40代に多い薄毛の原因と対策について理解しておくこと

40代に多い薄毛の原因と対策について理解しておくこと

40代は社会的にも家庭的にも責任が増す年代であり、多くの方が充実した日々を送っているようです。しかし、その一方で、鏡を見るたびに気になるのが髪の変化ではないでしょうか。

「最近、抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームが減ってきた」「地肌が透けて見えるようになった」といった悩みは、決して珍しいものではありません。

特に40代は体質の変化や長年の生活習慣の影響が現れやすく、薄毛の悩みが増加する傾向にあります。

この記事では、40代の薄毛や抜け毛に悩む方々に向けて、その主な原因とご自身でできる対策、そして専門的な治療について詳しく解説します。

目次

40代で薄毛が気になり始める背景

多くの方が40代を迎える頃、以前とは違う髪の変化を感じ始めます。なぜこの年代で薄毛の悩みが顕著になるのでしょうか。

その背景には、加齢に伴う身体の変化や、長年にわたる生活習慣の影響などが複合的に関わっています。

加齢による髪質の変化

年齢を重ねると、髪の毛そのものにも変化が現れます。髪の毛は毛母細胞が分裂・増殖することで成長しますが、加齢とともにこの細胞の働きが徐々に低下する傾向があります。その結果、髪の毛が細くなったり、ハリやコシが失われたりします。

一本一本の髪が細くなると全体のボリューム感が減少して地肌が透けて見えやすくなるため、薄毛と感じる原因の一つとなります。

また、髪の成長サイクル(毛周期)も変化し、成長期が短縮されることで、太く長く成長する前に髪が抜け落ちやすくなるケースもあります。

ホルモンバランスの変化とその影響

40代は、男女ともにホルモンバランスが変化しやすい時期です。特に男性の場合、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、特定の酵素(5αリダクターゼ)の働きによってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。

このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、髪の成長を抑制する信号が出されて毛周期における成長期が短縮されます。これが、男性型脱毛症(AGA)の主な原因物質です。

40代になると長年にわたるDHTの影響が蓄積し、薄毛が進行しやすくなります。女性の場合も加齢に伴い女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、相対的に男性ホルモンの影響が強まるため髪が細くなったり抜け毛が増えたりするケースがあります。

長年の生活習慣の蓄積

若い頃からの生活習慣は、40代の髪の状態に大きく影響します。例えば、偏った食生活による栄養不足、慢性的な睡眠不足、運動不足による血行不良、過度な飲酒や喫煙などは頭皮環境を悪化させ、髪の健やかな成長を妨げる要因となります。

これらの不適切な生活習慣が長期間続くと、その影響が蓄積して40代になって薄毛や抜け毛として現れやすくなります。

特に、頭皮への血流が悪くなると髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛根に届きにくくなり、薄毛を進行させる可能性があります。

40代における髪の変化の例

変化の種類具体的な内容薄毛への影響
髪の太さの変化髪が細くなる(軟毛化)全体のボリュームダウン、地肌の透け
毛周期の変化成長期が短くなり、休止期・脱毛期が相対的に長くなる抜け毛の増加、髪が十分に成長しない
白髪の増加メラノサイトの機能低下(直接的な薄毛原因ではない)

40代の薄毛を引き起こす主な原因

40代の薄毛や抜け毛は単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って起こる方が一般的です。最も代表的な原因であるAGA(男性型脱毛症)のほか、日々の生活習慣、精神的なストレス、頭皮環境の問題などが挙げられます。

ご自身の薄毛がどの原因によるものかを知ることが、適切な対策への第一歩となります。

AGA(男性型脱毛症)の進行

40代男性の薄毛の最も一般的な原因は、AGA(男性型脱毛症)です。これは前述の通り、遺伝的要因と男性ホルモン(DHT)の影響によって引き起こされる進行性の脱毛症です。

