脂漏性脱毛症の治療と予防

脂漏性脱毛症は、頭皮の皮脂バランスの乱れや常在菌の影響で起こる脱毛症で、フケやかゆみ、炎症を伴うことがあります。放置すると抜け毛が進行し、薄毛の原因となることも少なくありません。

この記事では、当クリニックが脂漏性脱毛症に悩む男性の皆様へ、皮膚科で行う専門的な治療法から、日常生活で実践できる予防策までを包括的に解説します。

正しい知識を身につけ、適切なケアを行うことで、頭皮環境を健やかに保ち、脱毛のリスクを軽減することが期待できます。

頭皮に直接アプローチ – 外用薬による皮脂コントロール治療

脂漏性脱毛症の治療において、まず検討されるのが頭皮に直接塗布する外用薬です。これらの薬は、過剰な皮脂の分泌を抑え、炎症やかゆみを鎮め、原因となるマラセチア菌の増殖を抑制する働きがあります。

皮膚科では、患者様の頭皮の状態や症状の程度を詳細に診断し、最適な外用薬を選択します。

抗真菌薬によるマラセチア菌への対策

脂漏性脱毛症の主な原因の一つであるマラセチア菌は、皮脂を栄養源として増殖します。この菌の活動が活発になると、頭皮に刺激物質が生成され、炎症やフケ、かゆみを引き起こします。

抗真菌薬は、このマラセチア菌の増殖を直接抑えることで、頭皮環境の悪化を防ぎます。ケトコナゾールやミコナゾールといった成分を含むローションやクリーム、シャンプータイプの薬が一般的に用いられます。

これらの薬を継続的に使用することで、菌のコントロールを目指します。

外用抗真菌薬の種類と使用法

外用抗真菌薬には、医師が処方するものと、薬局で購入できるものがあります。

症状が軽度であれば市販薬で対応できる場合もありますが、効果が見られない場合や症状が中等度以上の場合は、皮膚科医の診断のもと、より効果の高い処方薬を使用することが重要です。

使用法は薬の種類によって異なりますが、通常は1日に1～2回、清潔な頭皮に塗布します。

シャンプータイプの場合は、通常のシャンプーと同様に使用し、泡を数分間頭皮に留めてから洗い流すことで効果を高めます。

外用薬使用時の注意点

外用薬を使用する際は、医師や薬剤師の指示に従い、正しい用法・用量を守ることが大切です。

自己判断で量を増やしたり、使用を中断したりすると、十分な治療効果が得られないばかりか、副作用のリスクを高める可能性があります。

また、薬を塗布する前には頭皮を清潔に保ち、優しく塗ることがポイントです。塗布後に強い刺激感やかぶれなどの異常が現れた場合は、速やかに使用を中止し、医師に相談してください。

ステロイド外用薬による炎症鎮静

頭皮の炎症やかゆみが特に強い場合には、ステロイド外用薬が処方されることがあります。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、つらい症状を迅速に和らげる効果が期待できます。

ただし、ステロイド外用薬は効果が高い反面、長期間の使用や誤った使い方をすると、皮膚が薄くなる、ニキビができやすくなるなどの副作用が現れることがあるため、皮膚科医の指導のもと、適切な期間・範囲で使用することが絶対条件です。

症状が改善したら、徐々に使用量を減らしたり、より作用の弱い薬に変更したりするのが一般的です。

ステロイド外用薬の強さと選択

ステロイドの強さ	代表的な成分例	主な使用場面
ストロンゲスト（最も強い）	クロベタゾールプロピオン酸エステル	重度の炎症、短期間使用
ベリーストロング（かなり強い）	ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル	中等度～重度の炎症
ストロング（強い）	ベタメタゾン吉草酸エステル	軽度～中等度の炎症
ミディアム（普通）	プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル	顔や首などデリケートな部位、軽度の炎症
ウィーク（弱い）	プレドニゾロン	非常にデリケートな部位、乳幼児

