育毛剤 vs 発毛剤|効果・費用・副作用を比較

育毛剤 vs 発毛剤|効果・費用・副作用を比較

薄毛や抜け毛の悩みを持つ男性にとって、「育毛剤」と「発毛剤」はどちらも気になる存在です。

しかし、この二つがどう違うのか、自分にはどちらが合っているのか、正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。

育毛剤は今ある髪の毛を健康に保ち、抜け毛を防ぐ「守り」の役割を担います。一方、発毛剤は新しい髪の毛を生やす「攻め」の役割を果たします。

この記事では、育毛剤と発毛剤の根本的な違いから、効果、費用、そして副作用のリスクまで、あらゆる角度から徹底的に比較・解説します。

あなたの悩みに寄り添い、適切な選択をするための一助となれば幸いです。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

育毛剤と発毛剤 根本的な違いとは

育毛剤と発毛剤を選ぶ上で、まず理解すべきなのは、両者の「目的」と「分類」の根本的な違いです。

これらを混同してしまうと、期待した効果が得られないばかりか、不要なコストやリスクを負うことにもなりかねません。

ここでは、それぞれの基本的な役割と法的な位置づけを明らかにします。

まずは目的を明確にしよう

あなたが今、髪の毛に対してどのような悩みを抱えているのか、そして何を求めているのかを明確にすることがスタートラインです。

「最近抜け毛が増えてきた」「髪にハリやコシがなくなった」という悩みであれば、頭皮環境を整え、今ある髪を守るアプローチが必要です。

一方で、「地肌が目立ってきた」「明らかに髪が減ってしまった」という悩みであれば、新しい髪を生やすアプローチが求められます。

この目的の違いが、育毛剤と発毛剤のどちらを選ぶかの大きな分かれ道となります。

育毛剤の主な役割

育毛剤の主な役割は、「育毛」、すなわち「今ある髪の毛を健やかに育てる」ことです。

具体的には、頭皮の血行を促進したり、頭皮環境を清潔に保ったり、髪の毛に栄養を与えたりすることで、抜け毛を防ぎ、髪の成長をサポートします。

すでに生えている髪の毛のハリやコシを高め、細く弱った毛を太く強く育てることを目指します。

したがって、主な目的は「抜け毛予防」と「現状維持(あるいは改善)」であり、新しい髪の毛を生やすことではありません。

発毛剤の主な役割

一方、発毛剤の主な役割は、その名の通り「発毛」、すなわち「新しい髪の毛を生やす」ことです。毛髪が成長するサイクルのうち、休止期にある毛根に働きかけ、新たな毛髪の成長を促します。

また、成長期を延長させることで、髪の毛を太く長く育てる働きも持ちます。

特にAGA(男性型脱毛症)のように、毛母細胞の働きが弱まり、髪の毛が十分に育つ前に抜けてしまう症状に対して、直接的に発毛を促すことを目的としています。

薄毛が進行し、地肌が見え始めた状態からの改善を目指す場合に用います。

医薬品と医薬部外品という分類

この目的の違いは、法的な分類にもはっきりと表れています。発毛剤は、発毛効果が医学的に認められた有効成分(ミノキシジルなど)を配合しており、「医薬品」に分類されます。

病気の治療や予防に使われる薬と同じ扱いで、効果が認められている反面、副作用のリスクも伴います。

薬局やドラッグストアで購入できますが、薬剤師からの情報提供が求められる第一類医薬品が一般的です。

対して、育毛剤の多くは「医薬部外品」に分類されます。これは、医薬品と化粧品の中間に位置づけられ、厚生労働省が許可した「防止・衛生」を目的とする有効成分が一定濃度で配合されています。

治療目的の医薬品とは異なり、人体に対する作用が比較的緩やかで、主に「抜け毛予防」や「育毛(今ある髪を育てる)」、「頭皮環境の改善」といった効果をうたいます。

副作用のリスクは医薬品に比べて低いとされますが、ゼロではありません。

育毛剤と発毛剤の基本比較

項目育毛剤 (多くは医薬部外品)発毛剤 (医薬品)
主な目的抜け毛予防、育毛 (現状維持・改善)発毛 (新しい髪を生やす)
期待できる効果頭皮環境改善、血行促進、髪のハリ・コシUP毛母細胞の活性化、発毛促進
主な有効成分センブリエキス、グリチルリチン酸2Kなどミノキシジルなど

