朝、鏡を見て髪型が決まらないと、一日中気分が上がらないものです。
特に男性で「髪がぺたんとしてボリュームが出ない」「スタイリングしてもすぐに潰れてしまう」という悩みを持つ方は少なくありません。
髪がぺたんこになる原因は一つではなく、頭皮環境や髪質、生活習慣、さらには薄毛のサインである可能性も潜んでいます。
この記事では、なぜ男の髪がぺたんこになるのか、その多様な原因を深掘りし、薄毛との関係性、髪質の影響について解説します。
さらに、今日からすぐに実践できるボリュームアップのための具体的なスタイリング術や、根本的な改善を目指すヘアケア方法まで、あなたの悩みに寄り添いながら詳しく紹介します。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
なぜ?男の髪がぺたんこになる主な原因
髪がぺたんこになってしまう背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。自分の髪がなぜボリュームダウンしてしまうのか、まずはその原因を知ることが対策の第一歩です。
ここでは、男性のぺたんこ髪を引き起こす主な原因について解説します。
頭皮環境の悪化(皮脂・汚れ)
男性は女性に比べて皮脂の分泌量が多い傾向があります。この過剰な皮脂が毛穴に詰まったり、頭皮全体を覆ったりすると、髪の毛一本一本が根元から立ち上がりにくくなります。
皮脂は汚れやホコリと混ざり合い、酸化することで頭皮にダメージを与え、健康な髪の成長を妨げる原因にもなり得ます。
特にシャンプーが不十分で皮脂やスタイリング剤が頭皮に残っていると、毛穴が詰まり、髪がベタついて重くなり、結果としてぺたんこな印象を与えてしまいます。
日々の正しい洗髪で頭皮を清潔に保つことが重要です。
髪のハリ・コシの低下
髪の内部にあるタンパク質や水分が不足すると、髪は弾力を失い、細く弱々しくなります。
これが「ハリ・コシがない」状態です。加齢は一つの大きな要因ですが、それ以外にもパーマやカラーリングによる化学的なダメージ、紫外線、ドライヤーの熱など、外部からの物理的なダメージの蓄積も髪のハリ・コシを奪います。
髪自体が弱ると、自重を支えきれずに根元から倒れやすくなり、全体のボリュームダウンにつながります。
生活習慣の乱れ
髪は「血余(けつよ)」とも呼ばれるように、血液から栄養を受け取って成長します。
不規則な食生活、特に脂質の多い食事やインスタント食品への偏りは、血液の質を低下させ、頭皮環境を悪化させる可能性があります。また、睡眠不足は髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げます。
過度なストレスも自律神経のバランスを崩し、頭皮の血行不良を引き起こす要因となります。
これらの生活習慣の乱れが、健康な髪の育成を阻害し、結果として髪が細くなったり、元気がなくなったりして、ぺたんこ髪につながることがあります。
ぺたんこ髪につながる主な要因
| 要因 | 概要 | 髪への影響 |
|---|---|---|
| 頭皮環境 | 皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、汚れの蓄積 | 根元の立ち上がりを阻害、ベタつきによる重み |
| 髪の状態 | ハリ・コシの低下、ダメージの蓄積、加齢 | 髪が細くなり、自重で倒れやすくなる |
| 生活習慣 | 食生活の乱れ、睡眠不足、ストレス | 髪への栄養不足、成長阻害、血行不良 |
ぺたんこ髪は薄毛(AGA)のサイン?見極め方
髪のボリュームが減ってくると、「もしかして薄毛が始まっているのではないか」と不安になる方は多いでしょう。特に男性の場合、AGA(男性型脱毛症)の可能性が頭をよぎるかもしれません。
ここでは、ぺたんこ髪と薄毛の関係性について解説し、気をつけるべきサインの見極め方を紹介します。
AGA(男性型脱毛症)とは
AGA(Androgenetic Alopecia)は、成人男性に多く見られる進行性の脱毛症です。
主な原因は男性ホルモンの一種であるテストステロンが、特定の酵素(5αリダクターゼ)の影響でジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることです。
