シャンプー中の排水溝に溜まる髪の毛を見て、「最近抜け毛が増えたかも…」と不安に感じていませんか。髪は毎日自然に生え変わっており、ある程度の抜け毛は誰にでもあります。
しかし、その「ある程度」とは具体的に何本なのでしょうか。
この記事では、シャンプー時の平均的な抜け毛本数を男女別・季節別で解説します。さらに、危険な抜け毛のサインや本数の目安、正しいヘアケア方法まで詳しくお伝えします。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
抜け毛はなぜ起こる?髪のヘアサイクル
毎日髪が抜けるのは、髪に「ヘアサイクル(毛周期)」という生え変わりの仕組みがあるためです。この仕組みを理解することが、抜け毛の不安を解消する第一歩となります。
髪が生え変わる仕組み「ヘアサイクル」とは
髪の毛は、一本一本が独立した寿命を持っています。頭皮にある毛穴の奥深くには「毛包」という組織があり、ここで髪の毛が作られます。
髪は「生える→成長する→成長が止まる→抜ける→再び生える準備をする」というサイクルを繰り返しており、これをヘアサイクルと呼びます。
このサイクルが正常に機能している限り、髪が抜けても新しい髪が生えてくるため、全体の毛量は維持されます。抜け毛は、このサイクルの一部であり、自然な現象なのです。
ヘアサイクルの「成長期」
ヘアサイクルの中で最も長い期間が「成長期」です。この時期、毛包の底にある「毛母細胞」が活発に細胞分裂を繰り返し、髪の毛が太く長く成長していきます。
男性で3年から5年、女性では4年から6年ほど続くとされ、頭髪全体の約85%から90%がこの成長期にあると言われます。この成長期が長ければ長いほど、髪は太く健康に育ちます。
ヘアサイクルの「退行期」と「休止期」
成長期が終わると、髪は「退行期」に入ります。これは約2週間から3週間の短い期間で、毛母細胞の分裂が停止し、髪の成長が止まります。毛包も徐々に小さくなっていきます。
頭髪全体の中では約1%程度がこの状態です。
退行期を終えた髪は、次に「休止期」に入ります。
この期間は約3ヶ月から4ヶ月続き、毛包は活動を完全に休止します。髪は頭皮にとどまっていますが、既に成長は止まっており、いつ抜けてもおかしくない状態です。
この休止期の髪が、ブラッシングやシャンプーなどの物理的な刺激によって自然に抜け落ちます。頭髪全体の約10%から15%がこの休止期にあたります。
抜け毛のほとんどは「休止期」の髪
私たちが日々目にする抜け毛のほとんどは、この「休止期」を終えた髪の毛です。休止期の毛穴の奥では、すでに次の新しい髪(成長期の髪)が育ち始めています。
そして、新しい髪が古い髪を押し出すようにして生えてくると、古い髪は抜け落ちます。したがって、ヘアサイクルが正常であれば、抜け毛は次の髪が育っている証拠でもあるのです。
1日の平均的な抜け毛本数
ヘアサイクルによって髪が抜けることは自然な現象ですが、では具体的に1日あたり何本くらいの抜け毛が「平均」なのでしょうか。
本数を把握することで、ご自身の状態を客観的に判断する材料になります。
健康な人でも毎日髪は抜けている
前述の通り、髪にはヘアサイクルがあり、一定の割合の髪(約10%から15%)が常に抜け落ちる準備段階である休止期にあります。日本人の髪の毛の総数は平均して約10万本と言われています。
このうちの10%が休止期であり、その休止期が約3ヶ月(約100日)続くと仮定すると、単純計算で1日に約100本の髪が抜けることになります。
もちろん個人差はありますが、健康な人であっても毎日一定量の髪は抜けているのです。
1日の抜け毛の平均は約50本から100本
一般的に、健康な成人の1日の抜け毛本数は、平均して約50本から100本程度とされています。この範囲内であれば、ヘアサイクルが正常に機能している証拠であり、特に心配する必要はありません。
季節や体調によって多少の変動はありますが、この本数を大きく逸脱しないかが一つの目安となります。
抜け毛の多くがシャンプー時に集中する理由
「1日に100本も抜けている実感はない」と感じる方も多いかもしれません。それは、抜け毛が1日の中で均等に抜けるわけではないからです。
