頭部白癬(通称:しらくも)は、頭皮に起こる真菌感染症の一種で、放置すると脱毛の原因となります。しかし、早期発見と適切な治療、そして日々の予防策を講じることで、改善と再発防止が期待できます。
この記事では、薄毛に悩む男性の皆様に向けて、頭部白癬の治療法と予防法について、専門家の視点から詳しく解説します。正しい知識を身につけ、健やかな頭皮環境を取り戻しましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
外用薬による治療 – 頭皮に直接塗る抗真菌薬の効果

頭部白癬の治療において、頭皮に直接塗布する外用薬は重要な役割を担います。抗真菌成分を含み、白癬菌の増殖を抑えて症状の改善を促します。
特に初期の段階や、内服薬の補助として使用します。
外用薬の種類と特徴
外用薬には、主にクリームタイプとローションタイプがあります。患部の状態や範囲、使用感の好みによって、医師が適切なものを選択します。
これらの薬剤には、白癬菌に効果のある抗真菌薬が含まれています。
クリームタイプとローションタイプ
クリームタイプは保湿力があり、乾燥した患部に適しています。一方、ローションタイプはさらっとした使用感で、広範囲に塗りやすい特徴があります。
どちらのタイプも、有効成分が頭皮に浸透し、真菌の活動を抑制します。医師は、フケやかゆみの状態、脱毛の範囲などを考慮して処方します。
主な抗真菌成分
外用薬に含まれる主な抗真菌成分は、白癬菌の細胞膜に作用し、その増殖を阻害します。これにより、感染の拡大を防ぎ、症状の鎮静化を図ります。
代表的な外用抗真菌薬の成分
成分名 | 特徴 | 主な剤形 |
---|---|---|
ケトコナゾール | 幅広い抗真菌スペクトルを持つ。フケ・かゆみにも効果が期待できる。 | クリーム、ローション、シャンプー |
ミコナゾール硝酸塩 | 皮膚糸状菌に対し強い抗菌力を示す。 | クリーム、軟膏、液 |
テルビナフィン塩酸塩 | 白癬菌の発育を初期段階で阻止する。 | クリーム、スプレー、液 |
正しい外用薬の塗り方
外用薬の効果を最大限に引き出すためには、正しい塗り方が大切です。医師や薬剤師の指示に従い、適切な量と範囲に塗布します。
清潔な頭皮への塗布
外用薬は、洗髪後など頭皮が清潔な状態で使用します。シャンプーで汚れや余分な皮脂を落とし、タオルドライで優しく水分を拭き取った後に塗布すると、薬剤の浸透が良くなります。
この際、頭皮を強くこすらないように注意し、清潔な手指で薬を扱います。
塗布範囲と量
薬剤は、医師に指示された範囲に、適切な量を薄く延ばして塗布します。症状が見られる部分だけでなく、その周囲にもやや広めに塗ることが推奨される場合があります。
自己判断で量を増減させたり、塗布範囲を変えたりせず、必ず指示を守ってください。
外用薬治療の限界と内服薬との併用
頭部白癬の感染は毛包の深部に及ぶことが多いため、外用薬だけでは十分な効果が得られない場合があります。特に症状が広範囲であったり、炎症が強かったりする場合には、内服薬との併用が基本となります。
内服薬が体の中から菌を攻撃し、外用薬が皮膚表面の菌を抑えることで、より効果的な治療を目指します。
内服薬による治療 – 体の内側から白癬菌を撃退する方法

頭部白癬の治療では、多くの場合、内服の抗真菌薬が中心となります。これは、白癬菌が毛髪の根元深く、毛包内にまで侵入するため、外用薬だけでは薬剤が届きにくいからです。
内服薬は血流に乗って全身に行き渡り、毛包内部の白癬菌を効果的に攻撃します。
なぜ内服薬が必要なのか
頭部白癬の感染は、単に頭皮の表面だけでなく、毛髪を作り出す毛包の奥深くにまで及ぶことが特徴です。このため、内服薬による全身的な治療が重要になります。
毛包深部へのアプローチ
白癬菌は毛髪の内部や毛包に潜んでいるため、外用薬の成分が十分に到達しにくいことがあります。内服薬は、消化管から吸収されて血流に入り、毛髪や頭皮の組織に運ばれ、毛包深部の白癬菌にも作用します。
これにより、脱毛やフケ、かゆみといった症状の根本的な改善を目指します。