このDHTが毛根の受容体と結合すると、髪の成長期が短縮され、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。
これにより、髪が徐々に細く短くなり(軟毛化)、地肌が透けて見えるようになります。AGAは主に生え際(前頭部)や頭頂部から進行する特徴があります。
ぺたんこ髪と薄毛の関係性
ぺたんこ髪が必ずしもAGAであるとは限りません。前述のように、頭皮環境や髪質、ダメージが原因であることも多いです。
しかし、AGAが進行すると、髪の毛一本一本が細く、弱々しくなる「軟毛化」が起こります。この軟毛化は、髪のハリ・コシを著しく低下させるため、髪全体がボリュームダウンし、ぺたんこに見えるようになります。
つまり、AGAの初期症状として「髪にハリ・コシがなくなり、ぺたんとしてきた」と感じるケースは非常に多いのです。
以前と比べて明らかに髪が細くなった、スタイリングしにくくなったと感じる場合は注意が必要です。
薄毛の初期症状セルフチェック
自分がAGAの初期段階にあるかどうか、気になる方もいるでしょう。以下に挙げる項目は、薄毛の初期症状としてよく見られるものです。
いくつか当てはまる場合は、薄毛が進行している可能性を考慮する必要があります。
- 抜け毛が明らかに増えた(特にシャンプー時や起床時)
- 髪の毛一本一本が細く、柔らかくなった
- 生え際が以前より後退したように感じる
- 頭頂部の地肌が透けて見えるようになった
- 髪にハリやコシがなくなり、セットが難しくなった
これらのサインは、AGAの進行を示唆している可能性があります。特に、抜け毛の質が変わり、細く短い毛が増えてきた場合は注意が必要です。
気になったら早めに専門家へ
セルフチェックで不安を感じたり、ぺたんこ髪が徐々に悪化していると感じたりする場合は、自己判断で悩まずに専門のクリニックや皮膚科の医師に相談することをおすすめします。
AGAは進行性であるため、放置すると症状は悪化していきます。早期に対策を始めることで、進行を遅らせたり、改善したりする可能性が高まります。
専門家は頭皮の状態や毛髪の太さ、密度などを詳しく診察し、適切なアドバイスや治療法を提案してくれます。
髪質が原因?ぺたんこになりやすい髪の特徴
生まれ持った髪質も、髪のボリューム感に大きく影響します。同じ毛量であっても、髪質によってぺたんこに見えやすい場合があります。
どのような髪質がボリュームダウンしやすいのか、その特徴と理由を見ていきましょう。
髪が細い・柔らかい(軟毛)
髪の毛一本一本が細い「細毛」や、キューティクルの層が薄く柔らかい「軟毛」の方は、髪にハリ・コシが出にくい代表的な髪質です。髪が細く柔らかいと、重力や少しの湿気で簡単に根元が寝てしまいます。
また、髪同士が絡まりやすく、束になりやすい傾向もあります。束になることで地肌が透けやすくなり、余計にボリュームがなく見えてしまうこともあります。
このような髪質の方は、スタイリングで一時的にボリュームを出しても、時間が経つと元に戻りやすいという悩みも抱えがちです。
髪の量(毛量)が少ない
当然ながら、頭皮に生えている髪の絶対量が少なければ、全体のボリュームは出しにくくなります。
毛量が少ない原因は、生まれつきの場合もあれば、前述したAGAや他の脱毛症によって減少している場合もあります。
毛量が少ないと、いくらスタイリングを工夫しても限界があり、地肌が見えやすくなるため、ぺたんこという印象を与えやすくなります。
自分の毛量が元々なのか、それとも減少傾向にあるのかを見極めることも大切です。
くせ毛(うねり)による広がりと根元の潰れ
意外かもしれませんが、くせ毛(波状毛や捻転毛)の方も、根元がぺたんこになる悩みを抱えていることがあります。くせ毛は髪内部の水分バランスが不均一なため、湿気を含むと髪が広がりやすくなります。
しかし、その一方で、毛根が一定の方向に向きにくかったり、髪のうねりによって根元が立ち上がりにくかったりする場合があります。
特に、髪の表面は湿気で広がるのに、根元は頭皮の皮脂や重みで潰れてしまうと、非常にバランスの悪いスタイルになりがちです。髪は広がるのにボリュームがない、という複雑な状態です。
