男性の薄毛における皮膚科治療の選択肢と費用

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男性の薄毛の悩みで皮膚科を受診すべきか迷っていませんか。皮膚科はAGA(男性型脱毛症)治療の第一選択肢です。

この記事では皮膚科で受けられる薄毛治療の種類、処方される薬、そして気になる費用について詳しく解説します。

正しい知識を得て、ご自身に合った治療法を見つけるための一助としてください。

目次

なぜ薄毛の相談で皮膚科なのか

「髪の悩みはどこに相談すれば?」と感じる方は多いですが、医学的な観点から見ると皮膚科が適切な診療科です。

その理由と医療機関の種類による違いを解説します。

皮膚科が髪の専門家でもある理由

髪の毛は医学的に「皮膚の一部」として扱われます。髪を生み出す毛包(毛根を包む組織)は皮膚の付属器官であり、その構造や機能は皮膚科学の専門領域です。

したがって髪と頭皮のトラブルに関する診断と治療は皮膚の専門家である皮膚科医が担当するのが自然な流れです。

一般皮膚科と専門クリニックの違い

同じ皮膚科でも診療内容には違いがあります。一般皮膚科は湿疹やアトピー性皮膚炎など、幅広い皮膚疾患全般を扱います。

一方、薄毛治療専門クリニックはAGAなどの脱毛症治療に特化しており、より多彩な治療選択肢や多くの症例経験を持っています。

医療機関による対応範囲の違い

医療機関の種類主な対応範囲特徴
一般皮膚科(保険診療中心)円形脱毛症など保険適用の疾患AGAは自由診療となり、治療選択肢が限られる場合がある
薄毛治療専門クリニックAGA治療(自由診療)内服薬、外用薬、注入治療など専門的な治療法が豊富

保険診療と自由診療の境界線

皮膚科の治療には健康保険が適用される「保険診療」と、適用されない「自由診療」があります。

円形脱毛症など病気として扱われる脱毛症の治療は保険診療の対象です。

しかし男性の薄毛の多くを占めるAGAは生命に直接関わる疾患ではないため自由診療となり、費用は全額自己負担です。

皮膚科で行う男性薄毛(AGA)の診断

正確な治療を行うためには、まず薄毛の原因が本当にAGAなのかを正しく診断することが重要です。皮膚科では様々な角度から診断を下します。

問診で確認する項目

医師はまず患者さんから詳しい話を聞きます。いつから薄毛が気になり始めたか、家族に薄毛の人はいるか(遺伝的要因)、生活習慣や既往歴など多角的な情報から原因を探ります。

この問診は診断の基本となるため、正確に伝えることが大切です。

視診とマイクロスコープによる頭皮チェック

次に、医師が直接頭皮の状態を確認します。

薄毛の進行パターン(M字型、O字型など)を視診で確認し、マイクロスコープという拡大鏡を使って毛穴の状態、髪の太さ、頭皮の色や炎症の有無などを詳細に観察します。

この観察により、AGAの進行度や頭皮環境を客観的に評価します。

血液検査を行う目的

必須ではありませんが、他の脱毛症の可能性を排除するために血液検査を行うことがあります。

例えば甲状腺機能の異常などが薄毛の原因となることがあるため、必要に応じて全身状態を確認します。

また、治療薬の副作用リスクを事前に評価する目的で行うこともあります。

皮膚科で処方される主なAGA治療薬

皮膚科でのAGA治療の基本は医学的根拠のある治療薬を用いることです。主に内服薬と外用薬が処方の中心となります。

内服薬(フィナステリド・デュタステリド)の役割

内服薬はAGAの根本原因にアプローチする「守りの治療」です。AGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を阻害する作用があります。

この作用により、ヘアサイクルの乱れを正常化し、抜け毛を減らして薄毛の進行を抑制します。

代表的な内服薬の比較

薬剤名(成分名)作用の対象特徴
プロペシア(フィナステリド)5αリダクターゼⅡ型AGA治療薬として長く使用実績がある
ザガーロ(デュタステリド)5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型より広範囲にDHTの生成を抑制する

