA専門クリニック男性型脱毛症(AGA)
薄毛・抜け毛全般
AGA内服薬・外用薬の処方
注入治療、植毛相談など専門的対策

早期発見と対策の重要性

AGAは進行性の脱毛症であり、放置しておくと髪の毛は減り続けてしまいます。シャンプー時の抜け毛は、その進行に気づくための重要なサインです。

「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにせず、不安を感じた時点で専門家に相談することが、将来の髪を守るために最も重要です。

早く対策を始めれば、それだけ毛根の活力を維持しやすく、改善の可能性も高まります。

よくある質問

シャンプー時の抜け毛に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

育毛剤や発毛剤はいつから使うべきですか?

A. 抜け毛が「いつもより多い」と感じ始めた時点が、育毛剤(頭皮環境を整え、抜け毛を予防する目的)を使い始める一つの目安です。

一方で、明らかな薄毛の進行や、抜け毛が細く短くなっている(AGAの兆候)場合は、育毛剤では不十分であり、「発毛剤」(ミノキシジル配合など)の使用や、クリニックでの専門的な治療(内服薬など)を検討すべきタイミングと言えます。

自己判断に迷う場合は、専門医に相談することをお勧めします。

シャンプーは朝と夜、どちらが良いですか?

原則として「夜」のシャンプーを推奨します。

日中の活動で頭皮に付着した皮脂、汗、ホコリ、整髪料などをその日のうちにリセットすることが、頭皮を清潔に保ち、健やかな髪の成長を促す上で重要です。

また、夜にシャンプーすることで、睡眠中の成長ホルモンの働きを最大限に活かすことができます。

朝シャンは、寝癖直し程度にし、洗いすぎによる頭皮の乾燥を避けるよう注意しましょう。

抜け毛が減るまでどれくらいかかりますか?

原因によって異なります。

シャンプー方法の改善やシャンプー剤の変更が頭皮に合い、頭皮環境の悪化が原因だった場合は、数週間から1ヶ月程度で抜け毛の減少や頭皮状態の改善を感じられることがあります。

生活習慣の改善(食事、睡眠など)による効果は、ヘアサイクル全体に関わるため、実感できるまでには最低でも3ヶ月から半年程度は必要と考えるべきです。

AGA治療薬を開始した場合も、効果の判定には通常約6ヶ月を要します。いずれにせよ、根気強い継続が大切です。

食生活で特に気をつけることは何ですか?

まずは「タンパク質」「亜鉛」「ビタミン類」をバランス良く摂ることです。特に髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、大豆製品)は毎食意識して取り入れましょう。

同時に、脂質の多い揚げ物やスナック菓子、糖分の多いジャンクフードや清涼飲料水は、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させる可能性があるため、できるだけ控えることが望ましいです。

外食が多い場合でも、定食を選ぶなどして品目を多く摂る工夫をしましょう。

Reference

LANJEWAR, Ameya, et al. Review on Hair Problem and its Solution. Journal of Drug Delivery and Therapeutics, 2020, 10.3: 322-329.

ROBBINS, Clarence R. Chemical and physical behavior of human hair. New York, NY: Springer New York, 2002.

PHILLIPS, T. Grant; SLOMIANY, W. Paul; ALLISON, Robert. Hair loss: common causes and treatment. American family physician, 2017, 96.6: 371-378.

GRAY, John. Hair care and hair care products. Clinics in dermatology, 2001, 19.2: 227-236.

ALESSANDRINI, A., et al. Common causes of hair loss–clinical manifestations, trichoscopy and therapy. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2021, 35.3: 629-640.

RASSMAN, William R.; BERNSTEIN, Robert M. Hair loss and replacement for dummies. John Wiley & Sons, 2008.

BEAUQUEY, Bernard. Scalp and hair hygiene: shampoos. The science of hair care, 2005, 83-127.

PENZEL, Fred. The hair-pulling problem: A complete guide to trichotillomania. Oxford University Press, 2003.

KINGSLEY, Philip. The Hair Bible: A Complete Guide to Health and Care. Aurum, 2014.

SHAMBOOSIE. Beautiful Black Hair: Real Solutions to Real Problems. Amber Books Publishing, 2002.

目次