頭皮の日焼け対策による薄毛予防の重要性

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「頭を日焼けしたら、はげるって本当?」「頭皮に日焼け止めを塗るのは面倒だし、髪がベタつきそうで抵抗がある」と感じていませんか。

顔や腕の紫外線対策はしていても頭皮はつい忘れがちです。しかし頭皮は体の中で最も太陽に近く、紫外線の影響を直接受ける場所。

頭皮の日焼けは単なるヒリヒリ感や皮むけで終わらず、将来の薄毛につながる重大なリスクをはらんでいます。

この記事では頭皮の日焼けが髪に与える深刻な影響と、薄毛を予防するための正しい紫外線対策について、専門家の視点から分かりやすく解説します。

目次

なぜ頭皮の日焼けは危険?薄毛につながる紫外線ダメージ

頭皮が紫外線を浴びることは肌が日焼けするのと同じ、あるいはそれ以上に深刻なダメージをもたらします。

健康な髪を育む土壌である頭皮が傷つくことで薄毛のリスクが高まります。

紫外線が毛母細胞に与える直接的な影響

髪の毛を作り出す工場である「毛母細胞」は頭皮の奥深くに存在します。紫外線のうち波長の長いUVAは頭皮の深部にまで到達し、この大切な毛母細胞を直接傷つけることがあります。

毛母細胞の働きが弱まると髪の成長が妨げられ、細く弱い髪しか生えてこなくなったり、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が増えたりします。

紫外線の種類と頭皮への影響

紫外線の種類特徴頭皮への主な影響
UVA(A波)波長が長く、頭皮の奥深くに届く毛母細胞の損傷、頭皮の弾力低下
UVB(B波)波長が短く、エネルギーが強い炎症、赤み、水ぶくれ、乾燥

頭皮の乾燥とバリア機能の低下

強い紫外線を浴びた頭皮は水分が奪われてひどく乾燥します。乾燥した頭皮は外部の刺激から身を守るバリア機能が低下した状態です。

このことにより、わずかな刺激でも炎症を起こしやすくなったりフケやかゆみが発生しやすくなったりして健康な髪が育ちにくい環境になってしまいます。

活性酸素の発生と頭皮の老化(光老化)

紫外線は体内で細胞を傷つける「活性酸素」を大量に発生させます。この活性酸素が毛母細胞や頭皮のコラーゲンを攻撃することで、頭皮の「光老化」が進行します。

顔のシワやたるみと同じように頭皮も弾力を失って硬くなり、血行不良を招きます。血行が悪くなった頭皮では髪に十分な栄養を届けられません。

日焼けによる炎症と抜け毛の増加

頭皮が赤くヒリヒリするのは紫外線によって皮膚がやけど(サンバーン)を起こしている状態です。この炎症は毛穴の周囲にも及び、毛根にダメージを与えます。

強い炎症が起こると成長期の髪が強制的に休止期へと移行させられ、数週間から数ヶ月後にごそっと抜けてしまう「急性休止期脱毛」を引き起こすこともあります。

頭皮は顔の2倍以上も紫外線を浴びているという事実

多くの方が顔の紫外線対策には熱心ですが、頭皮は無防備なことが多いのが実情です。

しかし、物理的な位置関係から考えても頭皮は最も紫外線にさらされる危険な部位なのです。

髪の毛による防御機能の限界

「髪の毛があるから大丈夫」と思いがちですが、髪の毛だけで紫外線を完全に防ぐことはできません。

髪の量や色にもよりますが、髪を透過して頭皮に到達する紫外線は相当量にのぼります。特に髪の色が薄い方や、髪の密度が低い方は注意が必要です。

分け目やつむじは特に無防備

髪の分け目やつむじの部分は地肌が直接露出しているため、紫外線をダイレクトに浴びてしまいます。

「いつも同じ分け目にしている」という方はその部分だけが慢性的にダメージを受け続け、部分的に薄毛が目立つようになることもあります。

特に日焼けしやすい頭皮の部位

部位危険度理由
つむじ・頭頂部非常に高い太陽に対して最も垂直に位置する
分け目高い地肌が線状に露出している
生え際中程度髪が薄く、顔と一緒に露出しやすい

薄毛が進行している人ほど高まるリスク

すでにAGA(男性型脱毛症)などで薄毛が進行している場合、頭皮を保護する髪の毛が少ないため、紫外線の影響をより深刻に受けます。

紫外線ダメージが頭皮環境をさらに悪化させ、薄毛の進行を加速させるという悪循環に陥ってしまうため、人一倍の対策が重要です。

その思い込みが危ない!頭皮の紫外線対策に関する誤解

「分かってはいるけど、面倒で…」紫外線対策の重要性を感じつつも、一歩踏み出せない背景には様々な誤解や思い込みが潜んでいます。

ここでは多くの方が抱きがちな心の壁に焦点を当てます。

「髪があるから自分は大丈夫」という油断

これは最も多い誤解の一つです。前述の通り髪の毛は完璧なバリアではありません。

特に髪の分け目やつむじは無防備です。自分では見えない頭頂部が、気づかないうちに深刻なダメージを受けているケースは少なくありません。

「少し赤くなっただけ」と軽く考えていると、数年後の髪の状態に影響する可能性があります。

「夏だけ対策すれば良い」という勘違い

紫外線は夏に最も強くなりますが、一年中降り注いでいます。特に肌の奥深くまで届いてじわじわとダメージを与えるUVAは春や秋、さらには曇りの日でもかなりの量があります。

