夏に抜け毛がひどいのはなぜ?増える原因(紫外線・皮脂)と、秋にハゲない対策

夏に抜け毛がひどいのはなぜ?増える原因(紫外線・皮脂)と、秋にハゲない対策

夏の強い日差しと暑さが一段落すると、ふと「最近、抜け毛がひどいかも…」と感じる男性は少なくありません。シャワーの排水溝や枕に増えた髪の毛を見て、不安になる気持ちはよく分かります。

実は、夏は抜け毛が増える原因が潜んでいる季節です。強烈な紫外線や過剰な皮脂分泌、そして夏特有の生活習慣が、知らず知らずのうちに頭皮環境を悪化させています。

この夏のダメージを放置すると、秋にはさらに深刻な抜け毛につながる可能性も。

この記事では、なぜ夏に抜け毛が増えるのか、その主な原因である紫外線と皮脂の問題を詳しく解説し、秋に後悔しないための具体的な対策を紹介します。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

夏に抜け毛が増えるのは本当?「ひどい」と感じる理由

「夏になると抜け毛が増える」という感覚は、単なる気のせいなのでしょうか。

それとも、医学的な根拠があるのでしょうか。多くの男性が「夏は抜け毛がひどい」と感じる背景には、季節特有の要因と、私たちの体の自然なリズムが関係しています。

このセクションでは、夏に抜け毛が増えると感じる理由を掘り下げていきます。

季節の変わり目とヘアサイクル

髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」という生まれ変わりの周期があります。

一本一本の髪の毛は、「成長期(髪が伸びる時期)」「退行期(成長が止まる時期)」「休止期(髪が抜け落ちる時期)」というサイクルを繰り返しています。

一般的に、人間の髪の毛の多くは成長期にあり、休止期に入った髪の毛が日々自然に抜け落ちています。

動物には季節によって毛が生え変わる「換毛期」がありますが、人間には明確な換毛期はありません。しかし、一部の研究では、人間も季節によって抜け毛の量に変動がある可能性が示唆されています。

特に、夏から秋にかけては抜け毛が増加する傾向があると感じる人が多いようです。これは、夏の間に受けたダメージが影響しているとも考えられます。

夏特有の抜け毛要因とは

夏は、他の季節にはない頭皮への過酷な要因が集中する季節です。これらが複合的に絡み合うことで、抜け毛が「ひどい」と感じるレベルまで増加することがあります。

主な要因は、強烈な紫外線、高温多湿による皮脂や汗の増加、そしてエアコンによる冷えや夏バテによる栄養不足など、生活習慣の乱れです。

これらの要因が頭皮環境を悪化させ、髪の成長を妨げたり、頭皮に炎症を引き起こしたりします。

結果として、まだ成長するはずだった髪の毛までもが早く休止期に入り、抜け毛として認識される量が増えてしまうのです。

夏の抜け毛要因と他の季節の比較

要因春・秋
気候高温多湿、強い紫外線比較的穏やか、花粉(春)
頭皮状態皮脂・汗が多い、日焼け乾燥(秋)、ゆらぎやすい
生活習慣冷房、冷たい飲食物、夏バテ過ごしやすい、行楽

秋の抜け毛との関係性

「抜け毛がひどい」と最も強く実感するのは、実は「秋」である場合が多いです。

しかし、その原因の多くは夏に作られています。夏に浴びた紫外線のダメージや、皮脂トラブルによる頭皮環境の悪化は、すぐに抜け毛として現れるわけではありません。

ダメージが蓄積し、ヘアサイクルが乱れ、その結果として数ヶ月後の秋に休止期の髪の毛が一気に増えると考えられています。

つまり、秋に「ハゲない」ためには、夏のうちから正しい対策を講じることが非常に重要です。「夏 抜け毛 対策」は、未来の自分の髪を守るための先行投資と言えるでしょう。

夏の強烈な紫外線が頭皮と髪に与えるダメージ

夏の日差しは、肌だけでなく頭皮と髪にも深刻なダメージを与えます。顔や腕の日焼けは気にしていても、頭皮の紫外線対策は見落としがちです。

しかし、頭皮は体の中で最も太陽に近い場所であり、紫外線をダイレクトに浴び続けています。この紫外線ダメージが、夏の抜け毛が増える大きな原因の一つです。

紫外線による頭皮の炎症(日焼け)