効果で比較 育毛剤と発毛剤

多くの人が最も知りたいのは、「結局、どちらがどれくらい効くのか?」という点でしょう。

育毛剤と発毛剤は、前述の通り目的が異なるため、期待できる「効果」の質も、それを実感するまでの「期間」も異なります。自分の期待と製品の特性が一致しているかを確認することが重要です。

育毛剤に期待できる効果

育毛剤は、頭皮環境の悪化(乾燥、皮脂過剰、血行不良など)が原因で起こる抜け毛や髪の質の低下に対して効果を発揮します。

有効成分が頭皮の炎症を抑え、血行を良くし、毛根に栄養を届ける手助けをします。これにより、今生えている髪が抜けにくくなり、一本一本が太く、ハリやコシのある健康な状態に育つのを助けます。

あくまで「今ある髪」を対象にしているため、すでに髪が抜けてしまった毛穴から新しい髪を生やす効果は認められていません。

抜け毛の予防や、髪が細くなってきたと感じる初期段階での対策に適しています。

発毛剤に期待できる効果

発毛剤は、医薬品として「発毛」の効果が認められています。特にAGA(男性型脱毛症)の進行を抑え、毛髪の成長を促す働きがあります。

AGAは、男性ホルモンの影響で髪の成長期が短くなり、髪が太く長くなる前に抜けてしまう症状です。

発毛剤に含まれる有効成分(ミノキシジルなど)は、毛母細胞に直接働きかけ、細胞分裂を活性化させます。また、頭皮の血管を拡張させて血流を改善する作用も持ちます。

これにより、休止期にあった毛穴から新しい髪が生え始め(発毛)、さらに既存の髪の毛の成長期を延長させて太く育てる(育毛)効果も期待できます。

薄毛が進行している状態からの積極的な改善を目指すものです。

効果を実感するまでの期間の目安

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、成長期・退行期・休止期というサイクルを繰り返しています。

育毛剤も発毛剤も、このサイクルに働きかけるため、効果を実感するまでにはある程度の時間が必要です。

育毛剤は、主に頭皮環境の改善を通じて効果を発揮するため、抜け毛が減った、髪にハリが出てきた、といった変化を感じるまでに、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度の継続使用が必要とされます。

発毛剤は、新しい髪を生やす働きがあるため、効果の判定にはさらに時間が必要です。医薬品の臨床試験などでは、発毛効果が確認されるまでに最低でも4ヶ月から6ヶ月の継続使用が必要とされています。

新しい髪が産毛として生え、それが太く成長していくには時間がかかるため、焦らずじっくりと取り組む姿勢が大切です。

効果実感までの期間目安

種類期間の目安主な実感できる変化
育毛剤約3ヶ月~6ヶ月抜け毛の減少、髪のハリ・コシ、頭皮環境の改善
発毛剤約4ヶ月~6ヶ月以上産毛の発生、既存毛の太さ・長さの増加

配合されている成分の違い

育毛剤と発毛剤の効果の違いは、配合されている有効成分の違いによって生まれます。

医薬部外品である育毛剤と、医薬品である発毛剤では、使用できる成分やその濃度が厳密に定められています。

育毛剤の主な有効成分

育毛剤(医薬部外品)には、厚生労働省が効果・効能を認可した多種多様な有効成分が配合されています。

これらは主に、頭皮の血行促進、抗炎症、皮脂分泌の調整、保湿といった頭皮環境を整える目的で使われます。

育毛剤に含まれる主な有効成分例

  • センブリエキス
  • グリチルリチン酸ジカリウム
  • ニンジンエキス

例えば、「センブリエキス」や「ニンジンエキス」は血行促進作用、「グリチルリチン酸ジカリウム」は抗炎症作用を持ち、頭皮の荒れやフケ、かゆみを防ぎます。

他にも、頭皮の乾燥を防ぐ保湿成分や、毛根に栄養を与えるビタミン類などが組み合わされて配合されることが一般的です。これらの成分が複合的に働くことで、健康な髪が育つ土壌を整えます。