1日の抜け毛のうち、最も多く抜けるのがシャンプー時です。シャンプー時には、髪を洗う動作やすすぎの際の水流によって、すでに休止期に入り抜け落ちる寸前だった髪の毛がまとめて洗い流されます。
そのため、排水溝に集まる髪の毛を見て驚くことがありますが、その多くは自然に抜けるはずだった髪です。シャンプー時の抜け毛は、1日の総抜け毛本数の約50%から70%を占めるとも言われます。
全体の抜け毛本数を把握する方法
正確な抜け毛本数を毎日数えるのは現実的ではありません。しかし、おおよその目安を知る方法はあります。例えば、シャンプー時に排水溝に溜まった髪の毛を集め、おおよその本数を数えてみます。
これを数日間続け、平均値を出してみましょう。
また、朝起きた時の枕元に落ちている髪の毛や、ブラッシングの際にブラシについた髪の毛の本数も合わせて確認すると、1日の抜け毛量のおおよその傾向をつかむことができます。
シャンプー時の抜け毛平均本数【男女別】
1日の抜け毛の多くがシャンプー時に集中することが分かりました。
では、シャンプー時の平均本数には、性別によって違いがあるのでしょうか。男女それぞれの目安について解説します。
男性のシャンプー時抜け毛平均
男性の場合、1日の抜け毛本数は平均50本から100本程度とされます。
そのうち、シャンプー時に抜けるのは約30本から60本程度が目安とされています。髪が短い男性の場合、抜け毛が目立ちにくいため、実際の本数よりも少なく感じることがあるかもしれません。
しかし、本数がこの範囲内であれば、過度に心配する必要はないでしょう。
女性のシャンプー時抜け毛平均
女性の場合も、1日の抜け毛本数の平均は男性と大きく変わらず、50本から100本程度です。したがって、シャンプー時には約30本から60本程度が平均的な目安となります。
ただし、女性は男性に比べて髪が長いことが多く、同じ本数でも抜け毛の束が大きく見えやすいため、実際の数よりも多く抜けていると錯覚しやすい傾向があります。
量感に惑わされず、冷静に本数を確認することが大切です。また、後述するように女性はホルモンバランスの影響で抜け毛が増減しやすい特徴もあります。
男女で抜け毛の本数に差が出る背景
基本的なヘアサイクルの仕組みは男女で同じですが、抜け毛の傾向や原因には性差が見られます。
平均本数自体に大きな差はありませんが、抜け毛の「質」や「原因」が異なる場合があります。
男性の抜け毛の特徴
男性の抜け毛で特に注意が必要なのは、男性ホルモンの影響によるものです。AGA(男性型脱毛症)の場合、ヘアサイクルの「成長期」が短縮され、髪が太く長く育つ前に抜けてしまいます。
これにより、抜け毛の中に細く短い毛が増える傾向があります。平均本数内であっても、抜け毛の質が変化してきた場合は注意が必要です。
女性の抜け毛の特徴
女性の抜け毛は、男性ホルモンの影響よりも、加齢、ストレス、生活習慣の乱れ、そして妊娠・出産や更年期といったライフイベントに伴うホルモンバランスの変動が大きく影響します。
特定の部位から薄くなるというより、頭髪全体が均等に薄くなる「びまん性脱毛症」が多いのが特徴です。
年齢による抜け毛本数の変化
抜け毛の本数は、年齢によっても変化します。一般的に、加齢とともにヘアサイクルは徐々に変化し、成長期が短くなったり、休止期にとどまる毛包が増えたりする傾向があります。
年代別に見る一般的な抜け毛傾向
| 年代 | 男性の傾向 | 女性の傾向 |
|---|---|---|
| 20代 | ヘアサイクルが活発で安定していることが多い。 | 比較的安定。ただし生活習慣の乱れに注意。 |
| 30代 | 人によっては抜け毛の増加や髪質の変化を感じ始める。 | 出産や育児によるホルモン変動やストレスで一時的に増えることも。 |
| 40代以降 | AGAの影響が出やすくなり、抜け毛が増加傾向になる場合がある。 | 更年期に近づくと女性ホルモンの減少で髪が細くなり抜け毛が増える傾向。 |
これらの傾向はあくまで一般的であり、個人差が大きいです。年齢とともに多少抜け毛が増えること自体は自然な変化とも言えますが、急激な増加には注意しましょう。
危険な抜け毛の本数と見分け方
平均本数が分かると、次に気になるのが「何本からが危険なのか」というラインです。本数だけでなく、抜け毛の「質」にも注目することが重要です。
シャンプー時に何本から危険?