ぺたんこになりやすい髪質とその特徴
| 髪質 | 特徴 | ボリュームが出にくい理由 |
|---|---|---|
| 細毛・軟毛 | 髪一本一本が細く、柔らかい | ハリ・コシがなく、自重や湿気で根元が寝やすい |
| 毛量が少ない | 生えている髪の絶対数が少ない | 物理的にボリュームを構成する髪が足りない |
| くせ毛 | 髪がうねる、ねじれている | 根元が立ち上がりにくい、湿気で広がるが根元は潰れる |
毎日の習慣が影響?ヘアケアと生活習慣の見直し
ぺたんこ髪の改善には、特別なケアだけでなく、日々の地道な習慣の見直しが非常に重要です。間違ったヘアケアが頭皮環境を悪化させたり、髪にダメージを与えたりしているかもしれません。
また、生活習慣が髪の健康を左右することも事実です。ここでは、毎日の習慣の中で見直すべきポイントを解説します。
シャンプーの選び方と正しい洗い方
男性は皮脂が多いため、洗浄力の強いシャンプーを選びがちです。
しかし、洗浄力が強すぎると頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、かえって頭皮を乾燥させ、フケやかゆみ、あるいは皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
自分の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌、混合肌)に合ったシャンプーを選ぶことが大切です。 洗い方にも注意が必要です。熱すぎるお湯は頭皮を乾燥させます。
38度程度のぬるま湯で予洗いをしっかり行い、シャンプーは手のひらで泡立ててから頭皮に乗せ、指の腹でマッサージするように優しく洗いましょう。
爪を立ててゴシゴシ洗うのは頭皮を傷つける原因になるため厳禁です。すすぎ残しは毛穴詰まりの原因になるため、シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぎます。
正しいシャンプーの手順
| 手順 | ポイント | 目的 |
|---|---|---|
| ブラッシング | 洗髪前に乾いた髪をとかす | ホコリを落とす、髪の絡まりを解く |
| 予洗い | ぬるま湯(38度程度)で頭皮と髪をしっかり濡らす | お湯だけで汚れの多くを落とす、泡立ちを良くする |
| シャンプー | 適量を手で泡立て、指の腹で頭皮をマッサージ洗い | 頭皮を傷つけず、毛穴の汚れを優しく浮かせる |
| すすぎ | シャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧に | 毛穴詰まりや頭皮トラブルを防ぐ |
ドライヤーでの乾かし方が重要
シャンプー後、髪を濡れたまま放置するのは絶対にやめましょう。濡れた髪はキューティクルが開いており、非常にデリケートな状態です。
また、頭皮が湿ったままだと雑菌が繁殖しやすく、フケやかゆみ、臭いの原因となり、頭皮環境が悪化します。 タオルドライで優しく水分を拭き取ったら、すぐにドライヤーで乾かします。
この時、ボリュームアップの土台を作るチャンスです。まずは髪の根元を中心に乾かしていきます。
温風を根元に当てながら、指で髪をかき上げるようにして、毛流れに逆らうように乾かすと、根元が立ち上がりやすくなります。
髪が8割程度乾いたら、冷風に切り替えて全体を冷まします。これによりキューティクルが引き締まり、スタイルが固定され、ボリュームがキープしやすくなります。
髪と頭皮に良い食生活
髪の主成分はケラチンというタンパク質です。良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)をしっかり摂取することが、強く健康な髪を育てる基本です。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類)や、頭皮の血行を促進するビタミンE(アーモンド、アボカド)、頭皮の新陳代謝をサポートするビタミンB群(豚肉、マグロ、バナナ)も重要です。
バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らないようにしましょう。脂っこい食事や糖分の多い間食は皮脂の過剰分泌につながる可能性があるため、控えることが望ましいです。
睡眠とストレスの影響
髪の成長は、主に睡眠中に分泌される成長ホルモンによって促されます。特に夜10時から深夜2時の間は「髪のゴールデンタイム」とも呼ばれ、この時間帯に深い睡眠をとることが理想的です。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低かったりすると、髪の成長が妨げられ、髪が細くなったり、ハリ・コシが失われたりする原因になります。
また、強いストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させます。これにより頭皮への血流が悪化し、髪の毛根に十分な栄養が届かなくなります。
適度な運動や趣味の時間を取り入れ、リラックスできる時間を作り、ストレスを上手に管理することも、健康な髪を保つために必要です。
今すぐ実践!ぺたんこ髪ボリュームアップ術(スタイリング編)
根本的な体質改善やヘアケアには時間がかかりますが、スタイリングを工夫するだけで、ぺたんこ髪の印象は大きく変えられます。
ここでは、すぐに取り入れられるボリュームアップのためのテクニックを紹介します。朝の数分で、自信の持てるヘアスタイルを目指しましょう。
根元を立ち上げるドライヤーテクニック
前述の通り、ドライヤーのかけ方はボリュームアップの鍵を握ります。最も重要なのは「根元を乾かす」ことと「毛流れに逆らう」ことです。 まず、分け目とは逆方向からドライヤーの風を当てます。
例えば、いつも右側で分けているなら、左側から髪全体を右に流すように乾かします。次に、頭を下に向けて、髪の毛が重力に逆らうように上から(後頭部からおでこに向かって)風を当てます。
この時、指の腹を頭皮につけ、軽くこするようにしながら根元を乾かすと、より効果的に立ち上がります。
最後に、スタイルを整えたい方向に髪を戻し、冷風でキープさせます。このひと手間で、根元の立ち上がりが格段に変わります。
ボリュームアップ向けスタイリング剤の選び方
ぺたんこ髪の方がスタイリング剤を選ぶ際は、「軽さ」と「キープ力」がポイントです。重いオイルやベタつくワックスは、髪の重みでせっかく立ち上げた根元を潰してしまう可能性があります。
- ドライワックス
- クレイワックス
- ヘアスプレー
- ヘアムース(フォーム)
ドライワックスやクレイワックスは油分が少なく、軽い質感でマットに仕上がるため、軟毛や細毛の方でもボリュームを出しやすいです。
ヘアスプレーは、作ったスタイルを固定するために仕上げに使用します。ヘアムースは水分とガスで泡状になっており、濡れた髪になじませてから乾かすと、自然なハリとボリュームを与えてくれます。
ボリュームアップ向けスタイリング剤
| 種類 | 特徴 | おすすめの使い方 |
|---|---|---|
| ドライワックス | 油分が少なく軽い。マットな質感。 | 根元中心につけ、毛束感を出しながら立ち上げる |
| クレイワックス | セット力・キープ力が高い。非常にマット。 | 少量を指先に取り、根元から毛先まで馴染ませる |
| ヘアスプレー | スタイルを固定する。ハードタイプがおすすめ。 | ドライヤーで形を作った後、全体に軽く吹きかける |
スタイリング剤の正しい付け方
スタイリング剤を付ける際、多くの人がやりがちな間違いは、髪の表面にだけ付けてしまうことです。ぺたんこ髪の方がボリュームを出すには、髪の「内側」と「根元」に付けることが重要です。
ワックスの場合、まず少量を手のひら全体、指の間まで薄く均一に伸ばします。その後、髪の内側から手ぐしを通すように、根元付近から毛先に向かってなじませます。
トップ(頭頂部)の髪は、下から持ち上げるようにつかみながらワックスを付けます。この時、頭皮に直接付けないように注意しましょう。
最後に、指先に残ったワックスで毛先の流れや束感を整えます。付けすぎは重さの原因になるため、必ず少量から試しましょう。
根本から考えるぺたんこ髪対策(頭皮ケア・インナーケア編)