頭皮も肌の一部です。強い紫外線を浴びれば、顔や腕と同じように日焼けし、炎症を起こします。

頭皮が赤くなったり、ヒリヒリしたり、かゆみを感じたりするのは、軽い火傷(サンバーン)を負っている状態です。

炎症が起きると、頭皮の細胞は正常な機能を失い、毛根(毛母細胞)の働きも低下します。これにより、髪の毛の成長が妨げられ、抜け毛につながります。

また、炎症が治まる過程で頭皮が乾燥し、フケが大量に出ることもあります。これは頭皮環境が著しく悪化しているサインです。

髪の主成分ケラチンの変性

髪の毛そのものも、紫外線によってダメージを受けます。髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。紫外線は、このケラチンタンパク質の結合を破壊し、変性させます。

その結果、髪の毛のキューティクルが剥がれやすくなり、内部の水分や栄養が流出します。髪がパサパサしたり、ゴワゴワしたり、枝毛や切れ毛が増えたりするのはこのためです。

髪がダメージを受けると、外部の刺激から頭皮を守る力も弱まります。まさに負の連鎖です。

紫外線の種類と頭皮・髪への影響

紫外線の種類特徴頭皮・髪への主な影響
UVA(紫外線A波)波長が長く、真皮層まで届く頭皮の弾力を奪い、毛母細胞の働きを低下させる
UVB(紫外線B波)波長が短く、表皮で吸収される頭皮の炎症(日焼け)や乾燥を引き起こす

頭皮の乾燥とバリア機能の低下

紫外線は頭皮の水分を奪い、乾燥を引き起こします。頭皮が乾燥すると、外部の刺激から守る「バリア機能」が低下します。

バリア機能が低下した頭皮は非常に敏感になり、普段なら問題ないシャンプーの刺激や、わずかな雑菌にも過敏に反応し、かゆみや炎症を起こしやすくなります。

この状態が続けば、健康な髪が育つ土壌は失われ、抜け毛が増える原因となります。

夏は汗をかくため「頭皮は潤っている」と誤解しがちですが、実際には「汗や皮脂は多いのに、内部は乾燥している(インナードライ)」状態に陥っていることが多いのです。

過剰な皮脂分泌と汗が引き起こす頭皮環境の悪化

夏の高温多湿な環境は、皮脂腺や汗腺の活動を活発にします。皮脂や汗は、本来、頭皮を乾燥や外部刺激から守るために必要なものです。

しかし、それらが過剰に分泌されると、一転して頭皮環境を悪化させる原因となり、夏の抜け毛を加速させます。「夏に抜け毛がひどい」と感じる場合、この皮脂トラブルが関係している可能性が高いです。

皮脂詰まりによる毛穴のトラブル

過剰に分泌された皮脂は、古い角質やホコリと混ざり合い、毛穴に詰まりやすくなります。これが「角栓(かくせん)」です。毛穴が角栓で塞がれると、毛根への酸素や栄養の供給が滞ります。

また、毛穴の中で皮脂が固まり、髪の成長を物理的に妨げることもあります。健康な髪が育つための「出口」が塞がれてしまえば、髪は細く弱々しくなり、やがて抜け落ちてしまいます。

汗と皮脂が混ざり雑菌が繁殖

夏にかく大量の汗も問題です。汗そのものはほとんどが水分ですが、頭皮に残った皮脂や汚れと混ざり合うと、雑菌(常在菌)のエサとなります。

特に、高温多湿な環境は雑菌が最も好む環境です。

雑菌が異常繁殖すると、頭皮のかゆみやニオイの原因になるだけでなく、雑菌が出す刺激物質によって頭皮が炎症を起こすこと(脂漏性皮膚炎など)があります。炎症は抜け毛の直接的な引き金となります。

皮脂の酸化と頭皮への刺激

頭皮に残った皮脂は、時間とともに空気中の酸素や紫外線の影響を受けて「酸化」します。酸化した皮脂は「過酸化脂質」という刺激物質に変化します。

これは、例えるなら古い油が嫌なニオイを発するのと同じ状態です。この過酸化脂質が頭皮を刺激し、炎症やかゆみを引き起こし、毛母細胞の働きを弱めます。

夏の夕方になると頭皮がベタつくだけでなく、独特のニオイが気になる場合、皮脂が酸化しているサインかもしれません。

頭皮タイプ別に見る皮脂トラブル

頭皮タイプ夏の特徴注意すべきトラブル
脂性肌(オイリー肌)皮脂分泌が非常に活発毛穴詰まり、脂漏性皮膚炎、ニオイ
乾燥肌(ドライ肌)皮脂は少ないが汗はかく汗による刺激、かゆみ、紫外線ダメージ
混合肌(インナードライ)表面はベタつくが内部は乾燥皮脂詰まりと乾燥によるバリア機能低下