シャンプー時の抜け毛が連日100本を超えるようであれば、注意が必要なサインかもしれません。
1日の抜け毛本数が50本から100本であり、その多くがシャンプー時に抜けると考えると、シャンプーだけで100本を超え、さらに枕元やブラッシングでも多くの毛が抜ける場合、1日の総数が150本や200本に達している可能性があります。
これは、ヘアサイクルが何らかの原因で乱れ、成長期が短縮したり、休止期に入る髪が通常より増えたりしている可能性を示唆します。
ただし、これはあくまで目安です。例えば、2日に1回しかシャンプーしない人の場合、2日分の抜け毛がまとめて洗い流されるため、1回のシャンプーで100本を超えても正常範囲内である可能性が高いです。
ご自身のシャンプーの頻度も考慮して判断してください。
本数以外で注意すべき抜け毛のサイン
抜け毛の本数が平均範囲内であっても、安心してはいけません。以下のような「抜け毛の質」の変化は、本数以上に重要な危険信号となることがあります。
抜け毛の「質」をチェック
健康なヘアサイクルで抜けた休止期の髪の毛は、ある程度の太さと長さがあり、毛根部分が白く丸みを帯びているのが特徴です。
しかし、ヘアサイクルが乱れて成長途中で抜けてしまった髪は、細く、短く、毛根が未発達でギザギザしていたり、皮脂が付着していたりすることがあります。
細く短い髪の毛が増えていないか
抜け毛全体の中に、明らかに細くてコシのない髪や、短いまま抜けてしまった髪の割合が増えてきた場合、それは成長期が短くなっているサインかもしれません。
特に男性のAGAではこの傾向が顕著に見られます。髪が十分に成長する前に抜けてしまうサイクルが繰り返されると、徐々に薄毛が進行していきます。
毛根の形を確認する
抜け毛の毛根部分を観察することも大切です。毛根の状態は、頭皮や髪の健康状態を反映しています。
毛根の状態で見る健康度
| 毛根の状態 | 健康度 | 考えられる状況 |
|---|---|---|
| 白く丸みがあり、マッチ棒の先端のよう | 良好 | 自然なヘアサイクル(休止期)で抜けた毛。 |
| 毛根がない、または細く尖っている | 注意 | 成長途中で何らかのダメージにより抜けた可能性。 |
| 毛根に皮脂やフケが付着し、べたついている | 要注意 | 頭皮環境の悪化。脂漏性皮膚炎などの可能性も。 |
毛根の状態が「注意」や「要注意」に当てはまる抜け毛が多い場合は、頭皮環境の改善やヘアケアの見直しが必要です。
急激な抜け毛の増加は要注意
これまでシャンプー時に50本程度だったのが、急に100本を超える日が続くようになった、というような「急激な変化」は、特に注意が必要です。
季節の変わり目などで一時的に増えることもありますが、それが2ヶ月以上続く場合は、ストレス、栄養不足、睡眠不足、あるいは何らかの疾患など、明確な原因が隠れている可能性があります。
抜け毛と薄毛の違いとは
「抜け毛」は髪が抜けるという現象そのものを指します。これはヘアサイクルの一部であり、誰にでも起こります。
「薄毛」とは、この抜け毛の量が新しい髪の成長量を上回る状態が続き、結果として髪の密度が低下したり、地肌が透けて見えたりする状態を指します。
つまり、抜け毛が増えること自体が問題なのではなく、「抜ける量>生える量」のバランスが崩れることが薄毛につながるのです。
危険な抜け毛は、まさにこのバランスが崩れ始めているサインと言えます。
抜け毛が増える季節や主な要因
抜け毛の本数は一定ではなく、季節や日々の生活習慣によっても変動します。ご自身の抜け毛が多いと感じる時期や状況と照らし合わせてみましょう。
季節による抜け毛本数の変動
一年を通して見ると、抜け毛には季節変動があることが知られています。特に抜け毛が増えやすいとされる季節があります。
抜け毛が増えやすい「秋」
一般的に、抜け毛は「秋」(9月から11月頃)に最も多くなると言われます。この時期には、平均本数の1.5倍から2倍近くに増加することもあるとされます。
これは一時的な現象であり、ヘアサイクルが正常であれば冬になれば落ち着いてきます。秋に抜け毛が増えても、細く短い毛でなければ、過度に心配する必要はありません。
夏のダメージが秋に出る理由
秋に抜け毛が増える主な理由の一つに、夏の間に受けたダメージの蓄積が挙げられます。夏場の強い紫外線は、頭皮に炎症や乾燥を引き起こし、毛母細胞の働きを弱めます。