外用薬だけでは不十分なケース
症状が広範囲に広がっている場合や、炎症が強く「ケルスス禿瘡」と呼ばれるような状態になっている場合、あるいは外用薬治療で改善が見られない場合には、内服薬による治療が必須です。
皮膚科医は、感染の深さや範囲、患者さんの状態を総合的に判断し、内服薬の必要性を決定します。
代表的な内服抗真菌薬
頭部白癬の治療に用いられる主な内服抗真菌薬には、いくつかの種類があります。これらの薬剤は、白癬菌の細胞膜合成を阻害するなどして、その増殖を抑えます。
医師は、原因となる菌の種類や患者さんの年齢、健康状態などを考慮して、最適な薬剤を選択します。
主な内服抗真菌薬と効果
薬剤名 | 主な作用 | 期待される効果 |
---|---|---|
テルビナフィン塩酸塩 | 真菌の細胞膜成分の合成を阻害 | 脱毛、フケ、かゆみの改善、菌の増殖抑制 |
イトラコナゾール | 真菌の細胞膜の構成成分エルゴステロールの合成を阻害 | 広範囲の真菌に効果、症状の改善 |
ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物 | 真菌の細胞膜の構成成分エルゴステロールの合成を阻害 | 長期間効果が持続するタイプも |
内服薬の副作用と注意点
内服抗真菌薬は効果が高い一方で、副作用が現れる可能性もあります。そのため、皮膚科医の指導のもと、適切に使用することが重要です。
定期的な検査の重要性
内服薬の中には、肝機能に影響を与える可能性があるものもあります。そのため、治療開始前および治療中には、定期的に血液検査を行い、肝機能などをチェックします。
これにより、副作用の早期発見と適切な対応が可能になります。皮膚科での定期的な診察は、安全な治療のために欠かせません。
他の薬剤との飲み合わせ
他の持病で薬を服用している場合や、市販薬、サプリメントを使用している場合は、必ず医師に伝えましょう。薬剤によっては相互作用を起こし、効果が弱まったり、副作用が強く出たりすることがあります。
お薬手帳を持参すると、正確な情報を伝えやすくなります。
シャンプー療法 – 薬用シャンプーで治療効果を高める
頭部白癬の治療において、抗真菌成分を含む薬用シャンプーは、内服薬や外用薬の効果を高める補助的な役割を果たします。
シャンプー単独で完治させることは難しいですが、頭皮環境を整え、真菌の拡散を防ぐのに役立ちます。
抗真菌シャンプーの役割

抗真菌シャンプーは、頭皮表面の白癬菌を洗い流し、その増殖を抑えることで、感染の拡大を防ぎます。また、フケやかゆみを軽減する効果も期待できます。
真菌の増殖抑制と感染拡大予防
抗真菌シャンプーに含まれる成分(例:ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩など)は、白癬菌の活動を弱めます。
毎日の洗髪でこれらのシャンプーを使用することで、頭皮の菌量を減らし、他の部位への感染拡大や、他人への感染リスクを低減する助けとなります。
フケやかゆみの軽減
頭部白癬に伴う不快なフケやかゆみは、QOL(生活の質)を大きく低下させます。抗真菌シャンプーは、これらの症状を和らげる効果も期待でき、治療中の快適性を高めます。
シャンプーの選び方と使い方
市販されているシャンプーの中にも抗真菌成分を含むものがありますが、頭部白癬の治療には、皮膚科で処方されるか、推奨される薬用シャンプーを使用することが望ましいです。
抗真菌シャンプーの主な有効成分
- ケトコナゾール
- ミコナゾール硝酸塩
- ピロクトンオラミン
- 硫化セレン(医師の指示による)
正しい洗髪方法
薬用シャンプーを使用する際は、まず髪と頭皮を十分に濡らし、適量を手に取ってよく泡立てます。指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗い、特に患部は丁寧に洗います。
泡をつけた状態で数分間放置し、成分を浸透させてから、十分にすすぎ流します。この際、爪を立てて頭皮を傷つけないよう注意し、清潔な状態を保つことが大切です。
