「昔に比べて髪が細くなり、全体のボリュームが減った気がする」「地肌が透けて見えるようになった」そんな悩みを抱えていませんか。
髪の毛が細くなるとセットが決まらず、実年齢より上に見られてしまうこともあり、深刻な悩みにつながります。
この記事では髪の毛を太くするサプリメントを探している方へ、なぜ髪が細くなるのかという根本的な理由から、サプリメントが果たす役割、選ぶべき栄養素、そして正しい選び方までを丁寧に解説します。
栄養面からアプローチし、髪が本来持つ太さまで育つ環境を整えることで、自信の持てる髪を目指しましょう。
この記事の執筆者

AGAメディカルケアクリニック 統括院長
前田 祐助
【経歴】
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年に薄毛・AGA治療の「AGAメディカルケアクリニック」新宿院を開設
2020年に横浜院、2023年に東京八重洲院を開設
資格・所属学会・症例数
【資格】
- 医師免許
- ⽇本医師会認定産業医
- 医学博士
【所属学会】
- 日本内科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本臨床毛髪学会
【症例数】
3万人以上※
※2018年5月~2022年12月AGAメディカルケアクリニック全店舗の延べ患者数
なぜ髪の毛は細くなってしまうのか
髪の毛が細くなるのはヘアサイクル(毛周期)が乱れ、髪が太く長く成長する期間が短くなってしまう「菲薄化(ひはくか)」が主な原因です。
この背景にはAGA(男性型脱毛症)、加齢、生活習慣の乱れが複雑に関係しています。
髪の毛が細くなる「菲薄化」とは
菲薄化(ひはくか)とは、文字通り髪の毛が薄く細くなる現象を指します。1本1本の髪の毛の直径が小さくなることで、髪全体の密度が同じでも、ボリュームが失われ、地肌が透けて見えるようになります。
髪の毛は頭皮の奥にある「毛包」という器官で作られます。健康な状態であれば、毛包は太くしっかりとした髪の毛を作り出します。
しかし、何らかの原因で毛包の働きが弱まったり、毛包自体が小さくなったりすると、産毛のような細く短い髪しか作れなくなってしまいます。これが菲薄化の正体です。
AGA(男性型脱毛症)による影響
男性の髪が細くなる最大の原因の一つが、AGA(男性型脱毛症)です。
AGAは男性ホルモンの「テストステロン」が、「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくことで、より強力な「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変換されることから始まります。
このDHTが毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、髪の成長を妨げる信号が出されます。その結果、髪の毛が太く長く成長する「成長期」が極端に短くなります。
通常2年~6年ある成長期が、数ヶ月~1年程度に短縮されてしまうのです。
ヘアサイクルの乱れ(AGAの例)
| 状態 | 成長期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 健康な髪 | 2年~6年 | 髪が太く、長く成長する期間が十分にある |
| AGAの髪 | 数ヶ月~1年 | 十分に成長する前に退行期・休止期へ移行する |
| 結果 | - | 細く短い髪(軟毛)の割合が増え、菲薄化が進行する |
成長期が短くなると髪は太く成長する時間を失い、細く短いまま抜け落ちてしまいます。このサイクルが繰り返されることで徐々に細い髪の割合が増え、薄毛が目立つようになります。
加齢とヘアサイクルの変化
AGAとは関係なく、加齢によっても髪は細くなります。年齢を重ねると、全身の細胞の働きが徐々に低下していきます。
これには髪の毛を作る毛母細胞も含まれます。毛母細胞の細胞分裂のスピードが遅くなったり、毛包の機能が低下したりすると、作られる髪の毛も細くなりがちです。
