「もしかして、生え際が後退しているかも…」20代という早い段階でそんな不安を感じていませんか。かつては中高年の悩みと思われがちでしたが、現代では20代から生え際の後退に悩む人は少なくありません。
しかし、初期サインを見逃さず、早期に対策を始めることが非常に重要です。「まだ若いから大丈夫」と油断せず、まずは自分の生え際の現状を知ることから始めましょう。
この記事では、生え際後退の初期サインを見極めるセルフチェック方法から、20代だからこそ取り組むべき対策、そして「治るのか?」という疑問まで、あなたの不安に寄り添いながら詳しく解説します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
そもそも生え際後退とは?M字ハゲとの違い
生え際の後退と一言でいっても、その状態は人によって異なります。特に「M字ハゲ」という言葉をよく耳にしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
まずは基本的な定義と、20代で見られる傾向について理解を深めましょう。
生え際後退の定義
生え際後退とは、文字通り、額と髪の毛の境界線である「生え際」が、以前よりも後ろの位置に下がっていく状態を指します。
この現象は、多くの場合「AGA(Androgenetic Alopecia)」、すなわち男性型脱毛症によって引き起こされます。
AGAは進行性の脱毛症であり、一度始まると自然に止まることは少なく、ゆっくりと、しかし確実に進行していく特徴があります。
生え際が後退し始めると、額が広くなったように感じたり、顔全体の印象が変わって見えたりすることがあります。
M字ハゲとは何か
「M字ハゲ」とは、生え際後退の一つのパターンを指す俗称です。具体的には、額の両サイド、いわゆる「剃り込み(そりこみ)」と呼ばれる部分が、中央部分よりも深く後退していく状態を指します。
正面から見たときに、生え際がアルファベットの「M」の字のように見えることから、このように呼ばれます。M字ハゲも、その多くはAGAが原因で発生します。
生え際の中央部分は毛が残っているのに、両サイドだけが後退していくため、初期段階では気づきにくいこともありますが、進行すると非常に目立ちやすくなります。
20代で目立ちやすい生え際後退のパターン
生え際後退のパターンには個人差がありますが、20代でAGAを発症した場合、この「M字型」の後退から始まるケースが多く見られます。
同時に、頭頂部(つむじ周り)の毛も薄くなるパターン(O字型)が併発することもありますが、生え際の変化は鏡で確認しやすいため、比較的早い段階で不安を感じるきっかけになりやすい部分です。
また、M字型だけでなく、生え際全体がライン状に後退していく「U字型」のパターンもあります。20代のうちは、こうした生え際の変化に特に注意を払う必要があります。
なぜ生え際から後退が始まるのか
AGAによる脱毛は、多くの場合、生え際(特にM字部分)や頭頂部から始まります。
これは、AGAの主な原因物質である「DHT(ジヒドロテストステロン)」の影響を受けやすい毛包(毛根を包む組織)が、これらの部位に集中しているためと考えられています。
DHTは、男性ホルモンであるテストステロンが特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びつくことで生成され、毛髪の成長サイクルを短縮させます。
これにより、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまい、徐々に細く短い「産毛」のような毛に置き換わっていくのです。これが、生え際や頭頂部から薄毛が進行する理由です。
あなたも当てはまる?生え際後退の初期サイン
生え際の後退は、ある日突然起こるわけではありません。日々の小さな変化の積み重ねが、やがて目に見える後退につながります。
20代のうちにこれらの「初期サイン」に気づくことが、早期対策の第一歩です。見逃しやすいサインを具体的に見ていきましょう。
鏡でチェックすべきポイント
毎日の洗顔やヘアセットの際、鏡で生え際を注意深く観察する習慣をつけましょう。以前と比べて「額が広くなった」と感じる場合、それは生え際が後退しているサインかもしれません。
特に、M字部分の切れ込みが深くなっていないか、生え際のラインが以前よりもぼやけていたり、産毛のような細い毛が増えていたりしないかを確認してください。
照明の下で、髪をかき上げて生え際全体を露出させ、ラインの形や毛の密度をチェックすることが重要です。
髪質の変化に注意
生え際の後退は、毛量の減少だけでなく「髪質の変化」としても現れます。AGAの影響を受けた毛髪は、成長期が短くなるため、十分に成長できません。