薄毛予防という観点では季節を問わず日常的に対策を意識することが大切です。

「帽子をかぶると蒸れてはげる」という俗説の真相

「帽子をかぶると蒸れて毛穴が詰まってはげる」という話を聞いたことがあるかもしれません。確かに長時間帽子をかぶって汗をかいたまま放置するのは頭皮の衛生上よくありません。

しかし、紫外線が頭皮に与えるダメージと比べれば帽子をかぶるメリットの方がはるかに大きいです。

通気性の良い素材を選び、こまめに汗を拭くなどの工夫で蒸れの問題は解決できます。

「日焼け止めは髪がベタつくから嫌」という気持ち

この気持ち、非常によく分かります。顔用の日焼け止めを髪の生え際に塗った時の、あのベタつきやテカリは不快なものです。

しかし、最近では頭皮や髪専用に開発された使用感の良い製品がたくさん登場しています。スプレータイプやジェルタイプなどベタつかずにサラッと使えるものを選べば不快感なく対策を続けられます。

この、気持ちに寄り添った製品選びが継続の鍵です。

薄毛を防ぐための正しい頭皮用日焼け止めの選び方

頭皮の紫外線対策を快適に続けるためには製品選びが非常に重要です。ここでは頭皮に適した日焼け止めの選び方を解説します。「

スプレータイプとローションタイプの特徴「

頭皮用日焼け止めには主にスプレータイプとローション(ジェル)タイプがあります。それぞれに長所と短所があるため、ご自身のライフスタイルや髪型に合わせて選ぶのが良いでしょう。

頭皮用日焼け止めのタイプ別比較

タイプ長所短所
スプレー髪の上から手軽に使える、ベタつきにくいムラになりやすい、吸い込む可能性がある
ローション/ジェル分け目などに直接塗れて密着度が高い髪が濡れたような質感になることがある

SPFとPA値の適切な選び方

日焼け止めの効果はUVBを防ぐ「SPF」と、UVAを防ぐ「PA」で示されます。日常生活かレジャーかなど使用する場面に応じて適切な数値のものを選びましょう。

数値が高ければ高いほど良いというわけではなく、肌への負担も考慮することが大切です。

  • 日常生活(通勤・買い物) SPF15~30 / PA++程度
  • 屋外での軽いスポーツ SPF30~50 / PA+++程度
  • 炎天下でのレジャー SPF50+ / PA++++

頭皮に優しい成分を選ぶ

頭皮はデリケートな部分なので、できるだけ刺激の少ない成分でできた製品を選ぶことが重要です。

「ノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)」や「アルコールフリー」「無香料・無着色」「石けんで落とせる」といった表示があるものは、頭皮への負担が少ない傾向にあります。

日焼け止めの効果的な使い方と注意点

せっかく日焼け止めを使っても、使い方が間違っていると十分な効果を得られません。正しい使い方をマスターして、紫外線から頭皮をしっかり守りましょう。

正しい塗布量と塗り方のコツ

日焼け止めは十分な量を塗らないと表示されている効果を発揮できません。

スプレータイプの場合は髪から15cmほど離し、分け目や頭頂部を中心に全体にまんべんなく吹きかけます。

ローションタイプの場合は指先に適量を取り、分け目や生え際、つむじなどに直接優しくなじませます。

汗をかいた後の塗り直しのタイミング

日焼け止めは汗や皮脂、摩擦で落ちてしまいます。効果を持続させるためには2~3時間おきに塗り直すのが理想です。

特に汗をたくさんかいた後や海やプールから上がった後などは、タオルで水気を軽く押さえてから必ず塗り直しましょう。

日焼け止めをしっかり落とすクレンジング方法

頭皮に日焼け止めが残っていると毛穴詰まりや肌トラブルの原因になります。一日の終わりにはシャンプーで丁寧に洗い流しましょう。

特にウォータープルーフタイプの製品を使った日は、シャンプー前に頭皮用のクレンジングオイルなどを使ってしっかり落とすことが大切です。

日焼け止めの落とし方

日焼け止めの種類推奨される落とし方ポイント
石けんで落とせるタイプ通常のシャンプー二度洗いをするとより確実
専用クレンジング不要洗浄力の高めなシャンプー丁寧にマッサージするように洗う
ウォータープルーフ頭皮用クレンジング+シャンプークレンジングで優しくなじませてから流す

