薄毛が気になり始め、「人目が気になる」「どうやって隠せばいいかわからない」と悩んでいませんか。薄毛を隠す方法は一つではありません。
手軽に試せる髪型の工夫から、ピンポイントでカバーできる増毛スプレー、そして大きく印象を変えられるウィッグまで、様々な選択肢があります。
しかし、それぞれにメリットとデメリットが存在します。この記事では、「薄毛を隠す方法」として代表的な3つの方法(髪型・スプレー・ウィッグ)を徹底的に比較し、それぞれの長所と短所を詳しく解説します。
ご自身のライフスタイルや薄毛の状態、予算に合わせて、どの方法が最も合っているかを見つけるための参考にしてください。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
薄毛を隠す方法を選ぶ前に知っておきたいこと
薄毛をカバーする方法を具体的に検討する前に、いくつか押さえておきたい大切な点があります。ご自身の状況を客観的に把握し、なぜ隠したいのかを明確にすることが、より良い選択につながります。
また、隠すことだけに集中するのではなく、根本的な頭皮環境や生活習慣を見直す視点も重要です。ここでは、方法選びの前提となる基本的な知識を整理します。
なぜ薄毛を隠したいのか?その心理
薄毛を隠したいと感じる背景には、様々な心理が働いています。
「実際の年齢よりも老けて見られるのが嫌だ」「自信が持てず、人との交流が億劫になる」「周囲の視線が頭部に集まっているように感じる」といった外見上のコンプレックスが、自己肯定感の低下につながることが少なくありません。
また、ビジネスシーンやプライベートでの印象を気にする方も多いでしょう。この「隠したい」という気持ちは、社会生活を円滑に送り、精神的なストレスを軽減するために自然な感情です。
まずはその気持ちを受け入れ、ご自身がどのような状態を目指したいのかを考えることが第一歩となります。
隠すことのメリットと潜在的なデメリット
薄毛を隠すことには、明確なメリットがあります。それは、見た目の印象が改善されることで、自信を取り戻し、精神的な安定を得やすくなる点です。
コンプレックスが解消されることで、仕事や人付き合いにも前向きになれるでしょう。一方で、潜在的なデメリットも理解しておく必要があります。
例えば、「いつバレるか」という新たな不安を抱えたり、隠すための手間や費用が継続的に発生したりします。
また、使用する方法によっては、頭皮環境に負担をかけ、薄毛の進行に影響を与える可能性もゼロではありません。メリットとデメリットを天秤にかけ、ご自身が何を優先するかを考える必要があります。
自分の薄毛のタイプを把握する
薄毛の進行パターンは人によって異なります。ご自身のタイプを把握することで、より効果的な隠し方を選ぶことができます。
代表的な薄毛のタイプを知り、鏡でご自身の状態を確認してみましょう。
主な薄毛の進行パターン
| タイプ | 特徴 | 主な悩み |
|---|---|---|
| M字型 | 額の生え際(特に両サイド)が後退していく。 | 前髪が作りにくくなる。額が広く見える。 |
| O字型 | 頭頂部(つむじ周辺)から円形に薄くなっていく。 | 上からの視線が気になる。自分では見えにくい。 |
| U字型 | M字型とO字型が同時に進行し、つながっていく状態。 | カバーできる範囲が広くなり、隠しにくい。 |
この他にも、全体的に髪の毛が細くなり、ボリュームが失われる「びまん性」のタイプもあります。