頭皮は比較的薬剤の吸収が良い部位ですが、症状や範囲に応じて適切な強さのステロイドを選択することが治療の鍵となります。

体の内側から改善 – 内服薬による根本的な治療戦略

外用薬による局所的な治療と並行して、または症状が広範囲であったり、外用薬だけでは改善が不十分な場合には、体の内側からアプローチする内服薬による治療が行われます。

内服薬は、皮脂の分泌を調整したり、炎症を抑えたり、原因菌の活動を抑制したりと、より根本的な改善を目指すものです。

抗真菌薬の内服

マラセチア菌が広範囲に増殖している場合や、外用薬だけではコントロールが難しい重症例では、抗真菌薬の内服が検討されます。

イトラコナゾールやフルコナゾールといった薬が用いられ、これらは血流に乗って全身に行き渡り、頭皮の毛穴の奥深くに潜むマラセチア菌にも効果を発揮します。

内服期間は症状の程度や薬剤の種類によって異なりますが、医師の指示通りに服用を続けることが重要です。

ビタミン剤による皮脂バランス調整

皮脂の過剰な分泌は脂漏性脱毛症の大きな原因の一つです。ビタミンB2やビタミンB6は、脂質の代謝に関与し、皮脂の分泌を正常に保つ働きがあります。

これらのビタミンが不足すると、皮脂バランスが崩れやすくなるため、食事からの摂取が基本ですが、皮膚科では治療の一環としてこれらのビタミン剤を処方することがあります。

特に、脂っこい食事を好む方や、食生活が不規則な方は、ビタミンB群が不足しがちなので注意が必要です。

皮脂コントロールに役立つビタミンB群

ビタミン	主な働き	多く含む食品
ビタミンB2	脂質の代謝を助け、皮膚や粘膜の健康を維持する	レバー、うなぎ、納豆、乳製品
ビタミンB6	タンパク質や脂質の代謝を助け、皮膚炎を予防する	カツオ、マグロ、鶏肉、バナナ

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

脂漏性脱毛症に伴う強いかゆみは、日常生活の質を著しく低下させるだけでなく、掻きむしることで頭皮を傷つけ、さらに炎症を悪化させる悪循環を生みます。

このような場合、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服が処方されることがあります。これらは、かゆみの原因となるヒスタミンの働きをブロックすることで、不快な症状を軽減します。

薬以外の選択肢 – 頭皮ケアと物理的治療法

薬物治療と並行して、あるいは薬物治療が適さない場合に、頭皮環境を改善するためのケアや物理的な治療法も選択肢となります。

これらは、頭皮のバリア機能を高めたり、血行を促進したりすることで、脂漏性脱毛症の改善や予防に貢献します。

医療機関での専門的な頭皮ケア

一部の皮膚科や専門クリニックでは、薬用成分を用いたスカルプクレンジングや、頭皮の保湿ケア、血行促進を目的としたマッサージなど、専門的な頭皮ケアプログラムを提供しています。

これらのケアは、自宅でのセルフケアだけでは落としきれない毛穴の汚れや過剰な皮脂を取り除き、頭皮環境を整えるのに役立ちます。

頭皮マッサージのポイントと注意点

頭皮マッサージは血行を促進し、頭皮を柔らかく保つ効果が期待できますが、やり方を間違えると逆効果になることもあります。

• 指の腹を使い、優しく揉みほぐすように行う
• 爪を立てたり、強く擦ったりしない
• シャンプー時など、頭皮が清潔な状態で行うのが望ましい
• 炎症が強い時は避け、医師に相談する

低出力レーザー治療

低出力レーザー治療（LLLT: Low Level Laser Therapy）は、特定の波長の光を頭皮に照射することで、毛母細胞の活性化や血行促進、炎症抑制効果が期待される治療法です。

AGA（男性型脱毛症）治療で用いられることが多いですが、脂漏性皮膚炎に伴う炎症や頭皮環境の改善にも応用されることがあります。

痛みや副作用が少ない治療法とされていますが、効果には個人差があり、継続的な治療が必要です。

遺伝子検査による個別化治療 – 体質に合わせた治療法

近年、医療の分野では個別化治療の重要性が高まっています。脂漏性脱毛症の治療においても、患者様一人ひとりの体質や遺伝的背景を考慮したアプローチが注目されています。

その一つが遺伝子検査の活用です。

遺伝子検査で何がわかるのか

遺伝子検査を行うことで、特定の薬に対する感受性（効果の出やすさや副作用のリスク）や、皮脂の分泌傾向、炎症の起こりやすさなど、個人の体質に関する情報を得ることができます。

例えば、ある抗真菌薬が効きやすい体質なのか、あるいは副作用が出やすい体質なのかを事前に把握できれば、より安全で効果的な薬を選択する助けになります。

これにより、治療初期の試行錯誤を減らし、早期の症状改善につながる可能性が高まります。

遺伝子検査と治療薬選択

検査でわかる情報例	治療への応用	期待されるメリット
薬物代謝酵素の遺伝子型	薬の効き目や副作用リスクを予測	効果的な薬剤の早期選択、副作用回避
皮脂分泌関連遺伝子	皮脂コントロールの必要性を評価	食事指導やスキンケアの個別化
炎症反応関連遺伝子	炎症の起こりやすさを把握	抗炎症治療の強度調整