日焼け止めだけじゃない!今日からできる紫外線対策

日焼け止めを塗るのが基本ですが、他の対策と組み合わせることで、より効果的に頭皮を紫外線から守ることができます。

帽子や日傘を活用する

物理的に紫外線を遮断する帽子や日傘は非常に効果的な対策です。帽子はUVカット機能のあるものや色の濃いもの、つばの広いものを選ぶと良いでしょう。

日傘もUVカット率の高いものや、遮光性の高いものを選ぶのがポイントです。

紫外線の強い時間帯を意識する

一日の中で紫外線が最も強くなるのは、午前10時から午後2時頃です。この時間帯の長時間の外出を避ける、あるいは日陰を利用するなどの工夫をするだけでも、浴びる紫外線の量を減らすことができます。

抗酸化作用のある栄養素を摂取する

体の内側からケアすることも重要です。紫外線によって発生する活性酸素を除去する働きのある「抗酸化物質」を多く含む食品を日頃から食事に取り入れましょう。

この食生活がダメージに負けない頭皮作りをサポートします。

抗酸化作用が期待できる主な栄養素と食品

栄養素働き多く含む食品
ビタミンCコラーゲンの生成を助けるパプリカ、ブロッコリー、柑橘類
ビタミンE血行を促進し、細胞の酸化を防ぐナッツ類、アボカド、植物油
ポリフェノール強力な抗酸化作用を持つ緑茶、ベリー類、カカオ

もし頭皮が日焼けしてしまったら?緊急アフターケア

万全の対策をしていても、うっかり頭皮を日焼けさせてしまうこともあるかもしれません。そんな時はダメージを最小限に抑えるための適切なアフターケアが重要です。

まずは冷やして炎症を抑える

日焼けは軽いやけどと同じです。まずは冷たい水で濡らしたタオルや、タオルで包んだ保冷剤などを当ててほてりを鎮め、炎症の悪化を防ぎましょう。

ただし、氷を直接当てるのは刺激が強すぎるため避けてください。

低刺激の保湿ケアでうるおいを与える

炎症が落ち着いたら頭皮を保湿することが大切です。

アルコールなど刺激の強い成分が入っていない敏感肌用の化粧水や頭皮用ローションを使い、優しくうるおいを補給しましょう。

このケアが乾燥による皮むけやバリア機能の低下を防ぎます。

皮むけを無理に剥がさない

日焼け後に頭皮の皮がむけてくると気になって剥がしたくなるかもしれません。

しかし無理に剥がすと、まだ準備ができていない下の皮膚まで傷つけてしまい、炎症を長引かせる原因になります。自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。

よくある質問

頭皮の日焼けや紫外線対策に関して患者様からよくいただく質問とその回答をまとめました。

頭皮用日焼け止めは毎日使う必要がありますか

薄毛予防や頭皮の健康を考えるなら紫外線は一年中降り注いでいるため、外出する日は毎日使用することを推奨します。

特に紫外線の影響を受けやすい分け目やつむじだけでも日常的に保護する習慣をつけることが大切です。

顔用の日焼け止めを頭皮に使っても良いですか

緊急時などは代用できますが、継続的な使用はあまりお勧めしません。

顔用の製品は頭皮で使うと油分で毛穴が詰まったり、髪がベタついたりする原因になりがちです。可能であれば使用感の良い頭皮専用の製品を選ぶのが良いでしょう。

日焼け対策をすればAGAは予防できますか

紫外線対策はあくまで頭皮環境を良好に保ち、紫外線ダメージによる抜け毛を防ぐためのものです。

AGA(男性型脱毛症)の主な原因は遺伝や男性ホルモンであり、体の内的な要因です。そのため、紫外線対策だけでAGAの発症や進行を直接予防することはできません。

薄毛が進行している場合は紫外線対策と並行して専門クリニックでのAGA治療を検討することが重要です。

日焼け止めで髪の色が落ちることはありますか

日焼け止めに含まれる成分によってはヘアカラーの色素と反応して、わずかに色落ちを早めてしまう可能性はあります。また、紫外線そのものも色落ちの大きな原因です。

日焼け止めによる影響が気になる方は髪にも使えるUVカットスプレーなどを活用し、物理的な紫外線対策(帽子など)と組み合わせるのが効果的です。

以上

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.前田祐助のアバター Dr.前田祐助 AGAメディカルケアクリニック 統括院長

経歴
慶應義塾大学医学部医学研究科卒業
慶應義塾大学病院 初期臨床研修課程終了
大手AGAクリニック(院長)を経て、2018年AGAメディカルケアクリニック新宿院を開設

資格
医師免許
⽇本医師会認定産業医
医学博士

所属学会
日本内科学会
日本美容皮膚科学会
日本臨床毛髪学会

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