フケと薄毛の関連性|頭皮環境改善のポイント

フケと薄毛の関連性|頭皮環境改善のポイント

毎日のシャンプーやセットの際にパラパラと落ちる白い粉や、頭皮のベタつきが気になり始めたとき、同時に「最近、髪のボリュームが減った気がする」「生え際が後退していないか心配だ」という不安を抱く方は少なくありません。

フケと薄毛は一見すると別の問題のように思えますが、実は密接に関連しています。フケが出るということは、髪を育てる土壌である頭皮が荒れているサインであり、このサインを見逃すと抜け毛のリスクを高める結果となります。

この記事ではフケ発生の原因をタイプ別に紐解きながら、薄毛とのつながりや、今日からできる具体的な頭皮環境の改善策を詳しく解説します。正しい知識とケアで、健やかな髪を育てる土台を整えましょう。

目次

この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック統括院長 前田 祐助
Dr.前田 祐助

AGAメディカルケアクリニック 統括院長

前田 祐助

【経歴】

慶應義塾大学医学部医学研究科卒業

慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了

大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設

2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設

院長プロフィール

資格・所属学会・症例数

【資格】

  • 医師免許
  • ⽇本医師会認定産業医
  • 医学博士

【所属学会】

  • 日本内科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本臨床毛髪学会

【症例数】

3万人以上※

※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数

フケは頭皮からのSOSであり薄毛進行の予兆となる

フケが目立つ状態は頭皮のターンオーバーが乱れている証拠であり、放置することで毛根へのダメージが蓄積し、結果として薄毛や抜け毛を加速させるリスクが高まります。

フケそのものが直接的に脱毛を引き起こすわけではありません。しかし、フケが大量に発生している頭皮は炎症を起こしていたり、菌が異常繁殖していたりと、髪が成長するための環境として非常に劣悪な状態にあります。

健康な髪は、健康な頭皮からしか生まれません。畑の土が荒れていれば作物が育たないのと同様に、頭皮環境が悪化していれば、太く強い髪は育たず、細く短い毛のまま抜け落ちてしまうのです。

特に男性型脱毛症(AGA)の傾向がある方は、頭皮トラブルが脱毛スイッチを後押ししてしまう可能性があるため、早期の対策が重要です。

ターンオーバーの乱れが引き起こす頭皮トラブル

人間の皮膚は一定の周期で生まれ変わっており、これをターンオーバーと呼びます。

通常、頭皮の古い角質は目に見えないほどの垢となって自然に剥がれ落ちますが、このサイクルが乱れると、未熟な角質が塊となって剥がれ落ちます。これがフケの正体です。

ターンオーバーが早すぎると角質細胞核が残ったまま剥がれ落ち、バリア機能が低下します。逆に遅すぎると角質が厚くなり、毛穴を塞いでしまいます。

バリア機能が低下した頭皮は、紫外線やシャンプーの成分などの外部刺激に対して非常に敏感になります。

わずかな刺激で炎症やかゆみが生じ、それを無意識にかきむしることで頭皮が傷つき、さらに環境が悪化するという悪循環に陥ります。この慢性的な炎症が毛母細胞の働きを弱め、ヘアサイクルを狂わせる原因となります。

毛穴の詰まりと髪の成長阻害

フケと皮脂が混ざり合うと粘着性のある汚れとなって毛穴に詰まります。毛穴には髪を作り出す毛根が存在しますが、出口が塞がれることで皮膚呼吸が妨げられ、また皮脂が酸化して過酸化脂質へと変化します。

この過酸化脂質は細胞を傷つける毒性の強い物質であり、毛根周辺の組織にダメージを与えます。

毛穴が詰まると新しく生えてくる髪が真っ直ぐに伸びることができず、うねりのある髪になったり、太くなる前に成長が止まったりします。

AGAの方はもともとヘアサイクルが短くなる傾向にありますが、毛穴の詰まりという物理的な阻害要因が加わることで、薄毛の進行スピードがさらに速まる恐れがあります。

炎症による毛根への直接的なダメージ

フケに伴って頭皮が赤くなったり、かゆみが出たりする場合は、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などの炎症を起こしている可能性があります。炎症は免疫反応の一種ですが、頭皮で強い炎症が続くと毛根部分までその影響が及びます。