発毛剤の主な有効成分

現在、日本国内で市販されている男性用の発毛剤において、発毛効果が認められている有効成分は「ミノキシジル」です。

もともとは高血圧の治療薬として開発されましたが、その副作用として多毛が見られたことから、AGA治療薬として転用されました。

発毛剤に含まれる主な有効成分

  • ミノキシジル

ミノキシジルは、外用薬(頭皮に塗布するタイプ)として使用されます。その作用の詳細は完全には解明されていませんが、主に以下の二つの働きがあると考えられています。

一つ目は「血管拡張作用」です。頭皮の毛細血管を広げ、血流を増加させます。これにより、毛根(毛乳頭や毛母細胞)に酸素や栄養素が届きやすくなります。

二つ目は「毛母細胞への直接作用」です。ミノキシジルが毛母細胞のアポトーシス(細胞の自然死)を抑制し、さらに毛母細胞の増殖を促進すると考えられています。

これにより、ヘアサイクルの「成長期」が延長され、休止期から成長期への移行も促されます。結果として、細く短い産毛が太く長い毛に成長し、また新しい髪の毛の発毛が促進されます。

成分から見る作用の違い

育毛剤の成分が「頭皮環境の整備」や「血行促進」といった間接的なサポートを主な目的とするのに対し、発毛剤の成分(ミノキシジル)は「毛母細胞の活性化」や「ヘアサイクルの調整」といった、より直接的な発毛・育毛の働きかけを行います。

育毛剤が「畑(頭皮)を耕し、肥料(栄養)を与える」役割だとすれば、発毛剤は「種(毛根)そのものに働きかけて、発芽(発毛)を促す」役割と言えるでしょう。

主な有効成分の働き

成分例主な働き該当製品
グリチルリチン酸2K抗炎症(頭皮環境改善)育毛剤
センブリエキス血行促進(栄養補給サポート)育毛剤
ミノキシジル毛母細胞活性化、血行促進(発毛促進)発毛剤

費用で比較 育毛剤と発毛剤

薄毛対策は長期戦です。効果はもちろん重要ですが、継続的に使用するための「費用」も無視できない比較ポイントです。

育毛剤と発毛剤では、その価格帯や1ヶ月あたりのコストに差があります。

育毛剤の一般的な価格帯

育毛剤(医薬部外品)は、価格の幅が非常に広いのが特徴です。ドラッグストアで手軽に購入できる数千円のものから、独自の成分や技術をうたう1万円を超える高価格帯のものまで様々です。

多くの製品が1本あたり1ヶ月から2ヶ月分となっており、1ヶ月あたりのコストは約3,000円から10,000円程度が相場と言えるでしょう。

定期購入やまとめ買いを利用することで、1本あたりの価格を抑えられる場合もあります。配合されている成分の種類や濃度、ブランドの知名度によって価格が変動します。

発毛剤の一般的な価格帯

発毛剤(医薬品)は、有効成分であるミノキシジルの配合濃度によって価格が異なります。日本国内では、ミノキシジル濃度1%のものと、5%のものが市販されています。

一般的に、濃度が高いほど価格も高くなる傾向があります。1本(約1ヶ月分)あたりの価格は、約5,000円から8,000円程度が相場です。

育毛剤と比較すると価格帯の幅は狭く、ある程度一定の範囲内に収まっています。これは、医薬品として有効成分の規格が決まっているためと考えられます。

長期的なコストパフォーマンスを考える

薄毛対策は、効果が出始めてからも継続使用が基本となります。途中で使用をやめると、再び薄毛が進行する可能性があるためです。

したがって、製品選びの際は「長期的にその費用を支払い続けられるか」という視点が重要です。

単純な1本あたりの価格だけでなく、1ヶ月、1年と続けた場合の総コストを計算してみましょう。例えば、月5,000円の製品なら年間60,000円、月8,000円なら年間96,000円の出費となります。

