放射線治療による脱毛の治療と予防

放射線治療は、がん治療における重要な手段の一つですが、副作用として脱毛が起こることがあります。

この記事では、薄毛に悩む男性患者さんに向けて、放射線治療による脱毛のメカニズムを解説し、治療前から治療後、そして日常生活における脱毛の予防策や頭皮ケア、さらには万が一脱毛した場合の治療法や医療用ウィッグの活用まで、幅広く情報を提供します。

脱毛のリスクを理解し、適切な対策を講じることで、患者さんのQOL（生活の質）維持をサポートします。

治療前の予防対策 – 脱毛リスクを減らす準備

放射線治療を開始する前から、脱毛のリスクを少しでも減らすための準備を行うことが大切です。治療計画が決まった段階で、医師や看護師と脱毛の可能性やその程度、予防策について十分に話し合いましょう。

患者さん自身ができる準備として、頭皮環境を整えること、栄養バランスの取れた食事を心がけること、そして精神的な準備をすることが挙げられます。

これらの準備は、治療による頭皮への影響を和らげ、脱毛が起こった場合の心理的な負担を軽減する助けとなります。

頭皮環境の確認とケア開始

治療開始前に、ご自身の頭皮の状態を確認しましょう。フケやかゆみ、乾燥などのトラブルがある場合は、治療開始前に改善しておくことが望ましいです。

低刺激性のシャンプーを使用し、優しく洗髪することを心がけ、頭皮を清潔で健康な状態に保つことが予防の第一歩です。また、医師に相談の上、頭皮の保湿ケアを取り入れることも有効な対策となり得ます。

頭皮マッサージの検討

血行を促進し、頭皮を柔軟に保つために、治療開始前から軽い頭皮マッサージを習慣にすることも一つの方法です。ただし、強く揉みすぎると逆効果になるため、指の腹で優しく行うようにしましょう。

治療が始まってからは、頭皮が敏感になるため、マッサージの可否については医師の指示に従ってください。

栄養バランスの見直し

髪の毛の主成分はタンパク質です。健康な髪を維持するためには、タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルなど、バランスの取れた栄養摂取が重要です。

特に亜鉛やビタミンB群は髪の成長に関わる栄養素として知られています。治療前から食生活を見直し、体の中から髪の健康を支える準備をしましょう。

治療前の頭皮ケア用品の選び方

用品の種類	選び方のポイント	期待される効果
シャンプー	アミノ酸系、無添加、低刺激性のもの	頭皮への刺激を抑え、必要な潤いを保つ
コンディショナー	シリコンフリー、保湿成分配合のもの	髪の摩擦を軽減し、頭皮を保護する
育毛剤（医師相談の上）	血行促進成分、抗炎症成分配合のもの	頭皮環境を整え、毛根をサポートする