額の生え際が後退する、頭頂部が薄くなる、あるいはその両方が同時に進行するなど、特徴的なパターンで薄毛が進行します。

ゆっくりと進行するため初期段階では気づきにくいケースもありますが、40代になると症状が顕著になる方が増えてきます。放置すると進行し続けるため、早期の認識と対策が重要です。

不規則な生活習慣の影響

日々の生活習慣は、髪の健康に直接的な影響を与えます。

栄養バランスの偏った食事は、髪の主成分であるタンパク質や髪の成長をサポートするビタミン、ミネラルの不足を招きます。特に、亜鉛やビタミンB群は健康な髪の維持に必要です。

また、慢性的な睡眠不足は、髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げます。成長ホルモンは、深い睡眠中に最も多く分泌されるため、質の高い睡眠を確保する工夫が大切です。

運動不足は全身の血行不良につながり、頭皮への栄養供給を滞らせる可能性があります。

精神的なストレス

現代社会において、仕事や家庭など様々な場面でストレスを感じるのは避けられません。過度なストレスや慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させます。

血行が悪くなると毛根に十分な栄養や酸素が行き渡らなくなり、髪の成長が妨げられて抜け毛が増える場合があります。

また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与え、薄毛を助長しやすいです。円形脱毛症のように、ストレスが直接的な引き金となる脱毛症もあります。

頭皮環境の悪化

頭皮は髪が育つ土壌であり、その環境が悪化すると薄毛につながります。不適切なヘアケア、例えば洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や洗いすぎ、すすぎ残しなどは頭皮に必要な皮脂まで奪い、乾燥やかゆみ、フケの原因となります。

逆に、洗髪不足や整髪料の洗い残しは、毛穴を詰まらせ、炎症を引き起こす場合があります。

皮脂の過剰分泌も毛穴詰まりや脂漏性皮膚炎の原因となり、抜け毛を招きやすいです。紫外線によるダメージも頭皮を硬くし、血行を悪化させる要因の一つです。

40代の主な薄毛原因と特徴

原因主な特徴進行性対策の方向性
AGA生え際後退、頭頂部薄毛、遺伝・ホルモン影響、進行性あり専門治療(内服薬・外用薬など)
生活習慣の乱れ栄養不足、睡眠不足、運動不足、血行不良食事改善、睡眠確保、適度な運動
ストレス血行不良、ホルモンバランスの乱れ、自律神経の乱れストレス軽減策、リラクゼーション
頭皮環境の悪化フケ、かゆみ、炎症、乾燥、皮脂過剰、毛穴詰まり、紫外線ダメージ適切なヘアケア、頭皮マッサージ、UVケア

AGA(男性型脱毛症)について理解を深める

40代の薄毛に悩む男性の多くに関係しているのがAGA(男性型脱毛症)です。AGAは進行性の脱毛症であり、その特性を正しく理解することが、適切な対応をとる上で非常に重要です。

AGAの発症に関わる要因

AGAの主な原因は、遺伝的素因と男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)の影響です。

まず、男性ホルモンであるテストステロンが、頭皮に存在する酵素「5αリダクターゼ」によって、より強力なDHTに変換されます。このDHTが、毛根にある毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合します。

この結合が引き金となり、脱毛因子「TGF-β」などが産生されて毛母細胞の増殖が抑制されます。その結果、髪の毛の成長期が短縮され、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。

この一連の流れが繰り返されて徐々に薄毛が進行していくのです。5αリダクターゼの活性度や、アンドロゲンレセプターの感受性の高さは遺伝によって影響を受けるため、家族に薄毛の方がいる場合はAGAを発症しやすい傾向があります。