炎症部位ではサイトカインという物質が放出され、これがヘアサイクルにおける「成長期」を強制的に終了させ、「退行期」や「休止期」へと移行させる指令を出してしまうことがあります。

つまり、まだ成長できるはずの髪が、頭皮の炎症によって早期に抜け落ちてしまうのです。フケを単なる汚れと捉えず、頭皮内部で起きている炎症のサインとして重く受け止める必要があります。

頭皮の健康状態チェックリスト

チェック項目状態の解説薄毛リスクへの影響
頭皮の色が青白い血行が良く健康な状態。リスクは低い。現状維持を心がける。
頭皮が赤い炎症を起こしている、または血行不良によるうっ血。リスク高。抜け毛が増える可能性が高い。
頭皮が黄色い皮脂が酸化している、または生活習慣の乱れ。リスク中。毛穴詰まりや加齢臭の原因にもなる。

あなたのフケはどっちのタイプか見極めることが重要

フケには大きく分けて「乾性フケ」と「脂性フケ」の2種類が存在し、それぞれの特徴に合わせた対処を行わなければ、かえって症状を悪化させ薄毛を進行させることになります。

自分のフケがどちらのタイプかを知ることは、適切な対策の第一歩です。乾燥しているのに洗浄力の強いシャンプーを使えばさらに乾燥し、脂っぽいのに保湿しすぎれば菌の繁殖を招きます。

間違ったケアは頭皮環境を破壊し、結果として髪の成長を妨げます。まずは鏡で自分の頭皮とフケの状態をよく観察し、タイプを特定することから始めましょう。

パラパラ落ちる乾性フケの特徴とリスク

乾性フケはサイズが小さく、白っぽい粉のような形状が特徴です。肩や襟元にパラパラと落ちているフケの多くはこのタイプです。

主な原因は頭皮の乾燥です。洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、熱いお湯での洗髪、冬場の空気の乾燥などが引き金となります。

乾燥した頭皮はバリア機能が著しく低下しているため、少しの刺激でかゆみを感じやすくなります。かいてしまうことで頭皮が傷つき、そこから雑菌が入って炎症を起こすこともあります。

また、乾燥して硬くなった頭皮は血行が悪くなりやすく、髪に必要な栄養が届きにくくなるため、髪が細く弱々しくなる傾向があります。

ベタベタ張り付く脂性フケの特徴とリスク

脂性フケは、サイズが大きく、黄色っぽくて湿り気があるのが特徴です。髪の根元や頭皮にへばりつくように発生し、手で払っても簡単には落ちません。

主な原因は皮脂の過剰分泌です。洗髪不足、脂っこい食事、ホルモンバランスの乱れなどが関係しています。

脂性フケは頭皮に常在するマラセチア菌というカビの一種が、過剰な皮脂を餌にして異常繁殖することで発生します。この状態が悪化すると「脂漏性脱毛症」を引き起こすことがあります。

皮脂とフケが混ざったものが毛穴を塞ぎ、菌が毛包内で炎症を起こすことで、髪が抜けてしまうのです。男性は女性に比べて皮脂分泌量が多いため、このタイプのフケに悩む方が多く見られます。

フケのタイプ別比較

特徴乾性フケ脂性フケ
見た目白く細かい、粉状黄色く大きい、塊状
触感サラサラしているベタベタ、湿っている
主な原因乾燥、洗浄過多皮脂過多、真菌の増殖

混合タイプも存在する複雑な頭皮事情

稀に、頭皮の一部は脂っぽいのに、別の部分は乾燥しているという「混合タイプ」の方もいます。例えば、生え際やおでこ周辺は皮脂が多くベタつくのに、側頭部や後頭部はカサカサしているといったケースです。

また、表面は皮脂でベタついているのに、内側(角質層)は乾燥している「インナードライ」の状態もあります。

この場合、皮脂を取り除こうとして強いシャンプーを使うと乾燥部分が悪化し、かといって保湿ばかり重視すると脂性部分が悪化するというジレンマに陥ります。

混合タイプの場合は部位によってケアを変えるか、洗浄力と保湿のバランスが取れた低刺激なケア用品を選ぶことが大切です。

自己判断が難しいため、改善が見られない場合は専門家に相談することをお勧めします。

頭皮の常在菌マラセチアと皮脂バランスの関係

頭皮環境を左右する最大の要因の一つが常在菌であるマラセチア菌の活動であり、この菌と皮脂のバランスを適正に保つことがフケと薄毛予防の鍵となります。

マラセチア菌は誰の頭皮にも存在する真菌(カビ)の一種で、通常は外部からの病原菌の侵入を防ぐなど、皮膚を守る役割を果たしています。

しかし、餌となる皮脂が過剰に分泌されたり、免疫力が低下したりすると、マラセチア菌は爆発的に増殖します。この菌が皮脂を分解する際に排出する「遊離脂肪酸」という物質が頭皮を刺激し、ターンオーバーを異常に早め、大量のフケと炎症を引き起こすのです。