自分の悩みの深刻度と、期待する効果、そして許容できる予算のバランスを考えて選択することが大切です。

月間および年間の費用目安

種類1ヶ月あたりの費用目安1年あたりの費用目安
育毛剤約3,000円 ~ 10,000円約36,000円 ~ 120,000円
発毛剤約5,000円 ~ 8,000円約60,000円 ~ 96,000円

(注:上記はあくまで目安であり、製品や購入方法によって変動します。)

副作用のリスクで比較 育毛剤と発毛剤

効果が期待できる一方で、特に医薬品である発毛剤には「副作用」のリスクが伴います。育毛剤(医薬部外品)も、体質によっては肌トラブルなどが起こる可能性があります。

どちらを使用するにしても、起こり得るリスクを正しく理解し、万が一の際も慌てず対処できるようにしておくことが重要です。

育毛剤の副作用

育毛剤(医薬部外品)は、医薬品に比べて作用が緩やかであり、重篤な副作用の報告は稀です。しかし、肌に直接塗布するため、アレルギー反応や刺激による皮膚トラブルが起こる可能性はあります。

代表的なものとしては、塗布した部分の「かゆみ」「発疹」「かぶれ」「フケ」などです。これらは、製品に含まれるアルコール(エタノール)や、特定の有効成分、添加物などが肌に合わない場合に起こります。

特に敏感肌やアレルギー体質の人は、使用前にパッチテスト(腕の内側などで試す)を行うことを推奨します。

使用中に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、水で洗い流してください。症状が改善しない場合は、皮膚科専門医に相談しましょう。

発毛剤(ミノキシジル配合)の副作用

発毛剤(医薬品)の有効成分であるミノキシジルは、効果が強い反面、育毛剤よりも注意すべき副作用が報告されています。

まず、育毛剤と同様に「頭皮のトラブル(かゆみ、発疹、かぶれ、フケなど)」が起こることがあります。

次に特徴的なのが「初期脱毛」です。これは、使用開始後しばらく(数週間程度)の間、一時的に抜け毛が増える現象です。

ミノキシジルの作用によってヘアサイクルがリセットされ、休止期にあった古い髪が抜け落ち、新しい髪が生える準備が始まるために起こるとされています。

多くの場合は一時的なものですが、驚いて使用をやめてしまわないよう、あらかじめ理解しておく必要があります。

さらに、ミノキシジルはもともと血管拡張薬であるため、全身への影響がでる可能性もゼロではありません。

報告されている副作用としては、「頭痛」「めまい」「動悸」「胸の痛み」「手足のむくみ」「急激な体重増加」などがあります。

これらは稀なケースとされますが、心臓や腎臓、血圧に持病がある人は、使用前に必ず医師や薬剤師に相談してください。

使用中にこれらの症状が出た場合も、直ちに使用を中止し、医師の診察を受けてください。

想定される主な副作用

種類主な副作用の例特に注意すべき点
育毛剤頭皮のかゆみ、発疹、かぶれ、フケアレルギー体質、敏感肌の人
発毛剤頭皮トラブル、初期脱毛、頭痛、めまい、動悸など心臓・血圧・腎臓などに持病がある人

リスクを理解して使用する重要性

どのような製品にも、メリットとデメリットがあります。特に発毛剤(医薬品)を使用する場合は、「医薬品である」という認識を強く持つことが大切です。

添付文書(説明書)を必ず熟読し、定められた用法・用量を厳守してください。効果を早く得たいからと過剰に使用しても、効果が高まることはなく、副作用のリスクを高めるだけです。

自分の健康状態を把握し、不安な点があれば専門家に相談することをためらわないでください。

あなたはどっち? 育毛剤と発毛剤の選び方

ここまで、育毛剤と発毛剤の違いを多角的に比較してきました。では、結局のところ、あなたはどちらを選ぶべきなのでしょうか。

最終的には、ご自身の「悩みの深刻度」と「目的」によって判断します。

育毛剤がおすすめな人

以下のような悩みや目的を持つ人には、まず育毛剤から試してみることをおすすめします。

  • 最近、シャンプーやブラッシング時の抜け毛が増えたと感じる
  • 髪の毛が細くなり、ハリやコシがなくなってきた
  • まだ薄毛というほどではないが、将来のために予防したい
  • 頭皮の乾燥、かゆみ、フケ、ベタつきなどが気になる
  • 副作用のリスクはできるだけ避けたい

