放射線治療による脱毛の症状とセルフチェックの仕方

放射線治療による脱毛の症状とセルフチェックの仕方

放射線治療はがん治療の有効な選択肢の一つですが、副作用として脱毛が起こることがあります。特に男性の患者様にとっては、外見の変化が大きな悩みとなることも少なくありません。

この記事では、放射線治療による脱毛がいつから始まり、どのような症状が現れるのか、そしてご自身でできるセルフチェックの方法について詳しく解説します。

脱毛の範囲や時期、頭皮のケア方法を理解し、適切な対策を講じることで、治療期間中の不安を少しでも和らげるお手伝いができれば幸いです。

ご自身の状態を把握し、必要に応じて医師に相談するための知識を身につけましょう。

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

目次

脱毛が始まるタイミング – 治療開始からの経過日数

放射線治療を開始すると、多くの方が脱毛の時期について気にします。脱毛がいつから始まるのか、その一般的な目安と、個人差について理解しておくことが大切です。

放射線治療と脱毛の初期サイン

放射線治療開始から4週間までの経過を示すシンプルなタイムライン図

脱毛は治療開始直後に起こるわけではありません。多くの場合、治療を開始してから数週間で最初の兆候が現れます。この初期サインを見逃さず、心の準備と頭皮ケアの開始時期の目安にしましょう。

脱毛開始の一般的な時期

一般的に、放射線治療による脱毛は、治療開始後2週間から3週間程度で始まるといわれています。

ただし、これはあくまで目安であり、使用する放射線の種類や量、照射部位、そして個人の体質によって脱毛が始まる時期は前後することがあります。

初期には、枕に付着する抜け毛の量が増えたり、髪をとかした際に普段より多くの毛がブラシについたりすることで気づくことが多いです。

脱毛開始時期の目安

経過期間主な兆候推奨される行動
治療開始~1週間目立った変化は少ない頭皮ケアの準備、情報収集
治療開始2~3週間抜け毛の増加、脱毛開始優しい頭皮ケアの開始、医師への相談
治療開始4週間以降脱毛が進行継続的な頭皮ケア、精神的サポートの活用

個人差と影響因子

脱毛の始まる時期や程度には個人差が大きいです。例えば、放射線の総線量が多い場合や、広範囲に照射する場合には、脱毛が早く始まったり、より多くの毛が抜けたりする傾向があります。

また、毛周期(毛が生え変わるサイクル)も影響し、成長期にある毛髪が多いほど、脱毛の影響を受けやすいと考えられます。

ご自身の治療計画と照らし合わせ、担当医に脱毛の副作用に関する詳しい説明を求めることが大切です。

脱毛の進行とピーク

脱毛量が時間とともに増えピークに達するイメージグラフ

脱毛が始まると、その進行具合やいつピークを迎えるのかが気になります。治療期間を通じて脱毛は進行し、一定の時期に最も抜け毛が多くなることが一般的です。

治療期間中の変化

脱毛は一度にすべての毛が抜け落ちるわけではなく、徐々に進行します。治療が進むにつれて、照射範囲の毛髪が薄くなり、地肌が見えてくることがあります。

この変化のスピードも個人差があり、数週間かけてゆっくりと進行する場合もあれば、比較的短期間で広範囲に脱毛が進むこともあります。

治療の全期間を通じて、頭皮の状態を注意深く観察し、適切なケアを続けることが求められます。

副作用としての脱毛の理解

放射線治療による脱毛は、治療の副作用の一つとして理解することが重要です。これは治療が効果を発揮している証拠の一つとも捉えられますが、患者様にとっては精神的な負担となることもあります。