精神的な準備と情報収集

脱毛は外見の変化を伴うため、精神的な影響も少なくありません。治療前に脱毛の可能性について正しい情報を得て、心の準備をしておくことが大切です。

また、同じ経験をした患者さんの体験談を聞いたり、サポートグループに参加したりすることも、不安を和らげるのに役立ちます。

医療用ウィッグや帽子など、脱毛した場合の対策についても事前に調べておくと、いざという時に落ち着いて対応できます。

治療中の頭皮ケア – ダメージを最小限にする方法

放射線治療が始まると、頭皮は非常にデリケートな状態になります。この時期の頭皮ケアは、ダメージを最小限に抑え、将来的な髪の回復を助けるために極めて重要です。

医師や看護師の指示に従い、慎重かつ丁寧なケアを心がけましょう。特に、照射部位の皮膚は炎症を起こしやすいため、物理的な刺激を避け、清潔を保つことが基本となります。

優しい洗髪と乾燥

治療中の洗髪は、頭皮への刺激を避けるため、これまで以上に優しく行う必要があります。シャンプーは低刺激性のものを使い、爪を立てずに指の腹で泡立て、そっと洗います。

すすぎ残しがないように、ぬるま湯で十分に洗い流しましょう。洗髪後は、タオルでゴシゴシこするのではなく、軽く押さえるようにして水分を吸い取ります。

ドライヤーを使用する場合は、冷風または低温で、頭皮から離して短時間で使用することが望ましいです。

治療中の洗髪頻度

• 医師の指示に従う
• 基本的には毎日または1日おき
• 汗をかいた日や汚れが気になる場合は洗う

頭皮の保護と保湿

照射部位の頭皮は乾燥しやすく、かゆみやヒリヒリ感が出ることがあります。医師から処方された保湿剤や保護クリームがあれば、指示通りに塗布しましょう。

自己判断で市販の製品を使用する場合は、必ず事前に医師に相談してください。また、外出時には帽子やスカーフを着用し、紫外線や寒風、ホコリなどから頭皮を保護することも大切です。

就寝時も、枕との摩擦を軽減するために、柔らかい素材のナイトキャップを使用するなどの工夫が有効です。

頭皮保護のためのアイテム例

アイテム	使用目的	選ぶ際の注意点
帽子・スカーフ	紫外線対策、保温、物理的刺激からの保護	通気性が良く、肌触りの優しい素材（綿、絹など）
ナイトキャップ	就寝時の摩擦軽減、保温	締め付けが少なく、柔らかい素材
低刺激保湿剤	乾燥予防、かゆみ軽減	無香料、無着色、アルコールフリーなど医師推奨品

日常生活での注意点

治療期間中は、パーマやヘアカラー、刺激の強い整髪料の使用は避けましょう。これらは頭皮に大きな負担をかけ、脱毛を助長したり、皮膚炎を引き起こしたりする可能性があります。

また、ブラッシングも毛髪や頭皮にダメージを与えることがあるため、目の粗い櫛で優しくとかす程度にとどめましょう。治療の影響で髪が抜け始めた時期は、特に慎重な対応が求められます。

外用薬による治療 – 頭皮に直接塗る薬の効果と使い方

放射線治療による脱毛に対して、頭皮に直接塗布する外用薬が用いられることがあります。これらの薬は、主に頭皮環境を整えたり、毛根の働きをサポートしたりすることを目的としています。

ただし、効果や副作用には個人差があり、必ず医師の診断と指示のもとで使用することが重要です。自己判断での使用や中止は避けましょう。

ミノキシジル外用薬

ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発されましたが、発毛効果が認められたため、脱毛症の治療薬として広く用いられています。

血管を拡張させて頭皮の血流を改善し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促すと考えられています。放射線治療後の脱毛に対しても、医師の判断で使用されることがあります。

使用開始の時期や濃度については、頭皮の状態や患者さんの体質を考慮して決定されます。

ミノキシジル外用薬使用のポイント

項目	内容
塗布方法	1日2回、乾燥した頭皮の脱毛部位に直接塗布する
注意点	初期脱毛、かゆみ、かぶれなどの副作用の可能性。心疾患のある患者は慎重投与。
効果発現時期	通常、使用開始から数ヶ月程度で効果が現れ始めることが多い

ステロイド外用薬

放射線治療によって頭皮に炎症が生じ、それが脱毛の一因となることがあります。このような場合、炎症を抑える目的でステロイド外用薬が処方されることがあります。

ステロイドには様々な強さのランクがあり、症状や部位に応じて適切なものが選択されます。医師の指示通りに、適切な期間、適切な量を使用することが大切です。

長期的な使用や広範囲への使用は副作用のリスクを高めるため、注意が必要です。

その他の外用薬

上記以外にも、保湿成分や血行促進成分、抗炎症成分などが配合されたローションや育毛剤が、頭皮環境の改善や保護を目的として使用されることがあります。

これらの製品は、医薬品だけでなく、医薬部外品や化粧品として販売されているものもあります。

いずれの場合も、治療中のデリケートな頭皮に使用する際は、事前に医師に相談し、低刺激性のものを選ぶようにしましょう。

内服薬による治療 – 体の内側から髪を守る薬

放射線治療による脱毛の直接的な治療薬として承認されている内服薬は限られていますが、脱毛の進行を遅らせたり、発毛をサポートしたりする目的で、いくつかの内服薬が医師の判断で処方されることがあります。