AGAの進行パターン

AGAによる薄毛の進行には、いくつかの典型的なパターンがあります。

これは「ハミルトン・ノーウッド分類」として知られており、薄毛の進行度合いを客観的に評価するために用いられます。

ハミルトン・ノーウッド分類のパターン

分類段階進行パターン特徴
I型脱毛・薄毛はみられないAGAの兆候はほとんどない状態
II型生え際がM字型に少し後退し始める額の生え際の両サイドから薄くなり始める初期段階
III型生え際の後退がさらに進むM字部分の後退が顕著になる
III型 Vertex生え際の後退に加え、頭頂部も薄くなり始める生え際と頭頂部の両方で薄毛が始まる混合パターン
IV型生え際の後退と頭頂部の薄毛がさらに進行するM字部分の後退と頭頂部の薄毛部分が広がるが、まだ分離している
V型~VII型生え際と頭頂部の薄毛部分がつながり、側頭部・後頭部以外が薄くなる薄毛が広範囲に進行し、最終的には後頭部と側頭部の毛髪が残る

これらのパターンを知ると、ご自身の薄毛がAGAによるものか、またどの程度進行しているのかを把握しやすいです。進行パターンによって適した治療法が異なる場合もあります。

AGAに関するよくある誤解

AGAに関しては、いくつかの誤解があります。例えば「AGAは治らない」と思われがちですが、適切な治療によって進行を抑制したり毛髪を回復させたりすることは可能です。

完全に元通りになるわけではありませんが、早期に治療を開始するほどより良い結果が期待できます。

「生活習慣を改善すればAGAは治る」というのも誤解です。生活習慣の改善は頭皮環境を整えて髪の健康をサポートする上で重要ですが、AGAの根本原因である遺伝やホルモンの影響を直接的に解消するものではありません。

AGAの治療には、医学的根拠に基づいた取り組みが必要です。

「頭皮が脂っぽいからAGAになる」というのも直接的な因果関係はありません。ただし、皮脂の過剰分泌は頭皮環境を悪化させる一因にはなり得ます。正しい知識を持つことが、適切な対策への第一歩です。

健康な髪を育む生活習慣

髪の健康は、全身の健康状態と密接に関連しています。特に40代になると日々の生活習慣が髪の状態に与える影響がより顕著になります。

バランスの取れた食事や質の高い睡眠、適度な運動やストレス管理は薄毛対策の基本であり、健やかな髪を育む土台となります。

髪の成長をサポートする食事

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、良質なタンパク質の十分な摂取が、健康な髪を作るための基本です。肉や魚、卵や大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。

また、タンパク質の合成を助け、頭皮環境を整えるビタミンやミネラルも重要です。特に、亜鉛はケラチンの合成に必要であり、牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれます。

ビタミンB群(特にビオチンやB6)は、頭皮の新陳代謝を促して皮脂の分泌をコントロールする働きがあります。

緑黄色野菜や果物に含まれるビタミンCやEには抗酸化作用があり、頭皮の老化を防ぐ効果が期待できます。

頭皮と髪の健康に必要な栄養素

栄養素主な働き多く含む食品
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料となる肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛ケラチンの合成を助ける、細胞分裂を促す牡蠣、レバー、牛肉、ナッツ類、卵黄
ビタミンB群頭皮の新陳代謝促進、皮脂分泌調整レバー、豚肉、マグロ、カツオ、卵
ビタミンC・E抗酸化作用、血行促進野菜、果物、ナッツ類、植物油

特定の食品ばかりを食べるのではなく、多様な食品からバランス良く栄養を摂取すると良いです。

質の高い睡眠の重要性

睡眠中には、体の細胞の修復や再生を促す「成長ホルモン」が分泌されます。この成長ホルモンは毛母細胞の分裂を活性化させ、髪の成長を促す重要な役割を担っています。

成長ホルモンは特に眠り始めの深いノンレム睡眠時に多く分泌されるため、単に睡眠時間を確保するだけでなく、「質の高い睡眠」をとるのが重要です。

就寝前のカフェイン摂取やスマートフォンの使用を避け、寝室の環境を整えるなど、リラックスして眠りにつける工夫をしましょう。

睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減少して髪の成長が妨げられるだけでなく、ストレス増加や自律神経の乱れにもつながり、薄毛のリスクを高めます。

