抜け毛を見て「毛根が小さい」と感じたことはありませんか。普段あまり意識しない部分だけに、不安になる方も多いでしょう。
その小さな毛根は、もしかすると髪が十分に成長していないサインかもしれません。
この記事では、抜け毛の毛根が小さい理由、それがAGA(男性型脱毛症)とどう関係するのか、そして髪の健康状態について詳しく解説します。毛根の状態は、頭皮や髪の健康を知るための重要な手がかりです。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
抜け毛の毛根が小さいと感じる理由
シャンプーの後や朝起きた時、枕についた抜け毛を見て「毛根が小さい」と不安に感じた経験はありませんか。毛根は髪の根元にあるため、その状態は頭皮の健康を反映します。
まずは、正常な毛根と「小さい」と感じる毛根の違いについて理解を深めましょう。
正常な抜け毛の毛根とは
健康な状態の頭皮から自然に抜ける髪の毛(休止期毛)は、毛根の先端が丸く膨らんでいるのが特徴です。
この膨らんだ部分は「毛球」と呼ばれ、髪の毛を作り出す「毛母細胞」が存在していた場所です。正常なヘアサイクル(毛周期)を経て役目を終えた髪は、この毛球部がしっかりとした形で残っています。
色は白っぽいか、やや透明であることが多いです。マッチ棒の先端のように、根元がふっくらしている状態が、健康的な抜け毛の一つの目安です。
毛根が「小さい」とはどういう状態か
一方、毛根が「小さい」と感じる場合、それは正常な毛球の膨らみがほとんど見られない状態を指します。
抜け毛の先端が細く尖っていたり、まるで途中でちぎれたかのように細かったりする場合、それは髪が十分に成長しきる前に抜けてしまった可能性を示唆しています。
この状態の毛は、毛球部が未発達であるため、全体的に弱々しく、細いことが多いです。
これは、髪の「成長期」が何らかの理由で短縮され、髪が太く長く育つ前に「休止期」や「退行期」に入ってしまった証拠と考えられます。
毛根の大きさを確認する方法
抜け毛の毛根の状態を自分で確認するには、いくつかの簡単な方法があります。まず、抜けた髪の毛を白い紙やティッシュの上に置いてみてください。
背景が白いため、毛根の形状や色が見やすくなります。可能であれば、スマートフォンなどで写真を撮り、拡大してみるのも良い方法です。
また、指先で毛根部分をそっとつまんでみることで、膨らみの有無を触感で確かめることもできます。正常な毛根であれば、先端に小さな球状の感触があるはずです。
ただし、無理に引っ張った髪ではなく、自然に抜けた髪で確認することが重要です。
抜け毛の毛根状態の比較
| 状態 | 特徴 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 正常な毛根 | 先端が丸く膨らんでいる(毛球) | 正常なヘアサイクル(休止期毛) |
| 小さい毛根 | 先端が細い、膨らみがない | 成長期が短縮、髪が未発達 |
| 毛根に皮脂付着 | 白くネバネバした塊が付く | 脂性頭皮、皮脂の過剰分泌 |
小さな毛根が示すサインの概要
抜け毛の毛根が小さいという事実は、単に「毛が抜けた」という現象以上の、重要なサインを含んでいます。
それは、髪が育つための土壌である頭皮環境や、髪の成長サイクル自体に何らかの問題が発生している可能性が高いことを示しています。
特に、細くて短い毛、つまり「軟毛」の抜け毛が増え、その毛根が小さい場合は注意が必要です。
これは、本来太く長く成長すべき髪が、その途中で成長を止められてしまったことを意味し、薄毛の進行、特にAGA(男性型脱毛症)のサインである可能性も否定できません。
毛根が小さい抜け毛が発生する主な原因
毛根が小さい抜け毛、すなわち十分に成長していない髪が抜ける背景には、複数の原因が関わっています。
これらは単独で起こることもあれば、複合的に影響し合っている場合もあります。ご自身の生活習慣や頭皮の状態と照らし合わせながら、原因を探ることが対策の第一歩です。
ヘアサイクルの乱れと成長期短縮
髪の毛には一本一本に寿命があり、「成長期(髪が成長する期間)」「退行期(成長が止まる期間)」「休止期(髪が抜け落ちる準備期間)」というサイクルを繰り返しています。
これをヘアサイクル(毛周期)と呼びます。健康な髪の場合、成長期は2年から6年程度続きますが、何らかの原因でこの成長期が短縮されると、髪は太く長く成長する十分な時間を得られません。
結果として、まだ細く短い「軟毛」の段階で成長が止まり、やがて抜け落ちてしまいます。この未熟な髪の毛根は、当然ながら小さく、膨らみも乏しくなります。
ヘアサイクルの各段階
| 段階 | 期間(目安) | 髪の状態 |
|---|---|---|
| 成長期 | 2年~6年 | 毛母細胞が活発に分裂し、髪が太く長く成長する。 |
| 退行期 | 約2週間 | 毛母細胞の分裂が止まり、毛球が小さく縮小し始める。 |
| 休止期 | 約3~4ヶ月 | 髪の成長は完全に停止。毛根は浅くなり、次の成長期毛によって押し出され脱毛する。 |
AGA(男性型脱毛症)の進行
男性の薄毛の多くを占めるAGA(男性型脱毛症)は、このヘアサイクルの乱れ、特に成長期の短縮を引き起こす主要な原因です。
AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、特定の酵素(5αリダクターゼ)と結びついて「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されることが引き金となります。
このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、髪の成長を抑制する信号が発せられ、成長期が極端に短縮されます。通常なら数年続くはずの成長期が、数ヶ月から1年程度になってしまうのです。
その結果、髪は太く成長できず、小さく未熟な毛根を持つ細い毛ばかりが増え、全体として薄毛が進行します。
頭皮環境の悪化(血行不良・栄養不足)
髪の成長には、毛根部にある毛母細胞が活発に活動するための栄養素が必要です。これらの栄養素は、頭皮の毛細血管を通じて血液によって運ばれます。
しかし、頭皮が硬くなっていたり、血行が悪くなっていたりすると、毛母細胞へ十分な酸素や栄養が届きません。栄養不足に陥った毛母細胞は活動が鈍くなり、健康な髪を作り出すことが困難になります。
その結果、成長途中のような細い髪しか生えなくなり、抜け毛の毛根も小さくなります。頭皮の血行不良は、睡眠不足や運動不足、喫煙なども原因となります。
ストレスや生活習慣の影響
過度なストレスは、自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させることで頭皮の血行不良を招きます。また、不規則な生活や睡眠不足は、髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げます。
偏った食生活、特に脂っこい食事やインスタント食品の多い食生活は、皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させるだけでなく、髪の成長に必要なビタミンやミネラル、タンパク質の不足にもつながります。
これらの生活習慣の乱れが複合的に作用し、ヘアサイクルを乱し、結果として毛根の小さい抜け毛を増やす原因となります。
小さな毛根とAGA(男性型脱毛症)の関係性
抜け毛の毛根が小さいという現象は、AGA(男性型脱毛症)と非常に深い関係があります。
AGAは進行性の脱毛症であり、その特徴的な症状の一つが「毛髪の軟毛化(細く短い毛が増えること)」です。この軟毛化した髪の毛根は、例外なく小さい状態になっています。
AGAが毛根に与える影響
前述の通り、AGAはジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭細胞に作用することで発症します。
DHTからの「成長を止めろ」という指令を受け取ると、髪の毛を作り出す工場である毛母細胞の活動が強制的に抑制されます。活発に細胞分裂を行っていた毛球部(毛根の膨らんだ部分)は縮小を始めます。
これは、本来の寿命を全うする前の「退行期」への早期移行を意味します。髪の成長がストップし、毛球が小さくなるため、その結果として抜ける毛の毛根も小さくなるのです。
成長期が短くなるとなぜ毛根が小さいか
髪の毛は、成長期に毛母細胞が分裂を繰り返すことで太く長く成長します。
毛根の膨らみ(毛球)は、まさにこの活発な細胞分裂が行われている場所であり、成長期が長ければ長いほど、毛球も大きく発達し、髪全体もしっかりと太くなります。
しかし、AGAによって成長期が例えば「3年」から「半年」に短縮された場合、毛母細胞が分裂できる期間も大幅に短縮されます。十分な細胞分裂が行われないため、毛球は大きく発達することができません。
未熟な状態で成長期を終えてしまうため、毛根は小さく、髪も細いままになってしまうのです。
小さな毛根以外のAGAの初期症状
毛根が小さい抜け毛が増えることはAGAのサインの一つですが、他にも注意すべき初期症状があります。
これらのサインが複数当てはまる場合、AGAの可能性がより高まります。早期に気づくことが、対策を講じる上で非常に重要です。
AGAの初期症状セルフチェック
| チェック項目 | 詳細 |
|---|---|
| 生え際の後退 | 以前よりもおでこが広くなったと感じる。M字部分の剃り込みが深くなった。 |
| 頭頂部の地肌透け | つむじ周りの髪が細くなり、地肌が目立つようになった。 |
| 髪のハリ・コシ低下 | 髪全体にボリュームがなくなり、スタイリングがまとまりにくくなった。 |
| 抜け毛の質(細い毛) | 太く長い毛よりも、細く短い(軟毛)抜け毛が目立つようになった。 |
AGAかどうかを自己判断する危険性
「抜け毛の毛根が小さい」「生え際が後退してきた」といった症状から「自分はAGAかもしれない」と推測することは可能です。
しかし、自己判断だけで対策を進めることには危険が伴います。例えば、抜け毛の原因がAGAではなく、過度なストレスや他の皮膚疾患(脂漏性皮膚炎など)である可能性もあります。
原因が異なれば、当然、有効な対策も異なります。AGAだと思い込み、市販の育毛剤などを使用しても、原因が違えば期待する効果は得られません。
また、AGAは進行性であるため、間違った自己流のケアを続けている間に症状が悪化してしまう恐れもあります。正確な状態を把握するためには、専門家の診断を受けることが賢明です。
毛根が小さい=髪が育っていない証拠?
