抜け毛200本は異常!今すぐやるべき対策と、考えられる原因(ストレス・病気)

抜け毛200本は異常!今すぐやるべき対策と、考えられる原因(ストレス・病気)

「最近、枕元の抜け毛が増えた」「シャンプーの時の排水溝に溜まる髪の毛が異常に多い気がする」もしその本数が1日に200本に達しているなら、それは看過できない危険信号かもしれません。

一般的な抜け毛の範囲を大きく超えたその数は、頭皮や身体が発しているSOSである可能性があります。

この記事では、抜け毛200本がなぜ「異常」なのか、その背景に潜むストレスや病気といった原因、そして今すぐあなたが取り組むべき具体的な対策を、男性の髪の悩みに寄り添いながら詳しく解説します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

抜け毛200本は本当に「異常」なのか?

抜け毛が200本と聞くと、直感的に「多い」と感じる方がほとんどでしょう。

しかし、その数が具体的にどのような状態を示すのか、まずは客観的な基準と照らし合わせて理解することが大切です。

一般的な1日の抜け毛本数

健康な人の場合でも、髪の毛は毎日一定量抜けています。これは「ヘアサイクル(毛周期)」と呼ばれる髪の生まれ変わりのためです。

髪には「成長期(髪が伸びる時期)」「退行期(成長が止まる時期)」「休止期(髪が抜ける準備をする時期)」があり、休止期に入った髪が自然に抜け落ちるのです。

この自然なサイクルによる抜け毛は、一般的に1日あたり50本から100本程度と言われています。もちろん、これには個人差があり、髪の総量が多い人ほど抜け毛も多くなる傾向があります。

抜け毛「200本」が示す危険信号

1日の抜け毛が50本から100本程度であるのに対し、「200本」という数は、この正常な範囲を明らかに超えています。

毎日コンスタントに200本以上の髪が抜けている状態が続く場合、それは自然なヘアサイクルによるものではなく、何らかの異常事態が発生している可能性が極めて高いと考えられます。

この状態を放置すると、髪の毛が新しく生えてくる本数よりも、抜けていく本数が圧倒的に多くなり、結果として髪全体のボリュームダウンや薄毛が進行してしまいます。

200本という数字は、頭皮環境の悪化、生活習慣の乱れ、あるいは何らかの疾患など、原因を特定し対策を講じるべき明確なサインなのです。

抜け毛の本数を数える簡単な方法

正確に1日の抜け毛を把握するのは難しいですが、おおよその目安を知る方法はあります。最も分かりやすいのが、シャンプー時の抜け毛です。

洗髪前に排水溝を綺麗にし、シャンプーからすすぎまで終わった時点で排水溝に溜まった髪の毛を回収します。これを数えることで、洗髪による抜け毛の大半を把握できます。

ただし、1日の抜け毛は洗髪時以外(起床時、ブラッシング時、日中)にも発生します。洗髪時で100本を超えているようであれば、1日トータルでは200本近く、あるいはそれ以上に達している危険性があります。

季節による抜け毛の変動

抜け毛の本数は、季節によっても変動することが知られています。特に秋(9月〜11月頃)は、夏の間に浴びた紫外線のダメージや、動物の換毛期の名残で抜け毛が増加しやすい時期です。

この時期に一時的に抜け毛が150本程度に増えることはあっても、200本を超える状態が続くのはやはり異常と考えられます。

季節的な要因だとしても、その数が多すぎる場合は他の原因が複合的に関わっている可能性を疑うべきです。

抜け毛が200本に増える主な原因

1日の抜け毛が200本という異常な状態には、必ず何らかの原因が潜んでいます。それは一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることも少なくありません。ここでは、主な原因を解説します。

ストレスと抜け毛の深刻な関係

精神的なストレスは、抜け毛の大きな引き金となります。強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位な状態が続きます。これにより血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。

髪の毛は、毛根にある毛母細胞が血液から栄養を受け取ることで成長します。

血流が悪化すると、毛母細胞に十分な栄養が届かなくなり、髪の成長が妨げられたり、ヘアサイクルが乱れて成長途中の髪が抜けてしまったりするのです。

また、ストレスはホルモンバランスの乱れも引き起こし、頭皮環境を悪化させる皮脂の過剰分泌につながることもあります。

生活習慣の乱れが頭皮環境を悪化させる

日々の何気ない生活習慣も、積もり積もれば頭皮に大きな影響を与えます。特に睡眠不足、食生活の偏り、運動不足、喫煙、過度な飲酒は危険です。

生活習慣の乱れと頭皮への影響

乱れた生活習慣頭皮・髪への主な影響解説
睡眠不足成長ホルモンの分泌減少髪の成長や修復は主に睡眠中に行われます。睡眠の質と量が低下すると、髪の成長が妨げられます。
偏った食生活髪に必要な栄養素の不足脂っこい食事やインスタント食品が多いと、皮脂が過剰分泌されたり、髪の原料となる栄養が不足したりします。
喫煙・過度な飲酒血行不良・栄養の消費タバコは血管を収縮させ血流を悪化させます。アルコールの分解には髪に必要なビタミンやアミノ酸が使われます。