その結果、以前は太くしっかりしていた髪が、細く、弱々しく、コシのない髪質に変わっていきます。
特に生え際の毛が、他の部分の毛と比べて明らかに細くなってきた場合、それは後退が始まっている強いサインである可能性があります。
髪全体のボリュームが減ったと感じる前に、生え際の髪質に注目してください。
抜け毛の質と量をチェック
抜け毛は誰にでもありますが、その「質」と「量」の変化に注意が必要です。シャンプー時の排水溝や、朝起きた時の枕元の抜け毛をチェックしましょう。
抜け毛の量そのものが急激に増えた場合も要注意ですが、それ以上に重要なのが「抜け毛の質」です。
太く長い毛ではなく、細くて短い毛、いわゆる「未熟な毛」が多く抜けている場合、ヘアサイクルが乱れている証拠です。
これは、AGAによって髪が成長しきる前に抜けてしまっていることを示しており、生え際後退の初期サインとして非常に重要です。
抜け毛のセルフチェック方法
簡単なセルフチェックとして、シャンプー前、乾いた状態の髪の毛(特に生え際や頭頂部)を、指で軽くつまんで引っ張ってみる方法があります。
このとき、5〜10本以上の毛が抵抗なく抜けるようであれば、抜け毛が増加している可能性があります。ただし、これはあくまで簡易的な目安であり、強く引っ張りすぎないよう注意してください。
日常的に排水溝や枕元の抜け毛の状態を観察する方が、より正確な変化を把握しやすいでしょう。
20代で生え際が後退する主な原因
「まだ20代なのに、なぜ生え際が後退するのか?」と疑問に思うかもしれません。
若くして生え際の後退が始まる背景には、いくつかの原因が考えられますが、その多くは一つではなく、複数の要因が絡み合っています。
最大の原因 AGA(男性型脱毛症)
20代の若さで生え際の後退(特にM字型)が見られる場合、その最も大きな原因はAGA(男性型脱毛症)である可能性が高いです。AGAは、遺伝的な要因と男性ホルモンの影響によって発症します。
発症年齢には個人差があり、早い人では10代後半から20代前半でその兆候が現れ始めます。前述の通り、男性ホルモンから生成されるDHTが毛髪の成長を妨げることが直接の原因です。
「若さ」はAGAの発症を妨げる要因にはならず、むしろ早期に発症することもあるという認識が重要です。
生活習慣の乱れとその影響
AGAが遺伝的要因によるものであっても、その進行速度や頭皮環境には「生活習慣」が大きく影響します。
特に20代は、仕事や学業、プライベートで生活が不規則になりがちです。睡眠不足は、髪の成長に必要な成長ホルモンの分泌を妨げます。
また、脂っこい食事やファストフードに偏った食生活は、頭皮の皮脂バランスを崩し、毛穴の詰まりや炎症を引き起こす原因となります。
これらの生活習慣の乱れが、頭皮環境を悪化させ、生え際の後退を助長することがあります。
ストレスと頭皮環境
現代社会においてストレスは避けられませんが、過度な精神的ストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させます。
その結果、頭皮への血流が悪くなり、毛髪の成長に必要な栄養や酸素が毛根まで届きにくくなります。血行不良は、健康な髪が育つための土壌である頭皮環境を悪化させる重大な要因です。
20代は、就職、キャリア、人間関係など、多くのストレスに直面する時期でもあり、これが生え際の後退に間接的な影響を与える可能性があります。
20代特有の生活要因
20代特有の要因として、過度なヘアスタイリングも挙げられます。毎日ワックスやジェルを大量に使用し、夜にしっかり洗い流さないと、スタイリング剤の残りが毛穴を塞ぎ、頭皮トラブルの原因となります。
また、洗浄力の強すぎるシャンプーによる頭皮の乾燥や、逆に洗い足りないことによる皮脂の過剰な蓄積も問題です。
20代はファッションへの関心が高い時期ですが、頭皮への負担を考慮したヘアケアが求められます。
生え際後退の主な要因比較
生え際後退の原因は一つとは限りません。AGAが主因である場合と、生活習慣の乱れが主因である場合(またはAGAを悪化させている場合)では、対策のアプローチも異なります。
| 要因 | AGA(男性型脱毛症) | 生活習慣・その他 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 遺伝、男性ホルモン(DHT)の影響 | 睡眠不足、栄養偏重、ストレス、不適切なヘアケア |
| 特徴 | 生え際(M字)や頭頂部から薄くなる。進行性。 | 頭部全体の毛量が減ることもある。要因除去で改善の可能性。 |
| 対策 | 専門的治療(内服・外用薬)、育毛剤 | 生活習慣の見直し、ヘアケア改善、ストレス管理 |
