AGA治療を考え、ミノキシジルを使い始めて3ヶ月。「本当に効果は出ているのか?」「このまま続けて意味があるのか?」と不安や疑問を感じていませんか。
ミノキシジルの使用から3ヶ月という期間は、治療における一つの節目です。多くの場合、何らかの変化が現れ始める時期ですが、その現れ方には個人差があります。
この記事ではミノキシジル治療3ヶ月で期待できる変化、起こり得る副作用、そして最も重要な「治療を継続するためのポイント」を詳しく解説します。
あなたの疑問を解消し、前向きに治療を続けるためのヒントがここにあります。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
ミノキシジル治療3ヶ月目に見られる一般的な変化
ミノキシジル治療を開始して3ヶ月が経過すると、多くの方に初期の変化が見られ始めます。
これには産毛の発生や既存毛の質の変化などが含まれますが、効果の実感には個人差がある点を理解しておく必要があります。
初期脱毛はいつまで続く?
ミノキシジルを使用開始後、数週間から1ヶ月半程度で一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」を経験することがあります。
これはミノキシジルの作用によって古い毛髪が押し出され、新しい毛髪が成長する準備が始まった証拠とも言えます。
3ヶ月目には、この初期脱毛は落ち着いているケースがほとんどです。もし3ヶ月を過ぎても抜け毛が異常に続く場合は、他の原因も考えられるため医師に相談することをお勧めします。
産毛(うぶげ)の発生と毛質の変化
3ヶ月目によく見られるポジティブな変化として、頭皮に細く柔らかい「産毛」が生え始めることがあります。
鏡でよく見たり、指で頭皮を触ったりすると以前との違いを感じられるかもしれません。また、既存の毛髪が少し太く、強くなってきたように感じる方もいます。
これらは毛周期が改善し、毛髪が「成長期」へと移行しつつある兆候と考えられます。ただし、この段階ではまだ毛量全体が劇的に増えたとは感じにくいかもしれません。

頭皮環境の変化(かゆみ・赤みなど)
ミノキシジル外用薬(塗り薬)を使用している場合、3ヶ月が経過しても頭皮にかゆみや赤み、フケなどの皮膚症状が出ることがあります。
これは、薬剤の成分(ミノキシジル自体や基剤、添加物など)に対するアレルギー反応や刺激によるものです。
症状が軽い場合は様子を見ることもありますが、続く場合や悪化する場合は我慢せずに医師に相談し、薬の変更や保湿剤の使用などを検討する必要があります。
効果を実感できる人とできない人の違い
3ヶ月時点で明確な産毛や毛質の改善を実感できる人もいれば、ほとんど変化を感じられない人もいます。
この違いはAGAの進行度、年齢、体質、遺伝的要因、そしてミノキシジルの使用方法(用法・用量を守っているか)など、様々な要因によって生じます。
効果が実感できなくても、焦って自己判断で治療をやめてしまうのは尚早です。少なくとも6ヶ月は継続することが推奨されています。
なぜ3ヶ月が「一つの目安」とされるのか
ミノキシジル治療において3ヶ月が目安とされる理由は、毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)に深く関係しています。
新しい毛髪が成長し、目に見える形で現れるまでには一定の時間が必要なのです。
毛周期(ヘアサイクル)とミノキシジルの関係
毛髪には「成長期(毛が太く長く育つ期間)」「退行期(成長が止まる期間)」「休止期(毛が抜け落ちる準備期間)」というサイクルがあります。
AGA(男性型脱毛症)ではこの成長期が短縮し、毛髪が十分に育たないまま抜け落ちてしまいます。
ミノキシジルは、この乱れたヘアサイクルに作用し、短くなった成長期を延長させ、休止期の毛包を成長期へと誘導する働きがあると考えられています。
このサイクルの改善には時間がかかり、休止期から成長期に移行した毛髪が頭皮表面に現れ、産毛として認識できるようになるまでに早くても3ヶ月程度は必要となるのです。

毛周期(ヘアサイクル)の各段階