これらの薬は、体の内側から作用し、毛髪の成長に必要な環境を整えることを目指します。副作用のリスクも考慮し、医師との十分な相談のもとで治療を進めることが重要です。

抗アンドロゲン薬（男性型脱毛症治療薬）

フィナステリドやデュタステリドといった抗アンドロゲン薬は、主に男性型脱毛症（AGA）の治療に用いられます。

これらの薬は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン（DHT）の生成を抑制することで、毛周期の乱れを改善し、脱毛の進行を抑え、発毛を促します。

放射線治療による脱毛に対して直接的な効果が確立されているわけではありませんが、基礎にAGAがある患者さんや、治療後の回復期に医師の判断で補助的に使用されるケースも考えられます。

性機能に関する副作用の可能性があるため、使用前に十分な説明を受ける必要があります。

サプリメントと栄養補助

髪の成長には、タンパク質、ビタミン（特にビオチン、パントテン酸などのビタミンB群）、ミネラル（亜鉛、鉄など）といった栄養素が欠かせません。

放射線治療中は食欲不振などで栄養が偏りがちになることもあります。バランスの取れた食事が基本ですが、必要に応じてこれらの栄養素を補給するためのサプリメントが推奨されることがあります。

ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、過剰摂取は健康を害する可能性もあるため、医師や管理栄養士に相談の上で適切に利用しましょう。

髪の健康に役立つ栄養素と主な食品源

栄養素	主な働き	多く含む食品例
タンパク質	髪の主成分、毛髪の成長に必須	肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛	タンパク質の合成、細胞分裂の促進	牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類
ビタミンB群	頭皮の代謝促進、毛母細胞の活性化	レバー、魚介類、緑黄色野菜、穀類

その他の内服薬

場合によっては、血流改善薬や抗炎症薬などが、頭皮環境の改善や毛髪の回復をサポートする目的で処方されることもあります。

これらの薬は、個々の患者さんの状態や脱毛の程度、原因などを総合的に判断して選択されます。

どのような薬であっても、医師の指示に従い、用法・用量を守って正しく服用することが、安全かつ効果的な治療につながります。

その他の治療法 – 冷却療法と頭皮マッサージ

薬物療法以外にも、放射線治療による脱毛の予防や軽減、発毛促進を目的とした治療法やケアが試みられています。ここでは、代表的なものとして頭皮冷却療法と頭皮マッサージについて解説します。

これらの方法は、単独で行うよりも、他の治療法やケアと組み合わせて行うことで、より良い結果が期待できる場合があります。

頭皮冷却療法（スカルプクーリング）

頭皮冷却療法は、化学療法による脱毛予防策として研究が進んでいる方法ですが、放射線治療においても一部で試みられることがあります。

放射線照射中やその前後に頭皮を冷却することで、毛包周囲の血流を一時的に減少させ、毛母細胞への放射線の影響を低減させることを目的とします。

専用の冷却キャップや装置を使用します。効果には個人差があり、全ての患者さんに適応となるわけではありません。

また、実施している医療機関も限られているため、希望する場合は事前に医師に相談し、詳細な説明を受ける必要があります。

頭皮冷却療法の概要

• 目的：毛母細胞へのダメージ軽減
• 方法：専用キャップで頭皮を冷却
• 注意点：寒さによる不快感、実施施設の限定

頭皮マッサージ

頭皮マッサージは、頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくする効果が期待されます。また、頭皮を柔らかく保つことで、健康な髪が育ちやすい環境を整える助けにもなります。

ただし、放射線治療中の頭皮は非常に敏感になっているため、マッサージを行う際は細心の注意が必要です。治療部位や炎症がある場合は避け、行う場合も指の腹で優しく、短時間で行うようにしましょう。

必ず事前に医師に相談し、適切な方法と時期について指導を受けてください。

家庭でできる優しい頭皮マッサージのポイント

ステップ	方法	注意点
準備	手を清潔にし、リラックスした状態で行う	爪を短く切り、頭皮を傷つけないようにする
マッサージ	指の腹を使い、頭皮全体を優しく揉みほぐす（生え際、側頭部、頭頂部、後頭部）	力を入れすぎない、痛みを感じたら中止する
頻度・時間	1日数分程度、医師の指示に従う	治療部位や炎症部位は避ける