結論から言えば、抜け毛の毛根が小さい状態は、その髪が十分に育っていない、あるいは育つことができなかった証拠である可能性が非常に高いです。
髪の成長は毛根部の健康状態と密接にリンクしており、毛根の小ささはその成長が未熟であったことを物語っています。
髪の成長と毛根(毛球)の役割
髪の毛の根元、皮膚の内部にある毛根の一番深い部分を「毛球」と呼びます。この毛球内部には、髪の毛の「種」とも言える「毛乳頭」と、それを取り囲む「毛母細胞」が存在します。
毛乳頭が毛細血管から栄養素や酸素を受け取り、毛母細胞に「髪を作れ」という指令を出します。
指令を受けた毛母細胞は活発に細胞分裂を繰り返し、分裂した細胞が角化(ケラチン化)して上へ上へと押し上げられることで、私たちが目にする「髪の毛」となります。
つまり、毛球は髪の毛の製造工場であり、この工場が活発に稼働している(=成長期である)証拠が、毛球の大きな膨らみです。毛根が小さいということは、この工場が十分に稼働しなかったことを意味します。
軟毛(うぶ毛)のような抜け毛の増加
毛根が小さい抜け毛をよく観察すると、その多くが太くしっかりした「硬毛」ではなく、細く頼りない「軟毛(うぶ毛)」であることがわかります。
これは、AGAやその他の原因によってヘアサイクルの成長期が短縮された結果、髪が太く成長する前に抜け落ちてしまった典型的な例です。
健康な頭皮でも軟毛は存在しますが、抜け毛全体に占める軟毛の割合が目立って増えてきた場合は、髪が正常に育っていないサインと捉えるべきです。
特に、以前は太い毛が生えていた生え際や頭頂部でこの現象が見られる場合、注意が必要です。
毛根が小さい毛の割合と薄毛の進行度
抜け毛の中に、毛根が小さい(または毛根がほとんどないような)軟毛がどれくらいの割合で含まれているかは、薄毛の進行度を測る一つのバロメーターになります。
例えば、抜け毛のほとんどが毛球のしっかりした太い毛であれば、それは単なる生理的な生え変わり(休止期毛)である可能性が高いです。
しかし、抜け毛の半分以上が細く短い軟毛で、毛根が小さいもので占められるようになってきたら、それはヘアサイクルが深刻に乱れ、髪が育たない状態が常態化しつつあることを示しています。
この割合が高いほど、薄毛が進行していると考えられます。
髪が育たない状態を放置するリスク
毛根が小さい抜け毛、すなわち髪が育たない状態を「一時的なものだろう」と放置することには大きなリスクが伴います。
もしその原因がAGAであった場合、AGAは進行性であるため、放置すればするほど成長期は短くなり続け、軟毛の割合はさらに増えていきます。
最終的には、毛母細胞を生み出す組織(毛包)自体が小さく退縮(ミニチュア化)してしまい、髪の毛がほとんど生えてこない状態になる可能性もあります。
一度退縮してしまった毛包を元の状態に戻すことは非常に困難です。そのため、髪が育っていないサインに気づいた時点で、早めに対策を講じることが、将来の髪を守るために極めて重要です。
毛根の状態からわかる他の頭皮トラブル
抜け毛の毛根をチェックすることは、AGAのサインだけでなく、他の頭皮トラブルを発見する手がかりにもなります。
毛根の大きさ以外にも、付着物や形状、色などに注目してみましょう。これらは頭皮の健康状態を映し出す鏡です。
毛根に皮脂が付着している場合
抜け毛の毛根部分に、白くネバネバとした半透明の塊が付着していることがあります。これは多くの場合、毛穴に詰まっていた皮脂や古い角質です。
適度な皮脂は頭皮を守るために必要ですが、このような塊が付着している場合、皮脂が過剰に分泌されている可能性を示します。
皮脂が多すぎると毛穴を塞ぎ、炎症(脂漏性皮膚炎)を引き起こしたり、雑菌の温床になったりして頭皮環境が悪化します。これは結果として髪の成長を妨げ、抜け毛の原因にもなります。
脂っこい食事の多い人や、シャンプーが不十分な人に見られがちです。
毛根の形がいびつな場合
正常な休止期毛の毛根は丸い棍棒のような形をしていますが、毛根の形が歪んでいたり、ギザギザしていたり、毛根自体が見当たらない場合は注意が必要です。