自宅でできる生え際後退セルフチェック
「もしかして?」という不安を感じたら、まずは客観的に自分の状態を把握することが大切です。専門家でなくても、自宅で簡単にできるセルフチェック方法をいくつか紹介します。
これらのチェックを定期的に行い、変化を見逃さないようにしましょう。
写真を使った比較チェック
最も客観的で効果的なセルフチェック方法は、写真による記録です。スマートフォンのカメラを使い、毎回できるだけ同じ条件(場所、照明、角度)で生え際の写真を撮影します。
真正面から髪を上げた状態、左右のM字部分をアップにした状態などを記録しましょう。
1ヶ月ごと、3ヶ月ごとなど、期間を決めて撮影し、過去の写真と比較することで、生え際のラインが後退していないか、毛の密度が低下していないかを客観的に判断できます。
感覚だけに頼るよりも、視覚的な記録は確実な変化を捉えるのに役立ちます。
指を使った生え際の確認法
古くから言われる簡易的なチェック方法として、額に指を当てる方法があります。
眉毛の上に人差し指から小指までの4本指をそろえて当て、その上が生え際であれば標準的、指が4本入ってもまだ余裕がある、あるいは以前より入るようになった、と感じる場合は後退している可能性がある、というものです。
ただし、これは顔の骨格や元の額の広さに大きく左右されるため、あくまで目安程度に考えましょう。
他人との比較ではなく、「以前の自分と比べて指何本分入るようになったか」という変化を見る方が参考になります。
頭皮の状態をチェック
生え際の後退は、毛髪だけでなく「頭皮」の状態にも現れます。健康な頭皮は青白い色をしていますが、血行不良や炎症を起こしている頭皮は、赤みを帯びていたり、茶色っぽくくすんでいたりします。
また、指で頭皮を触ってみて、カサカサに乾燥していないか、逆にベタベタと脂っぽくないか、フケやかゆみがないかを確認しましょう。
頭皮を指の腹で動かしてみて、硬く突っ張っている(動きにくい)場合、血行が悪くなっている可能性があります。頭皮環境の悪化は、抜け毛や薄毛のサインです。
生え際後退の進行度目安
セルフチェックの結果、どの程度進行しているのか不安になるかもしれません。以下に、一般的な進行度の目安を示しますが、これはあくまで参考です。
少しでも当てはまると感じたら、早めの対策を検討してください。
| 進行度 | 生え際の状態 | 髪質の特徴 |
|---|---|---|
| 初期 | 以前より額が広くなった気がする。剃り込み部分が少し深くなった。 | 髪にハリやコシがなくなってきた。細い毛が混じる。 |
| 中期 | M字部分の切れ込みが明らかに深くなった。生え際が指1〜2本分後退した。 | 生え際の髪が明らかに細く、産毛のようになっている。 |
| 後期 | M字部分が頭頂部に向かって進行。前から見て頭皮が目立つ。 | 生え際の産毛化が進行し、毛量が著しく減少。 |
20代から始めるべき生え際後退対策
生え際後退のサインに気づいたら、年齢に関わらず、すぐに対策を始めることが重要です。20代はまだ体の回復力も高いため、早期の対策が将来の毛髪状態に大きな違いを生みます。
まずは、日常生活の中でできる基本的な対策から徹底しましょう。
まずは見直したい生活習慣
健康な髪は、健康な体と頭皮から生まれます。20代の不規則な生活は、知らず知らずのうちに頭皮環境を悪化させています。
まずは「食事」「睡眠」「運動」という基本的な生活習慣を見直すことが、生え際後退対策の土台となります。
特に睡眠中は髪の成長を促す成長ホルモンが分泌されるため、最低でも6〜7時間の質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
頭皮環境を整える食事
髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、日々の食事で良質なタンパク質をしっかり摂取することが必要です。
また、タンパク質の合成を助けたり、頭皮の血行を促進したりするビタミンやミネラルも同様に重要です。バランスの取れた食事は、健康な髪を育てるための第一歩です。
| 栄養素 | 期待される役割 | 主な食材例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)を作る | 肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆) |
| ビタミンB群 | 頭皮の代謝を助け、皮脂分泌を調整する | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、玄米 |
| 亜鉛 | 髪の合成(ケラチンの生成)をサポートする | 牡蠣、牛肉(赤身)、レバー、チーズ、アーモンド |