シャンプー療法の位置づけ
抗真菌シャンプーは、あくまで頭部白癬治療の補助です。内服薬や外用薬による根本的な治療と並行して使用することで、治療効果を高め、再発防止にもつながります。
自己判断でシャンプーだけに頼らず、必ず皮膚科医の指示に従いましょう。
治療期間の目安 – 完治までどれくらいかかるのか

頭部白癬の治療期間は、症状の程度、感染の範囲、原因となる白癬菌の種類、選択される治療法、そして患者さん自身の免疫状態など、多くの要因によって異なります。
一般的には数週間から数ヶ月を要することが多いです。
個人差と症状の程度による違い
治療期間には個人差が大きく、一概には言えません。皮膚科医は、定期的な診察を通じて治療効果を判定し、治療期間を調整します。
軽症の場合
感染が浅く範囲も狭い軽症例では、治療開始から比較的早期に症状の改善が見られることがあります。それでも、真菌を完全に排除するためには、医師の指示通り一定期間の治療継続が必要です。
重症化した場合(ケルスス禿瘡など)
炎症が強く、膿がたまったり、脱毛が広範囲に及んだりするケルスス禿瘡のような重症例では、治療期間が長くなる傾向があります。
場合によっては、数ヶ月以上の治療が必要になることもあります。
治療効果の判定
治療が順調に進んでいるかどうかは、症状の改善だけでなく、皮膚科での専門的な検査によって判断します。
顕微鏡検査の重要性
頭部白癬の治療効果判定には、フケや抜け毛を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認する検査が重要です。
症状が見た目上改善しても、菌が残存している可能性があるため、医師が「完治」と判断するまで治療を続けることが大切です。
治療段階と期間の目安
治療段階 | おおよその期間 | 主な目標 |
---|---|---|
初期治療期 | 4~8週間程度 | 症状の軽減、菌量の減少 |
継続治療期 | 症状改善後も数週間~数ヶ月 | 残存する菌の排除、再発防止 |
経過観察期 | 治療終了後数ヶ月 | 再発の有無を確認 |
上記の期間はあくまで一般的な目安であり、個々の状況によって大きく異なります。必ず皮膚科医の指示に従ってください。
根気強い治療の継続
頭部白癬の治療は、症状が良くなったからといって自己判断で中断してしまうと、再発のリスクが高まります。白癬菌はしぶとく、完全に排除するには時間が必要です。
医師の指示する治療期間を守り、根気強く治療を続けることが、再発防止への最も確実な道です。
治療中の注意点 – 効果を最大限に引き出すために

頭部白癬の治療効果を最大限に引き出し、スムーズな回復を目指すためには、いくつかの注意点があります。これらを守ることで、治療期間の短縮や再発リスクの低減につながります。
医師の指示を必ず守る
最も重要なことは、皮膚科医の指示を厳守することです。処方された薬剤の用法・用量、塗布方法、服用期間などを正しく守りましょう。
自己判断での中断は禁物
症状が少し良くなったからといって、自己判断で薬の使用を中止したり、量を減らしたりするのは禁物です。目に見える症状が改善しても、頭皮の奥にはまだ白癬菌が潜んでいる可能性があります。
中途半端な治療は、菌に耐性を与えてしまったり、再発を招いたりする原因となります。
定期的な通院の重要性
治療中は、医師が指示する間隔で必ず通院しましょう。定期的な診察により、治療効果の確認、副作用のチェック、必要に応じた治療法の調整を行います。
疑問や不安な点があれば、遠慮なく医師に相談してください。
頭皮環境のケア
治療中の頭皮はデリケートな状態にあります。適切なケアを心がけ、頭皮環境を良好に保つことが、回復を助けます。
刺激の少ない生活
パーマやヘアカラーなど、頭皮に刺激を与える可能性のあるものは、治療中は避けるのが賢明です。また、整髪料の使用も、医師に相談の上、最小限に留めましょう。
洗髪時も、爪を立てずに指の腹で優しく洗い、すすぎ残しがないように注意します。ドライヤーは頭皮から離して使用し、過度な乾燥を避けます。