マラセチア菌が増殖するメカニズム

マラセチア菌は高温多湿な環境と脂質を好みます。そのため、汗をかいたまま放置したり、髪を生乾きのまま寝てしまったりすると、菌にとって絶好の繁殖環境となります。

また、皮脂の分泌量は男性ホルモンの影響を強く受けるため、思春期以降の男性や、ストレスなどでホルモンバランスが乱れているときは注意が必要です。

増殖したマラセチア菌は、皮脂(トリグリセリド)を分解して脂肪酸を作り出します。適量であれば肌を弱酸性に保つために役立ちますが、過剰になると皮膚への刺激物質となり、表皮細胞を攻撃します。

これに対抗するために頭皮は急いで新しい角質を作ろうとし、未熟なまま剥がれ落ちるサイクルが形成されます。これが脂性フケの大量発生につながるのです。

皮脂の役割と過剰分泌の弊害

皮脂は決して悪者だけではありません。頭皮の表面に皮脂膜を作り、水分の蒸発を防いだり、紫外線や摩擦から頭皮を守ったりする重要な保護機能を担っています。

皮脂を完全に取り除こうとして一日に何度もシャンプーをしたり、脱脂力の強すぎる製品を使ったりするのは逆効果です。

必要な皮脂まで奪われると、体は「乾燥している」と判断し、防衛反応としてさらに多くの皮脂を分泌しようとするからです。

問題なのは、酸化した皮脂や、長時間留まりすぎた古い皮脂です。これらは過酸化脂質となり、頭皮の細胞を老化させます。

また、過剰な皮脂はAGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成には直接関与しませんが、頭皮環境を悪化させることで、AGAによる軟毛化や抜け毛をサポートしてしまう側面があります。

適度な皮脂量を保つことこそが、育毛において大切です。

ストレスとホルモンバランスの影響

強いストレスを感じると、自律神経の交感神経が優位になります。交感神経が緊張状態にあると、血管が収縮して血行が悪くなるだけでなく、男性ホルモンの分泌が活発になることがあります。

男性ホルモンは皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を促進させる働きがあるため、ストレスは間接的にフケや頭皮のベタつきの原因となります。

また、ストレスは免疫機能を低下させます。免疫力が落ちると、普段はおとなしいマラセチア菌の増殖を抑えきれなくなり、脂漏性皮膚炎などのトラブルに発展しやすくなります。

現代社会においてストレスを完全にゼロにすることは難しいですが、上手に発散し、リラックスする時間を設けることは、メンタルケアだけでなく頭皮ケアとしても非常に有効です。

シャンプー選びと正しい洗髪方法が運命を分ける

毎日のシャンプーは頭皮ケアの基本ですが、間違った選び方や洗い方は頭皮を傷つけ、フケや薄毛の原因を自ら作り出す行為になりかねません。

「汚れをしっかり落としたい」という一心で、爪を立ててゴシゴシ洗っていませんか?あるいは、朝晩2回シャンプーをしていませんか?

頭皮は顔の皮膚よりもデリケートな部分もあり、乱暴な扱いは厳禁です。自分に合ったシャンプーを選び、正しい方法で洗うだけで、頭皮環境は劇的に改善します。

ここでは、頭皮への負担を最小限に抑えつつ、清潔な環境を保つための具体的なメソッドを紹介します。

アミノ酸系シャンプーの推奨理由

市販されているシャンプーには、高級アルコール系、石鹸系、アミノ酸系など様々な洗浄成分が使われています。

フケや薄毛が気になる方に最も推奨されるのは「アミノ酸系シャンプー」です。洗浄力が穏やかで、必要な皮脂や潤いを残しながら汚れだけを落とすことができるからです。

高級アルコール系(成分表示に「ラウレス硫酸Na」などが記載されているもの)は洗浄力が非常に強く、泡立ちも良いため爽快感がありますが、頭皮が乾燥しやすい方や敏感な方には刺激が強すぎることがあります。