スタイリングによる一時的なボリュームアップも大切ですが、長期的にぺたんこ髪に悩まないためには、髪が生える土台である「頭皮」と、髪の材料を供給する「体」のケアが重要です。
ここでは、根本的な改善を目指すためのケア方法を紹介します。
頭皮クレンジングとマッサージ
通常のシャンプーだけでは落としきれない毛穴の奥の皮脂汚れや、古くなった角質が蓄積すると、健康な髪の成長を妨げ、ボリュームダウンの原因となります。
週に1〜2回、専用の頭皮クレンジング剤(スカルプクレンザー)を使って、毛穴の大掃除をするのも一つの方法です。
また、頭皮マッサージは血行を促進し、毛根に栄養を届きやすくする効果が期待できます。
シャンプー中や、お風呂上がりのリラックスしたタイミングで、指の腹を使って頭皮全体を優しく動かすようにマッサージしましょう。側頭部、頭頂部、後頭部と、場所を分けて丁寧に行います。
強くこすりすぎず、心地よい圧でリズミカルに行うのがコツです。
育毛剤・発毛剤の活用
ぺたんこ髪の原因が、髪のハリ・コシの低下や、薄毛の初期症状である場合、育毛剤や発毛剤の使用を検討するのも良いでしょう。
育毛剤(医薬部外品)は、主に頭皮環境を整え、血行を促進し、今生えている髪を健康に育てること(育毛)や、抜け毛を防ぐこと(予防)を目的としています。
一方、発毛剤(第一類医薬品)は、毛母細胞に働きかけ、新しい髪を生やし、髪を太く成長させること(発毛)を目的としています。
自分の悩みが「予防・育毛」なのか、「発毛」なのかによって選ぶべき製品が異なります。
特にAGAが疑われる場合は、ミノキシジルなどの発毛成分が配合された発毛剤が選択肢となりますが、使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
髪の成長をサポートする栄養素
健康な髪は、日々の食事から作られます。特に意識して摂取したい栄養素を知り、バランスの良い食生活を送りましょう。
髪の健康に必要な主な栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける、毛母細胞の分裂を促す | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、チーズ、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝(ターンオーバー)をサポート | 豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、バナナ |
これらの栄養素をバランス良く摂取することが、髪の土台を作る上で非常に重要です。サプリメントで補う方法もありますが、基本は毎日の食事から摂ることを心がけましょう。
適度な運動のすすめ
運動不足は、全身の血行不良を招きます。頭皮は毛細血管が多く集まる場所であり、血行が悪くなると真っ先に栄養不足の影響を受けやすい部位です。
ウォーキングやジョギング、ストレッチなどの有酸素運動を日常生活に取り入れることで、全身の血流が改善し、頭皮にも新鮮な酸素と栄養が届きやすくなります。
また、適度な運動はストレス解消にも役立ち、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。忙しい日々の中でも、少しの時間を見つけて体を動かす習慣をつけることが、健康な髪への近道となります。
それでも改善しない場合の選択肢
セルフケアを続けても、なかなかぺたんこ髪が改善しない、あるいは薄毛の進行が止まらないと感じる場合、他のアプローチを検討する必要があります。
一人で悩み続けず、専門家の力を借りることも賢明な判断です。
髪型(ヘアカット)でカバーする
最も手軽で即効性があるのが、ヘアカットによるカバーです。経験豊富な美容師に相談し、自分の髪質や毛流れ、骨格に合った、ボリュームが出やすい髪型を提案してもらいましょう。
例えば、トップにレイヤー(段)を入れて動きを出しやすくしたり、サイドや襟足を短く刈り上げてトップとの高低差をつけたりすることで、視覚的にトップのボリュームを多く見せることが可能です。
重すぎるロングヘアは、髪の重みでぺたんこになりやすいため、短めのスタイルの方がボリュームを出しやすい傾向があります。