脱毛の範囲や程度、回復の見込みについて事前に医師から十分な説明を受け、正しい情報に基づいて心の準備をしましょう。

ウィッグの使用や帽子の活用など、外見上の変化に対する対策も早期から検討すると良いでしょう。

部位別の脱毛パターン – 頭部・顔・体毛の違い

部位別脱毛ゾーン図

放射線治療による脱毛は、照射された部位に限定して起こるのが特徴です。そのため、頭部、顔面、その他の体毛で脱毛の現れ方や注意すべき点が異なります。

頭部脱毛の特徴

頭部への放射線治療は、多くの場合、頭髪の脱毛を引き起こします。照射された範囲の頭皮に影響が現れ、そのケアが重要になります。

照射範囲と脱毛の関連性

頭部への放射線治療では、腫瘍の位置や大きさ、治療計画に基づいて照射範囲が決定されます。脱毛も、この照射範囲に一致して起こります。

例えば、脳腫瘍の治療で頭部全体に照射する場合は広範囲な脱毛が見られますが、特定の部分に限定して照射する場合は、その部分のみが脱毛することがあります。

ご自身の照射範囲を正確に把握し、脱毛が起こりうる場所を理解しておくことが、頭皮ケアやウィッグの選択に役立ちます。

頭皮ケアの重要性

脱毛が起こると、頭皮は非常にデリケートな状態になります。外部からの刺激に弱くなり、乾燥やかゆみ、時には痛みを感じることもあります。そのため、優しい頭皮ケアが重要です。

低刺激性のシャンプーを使用し、洗髪時は爪を立てずに指の腹で優しく洗い、ぬるま湯で十分にすすぎます。洗髪後はタオルで軽く押さえるように水分を拭き取り、ドライヤーの使用は低温・弱風にするか、自然乾燥を心がけましょう。

保湿剤を使用して頭皮の乾燥を防ぐことも、かゆみ対策として有効です。

頭部脱毛時のケアポイント

  • 低刺激性のシャンプーを選ぶ
  • 洗髪は優しく、爪を立てない
  • 十分なすすぎを心がける
  • タオルドライは押さえるように
  • 頭皮の保湿を忘れない

顔面部の脱毛

顔面周辺への放射線治療では、眉毛、まつ毛、ひげといった顔の毛にも影響が出ることがあります。これらの部位の脱毛は、外見だけでなく機能面でも影響を及ぼすため、適切な対策が必要です。

眉毛・まつ毛の脱毛と対策

眉毛やまつ毛は、顔の印象を大きく左右する部分です。これらの毛が抜けると、外見の変化に戸惑う方も少なくありません。眉毛が抜けた場合は、アイブロウペンシルやパウダーで描くことで自然に見せることができます。

まつ毛が抜けると、目にゴミが入りやすくなったり、まぶしさを感じやすくなったりすることがあります。この場合は、眼鏡やサングラスを使用することで目を保護できます。

また、専用の育毛剤の使用については、必ず医師に相談してから判断しましょう。ウィッグと同様に、眉毛用のスタンプやシールといった対策グッズも市販されています。

ひげの脱毛と影響

男性の場合、口周りや顎に放射線治療を行うと、ひげが抜けることがあります。

毎日ひげを剃る習慣のある方にとっては、一時的に手間が省けるかもしれませんが、治療終了後に再び生えてくる際に、毛質が変わったり、生え方がまだらになったりすることもあります。

ひげの脱毛も、照射範囲に限定されるため、治療計画をよく確認しましょう。

体毛の脱毛

放射線治療が胸部や腹部、四肢など、頭部や顔面以外の部位に行われる場合、その部位の体毛が抜けることがあります。

照射部位による体毛の変化

例えば、胸部に照射すれば胸毛が、腕や脚に照射すればそれぞれの部位の毛が抜ける可能性があります。体毛の脱毛は、頭髪ほど目立たないかもしれませんが、患者様によっては気になることもあります。

脱毛の範囲や程度は、頭髪と同様に照射線量や範囲、個人の体質によって異なります。

体毛脱毛時のケアポイント

体毛が抜けた部位の皮膚も、頭皮と同様にデリケートになることがあります。衣類による摩擦を避け、締め付けの少ないゆったりとした服装を心がけると良いでしょう。

入浴時には、石鹸やボディソープをよく泡立てて優しく洗い、ナイロンタオルなどでゴシゴシこすらないように注意します。入浴後は、保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐケアを行うことが大切です。