間違った皮脂対策が逆効果に

頭皮のベタつきが気になるからといって、洗浄力の強すぎるシャンプーで一日に何度も髪を洗うのは逆効果です。

必要な皮脂まで根こそぎ洗い流してしまうと、頭皮は「皮脂が足りない」と勘違いし、かえって皮脂を過剰に分泌しようとします。

これは「過乾燥」による皮脂の過剰分泌と呼ばれ、皮脂トラブルを悪化させる原因になります。正しいヘアケアで、頭皮のうるおいバランスを保つことが重要です。

夏の生活習慣に潜む抜け毛のリスク

紫外線や皮脂といった外的な要因だけでなく、夏特有の生活習慣も抜け毛を増やす原因となります。

暑さをしのぐための行動や、夏バテによる体調の変化が、知らず知らずのうちに頭皮の血行不良や栄養不足を招き、髪の成長を妨げているのです。

ここでは、日常生活に潜むリスクを見直してみましょう。

エアコンによる冷えと血行不良

暑い屋外から、エアコンが効いた涼しい室内へ。この急激な温度変化は、自律神経のバランスを乱す原因となります。自律神経が乱れると、体温調節機能がうまく働かず、血管が収縮しやすくなります。

特に、頭皮は毛細血管が集中している場所です。血管が収縮すると血流が悪くなり、髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素が毛根(毛母細胞)まで届きにくくなります。

また、一日中冷房の効いた環境にいると、体全体が「冷え」てしまいます。冷えは万病のもとと言いますが、頭皮の血行不良を招き、抜け毛を助長する大きな要因となります。

冷たい飲み物や食べ物による内臓の冷え

暑いと、ついアイスクリームや冷たいジュース、ビールなどに手が伸びがちです。しかし、冷たいものばかりを摂取していると、内臓(特に胃腸)が冷えて機能が低下します。

胃腸の働きが弱まると、食べ物から栄養素を効率よく吸収できなくなります。髪の毛は、私たちが食べたものから作られています。

どれだけ髪に良いとされる食べ物を摂っても、胃腸がそれを吸収できなければ意味がありません。

内臓の冷えは体全体の血行も悪くするため、頭皮への栄養供給がさらに滞るという悪循環に陥ります。

夏バテによる栄養不足

暑さによる食欲不振、いわゆる「夏バテ」も深刻な問題です。

食事がそうめんや冷やし中華など、炭水化物中心の簡単なもので偏りがちになると、髪の毛の主成分であるタンパク質や、その合成を助けるビタミン、ミネラルが決定的に不足します。

体にとって、髪の毛は生命維持に直接関係ない「末端」の組織です。栄養が不足すると、体はまず心臓や脳などの重要な臓器に栄養を優先的に回し、髪の毛への供給は後回しにします。

その結果、髪は細くなり、成長が止まり、抜けやすくなります。

夏バテ時に不足しがちな栄養素と髪への影響

栄養素髪への役割不足すると…
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料髪が細くなる、成長が遅れる
亜鉛タンパク質の合成を助けるヘアサイクルが乱れる、抜け毛
ビタミンB群頭皮の新陳代謝、皮脂分泌の調整頭皮環境の悪化、皮脂トラブル

睡眠不足と自律神経の乱れ

熱帯夜による寝苦しさや、日中の活動時間の変化によって、夏は睡眠不足になりがちです。髪の毛の成長を促す「成長ホルモン」は、主に睡眠中に分泌されます。

特に、入眠後の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯が重要です。睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減少し、髪の成長が妨げられます。

また、睡眠不足は自律神経のバランスも崩します。交感神経(活動モード)が優位な時間が長くなり、血管が収縮して頭皮の血行が悪化します。

リラックスモードである副交感神経が働くことで、体は修復され、髪も育ちます。質の高い睡眠は、夏 抜け毛 対策の基本です。

秋に後悔しないための夏の紫外線対策

秋の深刻な抜け毛を防ぐためには、夏の紫外線対策が最も重要です。「夏 抜け毛 増える」と感じる原因の多くは、この紫外線ダメージの蓄積にあります。頭皮は顔の2倍以上の紫外線を浴びるとも言われています。