当クリニックでは、このような遺伝子情報を参考に、患者様に最適な治療計画を立案することを重視しています。

ただし、遺伝子検査の結果が全てを決定するわけではなく、あくまで医師の診断と患者様の症状、生活習慣などを総合的に判断して治療方針を決定します。

毎日のシャンプー方法を変える – 正しい洗髪テクニック

脂漏性脱毛症の予防と改善には、毎日のシャンプーが非常に重要です。間違ったシャンプー方法は頭皮環境を悪化させ、症状を進行させる原因となり得ます。

正しい洗髪テクニックを身につけ、頭皮を清潔かつ健やかに保ちましょう。

シャンプー剤の選び方

まず、使用するシャンプー剤の選択が大切です。脂漏性脱毛症の方は、頭皮への刺激が少ないアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を主としたシャンプーを選ぶと良いでしょう。

また、マラセチア菌の増殖を抑える抗真菌成分（ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなど）が配合された薬用シャンプーも効果的です。

自分の頭皮タイプや症状に合わせて、皮膚科医に相談しながら選ぶことをお勧めします。

シャンプー選びのチェックポイント

ポイント	詳細	脂漏性脱毛症への配慮
洗浄成分	アミノ酸系、ベタイン系など低刺激なもの	頭皮への負担を軽減し、必要な皮脂まで奪いすぎない
抗真菌成分	ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなど	原因菌であるマラセチア菌の増殖を抑制する
無添加・低刺激処方	香料、着色料、パラベンなどが無添加のもの	敏感な頭皮への刺激を避ける

正しい洗髪の手順

正しい手順でシャンプーを行うことで、頭皮の汚れや余分な皮脂を効果的に落とし、かつ頭皮への負担を最小限に抑えることができます。

1. 予洗い シャンプーをつける前に、ぬるま湯（38℃程度）で頭皮と髪を十分に濡らし、表面の汚れを洗い流します。
2. 泡立て シャンプーを手のひらに適量取り、少量のお湯を加えてよく泡立てます。直接頭皮につけるのではなく、泡で洗うイメージです。
3. 洗髪 指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗います。爪を立ててゴシゴシ洗うのは絶対に避けてください。特に皮脂の多い生え際や頭頂部は丁寧に洗いましょう。
4. すすぎ シャンプー成分が頭皮に残らないよう、時間をかけて十分にすすぎます。すすぎ残しはフケやかゆみ、炎症の原因になります。
5. 乾燥 洗髪後は、清潔なタオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで頭皮を中心にしっかりと乾かします。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。

シャンプー時のNG行動

• 熱すぎるお湯で洗う（頭皮の乾燥を招き、皮脂の過剰分泌を促す）
• 1日に何度もシャンプーする（必要な皮脂まで奪い、バリア機能を低下させる）
• 爪を立ててゴシゴシ洗う（頭皮を傷つけ、炎症を悪化させる）
• シャンプーやコンディショナーのすすぎ残し

食生活の見直し – 皮脂分泌を抑える栄養管理

頭皮の健康は、体の中から作られます。特に脂漏性脱毛症は皮脂の分泌と深く関わっているため、食生活を見直し、皮脂バランスを整える栄養管理が予防と改善に繋がります。

皮脂分泌に影響を与える食事

脂質の多い食事（揚げ物、スナック菓子、脂身の多い肉など）や、糖質の多い食事（甘いもの、炭水化物の過剰摂取）は、皮脂の分泌を促進する傾向があります。

また、香辛料の強い刺激物やアルコールの過剰摂取も、頭皮環境を悪化させる可能性があるため、摂取量には注意が必要です。

注意したい食品群

食品カテゴリ	具体的な食品例	頭皮への影響
高脂肪食	揚げ物、ファストフード、脂身の多い肉	皮脂分泌を促進する
高糖質食	ケーキ、菓子パン、清涼飲料水	皮脂分泌を促進し、ビタミンB群を消費する
刺激物	香辛料の強い料理、カフェインの過剰摂取	頭皮の炎症を助長する可能性