これらの場合、まずは頭皮環境を整え、今ある髪を健康に育てる育毛剤のアプローチが適しています。医薬品に比べて副作用のリスクが低いため、薄毛対策の第一歩として始めやすいと言えるでしょう。

発毛剤がおすすめな人

以下のような、より深刻な悩みを持つ人には、発毛剤の使用を検討する価値があります。

  • 生え際が後退してきた、または頭頂部(つむじ周り)の地肌が透けて見える
  • 明らかに髪の毛の量が減り、薄毛が進行している
  • 育毛剤を長期間試したが、あまり変化を感じられなかった
  • AGA(男性型脱毛症)と診断された、あるいはその可能性が高い

これらの場合、予防や現状維持だけでは満足できず、「新しい髪を生やしたい」という積極的な改善が目的となります。

医薬品である発毛剤は、こうした「発毛」のニーズに応えるために開発されたものです。ただし、副作用のリスクを十分に理解した上で使用を開始する必要があります。

お悩み別 おすすめ度チェック

あなたの悩み・目的育毛剤発毛剤
抜け毛の予防・頭皮環境改善◎ (適している)△ (目的が異なる)
髪のハリ・コシUP○ (期待できる)○ (期待できる)
薄毛の進行を止めたい (AGA)△ (進行予防のサポート)◎ (進行抑制・発毛)
新しい髪を生やしたい× (効果は認められていない)◎ (適している)

併用は可能なのか

「育毛剤と発毛剤、両方使えばもっと効果が出るのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、自己判断での併用は推奨されません。

特に、発毛剤(ミノキシジル)を使用している場合、他の育毛剤を重ねて塗布すると、成分同士が干渉したり、頭皮への刺激が強くなりすぎたりして、かぶれなどの副作用を引き起こす可能性があります。

また、発毛剤の効果が正しく得られなくなることも考えられます。

どうしても併用したい場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

例えば、発毛剤(医薬品)と、飲むタイプの育毛サプリメント(食品)を組み合わせるなど、使用方法や製品の形態が異なるものを検討する方が安全な場合があります。

迷ったときの判断基準

それでも迷った場合は、「現在の薄毛の進行度」を客観的に見つめ直しましょう。鏡で生え際やつむじの状態をしっかり確認してみてください。

もし「地肌がはっきりと見えている」状態であれば、発毛剤(医薬品)の使用を検討する段階かもしれません。

一方で、「抜け毛は気になるが、地肌はまだ見えていない」状態であれば、育毛剤でのケアから始めるのがよいでしょう。

最も確実なのは、皮膚科や薄毛治療専門のクリニックで専門医の診断を受けることです。

自分の薄毛の原因がAGAなのか、他の要因(ストレス、生活習慣など)なのかを特定することで、最も適した対策を選ぶことができます。

育毛剤・発毛剤の正しい使い方

育毛剤も発毛剤も、その効果を最大限に引き出すためには、正しく継続して使用することが何よりも重要です。間違った使い方をしていては、高価な製品も効果を発揮できません。

基本的なルールを守り、毎日の習慣にしましょう。

効果を高めるための基本ルール

最も重要な基本ルールは「清潔な頭皮に使用する」ことです。頭皮に皮脂や汚れ、整髪料などが残っていると、有効成分の浸透が妨げられます。

したがって、使用するタイミングは「洗髪後」が最も適しています。シャンプーで頭皮の汚れをしっかり落とし、タオルドライで髪の水分をよく拭き取ってから塗布しましょう。

髪が濡れすぎていると成分が薄まってしまい、逆に乾かしすぎると頭皮が乾燥しすぎるため、「適度に湿っている」状態が理想です。

ドライヤーで完全に乾かす場合は、塗布後に再度ドライヤー(冷風など)で軽く乾かすとよいでしょう。

塗布するタイミングと回数

多くの製品は「1日2回(朝・晩)」の使用を推奨しています。特に夜の洗髪後は、成長ホルモンが分泌される就寝中の時間帯に有効成分を頭皮に留めておけるため、重要なタイミングです。