睡眠の質と髪への影響

睡眠の状態髪への影響
質の高い睡眠成長ホルモンの分泌促進、毛母細胞の活性化、ストレス軽減
睡眠不足成長ホルモンの分泌減少、髪の成長抑制、自律神経の乱れ、血行不良
不規則な睡眠体内リズムの乱れ、ホルモンバランスへの影響

適度な運動による血行促進

適度な運動は、全身の血行を促進する効果があります。血行が良くなると頭皮を含む体の隅々まで酸素や栄養素が行き渡りやすくなり、毛根の働きが活性化されます。これにより、健康な髪の成長がサポートされます。

ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は血行促進に加え、ストレス解消にも効果的です。特別な運動をする時間が取れない方でも、日常生活の中で階段を使う、一駅分歩くなど、意識的に体を動かす機会を増やすことが大切です。

ただし、過度な運動は活性酸素を増やして逆効果になる可能性もあるため、無理のない範囲で行いましょう。

禁煙と節度ある飲酒

喫煙は血管を収縮させ、血行を悪化させる大きな要因です。頭皮の血行が悪くなると毛根への栄養供給が滞り、髪の成長が妨げられて抜け毛の原因となります。

また、喫煙は体内のビタミンCを大量に消費するため、抗酸化作用が低下して頭皮の老化を早める可能性もあります。薄毛対策を考える上で、禁煙が非常に重要です。

過度な飲酒も、肝臓でのタンパク質合成を妨げたり、睡眠の質を低下させたりする可能性があるため、控えるのが望ましいです。飲む場合は適量を守り、休肝日を設けるなど節度ある飲酒を心がけましょう。

習慣髪への悪影響
喫煙血管収縮による血行不良、栄養供給の阻害、ビタミンC消費、老化促進
過度な飲酒肝臓でのタンパク質合成阻害、睡眠の質の低下、栄養バランスの乱れ

ストレスと薄毛の関係性

現代社会で避けて通れないストレスは心身に様々な影響を与えますが、髪の健康にも深く関わっています。40代は仕事や家庭での責任が増し、ストレスを感じやすい年代でもあります。

ストレスがどのように薄毛につながるのか、その関係性を理解して適切に対処しましょう。

ストレスが引き起こす身体の変化

強いストレスを感じると、私たちの体は防御反応として自律神経のうち交感神経を優位にします。交感神経が活発になると血管が収縮し、血圧が上昇します。

この状態が慢性的に続くと頭皮への血流が悪くなり、毛根に必要な酸素や栄養素が十分に届きにくくなります。その結果、毛母細胞の働きが低下して髪の成長が妨げられたり、抜け毛が増えたりすることがあります。

また、ストレスはホルモンバランスにも影響を与えます。ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌が増加すると免疫機能が低下したり、男性ホルモンの分泌バランスが崩れたりして薄毛を助長する可能性があります。

影響を受ける箇所具体的な変化髪への影響
自律神経交感神経の優位、血管収縮頭皮の血行不良、栄養・酸素供給不足、毛母細胞の機能低下
ホルモンバランスコルチゾール増加、性ホルモンバランスの乱れ髪の成長サイクルの乱れ、皮脂分泌の変化、免疫機能低下による頭皮トラブル
睡眠寝つきが悪い、眠りが浅い、中途覚醒成長ホルモン分泌減少、疲労回復不足

ストレスによる抜け毛の種類

ストレスが主な原因となって引き起こされる脱毛症もあります。代表的なものが「円形脱毛症」です。

これは自己免疫疾患の一種と考えられており、ストレスが引き金となって免疫細胞が自身の毛根を攻撃してしまうことで、円形または楕円形に髪が突然抜け落ちる症状です。

多くの場合は自然に治癒しますが、多発したり全頭に及んだりする方もいます。

また、強い精神的ストレスが原因で多数の髪の毛が一斉に休止期に入り、数か月後に大量に抜け落ちる「休止期脱毛」が起こるケースもあります。

AGAとは異なり、これらの脱毛症は原因となるストレスが解消されれば改善する可能性がありますが、症状によっては専門的な治療が必要です。

効果的なストレス解消法を見つける

ストレスを完全になくすのは困難ですが、上手に付き合いながら軽減していくことは可能です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、日常生活に取り入れるのがおすすめです。