遺伝や男性ホルモンの影響(AGA)

男性の薄毛の最も一般的な原因として知られるのが「AGA(男性型脱毛症)」です。これは遺伝的な要因と男性ホルモンの影響によって引き起こされます。

AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素によって、より強力な「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換されることが主な原因です。

このDHTが毛乳頭細胞の受容体と結合すると、髪の成長期を短縮させる信号が出され、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。

これにより、抜け毛が増加し、特に生え際や頭頂部から薄毛が進行していきます。抜け毛200本という状態は、AGAが進行しているサインである可能性も十分に考えられます。

栄養バランスの偏り

髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。主成分は「ケラチン」というタンパク質ですが、タンパク質だけを摂取すれば良いわけではありません。

例えば、タンパク質を髪の毛に合成するためには亜鉛が必要ですし、頭皮の血行を良くしたり、皮脂のバランスを整えたりするためには各種ビタミン(特にビタミンB群、C、E)が必要です。

これらの栄養素がどれか一つでも極端に不足すると、健康な髪は育ちにくくなり、抜け毛の増加につながります。過度なダイエットや偏食は、髪にとって非常に危険な行為です。

抜け毛200本で考えられる病気のリスク

抜け毛200本という症状は、AGAや生活習慣の問題だけでなく、何らかの病気が原因となっている可能性も示唆しています。特に急激に抜け毛が増えた場合は注意が必要です。

皮膚疾患(脂漏性皮膚炎、頭皮白癬など)

頭皮そのものが健康でなければ、髪は健やかに育ちません。頭皮の皮膚疾患が抜け毛を引き起こすことがあります。

「脂漏性皮膚炎」は、皮脂の過剰分泌やマラセチアという真菌(カビ)の増殖が原因で起こる皮膚炎です。

頭皮にフケやかゆみ、赤みが生じ、炎症がひどくなると毛穴が塞がったり、毛根がダメージを受けたりして抜け毛が増加します。

「頭皮白癬(しらくも)」は、白癬菌というカビが頭皮に感染する病気です。強いかゆみやフケ、円形に髪が抜けるといった症状が出ることがあります。

主な頭皮の皮膚疾患と症状

皮膚疾患名主な原因主な症状
脂漏性皮膚炎皮脂の過剰分泌、マラセチア菌の増殖ベタついたフケ、強いかゆみ、頭皮の赤み
頭皮白癬(しらくも)白癬菌(カビ)の感染円形脱毛、フケ、かさぶた、かゆみ
接触性皮膚炎シャンプーや整髪料などの刺激かゆみ、赤み、湿疹(原因物質接触部)

甲状腺機能の異常

首の前側にある甲状腺は、体の新陳代謝を活発にするホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌しています。このホルモンのバランスが崩れる病気も、抜け毛の原因となります。

「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」では、ホルモンが過剰になり新陳代謝が活発になりすぎる結果、ヘアサイクルが早まり、髪が十分に成長する前に抜けてしまうことがあります。

「甲状腺機能低下症(橋本病など)」では、逆にホルモンが不足し、新陳代謝が低下します。これにより、全身の倦怠感やむくみとともに、髪の毛もパサつき、抜けやすくなることがあります。

自己免疫疾患(円形脱毛症など)

「円形脱毛症」は、本来外敵から体を守るはずの免疫機能が異常を起こし、自分自身の毛根を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。

一般的にはコイン大の脱毛斑が突然できるイメージが強いですが、症状は様々です。頭部全体に脱毛が広がる「全頭型」や、髪だけでなく眉毛や体毛まで抜ける「汎発型」に進行することもあります。

抜け毛200本という症状が、実は円形脱毛症の初期段階である可能性も否定できません。

その他の内科的疾患

抜け毛は、他の内科的な問題のサインであることもあります。例えば、鉄分の不足によって起こる「鉄欠乏性貧血」です。鉄分は血液中のヘモグロビンの材料であり、酸素を全身に運ぶ重要な役割を担っています。