逆に石鹸系は洗浄力が高く、アルカリ性であるため、洗い上がりがきしむことがあります。アミノ酸系は頭皮と同じ弱酸性であり、保湿力も高いため、乾燥によるフケを防ぎ、頭皮のバリア機能を守るのに役立ちます。

主な洗浄成分の比較

洗浄成分タイプ特徴おすすめの人
高級アルコール系洗浄力が強く、泡立ちが良い。安価。スタイリング剤を多用する健康肌の人
石鹸系洗浄力が強い。成分解性が高く環境に良い。さっぱりした洗い上がりを好む人
アミノ酸系低刺激で保湿力が高い。頭皮に優しい。フケ・薄毛・乾燥が気になる人

抗真菌成分配合シャンプーの活用

脂性フケが多く、かゆみも伴う場合は、マラセチア菌の増殖を抑える「抗真菌(抗カビ)成分」が配合された薬用シャンプーの使用を検討してください。成分表示に「ミコナゾール硝酸塩」や「ピロクトンオラミン」などが含まれているものが該当します。

ただし、これらのシャンプーは殺菌作用があるため、長期間使い続けると常在菌のバランスを崩してしまう可能性があります。

症状が落ち着いてきたら、通常のアミノ酸系シャンプーに戻すか、週に数回の使用に留めるなど、頭皮の状態を見ながら使い分けることが大切です。

使用しても改善しない場合は自己判断で使い続けず、皮膚科を受診するようにしてください。

頭皮を傷つけない「もみ洗い」の手順

シャンプーの目的は髪の汚れを落とすことではなく、頭皮の汚れを落とすことです。しかし、ゴシゴシと擦る必要はありません。

指の腹を使って頭皮を動かすように優しく洗うのがポイントです。爪を立てると目に見えない傷ができ、そこから炎症が広がります。

また、すすぎ残しはフケの大きな原因となります。シャンプー剤が頭皮に残ると、それが刺激物となり、また菌の餌にもなります。

洗う時間の倍以上の時間をかけて、ヌルヌル感がなくなるまで丁寧にすすぐことが重要です。お湯の温度は38度前後が適温です。熱すぎるお湯は必要な皮脂まで溶かし出し、乾燥を招きます。

正しい洗髪のステップ

  • 入浴前にブラッシングを行い、髪の絡まりを解き、ホコリを浮かせます
  • 38度前後のぬるま湯で2〜3分間、予洗いをしっかり行います(これで汚れの7割は落ちます)
  • シャンプーを手のひらで泡立ててから頭皮に乗せ、指の腹で頭皮をマッサージするように洗います
  • すすぎは生え際、耳の後ろ、襟足などを入念に行い、シャンプー剤を完全に洗い流します
  • タオルドライは擦らずに押さえるように拭き、ドライヤーで根元からしっかり乾かします

食事と睡眠が頭皮の基礎体力を底上げする

外側からのケアだけでなく、体の内側から栄養を届け、修復する時間を確保しなければ、根本的な頭皮環境の改善と育毛は実現しません。

髪の毛は私たちが食べたものから作られています。どんなに高価な育毛剤を使っていても、材料となる栄養素が不足していれば髪は育ちません。

また、睡眠中は成長ホルモンが分泌され、日中に受けた細胞のダメージを修復する重要な時間です。不規則な生活は自律神経を乱し、血行不良を招き、頭皮への栄養供給ルートを断ってしまいます。

生活習慣の見直しは、地味ですが最も確実な薄毛対策の一つです。

髪と頭皮に必要な三大栄養素

髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。そのため、良質なタンパク質の摂取は必須です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく食事に取り入れましょう。

しかし、タンパク質だけ摂れば良いわけではありません。摂取したタンパク質を髪に変えるためには、「亜鉛」と「ビタミン類」のサポートが必要です。

特に亜鉛はケラチンの合成を助けるだけでなく、AGAの原因となる5αリダクターゼという酵素の働きを抑制する効果も期待されています。牡蠣、レバー、ナッツ類に多く含まれますが、吸収率が悪いため、ビタミンCと一緒に摂るのが効果的です。