また、汗や皮脂の過剰な分泌による頭皮環境の悪化、冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎによる血行不良なども影響します。
これらのダメージがヘアサイクルに影響を与え、数ヶ月後の秋になって休止期に入る髪が増えると考えられています。動物が冬毛に生え変わる換毛期の名残であるという説もあります。
生活習慣の乱れと抜け毛
髪の健康は、全身の健康状態と密接に関連しています。日々の生活習慣が乱れると、頭皮環境やヘアサイクルに悪影響を及ぼし、抜け毛の増加につながります。
ストレスの影響
過度な精神的ストレスは、自律神経のバランスを乱します。自律神経は血管の収縮や拡張をコントロールしており、バランスが乱れると頭皮の血行が悪化しやすくなります。
血行不良になると、髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛母細胞に十分に行き渡らなくなり、髪の成長が妨げられ、抜け毛が増える原因となります。
睡眠不足の影響
髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。
特に、入眠後の深いノンレム睡眠の間に多く分泌されるため、睡眠不足が続いたり、睡眠の質が悪かったりすると、成長ホルモンの分泌が不足します。
これにより、毛母細胞の分裂が滞り、健康な髪が育ちにくくなり、抜け毛や細毛の原因となります。
食生活の偏り
髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。特定の食品ばかり食べる、あるいは過度なダイエットで食事量を減らすなど、食生活が偏ると、髪の成長に必要な栄養素が不足します。
髪の健康に必要な栄養素例
| 栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 |
|---|---|---|
| たんぱく質(アミノ酸) | 髪の主成分(ケラチン)の材料となる。 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | たんぱく質をケラチンに合成する際に必要。 | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促し、皮脂の分泌を調整する。 | 豚肉、レバー、マグロ、カツオ、バナナ、卵 |
これらの栄養素が不足すると、健康な髪を作ることができず、抜け毛の増加につながります。
ホルモンバランスの変化
ホルモンバランスの変化も抜け毛に大きく影響します。
男性の場合は、テストステロンが還元酵素(5αリダクターゼ)と結びつくことで生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が、毛母細胞の働きを抑制し、成長期を短縮させることがAGAの主な原因です。
女性の場合は、妊娠・出産後に女性ホルモンが急激に減少することで一時的に抜け毛が増える(産後脱毛症)ことや、更年期に女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まることで抜け毛が増えることがあります。
誤ったヘアケア
日々のヘアケアが頭皮にダメージを与えている場合もあります。洗浄力の強すぎるシャンプーで必要な皮脂まで奪いすぎると、頭皮が乾燥したり、逆に皮脂が過剰に分泌されたりして環境が悪化します。
また、爪を立ててゴシゴシ洗う、すすぎ残しがある、熱すぎるお湯で洗うといった行為も、頭皮を傷つけたり乾燥させたりする原因となり、抜け毛を助長する可能性があります。
抜け毛が気になるときの正しいシャンプー方法
抜け毛の多くがシャンプー時に起こるからといって、シャンプーを控えるのは逆効果です。頭皮を不潔にすると、かえって頭皮環境が悪化し、抜け毛が増える原因になります。
大切なのは、頭皮への負担を最小限に抑え、汚れだけをしっかり落とす「正しいシャンプー方法」を実践することです。
シャンプー前のブラッシングの重要性
シャンプー前には、まず乾いた髪の状態でブラッシングをしましょう。これにより、髪のもつれをほどき、髪や頭皮に付着したホコリやフケを大まかに浮かせることができます。
汚れが落ちやすくなるため、シャンプー時の泡立ちが良くなり、ゴシゴシ洗いを防ぐことにもつながります。また、頭皮への適度な刺激が血行を促進する効果も期待できます。
頭皮と髪をしっかり予洗いする
シャンプー剤をつける前に、38度程度のぬるま湯で頭皮と髪を1分から2分ほどかけて十分に濡らし、洗い流します。これを「予洗い(湯シャン)」と呼びます。