これは、成長期の髪が何らかの外的要因で無理やり引き抜かれた(牽引性脱毛症)か、あるいは円形脱毛症の初期段階である可能性を示します。
円形脱毛症の場合、毛根部がダメージを受けていびつな形(萎縮毛)になることがあります。また、過度なストレスが原因で髪が抜ける場合も、毛根が未熟なまま抜けることがあります。
毛根が黒い・白い場合の違い
正常な休止期毛(自然な抜け毛)の毛根は、メラニン色素の生成が止まっているため、白いか半透明です。
一方、まだ成長期にある髪が何らかの理由で抜けた場合、毛根部(毛球)にメラニン色素が残っているため、黒く見えることがあります。
成長期の髪が抜けるのは、頭皮環境が極端に悪いか、AGAが進行しているか、あるいは強いストレスなどが原因である可能性が考えられます。
ただし、毛根に黒いものが付着している場合、単純に汚れや皮脂の酸化であることもあります。白い毛根でも、皮脂の塊で白く見えている場合(前述)とは区別が必要です。
毛根の状態と推定される頭皮トラブル
| 毛根の状態 | 考えられる主な原因 | 頭皮の状態 |
|---|---|---|
| 小さい・細い | ヘアサイクルの短縮(AGAなど) | 髪が育ちにくい環境 |
| 白い皮脂が付着 | 皮脂の過剰分泌、洗浄不足 | 脂性、毛穴詰まり、脂漏性皮膚炎の可能性 |
| 形がいびつ・萎縮 | 円形脱毛症、強いストレス | 毛球部へのダメージ |
小さな毛根の抜け毛を減らすための対策
毛根が小さい抜け毛、すなわち髪が十分に育っていないサインに気づいたら、早急に対策を始めることが重要です。頭皮環境を整え、ヘアサイクルを正常化させることが目標となります。
まずはご自身でできるセルフケアから見直していきましょう。
まず行うべきセルフケアの見直し
日々の生活習慣が頭皮環境やヘアサイクルに与える影響は非常に大きいです。髪が育ちにくい状態は、生活の乱れが原因であることも少なくありません。特に睡眠は重要です。
髪の成長を促す「成長ホルモン」は、主に就寝中に分泌されます。質の良い睡眠を十分にとるよう心がけましょう。また、適度な運動は全身の血行を促進し、頭皮への血流改善にもつながります。
ストレスを溜めないよう、自分なりのリラックス方法を見つけることも大切です。
生活習慣の見直しポイント
- 十分な睡眠時間の確保(6~8時間目安)
- バランスの取れた食事
- 適度な有酸素運動(ウォーキングなど)
- 禁煙・節度ある飲酒
食生活の改善と栄養バランス
髪の毛は主に「ケラチン」というタンパク質からできています。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)の摂取は不可欠です。
また、タンパク質を髪の毛に合成するのを助ける「亜鉛」(牡蠣、レバー、ナッツ類など)や、頭皮の血行を促進し、新陳代謝を活発にする「ビタミン類」(緑黄色野菜、果物、玄米など)も重要です。
偏った食事や過度なダイエットは、髪に必要な栄養素が届かなくなる直接的な原因となります。
髪の成長に重要な栄養素
| 栄養素 | 主な役割 | 多く含む食品例 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分(ケラチン)の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉(赤身) |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝を促す | 豚肉、レバー、マグロ、納豆 |
頭皮環境を整えるシャンプー方法
頭皮を清潔に保つことは基本ですが、洗いすぎや間違った洗い方は逆効果になります。シャンプーは1日1回、夜に行うのが理想です。
洗う際は、爪を立てずに指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗いましょう。シャンプー剤が頭皮に残ると、毛穴詰まりや炎症の原因になるため、すすぎは十分すぎるほど丁寧に行うことが大切です。