外用薬(ミノキシジル)の働き

外用薬は頭皮に直接塗布して発毛を促す「攻めの治療」です。主成分のミノキシジルには血管拡張作用があり、頭皮の血流を改善します。

このことにより髪の成長に必要な栄養を毛根に届けやすくし、毛母細胞を活性化させて新たな髪の成長を促します。

ジェネリック医薬品という選択肢

先発医薬品(ブランド薬)の特許期間が終了した後に他の製薬会社から同じ有効成分で製造・販売される薬をジェネリック医薬品(後発医薬品)と呼びます。

開発費用が抑えられているため先発医薬品よりも安価に提供されます。効果や安全性は同等とされており、治療費を抑えたい場合の有効な選択肢です。

ジェネリック医薬品の例

先発医薬品ジェネリック医薬品の成分名期待できる効果
プロペシアフィナステリド抜け毛の抑制
ザガーロデュタステリド抜け毛の抑制
リアップなどミノキシジル発毛の促進

薬だけじゃない皮膚科の薄毛治療

専門的なクリニックでは内服薬や外用薬による治療に加えて、より積極的に発毛を促すための選択肢も用意しています。

注入治療(メソセラピー)

髪の成長を助ける有効成分(成長因子やミノキシジルなど)を注射器や特殊な導入機器を用いて頭皮に直接注入する治療法です。

有効成分を毛根にダイレクトに届けられるため、薬物治療だけでは効果を実感しにくい方や、より早く効果を求める方に適しています。

LED照射治療

特定の波長の光(LED)を頭皮に照射する治療法です。

細胞の活性化や血行促進効果が期待でき、髪の成長をサポートします。痛みや副作用のリスクがほとんどなく、他の治療と組み合わせて行うことが多いです。

自宅用の機器もありますが、クリニックで使用する機器は出力が高いのが特徴です。

自毛植毛への紹介

AGAが非常に進行し、薬物治療では改善が難しいと判断された場合、自毛植毛という選択肢があります。これは後頭部などのAGAの影響を受けにくい自分の髪を、薄毛の部分に移植する外科手術です。

多くの薄毛治療クリニックでは信頼できる植毛専門の医療機関と連携しており、適切な紹介を行います。

「薬を飲めば生える」という誤解と向き合う

「皮膚科で薬をもらえばすぐに髪が生えてくる」と考えているなら少し立ち止まってください。その期待は、かえって治療の妨げになるかもしれません。

ここでは治療を成功に導くための心構えについて真剣にお伝えします。

治療効果の現実的な期待値

AGA治療は失われた髪を魔法のように元に戻すものではありません。主な目的は「これ以上の進行を食い止めること」、そして「現状を少しでも改善すること」です。

効果を実感するまでには最低でも半年はかかります。焦らず過度な期待をせず、現実的なゴールを医師と共有することが挫折しないための第一歩です。

薬の効果を最大限に引き出す生活習慣

処方された薬はいわば“武器”です。しかしその武器を活かすも殺すもあなた自身の生活習慣、つまり“土台”にかかっています。

不健康な土台の上ではどんなに良い薬も十分な効果を発揮できません。治療は医師任せにせず、自分自身の生活を見直す覚悟が必要です。

髪の成長を左右する生活習慣

生活習慣髪への影響具体的な改善策
食事髪はタンパク質が主成分。栄養不足は髪の質の低下を招く。タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取する。
睡眠成長ホルモンは睡眠中に分泌。睡眠不足は髪の成長を妨げる。質の高い睡眠を6~7時間確保するよう努める。
ストレス血管を収縮させ、頭皮の血行を悪化させる。適度な運動や趣味などで、自分なりの解消法を見つける。