ご自身のタイプによって、髪型でカバーしやすいのか、スプレーなどが適しているのかが変わってきます。
まずは専門家への相談も選択肢に
薄毛を隠す方法を考えるのと同時に、なぜ薄毛が進行しているのか、その原因を知ることも大切です。セルフケアで隠すことは対症療法であり、根本的な解決にはなりません。
薄毛の原因は、男性ホルモンの影響、遺伝、生活習慣、ストレスなど多岐にわたります。
皮膚科や薄毛治療を専門とするクリニックでは、現在の頭皮や毛髪の状態を診断し、医学的な観点からアドバイスをもらえます。
育毛剤の使用や生活習慣の改善、あるいは専門的な治療など、隠す以外の選択肢についても情報を得ることができます。隠す方法と並行して、専門家の意見を聞くことも検討してみましょう。
髪型(ヘアスタイル)で薄毛をカバーする方法
薄毛が気になり始めた方が、まず最初に取り組むのが髪型(ヘアスタイル)の工夫でしょう。カットやスタイリング次第で、薄毛を目立たなくさせることは十分に可能です。
無理に長い髪で隠そうとすると、かえって不自然になったり、清潔感が損なわれたりすることもあります。
ここでは、薄毛をカバーするためのヘアスタイルの基本原則と、タイプ別のおすすめスタイルを紹介します。
薄毛が目立ちにくい髪型の基本原則
薄毛をカバーする髪型には、いくつかの共通点があります。やみくもに髪を伸ばすのではなく、以下のポイントを意識することが重要です。
意識したいスタイリングの基本
- トップにボリュームを持たせる
- サイドや襟足は短く刈り上げる(ツーブロックなど)
- 髪の毛の自然な流れを活かす
基本は「トップにボリュームを集め、他はスッキリさせる」ことです。サイドが膨らむと、相対的にトップの薄さが際立ってしまいます。
サイドを短く抑えることで、視線をトップに誘導し、全体のバランスを整える効果が期待できます。
M字型におすすめのヘアスタイル
M字型、つまり生え際の後退が気になる場合は、前髪の作り方がポイントになります。無理に前髪を下ろして隠そうとすると、額に張り付いて薄さが目立ったり、風で崩れやすくなったりします。
おすすめは、前髪を上げるスタイル、または自然に流すスタイルです。例えば、ソフトモヒカンのようにトップを立たせたり、七三分けで片側にボリュームを持たせたりする方法があります。
あえて額を見せることで、清潔感と潔さを演出し、後退している部分への視線をそらすことができます。前髪を短くするショートレイヤースタイルも良いでしょう。
O字型(つむじ)におすすめのヘアスタイル
頭頂部のO字型が気になる場合、周囲の髪を伸ばして隠そうとするのは逆効果です。パックリと分かれてしまい、かえって地肌が目立ちます。
この場合も、サイドを短くし、トップにボリュームを集めるのが基本です。トップの髪にある程度の長さを残し、パーマをかけて動きを出すと、つむじ周りをふんわりとカバーしやすくなります。
また、全体を短くするベリーショートやおしゃれ坊主スタイルも、薄い部分と濃い部分のコントラストをなくし、全体のバランスを整える有効な方法です。
スタイリング剤でトップに空気感を含ませるようにセットするのがコツです。
全体的な薄毛におすすめのヘアスタイル
全体的に髪が細く、ボリュームが出にくい場合は、髪の密度よりも「動き」でカバーすることを考えます。M字型やO字型と同様に、サイドは短く刈り上げ、トップに長さを残すのが基本です。