掻かないための工夫
頭部白癬では、かゆみを伴うことが多くあります。しかし、掻きむしると頭皮が傷つき、症状が悪化したり、細菌による二次感染を引き起こしたりする可能性があります。
かゆみが強い場合は、冷たいタオルで軽く冷やす、医師に相談してかゆみ止めの薬を処方してもらうなどの対策を講じましょう。
特に就寝中は無意識に掻いてしまうことがあるため、爪を短く切っておくことも有効です。
治療中の頭皮ケアポイント
ケアのポイント | 具体的な行動例 | その理由 |
---|---|---|
優しく洗髪する | 指の腹でマッサージするように洗う | 頭皮への刺激を最小限に抑えるため |
しっかり乾燥させる | 洗髪後はタオルドライ後、ドライヤーで根本から乾かす | 湿った環境は真菌の増殖を助けるため |
刺激物を避ける | パーマ、カラーリング、刺激の強い整髪料の使用を控える | デリケートな頭皮を保護するため |
薬剤の管理と副作用への対応
処方された薬剤は、指示通りに正しく管理し、万が一副作用と思われる症状が出た場合には、速やかに医師に連絡しましょう。特に内服薬の場合、体調の変化に注意が必要です。
日常生活でできる予防策 – 再発を防ぐ5つの習慣

頭部白癬は一度治っても、生活習慣や環境によっては再発する可能性があります。日頃から予防を意識した生活を送ることが、健やかな頭皮を維持し、再発を防ぐために重要です。
習慣1 頭皮の清潔を保つ
頭皮を常に清潔に保つことは、白癬菌の増殖を防ぐ基本です。特に汗をかきやすい季節や運動後は、こまめなケアを心がけましょう。
毎日の洗髪と乾燥
原則として毎日洗髪し、頭皮の汚れや余分な皮脂、汗を洗い流します。洗髪後は、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーで髪の根元からしっかりと乾かします。
湿ったまま放置すると、菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。
汗をかいた後のケア
運動や暑さで大量に汗をかいた後は、できるだけ早くシャワーを浴びるか、せめて清潔なタオルで汗を拭き取りましょう。
帽子を長時間着用する場合も、通気性の良いものを選び、こまめに汗を拭くなどの工夫が必要です。
習慣2 個人の衛生用品の共有を避ける
白癬菌は、物を介して感染することがあります。家族間であっても、個人の衛生用品は共有しないようにしましょう。
共有を避けるべき主なアイテム
- タオル(バスタオル、フェイスタオル)
- 櫛、ブラシ
- 帽子、ヘルメット
- 枕カバー、寝具
これらのアイテムは個人専用とし、定期的に洗濯や清掃を行うことが大切です。
習慣3 ペットとの適切な関わり方
犬や猫などのペットから白癬菌が感染することがあります。ペットを飼っている場合は、ペットの健康状態にも注意を払いましょう。
ペットの皮膚チェック
ペットの皮膚に脱毛やフケ、発疹などが見られる場合は、動物病院で診察を受けましょう。もしペットが白癬症と診断された場合は、獣医師の指示に従って適切に治療します。
人間とペットが同時に治療を行うことが、感染の連鎖を断ち切るために重要です。
ペットからの感染リスク
ペットと過度に密着すること(一緒に寝るなど)は、感染のリスクを高める可能性があります。ペットに触れた後は、手洗いを徹底しましょう。
習慣4 バランスの取れた食生活と十分な睡眠

体の免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなったり、治りにくくなったりします。健康的な生活習慣は、頭部白癬の予防にもつながります。
免疫力の維持
栄養バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンやミネラルを十分に摂取しましょう。また、質の高い睡眠を確保し、体の抵抗力を高めることが大切です。
皮膚の健康維持には、特にビタミンB群や亜鉛などが関与しています。