| 段階 | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 成長期 | 2年~6年 | 毛髪が活発に成長する期間。全体の約85~90%。 |
| 退行期 | 約2週間 | 毛髪の成長が止まり、毛球部が縮小する期間。全体の約1%。 |
| 休止期 | 約3ヶ月~4ヶ月 | 毛髪が抜け落ちる準備期間。全体の約10~15%。 |
ミノキシジルが作用し始めるまでの期間
ミノキシジルを使用してすぐに毛が生え始めるわけではありません。薬剤が頭皮に浸透し、毛包に作用して細胞を活性化させ、ヘアサイクルの改善が始まるまでには時間がかかります。
初期脱毛が起こるのも、この作用の現れの一つです。新しい毛髪が古い毛髪を押し出すまでに数週間、その新しい毛髪が産毛として目に見えるようになるまでにさらに数週間から数ヶ月を要します。
そのため、3ヶ月という期間はこれらの変化がようやく現れ始める「初期段階」と位置づけられます。
臨床データに見る3ヶ月の効果指標
多くのミノキシジルに関する臨床試験では、治療効果の評価を4ヶ月(約16週)や6ヶ月(約24週)の時点で行うことが一般的です。3ヶ月時点は、その途中経過として変化が現れ始める時期として捉えられています。
例えば、一部の研究では、治療開始後8週目(約2ヶ月)から毛髪数の増加が観察され始め、16週目(約4ヶ月)でさらに顕著になるというデータもあります。
このことからも、3ヶ月は効果判定の「始まり」の時期であり、「最終判定」の時期ではないことがわかります。
3ヶ月で効果が出ない場合の考え方
もし3ヶ月が経過しても全く変化が見られない場合、いくつかの可能性が考えられます。
一つはAGAの進行が非常に早いか、重度であるケース。もう一つはミノキシジルに対する反応性が低い(効きにくい)体質である可能性です。
また、使用方法が正しくない(塗布量が少ない、回数が不規則など)場合も効果は出にくくなります。
しかし、前述の通り効果発現には個人差が大きいため、3ヶ月で諦めるのは早すぎます。医師の指導のもと、まずは6ヶ月間の継続使用を目指すことが重要です。
その上で効果が見られない場合は、治療法の見直しを検討します。
ミノキシジル3ヶ月で起こり得る副作用と対処法
ミノキシジルは効果的な治療薬ですが、使用開始3ヶ月以内、あるいはそれ以降も副作用が起こる可能性があります。主な副作用を理解し、適切な対処法を知っておくことが大切です。
主な初期副作用(かゆみ・皮膚炎)
ミノキシジル外用薬で最も一般的に見られる副作用は、塗布した部分の頭皮トラブルです。かゆみ、赤み、発疹、フケ、乾燥、接触皮膚炎などが報告されています。
これらはミノキシジル成分自体へのアレルギー反応、または薬剤に含まれるアルコールやプロピレングリコールなどの添加物による刺激が原因となることが多いです。
3ヶ月経過してもこれらの症状が続く、あるいは我慢できないほど強い場合は使用を中断し、医師に相談してください。添加物の少ない製剤に変更するなどの対策が考えられます。
動悸やめまい(内服薬の場合)
ミノキシジルには血管を拡張させる作用があります。
もともとは高血圧の治療薬として開発された経緯があり、特に内服薬(タブレット)を服用した場合、血圧が下がりすぎることで動悸、めまい、ふらつき、頭痛、むくみ(浮腫)などの全身性の副作用が現れることがあります。
これらの症状は通常、治療初期に現れやすいですが、3ヶ月目であっても体調によって現れる可能性があります。
症状を感じた場合はすぐに医師に連絡し、用量の調整や休薬を検討する必要があります。
主な副作用と初期の対応
| 副作用の種類 | 主な症状 | 初期の対応 |
|---|---|---|
| 皮膚症状(外用薬) | かゆみ、赤み、発疹、フケ、乾燥 | 症状が軽ければ様子を見る。続く・悪化する場合は医師に相談。 |
| 循環器系(主に内服薬) | 動悸、めまい、ふらつき、頭痛、むくみ | すぐに医師に相談。自己判断で服用を続けない。 |
| 多毛症 | 体毛(腕、脚、顔など)の増加 | 効果の裏返しでもある。気になる場合は医師に相談(特に女性)。 |