トップにレイヤー(段)を入れ、軽い質感にすることで動きが出やすくなります。さらに、緩めのパーマをかけることで、全体のボリュームアップとスタイリングのしやすさを両立できます。
スタイリング剤は、ワックスやムースなどを使い、髪の根元から立ち上げるように意識してセットしましょう。
重たいスタイリング剤は髪が寝てしまう原因になるため、軽いテクスチャーのものを選ぶことが大切です。
髪型で隠すメリットとデメリットを比較
ヘアスタイルを工夫することは、最も手軽で基本的な薄毛カバーの方法です。しかし、他の方法と同様に、メリットとデメリットが存在します。
ご自身のライフスタイルや、どれくらいの手間を許容できるかを考えながら、この方法が合っているかを判断しましょう。
メリット すぐに実践でき、費用が抑えられる
最大のメリットは、その手軽さと経済性です。美容室や理容室でカットしてもらうだけで、その日から実践できます。
「薄毛カバーが得意」とうたっているサロンで相談すれば、ご自身の髪質や骨格に合わせたスタイルを提案してくれるでしょう。
一度カットしてしまえば、日々のスタイリング剤にかかる費用程度で維持できるため、他の方法に比べてコストを大幅に抑えることが可能です。
また、スプレーやウィッグのように「何かを足している」わけではないため、心理的な抵抗感が最も少ない方法とも言えます。
デメリット カバーできる範囲に限界がある
当然ながら、髪型でのカバーはご自身の今ある髪の毛で行うため、限界があります。薄毛がかなり進行している場合や、カバーしたい範囲が広すぎる場合は、ヘアスタイルだけでは隠しきれないこともあります。
特にO字型やU字型が広範囲に及ぶと、いくらトップにボリュームを持たせようとしても、地肌が見えてしまうことは避けられません。
髪型でのカバーは、あくまで「目立たなくする」方法であり、「完全になかったことにする」方法ではないことを理解しておく必要があります。
デメリット 風や水濡れに弱い
ヘアスタイルで薄毛を隠す場合、その多くはスタイリング剤で髪の毛の向きやボリュームを固定しています。そのため、強風や雨、汗などの水分に弱いという弱点があります。
風でセットが崩れて隠していた部分が露わになったり、雨や汗で髪が濡れて地肌が透けて見えたりするリスクが常に伴います。
特に湿度の高い日や、スポーツをする際、夏の暑い日などは、セットを維持するのが難しくなります。日常的に天候や活動内容を気にする必要があるのは、精神的な負担になるかもしれません。
髪型カバーの長所と短所
| 項目 | メリット(長所) | デメリット(短所) |
|---|---|---|
| 手軽さ | 美容室・理容室ですぐに実践できる。 | 日々のスタイリング(セット)に時間がかかる。 |
| 費用 | カット代とスタイリング剤代のみで安価。 | カット技術によって仕上がりが左右される。 |
| 自然さ | 自分の髪なので違和感がない。 | 風、雨、汗などで崩れやすく、地肌が見えやすい。 |
| カバー力 | 初期~中期の薄毛なら十分カバー可能。 | 薄毛が進行するとカバーしきれない限界がある。 |
増毛スプレー・パウダーで薄毛を隠す方法
髪型だけではカバーしきれないと感じた場合、次の選択肢として挙がるのが増毛スプレーや増毛パウダーです。
これらは、地肌が透けて見える部分や、髪の毛が細くボリュームが足りない部分を、手軽にカバーできるアイテムとして人気があります。正しく使えば、非常に自然な仕上がりが期待できます。
増毛スプレー・パウダーとは?