習慣5 ストレスを溜めない工夫
過度なストレスは免疫機能を低下させ、様々な体の不調を引き起こす可能性があります。自分なりのストレス解消法を見つけ、心身のバランスを整えましょう。
再発予防のための生活習慣チェック
予防習慣 | 具体的なチェック項目 | 推奨頻度 |
---|---|---|
頭皮の清潔 | 毎日洗髪し、しっかり乾燥させているか | 毎日 |
衛生用品の管理 | タオルや櫛を共有していないか | 常に |
ペットとの接触 | ペットの皮膚状態をチェックし、触れた後は手洗いしているか | 毎日/接触後 |
生活リズム | バランスの取れた食事と十分な睡眠を確保しているか | 毎日 |
ストレス管理 | 適度な休息やリフレッシュができているか | 定期的 |
家族への感染予防 – 同居人を守るための対策
頭部白癬は感染症であるため、同居する家族、特に子供やお年寄りなど免疫力が比較的低い可能性のある方への感染を防ぐ対策が重要です。
家庭内での感染拡大を阻止するためには、感染経路を理解し、適切な対応をとる必要があります。
感染経路の理解
頭部白癬の主な感染経路は、感染者との直接的な接触、または感染者が使用したタオルや寝具、櫛などを介した間接的な接触です。これらの経路を遮断することが予防の鍵となります。
直接接触と間接接触
直接接触は、感染部位に直接触れることで起こります。間接接触は、白癬菌が付着した物を共有することで起こります。特に、家庭内では無意識のうちに物を共有しがちなので注意が必要です。
家庭内で気をつけること
家庭内での感染を防ぐためには、日常生活の中でいくつかの点に注意する必要があります。特に水回りや寝具の管理が重要です。
タオルや寝具の個別使用

バスタオル、フェイスタオル、枕カバー、シーツなどの寝具は、家族一人ひとりが専用のものを使用するように徹底しましょう。
洗濯はこまめに行い、可能であれば日光消毒や乾燥機を使用すると、より効果的に菌の活動を抑えられます。清潔な状態を保つことが、感染リスクを減らす上で基本となります。
浴室や脱衣所の清掃
浴室の床やバスマット、脱衣所の床なども白癬菌が付着しやすい場所です。こまめに清掃し、乾燥させて清潔に保ちましょう。バスマットも頻繁に洗濯するか、個人用のものを使用するなどの工夫をします。
家族内感染予防策のポイント
対策場所/項目 | 具体的な行動 | 推奨頻度 |
---|---|---|
タオル類 | 個人専用とし、毎日交換・洗濯する | 毎日 |
寝具類 | 枕カバーは頻繁に、シーツも定期的に交換・洗濯する | 枕カバー:2-3日毎、シーツ:週1回程度 |
浴室・脱衣所 | 使用後に換気し乾燥させる。床やバスマットを清潔に保つ。 | 毎日 |
子供への配慮
子供は免疫系が未発達であったり、集団生活で他者との接触が多かったりするため、頭部白癬に感染しやすい傾向があります。また、自分の症状をうまく伝えられないこともあります。
子供の頭皮チェックと早期発見
保護者の方は、日頃から子供の頭皮の状態を注意深く観察しましょう。フケが増えたり、かゆがったり、部分的に髪が薄くなったりするなどの変化が見られたら、早めに皮膚科を受診させることが大切です。
早期発見・早期治療が、子供の負担を軽減し、感染拡大を防ぎます。
学校や保育園との連携
もし子供が頭部白癬と診断された場合は、通っている学校や保育園にもその旨を伝え、集団感染を防ぐための協力を求めることが重要です。
医師の指示に従い、治癒が確認されるまでは、プールや集団での遊びなど、感染を広げる可能性のある活動については慎重に対応します。
身の回りの清潔管理 – 枕カバーやタオルの扱い方
頭部白癬の治療中や予防において、身の回りの物を清潔に保つことは非常に重要です。特に頭皮に直接触れる枕カバーやタオル、帽子などは、白癬菌の温床となりやすいため、適切な管理が必要です。
洗濯のポイント
衣類や布製品に付着した白癬菌は、洗濯によってある程度除去できますが、より効果を高めるための工夫があります。
高温での洗濯や乾燥機の使用