ここでは、頭皮を紫外線から守るための具体的な方法を紹介します。

帽子や日傘の正しい選び方

最も手軽で効果的なのは、物理的に紫外線を遮ることです。帽子や日傘は、頭皮への直射日光を防ぐ強力な味方です。ただし、選び方にはポイントがあります。

帽子を選ぶ際は、デザインだけでなく素材と機能性に注目しましょう。UVカット加工が施されているものが望ましいです。

また、夏は頭皮が蒸れやすいため、通気性の良いメッシュ素材や、吸湿速乾性のある素材を選ぶことが大切です。蒸れは雑菌の繁殖を招き、皮脂トラブルの原因にもなります。

時々帽子を脱いで、頭皮の熱や湿気を逃がすことも忘れないでください。

日傘も非常に有効です。特に、色の濃いものや、遮光率・UVカット率が高い(例:99%以上)と表示されているものを選びましょう。男性用の日傘も増えており、抵抗なく使えるデザインのものも多くあります。

帽子・日傘選びのポイント

アイテム素材・機能注意点
帽子UVカット加工、通気性(メッシュ等)長時間の着用による蒸れに注意
日傘遮光率・UVカット率が高いもの側面や地面からの照り返しは防げない

頭皮用日焼け止めの活用

帽子や日傘が使いにくい場面や、スポーツなどでどうしても頭皮が露出する場合は、頭皮用の日焼け止めを活用しましょう。最近では、スプレータイプやジェルタイプなど、髪の毛があっても使いやすい製品が増えています。

スプレータイプは手軽ですが、ムラになりやすいため、髪をかき分けながら頭皮に直接スプレーするように意識します。

ジェルタイプは、分け目やつむじなど、特に日焼けしやすい部分にピンポイントで塗るのに適しています。SPFやPAといった数値も確認し、使用シーンに合わせたものを選びましょう。

汗で流れやすいため、こまめな塗り直しも重要です。

日焼けしてしまった後の頭皮ケア

対策をしていても、うっかり頭皮が日焼けしてしまうこともあります。その場合は、アフターケアが重要です。日焼けは炎症(火傷)なので、まずは冷やすことが先決です。

冷たいタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを当てて、頭皮の熱を鎮めます。

ヒリヒリ感が落ち着いたら、次は保湿です。日焼け後の頭皮は極度に乾燥しています。刺激の少ない、アルコールフリーの頭皮用ローションや化粧水を使って、優しく水分を補給します。

ただし、炎症がひどい場合や、水ぶくれなどができた場合は、自己判断せず皮膚科を受診してください。

日焼けした頭皮は非常にデリケートです。シャンプーの際はゴシゴシこすらず、優しく泡で洗うように心がけましょう。

夏の頭皮を清潔に保つ正しいヘアケア方法

夏の過剰な皮脂や汗は、頭皮環境を悪化させる大きな原因です。しかし、ベタつきが気になるからといって、間違ったヘアケアを続けると、かえって抜け毛を増やすことになります。

「夏 抜け毛 対策」の要は、頭皮を清潔に保ちつつ、必要なうるおいを守る「正しいヘアケア」の実践です。

自分に合ったシャンプーの選び方

毎日使うシャンプー選びは非常に重要です。夏だからといって、単純に洗浄力(脱脂力)が強いものを選べば良いというわけではありません。自分の頭皮タイプに合ったものを選びましょう。

脂性肌でベタつきがひどい場合は、適度な洗浄力があるアミノ酸系シャンプーや、皮脂をコントロールする成分(例:ビタミンC誘導体など)が配合されたものを選びます。

一方、乾燥肌や敏感肌の人は、洗浄力がマイルドで保湿成分(例:セラミド、ヒアルロン酸など)が豊富なアミノ酸系シャンプーが適しています。

自分の頭皮がどのタイプかわからない場合は、専門家や美容師に相談するのも一つの方法です。

シャンプーの種類と洗浄力の特徴

シャンプーの種類主な洗浄成分特徴(洗浄力・刺激)
アミノ酸系〜グルタミン酸、〜アラニン等マイルドな洗浄力、低刺激
高級アルコール系ラウレス硫酸〜、ラウリル硫酸〜強い洗浄力、泡立ちが良い
石けん系石けん素地、脂肪酸〜非常に強い洗浄力、さっぱり感

意外と知らない正しいシャンプーの手順

どれだけ良いシャンプーを使っても、洗い方が間違っていては効果が半減します。特に夏は、皮脂や汚れをしっかり落とそうとゴシゴシ強くこすりがちですが、これは頭皮を傷つける原因になります。