増毛スプレーやパウダーは、髪の毛や頭皮に特殊な微粒子を付着させることで、薄毛を目立たなくさせる製品です。主な種類として以下のものがあります。
主な増毛アイテムの種類
| 種類 | 主成分・仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| スプレータイプ | 着色した微細な粉末(カーボンなど)と樹脂(定着剤)を噴射する。 | 広範囲に均一に塗布しやすい。髪を太く見せる効果もある。 |
| パウダータイプ | 植物性の繊維(レーヨンなど)を静電気で髪に付着させる。 | ピンポイントでの使用に適している。より自然な仕上がりを求める人向け。 |
スプレータイプは、髪の毛1本1本に微粒子が付着して太く見せると同時に、頭皮にも色をつけることで地肌の透け感を減らします。
パウダータイプは、主に既存の髪の毛に静電気で絡みつき、髪の毛を多く見せる効果を狙ったものです。多くの場合、パウダーの後に専用の固定ミスト(スプレー)を使用して定着させます。
正しい使い方と自然に見せるコツ
増毛スプレーやパウダーを自然に見せるには、いくつかのコツが必要です。まず、使用前には必ず髪を乾かし、スタイリングをある程度終えておきます。
油分や水分が残っていると、ムラになったりダマになったりする原因になります。スプレータイプは、隠したい部分から15cm~20cmほど離し、円を描くように少しずつ噴射します。
一箇所に集中して噴射すると不自然になるため、全体を見ながら薄く重ねていくのがコツです。パウダータイプは、容器を軽く振りながら頭皮に叩き込むように付着させ、手で軽くならして髪に馴染ませます。
どちらのタイプも、使用後にヘアスプレーで軽く固定すると、持ちが良くなります。
色選びと使用量のポイント
最も重要なのが色選びです。ご自身の髪色と全く同じか、少し暗めの色を選ぶのが基本です。明るすぎる色を選ぶと、付着させた部分だけが浮いて見え、非常に不自然になります。
自分で判断が難しい場合は、複数の色を試せるサンプルを利用するか、美容師などに相談するのも良いでしょう。また、使用量も重要です。
「しっかり隠したい」という気持ちから一度に大量に使ってしまうと、ベタッとした質感になったり、頭皮に膜が張ったように見えたりしてしまいます。
「少し足りないかな?」と感じる程度で止め、鏡で様々な角度から確認しながら微調整するのが、自然に見せるための最大のポイントです。
落とし方と頭皮ケア
増毛スプレーやパウダーは、その日のうちにシャンプーでしっかり洗い流す必要があります。製品の多くは耐水性を備えていますが、通常のシャンプーで落ちるように設計されています。
ただし、落ちにくい場合は、二度洗いやクレンジングオイルを併用すると良いでしょう。粒子が頭皮に残ったままだと、毛穴を塞ぎ、かゆみや炎症、さらには抜け毛の原因となる可能性があります。
洗い流した後は、頭皮を清潔に保ち、育毛剤などで保湿・栄養補給を行うなど、通常以上の頭皮ケアを心がけることが大切です。隠すことによる頭皮への負担を最小限に抑える意識が重要です。
増毛スプレー・パウダーのメリットとデメリット
手軽に気になる部分をカバーできる増毛アイテムですが、日常的に使うことを考えると、メリットとデメリットの両方を冷静に比較する必要があります。
特に頭皮への影響や、使用するシーンを考慮することが大切です。
メリット 気になる部分をピンポイントでカバー
最大のメリットは、つむじ(O字型)や分け目など、髪型では隠しにくい部分をピンポイントで、かつ強力にカバーできる点です。
地肌が透けて見える部分に直接アプローチできるため、見た目の変化が分かりやすく、即効性があります。
また、髪全体のボリュームアップにも寄与するため、スタイリングの仕上げとして使うことで、ヘアスタイル全体の完成度を高めることも可能です。
今日は特にしっかり決めたい、という日の「お守り」として持っておくのも良いでしょう。
メリット 比較的安価で手軽に試せる
ウィッグなどに比べると、初期費用が格段に安く済みます。
数千円程度から購入できる製品が多く、ドラッグストアやオンラインで簡単に入手できるため、「まずは試してみたい」という方にとってハードルが低いのが特徴です。