部位別脱毛の特徴とケアの方向性

部位脱毛の特徴主なケア・対策
頭部照射範囲に一致した脱毛、頭皮の敏感化低刺激シャンプー、保湿、紫外線対策、ウィッグ・帽子
顔面部 (眉毛・まつ毛)外見への影響、目の保護機能低下メイクでのカバー、眼鏡・サングラス、医師への相談
体毛照射部位の体毛減少、皮膚の敏感化衣類の摩擦軽減、優しい洗浄、保湿ケア

脱毛の進行スピード – 急激な変化と緩やかな変化

脱毛がどのくらいの速さで進むかは、多くの方が心配する点です。進行スピードには個人差があり、いくつかの要因が影響します。

脱毛スピードに影響する要因

脱毛の進行速度は、一律ではありません。放射線の照射方法や患者様ご自身の状態によって、急激に変化することもあれば、比較的緩やかに進むこともあります。

放射線の線量と脱毛速度

一般的に、放射線の総線量が多いほど、また1回あたりの照射線量が大きいほど、脱毛の進行は早くなる傾向があります。これは、毛母細胞が受けるダメージの大きさと関連しています。

治療計画を立てる際に、担当医は脱毛を含む副作用のリスクと治療効果のバランスを考慮します。脱毛の副作用の程度や進行スピードについて不安な場合は、遠慮なく医師に質問し、詳しい説明を受けましょう。

体質と脱毛の進み方

個人の体質や毛周期も、脱毛の進行スピードに影響を与える要因の一つです。

元々毛量が多い方や毛が太い方は、脱毛が始まっても目立ちにくいことがありますが、進行が始まると変化を実感しやすいかもしれません。

逆に、毛が細い方や毛量が少ない方は、わずかな脱毛でも変化を感じやすいことがあります。これらはあくまで一般的な傾向であり、一概には言えません。

急激な脱毛への心構えと対策

帽子・弱風ドライヤー・保湿ローションで頭皮を守る3ステップ図

もし脱毛が急激に進んだ場合、精神的なショックを受けることもあるかもしれません。あらかじめ心構えをしておき、適切な対策を準備しておくことが大切です。

精神的なケアと準備

脱毛は外見に大きな変化をもたらすため、精神的な負担を感じる方は少なくありません。特に急激な脱毛は、心の準備が追いつかないこともあります。

治療開始前から、ウィッグや帽子などの準備を進めておくと、いざという時に慌てずに済みます。また、家族や友人、医療スタッフ、あるいは同じ経験を持つ患者仲間などに、自分の気持ちを話してみることも精神的なケアにつながります。

一人で抱え込まず、周囲に相談することも考えてみましょう。

急な変化に対する頭皮ケア

急激に脱毛が進行すると、頭皮が一度に広範囲に露出することになります。露出した頭皮は非常にデリケートで、乾燥や刺激、紫外線に対して無防備な状態です。

このような場合、特に丁寧な頭皮ケアが求められます。低刺激性の保湿剤をこまめに塗布し、外出時には必ず帽子やスカーフで頭皮を保護しましょう。

もし頭皮に赤みや強いかゆみ、痛みなどの異常を感じたら、すぐに医師に相談することが重要です。自己判断で市販薬を使用するのは避けましょう。

完全脱毛と部分脱毛 – 症状の程度を見分ける

完全脱毛と部分脱毛の頭皮状態を左右比較した線画

放射線治療による脱毛は、必ずしも全ての毛が抜け落ちる「完全脱毛」になるとは限りません。照射範囲や線量によって「部分脱毛」で済む場合もあります。

脱毛の程度の違い

脱毛の程度は、治療内容や個人の状態によって大きく異なります。どの程度の脱毛が起こりうるのか、事前に理解しておくことが大切です。

照射範囲と線量による影響

脱毛の程度を左右する最も大きな要因は、放射線の照射範囲と総線量です。照射範囲が狭く、線量が比較的少ない場合は、部分的な脱毛や毛が細くなる程度で済むことがあります。