正しいヘアケア方法の実践
毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つために重要ですが、その「洗い方」が間違っていると、かえって頭皮にダメージを与え、生え際の後退を早める原因になりかねません。
特に20代は皮脂分泌が活発なため、洗浄力ばかりを重視しがちですが、頭皮への優しさを考慮したケアが必要です。
シャンプー方法の比較
あなたは毎日、正しく髪と頭皮を洗えていますか? 爪を立てて洗ったり、すすぎが不十分だったりすると、頭皮環境は悪化します。正しい方法を習慣づけましょう。
| 項目 | 避けるべき洗い方 (NG) | 推奨される洗い方 (OK) |
|---|---|---|
| 洗浄 | 爪を立ててゴシゴシ洗う。熱すぎるお湯。 | 指の腹で頭皮をマッサージするように優しく洗う。ぬるま湯(38度前後)。 |
| すすぎ | シャンプー剤が頭皮や生え際に残っている。 | 髪の内部や生え際まで、時間をかけて(洗いの倍の時間)しっかりすすぐ。 |
| 乾燥 | 自然乾燥。タオルで強くこする。 | 吸水性の高いタオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで(生え際から)乾かす。 |
ストレス管理とリフレッシュ
20代は公私ともにストレスを感じやすい時期です。前述の通り、ストレスは頭皮の血行不良を招き、抜け毛の原因となり得ます。自分なりのストレス解消法を見つけることが重要です。
週末に趣味に没頭する、適度な運動(ウォーキングやジョギングなど)で汗を流す、ゆっくり湯船に浸かってリラックスするなど、意識的に心身をリフレッシュさせる時間を作りましょう。
育毛剤の活用
「20代で育毛剤は早い」と感じるかもしれませんが、それは誤解です。育毛剤は、主に「今ある髪を健康に育てる」ことと「抜け毛を予防する」ことを目的としています。
頭皮の血行を促進したり、炎症を抑えたり、毛根に栄養を与えたりする成分が含まれており、頭皮環境を整えるのに役立ちます。
生え際後退の初期サインを感じた段階で育毛剤によるケアを始めることは、将来の進行を食い止めるための有効な「予防」対策となります。
育毛剤と発毛剤の違い
育毛剤と似たものに「発毛剤」がありますが、両者は目的も成分も異なります。自分の現在の状態に合わせて、どちらが必要かを正しく理解することが大切です。
| 項目 | 育毛剤(医薬部外品) | 発毛剤(第1類医薬品) |
|---|---|---|
| 目的 | 頭皮環境を整え、抜け毛を防ぎ、髪を育てる(予防・育毛) | 新しい髪を生やし、髪を成長させる(発毛) |
| 主な成分 | 血行促進成分(センブリエキス等)、抗炎症成分、保湿成分など | ミノキシジルなど(発毛効果が認められた成分) |
| 入手方法 | ドラッグストア、通販など | 薬剤師のいる薬局・ドラッグストア、通販(要確認) |
生え際後退は「治る」のか? AGA治療の選択肢
生え際の後退を実感すると、誰もが「これは治るのか?」「元の状態に戻るのか?」と不安に思うはずです。特に20代であれば、その思いはなおさら強いでしょう。
ここでは、生え際後退と「治る」という言葉の関係性、そして専門的な対策について解説します。
「治る」という言葉の定義
まず理解しておくべきことは、生え際後退の最大の原因であるAGA(男性型脱毛症)は「進行性」であるという点です。放置すれば、ゆっくりとですが確実に症状は進行していきます。
そのため、風邪のように「薬を飲んだら完治する」というものではありません。 しかし、これは「諦めるしかない」という意味ではありません。
AGAにおける「治る」という言葉は、「進行を食い止める(現状維持)」あるいは「毛髪の状態を改善させる(発毛・増毛)」と捉えるのが適切です。
早期に対策を開始すれば、進行を大幅に遅らせたり、後退したと感じていた部分の毛髪が再び太く長く成長したりする可能性は十分にあります。
セルフケアの限界と専門家への相談
これまで述べてきた生活習慣の改善や正しいヘアケア、育毛剤の使用は、生え際後退対策の基本であり、非常に重要です。
頭皮環境の悪化が原因の軽度な抜け毛であれば、これらのセルフケアで改善が見られることもあります。
しかし、セルフケアを続けても抜け毛が減らない、あるいは生え際の後退が明らかに進行していると感じる場合、その原因はAGAである可能性が極めて高いです。
AGAはセルフケアだけで進行を止めることは困難です。20代であっても、「まだ若いから」とためらわずに、皮膚科やAGA専門のクリニックなど、毛髪の専門家に相談することを強く推奨します。
クリニックで行われる主な対策