頭皮環境を整える栄養素

一方で、積極的に摂取したい栄養素もあります。ビタミンB群（特にB2、B6）は脂質の代謝を助け、皮脂の分泌をコントロールする働きがあります。

ビタミンCやビタミンEは抗酸化作用があり、頭皮の老化を防ぎます。また、亜鉛は髪の毛の主成分であるケラチンの合成に必要で、不足すると抜け毛の原因にもなります。

これらの栄養素をバランス良く摂取することが大切です。

積極的に摂りたい栄養素と食品

• ビタミンB2 レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品
• ビタミンB6 カツオ、マグロ、鶏ささみ、バナナ、パプリカ
• ビタミンC 果物（柑橘類、イチゴ）、野菜（ピーマン、ブロッコリー）、芋類
• ビタミンE ナッツ類、植物油、アボカド、緑黄色野菜
• 亜鉛 牡蠣、牛肉、レバー、卵黄、大豆製品

バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らないようにしましょう。腸内環境を整えることも、間接的に頭皮環境の改善に繋がるため、食物繊維や発酵食品を意識して摂ることもお勧めします。

ストレスマネジメント – 頭皮環境を整える生活習慣

ストレスは万病のもとと言われますが、頭皮環境にも大きな影響を与えます。

過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、ホルモンバランスの変調を引き起こすことで、皮脂の過剰分泌や血行不良を招き、脂漏性脱毛症を悪化させる原因となります。

ストレスが頭皮に与える影響

ストレスを感じると、体内でコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。

コルチゾールは、男性ホルモンのアンドロゲンの分泌を促す作用があり、アンドロゲンは皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を増加させます。また、ストレスは血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させます。

これにより、髪の毛の成長に必要な栄養素が届きにくくなり、抜け毛や薄毛が進行する可能性があります。さらに、免疫力の低下を招き、マラセチア菌が繁殖しやすい環境を作ってしまうこともあります。

ストレスと頭皮トラブルの関連

ストレスによる体の変化	頭皮への影響
自律神経の乱れ	皮脂分泌のコントロール異常、血行不良
ホルモンバランスの変調	皮脂の過剰分泌、男性ホルモンの影響増大
免疫力の低下	マラセチア菌の増殖、炎症の悪化

日常生活でできるストレス対策

ストレスを完全になくすことは難しいですが、上手にコントロールすることは可能です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、日常生活に取り入れましょう。

• 質の高い睡眠 毎日同じ時間に寝起きし、7～8時間の睡眠時間を確保する。寝る前のスマートフォン操作は避ける。
• 適度な運動 ウォーキングやジョギング、ストレッチなど、軽く汗をかく程度の運動を習慣にする。
• 趣味やリラックスできる時間を持つ 読書、音楽鑑賞、入浴など、自分が心からリラックスできる時間を作る。
• バランスの取れた食事 ストレス対抗に必要な栄養素（ビタミンC、カルシウム、マグネシウムなど）を意識して摂取する。

ストレスを感じやすい方は、専門家（カウンセラーや心療内科医）に相談することも一つの方法です。一人で抱え込まず、適切なサポートを求めることが大切です。

再発を防ぐ定期メンテナンス – 長期的な頭皮ケア計画

脂漏性脱毛症は、一度症状が改善しても、生活習慣の乱れやストレスなどによって再発しやすい特徴があります。そのため、治療後も油断せず、長期的な視点で頭皮ケアを継続することが重要です。

頭皮環境のセルフチェック

定期的に自分の頭皮の状態をチェックする習慣をつけましょう。

鏡を使って頭皮の色やフケの量、かゆみの有無などを確認します。初期の小さな変化に気づくことができれば、早期に対処でき、症状の悪化を防ぐことができます。

頭皮セルフチェックのポイント

チェック項目	正常な状態の目安	注意が必要なサイン
頭皮の色	青白い、または透明感のある白色	赤い、黄色っぽい、茶色っぽい
フケ	ほとんどない、または細かい乾燥したフケが少量	ベタベタした大きなフケ、大量のフケ
かゆみ・刺激	ほとんど感じない	頻繁にかゆみを感じる、ヒリヒリする
皮脂の状態	適度な潤いがある	常にベタついている、または乾燥しすぎている

皮膚科での定期的なフォローアップ

症状が落ち着いた後も、定期的に皮膚科を受診し、専門医による頭皮チェックを受けることをお勧めします。

医師はマイクロスコープなどを用いて、肉眼では見えない頭皮の状態を詳細に観察し、適切なアドバイスや必要なケアを提案してくれます。

再発の兆候が見られた場合には、早期に治療を再開することで、症状の悪化を最小限に抑えることができます。

生活習慣の維持と見直し

脂漏性脱毛症の再発予防には、治療中だけでなく、その後も健康的な生活習慣を維持することが不可欠です。バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスマネジメントを心がけましょう。