一方、広範囲に高線量の照射が行われる場合は、完全脱毛に至る可能性が高まります。ご自身の治療計画における脱毛の予測される程度について、担当医に確認しましょう。

原因となる照射の特性を理解することが、心の準備につながります。

部分脱毛の特徴とケア

部分脱毛の場合、毛髪がまばらになったり、一部だけが薄くなったりします。この場合でも、残っている毛髪と露出した頭皮の両方のケアが重要です。

残った毛髪は大切に扱い、ブラッシングは優しく行いましょう。露出した頭皮は乾燥しやすいため、保湿ケアを欠かさず行います。

部分的な脱毛であれば、髪型を工夫したり、部分ウィッグを使用したりすることで、外見上の変化をカバーすることも可能です。

完全脱毛の可能性と対処

治療内容によっては、照射範囲の毛髪が全て抜け落ちる完全脱毛となることもあります。その可能性と、そうなった場合の対処法を知っておきましょう。

永久脱毛のリスク

通常、放射線治療による脱毛は一時的なもので、治療が終了すれば数ヶ月で再び毛が生え始めます。

しかし、非常に高い線量の放射線が照射された場合など、ごく稀に毛根が大きなダメージを受け、永久脱毛となる可能性もゼロではありません。

このリスクについては、治療開始前に担当医から説明があります。不安な点はしっかりと確認し、理解しておくことが重要です。回復の見込みについても、医師に相談しましょう。

完全脱毛時のウィッグや帽子の活用

完全脱毛となった場合、外見上の変化は大きくなります。この場合、ウィッグ(かつら)や帽子、スカーフなどが有効な対策となります。

医療用ウィッグは、肌触りや通気性に配慮されたものが多く、自然な見た目のものも増えています。治療前から試着して、自分に合うものを選んでおくと安心です。

帽子もおしゃれなデザインのものが多く、頭皮の保護と保温にも役立ちます。これらを活用することで、QOL(生活の質)の維持につながります。

脱毛の程度に応じた対処法

脱毛の程度主な状態推奨される対処・対策
軽度(毛が細くなる、少し抜ける)見た目の変化は少ないが、抜け毛は増える優しい頭皮ケア、刺激を避ける
中等度(部分的に薄くなる)地肌が透けて見える部分がある頭皮ケア、保湿、髪型工夫、部分ウィッグ検討
高度(広範囲または完全脱毛)照射範囲の毛髪がほぼ全て抜ける徹底した頭皮保護・保湿、ウィッグ・帽子の活用、精神的ケア

毛髪以外の症状 – 頭皮の変化と随伴症状

赤み・乾燥・かゆみ・痛みを示す頭皮症状アイコン

放射線治療による影響は、脱毛だけに限りません。頭皮そのものにも様々な変化が現れることがあり、これら随伴症状への理解とケアも重要です。

頭皮に見られる変化

脱毛と同時に、あるいは脱毛後に、頭皮に赤み、乾燥、かゆみ、痛みといった症状が現れることがあります。これらは放射線性皮膚炎の兆候である可能性もあります。

皮膚炎のサインと症状

放射線治療の影響で、照射部位の皮膚が日焼けのように赤くなったり、ヒリヒリしたりすることがあります。これを放射線性皮膚炎といいます。

初期には軽い赤みや乾燥が見られ、進行すると水ぶくれやただれ(びらん)、皮膚が剥がれ落ちる(落屑)といった症状が現れることもあります。

頭皮にこのような皮膚炎の兆候が見られた場合は、自己判断せずに速やかに医師に相談し、適切な指示を受けることが大切です。

特に、かゆみが強い場合は、掻き壊して症状を悪化させないよう注意が必要です。

頭皮の乾燥とフケ

放射線治療により、頭皮の皮脂腺や汗腺の機能が低下し、頭皮が乾燥しやすくなることがあります。頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になったり、かゆみが生じたりします。

また、乾燥によってフケのような細かい皮膚の剥がれが目立つこともあります。この対策として、低刺激性の保湿ローションやオイルなどで頭皮を十分に保湿することが効果的です。