また、年齢とともに頭皮の血流も悪化しやすくなります。血流が悪くなると毛母細胞に必要な酸素や栄養素が十分に行き渡らなくなり、髪の成長が妨げられる一因となります。
さらに髪の毛の色素(メラニン)を作る細胞の働きも低下するため、白髪が増えるのと同時に髪のハリやコシも失われやすくなります。
生活習慣の乱れと栄養不足
髪の毛は私たちが食べたものから作られています。偏った食生活、特に外食やインスタント食品に頼りがちな生活を送っていると、髪の成長に必要な栄養素が不足します。
髪の主成分であるタンパク質はもちろん、そのタンパク質を髪の毛(ケラチン)に合成するために必要な亜鉛、頭皮環境を整えるビタミンB群などが不足すると、健康な髪は作られません。
また、睡眠不足は髪の成長を促す成長ホルモンの分泌を妨げます。喫煙は血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させ、過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血流低下や皮脂の過剰分泌を招きます。
これらの生活習慣の乱れが積み重なることで毛包に十分な栄養が届かず、髪は細くなってしまいます。
サプリメントで髪の毛を「太くする」とはどういうことか
サプリメントで髪を「太くする」とは、医薬品のように直接的に髪の毛の構造を変えるものではなく、髪が本来持つ太さまでしっかりと育つための土台作りを栄養面からサポートすることです。
不足している栄養素を補うことで、髪の成長環境を整えるのが主な目的です。
サプリメントの役割と限界
まず理解しておくべきなのは、サプリメントは「栄養補助食品」であり、「医薬品」ではないという点です。
医薬品(例えばAGA治療薬のミノキシジルなど)は毛包に直接作用して発毛を促したり、血流を改善したりする明確な作用を持っています。
一方、サプリメントの役割は、あくまで日常の食事だけでは不足しがちな栄養素を「補う」ことです。遺伝やAGAによってすでに細くなってしまった髪を、サプリメントだけで元の太さに戻すことは困難です。
しかし、栄養不足が原因で髪が細くなっている場合には、必要な栄養素を補給することで髪が健康に育つ手助けとなり、結果としてハリやコシのある髪が育ちやすくなります。
髪の成長を土台から支える栄養補給
髪の毛は「ケラチン」というタンパク質からできています。このケラチンは日々の食事から摂取したタンパク質がアミノ酸に分解され、それが毛母細胞で再合成されることによって作られます。
この再合成には亜鉛やビタミンB群といった補酵素・補因子が大量に必要です。もしこれらの栄養素が不足していれば、どれだけタンパク質を摂っても効率よく髪の毛を作ることができません。
サプリメントは、この髪を作る工場(毛母細胞)がスムーズに稼働するために必要な“潤滑油”や“部品”を供給する役割を果たします。
材料と道具が揃うことで毛母細胞は本来の力を発揮しやすくなり、しっかりとした太さの髪を作り出す土台が整います。
頭皮環境の改善サポート
太い髪は健康な頭皮という畑から育ちます。頭皮が乾燥してフケが出たり、逆に皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まったりすると、髪の成長が妨げられます。
例えば、ビタミンB2やB6は皮脂の分泌をコントロールする働きがあり、ビタミンEは抗酸化作用で頭皮の老化を防ぎ、血行を促進します。
サプリメントでこれらの栄養素を補うことは頭皮のターンオーバーを正常に保ち、炎症を抑え、髪が育ちやすい清潔で健康な環境を維持するのに役立ちます。
畑(頭皮)の状態が良くなることで、作物(髪)も元気に太く育ちやすくなるというイメージです。
ヘアサイクル(毛周期)の正常化を目指す
AGAや栄養不足によって乱れたヘアサイクルを、正常な状態に近づける手助けをすることも、サプリメントが目指すところです。
例えばAGAの原因物質であるDHTの生成に関わる「5αリダクターゼ」という酵素。ノコギリヤシなど