以下の手順で、頭皮を優しく洗い上げましょう。

  • 予洗い(重要)
  • シャンプーの泡立て
  • 指の腹で頭皮をマッサージ
  • 十分なすすぎ

特に重要なのが「予洗い」です。シャンプーをつける前に、38度程度のお湯で1〜2分かけて頭皮と髪をしっかりすすぎます。これだけで、汗やホコリなどの汚れの多くは落ちます。

シャンプーは手のひらでよく泡立ててから頭皮につけ、爪を立てずに指の腹を使って、頭皮全体を優しくマッサージするように洗います。

すすぎ残しはかゆみやフケの原因になるため、洗い流す時間は洗う時間の2倍以上かけるつもりで、十分すぎるほどしっかりすすぎましょう。

洗髪後の頭皮の保湿ケア

シャンプー後の頭皮は、汚れと共に必要な皮脂も洗い流され、無防備で乾燥しやすい状態です。顔を洗った後に化粧水をつけるのと同じように、頭皮にも保湿が必要です。

お風呂上がり、髪を乾かす前に、頭皮用のローションやエッセンスを使って保湿しましょう。これにより、頭皮のバリア機能が整い、過剰な皮脂分泌(インナードライ)を防ぐことができます。

育毛剤を使用している人も、まずは頭皮の土壌を整える保湿ケアを意識することが大切です。清潔な頭皮に水分と栄養を補給することで、育毛剤の成分も浸透しやすくなります。

皮脂を取りすぎない注意点

前述の通り、皮脂の取りすぎは禁物です。一日に何度もシャンプーをしたり、あぶらとり紙で頻繁に頭皮の皮脂を押さえたりする行為は、頭皮の乾燥を招き、バリア機能を低下させます。

シャンプーは基本的に一日一回、夜に行うのが理想です。

日中のベタつきが気になる場合は、皮脂を吸着するパウダーが含まれた頭皮用スプレーなどを軽く使う程度にとどめ、洗いすぎないことを心がけましょう。

体の内側から考える夏の抜け毛対策

紫外線対策やヘアケアといった外側からのアプローチと同時に、体の内側からのケアも「夏 抜け毛 対策」には欠かせません。

夏バテによる栄養不足や生活習慣の乱れは、確実に髪の健康を蝕みます。健康な髪は、健康な体から作られます。

秋に「抜け毛がひどい」と嘆かないためにも、夏の食生活と生活習慣を見直しましょう。

髪の成長に必要な栄養素

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質でできています。したがって、良質なタンパク質の摂取は必須です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく食事に取り入れましょう。

また、タンパク質を髪の毛(ケラチン)に再合成する際には、ビタミンやミネラルが不可欠です。特に重要なのが「亜鉛」と「ビタミンB群」です。

  • 亜鉛
  • ビタミンB群
  • ビタミンE

亜鉛はケラチンの合成を強力にサポートし、ヘアサイクルを正常に保つ働きがあります。牡蠣やレバー、赤身肉などに多く含まれます。

ビタミンB群(特にB2、B6)は、皮脂の分泌をコントロールし、頭皮の新陳代謝を促します。豚肉やマグロ、カツオ、レバー、納豆などから摂取できます。

ビタミンEは血行を促進し、頭皮の隅々まで栄養を届けるのを助けます。アーモンドなどのナッツ類や、植物油に豊富です。

夏はそうめんやうどんだけで済ませがちですが、意識してこれらの栄養素を含む食材(例:豚しゃぶサラダ、冷奴など)をプラスすることが重要です。

夏でも意識したい水分補給

夏は大量に汗をかくため、体内の水分が不足しがちです。水分が不足すると血液がドロドロになり、血流が悪化します。当然、頭皮への血流も滞り、毛根に十分な栄養が届かなくなります。

喉が渇いたと感じる前に、こまめに水分を補給することが大切です。ただし、冷たいジュースやスポーツドリンクの飲み過ぎには注意が必要です。

糖分の過剰摂取は、皮脂分泌を増加させたり、ビタミンB群を大量に消費したりするため、頭皮環境にはマイナスです。基本は水や麦茶(ノンカフェイン)で水分補給を行いましょう。