また、ご自身の頭皮タイプ(乾燥肌、脂性肌など)に合ったシャンプーを選ぶことも重要です。洗浄力が強すぎるものは、必要な皮脂まで奪い、頭皮を乾燥させてしまうことがあります。
育毛剤の活用と選び方
セルフケアと並行して、育毛剤の使用を検討するのも一つの方法です。
育毛剤は、主に「頭皮の血行促進」「毛母細胞の活性化」「皮脂の分泌抑制」「保湿」などを目的としており、髪が育ちやすい頭皮環境を整えるサポートをします。
毛根が小さい抜け毛が気になる場合、血行を促進し、毛根に栄養を届けるタイプの育毛剤が適している可能性があります。
育毛剤選びの視点
- 血行促進成分(センブリエキスなど)
- 抗炎症成分(グリチルリチン酸2Kなど)
- 保湿成分(ヒアルロン酸など)
ただし、育毛剤はあくまで「今ある髪を健康に育てる」ためのものであり、AGAの進行を直接的に止める「治療薬」とは異なります。
AGAが強く疑われる場合は、育毛剤だけに頼るのではなく、次のステップを考える必要があります。
抜け毛・薄毛の悩みを専門家に相談する
セルフケアを続けていても抜け毛が減らない、毛根が小さい細い毛が増え続けている、あるいは生え際や頭頂部の薄毛が明らかに進行していると感じる場合、自己判断での対策には限界があります。
AGAを含む脱毛症は、早期の対策がなによりも重要です。専門家の知見を借りることをためらうべきではありません。
専門クリニックで相談する利点
薄毛治療を専門とするクリニックでは、医師が頭皮の状態や毛根の状態をマイクロスコープなどで詳細に確認し、問診や血液検査などを通じて、薄毛の根本的な原因を診断します。
抜け毛の毛根が小さい原因が、AGAによるものなのか、生活習慣によるものなのか、あるいは他の疾患によるものなのかを医学的根拠に基づいて判断してくれます。
原因が明確になることで、ご自身に合った、より具体的な対策を講じることが可能になります。
カウンセリングで何がわかるか
多くのクリニックでは、治療を始める前に無料または有料のカウンセリングを実施しています。カウンセリングでは、まずご自身の髪や頭皮に関する悩み、生活習慣などを詳しく伝えます。
その後、専門のカウンセラーや医師が、頭皮の状態をチェックし、薄毛がどの程度進行しているのか、どのような原因が考えられるのかを説明してくれます。
また、もし治療を進める場合、どのような選択肢があり、それぞれどの程度の期間や費用が見込まれるのかといった具体的な情報も得ることができます。
無理に治療を勧められることは少なく、まずは現状を知る場として活用できます。
セルフケアと専門家相談の比較
| 項目 | セルフケア(育毛剤など) | 専門家(クリニック)への相談 |
|---|---|---|
| 目的 | 頭皮環境の改善、抜け毛予防 | 原因の特定、医学的根拠に基づく対策(治療含む) |
| 診断 | 自己判断に基づく | 医師による客観的・医学的診断 |
| 対策 | 市販品の利用、生活習慣改善 | 内服薬・外用薬の処方、生活指導など(原因による) |
早期対策の重要性
特にAGAの場合、進行性であるため「そのうち治るだろう」と放置していると、症状は着実に悪化していきます。
毛根が小さい抜け毛が増え始めた段階は、まだ毛包(髪を作る組織)が機能している証拠でもあります。
この早い段階で適切な対策(生活習慣の見直しや、必要に応じた治療など)を開始すれば、毛包のミニチュア化(退縮)を防ぎ、太く健康な髪を維持できる可能性が高まります。
手遅れになる前に、髪が育っていないサインを見逃さず、勇気を持って専門家の扉を叩くことが、将来の髪を守る上で最も重要な判断と言えるでしょう。
Q&A
ここでは、抜け毛の毛根が小さいことやAGAに関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
- 毛根が小さくてもまた太い髪は生えてきますか?