実は、髪の汚れの約7割から8割は、この予洗いだけで落ちると言われています。予洗いをしっかり行うことで、使用するシャンプー剤の量を減らすことができ、頭皮への負担を軽減できます。
また、髪全体に水分が行き渡ることで、シャンプーの泡立ちも格段に良くなります。
シャンプーは泡立ててから髪につける
シャンプー剤を原液のまま直接頭皮につけると、その部分だけ濃度が高くなり、刺激になったり、すすぎ残しの原因になったりします。
シャンプーは必ず手のひらに適量を取り、少量のお湯を加えながら両手で軽くなじませ、よく泡立ててから髪全体につけていきましょう。泡立てるのが苦手な方は、泡立てネットを使用するのも良い方法です。
指の腹で頭皮をマッサージするように洗う
シャンプーの目的は「髪を洗う」ことよりも「頭皮を洗う」ことです。泡立てたシャンプーを髪全体になじませたら、爪を立てず、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗います。
洗い方のポイント
- 爪を立てず、指の腹を使う
- 力を入れすぎず、頭皮を動かすイメージで
- 生え際から頭頂部へ、襟足から頭頂部へと、下から上に向かって洗う
特に、皮脂の分泌が多い頭頂部や生え際は丁寧に洗いましょう。髪の毛自体は、泡が全体に行き渡れば、こすり合わせなくても汚れは落ちます。
むしろ、髪同士をこすると摩擦でキューティクルが傷む原因になるため、泡で頭皮を洗うことを意識してください。
すすぎ残しがないように徹底的に洗い流す
シャンプーで最も重要なのが「すすぎ」です。シャンプー剤やコンディショナーが頭皮に残っていると、毛穴詰まりや炎症、かゆみ、フケの原因となり、頭皮環境を悪化させ、抜け毛につながります。
洗う時にかけた時間の2倍から3倍の時間を目安に、ぬるま湯で徹底的に洗い流しましょう。特に、すすぎ残しやすい生え際、耳の後ろ、襟足は意識してしっかりすすぐことが大切です。
「もう十分かな」と思ってから、さらに30秒ほどすすぐくらいが丁度良いでしょう。
シャンプー後の乾燥と保湿
シャンプー後は、濡れた髪を放置してはいけません。濡れた状態が続くと雑菌が繁殖しやすくなり、頭皮トラブルの原因になります。
また、髪は濡れているとキューティクルが開いてダメージを受けやすい状態です。
シャンプー後のケア手順
| 手順 | ポイント | 目的 |
|---|---|---|
| タオルドライ | 清潔なタオルで頭皮の水分を吸い取り、髪は優しく押さえるように拭く。 | 摩擦によるダメージを防ぎ、ドライヤーの時間を短縮する。 |
| ドライヤー | 頭皮から約20cm離し、まず頭皮(根元)から乾かす。温風と冷風を使い分ける。 | 頭皮の雑菌繁殖を防ぎ、髪のオーバードライを防ぐ。 |
| 保湿 | 頭皮が完全に乾いたら、必要に応じて頭皮用のローションやエッセンスで保湿する。 | 乾燥によるかゆみやフケ、過剰な皮脂分泌を防ぐ。 |
正しいシャンプー方法を実践することで、頭皮環境は大きく改善されます。抜け毛が気になる方こそ、日々のシャンプーを見直してみてください。
シャンプー以外でできる抜け毛対策
抜け毛対策は、シャンプーだけではありません。頭皮環境を健やかに保ち、髪の成長をサポートするためには、体の内側と外側からの総合的なアプローチが重要です。
日常生活で取り入れられる対策を紹介します。
バランスの取れた食生活を心がける
髪は「血余(けつよ)」とも呼ばれ、東洋医学では血液(栄養)が余った分で髪が作られると考えられています。まずは、健康な髪の材料となる栄養をしっかり摂取することが基本です。
特定の栄養素だけを偏って摂るのではなく、主食・主菜・副菜をそろえ、バランスの良い食事を心がけましょう。
特に、髪の主成分である「たんぱく質」、それを助ける「亜鉛」、頭皮環境を整える「ビタミンB群」、血行を促進する「ビタミンE」などを意識して摂取することが望ましいです。
質の良い睡眠を確保する
髪の成長を促す成長ホルモンは、深い睡眠中に最も多く分泌されます。単に長く寝るだけでなく、「睡眠の質」を高めることが重要です。
毎日決まった時間に寝起きする、寝る直前のスマートフォンやパソコン操作を避ける、カフェインやアルコールの摂取を控えるなど、リラックスして深い眠りに入れる環境を整えましょう。
最低でも6時間から7時間の睡眠時間を確保するよう努めてください。
ストレスを上手に発散する