加湿器を使用して室内の湿度を保つことも、乾燥対策の一つです。

頭皮の痛みや知覚過敏

脱毛した頭皮は、衣服の摩擦や寝具との接触、あるいは軽く触れただけでも痛みを感じたり、ピリピリとした知覚過敏の状態になったりすることがあります。

これは、放射線による神経終末への影響や皮膚炎によるものと考えられます。痛みが強い場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。鎮痛剤の処方や、痛みを和らげるためのケア方法についてアドバイスを受けられます。

ナイトキャップの使用も、就寝中の頭皮への刺激を和らげるのに役立ちます。

脱毛に伴うその他の不快な症状

頭皮の直接的な変化以外にも、脱毛に関連して生じる不快な症状があります。これらについても理解し、適切に対処しましょう。

かゆみの原因と対策

頭皮のかゆみは、放射線治療による脱毛時によく見られる症状の一つです。主な原因としては、頭皮の乾燥、皮膚炎、あるいは毛が抜ける際の毛穴への刺激などが考えられます。

かゆみが強いと、無意識のうちに掻いてしまい、頭皮を傷つけて症状を悪化させる可能性があります。対策としては、まず頭皮を清潔に保ち、十分に保湿することが基本です。

冷たいタオルで軽く冷やすと、一時的にかゆみが和らぐこともあります。それでもかゆみが治まらない場合は、医師に相談し、かゆみ止めの外用薬などを処方してもらうことを検討しましょう。

頭皮の主な変化とセルフケアのポイント

症状主な特徴セルフケアのポイント
皮膚炎(赤み、ヒリヒリ)日焼けのような炎症医師に相談、刺激を避ける、冷却
乾燥、フケ頭皮の水分不足、白い粉状の落屑低刺激性保湿剤の使用、加湿
かゆみむずむずする不快感掻かない、保湿、冷却、医師に相談
痛み、知覚過敏接触による痛み、ピリピリ感刺激を避ける、ナイトキャップ、医師に相談

照射部位の熱感や腫れ

治療後、照射部位に軽い熱感や腫れぼったさを感じることがあります。これは一時的な炎症反応であることが多いですが、症状が強い場合や長引く場合は医師に伝えましょう。

冷却パックなどで軽く冷やすと症状が和らぐことがありますが、冷やしすぎには注意が必要です。

セルフチェックの基本 – 毎日確認すべきポイント

鏡で見る・触れる・記録するセルフチェックの3ステップ図

放射線治療中の脱毛や頭皮の状態変化を早期に把握するためには、毎日のセルフチェックが重要です。ご自身で確認すべきポイントを理解し、実践しましょう。

毎日の頭皮チェックの重要性

日々の小さな変化に気づくことが、適切なケアや早期対処につながります。特に頭皮は自分では見えにくい部分もあるため、意識してチェックする習慣をつけましょう。

観察するべき頭皮の状態

毎日、鏡を使って頭皮全体の色調、乾燥の具合、フケの有無、赤みや湿疹、傷がないかなどを観察します。特に、放射線が照射された範囲は念入りにチェックしましょう。

皮膚炎の初期サインである赤みや、乾燥による粉吹きなどを見逃さないようにします。もし変化があれば、いつから、どのような変化かを記録しておくと、医師への相談時に役立ちます。

脱毛量の確認方法

脱毛が始まると、抜け毛の量が気になります。毎朝、枕元の抜け毛の量を確認したり、洗髪時やブラッシング時の抜け毛の量を意識したりすることで、脱毛の進行度合いをある程度把握できます。

ただし、抜け毛の量に一喜一憂しすぎず、あくまで目安として捉え、頭皮の状態と合わせて総合的に判断することが大切です。

鏡を使ったセルフチェック

鏡を効果的に使うことで、頭頂部や後頭部など、自分では直接見えにくい部分もしっかりと確認できます。

頭皮全体をチェックするコツ

手鏡と洗面台の鏡などを組み合わせると、頭皮全体を様々な角度から確認できます。明るい照明の下で行うと、小さな変化も見つけやすくなります。髪をかき分けながら、頭皮の表面を丁寧に見ていきましょう。