質の高い睡眠を確保する工夫

髪の毛は、私たちが寝ている間に成長します。特に、入眠から3時間ほどの間に訪れる深い眠り(ノンレム睡眠)中に、「成長ホルモン」が最も多く分泌されます。

この成長ホルモンが毛母細胞の分裂を促し、髪の毛を育てます。

熱帯夜で寝苦しいと、眠りが浅くなり、成長ホルモンの分泌が妨げられます。質の高い睡眠を確保するために、寝室の環境を整えましょう。

エアコンや扇風機をタイマーなどで上手に使い、快適な室温(26〜28度程度)を保ちます。

また、就寝1〜2時間前に入浴(ぬるめの湯船に浸かる)を済ませると、体温が下がるタイミングで自然な眠気につながります。

就寝前のスマートフォン操作は、ブルーライトが脳を覚醒させてしまうため避けましょう。

よくある質問

夏の抜け毛はどれくらいが正常範囲ですか?

健康な人でも、一日に50本から100本程度の髪の毛は自然に抜け落ちています。これはヘアサイクルによる正常な現象です。

夏から秋にかけては、一時的に150本程度まで増えることもあると言われていますが、個人差が大きいです。

本数を正確に数えるのは難しいため、「以前と比べて明らかに排水溝に溜まる量が増えた」「枕につく髪の毛が目立って増えた」「髪全体のボリュームが減ってきた」と感じる場合は注意が必要です。

一時的なものか、継続的にひどい状態が続くかを見極めましょう。

海やプールに入った後は特別なケアが必要ですか?

はい、必要です。海水に含まれる塩分や、プールの水に含まれる塩素(カルキ)は、髪の毛のキューティクルを傷つけ、タンパク質を破壊します。

また、頭皮にも刺激となり、乾燥やかゆみを引き起こす原因となります。

海やプールから上がった後は、できるだけ早くシャワーを浴び、シャンプーで塩分や塩素をしっかりと洗い流すことが重要です。

その後は、トリートメントで髪の栄養を補給し、頭皮の保湿ケアも忘れずに行いましょう。

夏だけ育毛剤を使うのは意味がありますか?

夏のダメージが気になる時期だけ育毛剤を使うことにも、一定の意味はあります。

特に、紫外線や皮脂トラブルによる頭皮環境の悪化(炎症、乾燥、血行不良など)をケアする目的であれば、頭皮環境を整えるタイプの育毛剤(ローションやエッセンス含む)は有効です。

しかし、本格的に抜け毛や薄毛の対策(ヘアサイクル自体の改善など)を考える場合、育毛剤は数ヶ月単位で継続して使用することが推奨されています。

夏のダメージケアをきっかけに、継続的な頭皮ケアを習慣にすることが理想的です。

食生活で特に気をつけることは何ですか?

夏に特に気をつけるべきは、「タンパク質不足」と「脂質・糖質の過剰摂取」です。髪の材料であるタンパク質(肉、魚、大豆製品など)が不足しないよう、夏バテ気味でも意識して摂取します。

一方で、揚げ物などの脂っこい食事や、アイス、ジュースなどの糖分が多いものは、皮脂の分泌を過剰にし、頭皮環境を悪化させます。

バランスの良い食事を心がけ、特に髪の合成に必要な亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類)や、頭皮環境を整えるビタミンB群(豚肉、マグロ、納豆)を積極的に摂ることが大切です。

Reference

HSIANG, E. Y., et al. Seasonality of hair loss: a time series analysis of Google Trends data 2004–2016. British Journal of Dermatology, 2018, 178.4: 978-979.

PIÉRARD-FRANCHIMONT, Claudine; QUATRESOOZ, Pascale; PIÉRARD, Gérald E. Effect of UV radiation on scalp and hair growth. In: Aging hair. Berlin, Heidelberg: Springer Berlin Heidelberg, 2010. p. 113-121.

RAJKUMAR, Shruthi Sukumarapillai. Seasonal Variation in the Incidence of Skin Diseases. 2024. Master’s Thesis. Lithuanian University of Health Sciences (Lithuania).

TRÜEB, Ralph M. Effect of ultraviolet radiation, smoking and nutrition on hair. Curr Probl Dermatol, 2015, 47: 107-120.

LYAKHOVITSKY, Anna, et al. Changing spectrum of hair and scalp disorders over the last decade in a tertiary medical centre. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2023, 37.1: 184-193.

ZHANG, Helen, et al. Associations between season, climate, and pediatric alopecia areata flares in Providence, Rhode Island. Archives of Dermatological Research, 2023, 315.10: 2877-2881.

目次