体毛の増加(多毛症)
ミノキシジルの作用は頭髪だけに限定されるわけではなく、特に内服薬の場合、血流に乗って全身に作用するため、腕や脚、顔(特に眉間や額)などの体毛が濃くなる「多毛症」が起こることがあります。
外用薬でも、塗布した薬剤が枕などを介して顔につくことで生じる可能性が指摘されています。これは薬剤が効いている証拠とも言えますが、美容的な観点から気になる方も多いでしょう。
特に女性の場合は大きな問題となります。この副作用が3ヶ月目頃から目立ち始めることもあります。程度がひどい場合は、医師と相談して用量を調整します。
副作用が出た場合の適切な対応
副作用が疑われる症状が出た場合、自己判断で「これくらいなら大丈夫だろう」と放置したり、逆に「もうだめだ」と治療を完全にやめてしまったりするのは良くありません。
まずは処方を受けたクリニックや医師に速やかに連絡し、状況を正確に伝えることが重要です。
症状の程度や種類に応じて使用量や使用回数の調整、一時的な休薬、他の薬剤への変更、あるいは保湿剤などの対症療法の併用など、専門家としての適切なアドバイスを受けられます。
安全に治療を続けるために、医師との連携は常に保つようにしましょう。
3ヶ月時点での効果判定の注意点
ミノキシジル使用3ヶ月の時点で、治療効果を自己判断するのは早計かもしれません。焦らず客観的に状態を把握するためには、いくつかの注意点を押さえる必要があります。
自己判断の落とし穴
毎日のように鏡を見ていると、わずかな変化には気づきにくいものです。
「3ヶ月経ったのに変わらない」と焦りを感じるかもしれませんが、実際には産毛が生えていたり、毛が太くなっていたりする可能性もあります。
逆に、初期脱毛が落ち着いて一時的に「増えた」と感じただけかもしれません。
主観的な感覚だけに頼った自己判断は、治療継続のモチベーションを不必要に下げてしまう危険性があります。
また、市販の安価なマイクロスコープなどで頭皮を見ても、毛周期の状態や毛包の深部の変化まで正確に把握することは困難です。
写真記録による客観的な比較
効果判定を客観的に行うために最も有効な方法の一つが、写真による記録です。
治療開始前(0ヶ月目)、1ヶ月目、3ヶ月目といった節目で、同じ場所(頭頂部、生え際など)、同じ角度、同じ明るさで頭部の写真を撮影し、比較します。
スマートフォンのカメラでも十分ですが、可能であれば家族やパートナーに撮影してもらうと、自分では見えにくい部分も正確に記録できます。
3ヶ月目の写真を開始前の写真と比較することで、主観ではわからなかったわずかな産毛の発生や毛密度の変化に気づけるかもしれません。
写真撮影のポイント
- 同じ場所(例:頭頂部、前頭部、M字部分)
- 同じ画角・距離
- 同じ照明・明るさ
専門医による評価の重要性
最も確実な効果判定は、専門のクリニックで医師による診察を受けることです。多くのAGAクリニックでは、専用のカメラやマイクロスコープを用いた頭皮の撮影・解析を行っています。
これにより、毛髪の太さ、本数(毛密度)、産毛の割合などを数値的・客観的に評価することが可能です。
3ヶ月目の診察でこれらのデータを治療開始前と比較することで、たとえ見た目の変化が乏しくても、データ上は改善が見られる(例:細かった毛が太くなり始めている)といったことが確認できる場合があります。
こうした客観的な評価は、治療継続の大きな支えとなります。
他の治療法との併用効果
ミノキシジルは発毛を促進する守りの治療薬ですが、AGAの根本原因である男性ホルモンの働きを抑制する抜け毛を防ぐ攻めの治療薬(フィナステリドやデュタステリド)と併用することで、より高い効果が期待できます。
もし3ヶ月時点でミノキシジル単体での効果が薄いと感じる場合でも、併用治療を行っている場合は抜け毛の減少(守りの効果)が先に出ている可能性もあります。
治療効果は複合的に判断する必要があり、それには専門医の知見が重要です。
AGA治療薬の役割分担