鉄分が不足すると、頭皮の毛母細胞にも酸素や栄養が十分に行き渡らなくなり、抜け毛が増えることがあります。

また、特定の薬剤(抗がん剤、一部の降圧剤など)の副作用として脱毛が起こることも知られています。

抜け毛に関連する病気のサイン

関連する病気抜け毛以外の主な症状
甲状腺機能亢進症動悸、体重減少、多汗、手の震え
甲状腺機能低下症倦怠感、むくみ、体重増加、寒がり
鉄欠乏性貧血めまい、立ちくらみ、動悸、倦怠感、爪が脆くなる

今すぐ実践すべきセルフケア対策

抜け毛200本という事態に直面した今、専門家の診断を待つ間にも、自分でできることはたくさんあります。頭皮環境を整え、これ以上の抜け毛を防ぐために、まずは日々の生活を見直しましょう。

正しいシャンプー方法と頭皮ケア

毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つために重要ですが、方法を間違えると逆効果になります。

まず、シャンプー前にお湯だけで頭皮と髪をしっかりと「予洗い」します。これだけで汚れの多くは落ちます。次に、シャンプー剤を手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮につけます。

指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗いましょう。爪を立ててゴシゴシ洗うのは、頭皮を傷つけ炎症の原因になるため厳禁です。

すすぎは、洗う時間の倍以上をかけるつもりで徹底的に行います。シャンプー剤が頭皮に残ると、かゆみやフケ、毛穴の詰まりを引き起こします。

洗髪後は、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで早めに乾かしましょう。生乾きは雑菌が繁殖する原因となります。

食生活の見直しと必要な栄養素

髪は「食べたもの」から作られます。バランスの取れた食事が、健康な髪を育てる土壌となります。特に意識して摂取したい栄養素があります。

髪の成長に必要な主な栄養素と食材

栄養素主な役割多く含まれる食材
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛タンパク質の合成を助ける牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類
ビタミンB群頭皮の新陳代謝、皮脂分泌の調整レバー、うなぎ、マグロ、卵、納豆

これらの栄養素を偏りなく摂ることが大切です。外食やコンビニ食が多い方は、脂質や糖質過多になりがちなので、意識的に野菜や海藻、良質なタンパク質を取り入れる工夫をしましょう。

質の高い睡眠の確保

髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。特に、入眠後90分間の「ノンレム睡眠」時に最も多く分泌されると言われています。

睡眠時間が不足したり、夜更かしが続いて生活リズムが乱れたりすると、成長ホルモンの分泌が妨げられ、髪の成長や頭皮の修復が十分に行われません。

毎日6〜7時間程度の睡眠時間を確保し、就寝前はスマートフォンやパソコンの画面を避けてリラックスする時間を設けるなど、睡眠の「質」を高める工夫も重要です。

効果的なストレス解消法

ストレスが抜け毛の大きな原因であることは前述の通りです。現代社会でストレスをゼロにすることは難しいですが、上手に発散する方法を見つけることが重要です。

自分が「心地よい」と感じる方法を見つけ、日常生活に組み込むことが大切です。

  • 適度な運動(ウォーキング、ジョギング、ヨガなど)
  • 趣味や好きなことに没頭する時間
  • ぬるめのお湯にゆっくり浸かる(リラックス入浴)
  • 友人や家族と話す

これらの方法は、自律神経のバランスを整え、血行を促進する効果も期待できます。

育毛剤の選び方と正しい使い方

抜け毛200本という深刻な状況において、セルフケアと並行して「育毛剤」の使用を検討することは有効な手段の一つです。ただし、やみくもに使っても効果は期待できません。

抜け毛対策における育毛剤の役割

まず理解しておきたいのは、「育毛剤」と「発毛剤」の違いです。

「育毛剤」は、主に医薬部外品に分類され、今ある髪の毛を健康に育て、抜け毛を予防することを目的としています。

頭皮の血行を促進したり、頭皮環境を整えたり、毛母細胞に栄養を与えたりする成分が含まれています。

一方、「発毛剤」は、医薬品に分類され、髪の毛を新しく生やす(発毛させる)効果が認められたものです(例:ミノキシジル配合のものなど)。

抜け毛200本の対策としては、まずは頭皮環境を整えて抜け毛を食い止める「育毛剤」から試す、あるいはAGAが疑われる場合は「発毛剤」を検討するなど、自分の状態に合わせた選択が必要です。