特に、皮脂分泌に影響を与える脂質の多い食事や糖質の過剰摂取は引き続き控えめにすることが大切です。

季節ごとの対策 – 環境変化に応じた予防アプローチ

頭皮環境は、季節による気温や湿度の変化、紫外線の量など、外部環境の影響を受けやすいものです。

それぞれの季節の特徴を理解し、適切な対策を講じることで、脂漏性脱毛症の悪化や再発を防ぎましょう。

春・夏の頭皮ケア

春から夏にかけては、気温と湿度が上昇し、汗や皮脂の分泌が活発になります。これにより、マラセチア菌が繁殖しやすくなり、脂漏性脱毛症が悪化しやすい季節です。

また、紫外線も強くなるため、頭皮がダメージを受けやすくなります。

春夏の重点ケアポイント

• 丁寧な洗髪 汗や皮脂をしっかりと洗い流すため、1日1回のシャンプーを丁寧に行う。ただし、洗いすぎは禁物。
• 紫外線対策 外出時には帽子や日傘を使用し、頭皮への紫外線を避ける。頭皮用の日焼け止めスプレーも有効。
• 通気性の確保 帽子の長時間着用は避け、頭皮が蒸れないように注意する。

秋・冬の頭皮ケア

秋から冬にかけては、空気が乾燥し、頭皮も乾燥しやすくなります。頭皮の乾燥はバリア機能の低下を招き、外部からの刺激に敏感になったり、かゆみやフケの原因になったりします。

また、暖房の使用による室内の乾燥も影響します。

秋冬の重点ケアポイント

対策ポイント	具体的な方法	期待される効果
保湿ケア	保湿成分配合のシャンプーや頭皮用ローションを使用する	頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能を維持する
加湿	加湿器を使用し、室内の湿度を適切に保つ（50～60%が目安）	空気の乾燥による頭皮への影響を軽減する
血行促進	適度な頭皮マッサージや入浴で血行を促す	頭皮の新陳代謝を活発にし、栄養を行き渡らせる

季節の変わり目は特に頭皮が不安定になりやすいため、日々の頭皮状態をよく観察し、変化に応じてケア方法を調整することが大切です。

よくあるご質問

脂漏性脱毛症の治療期間はどのくらいですか？

治療期間は、症状の重症度や治療法、患者様の生活習慣などによって大きく異なります。

一般的に、外用薬や内服薬による治療で症状の改善が見られるまでには数週間から数ヶ月かかることが多いです。大切なのは、医師の指示に従い根気強く治療を続けることです。

また、症状が改善した後も、再発予防のためのケアを継続することが重要になります。

治療薬に副作用はありますか？

どのような薬にも副作用のリスクはあります。例えば、外用薬では塗布部位のかぶれやかゆみ、刺激感などが現れることがあります。

内服薬では、胃腸症状や肝機能への影響などが報告されているものもあります。皮膚科医は、これらの副作用のリスクを最小限に抑えるよう、薬の種類や量を調整します。

遺伝子検査などを参考に、より副作用の出にくい薬を選択することも可能です。何か気になる症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医師にご相談ください。

市販の育毛シャンプーを使っても良いですか？

市販のシャンプーの中にも、脂漏性皮膚炎の方向けに開発された製品（抗真菌成分配合など）があります。軽度のフケやかゆみであれば、そのようなシャンプーで改善が見られることもあります。

しかし、脂漏性「脱毛症」と診断された場合や、症状が改善しない場合は、自己判断でケアを続けるのではなく、皮膚科を受診し、専門医の診断と指示に基づく治療を受けることが大切です。

医師に相談の上、適切なシャンプーを選ぶようにしましょう。

脂漏性脱毛症は遺伝しますか？

脂漏性脱毛症そのものが直接的に遺伝するというよりは、皮脂の分泌量が多い体質や、皮膚のバリア機能の強さといった、脂漏性皮膚炎になりやすい「素因」が遺伝する可能性は考えられます。

ご家族に脂漏性皮膚炎や脱毛症の方がいる場合は、ご自身も注意し、頭皮ケアや生活習慣に気をつけることが予防に繋がるかもしれません。

治療を途中でやめるとどうなりますか？

医師の指示なく治療を中断すると、症状が再燃したり、悪化したりする可能性が高まります。

特に抗真菌薬などは、一定期間継続して使用することで効果を発揮するため、自己判断での中断は避けるべきです。症状が改善してきたように感じても、それは薬の効果によるものであることが多いです。

治療の終了時期については、必ず医師と相談して決定してください。