| 薬剤の種類 | 代表的な薬剤 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 発毛促進(攻め) | ミノキシジル(外用・内服) | 毛母細胞を活性化し、成長期を延長させる |
| 抜け毛抑制(守り) | フィナステリド、デュタステリド(内服) | AGAの原因物質(DHT)の生成を抑える |
ミノキシジル治療継続の鍵とモチベーション維持
ミノキシジル治療の効果を最大限に引き出すためには、3ヶ月以降も根気強く継続することが最も重要です。治療効果の波を理解し、日々のモチベーションを保つ工夫が求められます。
効果実感までの平均期間
前述の通り、3ヶ月はあくまで「変化が現れ始める」時期です。
多くの方が明らかな発毛効果、つまり産毛が太く黒い毛に成長し、毛量が増えたと実感できるようになるまでには、平均して6ヶ月から1年程度の期間が必要とされています。
AGA治療は短距離走ではなく、マラソンのような長期戦であることをまず理解し、心の準備をしておくことが大切です。
「3ヶ月でダメなら終わり」ではなく、「3ヶ月はスタートライン」と考えるようにしましょう。
治療の「中だるみ」を防ぐ方法
毎日薬を塗ったり飲んだりすることは、習慣化するまでは意外と面倒なものです。特に3ヶ月が過ぎ、初期の緊張感が薄れると「中だるみ」が起こりやすくなります。
「今日は疲れたから」「飲み会だから」と一日休み、それが二日、三日と続くと治療効果が低下するだけでなく、再開する意欲も失われがちです。
これを防ぐためには薬の使用を日常生活のルーティン(歯磨きや入浴など)とセットで組み込むことが有効です。
また、カレンダーに印をつける、スマートフォンのリマインダー機能を使うなど、物理的な「仕組み」を作るのも良い方法です。
生活習慣の改善がもたらす相乗効果
治療のモチベーションを保つ一つの方法として、ミノキシジル治療と並行して生活習慣の改善に取り組むこともお勧めします。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などは頭皮環境や血行を改善し、毛髪の健やかな成長をサポートします。
薬の効果だけでなく、自分自身の努力によっても「髪のために良いことをしている」という実感を持つことが、治療継続の精神的な支えになります。
生活習慣の改善はAGA治療だけでなく全身の健康にも寄与するため、一石二鳥と言えるでしょう。
治療のゴール設定と現実的な期待
「20代の頃のようにフサフサに戻りたい」という高いゴール設定は現実とのギャップに苦しみ、挫折の原因になりかねません。
ミノキシジル治療の現実的なゴールは、現状維持(抜け毛の進行を止める)あるいは、少し改善する(毛が太くなる、産毛が増える)程度に設定しておくのが賢明です。
特に治療開始から3ヶ月の時点では、過度な期待は禁物です。
小さな変化を見逃さず、「抜け毛が減ったかも」「産毛が生えてきた」といったポジティブな側面に目を向け、一喜一憂せずに淡々と治療を続ける姿勢が重要です。
医師と相談し、自分にとっての現実的なゴールを確認することも助けになります。
3ヶ月経過後の治療方針の見直し
ミノキシジルを3ヶ月使用しても期待した変化が見られない場合、あるいは副作用が続く場合は治療方針を見直すタイミングかもしれません。医師と相談し、次の選択肢を検討します。
医師に相談するタイミング
基本的には処方を受けたクリニックの指示通りのタイミング(例えば3ヶ月後、6ヶ月後など)で定期的に診察を受けることが前提です。
その上で3ヶ月が経過しても初期脱毛が終わらない、かゆみや動悸などの副作用が我慢できない、あるいは全く変化の兆しが感じられず不安が強いといった場合は、予定の診察日を待たずに早めに医師に相談しましょう。
自己判断で薬の量を変えたり、中止したりすることは絶対に避けてください。
ミノキシジル濃度の変更
外用薬(塗り薬)の場合、ミノキシジルの濃度にはいくつかの種類があります(例:1%、5%、あるいはクリニックによってはそれ以上)。
もし3ヶ月間、低濃度の製品を使用していて効果が実感できない場合、医師の判断でより高濃度の製剤に変更することを検討する場合があります。