一部のサプリメント成分は、この酵素の働きを穏やかにする可能性が示唆されています。亜鉛もこの酵素の働きに関わっています。
これらが作用することで短縮されてしまった「成長期」を少しでも長く保ち、髪が細いまま抜け落ちるのを防ぎ、太く成長する時間を確保することを目指します。
あくまで医薬品のような強力な作用ではありませんが、ヘアサイクルを整える補助的な役割が期待されています。
髪を太く育てるために重要な栄養素
髪の毛を太く健康に育てるためには特定の成分だけを摂るのではなく、髪の材料となる成分、その合成を助ける成分、そして頭皮環境を整える成分をバランス良く摂取することが重要です。
髪の主成分「ケラチン」とアミノ酸
髪の約90%を占める主成分「ケラチン」は、18種類のアミノ酸が結合してできたタンパク質です。つまり、アミノ酸は髪の毛の「 bricks」そのものです。
特に重要なのが「L-システイン」という含硫アミノ酸で、髪の強度や弾力を生み出す「S-S結合(シスチン結合)」を形成します。
また、「L-リジン」はケラチンの生成を助ける必須アミノ酸であり、タンパク質の吸収を助けたり、後述する亜鉛の働きをサポートしたりする役割も期待されています。
食事から良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)を摂ることが基本ですが、サプリメントでこれらのアミノ酸、あるいはケラチン自体を補給することは、髪の材料を直接的に補うことにつながります。
髪の成長に関わる主な栄養素
| 栄養素 | 主な役割 | 多く含まれる食品 |
|---|---|---|
| タンパク質(アミノ酸) | 髪の主成分「ケラチン」の材料 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成、細胞分裂の促進 | 牡蠣、レバー、赤身肉 |
| ビタミンB群 | タンパク質代謝、頭皮環境の維持 | 豚肉、レバー、納豆、青魚 |
ケラチンの合成を助ける「亜鉛」
亜鉛は髪の毛の太さにとって非常に重要なミネラルです。その最大の役割は摂取したアミノ酸をケラチンタンパク質に「合成(組み立てる)」する際の酵素の働きを助けることです。
どれだけ材料(アミノ酸)があっても、亜鉛が不足しているとケラチンの生産が滞り、細くもろい髪しか作れません。
また、亜鉛は毛母細胞の「細胞分裂」を正常に行うためにも必要です。髪は毛母細胞が分裂することで伸びていくため、亜鉛不足は髪の成長速度の低下にもつながります。
さらに、亜鉛はAGAの原因となる5αリダクターゼの働きを抑制する可能性も指摘されており、髪を太く育てる上で多角的にサポートする栄養素と言えます。
頭皮環境を整える「ビタミンB群」
ビタミンB群はお互いに助け合いながら働く栄養素で、頭皮と髪の健康維持に欠かせません。特にビタミンB2やビタミンB6は脂質の代謝に関わり、皮脂の分泌量をコントロールする働きがあります。
これらが不足すると皮脂が過剰になったり、逆に乾燥したりして、頭皮環境が悪化しやすくなります。
ビオチンは皮膚や粘膜の健康を維持し、ケラチンの生成をサポートする働きがあります。
また、ビタミンB12や葉酸は血液(赤血球)を作るのに必要で、頭皮への酸素や栄養素の運搬を助けます。これらビタミンB群をバランス良く摂ることが、健康な頭皮環境の土台となります。
特に重要なビタミンB群の働き
- ビタミンB2・B6:皮脂分泌の調整、タンパク質代謝のサポート
- ビオチン:ケラチン生成のサポート、皮膚の健康維持
- ビタミンB12・葉酸:赤血球の生成サポート、栄養運搬の補助
血行促進と抗酸化「ビタミンE」
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、その強い抗酸化作用が特徴です。体内で発生する活性酸素は、細胞を酸化させて(錆びさせて)老化を促進します。
頭皮の毛母細胞も例外ではなく、活性酸素によって働きが衰えると、健康な髪が作られにくくなります。
ビタミンEはこの活性酸素から頭皮の細胞を守る働きをします。さらに、ビタミンEには末梢血管を広げ、血流をスムーズにする働きもあります。