専門のクリニックでは、まず問診や視診、場合によっては血液検査などを通じて、生え際後退の原因がAGAであるかを診断します。
AGAと診断された場合、医学的根拠に基づいた対策(治療)が提案されます。
主な対策としては、AGAの原因であるDHTの生成を抑えるための内服薬や、毛根に直接働きかけて発毛を促進するミノキシジルなどの外用薬(発毛剤)が中心となります。
これらは医師の診断のもとで使用する医薬品であり、育毛剤とは異なるアプローチで生え際の後退に働きかけます。
対策開始のタイミング
AGA対策において最も重要なのは「タイミング」です。毛髪を生み出す毛包の機能が完全に失われる(産毛も生えなくなる)と、そこから再び髪を生やすことは非常に困難になります。
しかし、まだ毛包が機能しており、産毛でも生えている状態であれば、対策によって毛髪が太く長く成長する可能性は残されています。
つまり、生え際後退の初期サイン(髪が細くなった、M字が深くなった気がする)に気づいた「今」が、対策を始めるべき最適なタイミングです。
20代からの早期の決断が、10年後、20年後の毛髪状態を大きく左右します。
対策アプローチの整理
自分の状態に合わせて、どのような対策を取るべきか。セルフケアと専門ケアの役割を整理してみましょう。
| アプローチ | 対策の例 | 主な目的 |
|---|---|---|
| セルフケア(予防・現状維持) | 食事・睡眠の見直し、正しいヘアケア、育毛剤の使用 | 頭皮環境の改善、抜け毛予防、健康な髪の育成 |
| 専門ケア(改善・進行抑制) | 専門クリニックでの相談、内服薬の使用、外用薬(発毛剤)の使用 | AGAの進行抑制、発毛促進 |
よくある質問
生え際の後退に関して、20代の方が特に抱きやすい疑問や不安についてお答えします。
- 20代で育毛剤を使うのは早すぎますか?
-
早くありません。生え際の後退や抜け毛のサインを感じた時点が対策の始め時です。育毛剤は、主に頭皮環境を整え、抜け毛を予防する目的で使います。
20代は皮脂分泌が活発であったり、生活が不規則であったりするため、頭皮環境が乱れがちです。
そのため、20代からの早期ケアとして育毛剤を使用することは、将来の髪を守るために有効な選択肢の一つです。
- 生え際後退は遺伝だと諦めるしかないですか?
-
遺伝がAGA(男性型脱毛症)の発症に大きく関係していることは事実ですが、諦める必要は全くありません。
遺伝的な素因を持っていても、必ずしも若いうちに発症するとは限りませんし、発症した場合でも、現代では進行を抑制したり、毛髪の状態を改善させたりするための有効な対策(内服薬や外用薬など)が存在します。
重要なのは「遺伝だから仕方ない」と放置せず、事実を受け入れた上で、自分に合った適切な対策を早期に始めることです。
- ワックスやスプレーが生え際後退の原因になりますか?
-
ヘアスタイリング剤自体が、直接的にAGAを引き起こしたり、生え際の後退を進行させたりすることはありません。
しかし、スタイリング剤が毛穴に詰まったり、洗浄が不十分で頭皮に残ったりすると、頭皮環境が悪化し、炎症やかゆみ、フケを引き起こす原因となります。
このような不健康な頭皮環境は、健康な髪の成長を妨げ、抜け毛の間接的な原因になる可能性はあります。
使用後は毎日丁寧にシャンプーで洗い流し、頭皮を清潔に保つことが重要です。
- 食生活を変えれば生え際は元に戻りますか?
-
食生活の改善は、健康な髪を育てるための土台(頭皮環境)を整える上で非常に重要です。栄養バランスの取れた食事は、今ある髪を強くし、抜け毛を減らす助けになります。
しかし、生え際後退の原因がAGAである場合、残念ながら食生活の見直しだけで、後退した生え際が完全に元の状態に戻ることは難しいのが現状です。
食生活の改善はあくまで対策の基本であり、AGAの進行を抑えるためには、育毛剤の使用や専門的な治療(内服薬・外用薬)と並行して行う必要があります。
- 筋トレをすると男性ホルモンが増えて、生え際が後退しやすくなりますか?
-
筋トレによって男性ホルモン(テストステロン)の分泌が一時的に促されることはありますが、これが直接的にAGAを悪化させる、あるいは生え際を後退させるという明確な医学的根拠はありません。
AGAの原因はテストステロンそのものではなく、それが変換されたDHT(ジヒドロテストステロン)です。適度な運動は、むしろ全身の血行を促進し、ストレス解消にもつながるため、頭皮環境にとってはプラスに働くと考えられています。
過度な心配はせず、健康維持のための適度な筋トレは続けることをお勧めします。
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