ただし、濃度が高くなれば効果が期待できる反面、かゆみなどの副作用のリスクも高まる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
逆に、副作用が強く出ている場合は濃度を下げる、あるいは添加物の異なる製剤に変更するといった対応も考えられます。
内服薬への切り替えまたは併用
ミノキシジル外用薬を3ヶ月使用しても効果が薄い場合、より強力な作用が期待できる内服薬(ミノキシジルタブレット)への切り替え、あるいは併用を医師から提案されることがあります。
内服薬は全身の血流に乗って毛包に作用するため、外用薬が効きにくかった人でも効果が出る可能性があります。
しかし、同時に動悸やむくみなどの全身性副作用のリスクも高まるため、その適応は医師が患者の健康状態を総合的に判断して決定します。
安易な切り替えは危険を伴うため、十分な説明を受け、リスクとベネフィットを理解した上で選択する必要があります。
治療方針の見直しの選択肢
| 現状 | 見直しの選択肢(例) | 注意点 |
|---|---|---|
| 3ヶ月で効果実感なし(外用) | 外用薬の濃度を上げる | 副作用(かゆみ等)のリスク増大の可能性 |
| 3ヶ月で効果実感なし(外用) | 内服薬への切り替え・併用 | 全身性副作用(動悸・むくみ等)のリスク |
| 3ヶ月で効果実感なし | フィナステリド等の併用開始・変更 | 異なる作用機序の薬剤を追加する |
| 副作用が続く | 外用薬の濃度を下げる・製剤変更 | 原因(成分・添加物)の特定が必要 |
他の治療薬(フィナステリド・デュタステリド)の併用検討
もしミノキシジル単剤で治療を開始していた場合、3ヶ月の時点で効果が不十分であれば、AGAの進行を抑制するフィナステリドやデュタステリドといった内服薬の併用を強く勧められます。
これらはAGAの根本原因にアプローチする薬剤であり、ミノキシジルの発毛促進作用と組み合わせることで治療効果は格段に高まるとされています。
すでに併用している場合は薬剤の種類(フィナステリドからデュタステリドへ変更するなど)や用量の見直しが検討されることもあります。これらの判断はすべて医師の診察のもとで行われます。
ミノキシジルと併せて行いたい生活習慣
ミノキシジル治療の効果を高めるためには薬だけに頼るのではなく、頭皮と毛髪の健康を支える生活習慣を整えることが重要です。
日々の小さな積み重ねが、3ヶ月後、半年後の結果につながります。
頭皮ケアと正しいシャンプーの方法
頭皮環境を清潔に保つことは、ミノキシジル外用薬の浸透を助ける上でも重要です。しかし、洗いすぎはかえって頭皮を乾燥させ、バリア機能を低下させてしまいます。
シャンプーは1日1回、夜に行うのが基本です。洗う際は爪を立てず、指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないよう十分に洗い流しましょう。
洗浄力の強すぎるシャンプーは避け、アミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のものを選ぶと良いでしょう。また、洗髪後はドライヤーでしっかりと乾かし、頭皮の雑菌繁殖を防ぎます。
バランスの取れた食事と栄養素
毛髪は主に「ケラチン」というタンパク質でできています。そのため、良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)をしっかり摂ることが基本です。
また、タンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー、ナッツ類など)や、頭皮の血行を促進するビタミンE(アーモンド、アボカドなど)、頭皮の新陳代謝を助けるビタミンB群(豚肉、マグロ、玄米など)も重要です。
特定の食品だけを食べるのではなく、様々な食品をバランス良く取り入れた食生活を心がけましょう。3ヶ月の間に食生活を見直すことも治療の一環です。
毛髪の健康をサポートする主な栄養素
| 栄養素 | 主な役割 | 多く含まれる食品(例) |
