AGAの治療費用はいくらかかるのか – 相場と内訳

「AGA治療を始めたいけれど、いったいいくらかかるのだろうか」「値段がクリニックによって違うのはなぜ？」薄毛治療を検討する際、費用に関する疑問や不安はつきものです。

AGA治療は継続が重要だからこそ料金体系を正しく理解し、納得のいく計画を立てることが大切です。

この記事ではAGA治療にかかる費用の相場と詳しい内訳、治療費を抑える方法、そして見落としがちなコストについて専門的な観点から詳しく解説します。

AGA治療費用の全体像 – なぜ料金に幅があるのか

AGA治療の費用は月々数千円から数万円以上と、ウェブサイトやクリニックによって大きな幅があります。

なぜこれほどまでに料金が異なるのでしょうか。その背景にはいくつかの理由があります。

自由診療と保険適用の違い

まず理解しておくべき最も重要な点はAGA治療が原則として公的医療保険の適用外である「自由診療」だということです。病気やケガの治療とは異なり、容姿を改善する目的の医療行為と見なされるためです。

自由診療ではクリニックが独自に料金を設定できるため、同じ治療内容でも施設によって価格が異なります。

治療内容による料金の変動

AGAの進行度や患者さんの希望によって治療内容は一人ひとり異なります。

抜け毛を予防する内服薬のみで治療するのか、発毛を促す外用薬も併用するのか、あるいはより積極的な注入治療を行うのか。治療内容が複雑になれば、それに伴い費用も高くなります。

AGA治療で発生する主な費用

費用の種類	内容	料金設定の傾向
診察料	医師による頭皮・毛髪の状態の確認、カウンセリング。	無料のクリニックもあれば、数千円かかる場合もある。
薬代	内服薬や外用薬の料金。治療費の中心となる部分。	薬の種類や処方日数によって変動する。
検査費用	治療の安全性を確認するための血液検査など。	初回のみ、あるいは定期的に発生する。

クリニックの立地や設備による差

都心の一等地にあるクリニックと郊外にあるクリニックとでは家賃などの運営コストが異なります。

また、最新の診断機器を導入していたり、完全個室でプライバシーに配慮していたりするなど施設の設備やサービスレベルも料金に反映される一因です。

主なAGA治療法別の費用相場

AGA治療の基本は、内服薬と外用薬による薬物治療です。ここでは、代表的な治療法ごとの月額費用の相場を見ていきましょう。

内服薬治療の料金

内服薬はAGAの主な原因である男性ホルモンに働きかけ、抜け毛の進行を抑制する「守りの治療」の基本です。

代表的な薬にはフィナステリドとデュタステリドがあります。

• フィナステリド：月額 3,000円〜10,000円程度
• デュタステリド：月額 5,000円〜12,000円程度

外用薬治療の料金

外用薬（塗り薬）は、頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促す「攻めの治療」です。ミノキシジルが主成分のものが一般的です。

内服薬と併用することが多く、単独で用いるケースは比較的少ないです。

ミノキシジル外用薬の費用相場

濃度	月額費用の目安	特徴
5%前後	5,000円〜10,000円	市販薬にもある一般的な濃度。
10%以上	10,000円〜20,000円	医療機関でのみ処方可能な高濃度製剤。

併用療法の月額費用

AGA治療では内服薬で抜け毛を抑えつつ、外用薬で発毛を促す「併用療法」が標準的な治療法の一つです。この場合の費用はそれぞれの薬代の合計となります。

治療プラン別 月額費用の相場

治療プラン	内容	月額費用の目安
予防・現状維持プラン	内服薬（フィナステリド等）のみ	5,000円〜10,000円
発毛促進プラン	内服薬＋外用薬（ミノキシジル）	15,000円〜30,000円