自己判断での中断が招く結果

「少し良くなったから」「費用が負担だから」といった理由で自己判断で服薬をやめるとAGAの進行は再び始まります。治療効果を維持するためには継続が何よりも重要です。

経済的な問題や副作用への不安がある場合は正直に医師に相談してください。薬の変更や量の調整など何らかの対策を一緒に考えてくれるはずです。

皮膚科での治療費用の内訳と相場

AGA治療は自由診療のため、費用はクリニックによって異なります。事前に大まかな相場を把握しておきましょう。

診察料と検査料

初診時や再診時にかかる費用です。カウンセリングは無料でも、医師の診察には費用が発生するのが一般的です。

初診時にかかる費用の目安

項目費用相場備考
カウンセリング料無料 ~ 5,000円無料のクリニックが多い
初診・再診料無料 ~ 5,000円薬代に含まれる場合もある
検査料5,000円 ~ 10,000円血液検査などを行う場合

薬の種類と月々の費用

治療の主体となる薬の費用です。ジェネリック医薬品を選ぶことで費用を抑えることが可能です。

AGA治療薬の費用相場(月額)

治療薬費用目安内訳
内服薬のみ6,000円 ~ 10,000円フィナステリドやデュタステリドのジェネリックなど
内服薬+外用薬15,000円 ~ 30,000円内服薬とミノキシジル外用薬の組み合わせ

自由診療における費用総額の考え方

治療は長期にわたるため、月々の費用だけでなく、年間でどのくらいの費用がかかるかを考えておくことが重要です。

多くのクリニックでは数ヶ月分をまとめて処方することでお得になるプランを用意しています。カウンセリングの際に年間の費用総額についても確認しておきましょう。

治療薬の副作用と対処法

医薬品である以上、AGA治療薬にも副作用のリスクは存在します。過度に恐れる必要はありませんが、正しい知識を持つことが大切です。

知っておくべき主な副作用

副作用の頻度は決して高くありませんが、ゼロではありません。

内服薬では性機能に関する症状や肝機能への影響などが報告されています。外用薬では塗布した部分の皮膚トラブルが主です。

副作用の例と初期症状

薬剤主な副作用初期症状の例
内服薬性機能不全、肝機能障害性欲減退、勃起不全、体のだるさ
外用薬皮膚炎頭皮のかゆみ、赤み、かぶれ

初期脱毛は回復のサイン

治療開始後、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがあります。これは薬の効果で新しい髪が古い髪を押し出している証拠であり、治療が順調に進んでいるサインです。

通常は1~2ヶ月で収まりますので、自己判断で中断しないでください。

異変を感じた際の正しい行動

もし治療中に何らかの体調不良を感じた場合はすぐに服薬・塗布を中止し、処方を受けた医師に相談してください。

副作用が疑われる場合、医師が薬の変更や減量など適切な指示を出します。我慢したり、放置したりすることは絶対にやめましょう。

よくある質問

男性の薄毛治療で皮膚科を訪れる方から、特によくいただく質問にお答えします。

保険は本当に適用されないのですか

はい、AGA(男性型脱毛症)の治療は容姿を改善する目的と見なされるため、公的医療保険の適用外となります。

ただし、診察の結果、円形脱毛症など他の保険適用可能な疾患と診断された場合は、その治療に保険が使えます。

薬はいつまで飲み続ける必要がありますか

AGAは進行性の症状であるため、薬の効果で薄毛の進行を抑えている状態です。そのため効果を維持したいと考える限り、服薬を継続する必要があります。

中止するとAGAの進行が再び始まり、髪の状態は徐々に治療前に戻っていきます。

市販の育毛剤との違いは何ですか

市販の育毛剤の多くは頭皮環境を整えることを目的とした「医薬部外品」です。一方、皮膚科で処方される薬は発毛効果や脱毛抑制効果が科学的に認められた「医薬品」です。

作用の強さや期待できる効果に明確な違いがあります。

オンライン診療は可能ですか

可能です。多くの専門クリニックではオンライン診療システムを導入しています。ビデオ通話で医師の診察を受け、薬を自宅に配送してもらうことができます。

通院の手間が省けるため、忙しい方や遠方の方に非常に便利な方法です。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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