白癬菌は熱に弱い性質があります。可能であれば、60℃以上のお湯で洗濯したり、洗濯後に乾燥機を使用したりすると、殺菌効果が高まります。
ただし、衣類の素材によっては高温処理が適さない場合もあるため、洗濯表示を確認しましょう。
抗真菌効果のある洗剤の活用
市販されている洗剤の中には、抗真菌成分を配合した製品もあります。これらを使用することも一つの方法ですが、まずは通常の洗濯をこまめに行うことが基本です。
医師に相談して、適切な製品を選ぶのも良いでしょう。
清掃と消毒
床や家具など、直接肌に触れない場所でも、抜け落ちた髪の毛やフケを介して菌が広がる可能性があります。
清潔に保つべき身の回り品
- 枕カバー、シーツ、布団カバー
- タオル類(バスタオル、フェイスタオル、ハンドタオル)
- 帽子、ヘルメット
- 櫛、ブラシ、ヘアアクセサリー
- 衣類(特に頭に触れる襟元など)
これらのアイテムは定期的な洗濯や清掃を心がけ、清潔な状態を維持します。
共有スペースの掃除
リビングのソファやカーペット、床なども、掃除機をこまめにかけ、清潔に保ちましょう。特に感染者がいる家庭では、掃除の頻度を上げることが推奨されます。
掃除機のフィルターも定期的に清掃または交換します。
定期的な交換の推奨
繰り返し使用するものは、洗濯だけでなく、定期的な交換も検討しましょう。
身の回り品の清潔管理スケジュール例
アイテム | 交換/洗濯頻度の目安 | 管理のポイント |
---|---|---|
枕カバー | 2~3日に1回 | 直接頭皮に触れるため、最も頻繁に |
タオル類 | 毎日交換 | 使用後は乾燥させ、湿ったまま放置しない |
帽子 | 使用の都度、または定期的に洗濯・清掃 | 内側の汗や皮脂を拭き取る |
再発のサインを見逃さない – 早期発見のポイント

頭部白癬は、治療によって一度症状が改善しても、再発することがあります。再発の兆候を早期に捉え、速やかに対処することが、症状の悪化を防ぎ、治療期間を短縮するために重要です。
初期症状の再確認
以前経験した頭部白癬の初期症状を覚えておき、似たような変化が現れたら注意が必要です。
わずかなフケやかゆみにも注意
再発の初期には、まず軽いフケやかゆみといった症状が現れることがあります。「またいつものフケか」と軽視せず、普段と違うと感じたら注意深く観察しましょう。
特に、以前感染した部位やその周辺に症状が出やすい傾向があります。
小さな脱毛斑のチェック
円形または不整形のごく小さな脱毛斑が、再発の最初のサインであることもあります。髪をかき分けて頭皮全体をチェックし、部分的に髪が薄くなっている箇所がないか確認しましょう。
鏡を使って自分では見えにくい後頭部なども確認することが大切です。
定期的なセルフチェック
特別な症状がなくても、定期的に自分の頭皮の状態をチェックする習慣をつけましょう。
再発の初期サインの例
- 特定の場所にかゆみが続く
- 細かいフケが以前より目立つ
- 頭皮に赤みや小さなブツブツができる
- 髪の毛が切れやすくなったり、抜けやすくなったりする部分がある
- 小さな円形の脱毛が見られる
頭皮の状態観察の習慣化
洗髪時やドライヤーで髪を乾かす時などに、指の感触や鏡を使って頭皮全体を観察する習慣をつけましょう。毎日行うことで、わずかな変化にも気づきやすくなります。
家族にチェックしてもらうのも良い方法です。
異変を感じたらすぐに皮膚科へ
「もしかしたら再発かもしれない」と感じたら、自己判断せずに速やかに皮膚科を受診しましょう。早期であれば、治療も比較的短期間で済み、症状の悪化や脱毛の進行を最小限に抑えることができます。
皮膚科医は、症状や検査結果に基づいて的確な診断と治療方針を決定します。
よくある質問
頭部白癬(しらくも)の治療や予防に関して、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
Reference
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