薬代以外にかかる費用の内訳

AGA治療の費用を考える際、薬代だけに目が行きがちですが、それ以外にも必要な費用があります。

総額を把握するために、これらの費用も念頭に置いておきましょう。

初診料・再診料

治療を始める際の最初の診察や、経過観察のための定期的な診察にかかる費用です。

クリニックによってはこれらの診察料を無料に設定している場合や、薬代に含んでいる場合もあります。料金体系を事前に確認することが大切です。

血液検査などの検査費用

AGA治療薬は肝臓で代謝されるため、治療開始前や治療中に肝機能などに異常がないかを確認するための血液検査を行うのが一般的です。

この検査費用は数千円から1万円程度が相場で、クリニックによって必須の場合と希望者のみの場合があります。

クリニック独自のオプション料金

基本的な薬物治療に加えて、クリニックによっては独自のサプリメントやシャンプー、注入治療などをオプションとして用意している場合があります。

これらはもちろん追加の費用がかかります。治療計画を立てる際に何が標準治療に含まれ、何がオプションなのかを明確に説明してもらいましょう。

ジェネリック医薬品で費用を抑える

AGA治療は長期間にわたるため、少しでも費用を抑えたいと考えるのは自然なことです。その有効な手段の一つが、ジェネリック医薬品（後発医薬品）の活用です。

先発医薬品とジェネリックの違い

先発医薬品（新薬）は開発に莫大な費用と時間がかかっているため、特許期間中は開発した企業が独占的に製造・販売できます。

その特許が切れた後に他のメーカーが同じ有効成分で製造・販売するのがジェネリック医薬品です。開発コストが抑えられるため、薬の価格を安く設定できます。

ジェネリックの費用相場

ジェネリック医薬品を選ぶことで薬代を大幅に節約できる可能性があります。有効成分や効果は先発医薬品と同等であると国から認められています。

フィナステリドの料金比較（月額）

種類	費用の目安	先発薬との差額（目安）
先発医薬品	約6,000円〜10,000円	–
ジェネリック	約3,000円〜6,000円	約3,000円〜4,000円

ジェネリックを選ぶ際の注意点

価格が安いことは大きな魅力ですが、ジェネリック医薬品は添加物が先発医薬品と異なる場合があります。

ごく稀に、この添加物によってアレルギー反応などが起こる可能性もゼロではありません。信頼できる医療機関で医師と相談の上で選択することが重要です。

見過ごされる「治療しない」という選択の本当のコスト

AGA治療の費用を前に、「高いな」「もう少し考えてからにしよう」と治療をためらう方も少なくありません。月々の出費を心配するお気持ちは痛いほど分かります。

しかし、ここで一度立ち止まって「治療しない」ことを選んだ場合に発生する、目に見えないコストについて考えてみませんか。

進行する薄毛による精神的コスト

AGAは進行性の脱毛症です。何もしなければ薄毛は少しずつ、しかし確実に進行していきます。

鏡を見るたびにため息をつき、人の視線が気になり、髪型の自由も失われる。このような日々の小さなストレスの積み重ねは自信を喪失させ、仕事やプライベートへの意欲さえも削いでいきます。

この精神的な負担はお金には換算できない大きなコストです。

効果のないセルフケアに費やす時間とお金

「まずは市販の育毛剤で様子を見よう」「高価な育毛サロンに通ってみよう」。医学的根拠の乏しい方法に、貴重な時間とお金を投じていませんか。

効果が実感できないまま数ヶ月、数年が経過し、気づけば数十万円を費やしていたというケースは後を絶ちません。

そのコストで専門的な治療が始められた可能性を考えてみてください。

「治療しない」場合の年間コスト例

項目	月額コスト（例）	年間コスト（例）
市販の高機能育毛剤	8,000円	96,000円
頭皮ケアサプリメント	5,000円	60,000円
合計	13,000円	156,000円

治療開始が遅れることによる機会損失

AGA治療は毛根が生きている限り、早期に始めるほど高い効果が期待できます。

治療を先延ばしにしている間に失われた毛髪を取り戻すのは、より多くの時間と費用がかかる可能性があります。

もっと早く始めていれば得られたはずの自信や満足感。この「機会損失」こそ、最も大きなコストと言えるかもしれません。今日の決断が、1年後、5年後のあなたの姿を大きく左右するのです。

注入治療や自毛植毛の費用感

薬物治療で効果が不十分な場合や、より積極的な改善を望む場合には、注入治療や自毛植毛といった選択肢もあります。これらは薬物治療よりも高額になります。

注入治療（メソセラピー）の料金体系

メソセラピーは、発毛を促す有効成分（ミノキシジルや成長因子など）を、注射や特殊な機器を使って頭皮に直接注入する治療法です。薬物治療と並行して行うことで、相乗効果を期待します。

注入治療の費用目安

施術頻度	1回あたりの費用	特徴
月1回〜数ヶ月に1回	20,000円〜100,000円	注入する成分や範囲によって大きく異なる。

HARG療法の費用

HARG療法は人間の幹細胞から抽出した成長因子を頭皮に注入するメソセラピーの一種です。

日本医療毛髪再生研究会が認定した医療機関でのみ施術可能で、費用は比較的高額になる傾向があります。1クール（数回の施術）で数十万円以上の費用がかかることが一般的です。