特に、以前は髪に隠れていた部分が露出してきたら、その部分の皮膚の状態を入念に確認します。

照明の活用と注意点

自然光に近い明るい照明の下でチェックするのが理想です。暗い場所では、頭皮の微妙な色の変化や小さな湿疹などを見逃してしまう可能性があります。

ただし、拡大鏡などを使って過度に神経質になりすぎる必要はありません。あくまで日々の変化を捉えるためのチェックと心得ましょう。

触診によるチェック

目で見るだけでなく、実際に頭皮に触れてみることも、状態変化の把握に役立ちます。清潔な手で優しく触れてみましょう。

頭皮の凹凸や熱感の確認

指の腹を使って、頭皮全体を優しく触れてみましょう。普段と違う凹凸やしこりがないか、特定の部分だけが熱っぽくなっていないかなどを確認します。

もし痛みを感じる部分があれば、その場所や痛みの種類(ズキズキ、ヒリヒリなど)も記録しておくと良いでしょう。

リンパ節の腫れの確認

首の周りや耳の後ろ、後頭部のリンパ節が腫れていないかも、合わせて確認しておくと安心です。

ただし、リンパ節の腫れは様々な原因で起こりうるため、もし気になった場合は自己判断せず、医師に相談してください。

セルフチェック時の観察ポイント

チェック項目確認する内容注意点
頭皮の色赤み、普段と違う色調明るい場所で確認
頭皮の乾燥・フケカサつき、粉吹き、フケの量保湿ケアの目安にする
湿疹・傷小さなブツブツ、ただれ、引っかき傷掻かないように注意
脱毛量枕元、洗髪時、ブラッシング時の抜け毛過度に気にしすぎない
触診(凹凸・熱感)しこり、腫れ、部分的な熱っぽさ優しく触れる

脱毛の記録方法 – 写真撮影と観察記録のコツ

スマホ撮影とノート記録で経過を残す様子のイラスト

脱毛の進行状況や頭皮の状態変化を客観的に把握し、医師に正確に伝えるためには、記録を残すことが非常に有効です。写真とメモを組み合わせた記録方法のコツを紹介します。

写真記録のポイント

写真は、見た目の変化を時系列で比較するのに役立ちます。定期的に撮影することで、わずかな変化にも気づきやすくなります。

定期的な撮影のすすめ

治療開始前、脱毛が始まった時期、脱毛のピーク時、そして回復期など、節目節目で頭部の写真を撮影しておくことをおすすめします。

例えば、1週間に1回、同じ曜日に撮影するなど、一定の間隔で記録を残すと、変化の推移がよく分かります。これにより、脱毛の進行度や回復のペースを客観的に把握できます。

同じ条件下での撮影方法

比較しやすくするためには、毎回できるだけ同じ条件で撮影することが大切です。同じ場所、同じ照明、同じ角度、同じ距離から撮影するように心がけましょう。

スマートフォンのカメラでも十分ですが、ピントをしっかり合わせ、頭皮の状態がよく分かるように撮影します。正面、側面、頭頂部、後頭部など、複数のアングルから撮影しておくと、より詳細な記録になります。

写真撮影のポイント

  • 定期的に(例:週に一度)撮影する
  • 同じ場所、同じ照明、同じ角度で撮影する
  • ピントを合わせ、鮮明な画像を心がける
  • 複数のアングル(正面、側面、頭頂部など)から撮影する

観察記録のつけ方

写真だけでは伝わらない情報、例えばかゆみや痛みといった自覚症状や、気づいたことなどをメモとして残しておきましょう。

記録するべき項目

日付とともに、以下のような項目を記録すると良いでしょう。

観察記録に残すべき主な情報

記録項目具体的な内容例記録のポイント
日付・時間例:202X年X月X日 朝いつの状態かを明確にする
頭皮の状態赤み、乾燥、フケ、湿疹の有無、かゆみ、痛み具体的に記述する
抜け毛の量多い、普通、少ない、枕元の量など主観でOK、変化を捉える
使用したケア用品シャンプーの種類、保湿剤などケアとの関連を見るため
その他気づいたこと体調、気分、医師からの指示など自由に記述