治療後の発毛促進ケア – 回復を早める方法

放射線治療が終了し、脱毛が落ち着いた後の時期は、髪の回復を促すための大切な期間です。多くの場合、治療終了後数ヶ月で新しい髪が生え始めますが、そのスピードや髪質には個人差があります。

この時期の適切なケアは、より健康的でしっかりとした髪の再生をサポートします。焦らず、根気強くケアを続けることが重要です。

育毛剤・発毛剤の使用

治療後の頭皮の状態が安定してきたら、医師に相談の上で育毛剤や発毛剤の使用を検討できます。ミノキシジル含有の発毛剤は、毛母細胞を活性化し、発毛を促進する効果が期待されます。

また、頭皮環境を整える成分や血行促進成分を含む育毛剤も、髪の成長をサポートします。製品によって成分や使用感が異なるため、ご自身の頭皮状態や目的に合ったものを選び、使用方法を守って使いましょう。

効果を実感するまでには時間がかかるため、継続的な使用が必要です。

頭皮環境の継続的なケア

治療中と同様に、治療後も低刺激性のシャンプーを使用し、頭皮を清潔に保つことが基本です。洗髪後はしっかりとすすぎ、優しく乾燥させましょう。

頭皮の乾燥が気になる場合は、保湿ローションなどでケアを続けます。健康な髪は健康な頭皮から育つため、頭皮環境を良好に保つ努力が、スムーズな発毛につながります。

発毛をサポートする頭皮ケア製品

製品タイプ	期待される効果	選び方のポイント
育毛シャンプー	頭皮の清浄、血行促進、抗炎症	アミノ酸系、ノンシリコン、保湿成分配合
育毛トニック・ローション	頭皮の保湿、栄養補給、血行促進	有効成分（センブリエキス等）、低刺激性
発毛剤（ミノキシジル等）	毛母細胞活性化、発毛促進	医師・薬剤師に相談、副作用の確認

専門クリニックでの相談

もし治療後の発毛が思わしくない場合や、髪質が以前と大きく変わってしまった場合など、不安や悩みがある場合は、皮膚科や薄毛治療専門のクリニックに相談することも一つの選択肢です。

専門医は、個々の患者さんの状態に合わせたより専門的なアドバイスや治療法を提案してくれます。例えば、低出力レーザー治療やHARG療法など、発毛を促すための様々な治療が行われている場合があります。

日常生活での予防習慣 – 食事と睡眠の重要性

放射線治療による脱毛からの回復、そして健康な髪を維持するためには、日々の生活習慣が非常に重要です。特に、バランスの取れた食事と質の高い睡眠は、体全体の健康はもちろん、髪の成長にも大きな影響を与えます。

これらの基本的な生活習慣を見直し、改善することで、脱毛の予防や発毛の促進につながる可能性があります。

バランスの取れた食事

髪の毛は主にケラチンというタンパク質からできています。そのため、良質なタンパク質を十分に摂取することが、健康な髪を育てる基本です。

肉類、魚介類、卵、大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。また、ビタミンやミネラルも髪の成長には欠かせません。

特に、亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成を助け、ビタミンB群は頭皮の新陳代謝を促します。ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、頭皮の健康維持に役立ちます。

ビタミンEは血行を促進し、毛根への栄養供給をサポートします。

髪に良いとされる栄養素を多く含む食品群

• タンパク質：鶏むね肉、鮭、卵、豆腐、納豆
• 亜鉛：牡蠣、レバー、牛肉（赤身）、アーモンド
• ビタミンB群：レバー、マグロ、カツオ、豚肉、玄米
• ビタミンC：パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類
• ビタミンE：アボカド、ナッツ類、植物油

質の高い睡眠

髪の成長には成長ホルモンが深く関わっています。成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されるため、質の高い睡眠を確保することが髪の健康にとって重要です。

特に、入眠後最初の深いノンレム睡眠時に多く分泌されると言われています。毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を控える、カフェインの摂取を避けるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。

適度な運動も質の高い睡眠に繋がりますが、寝る直前の激しい運動は避けましょう。

睡眠の質を高めるための生活習慣

習慣	具体的な行動	期待される効果
規則正しい生活リズム	毎日同じ時刻に起床・就寝する	体内時計を整え、自然な眠りを誘う
寝る前のリラックス	ぬるめのお風呂に入る、軽いストレッチ、読書	心身の緊張をほぐし、入眠しやすくする
快適な寝室環境	静かで暗い環境、適切な温度・湿度を保つ	睡眠を妨げる外的要因を減らす