自毛植毛の費用概算

自毛植毛はAGAの影響を受けにくい後頭部などの自分の毛髪を毛根ごと薄毛の部分に移植する外科手術です。根本的な解決策となりえますが、費用は非常に高額です。

移植する株数（グラフト数）によって料金が決まり、一般的には50万円から数百万円以上の費用が必要です。

医療費控除はAGA治療に適用されるか

年間の医療費が高額になった場合に税金の一部が還付される医療費控除。AGA治療の費用も対象になるのか気になる方も多いでしょう。

医療費控除の基本

医療費控除は自分や生計を一つにする家族のために支払った年間の医療費が、一定額（通常10万円）を超える場合に所得控除を受けられる制度です。

これにより所得税や住民税が軽減されます。

AGA治療が原則対象外となる理由

結論から言うとAGA治療は原則として医療費控除の対象外です。国税庁は医療費控除の対象となる医療費を「治療目的」のものと定めています。

AGA治療は容姿の向上を目的とした美容医療と見なされるため、この「治療目的」には該当しないと判断されます。

• 対象となる医療費：病気の治療や療養のための費用
• 対象外の医療費：美容目的、健康増進、予防のための費用

対象となる可能性のある例外ケース

ただし他の疾患（例えば、円形脱毛症や皮膚疾患など）の治療の一環として、医師がAGA治療薬を処方した場合など、ごく例外的なケースでは対象となる可能性もゼロではありません。

しかし自己判断はせず、必ず事前に税務署や税理士に確認することが重要です。

よくある質問

AGAの治療費用に関して、患者さんからよくいただく質問とその回答をまとめました。

なぜ毎月通院する必要があるのですか？

AGA治療薬は医師の診察のもとで処方される医薬品です。

定期的に通院し、医師が頭皮の状態や治療効果、副作用の有無を確認することで、安全かつ効果的な治療を継続できます。

また、薬事法により一度に処方できる日数にも限りがあるため、定期的な通院が必要です。

治療を途中でやめた場合、費用はどうなりますか？

多くのクリニックでは治療費は都度払いや月ごとの支払いです。そのため治療を中断したからといって将来の分の費用を請求されることは通常ありません。

ただし、長期コースなどで契約している場合は解約時の規定を確認する必要があります。

自己判断で中断するとそれまでの治療が無駄になる可能性が高いため、必ず医師に相談してください。

個人輸入の薬はなぜ安いのですか？

個人輸入代行サイトなどで販売されている海外製の薬は国内のクリニックで処方される薬より安い場合があります。

しかし、これらには大きなリスクが伴います。

個人輸入のリスク

リスクの種類	具体的な危険性
偽造薬・不純物	有効成分が入っていない、あるいは有害物質が混入している。
健康被害	医師の診察がないため、副作用が出ても適切な対応ができない。
法的問題	国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。

安全な治療のためには必ず国内の医療機関を受診してください。

支払い方法には何がありますか？

多くのクリニックでは現金払いや各種クレジットカード払いに対応しています。

また、高額な治療（注入治療や自毛植毛など）の場合には医療ローンを利用できる場合もあります。

カウンセリングの際に利用可能な支払い方法について確認しておくと良いでしょう。

以上

参考文献

OHYAMA, Manabu, et al. Economic burden of alopecia areata: A study of direct and indirect cost in Japan using real‐world data. The Journal of dermatology, 2023, 50.10: 1246-1254.

TANAKA, Yohei, et al. Androgenetic alopecia treatment in Asian men. The Journal of clinical and aesthetic dermatology, 2018, 11.7: 32.

KLIFTO, Kevin M.; OTHMAN, Sammy; KOVACH, Stephen J. Minoxidil, platelet-rich plasma (PRP), or combined minoxidil and PRP for androgenetic alopecia in men: a cost-effectiveness Markov decision analysis of prospective studies. Cureus, 2021, 13.12.

BLUMEYER, Anja, et al. Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft, 2011, 9: S1-S57.

NESTOR, Mark S., et al. Treatment options for androgenetic alopecia: Efficacy, side effects, compliance, financial considerations, and ethics. Journal of cosmetic dermatology, 2021, 20.12: 3759-3781.

LI, Andraia R., et al. Efficacy of acupuncture and moxibustion in alopecia: a narrative review. Frontiers in medicine, 2022, 9: 868079.