頭皮の毛細血管の血流が良くなることで毛母細胞に髪の成長に必要な酸素と栄養素が隅々まで行き渡りやすくなり、髪が太く育つ環境をサポートします。
男性が注目すべきAGA関連成分
男性の髪が細くなる最大の原因であるAGA(男性型脱毛症)に対して、栄養面からアプローチする成分も注目されています。
これらは医薬品ではありませんが、サプリメントとして摂取することで髪の成長環境を整えるサポートが期待されます。
ノコギリヤシ(ソーパルメット)の働き
ノコギリヤシ(ソーパルメット)は北米に自生するヤシ科の植物で、その果実エキスは古くから男性の健康維持、特に前立腺の悩みに対して用いられてきました。
近年、このノコギリヤシエキスがAGAの原因(DHT)を生み出す「5αリダクターゼ」という酵素の働きを阻害する可能性が研究で示されています。
5αリダクターゼの働きが穏やかになればDHTの生成量が減少し、ヘアサイクルが乱れるのを防ぐことにつながります。
これにより、髪が細くなる菲薄化の進行を緩やかにし、髪が太く育つ成長期を維持する手助けとなることが期待されています。多くの男性向け育毛サプリメントに配合されている代表的な成分です。
イソフラボンとの相乗効果
イソフラボンは大豆に多く含まれるポリフェノールの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)と似た構造を持っています。そのため、体内でエストロゲンと似た穏やかな働きをすることが知られています。
髪の成長において、エストロゲンはヘアサイクルを維持し、成長期を長く保つ働きがあります。男性の体内でも微量に存在しますが、DHTの影響が強くなると、相対的に髪への良い影響が弱まります。
イソフラボンを摂取することは、このバランスをサポートすることにつながります。
また、イソフラボン自体にもノコギリヤシと同様に5αリダクターゼの働きを抑制する可能性が示唆されており、ノコギリヤシと同時に摂取することで相乗的なサポートが期待できると考えられています。
AGAサポートが期待される成分
| 成分名 | 期待される主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| ノコギリヤシ | 5αリダクターゼ(I型・II型)へのアプローチ | 男性向けサプリの代表的成分 |
| イソフラボン | 5αリダクターゼへのアプローチ、ホルモンバランスのサポート | 大豆由来のポリフェノール |
| L-リジン | ケラチン生成サポート、他の育毛成分の補助 | 必須アミノ酸の一つ |
育毛サポート成分(L-リジンなど)
アミノ酸の一種であるL-リジンも、髪を太く育てる上で注目したい成分です。L-リジンは体内で生成できない必須アミノ酸であり、髪の主成分であるケラチンタンパク質を構成する重要な材料の一つです。
それだけでなく、L-リジンにはAGA治療薬の効果を高める可能性があるという研究報告もあります。また、カルシウムの吸収を助けたり、肝機能を高めたりするなど、体全体の健康維持にも寄与します。
髪の材料を補給するという直接的な役割と、他の育毛サポート成分の働きを助ける間接的な役割の両方が期待できるため、亜鉛やノコギリヤシなどと合わせて配合されていることが多い成分です。
自分に合ったサプリメントの選び方
市場には「髪の毛を太くする」ことを目指すサプリメントが溢れていますが、自分に合った製品を選ぶためには成分、含有量、安全性、そして価格の4つのポイントを冷静に見極める必要があります。
悩みの原因に合わせた成分の確認
まずは自分の髪が細くなっている原因がどこにあるかを考えてみましょう。
もし、生え際や頭頂部が薄くなるなどAGAの特徴が顕著に現れているのであれば、ノコギリヤシや亜鉛、イソフラボンといった5αリダクターゼへのアプローチを考慮した成分が配合されている製品が適しているかもしれません。
一方で、特に薄毛のパターンはなく、全体的に髪が細くなってきた、ハリやコシが失われたという悩みであれば、栄養不足が原因の可能性があります。