現代社会でストレスをゼロにすることは難しいですが、溜め込まないように工夫することは可能です。ストレスは自律神経を乱し、頭皮の血行不良を招きます。
自分に合った方法でこまめにストレスを発散させることが、結果として抜け毛対策にもつながります。
ストレス発散の例
- ウォーキングやジョギングなどの適度な運動
- 読書や音楽鑑賞など、集中できる趣味の時間を持つ
- ぬるめのお湯にゆっくり浸かるリラックスできる入浴
自分が「心地よい」と感じる時間を作ることが大切です。
頭皮マッサージを取り入れる
頭皮の血行は、髪の成長に直結します。特に頭頂部は血管が少なく、血行不良になりやすい部位です。
シャンプー時や、リラックスタイムなどに、指の腹を使った頭皮マッサージを取り入れ、頭皮を柔らかく保ち、血流を促しましょう。
頭皮マッサージの簡単な方法
| 部位 | 方法 | 目安時間 |
|---|---|---|
| 側頭部(耳の上) | 両手の指の腹を当て、円を描くようにゆっくり回しながらほぐす。 | 各30秒程度 |
| 頭頂部 | 両手の指の腹で、頭皮全体を優しく掴むように押し込んだり離したりする。 | 各30秒程度 |
| 後頭部(襟足) | 両手の指を組み、親指の付け根あたりで襟足から頭頂部に向かって引き上げるように圧迫する。 | 各30秒程度 |
力を入れすぎず、心地よいと感じる強さで行うのがポイントです。毎日続けることで、頭皮環境の改善が期待できます。
育毛剤の使用を検討する
これらのセルフケアと並行して、頭皮環境を整え、発毛・育毛を促進する「育毛剤」の使用を検討するのも一つの方法です。
育毛剤には、頭皮の血行を促進する成分、毛母細胞の働きを活発にする成分、頭皮の炎症を抑える成分などが配合されています。
シャンプーで頭皮を清潔にした後、ドライヤーで乾かしてから使用するのが一般的です。自分の頭皮の状態や悩みに合った製品を選び、継続して使用することが重要です。
ただし、抜け毛が急激に増えた場合や、細く短い毛が明らかに増えている場合は、育毛剤だけで対処するのではなく、専門のクリニックに相談することも選択肢に入れましょう。
Q&A
最後に、シャンプー時の抜け毛に関してよく寄せられる質問についてお答えします。
- 抜け毛本数の数え方を教えてください
-
正確に数えるのは困難ですが、目安を知る方法はあります。シャンプーの際、排水溝に専用のネットやフィルターを設置し、シャンプーが終わった後にそこに溜まった髪の毛を回収します。
洗面器などに水を張り、その中で髪の毛をすすぎながら広げ、おおよその本数を数えます。
これを毎日行うのは大変ですので、例えば1週間のうち3日間だけ計測し、その平均値を見るなど、ご自身でルールを決めて定点観測するのがよいでしょう。
- 朝起きた時の枕元の抜け毛も数えるべきですか?
-
枕元の抜け毛の本数も、抜け毛の総量を把握する上で参考になります。
シャンプー時だけでなく、枕元や部屋に落ちている髪の毛が以前より明らかに増えたと感じる場合も、抜け毛の総量が増加しているサインと考えられます。
ただし、寝返りの多さや髪の長さによっても枕につく本数は変わるため、シャンプー時の本数と合わせて総合的に判断することが大切です。
- 抜け毛が減るシャンプーはありますか?
-
シャンプー剤自体に、抜け毛を直接減らす(ヘアサイクルを正常化させる)機能は医薬品でない限りありません。
ただし、「抜け毛が気になる方向け」のシャンプーは、頭皮環境を整えることを目的としています。
例えば、アミノ酸系などの低刺激な洗浄成分を使用し、頭皮の乾燥を防ぐもの、抗炎症成分でフケやかゆみを抑えるものなどです。
自分の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったシャンプーを選び、正しく洗うことで頭皮環境が改善され、結果として抜け毛が減る可能性はあります。
- 抜け毛が気になったらどこに相談すればよいですか?
-
セルフケアを続けても抜け毛が減らない、抜け毛が急激に増えた、細く短い毛が目立つ、地肌が透けて見えるようになってきたなど、明らかな異常や不安を感じる場合は、皮膚科またはAGA専門のクリニックに相談することをお勧めします。
専門医が頭皮の状態や抜け毛の原因を診断し、適切なアドバイスや治療法を提案してくれます。一人で悩み込まず、専門家の意見を聞くことも重要です。
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