パーマで根元の立ち上がりを作る
髪が細く柔らかい(軟毛)方や、直毛でどうしても根元が寝てしまう方には、パーマも有効な選択肢です。
全体に強いカールをかけるのではなく、トップの根元だけを立ち上げる「ポイントパーマ」や、ごく自然な毛流れを作る「ニュアンスパーマ」などがあります。
パーマをかけることで、髪にハリ・コシが生まれ、スタイリング剤を少し付けるだけで簡単にボリュームを出すことが可能になります。
ただし、髪にダメージを与える側面もあるため、信頼できる美容師とよく相談して決めることが大切です。
専門クリニックへの相談
ぺたんこ髪の原因がAGA(男性型脱毛症)の進行によるものである場合、セルフケアやヘアカットだけでは根本的な解決にはなりません。AGAは進行性のため、放置すれば症状は悪化していきます。
薄毛専門のクリニックでは、医師による詳細な診察のもと、医学的根拠に基づいた治療を受けることができます。
内服薬(フィナステリド、デュタステリドなど)でAGAの進行を抑制したり、外用薬(ミノキシジル)で発毛を促進したりするのが一般的な治療法です。
早期に治療を開始するほど、効果を実感しやすくなります。抜け毛の増加や髪の軟毛化が気になる場合は、一度専門医のカウンセリングを受けてみることを強くおすすめします。
男のぺたんこ髪に関するよくある質問
ここでは、男性のぺたんこ髪に関して多く寄せられる質問にお答えします。
- 帽子をよくかぶると髪がぺたんこになったり、薄毛になったりしますか?
-
帽子をかぶること自体が、直接的に薄毛の原因になることはありません。しかし、長時間帽子をかぶり続けることで頭皮が蒸れやすくなります。
高温多湿な環境は雑菌が繁殖しやすく、頭皮環境の悪化につながる可能性があります。また、帽子を脱いだ時に髪が潰れてぺたんこになるのは一時的なものです。
通気性の良い帽子を選び、室内では脱ぐ、汗をかいたらこまめに拭くなど、頭皮を清潔に保つことを心がければ、過度に心配する必要はありません。
- トリートメントやコンディショナーは使わない方がボリュームが出ますか?
-
いいえ、一概にそうとは言えません。トリートメントやコンディショナーは、髪のダメージを補修し、キューティクルを整えて指通りを良くする役割があります。
ダメージによるパサつきや広がりが原因でスタイルがまとまらない場合は、使用した方が良い結果になることもあります。
ただし、ぺたんこ髪の方が使用する場合、注意点があります。それは「頭皮につけないこと」と「しっかりすすぐこと」です。
根元や頭皮に油分が残ると、ベタつきや重さの原因となり、ボリュームダウンにつながります。毛先を中心に適量をつけ、ぬめり感がなくなるまでしっかりすすぎましょう。
- 育毛剤を使えば、髪にハリ・コシは戻りますか?
-
育毛剤(医薬部外品)の主な目的は、頭皮環境を健やかに保ち、血行を促進することで、抜け毛を予防し、今ある髪を健康に育てることです。
そのため、使い続けることで髪にハリやコシが出てきたと感じる可能性はあります。ただし、髪質が根本的に変わるわけではありません。
もし、ぺたんこ髪の原因がAGAによる軟毛化である場合は、育毛剤だけでは十分な効果が得られにくいことがあります。
その場合は、発毛効果が認められている発毛剤(第一類医薬品)の使用や、専門クリニックでの治療を検討する必要があります。
- 朝シャン(朝にシャンプーすること)は、ぺたんこ髪に悪いですか?
-
A. 朝シャンが直接的に悪いわけではありませんが、注意が必要です。夜寝ている間に分泌された皮脂をリセットし、清潔な状態で一日を始められるというメリットはあります。
しかし、時間がないからとシャンプーのすすぎが不十分になったり、ドライヤーでの乾燥が中途半端になったりすると、かえって頭皮トラブルやスタイルの崩れ(湿気によるぺたんこ)の原因になります。
また、一日に何度もシャンプーをすると、頭皮の必要な皮脂まで奪いすぎて乾燥を招くこともあります。
基本的には夜に一日の汚れをしっかり落とすことを推奨しますが、もし朝シャンをする場合は、すすぎと乾燥を徹底して行うことが重要です。
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