その場合はケラチンやアミノ酸(L-システイン、L-リジン)といった髪の材料そのものや、ビタミンB群、ビタミンEなど頭皮環境や栄養補給を重視した成分が豊富な製品を選ぶのが良いでしょう。
悩み別に見る推奨成分の傾向
| 悩みのタイプ | 主な原因(推定) | 注目したい成分群 |
|---|---|---|
| 生え際・頭頂部の菲薄化 | AGA(男性型脱毛症) | ノコギリヤシ、亜鉛、イソフラボン |
| 髪全体のハリ・コシ低下 | 栄養不足、加齢、血行不良 | ケラチン、アミノ酸、ビタミンB群、E |
| 頭皮の乾燥・べたつき | 頭皮環境の悪化 | ビタミンB2, B6、ビオチン |
主要成分の「含有量」をチェックする
サプリメントを選ぶ上で最も重要なのが成分の含有量です。どんなに良い成分がたくさん含まれているように見えても、それぞれの含有量がごく微量では期待するサポートは得られません。
パッケージの裏にある栄養成分表示や原材料名を必ず確認しましょう。特に主目的とする成分(例えばノコギリヤシや亜鉛)が、どれくらいの量(mg)含まれているかは重要です。
亜鉛であれば1日あたり10mg~15mg程度、ノコギリヤシであれば1日あたり320mg程度が、研究などでよく用いられる目安量となります。
成分表示は含有量が多い順に記載されるルールがあるため、目的の成分がリストの最初の方に書かれているかも一つの判断材料になります。
安全性と品質(GMP認定工場など)
サプリメントは毎日、長期間にわたって口にするものです。そのため、安全性と品質は絶対に妥協してはいけないポイントです。
信頼できる製品を選ぶための一つの基準が「GMP(Good Manufacturing Practice)」認定です。これは原材料の仕入れから製造、出荷に至るまでの全工程で製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるようにするための製造管理基準です。
GMP認定工場で製造されている製品は、品質管理が徹底されている証となります。
品質を見極めるチェックリスト
- GMP認定工場で製造されているか
- 主要成分の含有量が明確に記載されているか
- 香料、着色料、保存料など不要な添加物が少ないか
継続できる価格設定か
髪の毛を太く育てるための栄養補給は短期間で結果が出るものではありません。
髪の毛は1ヶ月に約1cmしか伸びず、新しい栄養素が髪の成長に反映され、その髪が目に見える長さになるまでには時間がかかります。
一般的に、サプリメントの効果を判断するには最低でも3ヶ月、できれば6ヶ月以上の継続が必要です。
そのため、どれだけ高価で優れた成分が入っていても、経済的な負担が大きすぎて続けられなければ意味がありません。
1ヶ月あたりのコストを計算し、自分が無理なく続けられる価格帯の製品を選ぶことが結果的に髪を育てる上で非常に重要です。
サプリメント摂取時の注意点
サプリメントは手軽に栄養を補える反面、使い方を誤ると健康を害する可能性もあります。特に髪への効果を期待するあまり、推奨量を超えて摂取してしまうことには注意が必要です。
過剰摂取のリスク(特に亜鉛やビタミンA)
「たくさん飲めば、それだけ髪が太くなる」ということはありません。栄養素には、1日あたりの「耐容上限量」が定められているものがあります。
これを超えて摂取し続けると、健康被害を引き起こすリスクがあります。
過剰摂取に注意が必要な主な栄養素
| 栄養素 | 耐容上限量(成人男性/日) | 過剰摂取による主なリスク |
|---|---|---|
| 亜鉛 | 40~45mg | 銅の吸収阻害、貧血、吐き気、免疫力低下 |
| ビタミンA | 2,700μgRAE | 頭痛、吐き気、皮膚の乾燥、脱毛(逆に) |
| セレン | 450μg | 脱毛、爪の変形、胃腸障害 |
特に亜鉛は過剰に摂ると必須ミネラルである銅の吸収を妨げてしまい、かえって健康を損ねる可能性があります。