趣味に没頭する時間を作る、軽い運動をする、友人と話す、ゆっくり入浴するなどリラックスできる方法を探しましょう。自然に触れる、音楽を聴く、瞑想やヨガなども効果的です。

重要なのは、ストレスを溜め込まないことです。一人で抱え込まず信頼できる人に相談したり、必要であれば専門家のカウンセリングも考えましょう。

質の高い睡眠も、ストレス耐性を高める上で重要です。

ストレス軽減に役立つ活動

  • 軽い有酸素運動(ウォーキング、ジョギング)
  • 趣味や好きなことへの没頭
  • 友人や家族との会話
  • リラックスできる入浴
  • 瞑想、ヨガ、深呼吸
  • 自然とのふれあい

自分に合った方法をいくつか見つけ、気分転換を図ると良いでしょう。

自宅でできる薄毛対策とセルフケア

薄毛の悩みに対して、日常生活の中で取り組めるセルフケアも多くあります。適切なヘアケア、頭皮マッサージ、市販の育毛剤の活用など日々の積み重ねが頭皮環境を整え、薄毛の進行を緩やかにする助けとなります。

ただし、セルフケアだけでAGAなどの進行性の脱毛症を完全に止めるのは難しい場合がある事実も理解しておく必要があります。

正しいシャンプーの方法と選び方

毎日のシャンプーは頭皮を清潔に保つ基本ですが、方法を間違えると逆効果になる場合もあります。

まず、シャンプー剤は自分の頭皮タイプに合ったものを選びましょう。乾燥しやすい方はアミノ酸系などのマイルドな洗浄成分のもの、皮脂が多い方は適度な洗浄力のあるものを選びます。

シャンプー前にブラッシングで髪の絡まりをほどき、ぬるま湯で予洗いをしっかり行うと良いです。予洗いで汚れの多くは落ちます。

シャンプーは手のひらでよく泡立ててから、指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。爪を立ててゴシゴシ洗うのは頭皮を傷つけるので避けましょう。

すすぎは、シャンプー剤が残らないように時間をかけて丁寧に行うのが重要です。洗髪後は、ドライヤーで頭皮からしっかりと乾かします。濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります。

頭皮マッサージによる血行促進

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐして血行を促進する効果が期待できます。血行が良くなれば毛根への栄養供給がスムーズになり、髪の健やかな成長をサポートします。

指の腹を使って頭皮全体を優しく動かすように行います。強く押しすぎたり、爪を立てたりしないように注意しましょう。

シャンプー中や入浴後の体が温まっている時に行うとより効果的です。

ただし、頭皮マッサージだけで発毛効果が得られるわけではなく、あくまで頭皮環境を整える補助的なケアと捉えましょう。頭皮に炎症やかゆみがある場合は、マッサージを控えてください。

市販の育毛剤や発毛剤の活用

ドラッグストアなどでは、様々な種類の育毛剤や発毛剤が販売されています。

育毛剤は頭皮環境を整えて抜け毛を予防し、現在ある髪を健康に育むことを目的とした医薬部外品です。血行促進成分や保湿成分、抗炎症成分などが配合されています。

一方、発毛剤は毛母細胞に働きかけて新しい髪の毛を生やし、髪を太く成長させるのを目的とした医薬品です。日本では、ミノキシジルを配合した製品が第一類医薬品として市販されています。

どちらを使用するかは、ご自身の薄毛の状態や目的によって異なります。

育毛剤は予防や現状維持、発毛剤は積極的な発毛促進を期待する場合に選択肢となりますが、発毛剤(ミノキシジル)には副作用のリスクもあるため、使用前に説明書をよく読んで薬剤師に相談すると良いでしょう。