当メディアでは、男性用の育毛剤を中心に特集していますが、ここでは一般的な育毛剤の選び方を紹介します。

自分の頭皮タイプに合った育毛剤の選び方

育毛剤も、自分の頭皮の状態に合っていなければ効果半減、あるいは逆効果になることもあります。

頭皮タイプ別育毛剤の選び方(例)

頭皮タイプ特徴選び方のポイント
乾燥肌タイプフケがカサカサしている、つっぱり感がある保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸など)が豊富なもの。アルコールフリーなど低刺激なもの。
脂性肌(オイリー)タイプベタつき、湿ったフケ、毛穴の詰まり皮脂分泌を抑える成分(ビタミンC誘導体など)や、抗炎症成分、さっぱりした使用感のもの。
敏感肌タイプ赤み、かゆみが出やすい無香料、無着色、アルコールフリー、パッチテスト済みなど、刺激の少ない処方のもの。

育毛剤の効果を高める使用方法

高価な育毛剤も、使い方次第で効果が変わってきます。基本は「清潔な頭皮に、正しく塗布し、継続する」ことです。

最も効果的なタイミングは、シャンプー後の頭皮が清潔で、血行も良くなっている時です。髪をしっかり乾かした後、育毛剤を頭皮に直接塗布します。髪につけても意味がありません。

塗布した後は、指の腹を使って頭皮全体に優しく揉み込むようにマッサージします。これにより、育毛剤の浸透を助け、頭皮の血行をさらに促進します。

育毛剤は、一度や二度使ってすぐに効果が出るものではありません。ヘアサイクルを考慮すると、最低でも3ヶ月から6ヶ月は毎日継続して使用することが求められます。

育毛剤使用時の注意点

育毛剤を使用してかゆみ、赤み、発疹などの異常が出た場合は、すぐに使用を中止してください。自分の肌に合わない可能性があります。また、用法・用量を守ることも大切です。

たくさん使えば早く効くというものではなく、かえって頭皮トラブルの原因になることもあります。

セルフケアで改善しない場合の選択肢

生活習慣を見直し、育毛剤などのセルフケアを続けても、抜け毛200本という状況が改善しない場合。

それは、セルフケアの範囲を超えた原因、例えば進行したAGAや、治療が必要な病気が隠れている可能性が高いサインです。

専門クリニック(皮膚科・AGA専門)の受診目安

以下のような状況が見られる場合は、迷わずに専門家の診断を仰ぐことを強く推奨します。

  • セルフケアを1〜2ヶ月続けても抜け毛が減らない、むしろ増えている
  • 生え際の後退や頭頂部の地肌の透けが明らかに進行している
  • 抜け毛と同時に、頭皮に強いかゆみ、痛み、フケ、湿疹がある
  • 抜け毛以外に、体調不良(倦怠感、体重の変化など)を伴う

受診先としては、まずは一般的な「皮膚科」で頭皮の状態や他の疾患の可能性を診てもらうか、薄毛治療を専門に行う「AGA専門クリニック」でAGAの診断を受けるか、どちらかが選択肢となります。

クリニックで受ける検査内容

クリニックでは、抜け毛の原因を特定するために、様々な検査を行います。

問診(生活習慣、既往歴、家族歴など)や視診(頭皮の状態、薄毛の進行度の確認)に始まり、マイクロスコープを使った頭皮の状態(毛穴の詰まり、炎症、毛髪の太さなど)の詳しいチェックが行われます。

AGAが疑われる場合は、遺伝子検査(5αリダクターゼの活性度など)を行うこともあります。

また、他の病気が疑われる場合は、血液検査(ホルモン値、甲状腺機能、栄養状態など)を実施し、抜け毛の内科的な原因を探ります。

専門家による治療法の概要

検査結果に基づき、抜け毛の原因に合わせた治療が行われます。

AGAと診断された場合は、内服薬(フィナステリド、デュタステリドなどDHTを抑制する薬)や外用薬(ミノキシジル:発毛を促す薬)による治療が一般的です。

脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患が原因であれば、抗真菌薬やステロイド外用薬などでまず頭皮の炎症を抑える治療を優先します。