ストレス管理

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良を引き起こすなどして、髪の成長に悪影響を与える可能性があります。放射線治療を受ける患者さんは、病気そのものや治療に対する不安など、多くのストレスを抱えやすい状況にあります。

自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身の健康を保つことが大切です。趣味の時間を楽しむ、軽い運動をする、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、積極的にストレスケアを行いましょう。

避けるべき行動 – 脱毛を悪化させないための注意点

放射線治療中および治療後のデリケートな時期には、頭皮や毛髪に負担をかける行動を避けることが、脱毛の悪化を防ぎ、スムーズな回復を促す上で重要です。

日常生活の中で無意識に行っていることが、実は頭皮にとって良くない影響を与えている場合もあります。ここでは、特に注意したい行動について解説します。

頭皮への物理的刺激

治療によって敏感になっている頭皮は、わずかな物理的刺激でもダメージを受けやすい状態です。爪を立てて頭を掻く、ブラシや櫛で強くこする、タオルでゴシゴシ拭くといった行動は避けましょう。

洗髪時も優しく洗い、髪を乾かす際も低温のドライヤーを使い、頭皮から離して短時間で使用するように心がけてください。

きつい帽子やヘルメットの長時間の着用も、頭皮の血行を妨げたり、蒸れさせたりする原因となるため、注意が必要です。

化学的な刺激物

パーマ液やヘアカラー剤に含まれる化学物質は、健康な頭皮にとっても刺激が強いものです。放射線治療中や治療後しばらくの間は、これらの使用は原則として避けるべきです。

使用を再開する時期については、必ず医師に相談し、頭皮の状態が十分に回復してからにしましょう。

また、整髪料についても、アルコール成分や香料が多く含まれるものは刺激になることがあるため、できるだけ使用を控えるか、低刺激性のものを選ぶようにしてください。

避けるべきヘアケア製品の成分例

• ラウリル硫酸ナトリウム（強力な洗浄剤）
• パラベン（防腐剤、アレルギーの可能性）
• 合成香料・合成着色料（刺激の可能性）

不適切な生活習慣

喫煙は血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させるため、髪の成長に必要な栄養素が届きにくくなります。また、過度なアルコール摂取も、体内のビタミンやミネラルを消費し、髪の健康に悪影響を与える可能性があります。

睡眠不足や不規則な食生活も、ホルモンバランスの乱れや栄養不足を引き起こし、脱毛を悪化させる要因となり得ます。これらの生活習慣を見直し、改善することが、髪の健康を守る上で大切です。

頭皮と髪に良くない生活習慣

習慣	髪への影響	対策・改善点
喫煙	血行不良、栄養供給の阻害	禁煙、または本数を減らす努力
過度な飲酒	栄養素の消費、肝機能への負担	適量を守る、休肝日を設ける
睡眠不足	成長ホルモンの分泌低下、自律神経の乱れ	質の高い睡眠を7-8時間確保する

医療用ウィッグの活用 – 心理的ストレスを軽減する選択肢

放射線治療による脱毛は、多くの患者さんにとって外見上の大きな変化であり、心理的なストレスの原因となることがあります。

医療用ウィッグは、そのようなストレスを軽減し、治療中も自分らしい生活を送るための一つの有効な手段です。最近の医療用ウィッグは品質が向上し、自然な見た目のものが増えています。