これらの情報を簡潔にメモしておくだけでも、後から振り返ったときや医師に相談する際に非常に役立ちます。

特に、皮膚炎のような症状が出た場合は、その程度や範囲、持続時間などを詳しく記録することが重要です。

記録が回復への手がかりに

治療が終了し、毛髪が回復してくる時期にも記録を続けることは有益です。

いつ頃からうぶ毛が生え始めたか、どのくらいのペースで毛量が増えてきたかなどを記録しておくことで、回復の過程を実感でき、安心感にもつながります。

また、万が一、回復が遅い場合や異常が見られた場合に、医師に相談する際の重要な情報となります。

医師に伝えるべき症状 – 相談するタイミングは?

男性患者が医師に頭皮症状を相談する場面

セルフチェックで気になる症状が見つかった場合や、普段と違うと感じた場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。特に注意すべき症状と、受診のタイミングについて解説します。

早期相談が重要な症状

中には、放置すると悪化したり、専門的な処置が必要になったりする症状もあります。以下のような症状が見られた場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

我慢できない頭皮の痛みやかゆみ

頭皮の痛みやかゆみが非常に強く、日常生活に支障をきたすような場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。強いかゆみは、掻き壊しによる二次感染のリスクも高めます。

医師は、症状に応じた適切な塗り薬や内服薬を処方してくれます。また、痛みの原因を特定し、それに対する対策を講じることが重要です。

これらの症状は、QOLを著しく低下させるため、早期の対処が求められます。

急激な皮膚炎の悪化

頭皮の赤みや腫れが急に広がったり、水ぶくれやただれ(びらん)、じゅくじゅくとした浸出液が出てきたりするなど、皮膚炎の症状が明らかに悪化している場合は、速やかに受診が必要です。

これらは重度の放射線性皮膚炎や細菌感染の可能性も考えられ、専門的な治療が必要となることがあります。早期に適切な処置を受けることで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにつながります。

自己判断で市販の薬を使用することは避け、必ず医師の指示に従いましょう。

医師への伝え方のポイント

医師に症状を的確に伝えるためには、いくつかのポイントがあります。事前に情報を整理しておくと、診察がスムーズに進みます。

具体的な症状と時期を伝える

「いつから」「どのような症状が」「どのくらいの範囲に」「どの程度の強さで」現れているのかを具体的に伝えましょう。

「なんとなく調子が悪い」といった曖昧な表現ではなく、例えば「3日前から頭頂部にかゆみがあり、昨夜から赤みも出てきた。かゆみで夜眠れないことがある」というように、具体的な情報を提供することが大切です。

セルフチェックの記録があれば、それを見せながら説明するとより伝わりやすくなります。

記録を持参するメリット

前述した写真記録や観察記録は、医師が客観的に症状の経過を把握する上で非常に役立ちます。言葉だけでは伝えきれない微妙な変化も、写真を見せることで正確に伝わります。

また、記録を見返すことで、自分自身でも症状のパターンや傾向に気づくことができ、医師との相談内容もより深まります。

治療中の副作用管理において、患者様自身による記録は、医療者との重要な情報共有ツールとなります。

医師に相談すべき症状のチェックリスト

症状のカテゴリー具体的な症状例相談の目安
皮膚炎の悪化広範囲の赤み・腫れ、水ぶくれ、ただれ、浸出液、出血速やかに受診
強いかゆみ・痛み日常生活に支障が出る、眠れないほどのかゆみ・痛み我慢せず早めに相談
感染の兆候膿が出る、発熱、悪寒、照射部位の強い熱感・腫れ・痛み速やかに受診
その他予期せぬ範囲の脱毛、説明以上の急激な脱毛、強い不安感気になることがあれば遠慮なく相談

よくある質問 (Q&A)

放射線治療による脱毛に関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ご自身の疑問や不安の解消にお役立てください。