様々なメーカーから多様な種類の製品が出ているため、ご自身に合うものを見つけやすいという利点もあります。
旅行や出張先にも持ち運びしやすく、TPOに合わせて使う・使わないを選べる手軽さも魅力です。
デメリット 汗や雨で落ちる可能性がある
多くの製品で耐水性・耐汗性がうたわれていますが、限界はあります。
激しいスポーツで大量の汗をかいた場合や、突然の豪雨に見舞われた場合、スプレーやパウダーが流れ落ちてしまうリスクは否定できません。
黒い汗が垂れてきたり、衣服の襟元が汚れたりする可能性もあります。プールや温泉などは基本的に使用できません。
また、就寝時も洗い流す必要があるため、お泊りなどのシチュエーションでは使いにくいという側面もあります。天候やTPOを気にする必要がある点は、髪型でのカバーと同様です。
スプレー・パウダーの長所と短所
| 項目 | メリット(長所) | デメリット(短所) |
|---|---|---|
| カバー力 | ピンポイントで地肌の透けを強力にカバー。 | 完全に毛がない部分(生え際など)は不自然になりやすい。 |
| 費用 | 数千円から試すことができ、安価。 | 継続的に使用するため、ランニングコストがかかる。 |
| 手軽さ | 短時間で簡単に使用できる。入手も容易。 | 毎日の塗布とシャンプーの手間がかかる。 |
| 持続性 | 専用ミストなどで固定すれば一日中持つ。 | 汗、雨、摩擦(帽子など)で落ちるリスクがある。 |
| 頭皮への影響 | 正しく使えば問題ない製品が多い。 | 洗い残しによる毛穴詰まりや頭皮トラブルの懸念。 |
ウィッグ(かつら)で薄毛を隠す方法
薄毛の範囲が広い場合や、髪型やスプレーでは満足のいくカバーができない場合、最終的な選択肢となるのがウィッグ(かつら)です。
ウィッグと聞くと、かつては「不自然」「高額」といったイメージがありましたが、現代のウィッグは技術が向上し、非常に自然で高品質なものが増えています。
薄毛を隠す方法としては最も強力な手段と言えるでしょう。
ウィッグの種類(全頭・部分)と特徴
ウィッグには、頭部全体を覆う「全頭タイプ(オールウィッグ)」と、つむじや生え際など、気になる部分だけをカバーする「部分タイプ(ヘアピース)」があります。
薄毛を隠す目的では、部分タイプが選ばれることが多いです。特に頭頂部をカバーするものが人気で、ご自身の残っている髪の毛(自毛)と馴染ませて使います。
ピンやクリップで自毛に固定するタイプが一般的です。薄毛がかなり広範囲に進行している場合や、自毛が非常に短い場合は、全頭タイプが適していることもあります。
素材(人毛・人工毛・ミックス)の違い
ウィッグの「毛」の部分には、主に人毛、人工毛、そしてその両方を混ぜたミックス毛の3種類があります。それぞれに特徴があり、価格や手入れの方法も異なります。
ウィッグの毛材比較
| 素材 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 人毛 | 人間の髪の毛を使用。 | 見た目や手触りが最も自然。パーマやカラーも可能。 | 価格が高い。お手入れに手間がかかる。色褪せする。 |
| 人工毛 | 化学繊維(ポリエステルなど)で作られる。 | 価格が安い。スタイルが崩れにくい。お手入れが楽。 | テカリが出やすく不自然に見えることも。熱に弱い。 |
| ミックス毛 | 人毛と人工毛をブレンド。 | 人毛の自然さと人工毛の手軽さを両立。 | 製品による品質の差が大きい。価格は中程度。 |
何を優先するか(自然さ、手入れの手軽さ、価格)によって、選ぶべき素材が変わってきます。
オーダーメイドと既製品の選び方
ウィッグには、個別に型取りをして作成する「オーダーメイド」と、すでに完成している「既製品」があります。
オーダーメイドは、ご自身の頭の形や髪質、希望するスタイルに合わせて作られるため、フィット感や自然さは抜群です。その分、価格は高額になり、完成までに時間もかかります。
一方、既製品は、S・M・Lなどのサイズ展開や、様々なスタイルがあらかじめ用意されており、比較的安価ですぐに手に入れることができます。