脱毛が始まる前や、始まった直後の早い時期に準備を始めることで、精神的な負担を和らげることができます。

医療用ウィッグとは

医療用ウィッグは、抗がん剤治療や放射線治療などによる脱毛、あるいは脱毛症の患者さんのために開発されたウィッグです。

一般的なファッションウィッグと比較して、肌への刺激が少ない素材を使用していたり、通気性やフィット感に配慮されていたりする点が特徴です。

また、治療中のデリケートな頭皮を保護する役割も果たします。髪の毛の素材も人毛、人工毛、ミックス毛など様々で、ヘアスタイルやカラーも豊富に揃っています。

ウィッグの選び方

ウィッグを選ぶ際は、まず専門のサロンや店舗で相談することをおすすめします。実際に試着して、フィット感、軽さ、通気性、髪質、スタイルなどを確かめることが大切です。

治療前の自分の髪型に近いものを選ぶと、変化に対する抵抗感が少なく済みます。また、予算やメンテナンスのしやすさも考慮しましょう。

多くの自治体では医療用ウィッグの購入に際して助成金制度を設けている場合があるので、お住まいの市区町村の情報を確認してみると良いでしょう。

医療用ウィッグ選びのチェックポイント

ポイント	確認事項	理由
素材	肌に優しいか、通気性は良いか	治療中の敏感な頭皮への負担軽減
フィット感	サイズ調整可能か、ずれにくいか	長時間の着用でも快適に過ごすため
スタイル・色	治療前の髪型に近いか、好みに合うか	外見の変化による心理的ストレス軽減
メンテナンス	手入れは簡単か、耐久性はどうか	長期的に使用するための利便性

ウィッグ使用時の頭皮ケア

ウィッグを着用している間も、頭皮ケアは重要です。ウィッグの下は蒸れやすいため、帰宅後はウィッグを外し、頭皮を清潔に保つようにしましょう。汗をかいた日は、低刺激性のシャンプーで優しく洗髪します。

ウィッグ自体も定期的なクリーニングが必要です。ウィッグの素材に合った専用のシャンプーやコンディショナーを使用し、清潔に保つことで、快適に使用し続けることができます。

また、ウィッグの下に専用のインナーキャップを着用することで、頭皮への刺激をさらに和らげ、汗を吸収する効果も期待できます。

よくある質問

放射線治療と脱毛に関して、患者さんから寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。ここに記載されていない疑問や不安がある場合は、遠慮なく担当の医師や看護師にご相談ください。

放射線治療を受けると必ず髪は抜けますか

必ずしも全ての患者さんに脱毛が起こるわけではありません。脱毛の有無や程度は、放射線を照射する部位、照射範囲、総線量、分割方法などによって異なります。

頭部に放射線が照射される場合に脱毛が起こりやすくなります。治療計画の際に、担当医から脱毛の可能性について説明がありますので、よく確認してください。

脱毛はいつから始まり、いつ頃回復しますか

一般的に、放射線治療を開始してから2～3週間後くらいから脱毛が始まることが多いです。脱毛の程度は徐々に進行し、治療期間中に最も多く抜ける傾向があります。

髪の毛の回復は、治療が終了してから2～6ヶ月後くらいから始まることが多いですが、個人差が大きいです。

完全に元の状態に戻るまでには1年以上かかることもありますし、場合によっては髪質が変わったり、毛量が減ったままになったりすることもあります。

抜けた髪はまた同じように生えてきますか

多くの場合、髪は再び生えてきますが、以前と全く同じ髪質や毛量で生えてくるとは限りません。細い毛が生えてきたり、くせ毛になったり、白髪が増えたりといった変化が見られることがあります。

照射された放射線の量が多い場合や、広範囲に照射された場合は、永久的な脱毛となる可能性もゼロではありません。回復の状況については、定期的な診察で医師に確認しましょう。

治療中のシャンプーは特別なものが必要ですか

はい、治療中の頭皮は非常にデリケートなため、低刺激性のシャンプーを使用することが推奨されます。アミノ酸系洗浄成分のものや、無香料・無着色・アルコールフリーの製品などが適しています。

洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮の乾燥や刺激を招く可能性があるため避けましょう。具体的な製品については、医師や看護師に相談して選ぶと安心です。

医療用ウィッグはどこで購入できますか。保険は適用されますか

医療用ウィッグは、専門のウィッグサロン、百貨店、一部の病院内売店などで購入できます。

インターネット通販でも取り扱いがありますが、試着ができないため、初めて購入する場合は実店舗での相談をおすすめします。

医療用ウィッグの購入は、残念ながら公的医療保険の適用外となるのが一般的です。ただし、お住まいの自治体によっては購入費用の助成制度がある場合があります。

また、民間の医療保険の特約でカバーされるケースもあるため、加入している保険の内容を確認してみましょう。

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