また、脂溶性ビタミンであるビタミンAも体内に蓄積しやすいため注意が必要です。
ビタミンAの過剰摂取は、副作用として「脱毛」を引き起こすことも報告されており、良かれと思ったことが逆効果になりかねません。製品に記載されている「1日の摂取目安量」を必ず守ってください。
効果を実感できるまでの期間
繰り返しになりますが、サプリメントの効果はすぐには現れません。
髪にはヘアサイクルがあり、栄養状態が改善されてから、その栄養を元に作られた新しい髪が頭皮の表面に出てきて、ある程度の長さに伸びるまでには、最低でも3ヶ月~6ヶ月はかかります。
最初の1~2ヶ月で変化が感じられないからといって「効果がない」と判断し、やめてしまうのは早計です。まずは半年間、生活習慣の見直しと並行しながら、じっくりと体質改善に取り組む姿勢が大切です。
医薬品(AGA治療薬)との併用は医師に相談
すでにAGAクリニックなどで、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルといった医薬品による治療を受けている場合、サプリメントを自己判断で併用することは避けてください。
特にノコギリヤシのように医薬品(フィナステリドなど)と似た作用(5αリダクターゼへのアプローチ)が期待される成分を併用すると、予期せぬ影響が出る可能性がゼロではありません。
また、亜鉛なども医薬品の吸収や代謝に影響を与える場合があります。
現在治療中の方はサプリメントを飲み始める前に、必ずかかりつけの医師に「このサプリメントを飲んでも問題ないか」と相談し、許可を得るようにしてください。
サプリメントと並行したい生活習慣の見直し
サプリメントの効果を最大限に引き出すためにはサプリメントに頼りきるのではなく、髪が育つための土台となる日々の生活習慣を同時に見直すことが何よりも重要です。
髪の材料を供給する「食事」
サプリメントはあくまで「補助」です。髪を太く育てるための基本は、バランスの取れた日々の食事です。
髪の毛を太く育てるための食事の基本
髪の主成分であるケラチンタンパク質を作るために、まずは「良質なタンパク質」を毎食摂ることが重要です。肉、魚、卵、大豆製品などを偏りなく食べましょう。
その上でタンパク質の合成を助ける亜鉛(牡蠣、レバー、赤身肉)やビタミンB群(豚肉、レバー、納豆)、頭皮の血行を促すビタミンE(ナッツ類、アボカド)、抗酸化作用のあるビタミンC(野菜、果物)を意識して摂ることが、髪を育てる強い土台となります。
逆に、脂っこい揚げ物やスナック菓子、糖分の多いジュースやスイーツの摂りすぎは皮脂の過剰分泌を招き、頭皮環境を悪化させるため、控えるべきです。
髪を育てる「睡眠」と「運動」
髪の毛は主に夜寝ている間に成長します。特に入眠後(夜10時~深夜2時頃がピークとされます)に多く分泌される「成長ホルモン」が毛母細胞の分裂を活発にし、髪の成長と修復を促します。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低かったりすると、この成長ホルモンの恩恵を十分に受けられず、髪は育ちにくくなります。毎日6~7時間の質の高い睡眠を確保するよう努めましょう。
また、適度な運動は全身の血行を促進します。ウォーキングやジョギングなどで血流が良くなれば、頭皮の末端にある毛母細胞まで、酸素と栄養素が届きやすくなります。
運動はストレス解消にもつながり、一石二鳥です。
頭皮の血行を妨げる「ストレス」と「喫煙」
精神的なストレスは自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にします。交感神経が優位になると血管が収縮し、頭皮への血流が悪化します。
また、喫煙に含まれるニコチンにも強力な血管収縮作用があります。血流が悪くなった頭皮は栄養不足・酸素不足の状態に陥り、毛母細胞は正常な活動ができなくなります。
これが、髪が細くなる大きな原因となります。趣味の時間を持つ、ゆっくり入浴するなど自分なりのリラックス法を見つけることが大切です。髪のためにも禁煙を検討することは非常に重要です。