甲状腺機能の異常など内科的疾患が見つかった場合は、その病気自体の治療を行うことが、結果として抜け毛の改善につながります。

抜け毛対策で避けたいNG行動

抜け毛200本という状況に焦るあまり、間違ったケアをしてしまうとかえって頭皮環境を悪化させ、抜け毛を助長することになりかねません。

良かれと思ってやっていることが、実はNG行動かもしれません。

自己流の間違った頭皮マッサージ

頭皮の血行促進にマッサージは有効ですが、やり方が問題です。

頭皮をスッキリさせたいからと、爪を立ててゴシゴシこすったり、ブラシで強く叩いたりする行為は、頭皮を傷つけ、毛細血管を破壊する可能性さえあります。

マッサージは、指の腹を使い、頭皮を「動かす」イメージで優しく揉むのが正解です。

洗浄力の強すぎるシャンプーの使用

頭皮がベタつくから、あるいはスッキリしたいからといって、洗浄力が非常に強い(高級アルコール系など)シャンプーを毎日使うのは注意が必要です。

必要な皮脂まで根こそぎ奪ってしまい、頭皮のバリア機能を低下させ、乾燥やかえって皮脂の過剰分泌を招くことがあります。

自分の頭皮タイプに合った、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶことも検討しましょう。

抜け毛を恐れて髪を洗わないこと

シャンプーの時に髪がたくさん抜けるのが怖くて、洗髪の回数を減らす人がいますが、これは最悪のNG行動です。頭皮に皮脂や汚れ、整髪料などが溜まると、毛穴が詰まり、雑菌が繁殖し、炎症を引き起こします。

これは抜け毛の大きな原因となります。シャンプー時の抜け毛は、すでに抜ける運命にあった「休止期」の髪がほとんどです。頭皮は毎日清潔に保つことが鉄則です。

根拠のない情報に振り回されること

「これを食べれば髪が生える」「この器具を使えば一発で治る」といった、インターネット上の根拠のない情報や誇大広告に飛びつくのは危険です。

抜け毛の原因は人それぞれであり、万人に効く特効薬はありません。確かな情報源に基づき、地道なセルフケアを行い、必要であれば専門家の診断を受けることが、薄毛改善への最も堅実な道です。

Q&A

最後に、抜け毛200本という状況に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。

抜け毛が200本あっても、生活改善だけで元に戻りますか?

原因によります。

もし抜け毛の原因が、一時的な強いストレスや極端な栄養不足、睡眠不足といった生活習慣の乱れ「だけ」である場合、その原因を取り除くことでヘアサイクルが正常化し、抜け毛が減って回復する可能性はあります。

しかし、抜け毛200本の背景にAGA(男性型脱毛症)の進行や、何らかの病気が隠れている場合、生活改善だけでの完全な回復は難しいことが多いです。

生活改善はあくまで「土台」を整えるものであり、AGAの場合は進行性のため、専門的な治療を併用しなければ薄毛は進んでいくと考えられます。

育毛剤はどれくらい使い続ければ効果が出ますか?

育毛剤は、即効性のあるものではありません。髪の毛にはヘアサイクル(毛周期)があり、新しい髪が生えてから成長し、抜け落ちるまでには数ヶ月から数年の時間がかかります。

育毛剤は、このサイクルに働きかけ、頭皮環境を整え、今ある髪を健康に育てるものです。

そのため、効果を実感するまでには、ヘアサイクルを考慮して最低でも3ヶ月から6ヶ月程度の継続的な使用が必要です。

「抜け毛が減ったかな?」「髪にコシが出てきたかな?」といった小さな変化を感じるまでには、時間がかかることを理解して、根気よく続けることが重要です。

抜け毛予防に市販のサプリメントは有効ですか?

あくまで「補助的」なものとして有効な場合があります。髪の成長にはタンパク質、亜鉛、ビタミンB群など多様な栄養素が必要ですが、これらは日々の食事からバランス良く摂取するのが基本です。

しかし、食生活が不規則でどうしても栄養が偏りがちな場合、不足しがちな栄養素をサプリメントで補うことは、頭皮環境や髪の健康維持の助けになります。

ただし、サプリメントは薬ではなく食品(栄養補助食品)ですので、それだけで髪が生えたり、抜け毛が劇的に止まったりするわけではありません。

バランスの取れた食事を心がけた上での「プラスアルファ」として考えるのが適切です。

家族に薄毛の人がいなくてもAGAになりますか?

可能性はあります。AGAの発症には遺伝的要因が強く関わっていることは事実ですが、必ずしも「父親や祖父が薄毛でなければ自分はならない」とは限りません。

薄毛の遺伝子は、母方の家系から受け継がれることもありますし、遺伝的な素因を持っていなくても、男性ホルモンの影響や生活習慣、ストレスなど他の要因が複合的に絡み合って発症することもあります。

家族歴はあくまで一つの目安であり、抜け毛が200本という状態や、生え際・頭頂部の薄毛が気になり始めた時点で、遺伝のせいだと諦めたり、逆に自分は大丈夫だと油断したりせず、専門家に相談することを推奨します。

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