ビタミンB群(特にB2、B6)は、皮脂の分泌をコントロールし、頭皮の代謝を促す働きがあり、フケ予防には欠かせない栄養素です。

積極的に摂りたい食材リスト

栄養素働き多く含む食品
タンパク質髪の毛の原材料となる鶏肉、卵、納豆、豆腐
亜鉛髪の合成を助け、抜け毛を抑制牡蠣、豚レバー、アーモンド
ビタミンB群皮脂バランス調整、代謝促進豚肉、カツオ、バナナ、玄米

睡眠の質と成長ホルモンの関係

「寝る子は育つ」と言いますが、これは髪にも当てはまります。入眠後の深い眠り(ノンレム睡眠)の間に、成長ホルモンが最も多く分泌されます。

成長ホルモンには毛母細胞の分裂を促し、頭皮のダメージを修復する働きがあります。睡眠時間が短い、あるいは睡眠の質が悪いと、成長ホルモンの恩恵を十分に受けられません。

また、睡眠不足はストレス状態と同じく交感神経を優位にし、血管を収縮させてしまいます。寝る直前までのスマートフォンの使用は避け、リラックスできる環境を整えて、質の高い睡眠を確保するよう心がけましょう。

決まった時間に起き、朝日を浴びて体内時計を整えることも大切です。

脂っこい食事と刺激物の制限

脂性フケに悩む方は、食事内容を厳しく見直す必要があります。

揚げ物、ファストフード、スナック菓子、ラーメンなどの高脂質な食事は、ダイレクトに皮脂の分泌量を増やします。食べた翌日に顔や頭皮がベタつく経験がある方も多いでしょう。

また、激辛料理などの刺激物や、過度なアルコール摂取も注意が必要です。これらは毛細血管を拡張させたり、発汗を促したりして、頭皮にかゆみを生じさせる原因になります。

アルコールは分解する際に髪の成長に必要な亜鉛やビタミンを大量に消費してしまうため、飲み過ぎは髪にとってマイナスです。

和食中心の食事を心がけ、脂質と糖質の摂りすぎを控えることが、頭皮環境改善への近道です。

紫外線と乾燥対策で頭皮のバリア機能を守る

顔の肌には日焼け止めや保湿化粧水を塗るのが当たり前でも、頭皮には無防備な方が多いのが現状ですが、頭皮も顔と同じ一枚の皮膚であり同様のケアが必要です。

頭皮は体の中で最も太陽に近い場所にあり、顔の2倍以上の紫外線を浴びていると言われています。紫外線は頭皮の奥深くまで到達し、毛母細胞を傷つけ、頭皮の老化(光老化)を進行させます。

また、エアコンの風や冬場の乾燥した外気は、頭皮から水分を奪い、バリア機能を低下させます。外出時の対策と、入浴後の保湿ケアを取り入れることで、フケや炎症のリスクを大幅に減らすことができます。

頭皮用日焼け止めの活用

紫外線によるダメージは蓄積され、後になって抜け毛や白髪として現れます。特に分け目やつむじ部分は頭皮が露出しているため、集中的にダメージを受けやすい箇所です。

帽子や日傘を使用するのが最も物理的で効果的な遮断方法ですが、ビジネスシーンなどで難しい場合は、頭皮用の日焼け止めスプレーを活用しましょう。

髪や頭皮専用のUVスプレーは、ベタつかず白くならないものが多く販売されています。外出前にサッと吹きかけるだけで、紫外線から頭皮を守ることができます。

長時間屋外にいる場合は、こまめに塗り直すことも大切です。また、長時間同じ分け目にしているとそこだけダメージを受けるため、定期的に分け目を変えるのも有効な対策です。

洗髪後の保湿ローションの重要性

洗顔後に化粧水をつけるのと同様に、洗髪後の頭皮にも保湿が必要です。特に乾性フケの方や、ドライヤー後に頭皮が突っ張る感じがする方は、頭皮用ローション(育毛トニックなど)の使用を習慣化してください。

頭皮用ローションには保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなど)に加え、抗炎症成分や血行促進成分が含まれているものが多くあります。