朝は、洗髪しない場合でも、頭皮が清潔な状態で塗布することが望ましいです。

製品によって推奨される使用回数や1回の使用量は異なります。必ず添付文書や説明書を確認し、定められた用法・用量を守ってください。

多く使えば効果が上がるわけではなく、副作用のリスクを高めるだけです。

使用時に注意すべき点

塗布する際は、髪の毛ではなく「頭皮」に直接塗ることを意識してください。

ボトルの先端を頭皮に軽く押し当てるタイプや、スプレータイプなどがありますが、いずれも気になる部分を中心に、頭皮全体に行き渡るように塗布します。

塗布した後は、すぐに洗い流さず、成分が浸透するまで待ちます。

このとき、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするのも効果的です。血行がさらに促進され、成分の浸透を助けます。ただし、爪を立てて頭皮を傷つけないように注意してください。

また、発毛剤(ミノキシジル)を使用した場合、塗布後の手で目や口、その他の皮膚(特に敏感な部分)に触れないようにしてください。

万が一付着した場合は、すぐに水で洗い流しましょう。使用後は手をよく洗う習慣をつけてください。

よくある質問

最後に、育毛剤や発毛剤に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

育毛剤や発毛剤はいつから始めるべきですか?

薄毛対策は、早く始めるに越したことはありません。特に育毛剤は「予防」の側面が強いため、「抜け毛が増えたな」「髪が細くなったな」と感じ始めた初期段階から使用するのが最も効果的です。

発毛剤(医薬品)についても、AGA(男性型脱毛症)は進行性のため、薄毛が気になり始めた段階で専門医に相談し、必要と判断されれば早めに治療を開始することが、将来的な毛髪量を維持するために重要です。

効果が出ない場合、どうすればよいですか?

まず、使用期間が短すぎないか確認してください。前述の通り、育毛剤も発毛剤も効果を実感するには最低でも3ヶ月から6ヶ月の継続使用が必要です。

また、用法・用量を守って正しく使用できているかも見直しましょう。

それでも効果が感じられない場合、育毛剤を使用している人は、発毛剤(医薬品)への切り替えを検討するか、専門医に相談してください。

発毛剤を使用しても効果が出ない場合は、使用している濃度が合っていない可能性(例:1%から5%へ変更)や、AGA以外の原因(円形脱毛症、脂漏性皮膚炎など)が隠れている可能性も考えられます。

この場合も、自己判断を続けず、皮膚科などの専門医の診断を受けることを強く推奨します。

使用をやめるとどうなりますか?

育毛剤も発毛剤も、使用をやめるとその効果は失われます。育毛剤で維持していた頭皮環境は元に戻り、抜け毛が再び増える可能性があります。

特に発毛剤(AGA治療薬)の場合、使用を中止するとミノキシジルの作用がなくなるため、AGAの進行が再開し、数ヶ月かけて元の薄毛の状態に戻っていくとされています。

これらの製品は、効果を維持するためには継続的な使用が必要です。

女性用の製品を使っても大丈夫ですか?

男性が女性用の育毛剤(医薬部外品)を使用しても、大きな問題は起こりにくいと考えられます。ただし、配合されている成分が女性の頭皮環境に合わせて調整されている場合があるため、男性特有の皮脂の多さなどに対応しきれない可能性はあります。

一方で、女性用の「発毛剤」(ミノキシジル配合)は、男性用に比べてミノキシジルの濃度が低く設定されています(例:1%)。

男性がこれを使用しても、AGAに対する効果が不十分である可能性が高いです。

逆に、女性が男性用の高濃度(例:5%)ミノキシジル発毛剤を使用することは、副作用のリスク(特に多毛症など)が高まるため、絶対に避けるべきです。必ずご自身の性別に合った製品を選んでください。

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