|---|---|---|
| タンパク質 | 毛髪の主成分(ケラチン)の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
| 亜鉛 | タンパク質の合成を助ける | 牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類 |
| ビタミンB群 | 頭皮の新陳代謝、血行促進 | 豚肉、レバー、マグロ、玄米、バナナ |
| ビタミンE | 血行促進、抗酸化作用 | アーモンド、アボカド、うなぎ、かぼちゃ |
睡眠の質とストレス管理
毛髪の成長には「成長ホルモン」が深く関わっており、このホルモンは主に睡眠中に分泌されます。
特に入眠後の最初の深い眠り(ノンレム睡眠)の時間帯に多く分泌されるため、単に睡眠時間を確保するだけでなく、「睡眠の質」を高めることが重要です。
寝る前のスマートフォン操作を控える、リラックスできる環境を整えるなどの工夫をしましょう。
また、過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、頭皮の血流を悪化させる一因となります。自分なりのストレス解消法を見つけ、溜め込まないようにすることも、健やかな毛髪を育むためには必要です。
喫煙や過度な飲酒の影響
喫煙はニコチンの作用によって血管を収縮させ、頭皮への血流を著しく悪化させます。
毛根に十分な酸素や栄養素が届かなくなれば、ミノキシジルの効果も半減してしまう可能性があります。AGA治療を機に、禁煙または節煙に踏み切ることを強くお勧めします。
また、過度な飲酒は肝臓でアルコールを分解する際に、毛髪の成長に必要なアミノ酸やビタミンを大量に消費してしまいます。
適度な飲酒(純アルコール量で1日20g程度)なら問題ないとされていますが、飲み過ぎは避け、休肝日を設けるなどの配慮が大切です。

生活習慣の見直しポイント
| 項目 | 改善の方向性 |
|---|---|
| 食事 | タンパク質、亜鉛、ビタミンをバランス良く摂取する |
| 睡眠 | 量と質を確保し、成長ホルモンの分泌を促す |
| ストレス | 適度な運動や趣味でストレスを溜めない |
| 喫煙・飲酒 | 禁煙・節煙。過度な飲酒を控える |
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ミノキシジルに関するよくある質問
- ミノキシジルをやめたらどうなりますか?
-
ミノキシジルの使用を中止すると、治療によって維持されていた毛髪(産毛や太くなった毛)は、数ヶ月かけて徐々に元の状態に戻っていく可能性が高いです。
効果を維持するためには、継続的な使用が原則となります。
- 3ヶ月使っても初期脱毛が続くのですが?
-
通常、初期脱毛は使用開始後数週間から1ヶ月半程度で落ち着くことが多いです。
もし3ヶ月経過しても脱毛が続く、あるいは悪化する場合は他の脱毛原因も考えられるため、速やかに医師に相談してください。
- 外用薬と内服薬はどちらが良いですか?
-
外用薬は頭皮に直接塗布するタイプで、局所的に作用します。内服薬は体内から作用し、より広範囲に効果が期待できる反面、全身性の副作用のリスクも考慮する必要があります。
どちらが適しているかは、ご自身の症状や体質、医師の診断によります。
- ミノキシジルはどこで購入できますか?
-
ミノキシジルを含む医薬品は、医師の診察・処方に基づいてクリニックで入手する方法が最も安全です。
一部は市販薬(外用薬)として薬局やドラッグストアで購入できるものもありますが、濃度や種類が限られます。
- ミノキシジルの使用を忘れた場合はどうすればよいですか?
-
1回忘れた場合、気づいた時点で使用(塗布・服用)してください。ただし、次の使用時間が近い場合は、忘れた分は飛ばして次の分から通常通り使用してください。
2回分を一度に使用(塗布・服用)することは、副作用のリスクを高めるため絶対に避けてください。

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