これらを使うことで失われた水分を補い、頭皮を柔らかく保つことができます。タオルドライ後、ドライヤーをかける前に頭皮全体に塗布し、指の腹で優しく馴染ませましょう。

ただし、アルコール含有量が多いものは逆に乾燥を招くことがあるため、敏感肌用のノンアルコールタイプなどを選ぶと安心です。

セルフケアの限界と医療機関受診のタイミング

生活習慣の改善やシャンプーの見直しを数週間続けてもフケや痒みが治まらない場合、それはセルフケアの範疇を超えた皮膚疾患である可能性が高く、専門医による治療が必要です。

「たかがフケ」と甘く見ていると、脂漏性皮膚炎が慢性化し、頭皮全体が赤くただれたり、粃糠(ひこう)性脱毛症というフケが原因の脱毛症に進行したりすることもあります。

また、AGAが進行している場合、フケ対策だけでは薄毛は改善しません。医療の力を借りることで、原因を正確に特定し、最短ルートで改善を目指すことができます。

恥ずかしがらずに、早めに皮膚科やAGA専門クリニックを受診することが、将来の髪を守ることにつながります。

脂漏性皮膚炎の可能性と治療

脂性フケが多く、頭皮に赤みやかゆみ、湿疹が見られる場合は、脂漏性皮膚炎の疑いが濃厚です。これは自然治癒が難しく、放置すると慢性化して再発を繰り返す厄介な病気です。

皮膚科では、マラセチア菌を抑える抗真菌薬(外用・内用)や、炎症を抑えるステロイド外用薬が処方されます。また、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。

医師の指示に従って薬を適切に使用すれば、数週間で症状が落ち着くことが多いです。症状が治まったからといって自己判断で薬をやめると再発することがあるため、完治するまで通院を続けることが重要です。

AGA(男性型脱毛症)との併発

フケやかゆみと同時に、生え際の後退や頭頂部の薄毛が進行している場合、AGAを発症している可能性があります。AGAは進行性の脱毛症であり、頭皮環境を整えるだけでは止めることができません。

男性ホルモンの作用を抑制するフィナステリドやデュタステリドといった内服薬や、発毛を促すミノキシジルなどの治療薬が必要です。

フケがAGAの原因ではありませんが、AGAの治療中に頭皮環境が悪いと発毛剤の効果が出にくかったり、外用薬でさらに頭皮がかぶれてしまったりすることがあります。

AGA専門クリニックでは、薄毛治療と並行して頭皮トラブルの治療も行ってくれるところが多いです。マイクロスコープなどで頭皮の状態を詳しく診断してもらえるため、自分の頭皮に何が起きているのかを客観的に知ることができます。

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フケと薄毛に関するよくある質問

フケがうつることはありますか?

フケそのものは頭皮の角質ですので、他人にうつることはありません。

ただし、フケの原因がシラミや水虫(白癬菌)などの感染症である場合は、タオルや帽子などを共有することで感染するリスクがあります。

通常の乾性フケや脂性フケであれば、感染の心配はありませんのでご安心ください。

朝シャンは頭皮に良いのでしょうか?

基本的に朝シャンはおすすめしません。夜に洗わず朝に洗う場合、一日の汚れや皮脂がついたまま寝ることになり、菌が繁殖しやすくなります。

また、朝は出勤前などで時間がなく、すすぎが不十分になりがちです。さらに、洗髪直後は皮脂膜が失われているため、その状態で紫外線の強い外に出ると頭皮へのダメージが大きくなります。

洗髪は夜に行い、清潔な状態で睡眠をとるのがベストです。

整髪料(ワックスやスプレー)はフケの原因になりますか?

整髪料自体が悪いわけではありませんが、頭皮に付着したまま長時間放置したり、洗い残しがあったりすると、毛穴を詰まらせたり刺激となってフケの原因になります。

整髪料を使用する際はなるべく頭皮につかないように毛先中心につけ、その日のうちに必ずシャンプーで綺麗に洗い流すようにしてください。

頭皮マッサージはフケに効果がありますか?

適切なマッサージは血行を促進し、頭皮環境の改善に役立ちますが、やり方を間違えると逆効果です。爪を立てたり、強く擦ったりすると角質を傷つけ、フケを悪化させてしまいます。

指の腹で頭皮をゆっくりと押すように動かし、気持ち良いと感じる程度の強さで行うことが大切です。炎症やかゆみがひどい時は、刺激になるためマッサージは控えてください。

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