脱毛は必ず起こるのか

放射線治療を受けたからといって、必ずしも全員に同じように脱毛が起こるわけではありません。脱毛の有無や程度は、放射線の種類、総線量、照射範囲、照射方法、そして患者様個人の体質など、様々な要因によって異なります。

一般的には、頭部への照射で一定以上の線量が当たると脱毛が起こりやすいとされています。

治療開始前に、担当医からご自身の治療計画における脱毛の副作用の可能性や予測される程度について、詳しい説明がありますので、よく確認しましょう。

髪は元通りに生えてくるのか

多くの場合、放射線治療による脱毛は一時的なものであり、治療が終了してから3ヶ月から6ヶ月程度で再び毛が生え始めることが期待できます。

最初はうぶ毛のような細い毛が生え始め、徐々に太くしっかりとした毛に成長していきます。完全に元の状態に戻るまでには、半年から1年、あるいはそれ以上かかることもあります。

ただし、前述の通り、非常に高線量の放射線が照射された場合など、まれに永久脱毛となることや、回復した毛髪の質(太さ、色、くせ毛など)が以前と変わることがあります。

回復の時期や程度には個人差があることを理解しておきましょう。

シャンプーは毎日しても良いか

頭皮を清潔に保つことは重要ですが、洗いすぎはかえって頭皮の乾燥を招き、バリア機能を低下させる可能性があります。シャンプーの頻度は、頭皮の状態や医師の指示に従いましょう。

一般的には、低刺激性のシャンプーを使い、1日1回または2日に1回程度、優しく洗髪することが推奨されます。汗をかきやすい時期や、特に汚れが気になる場合は、医師に相談の上で頻度を調整してください。

大切なのは、頭皮に刺激を与えない洗い方と、十分なすすぎです。

ウィッグや帽子はいつから使うべきか

ウィッグや帽子の使用開始時期に特に決まりはありません。脱毛が始まる前から準備しておき、ご自身のタイミングで使い始めるのが良いでしょう。

脱毛が気になり始めたら、あるいは精神的な安心感を得るために早めに使用を開始する方もいます。ウィッグの場合は、髪があるうちに試着して選んでおくと、より自然なものを選びやすくなります。

帽子は、頭皮の保護や保温、紫外線対策としても役立つため、脱毛の有無にかかわらず、治療期間中から活用することをおすすめします。

ご自身のライフスタイルや好みに合わせて、快適に使用できるものを選びましょう。

頭皮のかゆみが強い時の対処法

まず、掻き壊さないことが最も重要です。

頭皮を清潔に保ち、低刺激性の保湿剤で十分に保湿をしましょう。冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んだもので、かゆい部分を優しく冷やすと、一時的に症状が和らぐことがあります。

それでもかゆみが治まらない場合は、我慢せずに医師に相談してください。かゆみの原因や程度に応じて、適切な外用薬(塗り薬)やかゆみ止めの内服薬を処方してもらえます。

自己判断で市販薬を使用するのは避けましょう。

皮膚炎悪化を防ぐ日常の心がけ
ケアのポイント具体的な行動目的
刺激を避ける爪を立てない、ゴシゴシこすらない、締め付ける帽子を避ける物理的な刺激による悪化防止
清潔保持医師の指示に従い優しく洗髪、汗をかいたら拭く細菌感染のリスク低減
保湿低刺激性の保湿剤をこまめに塗布乾燥によるバリア機能低下を防ぐ
紫外線対策外出時は帽子や日傘を使用紫外線による皮膚ダメージの防止

これらの日常ケアを心がけることで、皮膚炎の症状をコントロールしやすくなります。

もし皮膚炎の兆候が見られたり、症状が悪化したりした場合は、速やかに医師に相談することが重要です。

続けて読んで欲しい記事

放射線治療による脱毛の「原因」や、脱毛が起こる前に行われる「検査」について、より詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。

放射線治療による脱毛の原因と検査法

脱毛の背景を深く理解することで、治療への不安を和らげ、より前向きに取り組むための一助となるでしょう。

Reference

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