セルフケア方法の比較

ケア方法目的期待できる効果注意点
正しいシャンプー頭皮の清浄、健やかな頭皮環境の維持フケ・かゆみ予防、毛穴詰まり改善洗いすぎ、すすぎ残し、爪立て洗いは避ける
頭皮マッサージ頭皮の血行促進、リラクゼーション栄養供給サポート、頭皮の柔軟性向上強く押しすぎない、炎症時は避ける、発毛効果は限定的
市販育毛剤抜け毛予防、育毛促進、頭皮環境改善頭皮環境の改善、現状維持のサポート発毛効果は限定的、医薬部外品
市販発毛剤新しい髪の毛の発毛促進、毛髪の成長促進発毛、毛髪の太さ・密度の改善(ミノキシジル)副作用の可能性あり、薬剤師への相談推奨、医薬品

セルフケアは根気強く続けるのが大切ですが、効果が見られないときや薄毛が進行していると感じるときは、専門のクリニックに相談することを検討しましょう。

専門クリニックでの薄毛治療という選択肢

セルフケアだけでは改善が見られない場合やAGA(男性型脱毛症)のように進行性の薄毛の場合は、専門のクリニックで医学的根拠に基づいた治療を受けるのが有効な選択肢となります。

クリニックでは医師による正確な診断のもと、個々の症状や原因に合わせた適切な治療法を提案します。

専門医による診断の重要性

薄毛の原因は様々であり、自己判断で誤ったケアを続けるとかえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。

専門のクリニックでは医師が問診や視診、場合によっては血液検査やマイクロスコープを用いた頭皮チェックなどを行い、薄毛の原因を正確に診断します。

AGAなのか、他の脱毛症なのか、あるいは生活習慣や頭皮環境によるものなのかを特定すると、効果的な治療方針を立てられます。

また、持病や服用中の薬なども考慮して安全に治療を進められます。疑問や不安に思うことを直接医師に相談できる点も、クリニックを受診する大きなメリットです。

内服薬による治療

AGA治療において、中心的な役割を果たすのが内服薬です。現在、主に用いられているのは「フィナステリド」と「デュタステリド」という2種類の有効成分です。

これらは、AGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する働きがあります。具体的には、テストステロンをDHTに変換する酵素「5αリダクターゼ」の働きを阻害します。

フィナステリドは主にII型の5αリダクターゼを、デュタステリドはI型とII型の両方の5αリダクターゼを阻害します。これによりDHTの量が減少し、毛周期における成長期が正常化されて抜け毛の減少や毛髪の改善が期待できます。

有効成分作用機序特徴
フィナステリドII型5αリダクターゼの阻害DHT生成を抑制し、抜け毛を減らす
デュタステリドI型およびII型5αリダクターゼの阻害フィナステリドより広範にDHT生成を抑制する

これらの薬は医師の処方が必要であり、効果が現れるまでには通常3ヶ月から6ヶ月程度の継続服用が必要です。副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って正しく服用しましょう。

外用薬による治療

内服薬と並行して、あるいは単独で用いられるのが外用薬です。代表的な有効成分は「ミノキシジル」です。

ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発されましたが、副作用として発毛効果が見られたことから薄毛治療薬として転用されました。

その詳細な発毛メカニズムは完全には解明されていませんが、頭皮の血管を拡張して血流を改善し、毛母細胞に直接働きかけてその増殖を促すため髪の成長期を延長させる効果があると考えられています。

ミノキシジル外用薬は、頭皮に直接塗布して使用します。市販薬としても購入できますが、クリニックではより高濃度のものを処方する場合もあります。

内服薬と同様に、効果を実感するには数ヶ月間の継続使用が必要です。副作用として、頭皮のかゆみやかぶれなどが起こるケースがあります。

その他の治療法(注入療法など)