最近では既製品でも品質が向上しており、初めてウィッグを試す方や、費用を抑えたい方には既製品が選ばれることも多いです。
日常の手入れとメンテナンス
ウィッグは、自毛とは別にお手入れが必要です。特に部分ウィッグを毎日使用する場合、汗や皮脂が付着するため、数日に一度は専用のシャンプーで洗浄し、陰干しする必要があります。
人毛の場合はトリートメントも重要です。固定用のピンが緩んでいないかのチェックや、毛が絡まった際のブラッシングも欠かせません。また、ウィッグ自体にも寿命があります。
使用頻度や素材にもよりますが、毎日使うものであれば1年~数年で劣化(毛が抜ける、縮れるなど)が進むため、定期的な買い替えや修理といったメンテナンスコストも考慮しておく必要があります。
ウィッグ(かつら)のメリットとデメリット
薄毛の悩みを根本から覆い隠すことができるウィッグですが、それゆえのメリットと、導入のハードルとなるデメリットがあります。
高額な投資になるケースも多いため、慎重な判断が求められます。
メリット 大幅なイメージチェンジが可能
最大のメリットは、薄毛の状態に関わらず、望む通りの髪型や毛量を手に入れられることです。
薄毛が進行して髪型でのカバーが難しくなった方でも、ウィッグを装着するだけで、髪が豊かだった頃の自分に戻れたり、あるいはこれまでできなかったヘアスタイルに挑戦したりすることも可能です。
見た目の印象が劇的に変わるため、コンプレックスの解消効果は最も高いと言えるでしょう。
メリット 髪型や毛量を自由に選べる
天候や汗を気にする必要が格段に減るのも大きなメリットです。増毛スプレーのように雨で流れる心配や、髪型のように風で崩れる心配がありません(強風でウィッグ自体がずれるリスクはゼロではありませんが)。
常に一定のスタイルをキープできる安定感は、日々の精神的なストレスを大きく軽減してくれます。また、自毛では難しいカラーリングやパーマスタイルも、ウィッグであれば気軽に楽しむことができます。
ウィッグ使用の長所と短所
| 項目 | メリット(長所) | デメリット(短所) |
|---|---|---|
| カバー力 | 薄毛の進行度に関わらず、ほぼ完璧にカバーできる。 | 生え際や分け目が不自然に見える場合がある。 |
| 費用 | 毛量やスタイルを自由に選べる。 | 初期費用(購入費)が高額になりがち。 |
| 持続性 | 一度装着すればスタイルが崩れにくい。汗や雨に強い。 | 消耗品であり、数年ごとに買い替え(維持費)が必要。 |
| 日常生活 | 天候などを気にせず過ごせる安心感。 | 装着時の違和感、ムレ、かゆみが出ることがある。 |
| 手入れ | TPOに合わせて着脱が可能。 | 毎日の着脱や、定期的な洗浄・メンテナンスの手間がかかる。 |
デメリット 初期費用や維持費が高額になりがち
最も大きなデメリットは費用面です。特にオーダーメイドの高品質なウィッグになると、数十万円から百万円を超える費用がかかることも珍しくありません。
既製品であっても、数万円から十数万円が相場です。さらに、ウィッグは消耗品であるため、定期的な買い替えや修理費用(メンテナンスコスト)も発生します。
シャンプーやトリートメントなどの専用ケア用品も必要です。これらのトータルコストを許容できるかどうかは、大きな判断基準となります。
デメリット 装着時の違和感や「バレる」不安
いくら自然になったとはいえ、ウィッグは「異物」です。特に夏場は頭皮がムレやすく、かゆみを感じることもあります。
また、ピンで自毛に固定するため、牽引(引っ張られる)感や、長時間の使用で頭痛を感じる人もいます。そして何より、「ウィッグだと周囲にバレるのではないか」という不安が常につきまとう可能性があります。
技術の進歩で非常に見分けがつきにくくなっていますが、生え際や分け目の質感、あるいは自毛との色の差などで違和感が出てしまうこともあります。この精神的な負担をどう捉えるかも重要です。
Q&A
ここでは、薄毛を隠す方法に関してよく寄せられる質問についてお答えします。
- どの方法が一番バレにくいですか?