生活習慣で見直すべき点
| 項目 | 推奨される行動 | 避けるべき行動 |
|---|---|---|
| 食事 | タンパク質、ビタミン、ミネラルの摂取 | 脂質・糖質の過剰摂取、偏食 |
| 睡眠 | 6~7時間の質の高い睡眠 | 夜更かし、睡眠不足、寝る前のスマホ |
| その他 | 適度な運動、ストレス解消、禁煙 | 運動不足、ストレスの蓄積、喫煙 |
適切な「ヘアケア」と頭皮環境
外側からのケアも髪を太く育てるためには大切です。シャンプーは1日1回、夜に丁寧に行うのが基本です。
洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮に必要な皮脂まで奪い取り、乾燥や皮脂の過剰分泌を招くことがあります。自分の肌質に合った、アミノ酸系などのマイルドな洗浄力のシャンプーを選びましょう。
洗う際は爪を立てず、指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないよう十分に洗い流します。
洗髪後は濡れたまま放置せず、ドライヤーで根本からしっかりと乾かし、雑菌の繁殖を防ぎましょう。
薄毛対策・生活習慣に戻る
髪の毛を太くするサプリメントに関するQ&A
髪の毛を太くするサプリメントに関する、よくある疑問についてお答えします。
- サプリメントを飲めば必ず髪は太くなりますか?
-
必ず太くなるとは断言できません。サプリメントは医薬品ではなく、あくまで栄養補助食品です。
その役割は、髪の成長に必要な栄養素を補い、髪が育ちやすい体内環境・頭皮環境を整えるサポートをすることです。
栄養不足が原因で髪が細くなっていた場合には改善が期待できますが、AGAの進行度合いや遺伝的な要因、生活習慣によってはサプリメントだけでは効果を実感しにくい場合もあります。
- 効果はどれくらいで実感できますか?
-
髪の毛は1ヶ月に約1cmしか伸びません。また、ヘアサイクル(毛周期)があるため、サプリメントを飲み始めてすぐに効果が髪に現れるわけではありません。
栄養状態が改善され、その栄養を元に新しく生えてきた髪が、ある程度の長さに伸びるまでには時間が必要です。
体感には個人差がありますが、一般的には最低でも3ヶ月、多くの場合6ヶ月程度の継続的な摂取と、生活習慣の改善を続けることが判断の目安となります。
- 複数のサプリメントを飲んでも大丈夫ですか?
-
自己判断での併用は注意が必要です。最も懸念されるのは、成分の重複による過剰摂取です。
例えば、複数の製品に亜鉛が含まれていると、知らず知らずのうちに耐容上限量を超えてしまい、銅欠乏などの健康被害を招くリスクがあります。
ビタミンAなどの脂溶性ビタミンも同様です。
もし複数のサプリメントを利用したい場合は必ずそれぞれの成分表示を確認し、特定の成分を摂りすぎていないか計算するか、医師や薬剤師に相談してください。
- AGA治療中でも飲んで良いですか?
-
AGAクリニックでフィナステリドやミノキシジルなどの医薬品を処方されている場合は自己判断でサプリメントを併用しないでください。
サプリメントに含まれる成分(特にノコギリヤシなど)が医薬品の働きに影響を与える可能性がゼロではないためです。
必ず、処方を受けている担当の医師に「このサプリメントを併用しても問題ないか」を事前に確認し、許可を得てから飲むようにしてください。
- サプリメントをやめたら元に戻ってしまいますか?
-
サプリメントの摂取によって栄養状態が改善され、髪質に良い影響が出ていた場合、摂取をやめれば、体はまた元の栄養不足の状態に戻っていく可能性があります。
サプリメントは体質そのものを変えるものではなく、不足分を補い続けるものです。
もし摂取をやめる場合はサプリメントで補っていた栄養素を、食事からより一層意識して摂る努力が必要です。
生活習慣が乱れたままサプリメントだけをやめれば、髪の状態も元に戻っていく可能性が高いと考えられます。
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