内服薬や外用薬の他にも、クリニックでは様々な治療法が提供されています。

その一つが「注入療法(メソセラピー)」です。これは、髪の成長に必要な成分(ミノキシジル、成長因子、ビタミン、ミネラルなど)を、注射や特殊な機器を用いて頭皮に直接注入する治療法です。

有効成分を直接毛根に届けられるため、より効果が期待される場合があります。

また、「自毛植毛」という選択肢もあります。これは、AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部の自身の毛髪を薄毛の気になる部分に移植する外科的な手術です。

これらの治療法はそれぞれにメリット・デメリットがあり、費用も異なります。医師とよく相談し、ご自身の状態や希望に合った治療法を選択しましょう。

クリニックでの主な薄毛治療法

治療法概要特徴
内服薬DHT生成を抑制する薬(フィナステリド、デュタステリド)を服用AGAの進行抑制、抜け毛減少、継続が必要、医師の処方が必要
外用薬発毛促進成分(ミノキシジル)を頭皮に塗布発毛促進、血行改善、継続が必要、副作用(かゆみ等)の可能性
注入療法有効成分(成長因子など)を頭皮に直接注入有効成分を直接届ける、他の治療との併用も
自毛植毛自身の毛髪を薄毛部分に移植する手術効果が半永久的、外科手術、費用が高め

よくある質問(FAQ)

さいごに、40代の薄毛治療に関して患者さんからよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

治療を開始するのに適切なタイミングは?

薄毛治療、特にAGA治療は早期に開始するほど効果を実感しやすく、良好な状態を維持しやすくなります。薄毛や抜け毛が気になり始めたら、できるだけ早めに専門のクリニックに相談することをお勧めします。

「もう少し様子を見てから」と考えている間に、薄毛が進行してしまう可能性があります。自己判断せず、まずは医師の診断を受けてご自身の状態を正確に把握することが重要です。

40代はAGAが進行しやすい年代でもあるため、気づいた時点が治療開始の適切なタイミングと言えるでしょう。

治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

薄毛治療の効果が現れるまでには個人差がありますが、一般的に時間がかかります。

AGA治療薬である内服薬(フィナステリド、デュタステリド)や外用薬(ミノキシジル)では、効果を実感し始めるまでに通常3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要です。目に見える変化を感じるまでには、さらに時間がかかる場合もあります。

AGAは進行性の脱毛症であるため、治療を中断すると再び薄毛が進行する可能性があります。そのため、効果を維持するためには、長期的に治療を継続するのが基本となります。

具体的な治療期間については個々の症状や治療法によって異なるため、診察時に医師に確認すると良いでしょう。

治療の費用はどのくらいかかりますか?

薄毛治療にかかる費用は、治療内容、使用する薬剤の種類や量、治療期間、そしてクリニックによって異なります。一般的に、AGA治療などの薄毛治療は健康保険の適用外となり、自由診療となります。

内服薬や外用薬による治療の場合、月々の薬剤費がかかります。注入療法や自毛植毛などは、より高額になる傾向があります。初診料や再診料、検査費用などが別途必要になる場合もあります。

多くのクリニックでは治療開始前に費用の目安について説明がありますので、十分に理解し、納得した上で治療を開始することが大切です。費用に関する不明点は、遠慮なくクリニックに質問してください。

副作用はありますか?

どのような治療にも、効果とともに副作用のリスクが伴います。AGA治療薬に関しても、副作用の可能性があります。

内服薬のフィナステリドやデュタステリドでは、まれに性欲減退、勃起機能不全(ED)、肝機能障害などが報告されています。外用薬のミノキシジルでは、頭皮のかゆみ、かぶれ、発疹、動悸、めまいなどが起こるケースがあります。

ただし、副作用の発生頻度は一般的に低いとされています。治療を開始する前には、医師から副作用の可能性について詳しい説明があります。

万が一、治療中に体調の変化を感じた場合は、すぐに医師に相談してください。医師が副作用のリスクと治療効果のバランスを考慮し、適した治療法を提案します。

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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