-
毛根が小さい抜け毛があったとしても、その毛穴(毛包)の機能が完全に失われていなければ、再び太い髪が生えてくる可能性は十分にあります。
毛根が小さいのは、主にヘアサイクルの「成長期」が短縮された結果です。
したがって、その原因(例えば、生活習慣の乱れ、ストレス、あるいはAGAなど)を特定し、適切な対策を講じることでヘアサイクルが正常化すれば、次の成長期には髪が太く長く育つことが期待できます。
ただし、AGAが進行し、毛包自体が長期間にわたってミニチュア化(退縮)してしまった場合、回復は困難になるため、早期の対策が重要です。
- 育毛剤を使えば毛根は大きくなりますか?
-
育毛剤は、頭皮の血行を促進したり、毛母細胞に栄養を与えたり、頭皮環境を清潔に保ったりすることで、髪が健康に育つための「土壌」を整えるものです。
その結果として、ヘアサイクルが整い、髪が成長期に長く留まることができれば、毛根(毛球)も大きく発達し、太い髪が育つ可能性があります。
しかし、育毛剤が直接的に毛根を物理的に大きくするわけではありません。あくまで、毛根が本来の力を発揮できる環境作りをサポートするのが育毛剤の役割です。
AGAの進行を直接抑制するものではない点も理解しておく必要があります。
- 抜け毛の本数も多い場合、どうすればよいですか?
-
毛根が小さい抜け毛が増えるだけでなく、抜け毛の「総量」自体が増加している場合、薄毛が進行している可能性がより高いと考えられます。
1日の抜け毛の平均は50本から100本程度とされますが、明らかにそれを超える状態(例えば、シャンプー時や起床時にごっそりと抜ける感覚)が続く場合は注意が必要です。
まずは、ご自身の生活習慣(睡眠、食事、ストレス)を徹底的に見直してください。
それと同時に、AGAやその他の脱毛症(円形脱毛症など)の可能性も否定できないため、早めに専門のクリニックを受診し、原因を特定することをお勧めします。
- 毛根の大きさに年齢は関係しますか?
-
年齢を重ねるとともに、全身の細胞の働きが少しずつ低下していくのと同様に、毛母細胞の活動性も低下する傾向があります。
そのため、若い頃に比べて髪が細くなったり、ヘアサイクルが短くなったりして、結果的に毛根がやや小さくなることは自然な加齢現象の一部とも言えます。
ただし、AGAは年齢に関わらず発症し、若年層(20代、30代)でも急激に毛根の小さい抜け毛が増えることがあります。
「年齢のせい」と自己判断せず、抜け毛の質や量の変化に注意を払うことが大切です。
Reference
ALESSANDRINI, A., et al. Common causes of hair loss–clinical manifestations, trichoscopy and therapy. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2021, 35.3: 629-640.
PHILLIPS, T. Grant; SLOMIANY, W. Paul; ALLISON, Robert. Hair loss: common causes and treatment. American family physician, 2017, 96.6: 371-378.
SPERLING, Leonard C. Evaluation of hair loss. Current problems in Dermatology, 1996, 8.3: 99-136.
VUJOVIC, Anja; ANDRÉ, Josette; STENE, Jean-Jacques. Hair That Does Not Grow. Skin appendage disorders, 2016, 1.3: 150-152.
LIU, Yingzi, et al. Androgenetic alopecia. Nature Reviews Disease Primers, 2025, 11.1: 73.
ANASTASSAKIS, Konstantinos. AGA/FPHL in Children and Adolescents. In: Androgenetic Alopecia From A to Z: Vol. 1 Basic Science, Diagnosis, Etiology, and Related Disorders. Cham: Springer International Publishing, 2022. p. 205-216.
WOLFF, Hans. Diseases of hair. In: Braun-Falco´ s Dermatology. Berlin, Heidelberg: Springer Berlin Heidelberg, 2020. p. 1-33.
YANG, Chao-Chun; CHEN, Chih-Chiang; CHEN, Wen-Chieh. Aging and anti-aging in hair and hair loss. In: Inflammation, advancing age and nutrition. Academic Press, 2014. p. 231-246.
ŚLIWA, Karol, et al. The diagnosis and treatment of androgenetic alopecia: a review of the most current management. In: Forum Dermatologicum. 2023. p. 99-111.
BATRINOS, Menelaos L. The endocrinology of baldness. Hormones, 2014, 13.2: 197-212.