-
一概に「この方法が一番バレにくい」と断言するのは難しいです。なぜなら、ご自身の薄毛の進行度や、どれだけ丁寧に対処するかに大きく左右されるからです。
例えば、薄毛初期の方が上手にヘアカットでカバーしていれば、最も自然でバレにくいでしょう。しかし、進行した薄毛を無理に髪型で隠そうとすれば、かえって不自然になります。
同様に、増毛スプレーも適量を守り、髪色に合ったものを使えば非常にバレにくいですが、使いすぎるとすぐにわかってしまいます。
ウィッグも、高品質なものを専門家が調整して装着すれば見分けるのは困難ですが、安価なもので自毛と色が合っていなければ、すぐにウィッグだと気づかれます。
どの方法を選ぶにせよ、「自然さ」を追求するには、ご自身の状態に合った方法を選び、やりすぎないこと、そして色や質感にこだわる専門家の技術やアドバイスを活用することが重要です。
- 隠しながら育毛剤を使用しても大丈夫ですか?
-
はい、問題ありません。むしろ、薄毛を隠すこと(対症療法)と、育毛剤などで頭皮環境を整え、毛髪の成長を促すこと(原因へのアプローチ)を並行して行うことは、とても大切です。
ただし、注意点がいくつかあります。増毛スプレーやパウダーを使う場合は、必ず育毛剤を塗布して頭皮が乾いた「後」に使用してください。
育毛剤が乾かないうちに使用すると、成分が混ざって効果が薄れたり、ダマになったりする可能性があります。
また、一日の終わりにはスプレーやパウダーをシャンプーで完璧に洗い流し、清潔な頭皮に育毛剤を使用することが重要です。
ウィッグを使用している場合も同様で、ウィッグを外した後の清潔な頭皮に育毛剤を使用してください。
隠すことによる頭皮への負担を、育毛剤によるケアで補うという意識を持つと良いでしょう。
- 薄毛を隠すこと自体にストレスを感じます…
-
そのお気持ちは非常によくわかります。
「隠していることがバレたらどうしよう」「毎日セットするのが面倒だ」「いつまでこれを続ければいいのか」といった不安や手間が、新たなストレス源になることは少なくありません。
もし、隠すこと自体のストレスが、薄毛であることのストレスを上回るようであれば、一度立ち止まって考える必要があります。選択肢は「隠す」ことだけではありません。
例えば、あえて隠すのをやめ、ベリーショートやスキンヘッドにして、薄毛を個性として受け入れるという生き方もあります。
また、前述の通り、クリニックなどで専門的な治療を受け、根本的な改善を目指す道もあります。どの方法がご自身にとって最も精神的な負担が少ないか、長期的な視点で考えてみてください。
隠す、隠さない、治す、どの選択も間違いではありません。
- 自分に合う方法が分かりません
-
まずは、ご自身の「薄毛の進行度」「かけられる費用(初期費用と維持費)」「かけられる手間」「どの程度のカバー力を望むか」を整理してみましょう。
隠す方法の選び方
- 薄毛が初期段階で、費用と手間を最小限にしたい → 髪型(ヘアスタイル)の工夫
- 髪型だけでは少し不安。つむじや分け目をピンポイントでカバーしたい → 増毛スプレー・パウダー
- 薄毛が広範囲で、費用がかかっても完璧にカバーしたい。毎日セットする手間を省きたい → ウィッグ(かつら)
このように、ご自身の優先順位によって適した方法は変わってきます。
まずは最も手軽な髪型の工夫から始めてみて、物足りなければスプレーを試し、それでも満足できなければウィッグを検討する、という順序で試していくのが一般的です。
増毛スプレーやウィッグは、無料相談やお試し体験を実施しているメーカーも多いので、そういったサービスを利用して、実際の使用感や仕上がりをご自身で確かめてから判断することをおすすめします。
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